説明

デオドラント組成物

【課題】優れた制汗作用及び防臭作用を有し、粉体を凝集させることなく分散性が良好であり、肌に白残りせず、金属容器に対する腐食性を有さないデオドラント組成物の提供。
【解決手段】(A)水溶性のアルミニウム塩と、(B)酸化亜鉛と、(C)HLBが5以上10未満である非イオン性界面活性剤と、を含有し、前記(B)成分の含有量が1質量%〜4質量%であり、前記(B)成分の含有量と、前記(C)成分の含有量との質量比が、(C)/(B)=3〜15であるデオドラント組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デオドラント組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のエチケット志向の高まりをうけ、体臭に対するデオドラントニーズは高まっている。一般的に体臭物質としては、イソ吉草酸等の低級脂肪酸類や、アンモニア、ブチルアミン等の含窒素化合物などが知られている。
これらの体臭の原因である低級脂肪酸に対して、酸化亜鉛は、高い防臭作用があり、またクロルヒドロキシアルミニウム等のアルミニウム化合物は、制汗作用及び抗菌作用を有することが知られている。
【0003】
特許文献1には、液状油分と、アルミニウム化合物又はジルコルニウム化合物からなる粉末状制汗成分とを含有することで、使用感触及び粉末の付着性がよく、べたつき感がなく、使用後の白さが目立たない制汗エアゾール化粧料が提案されている。
【0004】
特許文献2には、塩化デカリニウムと、クロロヒドロキシアルミニウム及び/又は酸化亜鉛を含有することにより、汗等による体臭に対する優れた防臭・消臭効果を有するとともに、その効果を長時間持続することのできる体臭防臭化粧料が提案されている。
【0005】
しかし、このような防臭作用を有するクロロヒドロキシアルミニウム等のアルミニウム化合物や、酸化亜鉛は、エアゾール容器などに使用される鉄、アルミニウム、ブリキ等の金属に対して腐食性を有するため問題であった。特に、酸化亜鉛は高い腐食性を有する点で問題であった。
【0006】
このような腐食を防止するため、一般にエアゾール容器において、内溶液と接する金属地部を樹脂でコートすることにより、容器の金属と、内溶液との接触を防いでいる。
しかし、親水性の高い活性剤は、コート樹脂を劣化させ、内溶液が浸透あるいは割れ目から進入し、金属地部と接触してしまうため、腐食防止作用が十分でない点で問題であった。
【0007】
また、酸化亜鉛は、凝集性が高く、粉体の分散性や肌に白残りする点でも問題であった。
これに対し、特許文献3では、液化石油ガスと無機粉末を含有し、ソルビタン脂肪酸エステル及び/又はポリオキシアルキレンアルキルエーテルを無機粉末に対して一定の割合で配合することで、粉末の分散性及び使用性を向上させた粉末含有エアゾール組成物が提案されている。
しかし、前記粉末含有エアゾール組成物の分散性は十分なものではなく、また金属容器への腐食防止作用を有さない点で問題であった。
【0008】
したがって、優れた制汗作用及び防臭作用を有し、粉体を凝集させることなく分散性が良好であり、肌に白残りせず、金属容器に対する腐食性を有さないデオドラント組成物の提供が望まれているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−114661号公報
【特許文献2】特許第4281231号公報
【特許文献3】特開平6−48919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、優れた制汗作用及び防臭作用を有し、粉体を凝集させることなく分散性が良好であり、肌に白残りせず、金属容器に対する腐食性を有さないデオドラント組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、以下のような知見を得た。即ち、(A)水溶性のアルミニウム塩と、(B)酸化亜鉛と、(C)HLBが5以上10未満である非イオン性界面活性剤と、を含有し、前記(B)成分の含有量が1質量%〜4質量%であり、前記(B)成分の含有量と、前記(C)成分の含有量との質量比が、(C)/(B)=3〜15であるデオドラント組成物は、優れた制汗作用及び防臭作用を有し、粉体を凝集させることなく分散性が良好であり、肌に白残りせず、金属容器に対する腐食性を有さないことを知見し、本発明の完成に至った。
【0012】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> (A)水溶性のアルミニウム塩と、(B)酸化亜鉛と、(C)HLBが5以上10未満である非イオン性界面活性剤と、を含有し、前記(B)成分の含有量が1質量%〜4質量%であり、前記(B)成分の含有量と、前記(C)成分の含有量との質量比が、(C)/(B)=3〜15であることを特徴とするデオドラント組成物である。
<2> (A)成分の含有量が、10質量%〜25質量%である前記<1>に記載のデオドラント組成物である。
<3> (B)成分が、水溶性高分子化合物に分散されてなる複合粉体及び無水ケイ酸に担持されてなる複合粉体の少なくともいずれかとして用いられる前記<1>から<2>のいずれかに記載のデオドラント組成物である。
<4> (C)成分が、エステル構造を有する非イオン性界面活性剤及びポリエーテル変性シリコーンの少なくともいずれかである前記<1>から<3>のいずれかに記載のデオドラント組成物である。
<5> (C)成分が、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、側鎖型ポリエーテル変性シリコーン、及びABN型ポリエーテル変性シリコーンから選択される少なくともいずれかである前記<1>から<4>のいずれかに記載のデオドラント組成物である。
<6> (C)成分の含有量が、10質量%〜20質量%である前記<1>から<5>のいずれかに記載のデオドラント組成物である。
<7> (D)無水ケイ酸、マグネシアシリカ、及びタルクの少なくともいずれかである粉体を更に含有する前記<1>から<6>のいずれかに記載のデオドラント組成物である。
