説明

デキャッパのキャップ取り外し方法およびデキャッパ

【課題】キャップを開栓方向へ回転させて取り外す際に、キャップが落下してネジを損傷することを防止する。
【解決手段】容器4を把持して供回りを防止するグリッパ12と、キャップ2を保持して回転させるチャック16と、チャック16を回転させるサーボモータ18と、このモータ18の駆動軸とチャック16との間に介装された緩衝構造と、チャック16を上昇させる昇降手段20とを備えており、キャップ2を開栓方向に回転させつつ、チャック16を、キャップ2の回転によりキャップ2がネジ4aに沿って上昇していく速度とほぼ同じか、やや遅い速度で上昇させることによりキャップ2を容器4から取り外す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に巻き締められているキャップを取り外すデキャッパ、およびこのデキャッパによるキャップの取り外し方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
容器内に液体を充填する充填機に供給される容器が、搬送過程で内部にゴミが入ったりしないようにキャップを装着した状態で供給される場合がある。このような場合には、キャップを一旦容器から取り外し、液体等を充填した後、再びこのキャップを装着するようにしている。供給されてきた容器に巻き締められているスクリューキャップを容器から取り外す場合には、容器をグリッパによって把持して供回りを防止した状態で、チャックによってスクリューキャップを把持して開栓方向へ所定角度回転させた後、このスクリューキャップを保持しているチャックを上昇させることにより、キャップを容器から取り外すようにしている。
【0003】
前記のようにスクリューキャップを巻き締めた状態で供給されてくる容器の巻き締めトルクにばらつきがあると、巻き締め角度が一定に揃わないため、スクリューキャップを開栓方向へ所定角度回転させても、スクリューキャップのネジ山と容器の口部のネジ山との相対的な位置が一定にならないという問題が発生する。このように巻き締め角度が一定でない場合には、十分に螺合が解除されずにキャップを真上へ引き上げる際に両者のネジが引っ掛かってキャップの取り外しがうまくいかない場合があった。
【0004】
そこで、容器の口部のネジ山とスクリューキャップのネジ山とが常に一定の位置となるようにしてから開栓することができ、スクリューキャップのネジが容器の口部のネジに引っ掛かること無く確実に取り出すことができるデキャッパについて、本発明の出願人がすでに出願している(特許文献1参照)。
【0005】
前記特許文献1に記載された発明は、供給された容器に巻き締められているキャップをチャックによって保持するとともに、前記容器をグリッパによって把持した状態で、前記チャックをキャップの閉栓方向へ向けて回転させて、キャップを所定トルクまで締め付け、その後、チャックを逆回転させて、スクリューキャップを開栓方向へ所定角度回転させた後、キャップを保持しているチャックを上昇させることにより、スクリューキャップを容器から取り外すようになっている。
【0006】
前記特許文献1に記載された発明では、一旦閉栓方向へ回転させて所定トルクまで締め付けた後、開栓方向へ所定角度回転させて容器のネジとキャップのネジとを一定の位置関係にしてキャップを取り外すようにしているが、このような構成では、キャップと容器のネジが精度よく形成されていることが必要であり、これらの精度がよくない場合には、結局は設計上の巻き締め量に相当する量だけキャップを開栓方向に回転させても、すべてのキャップの螺合が解除できるとは限らないという問題が発生した。そこで、設計上の巻き締め量に相当する量よりも多めに回転させることによって、すべてのキャップの螺合を解除することが可能になる。
【0007】
