説明

デジタルカメラ用フォーカルプレンシャッタ

【課題】コンパクトな構成のダイレクトタイプのデジタルカメラ用フォーカルプレンシャッタを提供する。
【解決手段】先羽根用第1駆動部材14と、先羽根用第2駆動部材15とが、軸1gに回転可能に取り付けられ、後羽根用駆動部材20が、軸1hに回転可能に取り付けられており、第1駆動部材14は、セット作動時に、セットばね30の付勢力によって上記第2駆動部材15に追従して回転し、撮影時には、上記第2駆動部材15に押されて回転する。抑止手段13は、抑止部材13bを上記第1駆動部材14の被抑止部14bの作動軌跡内に出入りさせ得るようになっている。一眼レフカメラで光学ファインダを用いて撮影するときは、セット作動時に、抑止部材13bが被抑止部14bの作動軌跡内に入っており、電子ファインダを用いて撮影するときは、セット作動時に、抑止部材13bが被抑止部14bの作動軌跡外にあるようにすることが可能になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラ用のフォーカルプレンシャッタに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ用のフォーカルプレンシャッタには、先羽根と後羽根という二つのシャッタ羽根を備えているタイプのものと、一つのシャッタ羽根を備えているタイプのものとがある。そして、前者のタイプのものは、セット状態においては先羽根が露光開口を覆っており、撮影に際しては、先羽根と後羽根を同じ方向へ順に走行させ、先羽根が露光開口を開き始めることによってCCD等の撮像素子に対する撮影のための露光(以下、撮影露光という)を開始し、後羽根が露光開口を閉じ終わることによって撮影露光を終了するようにしている。そして、その後、撮像情報が撮像素子から情報処理回路を介して記憶装置に記憶されると、レリーズ後におけるカメラとしての一連の撮影作動が終了したことになる。
【0003】
また、後者のタイプのものは、2種類の撮影方式が知られていて、いずれも、セット状態においては露光開口を全開にしているが、一方は、電子制御回路が撮像素子を制御することによって撮影露光を開始し、シャッタ羽根が露光開口を閉じ終わることによって撮影露光を終了するようにしたものであり、他方は、撮影露光の開始と終了との両方が、いずれも電子制御回路が撮像素子を制御することによって行われた後、シャッタ羽根が露光開口を閉じるようにしたものである。そして、いずれの場合も、シャッタ羽根が露光開口を閉じ終わった後、撮像情報が撮像素子から情報処理回路を介して記憶装置に転送されると、カメラとしての一連の撮影作動が終了したことになる。
【0004】
本発明は、前者のタイプのデジタルカメラ用フォーカルプレンシャッタに属するものであるが、このタイプのフォーカルプレンシャッタは、先羽根と後羽根は、先羽根用駆動部材と後羽根用駆動部材に連結されており、撮影時には、それらの駆動部材が先羽根用駆動ばねと後羽根用駆動ばねの付勢力によって回転することによって走行させられ、セット時には、それらの駆動部材が、初期位置から回転するセット部材によって、各々の駆動ばねの付勢力に抗してセット位置まで逆転させられるようになっている。そして、それらの駆動部材を、次の撮影が行われるまで、セット位置に保っておくための構成としては、従来から、係止タイプと言われているものと、ダイレクトタイプと言われているものが知られている。
【0005】
即ち、係止タイプというのは、各駆動部材が、セット位置で各々の係止部材によって係止されているようにしたものである。そのため、セット部材は、セット作動によって、各駆動部材を各々の係止部材に係止させると、直ちに初期位置へ復帰させるようにしてもよいし、カメラのレリーズ後であって先羽根用駆動部材が先羽根用駆動ばねの付勢力によって回転を開始する前に初期位置へ復帰させるようにしてもよく、撮影に際しては、各々の係止部材が夫々の電磁石に操作されて各駆動部材の係止を解くと、先羽根と後羽根が走行するように構成されている。
【0006】
他方、ダイレクトタイプというのは、各駆動部材が、鉄片部材を備えており、セット部材は、セット作動によって、それらの鉄片部材を各々の電磁石に接触させた状態で停止し、次の撮影までその状態を保っているようにしたものである。そのため、セット部材は、次の撮影時に、それらの鉄片部材が各々の電磁石に吸着されると、初期位置へ復帰し、その後、各々の電磁石が消磁して夫々の鉄片部材を釈放すると、各駆動部材が回転して、先羽根と後羽根が走行するように構成されている。
【0007】
また、デジタルカメラの場合には、撮影前に被写体像を観察する手段として、光学ファインダを備えたものと、液晶パネルなどの表示装置を用いた電子ファインダを備えたものと、それらの両方を備えたものとがあるが、最近では、少なくとも、電子ファインダを備えていることが必須になっている。そして、電子ファインダを用いて撮影前の被写体像を観察できるようにする場合は、撮影用の撮像素子を、撮影前の被写体像を観察する場合の撮像素子として兼用させるのが好都合であるが、その点、シャッタ羽根を一つだけ備えているタイプのフォーカルプレンシャッタの場合には、セット状態においては、必ず露光開口を全開にしているので、撮像素子を兼用させても、シャッタの構成上では特に問題となることはない。
【0008】
ところが、二つのシャッタ羽根を備えているタイプのフォーカルプレンシャッタの場合は、セット状態においては、露光開口を全開にしておき、撮影に際してレリーズボタンが押されると、その初期段階において、先ず、先羽根を露光開口を覆った状態に作動させておき、その後に先羽根と後羽根とを順に同じ方向へ走行させるようにする必要があるため、シャッタの構成は複雑になってしまうことになる。そして、下記の特許文献1には、光学ファインダと電子ファインダとを備えているカメラに採用されたとき、撮影者が撮影前に、光学ファインダを用いて撮影する場合と電子ファインダを用いて撮影する場合とを選択することが可能であって、いずれの場合においても、先羽根が露光開口を開き始めることによって撮影露光を開始し、後羽根が露光開口を閉じ終わることによって撮影露光を終了するようにしたダイレクトタイプのフォーカルプレンシャッタが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−222059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のように、特許文献1に記載されているフォーカルプレンシャッタは、二つのシャッタ羽根を備えているシャッタではあるが、光学ファインダを用いて撮影をすることができるだけではなく、撮影用の撮像素子を用いて、撮影しようとする被写体像を電子ファインダで観察しながら撮影をすることも可能になっている。即ち、特許文献1に記載されているカメラは、撮影者が、電子ファインダを用いる撮影を選択した場合には、可動ミラー(クイックリターンミラー)はアップ状態に維持され、且つ露光開口は全開状態になっており、撮影に際してカメラのレリーズ釦が押されると、先ず、先羽根が露光開口を閉鎖し、その後、先羽根が露光開口を開き始めることによって撮影露光を開始し、さらに所定時間後に、後羽根が露光開口を閉じ終わることによって撮影露光を終了するように構成されている。
【0011】
ところが、最近の高級カメラは、ますます多機能化が進んでおり、このように二つのシャッタ羽根を作動させて撮影を行えるように構成したフォーカルプレンシャッタであっても、撮影前に撮影者が選択することにより、上記した一つのシャッタ羽根を備えているフォーカルプレンシャッタのように、セット状態においては露光開口が全開になっており、撮影に際してカメラのレリーズ釦が押されると、露光開口を全開にしている状態において、電子制御回路が撮像素子を制御することによって撮影露光を開始し、シャッタ羽根が露光開口を閉じ終わることによって撮影露光を終了するようにした撮影や、撮影露光の開始と終了の両方が、いずれも電子制御回路が撮像素子を制御することによって行われ、その後、後羽根によって露光開口を閉じるようにした撮影も行えるようにしたいという要求がある。
【0012】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、光学ファインダを用いて撮影する場合には、セット状態において、先羽根が露光開口を閉じ後羽根が露光開口から退いていて、撮影に際しては、先羽根が露光開口を開き始めることによって撮影露光を開始し後羽根が露光開口を閉じ終わることによって撮影露光を終わるようにしたモードでの撮影を行うようにすることが可能であるし、また、電子ファインダを用いて撮影する場合には、セット状態において、先羽根と後羽根の両方が露光開口を開いているようにし、撮影に際しては、レリーズ後の初期段階において先羽根が露光開口を一旦閉じた後、先羽根が露光開口を開き始めることによって撮影露光を開始し後羽根が露光開口を閉じ終わることによって撮影露光が終わるようにしたモードでの撮影を行うようにすることが可能であると共に、撮影に際しては先羽根を作動させることなく、電子制御回路が撮像素子を制御することにより、撮影露光の開始だけを行わせたり、撮影露光の開始と終了の両方を行わせることによって、後羽根だけを露光開口を閉じるために作動させるようにしたモードでの撮影も行うようにすることの可能な、コンパクトな構成のダイレクトタイプのデジタルカメラ用フォーカルプレンシャッタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明のデジタルカメラ用フォーカルプレンシャッタは、先羽根を連結していて被押動部と被抑止部とを有しておりシャッタ地板の第1軸に対して回転可能に取り付けられている先羽根用第1駆動部材と、押動部を有していて前記第1軸に回転可能に取り付力けられており撮影時において先羽根用駆動ばねの付勢によって回転させられその回転時に該押動部が前記被押動部を押して先羽根用第1駆動部材を共に回転させたときには先羽根に露光開口を開かせる先羽根用第2駆動部材と、セット状態においては先羽根用第1駆動部材を先羽根が露光開口を覆う位置へ回転させ得るように直接又は間接に付勢しているセットばねと、後羽根を連結していて前記シャッタ地板の第2軸に回転可能に取り付けられており撮影時には後羽根用駆動ばねの付勢力によって回転させられ後羽根に露光開口を閉じさせる後羽根用駆動部材と、前記シャッタ地板の第3軸に回転可能に取り付けられておりセット作動時には初期位置から回転して先羽根用第2駆動部材と後羽根用駆動部材とを前記各駆動ばねの付勢力に抗して回転させセット位置においてはそれらの駆動部材をセット状態に維持しカメラのレリーズ後であって撮影露光開始前には初期位置へ復帰するセット部材と、前記被抑止部の作動軌跡内に出入り可能な抑止部材を有していて前記シャッタ地板に取り付けられており該抑止部材が前記被抑止部の作動軌跡外にある場合は撮影終了直後であって前記セット部材のセット作動開始前において該抑止部材を前記被抑止部の作動軌跡内に作動させることが可能であり該抑止部材が前記被抑止部の作動軌跡内にある場合は前記被抑止部の抑止状態において該抑止部材を前記被抑止部の作動軌跡外に作動させることが可能な抑止手段と、を備えているようにする。