<8> (D)成分の含有量が、1質量%〜10質量%である前記<7>に記載のデオドラント組成物である。
<9> 前記<1>から<8>のいずれかに記載のデオドラント組成物と、噴射剤とを含有し、エアゾール容器に収容されることを特徴とするエアゾール型デオドラントスプレー剤である。
<10> エアゾール容器が、アルミニウム及びブリキの少なくともいずれかからなる前記<9>に記載のエアゾール型デオドラントスプレー剤である。
<11> 噴射剤が、ジメチルエーテル、プロパン、イソブタン、ノルマルブタン、イソペンタン、液化石油ガス(LPG)、液化ガス、炭酸ガス、及び窒素ガスの少なくともいずれかである前記<9>から<10>のいずれかに記載のエアゾール型デオドラントスプレー剤である。
<12> デオドラント組成物の含有量と、噴射剤の含有量との質量比が、デオドラント組成物/噴射剤=20/20〜1/99である前記<9>から<11>のいずれかに記載のエアゾール型デオドラントスプレー剤である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、優れた制汗作用及び防臭作用を有し、粉体を凝集させることなく分散性が良好であり、肌に白残りせず、金属容器に対する腐食性を有さないデオドラント組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(デオドラント組成物)
本発明のデオドラント組成物は、少なくとも(A)水溶性のアルミニウム塩と、(B)酸化亜鉛と、(C)非イオン性界面活性剤と、を含有し、好ましくは、(D)粉体を含有し、必要に応じて、更にその他の成分を含有する。
なお、本発明のデオドラント組成物がエアゾール型デオドラントスプレー剤として用いられる場合、前記デオドラント組成物の組成は、噴射剤を含まない該デオドラント組成物の原液中の組成とする。
【0015】
<(A)成分:水溶性のアルミニウム塩>
前記(A)成分である水溶性のアルミニウム塩は、制汗作用を付与する目的で配合される。
本発明において、水溶性とは、アルミニウム塩が水に溶けて水溶液を作る性質をいう。
前記(A)成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、クロルヒドロキシアルミニウム、ブロモヒドロキシアルミニウム、クロルヒドロキシアルミニウム/ジルコニウム、硫酸アルミニウムカリウムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、前記(A)成分は、クロルヒドロキシアルミニウムが、防臭作用が高い点で好ましい。
【0016】
前記デオドラント組成物における前記(A)成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10質量%〜25質量%が好ましく、腐食性の点から18質量%〜24質量%がより好ましい。前記(A)成分が、10質量%未満であると、防臭作用が低下することがあり、25質量%を超えると、腐食が発生することがある。
【0017】
<(B)成分:酸化亜鉛>
前記(B)成分である酸化亜鉛は、防臭作用を付与する目的で用いられる。前記(B)成分は、前記(A)成分と組み合わせることで、より高い防臭作用を発揮する。
前記(B)成分の平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01μm〜1μmが好ましく、0.1μm〜0.6μmがより好ましい。前記平均粒径が、0.01μm未満であると、防臭作用が低下することがあり、1μmを超えても、比表面積が小さくなり、防臭作用が低下することがある。
【0018】
前記デオドラント組成物における前記(B)成分の含有量としては、1質量〜4質量%であるが、防臭作用及び腐食性の点で、2質量%〜3質量%が好ましい。前記(B)成分の含有量が、1質量%未満であると、防臭作用が低下することかあり、4質量%を超えると、腐食や肌への白残りが発生することがある。
【0019】
<<複合粉体>>
前記(B)成分の形態としては、前記(B)成分のみの単一の成分であってもよく、前記(B)成分と、他の成分とからなる複合粉体の形態であってもよく、これらの形態を併用してもよい。
前記複合粉体を形成する他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水溶性高分子化合物などが挙げられる。また、前記複合粉体は、更に液状油を含有することが好ましい。
【0020】
前記複合粉体は、被保持物が外殻基剤に内包されるタイプ(以下、「内包タイプ」と称することがある。)、被保持物が微粒子として外殻基剤全体に分散しているタイプ(以下、「分散タイプ」と称することがある。)、外殻基剤の表面に被保持物が担持しているタイプ(以下、「担持タイプ」と称することがある。)などが挙げられる。これらの中でも、前記複合粉体は、分散タイプ及び担持タイプの少なくともいずれかが好ましく、前記(B)成分が水溶性高分子化合物に分散されてなる複合粉体及び前記(B)成分が無水ケイ酸に担持されてなる複合粉体の少なくともいずれかがより好ましい。
【0021】
前記複合粉体が内包タイプであると、押圧や摩擦等の物理的な作用が加えられない限り崩壊せず、更に一旦崩壊すると内包物である前記(B)成分の全量が放出されるために、前記(B)成分を複合粉体内に分散させたとしても放出時に凝集するため、前記(B)成分を徐放させる機構には不向きな点がある。
これに対して前記複合粉体が分散タイプであると、水分の接触により部分的に崩壊し、該崩壊部分に分散している被保持物である前記(B)成分のみが放出されるため、前記(B)成分を徐放させる機構として優れた構造を有しており、防臭作用及びその持続性が高い点で好ましい。
また、前記複合粉体が担持タイプであると、外殻基剤の表面に前記(B)成分の微粒子が配されているため防臭作用が高く、更に前記(B)成分が凝集しにくいため分散性が良好である点で好ましい。
【0022】
前記(B)成分が、前記水溶性高分子化合物に分散している状態は、例えば、SEM−EDS分析法などにより確認することができる。
