説明

デオキシアクタガルジン誘導体

本発明は概して、デオキシアクタガルジンAおよびBタイプの特定の化合物に関する。そのような化合物は、微生物感染、例えば、C. パーフリンジェンス、C. ディフィシレ、C. テタニ、および/またはC. ボツリナムなどの、とりわけC. ディフィシレのクロストリジウム属感染、特に結腸および/または下部腸管の感染、ならびに微生物感染に付随する下痢の処置における使用に適する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の新規化合物、これを含む薬学的組成物、ならびに、特に結腸および/または下部腸管における微生物感染、特にC. ディフィシレ(C. difficile)感染の処置のための化合物および組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの抗生物質化合物が、微生物を含む天然源より同定されている。抗生物質化合物はしばしば、複雑な化学構造、およびとりわけ複雑な立体化学構造を有する。
【0003】
最近、デオキシアクタガルジンBに基づき、国際公開公報第2007/083112号(特許文献1)において、抗生物質の新たな化学的シリーズが同定された。デオキシアクタガルジンBは細菌アクチノプラネス・リグリアエ(Actinoplanes liguriae)により合成され、デオキシアクタガルジンBおよびその誘導体のいくつかは有望な抗菌特性を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開公報第2007/083112号
【発明の概要】
【0005】
微生物感染、例えば、C. パーフリンジェンス(C. perfringens)、C. ディフィシレ、C. テタニ(C. tetani)、および/またはC. ボツリナム(C. botulinum)などの、とりわけC. ディフィシレの、クロストリジウム属(Clostridium)感染、特に結腸および/または下部腸管の感染、ならびに微生物感染に付随する下痢の処置における使用に特に適する、最適化された特性を有するデオキシアクタガルジンAおよびBタイプの新規化合物が現在同定されている。
【0006】
1つの局面において、式(I)の化合物、ならびにその薬学的に許容される塩、水和物、および溶媒和物が提供される:

式中、Aは-C1-4アルキルであり;Bは-C1-4アルキルであり;Xは-NH(CH2)pNH2であり;pは整数2〜12であり;Zは-NR1R2であり;R1はHまたはC1-4アルキルであり、R2はH、アミノ酸、またはC1-4アルキルである。
【0007】
本開示の化合物は、C. ディフィシレの1つまたは複数の株に対して非常に高い抗菌活性を有するため有利であり、例えば、活性を最小発育阻止濃度(MIC)などの標準試験により測定した時、一般に本開示の化合物は、1つまたは複数のC. ディフィシレ株に対して2μg/mlまたはより低いMICを有する。さらに、本開示の特定の化合物は、C. ディフィシレのいくつかの一般的な株に対して非常に高い活性を有する。
【0008】
加えて、本開示の化合物は、体において見出される天然に存在する健康な腸内細菌叢に対して低い抗菌活性を有するため、ヒトおよび動物への投与に特に適している。C. ディフィシレなどの微生物感染により誘導される下痢の処置の場合は、本化合物での処置を生き延びる天然細菌叢の能力のために、公知の抗生物質での処置と比較して本化合物での処置後に減少した症状の再発が観察されることが期待される。特に、本開示の化合物は、バクテロイデス・フラギリス(Bacteroides fragilis)、バクテロイデス・テタイオタオミクロン(Bacteroides thetaiotaomicron)、ビフィドバクテリウム・ロングム(Bifidobacterium longum)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)に対して非常に低い活性を示し、ならびに、ペプトストレプトコッカス・アネロビウス(Peptostreptococcus anaerobius)およびビフィドバクテリウム・アドレスセンティス(Bifidobacterium adolescentis)に対して中程度に低い活性を示す。
【0009】
その上、本開示の化合物は、経口送達された時に全身的には吸収されず、結腸/腸管における標的へ相対的に高濃度の活性物が送達されることを可能にする。従って、経口投与された時に化合物の全身的送達が無いため、その後患者にとって副作用への任意の潜在的な曝露を最小化する可能性がある。
【0010】
C. ディフィシレ感染および/または異常増殖は、入院中の患者にとって一般的な問題である。それは健康管理システムに実質的に負荷を与え、かつ老齢の患者などの脆弱な患者の生命を脅かす可能性がある。
【0011】
現在のところ、バンコマイシンが、C. ディフィシレ感染の重大な症例のための標準的な処置である。従って、C. ディフィシレの処置における使用のために代替的な化合物が有用であると考えられる一方、そのような化合物は、バンコマイシンにほぼ匹敵するか、またはそれより良い活性を有することが必要とされる。
【0012】
特定の化合物が、C. ディフィシレおよび/またはバンコマイシン耐性腸球菌の処置のために研究中であるが、しばしば活性成分が胃もしくは腸における酸および/または酵素により分解される。そのような化合物は、活性成分が分解されない形態で結腸へ送達されることを保証するために、非経口送達、または、腸溶コーティングもしくはカプセル製剤などの特別な製剤を必要とする。驚くべきことに、本化合物は、ペプチド成分を含むが、胃酸または酵素によっていかなる有意な程度までも分解されない。従って、本開示の化合物は特に経口送達に適する。これは、局所的に分解されない活性物の結腸への送達を可能にする、単純かつ有効な製剤において化合物を製剤化する柔軟性を許容する点で有利であり得る。
【0013】
本開示の特定の化合物は、A. リグリアエにおいてデオキシアクタガルジンBを中間体として合成することにより調製することができる。デオキシアクタガルジンBの収率は、アクチノプラネス・ガルバジネンシス(Actinoplanes garbadinensis)により調製されるアクタガルジンAタイプの中間体の収率の2倍またはそれ以上である。このことは、商業的/加工の見地から重要であり得る。
【0014】
溶解性、安定性などのような本開示の化合物の物理特性は、意図された治療的使用に適している。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ナイシンおよびデオキシアクタガルジンB誘導体の、酵素消化に対する感受性を示す。