前記チャックは、緩衝構造を介してモータの回転軸に連結されている。従って、このような構造のチャックでキャップを保持して開栓方向に回転させると、キャップは容器のネジの軌道に沿って回転しつつ上昇し、これに伴ってチャックは、前記回転軸に対して緩衝量を増加させながらキャップとともに押し上げられる。そして、キャップの回転が進んで、キャップのネジの下端が容器のネジの上端を越えると、キャップのネジの下端が容器のネジの上端の直下のネジに落下する。このときには、キャップを保持しているチャックも、前記緩衝量が増加した分だけ落下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−6436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述のように、設計上の巻き締め量に相当する量よりも多く回転させると、何度もキャップが落下する場合がある。キャップが落下すると、チャックの重量が掛かった状態で容器のネジの上端とキャップのネジの下端が擦れるため、何度も落下すると各々のネジの先端が破損する場合がある。デキャッパによって容器からキャップを取り外した後、容器内に内容物を充填し、その後、取り外したキャップを再度巻き締めるためには、ネジの破損は避けなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、キャップが何度も落下することを防止し、ネジを破損することのないデキャッパによるキャップ取り外し方法を提供するものであり、キャップが巻き締められた容器から、キャップを取り外すデキャッパのキャップ取り外し方法において、容器の供回りを阻止した状態で、容器に巻き締められたキャップを開栓方向へ回転させるとともに、開栓方向への回転に伴うキャップの離脱速度と等しい、もしくは、それよりも遅い速度でキャップを容器から相対的に上昇させ、容器とキャップのネジの係合が外れるまで回転と上昇を継続することを特徴とするものである。
【0011】
また、第2の発明にかかるデキャッパは、容器を把持する把持手段と、キャップを保持する保持手段と、この保持手段を回転させる回転手段とを備え、キャップを保持した保持手段をキャップの開栓方向へ回転させて、キャップが巻き締められている容器からキャップを取り外すデキャッパにおいて、前記保持手段を前記把持手段に対して相対的に昇降させる昇降手段を備え、前記把持手段によって容器の供回りを阻止した状態で、回転手段により容器に巻き締められたキャップを開栓方向へ回転させるとともに、前記昇降手段により、開栓方向への回転に伴うキャップの離脱速度と等しい、もしくは、それよりも遅い速度でキャップを容器から相対的に上昇させてキャップを取り外すことを特徴とするものである。
【0012】
さらに、第3の発明は、前記第2の発明において、前記保持手段は、緩衝構造を介して回転手段に連結され、前記昇降手段は、この緩衝構造を介して保持手段を昇降させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明のデキャッパおよびデキャッパのキャップ取り外し方法は、キャップを開栓方向へ回転させるとともに、このキャップを保持している保持手段を、キャップの回転による上昇速度(キャップの離脱速度)とほぼ同じ、あるいはやや遅い速度で容器を把持している把持手段に対して相対的に上昇させるようにしたので、何度もネジ落ち(キャップのネジの下端が容器のネジの上端を通過する際に保持手段の自重等の力が掛かってキャップが落ちること)してネジを傷付けてしまうおそれがなく、また、キャップを持ち上げる際にキャップのネジが容器のネジに引っ掛かって、保持手段からキャップを落下させてしまうおそれもない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1はデキャッパの正面図である。(実施例1)
【図2】図2はデキャッパを備えた容器処理ラインの平面図である。
【図3】図3は1条ネジの場合の、容器にキャップが巻き締められた状態を示す図である。
【図4】図4はキャップを開栓方向へ回転させている状態を示す図である。
【図5】図5は2条ネジの場合の、キャップを開栓方向へ回転させている状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
キャップが巻き締められた容器が、供給コンベヤによって搬送されて容器給排位置に停止すると、容器移送手段によってデキャッピングおよびキャッピング位置に移送され、デキャッパによりキャップが回転されて容器から取り外される。デキャッパでは、容器の胴部がグリッパによって把持されてキャップを回転させる際の供回りを防止し、この状態で上方からキャッピングヘッドを下降させ、下端のチャックによってキャップを保持する。このデキャッパには、キャッピングヘッドを回転させる回転手段としてのサーボモータと、キャッピングヘッドを昇降させる昇降手段が設けられており、さらに、前記サーボモータと、キャップを保持するチャックとは、緩衝構造を介して連結されている。前記グリッパによって容器を把持して供回りすることを防止した状態で、サーボモータによりキャッピングヘッドを開栓方向に回転させると、チャックに保持されているキャップが容器に対して回転し、両者のネジに沿ってキャップが上昇する。このとき、前記昇降手段によって、キャップが回転により上昇する速度とほぼ同じ速度か、この速度よりもやや遅い速度でチャック、すなわちキャッピングヘッドを上昇させる。
