説明

デジタルオーディオ信号処理装置

【課題】 楽曲を演奏する編成に応じたフィルタを選択するオーディオ信号処理装置を提供する。
【解決手段】 通常、小編成のバンド演奏による楽曲は、ボーカル等のメインメロディの音源は中央に定位されるため、中央に音像定位されるオーディオ信号成分が多い。逆に、オーケストラのような大編成の楽曲は、音源が多く、また、ホール等広い録音空間で演奏されるので、中央に音像定位されるオーディオ信号成分は少ない。入力されるオーディオ信号に対し、中央に定位するオーディオ信号成分の割合により、シャープロールオフ特性フィルタとスローロールオフ特性フィルタとの出力を切換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルオーディオ信号再生の音質等を改善するデジタルオーディオ信号処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
CD(compact disc)やデジタル音声放送に代表されるデジタルオーディオ信号再生の音質を改善するためにフィルタ処理が行われる。フィルタ処理に用いられるフィルタの例として、例えば、スローロールオフ特性フィルタや、シャープロールオフ特性ローパスフィルタ等がある。
【0003】
スローロールオフ特性フィルタの例として、データ補間デジタルフィルタがある。データ補間デジタルフィルタとは、デジタルオーディオ信号を元に、サンプリングデータ間でデータ補間し、ハイサンプリングデータを生成するものである。このデータ補間デジタルフィルタをデジタルオーディオ信号に適用すると、データを補間することにより高周波数成分が増加する。このフィルタにより処理をされたオーディオ信号は、高音域をより自然に、伸びやかに再生することができ、また、音場が左右奥行き方向に広がって再生できる特徴がある。また、逆に音のアタック・立ち上がりが弱く、音場が前方向に出てくるように聞こえないという特徴がある。この特徴は、多種多様な楽器で演奏され、オーディオ信号が低域から高域まで一様に含まれている音楽、特に、編成の大きなオーケストラ音楽に適している。
【0004】
シャープロールオフ特性ローパスフィルタとは、帯域外ノイズを減衰特性が急性なローパスフィルタで除去するものである。このシャープロールオフ特性ローパスフィルタをデジタルオーディオ信号に適用すると、高域成分を抑え、中低域成分が出力される。このフィルタにより処理をされたオーディオ信号は、音の輪郭が明瞭になり、音のアタック・立ち上がりが強く、音場が前方向に出て再生できるという特徴がある。また、逆に高音域の伸びやかさに劣り、音場が左右奥行き方向に広がらないという特徴がある。この特徴は、小規模な楽器編成で中低域を際立たせ、音の輪郭が明瞭になるように再生する音楽、特に、ボーカルを中心とした小編成のバンドや、映画の音の再生等に適している。
【0005】
このように、楽曲を演奏する編成や楽曲の成分等のオーディオ信号の特徴により、適するフィルタと適さないフィルタとがある。このような問題を解決するために、オーディオ信号に応じてフィルタを選択するという技術がある。
【0006】
特許文献1のオーディオ装置は、複数のデジタルローパスフィルタを有し、各々のフィルタ出力と原データの出力とを比較することにより、いずれかのデジタルローパスフィルタを選択して出力している。
【0007】
【特許文献1】特開平11−232790号広報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ハイサンプリングデータを生成するデータ補間デジタルフィルタの場合、上述したように、アタック・立ち上がりが弱く、音場が前方に出てくるように聞こえないため、ボーカルを主体とした小規模な楽器編成からなる小規模バンド演奏のオーディオ信号には適さない。また、シャープロールオフ特性デジタルローパスフィルタの場合、上述したように、高音域の伸びやかさに劣り、音場が左右奥行き方向に広がらないため、オーケストラのような大規模編成のオーディオ信号には適さない。
【0009】
特許文献1の技術では、デジタルオーディオ信号に含まれる高域方向の帯域幅によりどのフィルタを使用するか判定しているため、音楽的規模を見落とす可能性がある。例えば、小編成のバンド演奏では、シンセサイザーのような高い周波数成分のオーディオ信号を出力することができる楽器が用いられることがある。このようなバンドで演奏された楽曲は、高い周波数成分のオーディオ信号が含まれる。特許文献1の技術のように、オーディオ信号に含まれる高い周波数成分に基づいてカットオフ周波数が異なる複数のデジタルローパスフィルタの中から適切なデジタルローパスフィルタを選択するようにすると、前述したようなシンセサイザーが用いられ高周波数成分を含んだ小編成のバンド演奏によるオーディオ信号の場合でも、ハイサンプリングデータを生成するデータ補間デジタルフィルタが選択される可能性がある。データ補間デジタルフィルタによりフィルタリングされたオーディオ信号は、広がり感のある音として再生されるが、アタックや立ち上がりが弱い音となるため、小編成のバンド演奏のオーディオ信号再生には適さない。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、再生する楽曲を演奏する編成に適したデジタルフィルタを適用できる装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記の目的を達成するためになされたもので、少なくとも、中央に音像を定位させるオーディオ信号を含むデジタルオーディオ信号が入力されるデジタルオーディオ信号出力装置であって、前記デジタルオーディオ信号をフィルタリングして出力するスローロールオフ特性デジタルフィルタと、前記デジタルオーディオ信号をフィルタリングして出力するシャープロールオフ特性デジタルフィルタと、前記デジタルオーディオ信号において前記中央に音像を定位させるオーディオ信号成分の割合が所定の値より大きいか否か比較判定した結果を示す情報を出力する比較判定手段と、前記比較判定した結果を示す情報に応じて、前記スローロールオフ特性デジタルフィルタからの出力と、前記シャープロールオフ特性デジタルフィルタからの出力とを切換えて出力する切換え手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
さらに、本発明は、デジタルオーディオ信号に関する情報と、デジタルフィルタとを対応付けて記憶部に記憶しておき、デジタルオーディオ信号と該デジタルオーディオ信号に関する情報が入力されると、上記記憶部から、該入力されたデジタルオーディオ信号に関する情報と一致する情報と対応付けられているデジタルフィルタを読出し、該デジタルフィルタによりフィルタリングされたデジタルオーディオ信号を出力すると共に、デジタルフィルタを選択するための演算装置の動作を停止させることを特徴とする。
【0013】
具体的には、例えば、前記デジタルオーディオ信号出力装置には、前記入力されるデジタルオーディオ信号に関する情報がさらに入力され、デジタルオーディオ信号に関する情報と、前記複数のデジタルフィルタのうち何れかのデジタルフィルタを示す情報とを対応付けて記憶する記憶手段と、前記記憶手段に、前記入力されたデジタルオーディオ信号に関する情報と一致するデジタルオーディオ信号に関する情報が含まれている場合、該デジタルオーディオ信号に関する情報と対応付けられたデジタルフィルタを示す情報を前記記憶手段から読出し、該デジタルフィルタを示す情報を前記切換え手段に出力する切換え制御手段と、前記記憶手段に、前記入力されたデジタルオーディオ信号に関する情報と一致するデジタルオーディオ信号に関する情報が含まれている場合、前記比較判定手段の動作を停止させる停止手段と、を有し、前記切換え手段は、前記切換え制御手段から出力された情報に示されるデジタルフィルタからの出力に切換えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によるオーディオ信号出力装置によれば、異なる特性を持つデジタルフィルタを、音楽ソース、特に楽曲が演奏されている編成に応じて速やかに切換えることが可能となる。これにより、ひとつのオーディオ信号出力装置で、奥行感・広がり感と、アタック・押し出し感両方を併せ持つオーディオ信号を出力することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