前記SEM−EDS分析法に用いる測定機器としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、走査電子顕微鏡(日立 S−2380N)、X線分析装置(HORIBA EMAX−7000)などが挙げられる。
【0023】
前記複合粉体の平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10μm〜75μmが好ましい。前記複合粉体の平均粒径が、10μm未満であると、前記(B)成分が複合粉体内で凝集して防臭作用が低下することがあり、75μmを超えると、粉体の重量が大きくなり分散性が悪くなることがある。また、肌あたりがよく、エアゾール型デオドラントスプレー剤に配合した場合の目詰まり抑制の点から、前記複合粉体の平均粒径は、50μm以下がより好ましい。
なお、前記(B)成分の平均粒径は、複合粉体の形態であっても前記(B)成分単体の場合と同様であることが好ましい。
【0024】
前記複合粉体の平均粒径は、メディアン径(積算粒子量が50体積%になる粒子径)であり、例えば、島津レーザ回折式粒度分布測定装置SALD−2200等の測定機器で測定することができる。
【0025】
前記デオドラント組成物における前記複合粉体の含有量としては、前記デオドラント組成物における前記(B)成分の含有量が1質量%〜4質量%の範囲となる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0026】
−(B)成分−
前記複合粉体における前記(B)成分の含有量としては、前記デオドラント組成物における前記(B)成分の含有量が1質量%〜4質量%の範囲となる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0027】
−水溶性高分子化合物−
前記水溶性高分子化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、天然デンプン又は変性デンプン、アラビアガム、グリコーゲン、キサンタンガム、グアガム、ショ糖、ラクトース、トレハロース、グンチアノース等のオリゴ糖類、デキストリン、植物ゴム、ペクチン、アルギネートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、前記水溶性高分子化合物は、前記(B)成分の分散性を高め、疎水基を有し、界面活性能を有する水溶性高分子化合物が好ましく、オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンエステルナトリウムがより好ましい。
【0028】
前記デオドラント組成物において、前記(B)成分を、前記水溶性高分子化合物との複合粉体の形態で使用することにより、前記複合粉体が汗等の水分と接触することにより、前記複合粉体が崩壊し、該複合粉体に分散又は内包されている前記(B)成分が放出され、防臭作用が発揮される点で好ましい。
【0029】
前記複合粉体における前記水溶性高分子化合物の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、27質量%〜70質量%が好ましく、30質量%〜70質量%がより好ましく、30質量%〜50質量%が更に好ましい。前記複合粉体における前記水溶性高分子化合物の含有量が、27質量%未満であると、良好な複合粉体を得ることができないことがあり、70質量%を超えると、前記(B)成分の放出性が低下することがある。
また、前記デオドラント組成物における前記水溶性高分子化合物の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5質量%〜5質量%が好ましい。
【0030】
−液状油−
前記液状油とは、常温(15℃〜25℃)で液状の油をいう。
前記液状油としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、流動パラフィン、イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ブチル、オレイン酸エチル、メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、前記(B)成分の分散性の点から、ミリスチン酸イソプロピル、イソオクタン酸セチルが好ましい。
【0031】
前記複合粉体に前記液状油を含有させることにより、前記(B)成分を前記水溶性高分子化合物に均一に分散させることができ、これにより防臭作用及びその持続性が向上する点で好ましい。
【0032】
前記(B)成分の含有量と、前記液状油の含有量との質量比((B)成分/液状油)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、防臭作用及びその持続性の点で、30/70〜70/30が好ましく、50/50〜60/40がより好ましい。
その機構は明確ではないが、前記(B)成分に対する液状油の割合が多すぎると、前記複合粉体が崩壊しすぎて前記(B)成分が凝集するおそれがある。一方、前記(B)成分に対する液状油の割合が少なすぎると、前記複合粉体が崩壊しにくく、前記(B)成分が放出され難くなるものと推定される。また、液状油の割合が多すぎると、べたついて使用感が低下することがある。
【0033】
前記複合粉体における前記液状油の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、8質量%〜60質量%が好ましく、15質量%〜50質量%がより好ましく、20質量%〜30質量%が更に好ましい。前記複合粉体における前記液状油の含有量が、8質量%未満であると、前記(B)成分が凝集しやすく、防臭作用が低下することがあり、60質量%を超えると、良好な複合粉体を得ることができないことがある。
また、前記デオドラント組成物における前記液状油の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1質量%〜5質量%が好ましい。
【0034】
−製造方法−