【図2】C. ディフィシレについてのインビボモデルの結果を示す。
【図3】経口投与後に回収された化合物の量を示す。
【図4】実施例1についての、出発物質のHPLC分析を示す。
【図5】実施例1についての、反応が完了した後のHPLC分析を示す。
【図6】実施例1の化合物の、C18 Bond Elut濃縮後のHPLC分析を示す。
【図7】フラッシュクロマトグラフィー後の、実施例1の化合物のHPLC分析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
詳細な説明
本開示の文脈におけるアルキルとは、直鎖または分岐鎖のアルキル、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、またはt-ブチルを指す。
【0017】
1つの態様において、Aは、4つまでの炭素を含有する天然アミノ酸のアルキル側鎖に対応する構造を有する。
【0018】
1つの態様において、Aは-CH3である。
【0019】
1つの態様において、Aは、例えば-CH(CH3)2、-CH2CH(CH3)2、または-CH(CH3)CH2CH3などの分岐鎖アルキル、例えば-CH(CH3)2または-CH2CH(CH3)2、特に-CH2CH(CH3)2である。
【0020】
1つの態様において、Bは、4つまでの炭素を含有する天然アミノ酸のアルキル側鎖に対応する構造を有する。
【0021】
1つの態様において、Bは-CH3である。
【0022】
1つの態様において、Bは、例えば-CH(CH3)2、-CH2CH(CH3)2、または-CH(CH3)CH2CH3などの分岐鎖アルキル、例えば-CH(CH3)2もしくは-CH2CH(CH3)2、または、-CH(CH3)2もしくは-CH2CH(CH3)2、特に-CH(CH3)2である。
【0023】
1つの局面において、Aは-CH2CH(CH3)2であり、およびBは-CH(CH3)2である。
【0024】
1つの態様において、R1はHである。
【0025】
1つの態様において、R2はHである。
【0026】
1つの態様において、R2はアミノ酸残基のLまたはD異性体型である。1つの態様において、R2は-C(O)CH(CH3)NH2のLまたはD異性体型である。
【0027】
1つの態様において、R2は、アラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リジン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、アルギニン、セリン、スレオニン、バリン、トリプトファン、およびチロシンより選択されるアミノ酸残基である。
【0028】
1つの態様において、R2は、フェニルアラニン、チロシン、およびアラニン(すなわち、-C(0)CH(CH3)NH2)より選択されるアミノ酸残基である。
【0029】
1つの態様において、Zは-NH2である。
【0030】
1つの局面において、Aは-CH2CH(CH3)2であり、およびBは-CH(CH3)2であり、およびZは-NH2である。
【0031】
1つの態様において、pは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12、例えば、2、3、7、9、または12、特に、7、9、または12である。1つの態様において、pは7である。別の態様において、pは9または12である。
【0032】
1つの態様において、pは3〜12または3〜8である。
【0033】
上述した態様の各々およびすべての適合性の組み合わせは、あたかも各々およびすべての組み合わせが個々におよび明確に列挙されるかのように、本明細書において明確に開示される。
【0034】
1つの局面において、本開示は、式(II)の化合物またはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくは溶媒和物を提供する:


【0035】
本開示の化合物は、C. ディフィシレの少なくとも1つの株に対して1μg/ml以下のMICを有し、およびC. ディフィシレの他の一般的な株に対して2μg/ml以下の活性を一般に有する。本開示のいくつかの化合物、例えば式IIの化合物は、C. ディフィシレの多くの一般的な株に対して1μg/ml以下の活性を有する。
【0036】
本開示の化合物に類似した化合物を調製する方法は、国際公開公報第2007/083112号に記載されている。
【0037】
本開示の化合物は、薬学的に許容される塩の形態であってもよく、および/または薬学的に許容される塩として投与されてもよい。適当な塩についての総説としては、Berge et al., J. Pharm. Sci, 1977, 66, 1-19を参照されたい。
【0038】
典型的に、薬学的に許容される塩は、適宜、望ましい酸または塩基を用いることにより容易に調製され得る。塩は溶液から沈澱させて濾過により収集してもよいし、または溶媒の蒸発により回収してもよく、例えば、式(I)の化合物は、適当な溶媒、例えばメタノールなどのアルコールに溶解してもよく、および同一の溶媒または別の適当な溶媒において酸を添加してもよい。結果として生じた酸付加塩をその後、直接的に、またはジイソプロピルエーテルもしくはヘキサンなどの、極性がより低い溶媒の添加により沈澱させ、濾過により単離してもよい。
【0039】
当業者は、式(I)または(II)の化合物が、1つを超える塩基性基を含有する場合、ビス塩またはトリス塩もまた形成され得、および本開示による塩であることを認識するであろう。
【0040】
適当な付加塩は、非毒性塩を形成する無機または有機酸から形成され、例は、ラクトビオン酸塩、マンデル酸塩((S)-(+)-マンデル酸塩、(R)-(-)-マンデル酸塩、および(R,S)-マンデル酸塩を含む)、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、リン酸水素塩、グルタミン酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、フマル酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、蟻酸塩、グルコン酸塩、コハク酸塩、エチルコハク酸塩(4-エトキシ-4-オキソ-酪酸塩)、ピルビン酸塩、シュウ酸塩、オキサロ酢酸塩、糖酸塩、安息香酸塩、グルコラート(glucolate)、グルクリナート(glucurinate)、アルキルまたはアリールスルホン酸塩(例えば、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、またはp-トルエンスルホン酸塩)、およびイセチオン酸塩である。追加的または代替的な例はメシル酸塩である。
【0041】