【0014】
このような本発明のデジタルカメラ用フォーカルプレンシャッタは、前記抑止手段が、電磁装置であって、前記抑止部材が、該電磁装置の往復作動可能な可動子であるようにしてもよい。また、前記抑止手段が、電磁アクチュエータと、該電磁アクチュエータによって往復作動させられる部材とを有しており、該部材が前記抑止部材であるようにしてもよい。
【0015】
しかしながら、前記抑止手段が、電磁装置であって、前記抑止部材が、前記可動子と一体化された部材であるようにするのが最も実用的である。その場合、前記可動子が、回転子であることが好ましく、特に、前記回転子が、前記電磁装置の固定子コイルに対する通電方向に対応した方向へ所定の角度範囲で往復回転させられる永久磁石回転子であり、前記抑止部材は、該永久磁石回転子の径方向に延伸して形成され、その先端部を前記被抑止部に対する抑止部としているようにするのが好ましい。そして、さらにその場合には、前記電磁装置の固定子には磁性体部材が取り付けられており、前記固定子コイルへの通電を断ったときには、前記永久磁石回転子は、前記回転角度範囲の両端のいずれかの位置において、該磁性体部材との間に作用する磁力によって、停止状態を維持されるようにすると、消費電力の点で有利なものとなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のデジタルカメラ用フォーカルプレンシャッタは、先羽根と後羽根を備えたコンパクトな構成をしているにも関わらず、光学ファインダを用いて撮影する場合には、セット状態においては、先羽根が露光開口を閉じ後羽根が露光開口から退いていて、撮影に際しては、先羽根が露光開口を開き始めることによって撮影露光を開始し後羽根が露光開口を閉じ終わることによって撮影露光を終わるようにしたモードでの撮影も行えるようにすることができるし、また、電子ファインダを用いて撮影する場合には、セット状態においては、先羽根と後羽根の両方が露光開口を開いていて、撮影に際しては、レリーズ後の初期段階において先羽根が露光開口を一旦閉じた後に、先羽根が露光開口を開き始めることによって撮影露光を開始し後羽根が露光開口を閉じ終わることによって撮影露光を終わるようにしたモードでの撮影を行えるようにすることができると共に、撮影に際しては先羽根を作動させることなく、電子制御回路が撮像素子を制御することによって、撮影露光の開始だけを行わせるようにしたり、撮影露光の開始と終了の両方を行わせるようにしたりすることによって、後羽根だけを露光開口を閉じるために作動させるようにしたモードでの撮影も行えるようにすることが可能であるから、少なくとも、それらのうちの二つの撮影モードを選択して撮影することを可能にしたカメラに用いて極めて有効なものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例の全体を示した平面図である。
【図2】図1における左側の約半分を拡大して示した平面図である。
【図3】図2を右側から見て、一部の部材を断面で示した側面図である。
【図4】第1撮影モードを選択している場合におけるセット状態を示した平面図である。
【図5】図4の状態においてカメラのレリーズボタンが押された後ではあるが、実際に撮影露光が開始される前の状態を示した平面図である。
【図6】図5の状態から先羽根が走行を開始し露光開口を全開にした状態を示した平面図である。
【図7】図6の状態から後羽根が走行を開始し露光開口を閉鎖した状態を示した平面図である。
【図8】第1撮影モードで撮影する場合における各主要構成手段の作動関係を示すタイミングチャートである。
【図9】第1撮影モードの選択状態において、第2撮影モード又は第3撮影モードを選択した場合における切換え時の状態を示した平面図である。
【図10】第2撮影モード又は第3撮影モードを選択している場合におけるセット状態を示した平面図である。
【図11】第1撮影モードから第2撮影モード又は第3撮影モードへ第1の切換え方式によって切り換えるときの各主要構成手段の作動関係を示すタイミングチャートである。
【図12】第1撮影モードから第2撮影モード又は第3撮影モードへ第2の切換え方式によって切り換えるときの各主要構成手段の作動関係を示すタイミングチャートである。
【図13】第1撮影モードから第2撮影モード又は第3撮影モードへ第3の切換え方式によって切り換えるときの各主要構成手段の作動関係を示すタイミングチャートである。
【図14】第2撮影モードで撮影する場合における各主要構成手段の作動関係を示すタイミングチャートである。
【図15】第3撮影モードの選択時において、カメラのレリーズボタンが押された直後の状態を示した平面図である。
【図16】第3撮影モード選択時において、図15の状態から後羽根が走行を開始し露光開口を閉鎖した状態を示した平面図である。
【図17】第3撮影モードで撮影する場合における各主要構成手段の作動関係を示すタイミングチャートである。
【図18】第2撮影モード又は第3撮影モードから第1撮影モードへ切り換えるときの各主要構成手段の作動関係を示すタイミングチャートである
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態を、図示した実施例によって説明する。上記したように、本発明のデジタルカメラ用フォーカルプレンシャッタは、光学ファインダを用いて撮影する場合には、セット状態において、先羽根が露光開口を閉じ後羽根が露光開口から退いていて、撮影に際しては、先羽根が露光開口を開き始めることによって撮影露光を開始し後羽根が露光開口を閉じ終わることによって撮影露光を終わるようにしたモード(以下、第1撮影モードという)での撮影を行うようにすることが可能であるし、また、電子ファインダを用いて撮影する場合には、セット状態において、先羽根と後羽根の両方が露光開口を開いているようにし、撮影に際しては、レリーズ後の初期段階で先羽根が露光開口を一旦閉じた後に、先羽根が露光開口を開き始めることによって撮影露光を開始し後羽根が露光開口を閉じ終わることによって撮影露光を終わるようにしたモード(以下、第2撮影モードという)での撮影を行えるようにすることも可能である。
【0019】
その上、電子ファインダを用いて撮影する場合においては、セット状態において、先羽根と後羽根の両方が露光開口を開いていて、撮影に際しては、先羽根を作動させることなく、電子制御回路が撮像素子を制御することによって撮影露光を開始し、後羽根が露光開口を閉じることによって撮影露光を終了するようにしたモード(以下、第3撮影モードという)での撮影を行えるようにすることも可能であるし、電子制御回路が撮像素子を制御することによって撮影露光の開始と終了の両方を行わせ、撮影露光終了後に後羽根を作動させて露光開口を閉じさせるようにしたモード(以下、第4撮影モードという)での撮影も行えるようにすることが可能である。
【0020】
そのため、本発明のデジタルカメラ用フォーカルプレンシャッタをカメラに備えると、そのカメラを、上記の四つの撮影モードのうち、任意の二つ以上の撮影モードでの撮影が可能なカメラとすることができ、撮影者は、それらのうちから所望の撮影モードを選択して撮影することが可能になる。しかしながら、それらの場合の全てについて説明すると、重複説明が多くなって冗長になるし、また、そこまで説明しなくても全ての場合を理解することが可能であるため、実施例は、第1〜第3撮影モードのうちから、所望の一つのモードを選択して撮影を行えるようにしたカメラの場合で説明し、第4撮影モードについては、補足的に説明する。尚、光学ファインダを用いて撮影する場合であっても、上記の第1撮影モードのシーケンスで作動させるだけではなく、上記の第2撮影モード又は第3撮影モードのシーケンスで作動させるようにすることも可能であるが、そのことについては、実施例の作動説明中で述べることにする。
【実施例】
【0021】
先ず、主に図1〜図4を用いて本実施例の構成を説明する。図1は、撮影終了後であってセット作動開始前の状態を示した全体の平面図であり、図2は、図1における左側の約半分を拡大して示した平面図であり、図3は、図2を右側から見て、一部の部材を断面で示したり破断して示したりした側面図である。また、図4は、第1撮影モードを選択している場合における構成部材のセット状態を示した平面図である。尚、以下においては、本実施例のフォーカルプレンシャッタをカメラに組み込んだとき、図1の手前側が被写体側、即ち撮影レンズ側になり、図1の背面側が撮像装置側になることを前提にして説明するが、周知のように、デジタルカメラの場合には、図1の手前側が撮像装置側になり、図1の背面側が被写体側になることもある。
【0022】
シャッタ地板1は、合成樹脂製であって、その略中央部には、長方形を横長にした露光用の開口部1aが形成されているが、後述の中間板2と補助地板3の一部が目視できるようにするために、図1においては、その開口部1aの上方の領域の一部を破断して示している。そして、シャッタ地板1は、図1における左上方と、左下方と、右下方とに三つの孔1b,1c,1dを形成しているが、それらのうち、孔1b,1cは、ねじによってカメラ本体に取り付けるためのものであり、孔1cは、カメラ本体に設けられた位置決めピンに嵌合させるためのものである。
【0023】
また、周知のように、シャッタ地板1の撮像装置側には、所定の間隔を空けて、中間板2と補助地板3が順に取り付けられており、シャッタ地板1と中間板2との間に後述する後羽根の羽根室を構成し、中間板2と補助地板3との間に後述する先羽根の羽根室を構成している。それらのうち、中間板2は、図示していない複数の孔を、シャッタ地板1に立設された図示していない複数の軸に嵌合させているだけであるが、補助地板3は、合成樹脂製であって、図示していないねじ等の適宜な手段を用いて、シャッタ地板1に取り付けられている。尚、中間板2と補助地板3とは、図1及び図3に示しているだけであり、他の図面では図示を省略されている。
【0024】
図1に示されているように、中間板2の外形は、シャッタ地板1の外形よりも一回り小さいが、補助地板3の外形は、シャッタ地板1の外形と略同じである。そして、中間板2と補助地板3にも、開口部1aと重なるところに開口部2a,3aが形成されている。尚、図1においては、開口部3aは、開口部1aと略同じ形状に示されているが、実際には、開口部1aよりも僅かに大きな長方形をしている。また、開口部2aの方は、開口部1aよりも大きく且つ開口部1aの二つの長辺に対応する縁が山型(ヘ字状)に形成されている。そのため、本実施例においては、シャッタ地板1に形成されている開口部1aが、露光開口の形状、即ちシャッタとしての画枠形状を決めている。
【0025】