一般的なデジタルオーディオ信号について説明する。通常、楽曲を演奏する場合、例えばギター、ボーカル、シンセサイザーというような編成のバンド演奏であれば、ボーカルが中央、シンセサイザーが左側、ギターが右側というように、様々な位置に音源がある。人間の耳は、音を聴くと音源の位置を認識することができる。これを再現するために、スピーカシステムから出力される音を、ある定まった場所から聞こえるようにしている。この場所を定位という。通常、デジタルオーディオ信号は、音像を定位させ、且つ、左右へ音像の連続的広がりを持たせるために、左の音源であるレフトチャンネルオーディオ信号と右の音源であるライトチャンネルオーディオ信号との間に、センターの音源であるセンターチャンネルオーディオ信号を定位させている。このようなオーディオ信号の再生方式の例として、2チャンネル出力のステレオ再生方式がある。この再生方式のオーディオ信号は、レフトチャンネルオーディオ信号とライトチャンネルオーディオ信号との各々に、同音源・同相のセンターチャンネルオーディオ信号をダウンミキシングしている。ここでは、ダウンミキシングすることにより得られる2チャンネルの信号をレフトトラックオーディオ信号とライトトラックオーディオ信号として説明する。
【0016】
また、ここでは、「L」はレフトチャンネルオーディオ信号を、「R」はライトチャンネルオーディオ信号を、「C」はセンターチャンネルオーディオ信号を示す。「L」はレフトトラックオーディオ信号を、「R」はライトトラックオーディオ信号を示す。「nC」はレフトトラックオーディオ信号に含まれるセンターチャンネル成分を示す。「nC」は、ライトトラックオーディオ信号に含まれるセンターチャンネル成分を示す。ここで、「n」は乗数(0.1〜1)であり、「nC」の「n」は「L」に含まれるセンターチャンネル成分「C」の割合を示し、「nC」の「n」は「R」に含まれるセンターチャンネル成分「C」の割合を示すものとする。この場合、レフトトラックオーディオ信号は「L=L+nC」、ライトトラックオーディオ信号は「R=R+nC」で示すことができる。
【0017】
2チャンネル出力のステレオ再生方式のオーディオ信号でセンターとなる音像を定位させるためには、上述したように、センターの音源を左の音源と右の音源とに割り振る。左の音源としてシンセサイザー、センターの音源としてボーカル及びベース、右の音源としてギターという編成のバンド演奏の例で説明すると、レフトトラックオーディオ信号「L」にはシンセサイザーのオーディオ信号とボーカルのオーディオ信号とベースのオーディオ信号とが、ライトトラックオーディオ信号「R」にはギターのオーディオ信号とボーカルのオーディオ信号とベースのオーディオ信号とが含まれる。このようなオーディオ信号をオーディオ再生装置等により再生すると、2チャンネルの各々のスピーカから等距離の位置では、ボーカル及びベースの音が、シンセサイザーの音とギターの音との間から聞こえる。このとき、例えばボーカルのオーディオ信号成分及びベースのオーディオ信号成分各々が、「nC」及び「nC」各々に均等に含まれている場合、ボーカル及びベースの音は中央から聞こえる。また、例えばボーカルのオーディオ信号成分は「nC」及び「nC」各々に均等に含まれ、ベースのオーディオ信号成分は「nC」より「nC」に多く含まれている場合、ボーカルの音は中央から聞こえ、ベースの音は中央より右側に振った位置に聞こえる。このように、音が中央から聞こえる場合、「nC」に含まれる成分と「nC」に含まれる成分とは多くが一致する。また、中央から右よりというように音が左右どちらかに振って聞こえる場合、「nC」に含まれる成分と「nC」に含まれる成分とが一致する割合が比較的少ない。
【0018】
一般的に、小編成のバンド演奏による楽曲の音楽信号の場合、ボーカルのようなメインメロディの音源等は、左右に振られたりすることなく中央に定位されるため、「nC」、「nC」に同音源・同相成分が多く含まれている。
【0019】
逆に、例えば編成の大きなオーケストラ等の演奏による楽曲の音楽信号の場合、音源となる楽器が多数となるため、音源位置が分散され、結果、中央に音像が定位する成分が少なくなる。また、編成の大きなオーケストラ等の演奏による楽曲はホール等比較的広い録音空間で録音されるが、そのような場所で録音されたオーディオ信号は、床や壁等による反射音等により位相にずれが生じ、例えば特定の音だけが左に振れて聞こえるというように音源位置が分散されるため、中央に音像が定位する成分が少なくなる。このため、編成の大きなオーケストラ等の演奏による楽曲のオーディオ信号は、「nC」、「nC」に同音源・同相成分が少ない。
【0020】
従って、楽曲のオーディオ信号に対し、「nC」及び「nC」の成分の割合により当該楽曲が演奏される編成を推定することが可能となる。
【0021】
本実施形態のデジタルオーディオ信号処理装置は、入力されるデジタルオーディオ信号における、中央に音像定位するオーディオ信号成分の割合により、当該楽曲が演奏される編成を推定し、当該編成に適したフィルタ出力を選択するものである。
<第1実施形態>
まず、第1実施形態を説明する。図1は、本発明を実施するためのデジタルオーディオ信号処理装置の一例を示している。図1において、本実施形態のデジタルオーディオ信号処理装置10は、入力部11、スローロールオフ型デジタルフィルタ12、シャープロールオフ型デジタルフィルタ13、第1のデジタルミキサー14、第2のデジタルミキサー15、比較判定部16、HOLD部17、フィルタ切換え部18、出力部19等から構成される。さらに、本実施形態では、マイコン20、ユーザーインターフェース21を備えるものとする。このマイコン20及びユーザーインターフェース21は、デジタルオーディオ信号処理装置10に備えられてもよく、又、他装置の機能の一部又は全てをデジタルオーディオ信号処理装置10で使用できるようにして実現してもよい。
【0022】
なお、第1のデジタルミキサー14、第2のデジタルミキサー15、比較判定部16、HOLD部17、フィルタ切換え部18は、専用のハードウェアにより実現されるものであってもよく、また、各部はメモリおよびCPU(中央演算装置)により構成され、各部の機能を実現するためのプログラムをメモリにロードして実行することによりその機能を実現させるものであってもよい。
【0023】
デジタルオーディオ信号処理装置10の各部を説明する。入力部11には、外部(図示略)からデジタルオーディオ信号が入力される。入力されるデジタルオーディオ信号のソースとして、例えば、CD、デジタル音声放送等がある。入力部11から入力されたデジタルオーディオ信号は、スローロールオフ型デジタルフィルタ12、シャープロールオフ型デジタルフィルタ13、第1のデジタルミキサー14、第2のデジタルミキサー15に平行して入力される。
【0024】
スローロールオフ型デジタルフィルタ12は、直線位相特性を持つフィルタである。ここでは、スローロールオフ型デジタルフィルタ12は、デジタルオーディオ信号をサンプリングデータ間でデータ補間し、ハイサンプリングデータを生成するデータ補間デジタルフィルタで構成されるものとする。データ補間デジタルフィルタは、例えばラグランジュ(Lagrange)補間公式等により実現される。補数の次数を増やすほどサンプリングデータ間に多くのデータが補間され、当該フィルタを通過したオーディオ信号は滑らかな波形となる。スローロールオフ型デジタルフィルタ12は、入力されたデジタルオーディオ信号をフィルタ処理してフィルタ切換え部18に出力する。
【0025】