前記複合粉体の製造方法としては、特に制限はなく、従来のマイクロカプセル化手法の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、相分離法、オリフィス法、液中硬化法、噴霧乾燥法、凍結乾燥法などが挙げられる。これらの中でも、噴霧乾燥法が好ましい。
【0035】
前記複合粉体が分散タイプである場合、その製造方法の具体例としては、前記水溶性高分子化合物に、該水溶性高分子化合物の質量の2倍量〜5倍量の水を添加した水溶性高分子化合物含有水溶液を調製し、該水溶性高分子化合物含有水溶液を攪拌しながら前記(B)成分を添加して分散させ、必要に応じて乳化させ、得られた液を噴霧乾燥(スプレードライ)することにより、複合粉体を得ることができる。分散に際しては、ホモミキサーや高圧乳化機等の任意の設備を用いることができる。更に、得られた複合粉体の粒径を均一にするために、ふるいを通過させることが好ましい。
【0036】
前記複合粉体に前記液状油を含有させる場合は、前記(B)成分を液状油に分散させた後、前記水溶性高分子化合物含有水溶液に添加し、同様に分散又は乳化させ、得られた液を噴霧乾燥する方法が好ましい。
【0037】
水溶性高分子化合物含有水溶液の温度としては、水溶性高分子が溶解できる温度であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、より高濃度に水溶性高分子化合物を溶解させ、かつ後の乾燥工程で乾燥効率を上げるために、50℃〜90℃が好ましく、この温度範囲を前記(B)成分及び液状油の添加後も保つことがより好ましい。
ここで、予め前記(B)成分を液状油に分散させた分散液を用いることで、複合粉体中の前記(B)成分を水溶性高分子化合物に均一に分散させることができ、結果として、防臭作用及びその持続性の向上を図ることができる。
【0038】
なお、前記複合粉体としては、市販品を用いることもでき、その具体例としては、酸化亜鉛複合粉体1(349896/ENC/200/349897、シムライズ株式会社製)等の分散タイプの複合粉体などが挙げられる。
【0039】
また、前記複合粉体が担持タイプである場合、その製造方法の具体例としては、無水ケイ酸に硫酸亜鉛水溶液を浸み込ませ均一にした後、乾燥させ、これに水酸化ナトリウム水溶液を添加して攪拌し、水洗いした後、乾燥させる方法などが挙げられる。
【0040】
<(C)成分:非イオン性界面活性剤>
前記(C)成分である非イオン性界面活性剤は、HLBが5以上10未満の非イオン性界面活性剤である。前記デオドラント組成物が前記(C)成分を含有すると、前記(B)成分の分散性や金属容器に対する腐食性を改善できる点で有利である。
前記(C)成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、直鎖又は分岐のアルキル基(炭素数12〜22)を有するポリオキシエチレン(POE)アルキルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸(炭素数12〜22)エステル、ソルビタン脂肪酸(炭素数12〜22)エステル、脂肪酸(炭素数12〜22)POE硬化ヒマシ油、脂肪酸(炭素数12〜22)POEグリセリル、ポリエーテル変性シリコーンなどが挙げられる。前記ポリエーテル変性シリコーンは、親水性及び親油性を調整できる界面活性能を有し、非イオン性界面活性剤の一種である。
これらの非イオン性界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、腐食性、粉体の分散性の点から、エステル構造を有する非イオン性界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーンが好ましく、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエーテル変性シリコーンがより好ましく、肌への白残りの点から、ポリエーテル変性シリコーンが特に好ましい。
【0041】
<<エステル構造を有する非イオン性界面活性剤>>
前記エステル構造を有する非イオン性界面活性剤としては、特に制限はなく、公知のエステル構造を有する非イオン性界面活性剤の中から、目的に応じて適宜選択することができ、市販品の具体例としては、ジイソステアリン酸ポリグリセリル−10(商品名:EMALEX DISG−6、HLB8)、セスキイソステアリン酸ソルビタン(商品名:EMALEX DISG−6、HLB7)、トリイソステアリン酸POE硬化ヒマシ油(商品名:EMALEX RWIS−315 HLB5)、ステアリン酸ソルビタン(商品名:EMALEX SPE−100S、HLB9)、POE(2)セチルエーテル(商品名:EMALEX 102、HLB5)、POE(5)イソステアリルエーテル(商品名:EMALEX 1805、HLB8)、POE(10)デシルテトラデシルエーテル(商品名:EMALEX 2410、HLB9)(以上、日本エマルジョン株式会社製)などが挙げられる。
なお、前記エステル構造を有する非イオン性界面活性剤の例において、括弧内の数値はPOEの重合度を表す。
【0042】
<<ポリエーテル変性シリコーン>>
前記ポリエーテル変性シリコーンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、直鎖共重合ABN型、側鎖型(ペンダント型)、両末端型、側鎖両末端型のポリエーテル変性シリコーンなどが挙げられる。これらの中でも、直鎖共重合ABN型、側鎖型(ペンダント型)が好ましい。
【0043】
−直鎖共重合ABN型−
前記ABN型とは、ポリエーテルとシリコーンの直鎖状のブロック共重合体である。
前記ABN型のポリエーテル変性シリコーンとしては、特に制限はなく、公知のABN型のポリエーテル変性シリコーンの中から、目的に応じて適宜選択することができ、市販品の具体例としては、ポリシリコーン−13(商品名:FZ2222、HLB6、東レ・ダウコーニング株式会社製)などが挙げられる。
【0044】
−側鎖型(ペンダント型)−
前記側鎖型(ペンダント型)としては、例えば、下記一般式(1)で表されるポリオキシアルキレン基を有するオルガノポリシロキサンなどが挙げられる。
【化1】