【実施例1】
【0016】
以下、図面に示す実施例により本発明を説明する。この実施例に係る装置では、キャップ2を巻き締められた容器4が供給されると、この容器4からキャップ2を取り外した後、容器4内に内容液の充填を行い、その後、再び前記取り外したキャップ2を容器4に装着するようになっている。つまり、この実施例装置は、容器4からキャップ2を取り外すデキャッピングと、この取り外したキャップ2を再び容器4に装着するキャッピングとを行う装置6(以下、この明細書中ではデキャッパと呼ぶことにする)、および容器4内に液体等の内容物を充填するフィラ8とを備えている。このデキャッパ6(図2では図示を省略してあるが、デキャッピングおよびキャッピング位置Aに、図1に示すデキャッパ6が配置されている)は、載置台10上に載せられた容器4を把持する容器把持手段12(グリッパ)と、このグリッパ12に把持された容器4の上方に配置されているキャッピングヘッド14と、キャッピングヘッド14の下端に設けられてキャップ2を保持するキャップ保持手段16(チャック)と、キャッピングヘッド14を回転させる回転手段としてのサーボモータ18と、キャッピングヘッド14全体を昇降させる昇降手段20および昇降用のサーボモータ22とを備えている。
【0017】
前記キャップ2を装着された容器4は、図2に示すように、供給コンベヤ24によって搬送されてデキャッパ6への容器給排位置Bに導入されると、この容器給排位置Bに設けられている容器移送手段26によって、隣接して配置されている載置台10上に移送される。供給コンベヤ24側のデキャッパ6への容器給排位置Bと載置台10とは、ほぼ同じ高さであり、これら容器給排位置Bと載置台10との間に渡り板28が設置されており、容器4はこの渡り板28上を滑って載置台10上に移送される。なお、供給コンベヤ24および後に説明する排出コンベヤは間欠走行しており、容器4が容器給排位置Bに停止すると、この容器4が容器移送手段26によって渡り板28を通過して載置台10に移送される。
【0018】
容器移送手段26は、前記容器給排位置Bと載置台10との間の容器の移動方向C(図2の上下方向)を向けて2つのエアシリンダ(第1エアシリンダ30および第2エアシリンダ32)が配置され、これら各エアシリンダ30、32のピストンロッド30a、32aにそれぞれプッシャ34、36が取り付けられている。これら各プッシャ34、36の互いに対向する面にはV字状の容器支持面34a、36aが形成されており、両容器支持面34a、36aで容器4を挟持することにより安定した容器4の移送を行うことができる。容器給排位置B側に配置されている容器移送手段26の第1エアシリンダ30は、プッシャ34を容器給排位置Bの手前側(図2の下方側)から載置台10の上方までの間で進退動する。また、載置台10側に配置されている第2エアシリンダ32は、載置台10の手前側(図2の上方側)から容器給排位置Bまでの間で進退動する。容器給排位置Bから載置台10へ容器4を移送する際には、容器給排位置B上の容器4を、容器給排位置Bの手前側に位置している第1エアシリンダ30のプッシャ34と、容器給排位置Bの向かい側に伸長してきた第2エアシリンダ32のプッシャ36とによって挟持し、続いて、第1エアシリンダ30のピストンロッド30aを伸張させつつ、第2エアシリンダ32のピストンロッド32aを収縮させることにより、容器給排位置B上の容器4を載置台10上に移送する。
【0019】