シャープロールオフ型デジタルフィルタ13は、カットオフ周波数で急峻にレベルが低くなる特性を持つフィルタである。シャープロールオフ型デジタルフィルタ13は、例えば、FIR(finite impulse response)演算フィルタや、IIR(Infinite impulse Response)演算フィルタにより実現される。シャープロールオフ型デジタルフィルタ13は、入力されたデジタルオーディオ信号をフィルタ処理してフィルタ切換え部18に出力する。
【0026】
スローロールオフ型デジタルフィルタ12とシャープロールオフ型デジタルフィルタ13は、同じデジタルオーディオ信号が入力され、常時並列処理し、遅延器等により同じ遅延時間で出力するものとする。
【0027】
本実施形態において、第1のデジタルミキサー14と、第2のデジタルミキサー15と、比較判定部16とは、デジタルオーディオ信号における、中央に音像を定位させるオーディオ信号成分の割合が所定の値より大きいか否か判定するためのものである。ここでは、「nC」及び「nC」に含まれる、中央に音像を定位させるオーディオ信号成分の割合が所定の値より大きいであるか否かにより、当該楽曲が、小編成のバンド演奏によるものであるか、又は編成の大きなオーケストラ等の演奏によるものであるか判定するものとする。
【0028】
第1のデジタルミキサー14、第2のデジタルミキサー15には、上述したスローロールオフ型デジタルフィルタ12とシャープロールオフ型デジタルフィルタ13とに入力されるデジタルオーディオ信号と同じデジタルオーディオ信号が常時平行して入力される。
【0029】
第1のデジタルミキサー14は、レフトトラックオーディオ信号「L」とライトトトラックオーディオ信号「R」とを加算した値の絶対値を求める演算「|L+R|=|L+nC+R+nC|」を行い、演算結果を比較判定部16に出力する。
【0030】
第2のデジタルミキサー15は、レフトトラックオーディオ信号「L」からライトトラックオーディオ信号「R」を減算した値の絶対値を求める演算「|L−R|=|L+nC−R−nC|」を行い、演算結果を比較判定部16に出力する。
【0031】
ここで、第1のデジタルミキサー14及び第2のデジタルミキサー15で行う演算について説明する。本実施形態のデジタルオーディオ信号処理装置10に入力されるデジタルオーディオ信号は、上述したように、レフトトラックオーディオ信号「L」と、ライトトラックオーディオ信号「R」とである。「|L+R|」に対するレフトトラックオーディオ信号「L」及びライトトラックオーディオ信号「R」の割合と、デジタルオーディオ信号処理装置10に入力されるデジタルオーディオ信号に対する各オーディオ信号成分「L」、「R」、「C」(「nC」及び「nC」)の割合は変わらない。即ち、「|L+R|」における中央に音像定位させるオーディオ信号成分の割合と、デジタルオーディオ信号処理装置10に入力されるデジタルオーディオ信号における中央に音像定位させるオーディオ信号成分の割合は同じである。
【0032】
「|L−R|」を算出した場合、「L+nC−R−nC」となる。ここで、「−R」は「R」の逆位相、「−nC」は「nC」の逆位相である。上述したように、「L」と「R」との間に音像を定位させるために、「L」、「R」各々にセンターチャンネルオーディオ信号「C」を割り振ったものが「nC」及び「nC」である。従って、「nC」に対し逆位相の「−nC」を演算すると、干渉により「L」と「R」との間に定位するオーディオ信号成分が相殺され、「nC」、「nC」の成分が少なくなる。即ち、「|L−R|」を演算すると、デジタルオーディオ信号処理装置10に入力されるデジタルオーディオ信号における、中央に音像定位させるオーディオ信号成分の割合が少なくなる。「nC」と「nC」とに同音源・同相の成分が多い場合、逆位相の干渉による成分の減少は大きい。また、「nC」と「nC」とに同音源・同相の成分が少ない場合、逆位相の干渉による成分の減少は少ない。
【0033】
従って、第1のデジタルミキサー14及び第2のデジタルミキサー15で算出する「|L+R|」と、「|L−R|」とにより、入力されるデジタルオーディオ信号における、中央に音像を定位させるオーディオ信号成分の割合を判定することが可能となる。
【0034】
図1において、比較判定部16は、第1のデジタルミキサー14から出力された値と、第2のデジタルミキサー15から出力された値とにより、入力されるデジタルオーディオ信号における、中央に音像を定位させるオーディオ信号成分の割合が所定の値より大きいか否か判定し、判定した結果をHOLD部17に出力する。この所定の値は、比較判定部16内部の記憶部(図示略)等に記憶されているものとする。なお、比較判定部16は、遅延器等により、上述したスローロールオフ型デジタルフィルタ12及びシャープロールオフ型デジタルフィルタ13の出力と同じ遅延時間で結果を出力するものとする。
【0035】
ここでは、比較判定部16は、図2に一例を示すような条件を記憶部(図示略)等に記憶し、当該条件に基づいて、入力されるデジタルオーディオ信号における、中央に音像を定位させるオーディオ信号成分の割合が所定の値より大きいか否か判定するものする。図2の例では、比較判定部16の判定条件30、当該条件における中央に音像定位させる割合が基準値より大きいか否か31、当該条件に応じて切換えるデジタルフィルタ32等が記憶されている。第1のデジタルミキサーから出力された値が、所定の係数「X」と第2のデジタルミキサーから出力された値との積より小さい場合(|L+R|≦X|L−R|)、入力されるデジタルオーディオ信号における中央に音像を定位させるオーディオ信号成分の割合が所定の値より小さいと判断し、スローロールオフ型デジタルフィルタ12からの出力に切換える信号を出力する。また、第1のデジタルミキサーから出力された値が、所定の係数「X」と第2のデジタルミキサーから出力された値との積より大きい場合(|L+R|>X|L−R|)、入力されるデジタルオーディオ信号における中央に音像を定位させるオーディオ信号成分の割合が所定の値より大きいと判断し、シャープロールオフ型デジタルフィルタ13からの出力に切換える信号を出力する。
【0036】
なお、この係数「X」は、上述したスローロールオフ型デジタルフィルタ12からの出力とシャープロールオフ型デジタルフィルタ13からの出力とを切換える音質調整のポイントとなる係数である。この係数は、予め設定されていてもよく、後述するユーザーインターフェース21を用いて視聴者に入力された値を用いてもよい。
【0037】
ここで、係数「X」の一例について説明する。デジタルオーディオ信号処理装置10に入力されるオーディオ信号が「L」、「C」、「R」の3音源しか含まれておらず、且つ、「|L|=|C|=|R|」という条件が成立する場合、X=3/2とすることができる。具体的に説明すると、上述したように、レフトトラックオーディオ信号は「L=L+nC」、ライトトラックオーディオ信号は「R=R+nC」と示すことができる。このことから、絶対値「|L+R|」、「|L−R|」を求めると以下のようになる。
【0038】
|L+R|=L+nC+R+nC
|L−R|=L+nC−(R+nC
ここで、「|L|=|C|=|R|」が成立するので、レフトチャンネルオーディオ信号「L」及びライトチャンネルオーディオ信号「R」を1とし(L=R=1)、「nC」及び「nC」の係数「n」を0.5とした場合、以下のようになる。
【0039】
|L+R|=1×L+0.5×C+1×R+0.5×C
|L−R|=1×L+0.5×C−(1×R+0.5×C
「|L+R|」において、「C」と「C」とは同音源・同相であるため加算され、「|L+R|=3」となる。また、「|L−R|」において、「C」と「C」とは同音源・同相であるため減算され、「L」及び「−R」の成分が残るため、音圧レベル「|L−R|=2」となる。この結果、以下が成立する。
【0040】
|L+R|=3/2|L−R