前記一般式(1)において、Rは(CH(OC(OCORを表し、Rは−H又は−CHを表し、nは0〜3を表し、aは0〜50の整数を表し、bは0〜100の整数を表し、lは1〜1,000の整数を表し、mは1〜50の整数を表す。ただし、a+b≧1である。
【0045】
前記側鎖型のポリエーテル変性シリコーンとしては、特に制限はなく、公知の側鎖型のポリエーテル変性シリコーンの中から、目的に応じて適宜選択することができ、市販品の具体例としては、ポリエチレングリコール(PEG)(8)ジメチコン(商品名:SS−2805、HLB5)、PEG(9)ジメチコン(商品名:KF−6013、HLB10)、PEG(12)ジメチコン(商品名:SH3775M、HLB8/SH3772M、HLB5/SH3773M、HLB8)、PEG(32)メチルエーテルジメチコン(商品名:KF−6004、HLB9)、PEG/PPG(20/22)ブチルエーテルジメチコン(商品名:KF−6012、HLB7)、PEG/PPG(20/20)ジメチコン(商品名:SH3749、HLB8)(以上、東レ・ダウコーニング株式会社製)などが挙げられる。
なお、前記ポリエーテル変性シリコーンの例において、括弧内の数値はPEG又はPPG(ポリプロピレングリコール)の重合度を表す。
【0046】
これらのポリエーテル変性シリコーンの中でも、分散性や肌への白残りのなさの点から、ポリシリコーン−13、PEG(12)ジメチコン、PEG/PPG(20/20)ジメチコン、PEG(32)メチルエーテルジメチコン、PEG/PPG(20/22)ブチルエーテルジメチコンが好ましく、ポリシリコーン−13、PEG(12)ジメチコン、PEG/PPG(20/20)ジメチコンが特に好ましい。
【0047】
前記(C)成分のHLBは、5以上10未満であるが、粉体の分散性、腐食性の点及び肌への白残りのなさの点から、5〜8がより好ましい。前記HLBが5未満であると、酸化亜鉛の粉体表面は親水性であるため、粉体の分散性が悪くなることがあり、前記HLBが10以上であると、エアゾール容器などにコートされた樹脂の親水性基に作用し、腐食が発生することがある。
【0048】
前記非イオン性界面活性剤が、エーテル型、エステル型、脂肪酸POE硬化ヒマシ油、脂肪酸POEグリセリルなどである場合、前記HLBは、有機概念図におけるIOB×10で示される。前記有機概念図におけるIOBとは、前記有機概念図における有機性値(OV)に対する無機性値(IV)の比、即ち「無機性値(IV)/有機性値(OV)」をいう。前記有機概念図とは、藤田穆により提案されたものであり、その詳細は、“Pharmaceutical Bulletin”, ,1954, vol.2, 2, pp.163−173、「化学の領域」、 1957、 vol.11, 10, pp.719−725、「フレグランスジャーナル」、 1981、 vol.50, pp.79−82などで説明されている。即ち、全ての有機化合物の根源をメタン(CH)とし、他の化合物は全てメタンの誘導体とみなして、その炭素数、置換基、変態部、環などにそれぞれ一定の数値を設定し、そのスコアを加算して有機性値及び無機性値を求める。この値を、有機性値をX軸、無機性値をY軸にとった図上にプロットしていくものである。この有機概念図は、「有機概念図−基礎と応用−」(甲田善生著、三共出版、1984)などにも示されている。
【0049】
ポリエーテル変性シリコーンのHLBについては、親水親油バランス(Hydrophile−Lipophile−Balance)を意味し、下記のGriffinの式で表される。
【数1】