シャッタ地板1の被写体側の面には、開口部1aの左側の領域における上方位置と下方位置に、二つの柱1e,1fが形成されているほか、それらの間の領域に三つの軸1g,1h,1iが立設されている。それらのうち、柱1e,1fは、図3にだけ示されているが、その先端面には、ねじ穴が形成されている。また、軸1g,1h,1iは、図3に示されている軸1g,1hから理解することができるように、被写体側の先端に小径部が形成されている。更に、軸1g,1hは、図3に示されているように、それらの他端を、シャッタ地板1の撮像装置側の面から突き出しており、それらの先端を、補助地板3に形成された孔に挿入している。また、図3及び図4に示されているように、シャッタ地板1の撮像装置側の面には、二つの軸1j,1kが立設されている。
【0026】
図1,図2,図4に示されているように、このシャッタ地板1には、上記の軸1g,1hを中心にした二つの円弧状の長孔1m,1nが形成されており、それらの下方端部には、平面形状が略C字状をした周知のゴム製の緩衝部材4,5が取り付けられている。そして、補助地板3にも、それらの長孔1m,1nと対向するところに、同じ形状の長孔3b,3cが形成されているが、それらの長孔3b,3cは、図3においてだけ、断面で示されている。更に、シャッタ地板1には、上記の軸1iを中心にした円弧状の長孔も形成されているが、その長孔の図示は省略されている。
【0027】
図3に示している支持板6とプリント配線板7とは、支持板6をシャッタ地板1側にして重ねられており、二つのねじ8,9によって、上記の柱1e,1fの先端面に螺着されている。また、上記の軸1g,1h,1iは、それらに形成されている上記の小径部の先端を、支持板6とプリント配線板7に形成された孔に挿入している。尚、他の構成部材を分かり易くするために、図1及び図2においては、支持板6の外形形状は、一点鎖線で示されており、プリント配線板7の外形形状は、二点鎖線で示されている。そして、支持板6と、プリント配線板7と、二つのねじ8,9については、図1〜図3以外の図面では、図示を省略されている。
【0028】
支持板6は、薄い金属製の板材で製作されていて、シャッタ地板1側に折り曲げられた複数の折曲部を有している。そして、先羽根用電磁石10と後羽根用電磁石11とは、周知のようにして、それらのうちの複数の折曲部に取り付けられているが、図1及び図2においては、それらの二つの電磁石10,11も、支持板6と同様に、一点鎖線で示してある。また、先羽根用電磁石10と後羽根用電磁石11とは、全く同じ構成をしており、二つの脚部を有するU字形の鉄芯部材10a,11aと、中空部を有していてその外側にコイル10b,11bを巻回したボビン10c,11cとからなっていて、鉄芯部材10a,11aは、先端を磁極部としている二つの脚部を、支持板6に対して垂直に配列して取り付けられており、各々、一方の脚部を、ボビン10c,11cの中空部に貫通させている。
【0029】
また、ボビン10c,11cは、コイル10b,11bの両端を巻き付けておくための端子ピンを二つづつ立設しており、それらの先端を、支持板6とプリント配線板7に設けた図示していない孔に貫通させている。そして、コイル10b,11bの各両端は、プリント配線板7の被写体側において、プリント配線板7に形成された配線パターンに半田付けされている。尚、コイル10b,11bとボビン10c,11cとは、図1〜図3においてだけ示されており、他の図面においては、鉄芯部材10a,11aだけが示されている。また、周知のように、プリント配線板7には、後述の先羽根用第1駆動部材14によってオン・オフされる二つの接片部材も取り付けられているが、それらの図示は省略されている。
【0030】
シャッタ地板1の被写体側の面には、ねじ12によって、抑止手段13が取り付けられている。本実施例の抑止手段13は、特開2005−173132号公報などに記載されている周知の電流制御式アクチュエータの構成を変形させた電磁装置である。即ち、上記の公報に記載されている電磁アクチュエータは、シャッタ羽根を往復回転させるための出力ピンを、永久磁石回転子の回転軸と平行になるようにして、永久磁石回転子と一体に形成している。それに対して、本実施例の抑止手段13は、後述の先羽根用第1駆動部材14が、図1などにおいて反時計方向へ回転するのを抑止可能とするために、合成樹脂製であって先端面が方形をした棒状の抑止部材13bを、永久磁石回転子13aの回転軸と垂直になるようにして、永久磁石回転子13aと一体に形成している。
【0031】
従って、上記の電流制御式アクチュエータは、出力ピンによってシャッタ羽根や絞り羽根などを駆動するものであるから、まさしくアクチュエータである。しかしながら、本実施例の抑止手段13は、類似の構成をした電磁装置ではあるが、抑止部材13bによって、後述する先羽根用第1駆動部材14の回転を単に抑止するだけのものであるから、アクチュエータとは言えない。そのため、抑止部材13b以外の構成が周知であるとはいえ、この抑止手段13の構成と作動を、図2及び図3を用いて簡単に説明しておく。
【0032】
先ず、構成を説明する。第1固定子枠13cは、円筒形の一端を封鎖したコップ状をしていて、板状の第2固定子枠13dとの間に、永久磁石回転子13aの収容室を構成しているが、これらの固定子枠13c,13dは、収容室内で永久磁石回転子13aを軸受け状態にしておき、収容室の外側に形成されている溝に、両方の軸受け部を囲むようにコイル13eを巻回することによって一体化されている。そして、そのようにした後、第1固定子枠13cには、円筒形のヨーク13fが嵌装されている。
【0033】
図3に示されているように、この第1固定子枠13cには、窓13c−2が形成されており、上記の抑止部材13bは、その窓13c−2から外部へ突き出され、永久磁石回転子13aによって、所定の角度範囲内でだけ往復回転し得るようになっている。また、図2に示されているように、第1固定子枠13cには、永久磁石回転子13aの回転軸と平行になるようにして4本の磁性体棒13g(1本にだけに符号を付けてある)が被写体側から挿入されている。更に、第1固定子枠13cには、張出部13c−1が形成されており、抑止手段13は、その張出部13c−1を上記のねじ12で螺着することによって、シャッタ地板1に取り付けられている。尚、周知のように、磁性体棒13gは4本に限定されるものではない。
【0034】
次に、本実施例における抑止手段13の作動を説明する。永久磁石回転子13aは、図2に示されているように、径方向に2極に着磁されており、コイル13eに対して順方向に通電すると、永久磁石回転子13aは反時計方向へ回転させられ、抑止部材13bがストッパピン1qに当接することによって、停止させられるようになっている。また、その後、コイル13eに対して逆方向に通電すると、永久磁石回転子13aは時計方向へ回転させられ、抑止部材13bがストッパピン1pに当接することによって、停止させられるようになっている。
【0035】
そして、抑止部材13bがストッパピン1pに接触しているときに、コイル13eに対する通電を断っても、永久磁石回転子13aと4本の磁性体棒13gとの間に作用する永久磁石回転子13aの磁力によって、永久磁石回転子13aには時計方向へ回転する力が付与されていて、抑止部材13bをストッパピン1pに接触させた停止状態が維持され、また、抑止部材13bがストッパピン1qに接触しているとき、コイル13eに対する通電を断っても、上記と同じ理由によって、永久磁石回転子13aには反時計方向へ回転する力が付与されていて、抑止部材13bをストッパピン1qに接触させた停止状態が維持されるようになっている。
【0036】
尚、図8のタイミングチャートに記載されている「抑止手段(13)」における「+ON」は、上記のように、永久磁石回転子13aを反時計方向へ回転させるための制御信号が発せられ、コイル13eに対して順方向へ電流が供給されている状態を意味し、「−ON」は、永久磁石回転子13aを時計方向へ回転させるための制御信号が発せられ、コイル13eに対して逆方向へ電流が供給されている状態を意味している。そして、「OFF」は、いずれの信号も発せられず、コイル13eに対して通電されていない状態を示すものである。そして、このことは、他のタイミングチャートにおいても同じである。
【0037】
シャッタ地板1の被写体側において、上記の軸1gには、先羽根用第1駆動部材14と先羽根用第2駆動部材15とが、先羽根用第1駆動部材14をシャッタ地板1側にして、各々、回転可能に取り付けられている。そして、その具体的な取付け構成は、図3に示されているように、先羽根用第2駆動部材15の方は、その筒部15aを、軸1gに対して直接嵌合させており、先羽根用第1駆動部材14の方は、その孔を、先羽根用第2駆動部材15の筒部15aの外側に嵌合させている。
【0038】
そこで先ず、先羽根用第1駆動部材14について説明する。先羽根用第1駆動部材14は、被押動部14aと、被抑止部14bと、駆動ピン14cとを有している。それらのうち、被押動部14aと被抑止部14bとは、両方とも、被写体側に厚く形成されている部位に、被押動部14aが軸1g側となるようにして、隣接して形成されている。そして、その被押動部14aは、後述する先羽根用第2駆動部材15の押動部15dによって押される部位である。また、被抑止部14bは、先羽根用第1駆動部材14が反時計方向へ回転しようとするとき、上記の抑止部材13bの先端に当接して抑止される部位である。
【0039】
また、駆動ピン14cは、シャッタ地板1側に立設されていて、シャッタ地板1の長孔1mに挿入され、先端部を、補助地板3に形成された上記の長孔3bに挿入している。また、この駆動ピン14cは、その根元部と先端部とでは断面形状が異なっており、根元部はD形をしていて、先端部は砲弾形をしている。そして、その根元部は、上記の緩衝部材4に当接する部位であり、また、先端部は、後述の先羽根に連結される部位である。
【0040】
他方、先羽根用第2駆動部材15は、上記の筒部15aのほか、被押動部15bと、被写体側に厚く形成された取付部15cと、押動部15dとを有している。また、図1及び図2においては、取付部15cの一部を、シャッタ地板1と平行に切断して示してあるように、その内部には、鉄片部材16と圧縮ばね17とが収容されている。そして、鉄片部材16は、軸部16aの一端に円盤状をした頭部16bを有しており、軸部16aの他端には鉄片部16cを取り付けていて、軸部16aに嵌装した圧縮ばね17によって、鉄片部16cを取付部15c内から突き出すように付勢されている。尚、図3においては、図面を見やすくするために、取付部15cの図示が省略されている。
【0041】
図3に示されているように、先羽根用第2駆動部材15の筒部15aには、先羽根用駆動ばね18が緩く嵌装されている。また、シャッタ地板1の軸1gの小径部には、ラチェット部材19が回転可能に取付けられている。更に、図1及び図2に示されているように、支持板6は、折曲部の一つをラチェット爪6aとしていて、その先端を、ラチェット部材19の外周部に形成されたラチェット歯に噛合させ、ラチェット部材19の反時計方向への回転を阻止している。
【0042】