載置台10の、前記容器給排位置Bと隣接する位置(デキャッピングおよびキャッピング位置A)に前記デキャッパ6が配置されており、この位置Aで容器4に巻き締められていたキャップ2が取り外された後、同じ載置台10上の充填位置Dに移送される。前記デキャッパ6によってキャップ2を取り外す位置Aと充填位置Dとの間で、容器4を移動させる容器移動手段38が設けられている。この容器移動手段38は、容器4を両側から把持するグリッパ12(容器把持手段)と、このグリッパ12を前記デキャッパ6とフィラ8との間を往復移動(矢印E方向に移動する)させるグリッパ移動手段40とを備えている。グリッパ12は、エアシリンダ42により開閉する一対のグリップ部材12a、12bを備えており、前記容器移送手段26の一対のプッシャ34、36によって容器4を挟持する方向(図2の上下方向)と直交する方向(図2の左右方向)に開閉して容器4を把持、解放する。このグリッパ12は、デキャッパ6の設けられている位置(デキャッピングおよびキャッピング位置A)に移動して容器4を把持しているときには、デキャッピングおよびキャッピングを行う際の容器4の供回りを防止する機能を有している。なお、この実施例では、図示はしないが、前記容器移送手段26と容器移動手段38は互いに干渉しないように、容器移送手段26が容器4の下部を挟持し、容器移動手段38は容器4の上部を把持するようになっている。なお、このような上下の把持位置に限定されないことは言うまでもない。
【0020】
供給コンベヤ24の下流端に設けられた容器給排位置Bに続いて、排出コンベヤ44が配置されており、容器給排位置Bから載置台10上のデキャッピングおよびキャッピング位置Aに送られてキャップ2が取り外された容器4は、グリッパ12に把持されて充填位置Dに送られて液体が充填された後、再び前記デキャッピングおよびキャッピング位置Aに戻されてキャッピングが行われ、容器移送手段26によって容器給排位置Bに戻された後排出コンベヤ44によって排出される。
【0021】
本発明の一実施例に係るデキャッパ6は、キャップ2を巻き締められた状態で供給されてきた容器4から、キャップ2を取り外すデキャッパとしての機能を果たすとともに、そのキャップ2が取り外された容器4内に液体が充填された後、前記取り外したキャップ2を再びその容器4に装着するキャッパとしての機能を果たすものであり、図1に示すように、載置台10上に載せられた容器4の胴部4aを把持するグリッパ12と、その上方に配置されたキャッピングヘッド14とを備えている。キャッピングヘッド14は、昇降枠46の上端に固定された回転用サーボモータ18の駆動軸にスプラインシャフト48が連結されて回転する。このスプラインシャフト48の下部に昇降筒体50がスプライン嵌合しており、スプラインシャフト48と昇降筒体50が一体回転するとともに、昇降筒体50はスプラインシャフト48に対して昇降できるようになっている。
【0022】
昇降筒体50の下端にキャップ2を保持するチャック16が取り付けられており、昇降筒体50とともに回転し、スプラインシャフト48に対して昇降できるようになっている。
【0023】
前記昇降枠46の底部には、中央に貫通孔46aが形成されており、前記昇降筒体50がこの貫通孔46a内を挿通されている。昇降筒体50の上端部外周にフランジ状の部分50aが形成されており、このフランジ部50aが前記貫通孔46aの周囲に形成された支持部46bに係合することによって、チャック16および昇降筒体50が落下することを防止している。また、昇降手段20によってキャッピングヘッド14が上昇するときには、この支持部46bによって昇降筒体50を引き上げるようになっている。前記昇降枠46、スプラインシャフト48、昇降筒体50により緩衝構造が構成されている。この緩衝構造により、チャック16がキャップ2に当接した後も昇降手段20が昇降枠46を下降させる場合に、昇降枠46やスプラインシャフト48に対して昇降筒体50やチャック16が相対的に上昇することを許容している。また、開栓方向へのキャップ2の回転に伴って昇降枠46やスプラインシャフト48に対して昇降筒体50やチャック16が上昇することを許容している。
【0024】
前記キャッピングヘッド14は、回転用サーボモータ18が取り付けられている昇降枠46が、ベース54上に設置された支柱56の上部に固定されている昇降手段20に取り付けられている。この昇降手段20は内部にボールねじが内蔵されており、その上端に固定した昇降用サーボモータ22の駆動によってこのボールねじを回転させることにより前記キャッピングヘッド14を昇降させる。
【0025】