【0050】
前記デオドラント組成物における前記(C)成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10質量%〜20質量%が好ましく、分散性及び腐食性の点から13質量%〜16質量%がより好ましい。前記(C)成分が、10質量%未満であると、粉体の分散性や肌への白残りが悪くなることがあり、20質量%を超えると、粉体の分散性が悪くなることや、腐食が発生することがある。
【0051】
前記(B)成分の含有量と、前記(C)成分の含有量との質量比は、(C)/(B)=3〜15であるが、粉体の分散性の点から、4〜8がより好ましい。前記質量比((C)/(B))が、3未満であると、粉体の分散性が悪くなることがあり、15を超えると、防臭作用が低下することがある。なお、前記質量比は、小数点以下第1位を四捨五入した値を示す。
【0052】
<(D)成分:粉体>
前記(D)成分である粉体は、無水ケイ酸、マグネシアシリカ、及びタルクの少なくともいずれかである。これらの中でも、マグネシアシリカが好ましい。前記デオドラント組成物が前記(D)成分を含有すると、更に防臭作用が向上する点で有利である。
前記(D)成分は、粉体表面が親水性処理されているものが、汗を吸収する点で好ましく、該親水性処理としては、例えば、セルロース処理、寒天処理、デオキシリボ核酸処理、レシチン処理、ポリアクリル酸処理、シリカ処理、アルミナ処理、ジルコニア処理などが挙げられ、これらの1種以上を組み合わせて使用することが可能である。
前記デオドラント組成物に、前記(D)成分を含有すると、防臭作用が向上する点で好ましい。また、前記複合粉体の流動性(ハンドリング)及び使用感を向上させることもできる。
【0053】
前記デオドラント組成物における前記(D)成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1質量%〜10質量%が好ましく、防臭作用の点から3質量%〜8質量%が更に好ましい。前記(D)成分が、1質量%未満であると、防臭作用が低下することがあり、10質量%を超えると、粉体の分散性が低下することや、肌への白残りが発生することがあり、更に不経済である。
なお、前記(B)成分が無水ケイ酸に担持されてなる複合粉体である場合、前記(D)成分の含有量は、前記複合粉体における無水ケイ酸の含有量を除いた質量とする。
【0054】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、特に制限はなく、本発明の作用を損なわない範囲で、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、油脂類、ワックス類、シリコーン類、炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、合成エステル油、前記(C)成分を除く界面活性剤、高分子化合物、酸化防止剤、色素、乳化安定剤、pH調整剤、収斂剤、防腐剤、紫外線吸収剤、キレート剤、保湿剤、増粘剤、清涼剤、抗炎症剤、殺菌剤、アミノ酸、ビタミン剤、各種植物抽出エキスなどが挙げられる。
【0055】
前記酸化防止剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アスコルビン酸、アスコルビン酸のアルカリ金属塩、アスコルビン酸の脂肪酸エステル、没食子酸のエステル類、エリソルビン酸、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、トコフェロール、トコトリエノールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0056】
前記清涼剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1−メントール、1−メンチルグリセリルエーテル、1−メンチルラクテートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0057】
前記殺菌剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、トリクロロカルバニリド、塩酸クロルヘキシジン、ピロクトンオラミン、クララエキスなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0058】
前記アミノ酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、システイン、シスチン、メチオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、フェニルアラニン、チロシン、ヒスチジン、トリプトファン、プロリン、オキシプリンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0059】
前記ビタミン剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、水溶性のビタミン剤が好ましく、該水溶性のビタミン剤としては、例えば、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、パントテン酸、ビタミンH、葉酸、ビタミンB12、コリン、イノシット、ビタミンL1、ビタミンL2、ビタミンB13、ビタミンBT、リポ酸、ビタミンB14、ビタミンB15、ビタミンBx、ビタミンPなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0060】
前記デオドラント組成物における前記その他の成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
なお、前記デオドラント組成物は、組成物の経時安定性の点から、実質的に水無配合で、水フリーのものが好ましく、原料に含まれる水分によっても、デオドラント組成物中の水分量を5質量%以下にすることが好ましい。
【0061】
<使用>
前記デオドラント組成物は、1種単独で使用されてもよいし、他の成分を有効成分とするデオドラント組成物と併用されてもよい。また、前記デオドラント組成物は、他の成分を有効成分とするデオドラント組成物中に、配合された状態で使用されてもよい。
【0062】
<剤型>
本発明のデオドラント組成物の剤型としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、固形剤、半固形剤、ジェル剤、液剤などが挙げられる。これらの中でも、前記デオドラント組成物の剤型は、デオドラントスプレー剤が好ましく、エアゾール型デオドラントスプレー剤がより好ましい。
前記各種剤型の製造方法としては、特に制限はなく、常法の中から適宜選択することができる。
【0063】
前記エアゾール型デオドラントスプレーの製造方法としても、特に制限はなく、常法の中から適宜選択することができ、例えば、前記デオドラント組成物を原液とし、噴射剤とともにエアゾール缶に充填する方法などが挙げられる。
前記噴射剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジメチルエーテル、プロパン、イソブタン、ノルマルブタン、イソペンタン、ネオペンタン等の液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル(DME)等の液化ガス、炭酸ガス、窒素ガスなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記デオドラント組成物(原液)の含有量と、噴射剤の含有量との質量比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、デオドラント組成物(原液)/噴射剤=20/80〜1/99が好ましい。
【0064】
<製造方法>
本発明のデオドラント組成物の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記(A)成分と、前記(B)成分とを容器に入れ、よく振り混ぜて均一にし、粉体混合物を調製し、次に、前記(C)成分、更に必要に応じて、前記(D)成分及び前記その他の成分を均一に混合し、液体混合物とし、該液体混合物に前記粉体混合物を均一に混合する方法などが挙げられる。
【0065】
<容器>
前記デオドラント組成物を収容する容器としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、エアゾール容器が好ましい。