上述したように、一般的には、ボーカルをメインとした小編成バンドによる楽曲の場合、ボーカルは中央の位置に定位させるため、レフトトラックオーディオ信号「L」及びライトトラックオーディオ信号「R」に均等にボーカルの音声成分が含まれる。「L」及び「R」トラックオーディオ信号に含まれるセンターチャンネルオーディオ信号「C」(「nC」及び「nC」)は、同音源・同相音であり、「L」及び「R」トラックオーディオ信号との位相のずれはほとんどない。「L」、「R」、「C」3つの音源を、レフトトラックオーディオ信号及びライトトラックオーディオ信号にダウンミキシングした場合を基準とし、中央に音像定位する成分の比率が高い場合、即ち「|L+R|>3/2|L−R|」である場合、当該楽曲は小編成バンド等による演奏と判定できる。中央に音像定位する成分の比率が低い場合、即ち「|L+R|≦3/2|L−R|」である場合、当該楽曲は、音源が複数となる大編成のオーケストラ等による演奏と判定できる。また、録音空間が広い場合には、「L」と「R」とに同音源が含まれていても位相にずれが生じるため、「|L+R|≦3/2|L−R|」となる。
【0041】
図1において、HOLD部17は、比較判定部16から出力された、判定結果を示す情報を受信し、当該情報を所定の時間保持し、所定の時間後に最新の判定結果を示す情報を出力する。本実施形態では、HOLD部17は、例えばフラグのオン又はオフ等によりフィルタの出力を切換える信号を保持するものとする。信号を保持する時間は、例えば楽曲1曲分に相当する4、5分等である。この時間は予め定められていてもよく、後述するユーザーインターフェース21等を用いて視聴者が設定できるようにしてもよい。例えば、HOLD部17は、フィルタ出力を切換える信号を出力すると共に、内部に備えたタイマ(図示略)により時間の測定を開始し、記憶部等(図示略)に記憶した所定の時間の経過後に、最新の判定結果を示す情報に基づいて、フィルタ出力を切換える信号を出力する。また、後述するマイコン20からの信号等により、フィルタの出力を切換える信号の保持の開始や信号の保持の解除をしてもよい。
【0042】
本実施形態のオーディオ信号出力処理装置10は、上述したように、中央に音像定位する成分の割合が所定の値以上であるか否か判定し、判定結果によりフィルタ出力を切換える。従って、中央に音像定位する成分の出力が頻繁に変わるオーディオ信号の場合、フィルタ出力が頻繁に切換えられる可能性がある。例えば、大編成のオーケストラ等による演奏のオーディオ信号で、ソロパートによる演奏等で中央に音像が定位する旋律のある楽曲の場合、中央に音像定位する成分のオーディオ信号の出力レベルが高くなり、小編成のバンドによる演奏の楽曲と判断され、1曲で音像や広がり感等が頻繁に切り替わる可能性がある。上述のHOLD部17により信号を保持することで、1曲で音像や広がり感が頻繁に切り替わる可能性を低くすることができる。
【0043】
フィルタ切換え部18は、HOLD部17から出力された情報に基づいて、スローロールオフ型デジタルフィルタ12とシャープロールオフ型デジタルフィルタ13との出力を切換えて出力部19へ出力する。本実施形態では、例えばフラグのオン又はオフにより、中央に音像定位する成分割合が所定の値より大きいことを示す信号が入力された場合、シャープロールオフ型デジタルフィルタ13からの出力を出力部19に出力するものとする。また、例えばフラグのオン又はオフにより、中央に音像定位する成分割合が所定の値より小さいことを示す信号が入力された場合、スローロールオフ型デジタルフィルタ13からの出力を出力部19に出力するものとする。
【0044】
ユーザーインターフェース21は、オーディオ信号出力装置10の視聴者が、当該装置の設定をするためのインターフェースである。本実施形態では、上述したフィルタの切換えを自動切換えにするかマニュアル切換えにするかを選択する切換え選択ボタン、フィルタ出力をスローロールオフ型デジタルフィルタ12にするかシャープロールオフ型デジタルフィルタ13にするかを選択するフィルタ選択ボタン、比較判定部16が中央に音像定位するオーディオ信号成分の割合を判定するための値やHOLD部17が信号を保持する時間等を入力するためのボタン等を備えているものとする。これらのボタンは、複数のボタンやダイヤル等の組み合わせにより実現されてもよい。
【0045】
マイコン20はオーディオ信号出力装置10を制御する。本実施形態では、マイコン20は、上述した、中央に音像定位させるオーディオ信号成分の割合が所定の値より大きいか否かの判定を要求する信号を出力し、また、当該オーディオ信号出力装置10の視聴者が後述するユーザーインターフェース21を利用して入力した各種設定を適用させる処理等を行うものとする。
【0046】
マイコン20が、上述した比較判定を要求する信号を出力する処理を説明する。曲の途中でフィルタが切り替わると、音像等が曲の途中で変化し、視聴上の違和感の要因となりうる。そこで、本実施形態では、オーディオ信号の出力レベルが無音を含め十分小さい時、又は、楽曲が始まる時等に、フィルタを切換えるトリガーとなる比較判定を要求する信号を出力するものとする。
【0047】
デジタルオーディオ信号の信号レベルが十分小さい時を検出する例を説明する。マイコン20は、視聴者が音像の変化等を聞き取りえない程度の閾値を記憶部(図示略)に記憶している。この閾値は、予め設定されていてもよく、視聴者等がユーザーインターフェース21を用いて設定してもよい。マイコン20には、スローロールオフ特性デジタルフィルタ12及びシャープロールオフ特性デジタルフィルタ13に入力されるデジタルオーディオ信号と同じデジタルオーディオ信号が入力される。マイコン20は、順次入力されるデジタルオーディオ信号の信号レベルと閾値とを比較し、信号レベルが閾値より低くなるのを検出した場合、信号レベルが十分小さいと判定し、比較判定を要求する信号を出力する。
【0048】
楽曲が始まる時を検出する例を説明する。一般的に、デジタルオーディオ信号を記憶しているCD等の媒体には、デジタルオーディオ信号と関連付けられて当該デジタルオーディオ信号に関する情報が入力されている。デジタルオーディオ信号に関する情報とは、例えば、当該オーディオ信号のトラック番号、サンプリング周波数、ビット数、チャンネル数等である。通常、サンプリング周波数及びチャンネル数等は、トラック(楽曲)或いは媒体により決まっているので、サンプリング周波数及びチャンネル数等の変化によりトラック又は媒体が変わったと推測することができる。
【0049】
マイコン20には、入力部11に入力されるデジタルオーディオ信号と同じ信号と、当該信号を記憶しているCD等の媒体に記憶されている当該デジタルオーディオ信号に関する情報が入力される。このデジタルオーディオ信号に関する情報は、CD等の媒体からデジタルインターフェース(図示略)等を介して入力される。マイコン20は入力されたデータから、トラック番号、サンプリング周波数、チャンネル数等の情報を抽出し、記憶部(図示略)に一定時間記憶する。次に、順次入力されるトラック番号、サンプリング周波数、チャンネル数等と、記憶したトラック番号、サンプリング周波数、チャンネル数等とを比較し、それらのいずれか又は複数の情報が変化したか否か判定することで、トラック又は媒体が変わったことを検出する。また、記憶部にトラック番号、サンプリング周波数、チャンネル数等が記憶されていない場合、即ち、CD等の媒体が変更されて始めてトラック番号、サンプリング周波数、チャンネル数等が入力される場合等に、比較判定を要求する信号を出力してもよい。
【0050】
マイコン20は、上述のように出力レベルが十分小さいことや楽曲が始まることを検出すると、HOLD部17に信号を出力する等により、HOLD部17が保持するフィルタを切換える信号をクリアする。さらに、マイコン20は、比較判定部16に、比較判定を要求する信号を出力する。比較判定部16は、比較判定を要求する信号を受信すると、当該要求信号を受信した時点で最新のデジタルオーディオ信号について、上述した比較判定を行う。
【0051】
これにより、フィルタ切り替わり時に発生する音像の変化を視聴者に聴取しづらくすることができ、また、フィルタの切り替わりを目立たなくさせることができる。
【0052】