前記構成のデキャッパ6により容器4に巻き締められているキャップ2を取り外す方法について説明する。供給コンベヤ24によってキャップ2が巻き締められた容器4が間欠的に搬送されて容器給排位置Bに停止すると、容器移送手段26の第1エアシリンダ30によって後退した位置にあるプッシャ34と、第2エアシリンダ32の伸長によって前進してきた第2プッシャ36とによって、容器給排位置Bの容器4を挟持する(図2の符号4Aで示す容器参照)。容器移送手段26の両プッシャ34、36が容器4を挟持した後、第1エアシリンダ30のピストンロッド30aが伸長するとともに、第2エアシリンダ32のピストンロッド32aが収縮して、両プッシャ34、36が容器給排位置Bから載置台10上のデキャッピングおよびキャッピング位置Aに移動し、容器給排位置Bに停止していた容器4(4A)を渡り板28上を滑らせて載置台10上に移送する(図2に符号4Bで示す容器4参照)。
【0026】
デキャッピングおよびキャッピング位置Aに停止した容器4を、グリッパ移動手段40の作動によってこの位置Aに移動されてきたグリッパ12により把持する。このように容器4の胴部4aをグリッパ12によって把持した状態で、デキャッパ6の昇降用サーボモータ22を駆動し、昇降手段20によってキャッピングヘッド14を下降させ、下端のチャック16によって容器4の口部に巻き締められているキャップ2を保持する。
【0027】
グリッパ12によって容器4の胴部4aを把持して供回りを防止した状態で、回転用サーボモータ18の駆動によりスプラインシャフト48を回転させて、昇降筒体50およびチャック16をキャップ2の開栓方向に回転させる。チャック16の回転によりキャップ2が回転すると、容器4の口部外面に形成されているネジ4aに対して、キャップ2の内面に形成されているネジ2aが回転することによりキャップ2が上昇する。図3はキャップ2を回転させ始めた状態を示すもので、キャップ2が容器4に対して回転することにより次第に上昇する。この実施例では、キャップ2および容器4のネジ2a、4aが1条ネジであり、容器4の隣り合うネジ山の距離(ピッチ)Pと、キャップ2を1回転させたときの軸方向の移動量(リード)Lとが一致している。
【0028】
この実施例に係るデキャッパ6では、キャップ2が回転することにより上昇する速度に合わせて、昇降用サーボモータ22の駆動によって、キャッピングヘッド14を上昇させる。チャック16がキャップ2を保持した際の緩衝量があるため、キャップ2のネジ2aの下面側が容器4のネジ4aの上面側に押し付けられた状態でキャップ2が回転する(図3参照)。このときに、昇降手段20によるチャック16の上昇速度と、チャック16の回転によるキャップの上昇速度(以下、キャップ2を開栓方向へ回転させることによるキャップ2の上昇速度を離脱速度と呼ぶことにする)とが、以下の関係を有していることが必要である。
0<Vh≦Vc ……(1)
Vh:チャック上昇速度[mm/s]
Vc:キャップ離脱速度[mm/s]
つまり、昇降手段20によって、開栓方向への回転に伴うキャップ2の離脱速度と等しいか、もしくは、それよりも遅い速度で、キャップ2を保持しているチャック16を上昇させる。
但し、チャック16がキャップ2を保持した際の緩衝量が、容器4の隣り合うネジ山の距離よりも小さいことが条件である。
p>y
y:チャックのネジ落ち直前の緩衝量[mm]
p:容器の隣り合うネジ山の距離(ピッチ)[mm]
すなわち、Vh=Vcの時、容器4のネジ4aの上端4aaをキャップ2のネジ2aの下端2aaが越えると(図4は容器4のネジ4aの上端4aaをキャップ2のネジ2aの下端2aaが越える直前の状態を示す)、前記緩衝量yだけキャップ2が落下する。この落下する緩衝量yよりも容器4のネジ4aのピッチpが大きければ、キャップ2が落下したことにより緩衝量が0になる。その後は、容器4のネジ4aとキャップ2のネジ2aとは干渉することなくキャップ2が離脱される。しかしながら、ネジのピッチpが緩衝量yよりも小さい場合には、キャップ2が落下した後、再び干渉した状態(キャップ2のネジ2aの下面が容器4のネジ4aの上面に押し付けられた状態)になるため、その後もキャップ2のネジ2aが容器4のネジ4aに載った状態で移動し、再度、容器4のネジ4aの上端4aaをキャップ2のネジ2aの下端2aaが越えて落下することになる。なお、本発明が成立するするためには前記(1)式が満たされる必要があるが、特に、Vh=Vcであることが好ましい。
【0029】