前記エアゾール容器は、エアゾール缶、バルブ、塗膜剤からなる容器である。
前記エアゾール缶の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルミニウム、ブリキなどが挙げられる。
前記バルブの材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルミニウム、ブリキなどが挙げられる。
前記塗膜剤とは、前記エアゾール缶やバルブの、前記エアゾール組成物と接する側に腐食防止のために塗膜するものである。前記塗膜剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、汎用で安価なエポキシフェノール樹脂などが挙げられる。
通常、酸化亜鉛を含有する組成物金属容器、特にブリキからなる容器に収容すると、酸化亜鉛が該容器の金属を腐食させてしまうが、本発明のデオドラント組成物は、腐食性を有さないため、安価なブリキからなる容器に収容可能であり、安価にエアゾール型デオドラントスプレーを製造できる点で有利である。
【0066】
<用途>
本発明のデオドラント組成物は、優れた制汗作用及び防臭作用を有し、粉体を凝集させることなく分散性が良好であり、金属容器に対する腐食性を有さないため、化粧料、医薬品、医薬部外品などに適用することができ、腋等の身体用デオドラント組成物として好適に利用可能である。具体的には、デオドラントスプレー、デオドラントミスト、デオドラントシート、デオドラントスティック、デオドラントロールオン、デオドラント用ファンデーションなどに好適に利用可能である。
【実施例】
【0067】
以下に本発明の実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例及び比較例に何ら限定されるものではない。
【0068】
(実施例1〜85、比較例1〜9)
表1〜15に示す組成及び配合量の実施例及び比較例のデオドラント組成物を下記製造方法に従い製造し、得られたデオドラント組成物について、下記に示す方法により、防臭作用の評価、腐食性の評価、粉体分散性の評価、及び肌への白残りのなさの評価を行った。ただし、表1〜15に示す配合量は、特に明記がない限り純分換算したデオドラント組成物の質量%を示す。
【0069】
ここで、(B)成分として用いた酸化亜鉛1は、平均粒径0.6μmの酸化亜鉛(境化学工業株式会社)である。
酸化亜鉛2は、酸化亜鉛複合粉体(シムライズ株式会社製)であり、オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンエステルナトリウム(水溶性高分子成分)を主成分とする外殻基剤で酸化亜鉛を分散させた固体粒子である。なお、酸化亜鉛複合粉体1における酸化亜鉛の含有量は34.5質量%である。
酸化亜鉛3は、酸化亜鉛複合粉体であり、AGCエスアイテック株式会社にて製造したものであり、無水ケイ酸の表面に酸化亜鉛を担持させた固体粒子である。なお、酸化亜鉛複合粉体2における酸化亜鉛((B)成分)の含有量は、29.9質量%である。
【0070】
<製造方法>
−実施例1〜85、比較例8及び9−
表1〜15に示す粉体状の(A)成分及び(B)成分を樹脂製容器に入れ、よく振り混ぜて均一にし、粉体混合物とした。次に、表1〜15に示す原液の組成において、前記粉体混合物の調製に用いた組成物を除いた残りの組成物を均一に混合し、液体混合物とし、これに粉体混合物を均一に混合したものを原液とした。次に、この原液をアルミニウム製のエアゾール缶に入れ、バルブ(ストレートシャンクアルミバルブ又はストレートシャンクブリキバルブ)でクリンチした。その後、原液の含有量と噴射剤の含有量との質量比(原液/噴射剤)が7/93となるように、噴射剤を充填した。
なお、前記エアゾール缶及び前記バルブは、原液と接触する面にエポキシフェノールでコートされたものである。表1〜15において、アルミニウム製のエアゾール缶及びストレートシャンクアルミバルブ(共に、エポキシフェノールでコートしたもの)を用いたものは「A」、アルミニウム製のエアゾール缶及びストレートシャンクブリキバルブ(共に、エポキシフェノールでコートしたもの)を用いたものは「B」で示した。
【0071】
粉体分散性の評価に用いるデオドラント組成物は、前記同様に原液及び噴射剤を調製した後、アルミニウム製のエアゾール缶に代えて耐圧ガラス製エアゾール試験瓶に充填したものを用いた。
【0072】
−比較例1−
実施例1において、(A)成分を配合しなかったこと以外は、実施例1と同様にして比較例1のデオドラント組成物を調製した。
【0073】
−比較例2−
実施例1において、(B)成分を配合しなかったこと以外は、実施例と同様にして比較例2のデオドラント組成物を調製した。
【0074】
−比較例3−
実施例1において、(C)成分を配合しなかったこと以外は、実施例1と同様にして比較例3のデオドラント組成物を調製した。
【0075】
−比較例4〜7−
実施例1において、(C)成分を、表15に示す(C’)成分に代えたこと以外は、実施例1と同様にして比較例4〜7のデオドラント組成物を調製した。
【0076】
<防臭作用の評価>
被験者の男女20名に対し、各々一方の腋窩部には何も処理せず(以下、「無噴霧側」と称することがある。)、他方の腋窩部に実施例1〜85及び比較例1〜9のデオドラント組成物をそれぞれ50mg噴霧した(以下、「噴霧側」と称することがある。)。その後、噴霧開始から8時間後に、各被験者の両方の腋窩部全体をそれぞれ乾いたガーゼで10往復拭き取り、腋窩部の防臭作用について、下記評点に基づき採点し、被験者20名の平均値を算出し、下記評価基準に基づいて評価した。結果を表1〜15にそれぞれ示す。
−評点−
2点:噴霧側は、無噴霧側よりも防臭作用が非常に高いと感じる
1点:噴霧側は、無噴霧側よりも防臭作用がやや高いと感じる
0点:噴霧側は、無噴霧側と同等
−評価基準−
◎ :20人の被験者の平均点が1.8点以上。
◎〜○:20人の被験者の平均点が1.5点以上1.8点未満。
○ :20人の被験者の平均点が1.0点以上1.5点未満。
△ :20人の被験者の平均点が0.5点以上1.0点未満。
× :20人の被験者の平均点が0.5点未満。
なお、上記評価基準において、「防臭作用」とは、汗の臭いを感じないことを意味する。
【0077】
<腐食性の評価>
腐食性の評価は、実施例1〜85及び比較例1〜9の原液のみを用いて行った。原液50gを100mL容ガラス瓶に入れ、該原液中に、表1〜15に示すようにブリキ製バルブ及びアルミ製のバルブのいずれかを浸漬した後、50℃で保存した。保存開始後、1週間、2週間、3週間、及び4週間経過時点でバルブを原液から取り出し、外観を目視することによりバルブ表面の腐食の有無を観察し、下記評価基準に基づいて評価した。結果を表1〜15にそれぞれ示す。
−評価基準−
◎:4週間経過時点で、バルブ表面が腐食していない。
○:3週間経過時点で、バルブ表面に腐食が認められる。
△:2週間経過時点で、バルブ表面に腐食が認められる。
×:1週間経過時点で、バルブ表面に腐食が認められる。
【0078】
<粉体分散性の評価>
実施例1〜85及び比較例1〜9のデオドラント組成物を25℃で静置させ、粉体を全て沈降させた後、粉体相の最上層にマークをした。その後、粉体が完全に分散するまで各デオドラント組成物を攪拌し、再び静置した。沈降した粉体層の最上層がマークの位置に達するまでの時間を計測し、下記評価基準に基づいて評価した。結果を表1〜15にそれぞれ示す。
−評価基準−
◎ :沈降するまでの時間が3分間以上。
◎〜○:沈降するまでの時間が2分30秒間以上3分間未満。
○ :沈降するまでの時間が2分間以上2分30秒間未満。
△ :沈降するまでの時間が1分30秒間以上2分間未満。
× :沈降するまでの時間が1分30秒間未満。
【0079】
<肌への白残りのなさの評価>
被験者の男女20名の前腕内側部に、実施例1〜85及び比較例1〜9のデオドラント組成物を各々50mg噴霧し、噴霧直後の肌への白残りについて、下記評点に基づき採点し、被験者20名の平均値を算出し、下記評価基準に基づいて評価した。結果を表1〜15にそれぞれ示す。
−評点−
2点:白くならない
1点:わずかに白くなる
0点:白くなる
−評価基準−
◎ :20人の被験者の平均点が1.8点以上
◎〜○:20人の被験者の平均点が1.5点以上1.8点未満
○ :20人の被験者の平均点が1点以上1.5点未満
△ :20人の被験者の平均点が0.5点以上1点未満
× :20人の被験者の平均点が0.5点未満
【0080】
【表1】