マイコン20が、オーディオ信号出力装置10の視聴者が後述するユーザーインターフェース21を利用して入力した各種設定を適用させる処理を説明する。視聴者はユーザーインターフェース21を用いて、オーディオ信号出力装置10の設定を入力する。入力する設定として、例えば、フィルタ出力の切換えを自動切換えにするかマニュアル切換えにするか、フィルタ出力をマニュアルで切換える場合スローロールオフ型デジタルフィルタ12からの出力にするかシャープロールオフ型デジタルフィルタ13からの出力にするか、比較判定部16が上述の比較判定するための値(X)、HOLD部17が信号を保持する時間等である。
【0053】
例えば、フィルタ出力の切換えをマニュアル切換えにする場合、マイコン20は、視聴者に選択されたフィルタに切換える信号をHOLD部17に出力する。HOLD部17は、マイコン20から入力された信号に従いフィルタを切換える信号を出力する。このとき、HOLD部17がフィルタを切換える信号を保持する時間は、時間設定無し等により再度設定が入力されるまでフィルタの切換えをしないようにしてもよく、また、所定の時間保持するようにしてもよい。さらに、上述のように、マイコン20がトラックや媒体の変更を検出し、マイコン20からの比較判定要求により、フィルタの切換えを自動切換えに変更してもよい。
【0054】
例えば、比較判定部16が上述の比較判定するための値(X)、HOLD部17が信号を保持する時間等を設定する場合、マイコン20は、視聴者に入力された情報を比較判定部16、HOLD部17等各々に出力する。比較判定部16、HOLD部17等は、各々、入力された値を既に記憶部等に記憶している値と置き換える等の処理を行う。
【0055】
入力されたデジタルオーディオ信号が、デジタルオーディオ信号処理装置10により処理されて出力される動作を説明する。オーディオ信号は、入力部11から入力される。入力されたオーディオ信号は、スローロールオフ型デジタルフィルタ12、シャープロールオフ型デジタルフィルタ13、第1のデジタルミキサー14、第2のデジタルミキサー15、マイコン20に入力される。
【0056】
マイコン20は、チャンネル数やサンプリング周波数の変化、オーディオ信号の出力値等により、信号レベルが十分小さい又はトラックや媒体等が変わった(始まった)と判定し、比較判定部16に、中央に定位する音像のオーディオ信号成分の割合が所定の値より大きいか否かの判定を要求する信号を出力する。
【0057】
スローロールオフ型デジタルフィルタ12は、直線位相特性を持つフィルタによりフィルタ処理して出力する。シャープロールオフ型デジタルフィルタ13は、カットオフ周波数で急峻にレベルが低くなる特性を持つフィルタでフィルタ処理して出力する。スローロールオフ型デジタルフィルタ12とシャープロールオフ型デジタルフィルタ13は、常時並列処理し、同じ遅延時間で出力する。
【0058】
第1のデジタルミキサー14、第2のデジタルミキサー15、比較判定部16は、マイコン20から判定を要求する信号が入力されると、入力されるオーディオ信号において、中央に定位する音像のオーディオ信号成分の割合が所定の値より大きいか否か判定する。具体的には、第1のデジタルミキサー14は、入力されたオーディオ信号に関し「|L+R|」の演算を行い、結果を出力する。第2のデジタルミキサー15は、入力されたオーディオ信号に関し「|L−R|」の演算を行い、結果を出力する。
【0059】
比較判定部16は、マイコン20から出力された比較要求信号を受信すると、当該信号を受信した時点で最新の「|L+R|」の値と「|L−R|」の値とにより、中央に定位する音像のオーディオ信号成分の割合が所定の値より大きいか否か判定する。比較判定部16は、「|L+R|≦X|L−R|」である場合、中央に定位する音像のオーディオ信号成分の割合が所定の値より小さいと判定する。「|L+R|>X|L−R|」である場合、中央に定位する音像のオーディオ信号成分の割合が所定の値より大きいと判定する。比較判定部16は、判定した結果をHOLD部17に出力する。
【0060】
HOLD部17は、比較判定部16により出力された比較判定結果を示す情報に基づいて、フィルタ出力を切換える信号を保持する。ここでは、HOLD部17は、比較判定部16から順次比較判定結果を示す情報が入力される。当該情報に基づいたフィルタ出力を切換える信号を前回出力してから、所定の時間後に、最新の情報に基づいたフィルタ出力を切換える信号を出力するものとする。また、マイコン20からの信号を受信すると、既に保持しているフィルタ出力を切換える信号をクリアし、比較判定部16から送信された新たな比較判定結果を示す情報に基づいてフィルタ出力を切換える信号を出力する。
【0061】
フィルタ切換え部18は、HOLD部17からの出力に応じて、フィルタからの出力を切換える。ここでは、中央に定位する音像のオーディオ信号成分の割合が所定の値より小さい場合、スローロールオフ型デジタルフィルタからの出力に切換えて、当該フィルタから出力されたオーディオ信号データを出力部19に出力する。中央に定位する音像のオーディオ信号成分の割合が所定の値より大きい場合、シャープロールオフ型デジタルフィルタからの出力に切換え、当該フィルタから出力されたオーディオ信号データを出力部19に出力する。
【0062】
なお、上述したデジタルオーディオ信号処理装置は、例えば、DVD(Digital Versatile Disk)プレーヤやAV(Audio Visual)アンプ等に備えられる。DVDプレーヤやAVアンプ等に備えられる場合、例えば、デジタルデータをデコードするデコーダ等の信号処理回路等から出力されたデータが、上述したデジタルオーディオ信号処理装置により処理され、当該装置により処理されたデータがD/A変換(digital/analog converter)され、出力端子等に出力される。デジタルデータとして出力される場合には、D/A変換されることなく出力端子等に出力される。
【0063】
また、上述した実施形態では、2チャンネル出力のステレオ再生方式の場合の例を説明したが、再生方式はこれに限られるわけではなく、例えば、5.1チャンネルのデジタルオーディオ信号再生方式の場合も適用可能である。通常、5.1チャンネルのデジタルオーディオ信号には、レフトチャンネルオーディオ信号「L」、ライトチャンネルオーディオ信号「R」、サラウンドレフトチャンネルオーディオ信号「SL」、サラウンドライトチャンネルオーディオ信号「SR」、センターチャンネルオーディオ信号「C」、低音専用チャンネルのオーディオ信号「LFE」が含まれている。一般的に、5.1chにおいて、レフトチャンネルオーディオ信号「L」、ライトチャンネルオーディオ信号「R」、センターチャンネルオーディオ信号「C」は、視聴位置の前方に設置された3つのスピーカにより各々出力される。サラウンドレフトチャンネルオーディオ信号「SL」及びサラウンドライトチャンネルオーディオ信号「SR」は、視聴位置の後方に設置された2つのスピーカにより各々出力される。低音専用チャンネルのオーディオ信号「LFE」は、ウーハー等の低音専用の出力装置により出力される。
【0064】
上述したデジタルオーディオ信号処理装置によるフィルタ処理を5.1chのデジタルオーディオ信号に適用する場合、例えば、レフトチャンネルオーディオ信号「L」及びライトチャンネルオーディオ信号「R」、サラウンドレフトチャンネルオーディオ信号「SL」及びサラウンドライトチャンネルオーディオ信号「SR」、センターチャンネルオーディオ信号「C」及び低音専用チャンネルのオーディオ信号「LFE」という組み合わせ各々に、1のデジタルオーディオ信号処理装置による処理を行う。即ち、5.1chのデジタルオーディオ信号に対し、3つのデジタルオーディオ信号処理装置を適用する。
【0065】
なお、5.1チャンネルのデジタルオーディオ信号再生方式にデジタルオーディオ信号処理装置を適用する場合、上述したデジタルオーディオ信号の組み合わせすべてに当該装置を適用するとは限らず、例えば、レフトチャンネルオーディオ信号「L」及びライトチャンネルオーディオ信号「R」の組み合わせのみ、レフトチャンネルオーディオ信号「L」及びライトチャンネルオーディオ信号「R」とサラウンドレフトチャンネルオーディオ信号「SL」及びサラウンドライトチャンネルオーディオ信号「SR」との組み合わせのみ等でもよい。