前記のように、チャック16の上昇速度(Vh)はキャップ2の離脱速度(Vc)と同じか、あるいは、遅いことが条件であるが、チャック16の上昇速度(Vh)がキャップ2の離脱速度(Vc)に比べて大幅に遅い場合、つまり、キャップ2の離脱速度(Vc)が大幅に速い場合、すなわち、チャック16の上昇速度(Vh)に対してキャップ2の回転速度(Vr)があまりも高速である場合は、何度もキャップ2が落下することになる。そこで、キャップ離脱速度(Vc)に上限を設定する必要がある。
【0030】
キャップの離脱速度(Vc)は、キャップ2のリード(L)とキャップ2の回転速度とによって得られる。
Vc=L×Vr ……(2)
Vr:キャップの回転速度[r/s]
L:キャップを1回転させたときの軸方向の移動量(リード)[mm]
キャップが1回転する時間をT1[s]とすると、
T1=1回転/Vrとなり、
前記(2)式から
Vr=Vc/L
1/Vr=L/Vcより、
T1=L/Vcとなる。
一方、チャックがyだけ上昇する時間Tyは、
Ty=y/Vhとなる。
キャップが1回転する間(T1)に、チャックは緩衝量分(y)だけ上昇している必要があるので、Ty≦T1となり、これより、
y/Vh≦L/Vcとなって、
Vc≦LVh/yとなる。 ……(3)
従って、前記(1)式および(3)式から
0<Vh≦Vc≦LVh/y(但し、L>y)……(4)
の関係を導き出すことができる。
【0031】
なお、前記(4)式は、1本の連続したネジ(1条ネジ)の場合であり、2本以上のネジからなる場合には、ネジの本数をnとすると、
L=npとなり、
Vc=np×Vrとして表すことができる。
キャップが1/n回転する時間を、Tm[s]とすると、
Tm=1/n×1/Vrとなる。
ここから、
T1/n=p/Vcとなる。
キャップが1/n回転する間(Tm)に、チャックは緩衝量分(y)だけ上昇している必要があるので、
Ty≦T1/nとなる。これにより、
y/Vh≦p/Vcとなって、
Vc≦pVh/yとなる。
ゆえに、
0<Vh≦Vc≦pVh/y(但し、p>y)……(5)
の関係を導き出すことができる。
1条ネジの場合には、リード(L)とピッチ(p)は等しいので、1条ネジを含めて同様の関係が成立する(前記(4)式参照)。
なお、図5は容器4およびキャップ2ともに2本のネジ山4a、2aを備えている2条ネジの一例を示すものである。2条ネジの場合には、リード(L)がピッチ(p)の2倍になっている。また、前記実施例では、昇降手段20がキャッピングヘッド14を昇降させているが、容器4を昇降させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0032】
2 キャップ
2a キャップのネジ
4 容器
4a 容器のネジ
6 デキャッパ
12 容器把持手段(グリッパ)
16 キャップ保持手段(チャック)
18 回転手段(回転用サーボモータ)
20 昇降手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャップが巻き締められた容器から、キャップを取り外すデキャッパのキャップ取り外し方法において、
容器の供回りを阻止した状態で、容器に巻き締められたキャップを開栓方向へ回転させるとともに、開栓方向への回転に伴うキャップの離脱速度と等しい、もしくは、それよりも遅い速度でキャップを容器から相対的に上昇させ、容器とキャップのネジの係合が外れるまで回転と上昇を継続することを特徴とするデキャッパのキャップ取り外し方法。
【請求項2】
容器を把持する把持手段と、キャップを保持する保持手段と、この保持手段を回転させる回転手段とを備え、キャップを保持した保持手段をキャップの開栓方向へ回転させて、キャップが巻き締められている容器からキャップを取り外すデキャッパにおいて、
前記保持手段を前記把持手段に対して相対的に昇降させる昇降手段を備え、前記把持手段によって容器の供回りを阻止した状態で、回転手段により容器に巻き締められたキャップを開栓方向へ回転させるとともに、前記昇降手段により、開栓方向への回転に伴うキャップの離脱速度と等しい、もしくは、それよりも遅い速度でキャップを容器から相対的に上昇させてキャップを取り外すことを特徴とするデキャッパ。
【請求項3】
前記保持手段は、緩衝構造を介して回転手段に連結され、前記昇降手段は、この緩衝構造を介して保持手段を昇降させることを特徴とする請求項2に記載のデキャッパ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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