【0081】
【表2】

【0082】
【表3】

【0083】
【表4】

【0084】
【表5】

【0085】
【表6】

【0086】
【表7】

【0087】
【表8】

【0088】
【表9】

【0089】
【表10】

【0090】
【表11】

【0091】
【表12】

【0092】
【表13】

【0093】
【表14】

【0094】
【表15】

【0095】
実施例及び比較例で使用した原料を表16に示す。
【0096】
【表16】

【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明のデオドラント組成物は、優れた制汗作用及び防臭作用を有し、粉体を凝集させることなく分散性が良好であり、肌に白残りせず、金属容器に対する腐食性を有さないため、化粧料、医薬品、医薬部外品などに適用することができ、腋等の身体用のデオドラントスプレー、デオドラントミスト、デオドラントシート、デオドラントスティック、デオドラントロールオン、デオドラント用ファンデーションなどとして好適に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)水溶性のアルミニウム塩と、(B)酸化亜鉛と、(C)HLBが5以上10未満である非イオン性界面活性剤と、を含有し、前記(B)成分の含有量が1質量%〜4質量%であり、前記(B)成分の含有量と、前記(C)成分の含有量との質量比が、(C)/(B)=3〜15であることを特徴とするデオドラント組成物。
【請求項2】
(C)成分が、エステル構造を有する非イオン性界面活性剤及びポリエーテル変性シリコーンの少なくともいずれかである請求項1に記載のデオドラント組成物。
【請求項3】
(C)成分が、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、側鎖型ポリエーテル変性シリコーン、及びABN型ポリエーテル変性シリコーンから選択される少なくともいずれかである請求項1から2のいずれかに記載のデオドラント組成物。
【請求項4】
(D)無水ケイ酸、マグネシアシリカ、及びタルクの少なくともいずれかである粉体を更に含有する請求項1から3のいずれかに記載のデオドラント組成物。

【公開番号】特開2011−148785(P2011−148785A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286714(P2010−286714)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】