<第2実施形態>
次に、第2実施形態を説明する。第2実施形態は、上述した第1実施形態の第1のデジタルミキサー14、第2のデジタルミキサー15、比較判定部16の動作を、マイコン20が制御するものである。なお、以下の説明では、上述した第1実施形態と同じ構成及び動作をするものは、同じ符号を付与して説明を省略し、異なる構成及び動作のみ詳細に説明する。
【0066】
図3は、第2実施形態のデジタルオーディオ信号処理装置10の一例を示している。図3において、デジタルオーディオ信号処理装置10は、入力部11、スローロールオフ型デジタルフィルタ12、シャープロールオフ型デジタルフィルタ13、第1のデジタルミキサー14、第2のデジタルミキサー15、比較判定部16、HOLD部17、フィルタ切換え部18、出力部19、マイコン20、ユーザーインターフェース21等を有する。このマイコン20及びユーザーインターフェース21は、デジタルオーディオ信号処理装置10に備えられてもよく、又、他装置の機能の一部又は全てをデジタルオーディオ信号処理装置10で使用できるようにして実現してもよい。
【0067】
マイコン20には、デジタルオーディオ信号処理装置10に入力されるものと同じデジタルオーディオ信号と、該オーディオ信号に関する情報が入力される。マイコン20は、MPU201、メモリ202、記憶部203等を有する。MPU201は、メモリ202にロードしたプログラムを実行することにより、切換え制御部211、停止指示部212、登録部213等を実現する。
【0068】
記憶部203は、デジタルオーディオ信号に関する情報を格納する領域と、該各デジタルオーディオ信号に関する情報に対応するデジタルフィルタを示す情報を格納する領域とを1組以上有する。これらの領域には、後述する動作により、デジタルオーディオ信号に関する情報と、デジタルフィルタを示す情報とが格納される。
【0069】
切換え制御部211は、記憶部203の、デジタルオーディオ信号に関する情報を格納する領域から、入力されたデジタルオーディオ信号に関する情報と一致する情報を検索し、該当する情報が検索されると、該当する情報の格納されている領域に対応する領域から、デジタルフィルタを示す情報を読出し、該読出したデジタルフィルタを示す情報を出力することで、フィルタ切換え部18に、デジタルフィルタ出力を切換えさせる。停止指示部212は、切換え制御部211がデジタルフィルタを示す情報を出力した場合、第1のデジタルミキサー14、第2のデジタルミキサー15及び比較判定部16の動作を停止させる。登録部213は、デジタルオーディオ信号に関する情報と、該オーディオ信号が入力された場合に適用されたデジタルフィルタとを対応付けて記憶部203に格納する。
【0070】
デジタルオーディオ信号に関する情報とは、ここでは、CD等の媒体の一部に記憶されている、又は、デジタルオーディオ信号に付与等されているTOC(Table of Contents)情報であるものとする。TOC情報とは、例えば、1つの媒体に記憶されている総トラック数、各曲のトラック番号、サンプリング周波数、ビット数、チャンネル数、演奏時間、曲名等のテキスト情報等の情報である。
【0071】
ここで、記憶部203に格納される、TOC情報とデジタルフィルタとを対応付ける情報の一例を図4に示す。図4において、テーブル231は、TOC情報2311と、デジタルフィルタ2312とを対応付けて記憶している。TOC情報2311は、マイコン20に入力されたTOC情報であり、例えば、媒体に記憶されている総トラック数、各曲のトラック番号、サンプリング周波数、ビット数、チャンネル数、演奏時間、テキスト情報等のTOE情報の全て又は一部等である。デジタルフィルタ2312は、対応するTOC情報が入力された場合にフィルタ切換え部18が選択したデジタルフィルタを示す情報である。テーブル231に格納される情報は、後述する動作により取得され、格納されるものとする。
【0072】
入力部11、スローロールオフ型デジタルフィルタ12、シャープロールオフ型デジタルフィルタ13、第1のデジタルミキサー14、第2のデジタルミキサー15、比較判定部16、HOLD部17、フィルタ切換え部18、出力部19、ユーザーインターフェース21に関しては、後述する動作を除き、上述した第1実施形態と同じであるので、説明を省略する。
【0073】
次に、第2実施形態の動作例を説明する。マイコン20の動作例は、図5を参照して説明する。
【0074】
デジタルオーディオ信号は、入力部11から入力される。入力されたデジタルオーディオ信号は、スローロールオフ型デジタルフィルタ12、シャープロールオフ型デジタルフィルタ13、第1のデジタルミキサー14、第2のデジタルミキサー15に入力される。マイコン20には、入力部11に入力されるデジタルオーディオ信号と同じオーディオ信号と、該デジタルオーディオ信号のTOC情報とが入力される。
【0075】
チャンネル数やサンプリング周波数の変化、オーディオ信号の出力値等により、信号レベルが十分小さい又はトラックや媒体等が変わった(始まった)と判定すると、マイコン20の切換え制御部211は、記憶部203の特定の領域から、過去に入力されたデジタルオーディオ信号のTOC信号を読み出し(S501)、今回入力されたTOC情報と同じ情報が、過去に入力されたデジタルオーディオ信号のTOC信号に含まれているか否か判定する(S502)。ここでは、切換え制御部211は、記憶部203に格納しているテーブル231のTOC情報2311を参照し、入力されたTOC情報の一部又は全てがTOC情報2311に含まれているか否か判定する。
【0076】
S502の判定の結果、該当するTOC情報が含まれていない場合、切換え制御部211は、TOC情報の登録を登録部213に指示する。さらに、切換え制御部211は、比較判定部16に、中央に定位する音像のオーディオ信号成分の割合が所定の値より大きいか否かの判定を要求する比較要求信号を出力すると共に、HOLD部17に、既に保持している信号のクリアを指示する信号を出力する。
【0077】
一方、スローロールオフ型デジタルフィルタ12は、直線位相特性を持つフィルタによりフィルタ処理して出力する。シャープロールオフ型デジタルフィルタ13は、カットオフ周波数で急峻にレベルが低くなる特性を持つフィルタでフィルタ処理して出力する。スローロールオフ型デジタルフィルタ12とシャープロールオフ型デジタルフィルタ13は、常時並列処理し、同じ遅延時間で出力する。この動作は、上述の第1実施形態と同じである。
【0078】
第1のデジタルミキサー14、第2のデジタルミキサー15、比較判定部16は、マイコン20から判定を要求する信号が入力されると、入力されるオーディオ信号において、中央に定位する音像のオーディオ信号成分の割合が所定の値より大きいか否か判定する。この動作例は、上述した第1実施形態と同じであるので省略する。比較判定部16は、判定した結果をHOLD部17に出力する。
【0079】
なお、ここで、後述する停止指示部212の動作により、第1のデジタルミキサー14、第2のデジタルミキサー15、比較判定部16の動作が停止されている場合、切換え制御部211は、まず、第1のデジタルミキサー14、第2のデジタルミキサー15、比較判定部16の各々を動作させる信号を出力した後、上述のように、比較判定部16に比較要求信号を出力すると共に、HOLD部17に既に保持している信号のクリアを指示する信号を出力する。第1のデジタルミキサー14、第2のデジタルミキサー15、比較判定部16の動作が停止されているか否か判定するためには、例えば、切換え制御部211は、後述のように停止指示部212に指示した後、第1のデジタルミキサー14、第2のデジタルミキサー15、比較判定部16の動作が停止されているか否かを示すフラグを変更する。切換え制御部211は、該フラグを参照し、第1のデジタルミキサー14、第2のデジタルミキサー15、比較判定部16の動作が停止されているか否か判定する。
【0080】