薬学的に許容される塩基性塩は、アンモニウム塩、ナトリウムおよびカリウムのものなどのアルカリ金属塩、カルシウムおよびマグネシウムのものなどのアルカリ土類金属塩、ならびに、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、トリメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、およびN-メチル-D-グルカミンなどの、第1級、第2級、および第3級アミンの塩を含む有機塩基を有する塩を含む。
【0042】
有機化学の当業者は、多くの有機化合物が溶媒と複合体を形成し得、そこで反応するか、またはそこから沈澱もしくは結晶化することを認識するであろう。これらの複合体は「溶媒和物」として公知である。例えば、水との複合体は「水和物」として公知である。式(I)または(II)の化合物の溶媒和物は本開示の範囲内である。式(I)または(II)の化合物の塩は溶媒和物(例えば水和物)を形成し得、および本開示はまたすべてのそのような溶媒和物も含む。本明細書において使用される「プロドラッグ」という用語は、例えば血液において加水分解により、医学的効果を有する活性型へ体内で変換される化合物を意味する。薬学的に許容されるプロドラッグは、T. Higuchi and V. Stella, "Prodrugs as Novel Delivery Systems", Vol. 14 of the A.C.S. Symposium Series; Edward B. Roche, ed., "Bioreversible Carriers in Drug Design", American Pharmaceutical Association and Pergamon Press, 1987;およびD. Fleisher, S. Ramon and H. Barbra "Improved oral drug delivery: solubility limitations overcome by the use of prodrugs", Advanced Drug Delivery Reviews (1996) 19(2) 115-130に記載され、これらの各々は参照により本明細書に組み入れられる。
【0043】
プロドラッグは、そのようなプロドラッグが患者に投与された時にインビボで式(I)または(II)の化合物を放出する、任意の共有結合した担体である。プロドラッグは一般に、日常的な操作によるかまたはインビボでのいずれかで修飾が切断されて親化合物を生じるような方法で、官能基を修飾することにより調製される。プロドラッグは、例えば、水酸基、アミン基、またはスルフヒドリル基が、患者に投与された時に切断されて水酸基、アミン基、またはスルフヒドリル基を形成する任意の基に結合している、本開示の化合物を含む。従って、プロドラッグの代表的な例は、式(I)または(II)の化合物のアルコール、スルフヒドリル、およびアミン官能基の酢酸塩、蟻酸塩、および安息香酸塩誘導体を含む(が、それらに限定されない)。さらに、カルボン酸(-COOH)の場合は、メチルエステル、エチルエステルなどのようなエステルが使用され得る。エステルは、ヒトの体におけるインビボ条件の下でそれ自体で活性を有し得、および/または加水分解性であり得る。薬学的に許容されるインビボ加水分解性の適当なエステル基はヒトの体において容易に分解されて、親の酸またはその塩を残すものを含む。
【0044】
本明細書において以下の本開示による化合物への言及は、式(I)または(II)の両方の化合物ならびにその薬学的に許容される塩および誘導体を含む。
【0045】
立体異性体に関して、式(I)または(II)の化合物は、1を超える不斉炭素原子を有する。描かれる一般式(I)または(II)において、実線の楔形の結合は、結合が紙の平面より上であることを示す。破線の結合は、結合が紙の平面より下であることを示す。
【0046】
式(I)または(II)の化合物における置換基もまた、1つまたは複数の不斉炭素原子を有し得ることが認識されるであろう。
【0047】
構造(I)または(II)の化合物は、個々の鏡像異性体またはジアステレオマーとして生じ得る。そのような異性体型の全ては、その混合物を含んで、本発明内に含まれる。
【0048】
ジアステレオ異性体またはシスおよびトランス異性体の分離は、従来の技術、例えば、分別結晶、クロマトグラフィー、またはHPLCにより達成され得る。剤の立体異性体混合物はまた、適宜、対応する光学的に純粋な中間体から、または、適当なキラル支持体を用いた対応する混合物のHPLCによるなどの分離により、もしくは、適当な光学的に活性を有する酸または塩基を用いる、対応する混合物の反応によって形成されたジアステレオ異性体塩の分別結晶により調製され得る。本明細書において説明される式(I)または(II)の化合物はまた、その互変異性体型、例えば、ケト/エノール互変異性体まで及ぶ。
【0049】
式(I)または(II)の化合物は、結晶形態または非結晶形態であり得る。さらに、構造(I)または(II)の化合物の結晶形態のいくつかは多形として存在し得、すべての形態が本開示に含まれる。
【0050】
別の局面において、本発明は、治療、および特に、抗菌化合物による回復に対して感受性である状態に苦しむヒトまたは動物対象の処置における使用のために、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、および/または担体と共に、本発明の化合物、またはその薬学的に許容される誘導体を活性成分として含む薬学的組成物を提供する。
【0051】
別の局面において、本発明は、治療的に有効量の本開示の化合物、ならびに薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、および/または担体(それらの組み合わせを含む)を含む薬学的組成物を提供する。
【0052】
さらに、本開示により、本発明の化合物またはその薬学的に許容される誘導体を、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、および/または担体と共に混合する段階を含む、薬学的組成物を調製する工程が提供される。
【0053】
本発明の化合物は、ヒトまたは獣医学における使用のための任意の好都合な方法で投与のために製剤化され得、および本開示は従って、ヒトまたは獣医学における使用に適合した本発明の化合物を含む薬学的組成物をその範囲内に含む。そのような組成物は、1種または複数種の適当な賦形剤、希釈剤、および/または担体の助けを借りて、従来の様式における使用のために呈示され得る。治療的使用のために許容される賦形剤、希釈剤、および担体は、薬学的技術分野において周知であり、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co. (A. R. Gennaro edit. 1985)に記載されている。薬学的賦形剤、希釈剤、および/または担体の選択は、意図される投与経路および標準的な薬学的実践に関連して選択され得る。薬学的組成物は、賦形剤、希釈剤、および/または担体として、またはそれらに加えて、任意の適当な結合剤、潤滑剤、懸濁剤、コーティング剤、可溶化剤を含み得る。
