説明

デジタルカメラ

【課題】従来型の位相差式焦点検出および撮像素子を用いた位相差式の焦点検出のそれぞれの利点を生かせるようにする。
【解決手段】撮像素子を用いた位相差式焦点検出は、ミラーダウンに同期してレンズ駆動(焦点調節)を行えるため、従来型の位相差式焦点検出と比べて連写の駒速アップが図れる。連写時、従来型の位相差式焦点検出で予め設定されている連写速度が実現可能な場合は、従来型の位相差式焦点検出で連写を行い、それ以外の場合は、基本的に撮像素子を用いた位相差式の焦点検出で連写を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像素子で位相差方式の焦点検出が可能なデジタルカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
画像データを得るための撮像素子で位相差方式の焦点検出を行うデジタルカメラが知られている。この種のカメラは、撮像により画像データと焦点検出信号とが同時に得られるため、連写を行う際に、前回の撮像で得た焦点検出信号を今回の撮像のための焦点調節に用いることで、撮像とは別に焦点検出を行う場合と比較して駒速アップが図れる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−310072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、一眼レフカメラでは、専用の焦点検出センサを用いた位相差式の焦点検出を行っている。この従来型の焦点検出に代えて、上述した撮像素子を用いた位相差式焦点検出を行うことが考えられるが、従来型の焦点検出の方が有利な点もあるため、単純に撮像素子を用いた位相差式焦点検出に置き換えるのは得策ではない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るデジタルカメラは、撮影光学系の透過光束を受光して撮像を行う撮像手段と、撮像に先だってダウン位置からアップ位置に駆動され、1駒の撮像が終了するたびにダウン位置に復帰されるミラーユニットと、ダウン位置にあるミラーユニットを介して光束を受光し、位相差方式の焦点検出を行う第1の焦点検出手段と、撮像手段の撮像結果に基づいて位相差方式の焦点検出を行う第2の焦点検出手段と、連写時に、第1の焦点検出手段が選択されているときは、任意の駒の撮像後、ミラーユニットがダウン位置に駆動されるのを待って次駒のための焦点検出を行うとともに、その焦点検出結果に基づいて焦点調節を行い、第2の焦点検出手段が選択されているときは、任意の駒に対しその撮像結果に基づいて次駒のための焦点検出を行うとともに、その焦点検出結果に基づいて、ミラーユニットがダウン位置に駆動されるのに同期して焦点調節を行う焦点調節制御手段と、連写にあたり、予め設定されている連写速度および/または被写体輝度に基づいて、第1,第2の焦点検出手段のいずれかを選択する選択手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、従来型の位相差式の焦点検出および撮像素子を用いた位相差式の焦点検出のそれぞれの利点を生かすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施形態におけるデジタル一眼レフカメラの概略構成図。
【図2】カメラの制御系を示すブロック図。
【図3】連写時におけるカメラ各部の動作を示すタイムチャートであり、(a)が従来型の位相差式焦点検出を用いた場合を、(b)が撮像素子の出力に基づく位相差式焦点検出を用いた場合を、(c)はミラーバウンドの減衰状況をそれぞれ示す。
【図4】連写時の処理手順を示すフローチャート。
【図5】上記双方の焦点検出結果を用いた動体予測時のタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1〜図5により本発明の一実施形態を説明する。
図1において、撮影レンズ20を透過した被写体光束は、カメラボディ10内のメインミラー(ハーフミラー)11Aで一部が反射され、ファインダ光学系を構成するペンタプリズム12および接眼レンズ13を介して接眼窓14から観察される。また、ペンタプリズム12を通過した一部の光束は測光素子15に入射し、測光素子15の光電変換出力は、測光回路15a(図2)を経て被写体輝度信号としてCPU55に入力される。
【0009】
一方、メインミラー11Aを透過した光束は、一部がサブミラー11Bで反射され、焦点検出用の光束として焦点検出モジュール16に導かれる。焦点検出モジュール16は、電荷蓄積型の焦点検出素子16a(図2)を含み、公知の位相差検出方式の焦点検出を行う。その焦点検出出力は、焦点検出回路16bを経てCPU55に入力される。