そして、先羽根用駆動ばね18は、周知のように、一端を先羽根用第2駆動部材15の図示していないばね掛け部に掛け、他端をラチェット部材19の図示していないばね掛け部に掛けて、先羽根用第2駆動部材15を図1において時計方向へ回転させるように付勢しており、その付勢力は、ラチェット爪6aを一時的に外し、ラチェット部材19の回転位置を変えることによって調整できるようになっている。尚、先羽根用駆動ばね18は、図3にだけ示され、ラチェット部材19は、図1〜図3にだけ示されている。
【0043】
シャッタ地板1に立設されている上記の軸1hには、後羽根用駆動部材20が回転可能に取り付けられている。この後羽根用駆動部材20は、筒部20aと、取付部20bと、駆動ピン20cとを有しているほか、図3に示されているように、抜け止め部材を圧入することによってローラー20dを回転可能に取り付けていて、筒部20aを軸1hに嵌合させている。また、取付部20bの内部は、先羽根用第2駆動部材15の取付部15cと全く同じ構成をしていて、鉄片部材21と圧縮ばねが収容されている。尚、取付部20bは、上記の取付部15cのように断面で示されていないので、図1及び図2においては、鉄片部材21の頭部21bと鉄片部21cは目視することができるが、軸部21aは目視することができない。また、圧縮ばねは、後述するどのような作動状態においても目視することができない。そして、図3においては、この取付部20bの図示が省略されている。
【0044】
また、駆動ピン20cは、上記の先羽根用第1駆動部材14の駆動ピン14dと同様に、シャッタ地板1側に立設されていて、シャッタ地板1の長孔1nに挿入され、先端部を、補助地板3に形成されている上記の長孔3cに挿入している。また、この駆動ピン20cも、その根元部と先端部とでは断面形状が異なっていて、根元部は円形をしており、先端部は砲弾形をしている。そして、その根元部は、上記の緩衝部材5に当接する部位であり、また、先端部は、後述の後羽根に連結される部位である。
【0045】
後羽根用駆動部材20の筒部20aには、図3に示されているように、後羽根用駆動ばね22が緩く嵌装されている。また、シャッタ地板1の軸1hの小径部には、ラチェット部材23が回転可能に取付けられている。更に、図1及び図2に示されているように、支持板6は、折曲部の一つをラチェット爪6bとしていて、その先端を、ラチェット部材23の外周部に形成されているラチェット歯に噛合させ、ラチェット部材23の反時計方向への回転を阻止している。
【0046】
そして、後羽根用駆動ばね22は、一端を後羽根用駆動部材20の図示していないばね掛け部に掛け、他端をラチェット部材23の図示していないばね掛け部に掛けていて、後羽根用駆動部材20を図1において時計方向へ回転させるように付勢しており、その付勢力は、ラチェット爪6bを一時的に外し、ラチェット部材23の回転位置を変えることによって調整できるようになっている。尚、後羽根用駆動ばね22は、図3にだけ示されており、ラチェット部材23は、図1〜図3にだけ示されている。
【0047】
シャッタ地板1に立設されている上記の軸1iには、セット部材24が回転可能に取り付けられており、図示していないばねによって反時計方向へ回転するように付勢されている。また、このセット部材24は、シャッタ地板1側の面に、図示していない係合ピンを立設しており、軸1iを中心にしてシャッタ地板1に円弧状に形成された図示していない長孔に挿入されている。そして、図1及び図2においては、セット部材24は、その図示していないばねの付勢力によって反時計方向へ回転させられ、その係合ピンが、上記の図示していない長孔の一端に当接して停止させられている。以下、セット部材24については、この位置を初期位置ということにする。
【0048】
また、このセット部材24は、上記の図示していない係合ピンのほか、筒部24aと、二つの押動部24b,24cと、被押動部24dとを有していて、筒部24aを軸1iに回転可能に嵌合させている。そして、押動部24bは、先羽根用第2駆動部材15の被押動部15bを押す部位であり、押動部24cは、後羽根用駆動部材20のローラー20dを押す部位であり、被押動部24dは、図示していないカメラ本体側の部材によって押される部位である。
【0049】
次に、シャッタ地板1の背面側に配置されている先羽根と後羽根の構成を、主に図4を用いて説明する。先ず、中間板2と補助地板3との間に配置されている先羽根は、シャッタ地板1の背面側において、上記の軸1gに対して回転可能に取り付けられたアーム25と、上記の軸1jに対して回転可能に取り付けられたアーム26と、それらの両方に対して先端部に向けて順に枢支された3枚の羽根27,28,29とで構成されており、羽根29が先羽根のスリット形成羽根となっている。そして、周知のように、上記の先羽根用第1駆動部材14の駆動ピン14cの先端部が、アーム25に形成された長孔25a(図3に、断面で示されている)に嵌合している。尚、図3に示されているように、アーム25は、実際には、かしめ加工によって一体化された部材の孔を、軸1gに嵌合させている。
【0050】
更に、シャッタ地板1の軸1jには、コイルばねであるセットばね30が嵌装されていて、その一端をシャッタ地板1に設けた図示していないばね掛け部に掛け、他端をアーム26に掛けて、アーム26を反時計方向へ回転させるように付勢している。従って、本実施例においては、このセットばね30は、後述する作動説明からも明らかなように、先羽根を介して、先羽根用第1駆動部材14を反時計方向へ回転させる役目をしているが、それと同時に、周知のような、先羽根のガタ寄せばねの役目もしている。そして、このセットばね30の付勢力は、上記の先羽根用駆動ばね18の付勢力よりも小さい。尚、本実施例では、このセットばね30は、軸1jに嵌装されているが、軸1gに嵌装するようにして、アーム25を反時計方向へ回転させるように付勢するようにしても差し支えない。
【0051】
他方、後羽根は、シャッタ地板1と中間板2の間に配置されており、シャッタ地板1の背面側において、上記の軸1hに対して回転可能に取り付けられたアーム31と、上記の軸1kに対して回転可能に取り付けられたアーム32と、それらの両方に対し先端部に向けて順に枢支された3枚の羽根33,34,35とで構成されており、羽根35が後羽根のスリット形成羽根となっている。そして、後羽根用駆動部材20の駆動ピン20cの先端部が、周知のようにして、アーム31に形成されている長孔31a(図3に、断面で示されている)に嵌合している。
【0052】
更に、シャッタ地板1の上記の軸1kには、上記のセットばね30と同じようにして、ばね36が嵌装されており、その一端をシャッタ地板1に設けられた図示していないばね掛け部に掛け、他端をアーム32に掛けていて、アーム32を反時計方向へ回転させるように付勢している。従って、このばね36は、後羽根を介して、後羽根用駆動部材20を反時計方向へ回転させるように付勢していることになるが、その付勢力は、上記した後羽根用駆動ばね22の付勢力よりも小さい。尚、このばね36は、上記のセットばね30とは異なり、周知のガタ寄せばねの役目をしているだけである。そのため、このばね36の場合には、アーム32に対して、時計方向への回転力を付与するように構成しても差し支えない。また、軸1hに嵌装し、アーム31を、いずれか一方へ回転させるように構成しても差し支えない。
【0053】
次に、本実施例の作動を説明する。既に説明したように、本実施例のカメラ用フォーカルプレンシャッタは、撮影前に、カメラに備えられている選択手段を操作することによって、三つの撮影モードのうちから所望の撮影モードを選択して撮影をすることが可能である。そのため、本実施例の作動説明に際しては、第1撮影モードでの作動、第2撮影モードでの作動、第3撮影モードでの作動の順に説明をし、それらの切換え作動についても適時に説明することにする。
【0054】
そこで先ず、第1撮影モードでの作動を、各々の作動段階における各構成手段の作動状態を示した図4〜図7の平面図と、主要な構成手段の作動関係を示した図8のタイミングチャートを用いて説明する。尚、上記したように、第1撮影モードは、光学ファインダを用いて撮影をする場合であって、先羽根が露光開口を開き始めることによって撮影露光を開始し後羽根が露光開口を閉じ終わることによって撮影露光を終わるようにしたモードである。
【0055】
図4は、撮影前に、撮影者が選択手段を操作することによって、第1撮影モードを選択したときのセット状態を示したものである。このとき、可動ミラーを備えた一眼レフカメラの場合には、図示していない可動ミラーがダウン状態になっていて、光学ファインダによって被写体像を観察することができるようになっている。また、セット部材24は、セット作動時に、その被押動部24dを図示していないカメラ本体側の部材に押されて、図示していないばねの付勢力に抗して初期位置からセット位置まで時計方向へ回転させられており、このセット状態においては、そのカメラ本体側の部材によって初期位置への復帰を抑止されている。
【0056】
また、このとき、先羽根用電磁石10と後羽根用電磁石11には通電されていないが、セット部材24によるセット作動時に、先羽根用第2駆動部材15は、先羽根用駆動ばね18の付勢力に抗して、その被押動部15bをセット部材24の押動部24bに押されて反時計方向へ回転させられ、また、後羽根用駆動部材20は、後羽根用駆動ばね22の付勢力に抗して、ローラー20dをセット部材24の押動部24cに押されて反時計方向へ回転させられており、それらに取り付けられている鉄片部材16,21は、各々の鉄片部16c,21cを、上記の電磁石10,11の鉄芯部材10a,11aに接触させた状態にさせられている。
【0057】
また、先羽根用第1駆動部材14は、セット作動時における先羽根用第2駆動部材15の反時計方向への回転に伴って、セットばね30の付勢力によって反時計方向へ回転させられており、その被押動部14aを、先羽根用第2駆動部材15の押動部15dに接触させた状態を維持させられている。更に、抑止手段13には通電されておらず、永久磁石回転子13aは、抑止部材13bを、先羽根用第1駆動部材14の被抑止部14bの作動軌跡外において、ストッパピン1qに接触させ、既に説明したようにして、その状態を維持させられている。
【0058】
そのため、このセット状態においては、先羽根用第1駆動部材14に連結されている先羽根は、3枚の羽根27〜29を展開させて開口部1aを閉じており、後羽根用駆動部材20に連結されている後羽根は、3枚の羽根33〜35を重畳させて開口部1aの上方位置に格納されていて、CCDなどの撮像素子には被写体光が当たっていない。
【0059】
尚、この図4のセット状態においては、鉄片部材16,21の軸部16a,21aが目視できる状態になっているが、これは、周知のように、セット作動時において、先羽根用第2駆動部材15と後羽根用駆動部材20が、セット部材24によって、鉄片部材16,21の鉄片部16c,21cが鉄芯部材10a,11aに接触した後も、各駆動ばね18,22をオーバーチャージさせ、且つ圧縮ばね(17など)を圧縮させながら回転させられた状態で停止させられているからである。
【0060】