HOLD部17は、マイコン20からの信号が入力されると、既に保持しているフィルタ出力を切換える信号をクリアし、比較判定部16から送信された新たな比較判定結果を示す情報に基づいてフィルタ出力を切換える信号を、フィルタ切換え部18及びマイコン20に出力し、該信号を所定時間保持する。HOLD部17は、入力された情報に基づいてフィルタ出力を切換える信号を前回出力してから、所定の時間後に、入力された最新の情報に基づいてフィルタ出力を切換える信号を出力するものとする。
【0081】
一方、マイコン20の登録部213は、入力されたTOC情報と、HOLD部17から入力された情報に示されるデジタルフィルタを示す情報とを対応付けて記憶部203に格納する(S503)。具体的には、例えば、登録部213は、テーブル231のTOC情報2311に、入力されたTOC情報の全て又は一部を格納し、テーブル231のデジタルフィルタ2312に、HOLD部17から入力された情報に示されるデジタルフィルタを示す情報を格納する。本実施形態では、登録部213は、例えばフラグのオン又はオフにより、中央に音像定位する成分割合が所定の値より大きいことを示す信号が入力された場合、シャープロールオフ型デジタルフィルタを示す情報を、テーブル231のデジタルフィルタ2312に格納する。また、登録部213は、例えばフラグのオン又はオフにより、中央に音像定位する成分割合が所定の値より小さいことを示す信号が入力された場合、スローロールオフ型デジタルフィルタを示す情報を、テーブル231のデジタルフィルタ2312に格納する。
【0082】
なお、テーブル231のTOC情報2311は、媒体毎でもよく、又、楽曲毎でもよい。媒体毎である場合、TOC情報2311には、例えば、サンプリング周波数、ビット数、チャンネル数、総トラック数、媒体のタイトル名のテキスト情報等が格納される。また、楽曲毎である場合、TOC情報2311には、例えば、サンプリング周波数、ビット数、チャンネル数、総トラック数、媒体のタイトル名のテキスト情報等の媒体毎の情報に加え、該楽曲のトラック番号、楽曲名等のテキスト情報等が格納される。
【0083】
フィルタ切換え部18は、HOLD部17からの出力に応じて、フィルタからの出力を切換える。
【0084】
S502の判定の結果、入力されたTOC情報が含まれている場合、切換え制御部211は、記憶部203から、入力されたTOC情報に対応するデジタルフィルタを示す情報を読出し、HOLD部17に、既に保持している信号のクリアを指示する信号と、該読み出したデジタルフィルタを示す情報とを出力する(S504)。具体的には、例えば、切換え制御部211は、テーブル231から、入力されたTOC情報の全て又は一部と一致するTOC情報2311と対応付けられたデジタルフィルタ2312を読出し、該デジタルフィルタを示す情報を、HOLD部17に出力する。
【0085】
HOLD17は、上述と同様に、マイコン20から入力された情報に示されるデジタルフィルタに切換える信号をフィルタ切換え部18に出力する。
【0086】
一方、マイコン20の停止指示部212は、第1のデジタルミキサー14、第2のデジタルミキサー15、比較判定部16の動作を停止させる(S505)。具体的には、例えば、停止指示部212は、切換え制御部211によるS502の判定の結果、入力されたTOC情報が含まれている場合、第1のデジタルミキサー14、第2のデジタルミキサー15、較判定部16に、各々の動作を停止させるための信号を出力する。この出力は、上記S504の動作、即ち、切換え制御部211がHOLD部17にフィルタを示す情報を出力する動作の後でもよく、先でもよい。
【0087】
第1のデジタルミキサー14、第2のデジタルミキサー15、比較判定部16の各々は、マイコン20からの信号が入力されると、該信号に従い動作を停止する。
【0088】
このように、過去に同じデジタルオーディオ信号が入力されている場合、過去に選択したデジタルフィルタからの出力に切換えると共に、第1のデジタルミキサー14、第2のデジタルミキサー15、比較判定部16の動作を停止させることができる。第1のデジタルミキサー14、第2のデジタルミキサー15、比較判定部16の無駄な動作を停止することができるので、電力消費を低減させることが可能となる。
【0089】
図5に示す動作の任意の処理の段階で、ユーザーインターフェース21から、フィルタの切換えをマニュアル切換えにする指示を示す情報と、切換えるデジタルフィルタを示す情報とが入力された場合、切換え制御部211は、HOLD部17に、既に保持している信号をクリアさせる信号と、入力されたデジタルフィルタに切換える信号とを出力する。さらに、切換え制御部211は、停止指示部212に、演算装置の停止を指示し、登録部213に、TOC情報の登録を指示する。
【0090】
停止指示部212は、該指示に従い、上述と同様に、第1のデジタルミキサー14、第2のデジタルミキサー15、比較判定部16の動作を停止させる。また、登録部213は、該指示に従い、上述と同様に、該時点での楽曲毎又は媒体毎のTOC情報と、ユーザーインターフェース21から入力されたデジタルフィルタを示す情報とを、TOC情報2311及びデジタルフィルタ2312としてテーブル231に格納する。
【0091】
一方、HOLD17は、上述と同様に、マイコン20から入力された情報に示されるデジタルフィルタに切換える信号をフィルタ切換え部18に出力する。
【0092】
このように、視聴者の嗜好等に応じて、ユーザーインターフェース21から、デジタルフィルタを示す情報が入力された場合、該入力された情報に示されるデジタルフィルタからの出力に切換えると共に、第1のデジタルミキサー14、第2のデジタルミキサー15、比較判定部16の動作を停止させることができる。第1のデジタルミキサー14、第2のデジタルミキサー15、比較判定部16の無駄な動作を停止することができるので、初めて入力されるデジタルオーディオ信号の場合でも、電力消費を低減させることが可能となる。
【0093】
また、上述のように、ユーザーインターフェース21から、デジタルフィルタを示す情報が入力された場合、該入力されたデジタルフィルタを示す情報と、TOC情報とを対応付けて記憶部203に格納することにより、次回、同じデジタルオーディオ信号が入力された場合に、視聴者は、ユーザーインターフェース21を用いてデジタルフィルタを指示することなく、前回と同じデジタルフィルタからの出力を視聴等することができる。
【0094】
以上、この発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0095】
例えば、ユーザーインターフェースから、フィルタの切換えをマニュアル切換えにする指示を示す情報と、切換えるデジタルフィルタを示す情報とが入力され、既に同じTOC情報がテーブルに格納されている場合、登録部は、既に記憶されているTOC情報に対応付けられたデジタルフィルタを示す情報に、新たなデジタルフィルタを示す情報を上書きしてもよく、内部時計(図示略)から取得した現在の時間等と対応付けて別に格納してもよい。
【0096】
また、例えば、判定部は、入力されたTOC情報と一致するTOC情報が複数記憶されている場合、一致するTOC情報と対応付けられているデジタルフィルタのうち、対応付けられている回数の最も多いデジタルフィルタを示す情報を出力してもよく、また、現在の日時と最も近い日時と対応付けられたデジタルフィルタを示す情報を出力してもよい。
【0097】
また、例えば、停止指示部は、フィルタ切換え部により切換えられ出力されているデジタルフィルタ以外のデジタルフィルタの動作を停止させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の一実施形態における構成例を示す図である。
【図2】同実施形態において、デジタルオーディオ信号の中央に音像定位させる割合が基準値より大きいか否か判定する条件の例を示す図である。
【図3】同実施形態において、デジタルオーディオ信号処理装置の他の構成例を示す図である。