【0010】
レリーズ操作がなされると、ミラーユニット11(メインミラー11Aとサブミラー11B)がアップして撮影光路から退避し、この状態でシャッタ17が開放されると、撮影レンズ20の透過光束はシャッタ17を通過して撮像素子18に導かれ、露光が行われる。
【0011】
図2は上記カメラの制御ブロック図である。上記撮像素子18で得られた撮像信号は、画像処理部51に入力される。画像処理部51を構成する画像処理回路51aは、入力された撮像信号に種々の処理を施して画像データを生成する。生成された画像データは、コンピュータで扱うことが可能な画像ファイルとして、記録/再生回路51cによりメモリカード等の記録媒体52に記録される。
【0012】
再生モードでは、記録媒体52に記録された画像データを記録/再生回路51cにて読み出し、画像処理回路51aおよび表示回路51bによる処理を経て、カメラ背面などに設けられた液晶モニタ53に表示することができる。
【0013】
露出制御部54は、CPU55からの指示に応じて不図示の絞りやシャッタ17を駆動する。フォーカス駆動部56は、CPU55からの指示に応じて撮影レンズ20の合焦光学系を駆動し、焦点調節を行う。ミラー駆動部57は、CPU55からの指示に応じてミラーアップ/ダウンを行う。CPU55は、操作部58からの入力に応答して各部を制御し、後述する連写制御を含む種々の動作を行う。操作部58は、電源ボタンやレリーズボタン、再生操作や情報入力等で用いる各種操作部材等を含む。
【0014】
ここで、本実施形態のカメラは、上述した焦点検出素子16aおよび測光素子15を用いた焦点検出および測光に加えて、撮像素子18の出力を用いた焦点検出および測光が可能である。撮像素子18は、通常の撮像用画素に加えて、撮影レンズの射出瞳上の対の領域を通過した光束を受光する複数の焦点検出用画素を有し、これらの焦点検出用画素の出力に基づき、位相差検出方式による焦点検出が可能とされる(例えば、引用文献1参照)。また、撮像素子18の出力から得た画像データの輝度分布を検出し、これを測光値として用いることができる。
【0015】
以下の説明では、2種類の焦点検出方法のうち、専用の焦点検出素子16aを用いて行う従来型の位相差式焦点検出を「通常位相差検出」、撮像素子18の出力に基づいて行う位相差式焦点検出を「像面位相差検出」と呼ぶ。同様に2種類の測光方法のうち、専用の測光素子15を用いて行う測光を「通常測光」、撮像素子18の出力に基づく測光を「像面測光」と呼ぶ。
【0016】
次に、カメラにおける連写制御について説明する。なお、連写モードでは、ユーザが好みに応じて連写速度(駒速)を選択できるものとする。
【0017】
図3は連写時におけるカメラ各部の動作を示し、(a)は通常位相差検出および通常測光を用いた場合を示している。
図3(a)において、連写モードでレリーズ操作がなされると、まず通常位相差検出および通常測光(図示A)が行われる。次いでミラーアップがなされるとともに、通常位相差検出結果に基づくレンズ駆動(焦点調節)、および通常測光結果に基づくAE演算(図示B)が行われる。AE演算は、絞り値やシャッタ秒時を求めるための演算である。
【0018】
ミラーユニット11がアップ位置に達したことは、不図示の検出スイッチで検出できる。しかし、ミラーユニット11はアップ位置に達しても直ぐには安定せず、ある程度の時間はばたつく(ミラーバウンド)。そこで、ミラーバウンドが減衰するのに要する時間だけ待機し、しかる後に、AE演算結果に基づいて絞りやシャッタ17を駆動し、撮像素子18による1駒目の撮像(露光)を行う(図示C1)。撮像後、次の焦点検出およ測光を行うためミラーダウンがなされる。すなわち、通常位相差検出および通常測光は、それぞれサブミラー11B、メインミラー11Aの反射光を利用するため、これらを行うためにはミラーユニット11をダウン位置に戻す必要がある。
【0019】
ミラーユニット11がダウン位置に達したことは、不図示の検出スイッチで検出できるが、ここでもミラーバウンドが発生する(図3(c))。ミラーダウンは、ミラーダウンばねの付勢力によって行うため、ミラーアップ時(ばねチャージ時)と比べてミラーバウンドは大きく、また減衰するまでの時間も長くなる。ミラーバウンド中に通常位相差検出および通常測光を行うと、正確な検出結果が得られないおそれがあるため、ミラーユニット11がダウン位置に達した後、ミラーバウンドが減衰するのに要する時間だけ待機し、しかる後に、次駒のための通常位相差検出および通常測光を行う。このときの待機時間は、予め決められている。
【0020】