このような図4の状態において、光学ファインダで被写体像を観察しながらカメラのレリーズボタンを押すと、先ず、上記の可動ミラーがアップ状態にさせられると共に、先羽根用電磁石10のコイル10bと、後羽根用電磁石11のコイル11bの両方に通電される。そのため、それまでは、各々の電磁石10,11の鉄芯部材10a,11aに対して単に接触させられていただけの鉄片部材16,21が、電磁力によって吸着保持された状態になる。他方、この撮影モードが選択されているときには、抑止手段13のコイル13eには通電されることが全くない。そのため、抑止手段13の抑止部材13bは、常にストッパピン1qに接触させられた状態を維持したままである。
【0061】
このように、鉄片部材16,21が二つの電磁石10,11の鉄芯部材10a,11aによって吸着保持されると、図示していないカメラ本体側の部材が、セット部材24の被押動部24dの作動軌跡から退いていくので、それに追従して、セット部材24は、図示していないばねの付勢力によって反時計方向へ回転させられていくが、その過程で、セット部材24の押動部24bが先羽根用第2駆動部材15の被押動部15bから離れ、押動部24cが後羽根用駆動部材20のローラー20dから離れる。そのため、先羽根用第2駆動部材15は、先羽根用駆動ばね18の付勢力と圧縮ばね17の付勢力より、先羽根用第1駆動部材14を伴い、先羽根を作動させながら時計方向へ回転し始め、後羽根用駆動部材20は、後羽根用駆動ばね22の付勢力と図示していない圧縮ばねの付勢力によって、後羽根を作動させながら、時計方向へ回転し始める。
【0062】
しかしながら、鉄片部材16,21が既に鉄芯部材10a,11aに吸着されているため、各駆動部材14,15,20は、僅かに回転するだけであって、取付部15c,20bが鉄片部材16,21の頭部16b,21bに当接することによって停止させられる。そのため、その段階では、先羽根は、開口部1aを開くことはないし、後羽根は、開口部1a内に入らない。その後、セット部材24が、初期位置へ復帰し、図示していない上記の係合部が、シャッタ地板1に形成された図示していない上記の長孔の一端に当接して停止させられた状態が、図5に示されている。尚、図8においては、このような先羽根と後羽根の僅かな作動の図示が省略されている。そして、このことは、他のタイミングチャートでも同じである。
【0063】
このようにして図5の状態になると、被写体光などの撮影条件に対応し、露光時間制御回路によって決められた時間間隔で、先羽根用電磁石10のコイル10bに対する通電と、後羽根用電磁石11のコイル11bに対する通電とが順に断たれる。先ず、先羽根用電磁石10のコイル10bに対する通電が断たれると、先羽根用第2駆動部材15が、先羽根用駆動ばね18の付勢力によって急速に時計方向へ回転させられるが、このとき、先羽根用第2駆動部材15の押動部15dが先羽根用第1駆動部材14の被押動部14aを押すので、先羽根用第1駆動部材14も、セットばね30の付勢力に抗して時計方向へ急速に回転させられる。そのため、先羽根の3枚の羽根27〜29は、隣接する羽根同士の重なりを大きくしながら急速に下方へ走行させられ、開口部1aを上方から下方へ向けて開いていく。
【0064】
続いて、後羽根用電磁石11のコイル11bに対する通電が断たれると、後羽根用駆動部材20は、後羽根用駆動ばね22の付勢力によって急速に時計方向へ回転させられ、後羽根の3枚の羽根33〜35を、隣接する羽根同士の重なりを小さくさせながら急速に下方へ走行させ、開口部1aを上方から下方へ向けて閉じさせていく。このような後羽根用駆動部材20の回転は、被写体光が比較的明るい場合には、先羽根が開口部1aを全開にする前に開始させられる。従って、その場合には、撮像素子の撮像面は、先羽根のスリット形成羽根29と後羽根のスリット形成羽根35との間に形成されるスリットにより、上方から下方へ向けて連続的に露光されていく。
【0065】
それに対して、被写体光が比較的暗い場合には、後羽根用駆動部材20は、先羽根が開口部1aを全開にした後、後羽根によって開口部1aを閉じさせていく。そのため、周知のように、この場合には、先羽根の走行終了段階において、先羽根用第1駆動部材14に設けられた図示していない押動部が、プリント配線板7に取り付けられた図示していない二つの接片部材を接触させることにより、開口部1aの全開状態において、フラッシュを発光させるようにすることが可能である。
【0066】
図6は、そのような被写体光が比較的暗い場合において、先羽根が開口部1aを全開にした後、先羽根用第1駆動部材14の駆動ピン14cが緩衝部材4に当接して、二つの駆動部材14,15の回転が停止させられ、先羽根の3枚の羽根27〜29が重畳状態となって、開口部1aの下方位置に格納された状態を示したものである。また、図7は、上記のような被写体光の明るさがいずれの場合であるかに関係なく、先羽根の3枚の羽根27〜29が重畳状態となって、開口部1aの下方位置に格納された後、後羽根の3枚の羽根33〜35が展開状態となって開口部1aを閉じ、後羽根用駆動部材20が、駆動ピン20cを緩衝部材5に当接させて停止させられた状態を示したものである。
【0067】
このようにして図7の状態になると、撮影された撮像情報が、撮像装置から情報処理回路を介して転送され、記憶装置に記憶される。そして、撮像情報が記憶装置に記憶されると、図示していない可動ミラーがダウン状態に作動させられると共に、直ちにセット作動が開始される。そして、そのセット作動は、図7の状態において、図示していないカメラ本体側の部材が、セット部材24の被押動部24dを押し、図示していないばねの付勢力に抗してセット部材24を時計方向へ回転させることによって行われる。
【0068】
セット部材24が時計方向へ回転を開始すると、先ず、セット部材24の押動部24bが先羽根用第2駆動部材15の被押動部15bを押し、先羽根用第2駆動部材15を、先羽根用駆動ばね18の付勢力に抗して反時計方向へ回転させ始める。それによって、先羽根用第1駆動部材14も、セットばね30の付勢力によって、被押動部14aを先羽根用第2駆動部材15の押動部15dに追従させ、反時計方向へ回転を開始するため、先羽根の3枚の羽根27〜29は、隣接する羽根同士の重なりを小さくしながら上方へ移動させられていく。
【0069】
そして、先羽根のスリット形成羽根29と後羽根のスリット形成羽根35との重なり量が所定量に達すると、セット部材24の押動部24cが後羽根用駆動部材20のローラー20dを押し始めるので、後羽根用駆動部材20も、後羽根用駆動ばね22の付勢力に抗して、反時計方向へ回転を開始させられる。そのため、後羽根の3枚の羽根33〜35は、隣接する羽根同士の重なりを大きくしながら上方へ移動されていくようになる。そして、それ以後、先羽根と後羽根は、セット部材24の押動部24b,24cのカム形状によって、図8から分かるように、両方のスリット形成羽根29,35の重なり量を小さくしながら、共に上方へ移動されていく。
【0070】
このようにして、先羽根の3枚の羽根27〜29が、展開状態となって開口部を閉じ、後羽根の3枚の羽根33〜35が、重畳状態となって開口部1aから完全に上方へ退くと、その直後に、先羽根用第2駆動部材14と後羽根用駆動部材20に取り付けられている鉄片部材16,21の鉄片部16c,21cが、相前後して先羽根用電磁石10と後羽根用電磁石11の鉄芯部材10a,11aに当接する。
【0071】
このとき、鉄片部16c,21cが鉄芯部材10a,11aに対して全く同時に当接するように製作することは、量産上、不可能である。そのため、セット部材24の回転は、設計上、両方の鉄片部16c,21cが、鉄芯部材10a,11aに当接することになっている時点よりも後になってから、各駆動部材14,15,20と共に停止させられるようになっている。そのため、その当接から停止するまでの過程において、先羽根用第2駆動部材15は、先羽根用駆動ばね18をオーバーチャージさせ、且つ鉄片部材16を付勢している圧縮ばね17を圧縮させることになり、後羽根用駆動部材20は、後羽根用駆動ばね22をオーバーチャージさせ、且つ鉄片部材21を付勢している図示していない圧縮ばねを圧縮させることになる。
【0072】
従って、先羽根用第2駆動部材15と後羽根用駆動部材20の停止状態においては、鉄片部材16,21は、それらの鉄片部16c,21cが、取付部15c,20b内に押し込まれ、それらの軸部16a,21aの一部が取付部15c,20b内から押し出されて、頭部16b,21bが取付部15c,20bから離れた状態にさせられる。その状態が、図4に示されたセット状態であって、第1撮影モードでの撮影が選択されている限り、次の撮影に際して、カメラのレリーズボタンが押されるまで、この状態が維持される。
【0073】
次に、カメラの選択手段によって、上記のような第1撮影モードが選択されている状態において、即ち上記の図4に示されたセット状態において、第2撮影モードや第3撮影モードを選択した場合における切換え作動を説明するが、その説明に際しては、上記の第1撮影モードでの作動説明から充分理解することの可能なところを、簡略的に説明することにする。
【0074】
尚、本実施例の場合、第2撮影モードに切り換えたときと、第3撮影モードに切り換えたときとでは、当然のことながら、撮影ごとのシャッタの作動シーケンスは、後述するように異なるが、上記した各構成手段のセット状態は全く同じである。そのため、シャッタの構成手段については、第1撮影モードから第2撮影モードへの切換え作動と、第1撮影モードから第3撮影モードへの切換え作動とは全く同じようにして行われる。そして、その場合には、切換え作動は、幾つかの方式のうちから、カメラの全体の設計仕様に最適なものを採用して行うようにすることが可能である。そこで、以下においては、第1撮影モードから、第2撮影モード又は第3撮影モードへ、切り換える場合に採用することの可能な三つの切換え方式を順に説明する。
【0075】
先ず、第1の切換え方式による作動を、上記の図4,図7のほかに、新たに図9〜図11を用いて説明する。尚、図9は、第1撮影モードの選択状態において、第2撮影モード又は第3撮影モードを選択した場合における切換え作動の途中の状態を示した平面図であり、図10は、第2撮影モード又は第3撮影モードを選択した場合における切換え作動の終了状態、即ちセット状態を示した平面図であり、図11は、第1撮影モードから、第2撮影モード又は第3撮影モードへの、第1の切換え方式の作動時における各主要構成手段の作動関係を示したタイミングチャートである。
【0076】
図4は、上記のように、第1撮影モードでの撮影が選択されているときのセット状態を示したものである。この状態で、撮影者が、カメラの選択手段によって、第2撮影モード又は第3撮影モードを選択すると、図示していない可動ミラーが、例えば特許文献1に記載されているような手段によってアップ状態にさせられ、その状態を維持し続けるようにさせられると共に、図11に示されているように、そのときの切換え信号によって、上記の第1撮影モードでの撮影と同様に、各電磁石10,11に通電されてから、セット部材24が初期位置へ復帰させられる。
【0077】