【0054】
保存料、安定化剤、色素、およびさらに着香剤が、薬学的組成物において提供され得る。保存料の例は、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、およびp-ヒドロキシ安息香酸のエステルを含む。抗酸化薬および懸濁剤もまた使用され得る。
【0055】
いくつかの態様のために、本開示の剤はまた、シクロデキストリンとの組み合わせで使用され得る。シクロデキストリンは、薬物分子と封入複合体および非封入複合体を形成することが公知である。薬物-シクロデキストリン複合体の形成は、薬物分子の溶解性、溶解速度、バイオアベイラビリティ、および/または安定性特性を改変し得る。薬物-シクロデキストリン複合体は一般に、大抵の剤形および投与経路に有用である。薬物との複合体形成を方向付ける代替として、シクロデキストリンは、補助的な添加物として、例えば、担体、希釈剤、または可溶化剤として使用され得る。α-、β-、およびγ-シクロデキストリンが最も一般的に使用され、および適当な例は、国際公開公報第91/11172号、国際公開公報第94/02518号、および国際公開公報第98/55148号に記載されている。
【0056】
本開示の化合物は、錠剤形成のため、および他の製剤タイプのために適切な粒子サイズを得る目的で、湿式粉砕などの公知の粉砕過程を用いて粉砕され得る。本発明の化合物の微細に分割された(ナノ粒子状)調製物は、当技術分野において公知である工程により調製され得、例えば、国際特許出願である国際公開公報第02/00196号(SmithKline Beecham)を参照されたい。
【0057】
投与(送達)のための経路は、1つまたは複数の:経口(例えば、乾燥粉末/自由流動性粒子製剤、錠剤、カプセルとして、または摂食可能な溶液もしくは懸濁液として)、直腸、頬側、および舌下を含むが、それらに限定されない。本開示の化合物は、経口送達に特に有用である。
【0058】
いくつかの例において、本開示の化合物を、局所、粘膜(例えば、吸入のための鼻内噴霧またはエアロゾルとして)、鼻、非経口(例えば、注射可能な形態による)、胃腸、脊髄内、腹腔内、筋肉内、静脈内、子宮内、眼内、皮内、頭蓋内、気管内、膣内、脳室内、脳内、皮下、眼(硝子体内もしくは眼房内を含む)、または経皮経路により送達することが可能であり得る。
【0059】
様々な送達システムに依存して様々な組成物/製剤の要求があり得る。例として、本開示の薬学的組成物は、ミニポンプを用いて、または粘膜経路により、例えば、吸入のための鼻内噴霧もしくはエアロゾルまたは摂食可能な溶液として、または非経口送達されるように製剤化され得、非経口においては、例えば、静脈内、筋肉内、もしくは皮下経路による送達のために、組成物が注射可能な形態により製剤化される。あるいは、製剤は、両方の経路により送達されるように設計され得る。
【0060】
適切な場合には、薬学的組成物は、吸入により、坐剤または膣坐剤の形態で、ローション、溶液、クリーム、軟膏、もしくは散布剤の形態で局所的に、皮膚パッチの使用により、デンプンもしくは乳糖などの賦形剤を含有する錠剤の形態で、または、単独もしくは賦形剤との混合で、のいずれかのカプセルもしくは腔坐剤で、または、着香剤もしくは着色剤を含有するエリキシル剤、溶液、もしくは懸濁液の形態で経口投与することができ、または、非経口で、例えば、静脈内に、筋肉内に、もしくは皮下に注射することができる。非経口投与のために、組成物は、他の物質、例えば、溶液を血液と等張にするのに十分な塩または単糖を含有し得る無菌水溶液の形態において最も良好に使用され得る。頬側または舌下投与のために、組成物は、従来の様式で製剤化され得る錠剤または口内錠の形態で投与され得る。化合物のすべてが同一の経路により投与される必要はないことが理解されるべきである。同様に、組成物が1つを超える活性成分を含む場合、それらの成分は異なる経路により投与され得る。
【0061】
本開示の組成物は、非経口、経口、頬側、直腸、局所、インプラント、眼、鼻、または尿生殖器での使用のために特に製剤化された形態におけるものを含む。本発明の1つの局面において、剤は経口に送達され、従って、剤は経口送達に適する形態である。
【0062】
本開示の化合物が非経口投与される場合、そのような投与の例は1つまたは複数の以下:静脈内に、動脈内に、腹腔内に、くも膜下腔内に、脳室内に、尿道内に、胸骨内に、頭蓋内に、筋肉内に、または皮下に、剤を投与する段階、および/または注入技術を用いる段階によるものを含む。
【0063】
本発明の化合物は、即時型、遅延型、改変型、持続性、パルス状、または制御的の放出適用のために、着香剤または着色剤を含有し得る錠剤、カプセル、腔坐剤、エリキシル剤、溶液、または懸濁液の形態で(例えば、経口でまたは局所で)投与することができる。
【0064】
本発明の化合物はまた、経口または頬側投与に適する形態におけるヒトまたは獣医学的使用のために、任意で着香剤および着色剤を伴い、例えば、溶液、ゲル、シロップ、口内洗浄液もしくは懸濁液、または、使用前の水もしくは他の適当な媒体での構成のための乾燥粉末の形態で呈示され得る。錠剤、カプセル、口内錠、香錠、丸剤、巨丸剤、粉末、糊状剤、顆粒、弾丸、または予混合調製物などの固体組成物もまた使用され得る。経口使用のための固体および液体組成物は、当技術分野において周知である方法に従って調製され得る。そのような組成物はまた、固体または液体形態であり得る1つまたは複数の薬学的に許容される担体および賦形剤も含有し得る。
【0065】
錠剤は、微結晶性セルロース、乳糖、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、第2リン酸カルシウム、およびグリシン、マンニトール、アルファ化デンプン、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、崩壊剤、例えば、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、および特定のケイ酸複合体、ならびに、顆粒結合剤、例えば、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ショ糖、ゼラチン、およびアカシアなどの賦形剤を含有し得る。
【0066】