以降、レリーズボタンが操作されている間は上記の動作が繰り返される。上述したように、撮像後に次の焦点検出および測光を行うには、ミラーダウンおよびミラーバウンドが減衰するまでの時間を待たなければならず、これが連写の高速化の障害となる。したがって、通常位相差検出および通常測光を用いた連写では、撮影者が選択した駒速を実現できないかもしれない。
【0021】
一方、図3(b)は像面位相差検出および像面測光を用いた連写手順を示している。1駒目については像面位相差検出および像面測光は行えないため、上述と同様に通常位相差検出および通常測光(図示A)を行い、次いでミラーアップ動作、レンズ駆動およびAE演算(図示B)を行う。その後、1駒目の撮像を行うとともに、その撮像信号に基づいて、次駒のための像面位相差検出および像面測光を行う(図示C2)。しかる後、ミラーダウンを行う。次駒のための焦点検出および測光は既に済んでいるので、ここで行うミラーダウンは、被写体確認のためである(ミラーユニット11がアップしっぱなしではファインダで被写体を確認できない)。被写体確認用のミラーダウンでは、ミラーダウン後にミラーバウンドの減衰を待つ必要はないから、直ぐに次の撮像に備えてミラーアップを開始する。また、ミラーダウンに同期して、上記像面位相差検出の結果に基づくレンズ駆動、および像面測光に基づくAE演算を行う。
【0022】
以降、レリーズボタンが操作されている間は、上記のC2およびBの動作が繰り返される。このように像面位相差検出および像面測光を用いることにより、ミラーダウンに同期してレンズ駆動等の動作を行うことができ、またミラーバウンドの減衰を待つ必要もないので、その分だけ駒速をアップさせることができる。
【0023】
以上から明らかなように、像面位相差検出および像面測光は、通常位相差検出および通常測光と比べて連写速度の点では有利である。一方で、像面位相差検出および像面測光は、ミラーダウン状態では使用できず、また性能的にも通常位相差検出および通常測光より劣る。そこで本実施形態では、以下に示すように、2種類の焦点検出および測光を使い分けることで、双方の利点を生かすようにしている。
【0024】
まず、像面位相差検出および像面測光がミラーダウン状態で使用できないことに鑑み、1駒撮りの場合は、通常位相差検出および通常測光を用いる。
【0025】
次に、連写時の動作を図4のフローチャートを参照して説明する。
連写モード設定時にレリーズ操作がなされるのに伴い、CPU55により図4のプログラムが起動される。なお、レリーズ操作前の半押し操作の段階で、通常位相差検出および通常測光がなされている。
【0026】
ステップS1では、ユーザにより設定されている連写速度や半押し段階での測光結果に基づいて、通常位相差検出および通常測光のみによる連写で上記連写速度が実現可能か否かを判定する。測光結果を加味するのは、被写体輝度が低いほど焦点検出時間(正確には焦点検出のための素子の電荷蓄積時間)が長くなるからである。設定されている連写速度がある程度以上高速の場合は、被写体輝度すなわち焦点検出時間に拘わらず、像面位相差検出でなければ上記連写速度を実現できないことがあり得る。また連写速度によっては、被写体輝度がある程度高ければ通常位相差検出による連写で連写速度が実現できるが、被写体輝度がそれ以下の場合は、像面位相差検出でなければ連写速度を実現できないということもあり得る。
【0027】
ステップS1で実現不能と判定されるとステップS2に進み、像面位相差検出および像面測光による連写手順(図3(b)のB→C2)で1駒の撮像を行う。ただし、1駒目であれば通常位相差検出および通常測光を行う。撮像後、ステップS6に進んでレリーズ操作が継続しているか否かを判定し、否定されると処理を終了し、肯定されるとステップS1に戻る。
【0028】
一方、ステップS1で実現可能と判定された場合は、ステップS3において、公知の動体判定技術を用い、主要被写体と目される被写体が動体か否かを判定する。動体でない場合はステップS4に進み、通常位相差検出および通常測光による連写手順(図3(a)のA→B→C1)で1駒の撮像を行い、その後、ステップS6に進む。
【0029】
もし被写体が動体であった場合は、いわゆる動体予測を行って被写体の移動を予測し、その予測結果に基づいてレンズ駆動を行うことで、ピントが被写体に追従するようにする。動体予測は、前後の焦点検出結果を比較することで行うため、当然ながら焦点検出間隔が短いほど有利である。そこで本実施形態では、ステップS3で動体であることが判定されると、図5のような連写形態をとる(ステップS5)。
【0030】
この図5の形態は、基本的に図3(a)の形態と図3(b)の形態とを組み合わせたもので、図3(a)における通常位相差検出(A)と次の通常位相差検出(A)との間に像面位相差検出(C2)が行われる。そして、これら通常位相差検出と像面位相差検出の結果を用いて動体予測が行われ、その結果に基づいてレンズ駆動が行われる。これによれば、動体予測のための焦点検出の間隔を短くする(単位時間あたりの焦点検出回数を多くする)ことができるので、動体予測の精度を上げることができ、ピンぼけを抑制できる。また特に、画面内に複数の焦点検出エリアが設定されているものにおいて、互いに隣接する通常位相差検出用の焦点検出エリアの間に像面位相差検出用の焦点検出エリアを配することで、移動体が小さい場合でもこれを見失うことがなく、これによってもピンぼけを抑制できる。
【0031】
以上のように本実施形態では、連写時において、従来型の焦点検出(通常位相差検出)および撮像素子を用いた焦点検出(像面位相差検出)を状況に応じて使い分けるようにしたので、それぞれの焦点検出の利点を生かすことが可能となる。また図4のフローでは、1駒の撮像のたびにステップS1の判定がなされるので、連写の最中であっても状況に応じて連写形態が代わり、常に最適な形態で連写を継続することができる。
【符号の説明】
【0032】
10 カメラボディ
11 ミラーユニット
15 測光素子
16 焦点検出モジュール
17 シャッタ
18 撮像素子
20 撮影レンズ
55 CPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影光学系の透過光束を受光して撮像を行う撮像手段と、
前記撮像に先だってダウン位置からアップ位置に駆動され、1駒の撮像が終了するたびにダウン位置に復帰されるミラーユニットと、
ダウン位置にあるミラーユニットを介して光束を受光し、位相差方式の焦点検出を行う第1の焦点検出手段と、
前記撮像手段の撮像結果に基づいて位相差方式の焦点検出を行う第2の焦点検出手段と、
連写時に、前記第1の焦点検出手段が選択されているときは、任意の駒の撮像後、前記ミラーユニットがダウン位置に駆動されるのを待って次駒のための焦点検出を行うとともに、その焦点検出結果に基づいて焦点調節を行い、前記第2の焦点検出手段が選択されているときは、任意の駒に対しその撮像結果に基づいて次駒のための焦点検出を行うとともに、その焦点検出結果に基づいて、前記ミラーユニットがダウン位置に駆動されるのに同期して焦点調節を行う焦点調節制御手段と、
連写にあたり、予め設定されている連写速度および/または被写体輝度に基づいて、前記第1,第2の焦点検出手段のいずれかを選択する選択手段とを備えることを特徴とするデジタルカメラ。
【請求項2】
前記選択手段は、予め設定されている連写速度および/または被写体輝度に基づいて、前記設定されている連写速度が前記第1の焦点検出手段を用いて実現可能か否かを判定する判定部と、該判定部が実現不能と判断したときに前記第2の焦点検出手段を選択する選択部とを含むことを特徴とする請求項1に記載のデジタルカメラ。
【請求項3】
前記判定部が実現可能と判断したときに、被写体が動体か否かを判定する動体判定手段を更に備え、
前記選択部は、前記動体判定手段が動体でないと判断したときは前記第1の焦点検出手段を選択し、動体と判断したときは前記第1,第2の焦点検出手段の双方を選択し、
前記焦点調節制御手段は、前記双方の焦点検出手段が選択された場合は、該双方の焦点検出手段の検出出力に基づいて動体予測演算を行い、その演算結果に基づいて焦点調節を行うことを特徴とする請求項2に記載のデジタルカメラ。
【請求項4】
前記ダウン位置にあるミラーユニットを介して光束を受光し、測光を行う第1の測光手段と、
前記撮像手段の撮像結果に基づいて測光を行う第2の測光手段と、
連写時に、前記第1の焦点検出手段が選択されているときは、任意の駒の撮像後、前記ミラーユニットがダウン位置に駆動されるのを待って次駒のための測光を前記第1の測光手段により行うとともに、その測光結果に基づいて露出制御演算を行い、第2の焦点検出手段が選択されているときは、任意の駒に対しその撮像結果に基づいて次駒のための測光を前記第2の測光手段により行うとともに、その測光結果に基づいて、前記ミラーユニットがダウン位置に駆動されるのに同期して露出制御演算を行う露出制御手段とを更に備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のデジタルカメラ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−112941(P2011−112941A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270358(P2009−270358)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】