その後、二つの電磁石10,11に対する通電が断たれるが、図11においては、それらのタイミングは、便宜上、上記の図8に示されている両者のタイミングと同じになるようにして示してある。即ち、先羽根が図6に示された状態になってから、後羽根の作動を開始させるタイミングで示してある。しかしながら、カメラ本体側の制御システムとの関係で問題がないのであれば、切換え作動時間は出来るだけ短い方がよい。そのため、電磁石11に対する通電を断つタイミングを、もっと早くしてもよいし、それによって電磁石10に対する通電を断つタイミングと同じにしても構わない。
【0078】
このようにして、二つの電磁石10,11に対する通電が断たれて、各駆動部材14,15,20が時計方向へ回転し、先羽根と後羽根の走行が終了すると、上記のように図7の状態になる。そして、後羽根の走行が終了すると、抑止手段13のコイル13eに対して逆方向の電流が供給される。そのため、永久磁石回転子13aは、図7において時計方向へ回転させられ、抑止部材13bがストッパピン1pに当接することによって停止させられる。その後、コイル13eに対する通電を断った状態が、図9に示されているが、この状態においては、抑止部材13bの先端は、先羽根用第1駆動部材14の被抑止部14bの作動軌跡内に入っている。
【0079】
図9の状態が得られると、直ちにセット作動が開始される。図9の状態において、図示していないカメラ本体側の部材が被押動部24dを押すと、セット部材24は、図示していないばねの付勢力に抗して初期位置から時計方向へ回転させられていく。その過程で、先ず、セット部材24の押動部24bが先羽根用第2駆動部材15の被押動部15bを押し、先羽根用第2駆動部材15を先羽根用駆動ばね18の付勢力に抗して反時計方向へ回転させ始める。そのため、先羽根用第1駆動部材14も、セットばね30の付勢力によって追従し、反時計方向へ回転し始める。
【0080】
ところが、先羽根用第1駆動部材14だけは、僅かに回転したところで、先羽根が開口部1aに入る前に、その被抑止部14bが抑止部材13bの先端面に当接して停止させられてしまう。そのため、それ以後は、先羽根用第2駆動部材15だけが、先羽根用駆動ばね18の付勢力に抗して反時計方向へ回転させられていく。尚、このときの先羽根の作動は僅かであるため、図11には示されていない。そして、このことは、図12〜図14のタイミングチャートにおいても同じである。
【0081】
このようにして、先羽根用第1駆動部材14の回転が抑止されると、続いて、セット部材24の押動部24cが後羽根用駆動部材20のローラー20dを押し始めるので、後羽根用駆動部材20は、後羽根用駆動ばね22の付勢力に抗して、反時計方向へ回転させられ、後羽根を上方へ移動させ始める。そのため、それ以後は、先羽根用第2駆動部材15と後羽根用駆動部材20だけが、共に反時計方向へ回転させられていくことになる。そして、後羽根の3枚の羽根33〜35が、重畳状態になって開口部1aから上方へ退くと、その直後に、鉄片部材16,21の鉄片部16c,21cが、相前後して電磁石10,11の鉄芯部材10a,11aに当接する。そして、それらの当接の僅か後にセット部材24の回転が停止し、図10に示されたセット状態になる。
【0082】
次に、第2の切換え方式による作動を、上記の図4,図6,図10のほかに、新たに図12を用いて説明する。尚、図12は、第1撮影モードから、第2撮影モード又は第3撮影モードへの、第2の切換え方式の作動時における各主要構成手段の作動関係を示したタイミングチャートである。
【0083】
この第2の切換え方式の場合には、図4に示されている第1撮影モードのセット状態において、撮影者が、カメラの選択手段によって、第2撮影モード又は第3撮影モードを選択すると、図示していない可動ミラーがアップ状態を維持し続けるようになると共に、切換え信号によって、各電磁石10,11に通電され、その後、セット部材24が初期位置へ復帰させられる。
【0084】
上記の第1の切換え方式の場合には、このあと、二つの電磁石10,11に対する通電を相次いで断ち、先羽根と後羽根の両方を走行させ終わった後に、抑止手段13のコイル13eに対して逆方向の電流を供給していた。ところが、この第2の切換え方式の場合には、先羽根用電磁石10に対する通電を断っても、後羽根用電磁石11への通電を直ちに断つことはせず、通電状態を続行させるようにしている。そのため、この切換え方式の場合は、先羽根用電磁石10に対する通電を断って先羽根が走行し終わった状態、即ち上記の図6に示された状態になったとき、抑止手段13のコイル13eに対して逆方向の電流を供給する。それにより、永久磁石回転子13aは、図6において時計方向へ回転させられるが、抑止部材13bがストッパピン1pに当接して停止させられと、コイル13eに対する通電が断たれる。
【0085】
その後、後羽根用電磁石11への通電がなされている間に、上記の第1の切換え方式に準じて、セット部材24が時計方向へ回転し、セット作動が行われる。但し、この場合には、後羽根用駆動部材20は、後羽根用電磁石11の鉄芯部材11aによって鉄片部材21を吸着されているので、セット部材24は、その回転開始直後からの殆どの回転中は、押動部24bが被押動部15bを押すことによって、先羽根用第2駆動部材部材15だけを、先羽根用駆動ばね18の付勢力に抗して反時計方向へ回転させることになる。そのため、そのときのセット力量は、第1の切換え方式の場合のセット力量よりも遥かに小さくて済む。
【0086】
その後、鉄片部材16の鉄片部16cが先羽根用電磁石10の鉄芯部材10aに当接する段階になると、セット部材24の押動部24cが後羽根用駆動部材20のローラー20dに当接して押すので、後羽根用駆動部材20は、後羽根用駆動ばね22の付勢力に抗して反時計方向へ回転させられる。その後、先羽根用第2駆動部材15と後羽根用駆動部材20とを僅かに反時計方向へ回転させると、セット部材24の回転が停止する。そして、後羽根用電磁石11に対する通電を断つと、図10に示されたセット状態になる。
【0087】
次に、第3の切換え方式による作動を、上記の図4,図7,図9,図10のほかに、新たに図13を用いて説明する。尚、図13は、第1撮影モードから、第2撮影モード又は第3撮影モードへの、第3の切換え方式の作動時における各主要構成手段の作動関係を示したタイミングチャートである。
【0088】
この第3の切換え方式の場合も、図4に示されている第1撮影モードのセット状態において、撮影者が、カメラの選択手段によって、第2撮影モード又は第3撮影モードを選択すると、図示していない可動ミラーがアップ状態を維持し続けるようになるが、図13から分かるように、この第3の切換え方式の場合は、切換え信号によって、各電磁石10,11に通電されることがなく、直ちにセット部材24が初期位置への復帰作動を開始する。
【0089】
図4の状態において、セット部材24が反時計方向への回転を開始すると、最初に、その押動部24cによる、後羽根用駆動部材20のローラー20dに対する押圧が解かれてゆき、続いて、押動部24cによる、先羽根用第2駆動部材15の被押動部15bに対する押圧が解かれていく。そのため、後羽根用駆動部材20の方は、ローラー20dがセット部材24の押動部24cに追従して、後羽根用駆動ばね22の付勢力によって時計方向へ回転してゆき、後羽根は、比較的ゆっくりと下方へ走行していく。他方、先羽根用第2駆動部材15の方は、被押動部15bがセット部材24の押動部24bに追従して、先羽根用駆動ばね18の付勢力によって時計方向へ回転し、その押動部15dによって被押動部14aを押し、セットばね30の付勢力に抗して先羽根用第1駆動部材14を時計方向へ回転させるので、先羽根も、比較的ゆっくりと下方へ走行していく。
【0090】
そして、先ず、後羽根用駆動部材20の駆動ピン20cが緩衝部材5に当接することによって、後羽根用駆動部材20と後羽根が停止し、続いて、先羽根用第1駆動部材14の駆動ピン14cが緩衝部材4に当接することによって、先羽根用第1駆動部材14と、先羽根用第2駆動部材15と、先羽根が停止するが、その状態が図7に示された状態である。このようにして図7の状態が得られると、直ちに抑止手段13のコイル13eに対して逆方向の電流が供給される。そのため、永久磁石回転子13aが、図7において時計方向へ回転させられるが、抑止部材13bがストッパピン1pに当接して停止した後、コイル13eに対する通電が断たれる。
【0091】
その後、上記の第1の切換え方式におけるセット作動と同じようにして直ちにセット作動が行われ、図10に示されたセット状態が得られる。このように、第3の切換え方式は、切換え作動時に、二つの電磁石10,11に全く通電しないので、上記の二つの切換え方式よりも、省電力の点で有利である。また、切換え作動に要する時間も、上記の二つの切換え方式よりも短くて済むのが特徴である。
【0092】
次に、上記のようにして選択された第2撮影モードでの作動、即ち電子ファインダを用いて撮影する場合であって、セット状態においては、先羽根と後羽根の両方が露光開口を開いていて、撮影に際しては、レリーズ後の初期段階において先羽根が露光開口を一旦閉じた後、先羽根が露光開口を開き始めることによって撮影露光を開始し後羽根が露光開口を閉じ終わることによって撮影露光を終了するようにしたモードでの作動を、上記の図4〜図7,図9,図10のほか、新たに図14を用いて説明する。尚、図14は、第2撮影モードで撮影する場合における各主要構成手段の作動関係を示すタイミングチャートである。また、この第2撮影モードの作動は、これまでの説明から充分に理解することができるところを簡略化して説明する。
【0093】
図10は、第2撮影モードを選択したときのセット状態を示したものである。そのため、上記したように、可動ミラーはアップ状態を維持されている。また、このとき、二つの電磁石10,11のコイル10b,11bと、抑止手段13のコイル13eには通電されていない。しかし、抑止手段13の永久磁石回転子13aは、時計方向へ回転させられた状態になっており、抑止部材13bの先端部は、先羽根用第1駆動部材14の被抑止部14bに接触し、セットばね30の付勢力による先羽根用第1駆動部材14の反時計方向の回転を抑止している。そのため、第1撮影モードの場合のセット状態とは異なり、開口部1aが全開状態になっているので、カメラの電源スイッチがオンになっていれば、電子ファインダによって、撮影しようとする被写体の現在の状態を観察することが可能になっている。
【0094】
このセット状態において、電子ファインダで被写体像を観察しながら、カメラのレリーズボタンを押すと、二つの電磁石10,11のコイル10b,11bに通電され、同時に抑止手段13のコイル13eに対しても順方向の電流が供給される。それにより、一方では、それまで、各々の電磁石10,11の鉄芯部材10a,11aに対し単に接触していただけの鉄片部材16,21が、電磁力によって吸着保持されるようになる。また、他方では、抑止手段13の永久磁石回転子13aが、抑止部材13bがストッパピン1qに当接するまで反時計方向へ回転させられ、その後、コイル13eに対する通電が断たれる。