加えて、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ベヘン酸グリセリル、およびタルクなどの潤滑剤が含まれ得る。
【0067】
類似したタイプの固体組成物がまた、ゼラチン、またはHPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)カプセルにおいて増量剤として使用され得る。この点において好ましい賦形剤は、微結晶性セルロース、乳糖、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、第2リン酸カルシウム、およびマンニトール、アルファ化デンプン、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、または高分子量ポリエチレングリコールを含む。水性懸濁液および/またはエリキシル剤のために、剤は、種々の甘味剤または着香剤、着色物質または色素と、乳化剤および/または懸濁剤と、ならびに、水、エタノール、プロピレングリコール、およびグリセリンなどの希釈剤と、ならびにそれらの組み合わせと併用され得る。
【0068】
カプセルは、(薬剤単独の、または選択された増量剤とのブレンドとして)粉末で、または代替的に液体で増量され得、各々は1つまたは複数の、式(I)または(II)の化合物および担体を含む。カプセルが粉末で増量される場合、式(I)もしくは(II)の化合物および/または担体は、適切な粒子サイズを有する物質を提供するように粉砕または微粒子化され得る。
【0069】
本開示の化合物は、錠剤またはカプセルとして経口投与される時、例えば腸溶コーティングでコーティングされ得る。錠剤またはカプセルは、適宜、胃腸管において制御された溶解が可能な、Rohm Pharma Polymersより入手可能なEUDRAGIT(登録商標)フィルムなどの薄膜によりコーティングされ得る。フィルムは、EUDRAGIT(登録商標)E 100(アミノアルキルメタクリレートコポリマー)などのカチオン性ポリマーとして、またはEUDRAGIT(登録商標)L(メタクリル酸コポリマー)およびEUDRAGIT Sなどのアニオン性アクリルポリマーとして入手可能である。
【0070】
EUDRAGIT(登録商標)RL(アミノメタクリレートコポリマー)およびEUDRAGIT(登録商標)RSなどの透過性アクリルポリマーもまた入手可能である。
【0071】
これらのコーティング製剤は、タルク、シリコーン消泡乳濁液、ポリエチレングリコールなどの任意の成分を含む水性分散液として調製され得る。あるいは、コーティング製剤は、有機ポリマー溶液として調製され得る。
【0072】
あるいは、錠剤は、Colorconより入手可能なOPADRY(登録商標)(Surelease(登録商標))コーティングシステムを用いてコーティングされ得る。水性システムは一般に、15% w/wまでのOPADRY(登録商標)を含む。有機溶媒システムは一般に、5% w/wまでのOPADRY(登録商標)を含む。コーティングは公知の技術により、例えば以下により調製され得る;
1. 必要とされる量のOPADRY(登録商標)フィルムコーティングシステムを秤量する段階、
2. 混合容器中へ必要とされる量の水または他の溶媒を秤量する段階、
3. 容器の中央およびできるだけ容器の底に近い混合プロペラで、液体中へ空気を引き込むことなく渦を形成するように溶媒を撹拌する段階、
4. 液体表面上の粉末の浮遊を回避し、着実におよび急速にOPADRY(登録商標)粉末を渦に添加する段階、
5. 必要な場合、渦を維持するために撹拌機の速度を増加させる段階、ならびに
6. すべての粉末成分を添加した後、混合機の速度を減少させ、約45分間混合を継続する段階。
【0073】
コーティングは、錠剤コーティング機械を用いて、公知の技術により適用することができる。
【0074】
適用されるコーティングの厚さは一般に、必要とされる効果に依存して、5〜35ミクロンの範囲、例えば10〜30ミクロン、より具体的には10または20ミクロンである。あるいは、錠剤またはカプセルは、適宜、カプセル中の錠剤、またはカプセル中のカプセル配置のいずれかを提供するように、別のカプセル(好ましくは、Capsugel(登録商標)などのHPMCカプセル)中に充填され得、患者に投与された時に胃腸管において制御された溶解を生じ、それにより腸溶コーティングに類似した効果を提供する。従って、1つの局面において、本開示は、例えば製剤が腸溶コーティングを有する場合、式(I)または(II)の化合物の固体用量製剤を提供する。
【0075】
別の局面において、本開示は、例えばカプセル中の錠剤またはカプセル中のカプセルとして、保護的なカプセルを外層として含む固体用量製剤を提供する。腸溶コーティングは、コーティングされていない製剤上に改善された安定性プロファイルを提供し得る。本開示の化合物はまた、薬学的に許容される担体または賦形剤と共に活性成分の溶液、懸濁液、または分散液などの液体水薬の形態で、獣医学において経口投与され得る。
【0076】
本発明の化合物はまた、例えば、ヒトもしくは獣医学における使用のための従来の坐剤基剤を例えば含有する坐剤として、または、従来の膣坐剤基剤を例えば含有する膣坐剤として製剤化され得る。
【0077】
本開示の化合物はまた、他の治療剤との組み合わせで使用され得る。本開示は従って、さらなる局面において、式(I)もしくは(II)の化合物、またはその薬学的に許容される誘導体をさらなる治療剤と共に含む組み合わせを提供する。組み合わせは、例えば、式(I)または(II)の化合物およびバンコマイシンなどの抗生物質の組み合わせであり得る。組み合わせは、共製剤(co-formulation)として提供されてもよいし、または単に、同時送達もしくは順次送達のために別々の製剤として共に包装されてもよい。
【0078】
本開示の化合物またはその薬学的に許容される誘導体を、同一の疾患状態に対して活性を有する第2の治療剤との組み合わせで使用する時、各化合物の用量は、化合物を単独で使用する時とは異なり得る。適切な用量は、当業者により容易に認識されるであろう。処置における使用に必要とされる本開示の化合物の量は、処置される状態の性質、ならびに患者の年齢および状態と共に変化し、究極的には付き添いの医師または獣医師の判断次第である。本開示の化合物は、例えば、適宜、コルチコステロイドなどの他の活性成分と共に投与のために使用され得る。
【0079】
上記で言及した組み合わせは、薬学的製剤の形態における使用について好都合に呈示され得、従って、上記で定義した組み合わせを薬学的に許容される担体または賦形剤と共に含む薬学的製剤は、本開示のさらなる局面を含む。そのような組み合わせの個々の成分は、順次または同時のいずれかで、別々のまたは組み合わされた薬学的製剤で、任意の好都合な経路により投与され得る。
【0080】
投与が順次型である時、本開示の化合物または第2の治療剤のいずれかが最初に投与され得る。投与が同時である時、同一または異なる薬学的組成物のいずれかで組み合わせが投与され得る。
【0081】
同一の製剤において組み合わせる時、2種類の化合物は、互いにおよび製剤の他の成分と安定かつ適合性である必要があることが認識されるであろう。別々に製剤化する際、それらは任意の好都合な製剤において、そのような化合物について当技術分野で公知であるような様式で好都合に提供され得る。
【0082】
組成物は、0.01〜99%の活性物質を含有し得る。局所的投与のために、例えば、組成物は一般に0.01〜10%、より好ましくは0.01〜1%の活性物質を含有するであろう。
【0083】
典型的に、医師は個々の対象にとって最も適する実際の投薬量を決定するであろう。任意の特定の個体のための特異的用量レベルおよび投薬の頻度は変化し得、かつ、使用される特異的化合物の活性、その化合物の代謝的安定性および作用の長さ、年齢、体重、全体的な健康、性別、食餌、投与の方式および時間、排出の割合、薬物の組み合わせ、特定の状態の重症度、ならびに治療を受ける個体を含む様々な因子に依存するであろう。
【0084】
ヒトへの経口および非経口投与について、剤の1日投薬量レベルは、単一用量または分割用量であり得る。全身投与について、成人の処置のために使用される1日用量は、2〜100mg/kg体重、好ましくは5〜60mg/kg体重の範囲に及ぶと考えられ、例えば、投与の経路および患者の状態に依存して、1〜4回の1日用量で投与され得る。組成物が投薬量単位を含む際、各単位は、100mg〜1gの活性成分を好ましくは含有するであろう。処置の持続時間は、恣意的な日数よりむしろ応答の速度により指示されるであろう。1つの態様において、処置投与計画は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、またはより長い日の間継続される。
【0085】
1つの局面において、本開示は、例えば、特に式(I)または(II)の化合物の経口送達による、C. ディフィシレ感染などの微生物感染、とりわけそれに付随する下痢、または、1つもしくは複数の本明細書で説明される微生物感染の処置のための、式(I)または(II)の化合物の治療における使用を提供する。
【0086】
1つの局面において、(動物対象における)盲腸炎の処置のための式(I)または(II)の化合物の使用が提供される。
【0087】
1つの局面において、式(I)または(II)の化合物は、細菌異常増殖症候群を制御するために使用される。異常増殖症候群(BOS)は、上部GI管および/または下部腸管において、通常は低い細菌コロニー形成が、有意に増加する時に起こる。
【0088】
1つの局面において、IBS(過敏性腸症候群)の予防、処置、または維持のための式(I)または(II)の化合物の使用が提供される。IBSの処置における抗生物質の使用の例については、Rifaximin Treatment for Symptoms of Irritable Bowel Syndrome. Andrea L. Fumi and Katherine Trexler, The Annals of Pharmacotherap, 2008, 4, 408を参照されたい。
【0089】
1つの態様において、式(I)または(II)の化合物は、その再発を予防するための予防的処置を含む潰瘍性大腸炎の処置において有用である。化合物は、ステロイド不応性潰瘍性大腸炎の処置に特に適し得る。例えば、Steroid-refractory ulcerative colitis treated with corticosteroids, metronidazole and vancomycin: a case report J. Miner, M. M Gillan, P. Alex, M Centola, BMC Gastroenterology 2005, 5:3を参照されたい。
【0090】
本開示の化合物は、長期の処置に特に有用であり得る。
【0091】
上述したように、本開示の化合物は、ヒトおよび/または動物の処置において使用され得る。
【0092】
1つの局面において、C. ディフィシレ感染などの微生物感染、とりわけそれに付随する下痢の処置に向けた薬剤の製造のための、式(I)または(II)の化合物が提供される。
【0093】
1つの局面において、例えば本明細書において説明するような感染/疾病または疾患の処置のために、治療的に有効量の式(I)もしくは(II)の化合物、または同一物を含有する薬学的組成物を、それを必要とする患者(ヒトまたは動物)に投与する段階を含む、処置の方法が提供される。
【0094】
本明細書の文脈において、「含む(comprising)」は「含む(including)」と解釈されるべきである。
【0095】
特定の要素を含む本発明の局面はまた、関連性のある要素から「構成される」または「本質的に構成される」代替的な態様に及ぶように意図される。
【実施例】
【0096】
実施例1
デオキシアクタガルジンB(7-アミノ-1-へプチルアミド モノカルボキサミド)
デオキシアクタガルジンB(2.5g)、1,7-ジアミノヘプタン(0.52g)、およびジイソプロピルエチルアミン(0.44ml)を乾燥ジメチルホルムアミド(10ml)に溶解した。乾燥ジメチルホルムアミド(5ml)中のベンゾトリアゾール-1-イル-オキシ-トリス-ピロリジノ-ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)(1.04g)の溶液を2時間に渡って、少しづつ添加した。反応を分析用HPLCにより追跡し(表1参照)、出発物質が消費されるまでPyBOPを添加した(図4および5)。
【0097】
(表1)ランチビオティック(例えば、アクタガルジン、アクタガルジンB、またはデオキシ-アクタガルジンB)およびジアミノアルカン誘導体化生成物の分離のための分析用HPLC条件
カラム: Zorbax 5μ C18(2) 150 x 4.6 mm
移動相A: 20 mMリン酸カリウム緩衝液pH 7.0中、30%アセトニトリル
移動相B: 20 mMリン酸カリウム緩衝液pH 7.0中、65%アセトニトリル
流速: 1ml/分
勾配: 時間0分 100% A 0% B
時間10分 0% A 100% B
時間11分 0% A 100% B
時間11.2分 100% A 0% B
サイクル時間 15分
注入容積: 10μl
検出: 210 nm
【0098】
粗製反応混合物を30%メタノール水溶液中に注ぎ、結果として生じた溶液をVarian Bond Elut C18カラム(30g)上にロードした。カラムをその後、50%、60%、70%、80%、90%メタノール水溶液で順次洗浄し、所望の物質の大部分は70%分画において溶出した(図6)。シリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(溶出液 ジクロロメタン:エタノール:アンモニア 10:8:1)は、210 nmでのU.V.により>90%の純度の物質を与えた(図7)。収量1.4g。質量 計算値 (M+2H)+2 993、実測値 992.91。
【0099】
生成物を500 MHzでの13C NMR分光法(溶媒D3 比7:3におけるアセトニトリル:水)により分析した。ピークの一覧表を表2に提供する。
【0100】
(表2)実施例1についての炭素13ピークの一覧表


【0101】
実施例2
実施例1の化合物のメタンスルホン酸塩の調製
経口または静脈内投薬に適する溶液を取得する目的で、実施例1の化合物のメタンスルホン酸塩が適当であることが見出された。
【0102】
実施例1の化合物を水に懸濁し、透明の溶液を与えるように過剰量のメタンスルホン酸を添加した。製造業者の取扱説明書に従って調整したBond Elut C18カラム上へ溶液をロードし、水でカラムを徹底的に洗浄し、メタノールでメタンスルホン酸塩を溶出することにより、過剰のメタンスルホン酸を除去した。溶媒を蒸発により除去し、メタンスルホン酸塩を白色粉末として残した。
【0103】
実施例1の化合物のメタンスルホン酸塩は、水に約20mg/mlで可溶性であった。
【0104】
実施例3(実施例1の化合物の調製についての代替的な経路)
デオキシアクタガルジンB[7-(t-ブトキシカルボニルアミド)-1-へプチルアミド モノカルボキサミド]
実施例1の化合物について説明した工程を使用し、デオキシアクタガルジンBおよび7-(t-ブトキシカルボニルアミド)-1-アミノヘプタンより調製した。75% (M+2H)+2 1043、実測値 1044.11。4N塩酸水溶液中、室温で3時間の処理により、t-ブトキシカルボネートを加水分解した。混合物を中和してpH7とし、および実施例1について説明したように精製を実施して、表題の化合物を提供した。収率65%。
【0105】
以下の化合物は、実施例1について使用したものに類似した方法により調製した。
【0106】
実施例4
デオキシアクタガルジンB(2-アミノ-1-エチルアミド モノカルボキサミド)
実施例1について上述した工程を使用し、デオキシアクタガルジンおよび1,2-エチレンジアミンより調製した。収率96%。質量 計算値(M+2H)+2 958、実測値959.02。
【0107】
実施例5
デオキシアクタガルジンB(3-アミノ-1-プロピルアミド モノカルボキサミド)
実施例1について上述した工程を使用し、デオキシアクタガルジンおよび1,3-ジアミノプロパンより調製した。収率87%。質量 計算値 (M+2H)+2 965、実測値 965.04。
【0108】
実施例6
デオキシアクタガルジンB(5-アミノ-1-ペンチルアミド モノカルボキサミド)
実施例1について上述した工程を使用し、デオキシアクタガルジンおよび1,5-ジアミノペンタンより調製した。収率83%。質量 計算値 (M+2H)+2 979、実測値 980.06。
【0109】
実施例7
デオキシアクタガルジンB(9-アミノ-1-ノニルアミド モノカルボキサミド)
実施例1について上述した工程を使用し、デオキシアクタガルジンおよび1,9-ジアミノノナンより調製した。収率84%。質量 計算値 (M+2H)+2 1007、実測値 1007.51。
【0110】
実施例8
デオキシアクタガルジンB(12-アミノ-1-ドデシルアミド モノカルボキサミド)
実施例1について上述した工程を使用し、デオキシアクタガルジンおよび1,12-ジアミノドデカンより調製した。収率74%。質量 計算値 (M+2H)+2 1028、実測値 1027.51。
【0111】
実施例9
タイプBランチビオティックの抗菌活性
本発明の化合物は、インビトロおよびインビボで抗菌活性を示す。それらはクロストリジウム・ディフィシレに対して活性を有し、かつデオキシアクタガルジンBと比較して改善された活性を有し得る。
【0112】
クロストリジウム・ディフィシレの感受性試験は、抗生物質の2倍連続希釈液によりWilkins-Chalgren Anaerobe寒天において嫌気性条件の下で行った。バンコマイシンを比較薬物として含めた。C. ディフィシレの培養物を予備還元したBraziers(C.C.E.Y.)寒天プレート上に接種し、37℃で48時間、嫌気性条件の下で増殖させた。48時間培養物の2〜3個のコロニーを、5 mlの予備還元したSchaedlers Broth中に接種し、37℃で24時間嫌気性条件の下で増殖させた。この培養物を0.5 McFarland標準の濁度に達するように予備還元した0.9%NaClで希釈して105 cfu/スポットの最終接種量で、薬物を含有するプレートに適用した。薬物を含まない増殖対照プレートを含めた。プレートを嫌気性チャンバー内で、37℃で48時間インキュベーションし、増殖について検討した。MICは、完全に増殖を阻害するか、または薬物を含まないプレート上での増殖と比較して顕著に増殖の減少を引き起こす薬物の最も低い濃度とした。
【0113】
(表3)デオキシアクタガルジンB(DAB)およびその誘導体についてのMICデータ(μg/ml)(結果の値が低いほど、試験化合物の活性が大きい。)

【0114】
実施例10
腸液におけるタイプBランチビオティックの安定性
本明細書において提供されるランチビオティックベースの化合物は、ナイシンなどのタイプAランチビオティックと比較し、酵素分解に対して増加した安定性を有し得る。特に、これらの化合物は、タイプAランチビオティックと比較し、腸液に対して改善された安定性を有し得る。
【0115】
模擬腸液(SIF)を用いて、腸における酵素消化に対する感受性についてナイシンおよび実施例1の化合物を試験した。SIFは、模擬腸液のための標準的USP溶液に基づいており、その活性をウシ血清アルブミンに対して確認した(Hilger et al, Clin. Exp. Immunol. 2001, 123, 387-94)。化合物をSIF中で37℃でインキュベーションし、その濃度を分析用HPLC(表1に記載の条件を用いた210nmでのUV検出)により定量化した。
【0116】
図1は、ナイシンがSIF中で、約15〜20分の半減期で急速に分解されたことを示す。この媒質におけるナイシンの急速な分解は、慎重な製剤により化合物を分解性酵素から保護することができない限り、結腸感染の処置のためのナイシンの臨床的有用性が非常に限定されているという観察を支持する。
【0117】
図1はまた、実施例1の化合物がSIF中で本質的に安定であり、かつ結腸のC. ディフィシレ感染を処置するのに適当な安定性を有する可能性が高いことを示す。
【0118】
実施例11
C. ディフィシレ関連盲腸炎のハムスターモデルにおけるタイプB抗生物質のインビボ有効性
C. ディフィシレ感染の処置における本発明の化合物のインビボ有効性を、CDADについての標準的な動物モデルである、ハムスターにおけるクリンダマイシン誘導性盲腸炎において評価した。結果を図2に要約した。
【0119】
6匹の動物群に、約107細胞のC. ディフィシレ株4013を投与し、24時間後に10mg/kgのリン酸クリンダマイシンの皮下投与を行った。さらに24時間後に、動物群を媒体、バンコマイシン、または実施例1の化合物のいずれかで、1日3回10mg/kg/日で処置した。
【0120】
前述の手順は試験動物においてC. ディフィシレ感染を誘導し、そのうち媒体のみで処置したすべての動物は3日以内に死亡した。対照的に、バンコマイシンまたはDAB誘導体で処置したすべての動物は、全体の5日の投薬期間の間生存し、これらの化合物の保護的な効果を示した。
【0121】
実施例12
ラットモデルにおけるADME
実施例1の化合物を経口でラットに7日間投与し、メタノールでの抽出により糞から回収した。図3は、ラットに投与された量に対する、回収された物質の量を示す。回収された物質の量は抽出の数に依存する一方で、データは、GI管の通過後に、実施例1の化合物の少なくとも60〜70%を変化せずに回収することができ、かつ実施例1の化合物が結腸において高濃度に達し得ることを示す。
【0122】
実施例13
ラットモデルにおける毒性学
実施例1の化合物を、ラットモデルでの7日間の毒性実験にて試験した。1つの研究は、7日間静脈内に投与される50mg/kg/日の物質を使用した。もう1つの研究は、7日間経口投与される200mg/kg/日の物質を使用した。静脈内及び経口用量の両方とも、予測される臨床的用量レベル(経口投薬により約3〜30mg/kg/日)を有意に超過する。実験の間に有意な毒性学的効果は観察されず、剖検は器官の損傷が無いことを示した。
【0123】
実施例1の化合物は、シリアンハムスターにおいて、明白な毒性の兆候は無く50mg/kg/日で経口で許容された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物、ならびにその薬学的に許容される塩、水和物、および溶媒和物:

式中、
Aは-C1-4アルキルであり;
Bは-C1-4アルキルであり;
Xは-NH(CH2)pNH2であり;
pは整数2〜12であり;
Zは-NR1R2であり;
R1はHまたはC1-4アルキルであり;
R2はH、アミノ酸、またはC1-4アルキルである。
【請求項2】
Aが-CH(CH3)2および-CH2CH(CH3)2より選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
Aが-CH2CH(CH3)2である、請求項2記載の化合物。
【請求項4】
Bが-CH(CH3)2および-CH(CH3)CH2CH3より選択される、請求項1〜3のいずれか一項記載の化合物。
【請求項5】
Bが-CH(CH3)2である、請求項4記載の化合物。
【請求項6】
R2が-C(O)CH(CH3)NH2のLまたはD異性体である、請求項1〜5のいずれか一項記載の化合物。
【請求項7】
Aが-CH2CH(CH3)2であり、およびBが-CH(CH3)2である、請求項1〜5のいずれか一項記載の化合物。
【請求項8】
pが、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12である、請求項1〜7のいずれか一項記載の化合物。
【請求項9】
pが、2、3、7、9、または12である、請求項8記載の化合物。
【請求項10】
pが、7、9、または12である、請求項9記載の化合物。
【請求項11】
ZがNH2である、請求項1〜10のいずれか一項記載の化合物。
【請求項12】
式(II)の請求項1記載の化合物、ならびにその薬学的に許容される塩、水和物、および溶媒和物:


【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項記載の化合物と、薬学的に許容される賦形剤とを含む、薬学的組成物。
【請求項14】
経口投与のための、請求項13記載の組成物。
【請求項15】
非経口投与のための、請求項13記載の組成物。
【請求項16】
処置における使用のための、請求項1〜12のいずれか一項記載の化合物、または請求項13〜15のいずれか一項記載の組成物。
【請求項17】
微生物感染の処置における使用のための、請求項16記載の化合物または組成物。
【請求項18】
微生物感染がC. ディフィシレ(C. difficile)感染である、請求項17記載の化合物または組成物。
【請求項19】
C. ディフィシレ感染が結腸および/または下部腸管においてである、請求項18記載の化合物または組成物。
【請求項20】
C. ディフィシレなどの微生物感染の処置用の薬剤の製造のための、請求項1〜12のいずれか一項記載の化合物または請求項13〜15のいずれか一項記載の組成物の使用。
【請求項21】
治療的に有効量の、請求項1〜12のいずれか一項記載の化合物、または請求項13〜15のいずれか一項記載の組成物を、それを必要とする患者に投与する段階を含む、処置の方法。
【請求項22】
微生物感染の処置のための、請求項21記載の方法。
【請求項23】
微生物感染がC. ディフィシレである、請求項21記載の方法。
【請求項24】
結腸および/または下部腸管におけるC. ディフィシレ感染の処置のための、請求項23記載の方法。
【請求項25】
微生物感染が小腸細菌異常増殖である、請求項22記載の方法。
【請求項26】
潰瘍性大腸炎の処置のための、請求項21記載の方法。
【請求項27】
過敏性腸症候群の処置のための、請求項21記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−515195(P2012−515195A)
【公表日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−545788(P2011−545788)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【国際出願番号】PCT/GB2010/000042
【国際公開番号】WO2010/082018
【国際公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(508215762)ノヴァクタ バイオシステムズ リミティッド (6)
【Fターム(参考)】