【図4】同実施形態において、デジタルオーディオ信号に関する情報と、該デジタルオーディオ信号が入力された場合に選択されたデジタルフィルタとを対応付けて記憶する例である。
【図5】同実施形態において、マイコンの動作例を説明するフロー図である。
【符号の説明】
【0099】
10:デジタルオーディオ信号処理装置、11入力部、12:スローロールオフ型デジタルフィルタ、13:シャープロールオフ型デジタルフィルタ、14:第1のデジタルミキサー、15:第2のデジタルミキサー、16:比較判定部、17:HOLD部、18:フィルタ切換え部、19:出力部、20:マイコン、21:ユーザーインターフェース21:比較判定手段16判定条件、31:中央に音像定位させる割合、32:デジタルフィルタ、201:MPU、202:メモリ、203:記憶部、211:切換え制御部、212:停止指示部、231:登録部、231:テーブル、2311:TOC情報、2312:デジタルフィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、中央に音像を定位させるオーディオ信号を含むデジタルオーディオ信号が入力されるデジタルオーディオ信号出力装置であって、
前記デジタルオーディオ信号をフィルタリングして出力するスローロールオフ特性デジタルフィルタと、
前記デジタルオーディオ信号をフィルタリングして出力するシャープロールオフ特性デジタルフィルタと、
前記デジタルオーディオ信号において前記中央に音像を定位させるオーディオ信号成分の割合が所定の値より大きいか否か比較判定した結果を示す情報を出力する比較判定手段と、
前記比較判定した結果を示す情報に応じて、前記スローロールオフ特性デジタルフィルタからの出力と、前記シャープロールオフ特性デジタルフィルタからの出力とを切換えて出力する切換え手段と、
を備えることを特徴とするデジタルオーディオ信号出力装置。
【請求項2】
請求項1記載のデジタルオーディオ信号出力装置であって、
前記切換え手段は、前記中央に音像を定位させるオーディオ信号成分の割合が所定の値より大きい結果を示す情報が入力された場合、前記シャープロールオフ特性デジタルフィルタからの出力に切換え、前記中央に音像を定位させるオーディオ信号成分の割合が所定の値より小さい結果を示す情報が入力された場合、前記スローロールオフ特性デジタルフィルタからの出力に切換えること
を特徴とするデジタルオーディオ信号出力装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のデジタルオーディオ信号出力装置であって、
前記比較判定手段から、比較判定した結果を示す情報が入力され、前記切換え手段に、前回比較判定した結果を示す情報を出力してから所定の時間の後、最新の比較判定した結果を示す情報を出力するHOLD手段をさらに備え、
前記切換え手段は、前記HOLD手段から入力された情報に基づいて前記スローロールオフ特性デジタルフィルタからの出力と前記シャープロールオフ特性デジタルフィルタからの出力とを切換えること
を特徴とするデジタルオーディオ信号出力装置。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれかに記載のデジタルオーディオ信号出力装置であって、
前記比較判定手段に要求信号を出力する要求信号出力手段をさらに備え、
前記比較判定手段は、要求信号を受信した場合に、デジタルオーディオ信号において中央に音像を定位させるオーディオ信号成分の割合の比較判定を行うこと
を特徴とするデジタルオーディオ信号出力装置。
【請求項5】
センターチャンネルオーディオ信号とレフトチャンネルオーディオ信号とライトチャンネルオーディオ信号とが、レフトトラックオーディオ信号とライトトラックオーディオ信号とにダウンミックスされたデジタルオーディオ信号が入力されるデジタルオーディオ信号出力装置であって、
前記デジタルオーディオ信号をフィルタリングして出力するスローロールオフ特性デジタルフィルタと、
前記デジタルオーディオ信号をフィルタリングして出力するシャープロールオフ特性デジタルフィルタと、
前記レフトトラックオーディオ信号とライトトラックオーディオ信号との信号和と、前記レフトトラックオーディオ信号と前記ライトトラックオーディオ信号との信号差との割合が、所定の値より大きいか否か比較判定した結果を示す情報を出力する比較判定手段と、
前記比較判定した結果を示す情報に応じて、前記スローロールオフ特性デジタルフィルタからの出力と、前記シャープロールオフ特性デジタルフィルタからの出力とを切換えて出力する切換え手段と、
を備えることを特徴とするデジタルオーディオ信号出力装置。
【請求項6】
請求項5記載のデジタルオーディオ信号出力装置であって、
前記切換え手段は、前記レフトトラックオーディオ信号とライトトラックオーディオ信号との信号和と、前記レフトトラックオーディオ信号と前記ライトトラックオーディオ信号との信号差との割合が、所定の値より大きい結果を示す情報が入力された場合、前記シャープロールオフ特性デジタルフィルタからの出力に切換え、前記レフトトラックオーディオ信号とライトトラックオーディオ信号との信号和と、前記レフトトラックオーディオ信号と前記ライトトラックオーディオ信号との信号差との割合が、所定の値より小さい結果を示す情報が入力された場合、前記スローロールオフ特性デジタルフィルタからの出力に切換えること
を特徴とするデジタルオーディオ信号出力装置。
【請求項7】
請求項1乃至6何れかに記載のデジタルオーディオ信号出力装置であって、
前記デジタルオーディオ信号出力装置には、前記入力されるデジタルオーディオ信号に関する情報がさらに入力され、
デジタルオーディオ信号に関する情報と、前記複数のデジタルフィルタのうち何れかのデジタルフィルタを示す情報とを対応付けて記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に、前記入力されたデジタルオーディオ信号に関する情報と一致するデジタルオーディオ信号に関する情報が含まれている場合、該デジタルオーディオ信号に関する情報と対応付けられたデジタルフィルタを示す情報を前記記憶手段から読出し、該デジタルフィルタを示す情報を前記切換え手段に出力する切換え制御手段と、
前記記憶手段に、前記入力されたデジタルオーディオ信号に関する情報と一致するデジタルオーディオ信号に関する情報が含まれている場合、前記比較判定手段の動作を停止させる停止手段と、を有し、
前記切換え手段は、前記切換え制御手段から出力された情報に示されるデジタルフィルタからの出力に切換えること
を特徴とするデジタルオーディオ信号出力装置。
【請求項8】
請求項7記載のデジタルオーディオ信号出力装置であって、
前記記憶手段に、前記入力されたデジタルオーディオ信号に関する情報と一致するデジタルオーディオ信号に関する情報が含まれていない場合、前記入力されたデジタルオーディオ信号に関する情報と、前記切換え手段が出力を切換えたデジタルフィルタを示す情報とを対応付けて前記記憶手段に記憶させる登録手段をさらに有すること
を特徴とするデジタルオーディオ信号出力装置。
【請求項9】
請求項7又は8記載のデジタルオーディオ信号出力装置であって、
前記スローロールオフ特性デジタルフィルタ、又は、前記シャープロールオフ特性デジタルフィルタを示す情報が入力される入力手段、をさらに有し、
前記停止手段は、前記比較判定手段の動作を停止させ、
前記切換え手段は、前記入力手段に入力された情報に示されるデジタルフィルタからの出力に切換えること
を特徴とするデジタルオーディオ信号出力装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−67550(P2006−67550A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−83842(P2005−83842)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【出願人】(301066006)株式会社デノン (61)
【Fターム(参考)】