【0095】
このように、永久磁石回転子13aが反時計方向へ回転し、抑止部材13bによる先羽根用第1駆動部材14の抑止を解くと、先羽根用第1駆動部材14は、セットばね30の付勢力によって反時計方向へ回転し、駆動ピン14cによって先羽根の3枚の羽根27〜29を上方へ走行させる。そのため、先羽根の3枚の羽根27〜29は、隣接する羽根同士の重なり量を小さくしてゆくが、先羽根用第1駆動部材14の回転が、その被押動部14aを先羽根用第2駆動部材15の押動部15dに当接させて停止したときには、展開状態となって、開口部1aを完全に閉じるようになる。そのときの状態が、図4に示された状態である。
【0096】
図4に示された状態が得られると、図示していないカメ本体側の部材がセット部材24の被押動部24dから退いていく。そのため、セット部材24は、それに追従し、図示していないばねの付勢力によって反時計方向への回転を開始する。そして、その回転の初期段階において、先羽根用第2駆動部材15と後羽根用駆動部材20とは、既に説明したようにして、僅かに時計方向へ回転したところで停止させられる。その後、セット部材24が初期位置へ復帰して停止した状態が、図5に示された状態である。
【0097】
図5に示された状態が得られると、第1撮影モードでの撮影の場合と同様に、先羽根用電磁石10に対する通電と、後羽根用電磁石11に対する通電が、被写体の明るさに対応した時間間隔で順に断たれる。そのため、先ず、先羽根用電磁石10に対する通電が断たれると、先羽根用第2駆動部材15が先羽根用第1駆動部材14を伴って時計方向へ回転するので、先羽根の3枚の羽根27〜29は、隣接する羽根同士の重なり量を大きくしながら開口部1aを開いていく。そして、二つの駆動部材14,15の回転は、被写体の明るさが比較的暗い場合には、後羽根が走行を開始する前に、駆動ピン14cが緩衝部材4に当接して停止する。そのときの状態が図6に示された状態であり、先羽根の3枚の羽根27〜29は、重畳状態になって開口部1aの下方位置に格納されている。
【0098】
先羽根用電磁石10に対する通電が断たれてから所定時間後に、後羽根用電磁石11に対する通電が断たれると、後羽根用駆動部材20が、時計方向へ回転するので、後羽根の3枚の羽根33〜35は、隣接する羽根同士の重なり量を小さくしながら開口部1aを閉じていく。そして、後羽根の3枚の羽根33〜35が展開状態になって開口部1aを完全に閉じ終わると、後羽根用駆動部材20の回転は、駆動ピン20cが緩衝部材5に当接することによって停止させられる。図7は、そのときの状態を示したものである。
【0099】
このようにして図7の状態になると、撮影された撮像情報が、撮像装置から情報処理回路を介して転送され、記憶装置に記憶される。また、他方では、抑止手段13のコイル13eに対して逆方向の電流が供給される。そのため、永久磁石回転子13aが、図7において時計方向へ回転させられるが、抑止部材13bがストッパピン1pに当接して停止すると、コイル13eに対する通電が断たれる。図9は、そのときの状態を示している。そして、この状態が得られると直ちにセット作動が行われるが、その作動は、上記の第1及び第3の切換え方式におけるセット作動と全く同じであるため説明を省略する。
【0100】
尚、ここまでは、この第2撮影モードは、電子ファインダを用いて撮影する場合であって、セット状態においては、先羽根と後羽根の両方が露光開口を開いていて、撮影に際しては、レリーズ後の初期段階において先羽根が露光開口を一旦閉じた後、先羽根が露光開口を開き始めることによって撮影露光を開始し後羽根が露光開口を閉じ終わることによって撮影露光を終了するようにしたモードであると説明してきた。
【0101】
しかしながら、本発明のデジタルカメラ用フォーカルプレンシャッタは、光学ファインダを用いて撮影をする場合であっても、この第2撮影モードでの作動と同じ作動をさせて撮影をすることも可能である。その場合は、セット状態において、開口部1aが全開になっていても、可動ミラーがダウン状態になっているので、被写体像を、光学ファインダでは観察できるが、電子ファインダでは観察できないだけのことである。また、本発明のデジタルカメラ用フォーカルプレンシャッタを、可動ミラーの代りにハーフミラーを備えた一眼レフカメラに採用した場合には、撮影者が、光学ファインダと電子ファインダとを使い分けて撮影を行うことも可能になる。そして、このことは、以下に説明する第3撮影モードについても言えることである。
【0102】
次に、第3撮影モードでの作動、即ち、電子ファインダを用いて撮影する場合に、セット状態においては、先羽根と後羽根の両方が露光開口を開いていて、撮影に際しては、電子制御回路が撮像素子を制御することによって撮影露光を開始し後羽根が露光開口を閉じることによって撮影露光を終了するようにしたモードでの作動を、上記の図10のほか、新たに図15〜図17を用いて説明する。尚、図15は、カメラのレリーズボタンが押された直後の状態を示した平面図であり、図16は、図15の状態から後羽根が露光開口を閉鎖した状態を示した平面図であり、図17は、第3撮影モードで撮影する場合における各主要構成手段の作動関係を示すタイミングチャートである。また、この第2撮影モードでの作動についても、これまでの説明から充分に理解することができるところは、簡略化して説明する。
【0103】
既に説明したように、図10は、上記の第2撮影モードを選択したときにおけるセット状態を示したものでもあるが、第3撮影モードを選択したときのセット状態を示したものでもある。そのため、撮影者が、第3撮影モードの選択状態から第2撮影モードの選択状態に切り換えた場合にも、また、第2撮影モードの選択状態から第3撮影モードの選択状態に切り換えた場合にも、本実施例の各構成手段は全く作動しない。従って、第3撮影モードが選択された場合には、以下に説明する撮影ごとの作動シーケンスが変わるだけである。
【0104】
図10のセット状態においては、上記したように、可動ミラーはアップ状態を維持されており、二つの電磁石10,11のコイル10b,11bと、抑止手段13のコイル13eには通電されていない。しかしながら、抑止手段13の永久磁石回転子13aは、時計方向へ回転させられた状態になっており、抑止部材13bの先端部は、先羽根用第1駆動部材14の被抑止部14bに接触し、セットばね30の付勢力による先羽根用第1駆動部材14の反時計方向の回転を抑止している。そのため、開口部1aが全開状態になっており、カメラの電源スイッチがオンになっていれば、電子ファインダによって、撮影しようとする被写体の状況を観察することが可能になっている。そして、この第3撮影モードの場合には、このあと、抑止手段13のコイル13eに通電されることが全くない。そのため、抑止部材13bは、この状態を維持し続けることになる。
【0105】
このようなセット状態において、電子ファインダで被写体像を観察しながら、カメラのレリーズボタンを押すと、二つの電磁石10,11のコイル10b,11bに通電され、それまでは、各々の電磁石10,11の鉄芯部材10a,11aに対して単に接触していただけの鉄片部材16,21が、電磁力によって吸着保持される。その後、図示していないカメ本体側の部材が、セット部材24の被押動部24dから退いていくと、セット部材24は、それに追従し、図示していないばねの付勢力によって反時計方向への回転を開始する。そして、その回転の初期段階において、先羽根用第2駆動部材15と後羽根用駆動部材20とは、既に説明したようにして、僅かに時計方向へ回転したところで停止させられる。その後、セット部材24が初期位置へ復帰して停止した状態が、図15に示された状態である。
【0106】
図15に示された状態が得られると、電子制御回路が撮像素子を制御することによって撮影が開始される。そして、被写体の明るさに対応して決められた所定時間が経過すると、先羽根用電磁石10には通電したままで、後羽根用電磁石11に対する通電が断たれる。そのため、後羽根用駆動部材20が時計方向へ回転するので、後羽根の3枚の羽根33〜35は、隣接する羽根同士の重なり量を小さくしながら開口部1aを閉じていく。そして、後羽根の3枚の羽根33〜35が展開状態になって開口部1aを完全に閉じ終わると、後羽根用駆動部材20は、駆動ピン20cが緩衝部材5に当接することによって停止させられる。図16は、そのときの状態を示したものであるが、この状態になっても、先羽根用電磁石10には通電されているので、先羽根用第2駆動部材15は、鉄片部材21が先羽根用電磁石10に吸着されたままになっている。
【0107】
このような図16の状態において、撮影された撮像情報が、情報処理回路を介して記憶装置に記憶されると、直ちにセット作動が行われる。セット部材24は、図16の状態において、図示していないカメラ本体側の部材によって被押動部24dを押されると、図示していないばねの付勢力に抗して初期位置から時計方向へ回転させられていく。ところが、このときには、先羽根用第2駆動部材15は、その鉄片部材21が先羽根用電磁石10に吸着された状態になっているため、セット部材24は、先ず、押動部24cがローラー20dを押すことになり、後羽根用駆動部材20を、後羽根用駆動ばね22の付勢力に抗して、反時計方向へ回転させる。そのため、後羽根の3枚の羽根33〜35は、隣接する羽根同士の重なり量を大きくしながら上方へ走行させられていく。
【0108】
そして、後羽根の3枚の羽根33〜35が、重畳状態になって開口部1aから上方へ退き、鉄片部材21の鉄片部21cが、後羽根用電磁石11の鉄芯部材11aに当接する段階になると、セット部材24の押動部24bが先羽根用第2駆動部材15の被押動部15bに当接し、先羽根用第2駆動部材15を押動するようになる。その後、セット部材24は、先羽根用駆動ばね18と後羽根用駆動ばね22を僅かにオーバーチャージさせたところで停止させられる。その後、先羽根用電磁石10に対する通電を断つと、図10に示されたセット状態に復帰したことになる。
【0109】
ところで、上記の作動説明においては、図10のセット状態においてカメラのレリーズボタンが押されると、先羽根用電磁石10と後羽根用電磁石11の両方に通電され、先羽根用電磁石10への通電は、セット作動の終了段階になってから断たれる場合を説明した。そのため、この場合には、セット部材24は、セット作動の殆どの行程において、押動部24bにより先羽根用第2駆動部材15の被押動部15bを先羽根用駆動ばね18の付勢力に抗して押すことがないので、セット力量の点で有利といえる。
【0110】
しかしながら、そのようにして作動させるのではなく、先羽根用電磁石10に対しては全く通電しないで作動させることも可能である。即ち、その場合は、図10のセット状態においてカメラのレリーズボタンが押されると、後羽根用電磁石11にだけ通電してから、セット部材24を反時計方向へ回転させることになる。そうすると、先羽根用第2駆動部材15は、その被押動部15bがセット部材24の押動部24bに追従し、先羽根用駆動ばね18の付勢力によって時計方向へ回転し、セット部材24が初期位置へ復帰したときには、押動部15dが先羽根用第1駆動部材14の被押動部14aを押して停止するようになる。
【0111】
そのため、その後、後羽根用駆動部材20が時計方向へ回転して撮影が終了した段階では、上記の図9に示された状態になり、先羽根用第1駆動部材14の被抑止部14bが、抑止手段13の抑止部材13bから離れた状態になる。従って、この場合におけるセット作動は、上記の第1の切換え方式におけるセット作動と同じようにして行われることになる。そして、第3撮影モードでの作動をこのようにして行うようにすると、シャッタユニットとしては、省電力の点で有利になる。
【0112】
ここで、第4撮影モードについて説明をしておく。既に説明したように、第4撮影モードは、電子ファインダを用いて撮影する場合であって、セット状態においては、先羽根と後羽根の両方が露光開口を開いていて、撮影に際しては、先羽根を作動させることなく、電子制御回路が撮像素子における撮影露光の開始と終了の両方を制御し、撮影露光終了後に後羽根を作動させて露光開口を閉じさせるようにしたモードである。そのため、この第4撮影モードの場合には、第3撮影モードの場合には、後羽根が露光開口を閉じることによって撮影露光が終了していたのに対して、撮影露光が終了してから後羽根が露光開口を閉じるようにしている点が異なっているだけである。
【0113】
従って、両者は、後羽根の閉じ作動を開始させるタイミングが異なるだけであって、セット状態も、撮像情報が記憶装置に記憶された直後の状態も、全く同じということになる。そのため、第4撮影モードについての作動説明は省略する。また、カメラの仕様として、上記の三つの撮影モードのほかに、第4撮影モードの選択も可能にした場合には、第1撮影モードからの切り換えは、上記した第1撮影モードから第2撮影モード又は第3撮影モードへの切り換えと同じようにして行われるし、第2撮影モード又は第3撮影モードからの切り換え、並びに第2撮影モード又は第3撮影モードへの切り換えは、単に作動シーケンスが変わるだけであって、図示されている実施例の各構成手段は全く作動しない。
【0114】
次に、撮影者が、第2撮影モード又は第3撮影モードが選択されている状態から、第1撮影モードを選択した場合における切換え作動を、上記の図4,図10のほかに、新たに図18を用いて説明する。尚、図18は、第2撮影モード又は第3撮影モードから、第1撮影モードへの作動時における各主要構成手段の作動関係を示したタイミングチャートである。また、上記のように、第4撮影モードの選択も可能にしている場合には、この切換え作動は、第4撮影モードから第1撮影モードへ切り換えるときも同じである。
【0115】
上記のように、第2撮影モードを選択している場合も、第3撮影モードを選択している場合も、セット状態は図10に示された状態である。そのため、第2撮影モードから第1撮影モードに切り換える作動も、第3撮影モードから第1撮影モードに切り換える作動も、全く同じである。そこで、撮影者が、カメラの選択手段によって、第1撮影モードを選択すると、図示していない可動ミラーがダウン状態にさせられ、撮影ごとにアップ・ダウン作動を可能にさせられると共に、そのときの切換え信号によって、図10の状態にある抑止手段13のコイル13eに対して順方向の電流が供給される。そのため、永久磁石回転子13aは、反時計方向へ回転させられ、抑止部材13bがストッパピン1qに当接して停止させられる。そして、その後、コイル13eに対する通電が断たれる。
【0116】
このようにして、永久磁石回転子13aが反時計方向へ回転させられると、抑止部材13bの先端が先羽根用第1駆動部材14の被抑止部14bから外れるので、先羽根用第1駆動部材14は、セットばね30の付勢力によって反時計方向へ回転させられ、先羽根の3枚の羽根27〜29は、隣接する羽根同士の重なり量を小さくしながら上方へ走行し、開口部1aを閉じていく。そして、先羽根の3枚の羽根27〜29が開口部1aを完全に閉じると、その直後に、先羽根用第1駆動部材14の被押動部14aが先羽根用第2駆動部材15の押動部15dに当接して停止する。その状態が、図4に示された状態であって、第1撮影モードで撮影する場合のセット状態である。
【0117】
尚、上記の実施例においては、抑止手段13が、往復回転をする可動子としての永久磁石回転子13aに対し抑止部材13bが一体化されているようにした電磁装置ユニットとして構成されているが、本発明の抑止手段は、そのような電磁装置ユニットに限定されるものではない。例えば、棒状の可動子を備えた電磁プランジャのように、可動子が直線的に往復作動し、その一端が先羽根用第1駆動部材の被押動部の作動軌跡内に出入りし得るようにした電磁装置ユニットであっても構わない。その場合には、その可動子が本発明の抑止部材ということになる。
【0118】
また、本発明の抑止手段は、周知のステッピングモータの回転子や出力軸に、先羽根用第1駆動部材の被押動部の作動軌跡内に出入りし得る抑止部材を一体化させた構成であっても構わない。更に、本発明の抑止手段は、上記した周知の電流制御式のモータや周知のステッピングモータなどの各種の電磁アクチュエータと、それによって往復回転又は直線的な往復作動をさせられる部材とによって構成するようにしてもよい。そのように構成するとコスト上では不利になるが、シャッタ地板に対するレイアウト上では自由度が増すことがある。
【0119】
また、実施例においては、セットばね30が、シャッタ地板1の軸1jに嵌装されていて、その一端を、シャッタ地板1の図示していないばね掛け部に掛け、他端を、先羽根のアーム26に掛けているが、本発明は、このような構成に限定されず、セットばね30をシャッタ地板1の軸1gに嵌装させておき、一端を、先羽根用第1駆動部材14に掛け、他端を、先羽根用第2駆動部材15に掛けることによって、先羽根用第1駆動部材14が先羽根用第2駆動部材15に対して反時計方向へ回転するように付勢し、また、先羽根用第2駆動部材15が先羽根用第1駆動部材14に対して時計方向へ回転するように付勢するようにしてもよい。そのような構成にすると先羽根用第2駆動部材15が、先羽根用駆動ばね18の付勢力によって時計方向へ回転するとき、セットばねの付勢力に抗して回転しなくて済むようになる。
【符号の説明】
【0120】
1 シャッタ地板
1a,2a,3a 開口部
1b,1c,1d 孔
1e,1f 柱
1g,1h,1i,1j,1k 軸
1m,1n,3b,3c,25a,31a 長孔
1p,1q ストッパピン
2 中間板
3 補助地板
4,5 緩衝部材
6 支持板
6a,6b ラチェット爪
7 プリント配線板
8,9,12 ねじ
10 先羽根用電磁石
10a,11a 鉄芯部材
10b,11b,13e コイル
10c,11c ボビン
11 後羽根用電磁石
13 抑止手段
13a 永久磁石回転子
13b 抑止部材
13c 第1固定子枠
13c−1 張出部
13c−2 窓
13d 第2固定子枠
13f ヨーク
13g 磁性体棒
14 先羽根用第1駆動部材
14a,15b,24d 被押動部
14b 被抑止部
14c,20c 駆動ピン
15 先羽根用第2駆動部材
15a,20a,24a 筒部
15c,20b 取付部
15d,24b,24c 押動部
16,21 鉄片部材
16a,21a 軸部
16b,21b 頭部
16c,21c 鉄片部
17 圧縮ばね
18 先羽根用駆動ばね
19,23 ラチェット部材
20 後羽根用駆動部材
20d ローラー
22 後羽根用駆動ばね
24 セット部材
25,26,31,32 アーム
27,28,29,33,34,35 羽根
30 セットばね
36 ばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先羽根を連結していて被押動部と被抑止部とを有しておりシャッタ地板の第1軸に対して回転可能に取り付けられている先羽根用第1駆動部材と、押動部を有していて前記第1軸に回転可能に取り付力けられており撮影時において先羽根用駆動ばねの付勢によって回転させられその回転時に該押動部が前記被押動部を押して先羽根用第1駆動部材を共に回転させたときには先羽根に露光開口を開かせる先羽根用第2駆動部材と、セット状態においては先羽根用第1駆動部材を先羽根が露光開口を覆う位置へ回転させ得るように直接又は間接に付勢しているセットばねと、後羽根を連結していて前記シャッタ地板の第2軸に回転可能に取り付けられており撮影時には後羽根用駆動ばねの付勢力によって回転させられ後羽根に露光開口を閉じさせる後羽根用駆動部材と、前記シャッタ地板の第3軸に回転可能に取り付けられておりセット作動時には初期位置から回転して先羽根用第2駆動部材と後羽根用駆動部材とを前記各駆動ばねの付勢力に抗して回転させセット位置においてはそれらの駆動部材をセット状態に維持しカメラのレリーズ後であって撮影露光開始前には初期位置へ復帰するセット部材と、前記被抑止部の作動軌跡内に出入り可能な抑止部材を有していて前記シャッタ地板に取り付けられており該抑止部材が前記被抑止部の作動軌跡外にある場合は撮影終了直後であって前記セット部材のセット作動開始前において該抑止部材を前記被抑止部の作動軌跡内に作動させることが可能であり該抑止部材が前記被抑止部の作動軌跡内にある場合は前記被抑止部の抑止状態において該抑止部材を前記被抑止部の作動軌跡外に作動させることが可能な抑止手段と、を備えていることを特徴とするデジタルカメラ用フォーカルプレンシャッタ。
【請求項2】
前記抑止手段が、電磁装置であって、前記抑止部材が、該電磁装置の往復作動可能な可動子であることを特徴とする請求項1に記載のデジタルカメラ用フォーカルプレンシャッタ。
【請求項3】
前記抑止手段が、電磁アクチュエータと、該電磁アクチュエータによって往復作動させられる部材とを有しており、該部材が前記抑止部材であることを特徴とする請求項1に記載のデジタルカメラ用フォーカルプレンシャッタ。
【請求項4】
前記抑止手段が、電磁装置であって、前記抑止部材が、前記可動子と一体化された部材であることを特徴とする請求項1に記載のデジタルカメラ用フォーカルプレンシャッタ。
【請求項5】
前記可動子が、回転子であることを特徴とする請求項4に記載のデジタルカメラ用フォーカルプレンシャッタ。
【請求項6】
前記回転子が、前記電磁装置の固定子コイルに対する通電方向に対応した方向へ所定の角度範囲で往復回転させられる永久磁石回転子であり、前記抑止部材は、該永久磁石回転子の径方向に延伸して形成され、その先端部を前記被抑止部に対する抑止部としていることを特徴とする請求項5に記載のデジタルカメラ用フォーカルプレンシャッタ。
【請求項7】
前記電磁装置の固定子には磁性体部材が取り付けられており、前記固定子コイルへの通電を断ったときには、前記永久磁石回転子は、前記回転角度範囲の両端のいずれかの位置において、該磁性体部材との間に作用する磁力によって、停止状態を維持されるようにしたことを特徴とする請求項6に記載のデジタルカメラ用フォーカルプレンシャッタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate