説明

デジタルカメラ

【課題】焦点合わせを行った被写体をわかりやすく表示部に表示することができるデジタルカメラを提供する。
【解決手段】撮影画面の画素ごとに対応する被写体までの被写体距離を取得可能な測距手段と、前記被写体の撮影画像を表示する表示部28と、前記被写体距離の二次元配列のうち、焦点合わせを行った距離を基準とする所定範囲にある画素と前記所定範囲外となる画素を識別する識別部22と、前記識別部による識別結果に基づいて、前記表示部に表示されている前記被写体の撮影画像において、前記所定範囲にある画素と前記所定範囲外となる画素を識別表示する表示制御部22とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、撮影画像をカラー画像からモノクロ画像に変換し、撮影画像の被写体の輪郭とその内部に相当する領域を着色しモノクロ画像と合成させてファインダーに表示する撮像装置が存在する(例えば、特許文献1参照)。また、撮影画面内の所定の領域に焦点検出に用いられるAF(オートフォーカス)エリアを設定し、AFエリアがファインダー内に表示される一眼レフカメラが存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−135812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の撮像装置においては、撮影画像の高周波成分から合焦状態を検出するため、例えば、高コントラストの被写体は合焦状態を検出しやすいが、低コントラストの被写体は合焦状態が検出しづらい等、被写体パターンへの依存性が高く被写体パターンによっては検出特性が大きく変化することがあった。また、高コントラストの被写体の領域が大きすぎる場合には、着色される部分が大きくなり被写体が見えづらくなるという問題があった。また、上述の一眼レフカメラにおいては、焦点検出に用いるAFエリアがファインダー内に表示されるだけで、焦点が合った被写体を理解することが困難であった。
【0005】
本発明の目的は、焦点合わせを行った被写体をわかりやすく表示部に表示することができるデジタルカメラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のデジタルカメラは、撮影画面の画素ごとに対応する被写体までの被写体距離を取得可能な測距手段と、前記被写体の撮影画像を表示する表示部と、前記被写体距離の二次元配列のうち、焦点合わせを行った距離を基準とする所定範囲にある画素と前記所定範囲外となる画素を識別する識別部と、前記識別部による識別結果に基づいて、前記表示部に表示されている前記被写体の撮影画像において、前記所定範囲にある画素と前記所定範囲外となる画素を識別表示する表示制御部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、焦点合わせを行った被写体をわかりやすく表示部に表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施の形態に係るデジタルカメラのシステム構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態に係るデジタルカメラと被写体の位置及びLCD表示部における表示状態を示す図である。
【図3】実施の形態に係るデジタルカメラと被写体の距離分布を示す図である。
【図4】実施の形態に係るLCD表示部における表示状態を示す図である。
【図5】実施の形態に係るデジタルカメラと被写体の位置を示す図である。
【図6】実施の形態に係るデジタルカメラと被写体の距離分布及びLCD表示部における表示状態を示す図である。
【図7】実施の形態に係るデジタルカメラと被写体の距離分布及びLCD表示部における表示状態を示す図である。
【図8】実施の形態に係るLCD表示部における表示状態を示す図である。
【図9】実施の形態に係るデジタルカメラと被写体の位置を示す図である。
【図10】実施の形態に係るLCD表示部における表示状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態に係るデジタルカメラ(以下、カメラという。)について説明する。図1は、実施の形態に係るカメラのシステム構成を示すブロック図である。図1に示すように、カメラ2は、対物レンズ4、瞳分割フィルタ6、偏光分離プリズム8、第1撮像素子10、第2撮像素子12、撮像駆動部14、AF駆動部16、位置センサ18、画像処理部20、カメラ2の全体を制御する制御部22、記録媒体24、操作部材26及びLCD表示部28を備えている。
【0010】
対物レンズ4の瞳位置には瞳分割フィルタ6が配置されており、瞳分割フィルタ6は互いに透過偏光軸の直交する透過特性を有する。即ち、瞳分割フィルタ6は2つの領域6a,6bから構成され、領域6aの偏光軸と領域6bの偏光軸とは互いに直交している。
【0011】
瞳分割フィルタ6の領域6a,6bを透過したそれぞれの光は、偏光分離プリズム8によって2方向に分離され、それぞれ第1撮像素子10または第2撮像素子の撮像面に結像する。第1撮像素子10及び第2撮像素子で撮像される像は、瞳分割フィルタ6の異なる瞳領域を透過しているため、焦点がずれていると結像位置にずれが生じる。この結像位置のずれ量から、後述の被写界の距離情報を取得することができる。
【0012】
撮像駆動部14には第1撮像素子10及び第2撮像素子12が接続され、撮像駆動部14は第1撮像素子10及び第2撮像素子12から出力された撮像信号に基づく撮影画像の画像データを画像処理部20に伝送する。
【0013】
画像処理部20は、撮像駆動部14から伝送された画像データをLCD表示部28に表示可能な形態にするための画像処理を行う。また、伝送された2つの画像データに基づいて撮影画面の画素ごとに、第1撮像素子10及び第2撮像素子で撮像された2つの像の結像位置のずれ量を検出し、検出されたずれ量に基づいて撮影画面の画素毎にデフォーカス量を算出する。
【0014】
AF駆動部16は、画像処理部20により算出されたデフォーカス量に基づいて対物レンズ4の位置を調整し、焦点合わせの動作を行う。ここで、制御部22は位置センサ18により対物レンズ4の位置を検出することにより、焦点を合わせた被写体までの距離(撮影距離)を算出し、また撮影画面の画像ごとの被写体距離の二次元配列を取得することができる。
【0015】
また、対物レンズ4の焦点距離及び撮影時のF値は既知であるため、制御部22は対物レンズ4の焦点距離、撮影時のF値及び撮影距離に基づいて、被写界深度を算出することができる。
【0016】
記録媒体24は、第1撮像素子10または第2撮像素子12から出力された撮像信号に基づく画像データを記録する。操作部材26は、レリーズボタン、ズームボタン、十字ボタン及びOKボタン等を備えている。LCD表示部28は、TFT(Thin Film Transistor)液晶パネルからなり、撮影された静止画及びスルー画等を表示する。
【0017】
次に、本発明の実施の形態に係るカメラ2の識別表示処理について説明する。先ず制御部22は、第1撮像素子10及び第2撮像素子12により被写体を撮影し、第1撮像素子10または第2撮像素子12の一方、例えば第1撮像素子10から出力された撮影信号に基づいてスルー画をLCD表示部28に表示する。図2(a)に示すように、カメラ2の撮影画角内にカメラ2から近い順に被写体1〜4が配列されている場合には、図2(b)に示すようにLCD表示部28には被写体1〜4及び背景Wが表示される。
【0018】
制御部22は、レリーズボタンが半押しされると、画像処理部20により第1撮像素子10及び第2撮像素子12からの2つの画像データを用いて、撮影画面の画素ごとにデフォーカス量を算出する。そして、例えば撮影画面の中心の所定領域に予め設定されているAFエリアについて算出されたデフォーカス量に基づいてAF駆動部16により対物レンズ4の位置を調整し、焦点合わせの動作を行う。
【0019】
図3は、図2に示す被写体1〜4及び背景Wの撮影から取得された被写界の距離分布を示す図である。図3においては、被写体2の位置が焦点位置となっている。図3に示すように、撮影時の絞りとして開放F値が設定されている場合には、絞り開放被写界深度Dに被写体2及び3が入る。また、撮影時の絞りとして1段絞りF値が設定されている場合には、1段絞り被写界深度Dに被写体1〜3が入る。
【0020】
ここで、撮影時の絞りとして開放F値が設定されている場合には、絞り開放被写界深度Dを基準として、合焦を行った領域の識別表示が行われる。即ち、制御部22は、焦点合わせを行った被写体までの距離と開放F値により算出された絞り開放被写界深度Dと撮影画面の画素ごとの被写体までの被写体距離に基づいて、絞り開放被写界深度D内にある被写体2及び3の画素と、絞り開放被写界深度D外となる被写体1、4及び背景Wの画素を識別し2値化する。即ち、図4(a)に示すように、被写体2及び3の領域30と被写体1、4及び背景Wの領域32を2値化した2値化画像を取得する。
【0021】
制御部22は、画像処理部20により輪郭検出画像処理を行い、図4(b)に示すように領域30と領域32との境界に対応する輪郭画像34を検出する。そして図4(c)に示すように、検出された輪郭画像34をスルー画上に特定の強調色で重畳表示する。これにより、被写体2及び3の領域の輪郭をわかりやすくLCD表示部28に識別表示することができる。
【0022】
本発明の実施の形態に係るカメラによれば、焦点合わせを行った被写体までの距離を基準とする被写界深度内にある領域と、被写界深度外となる領域を識別表示するため、焦点合わせを行った被写体をわかりやすく表示することができる。また、焦点合わせを行った被写体を的確に識別表示することができることから、カメラのユーザーインターフェイスをより直感的でわかりやすいものにすることができる。
【0023】
なお、上述の実施の形態においては、図4(c)に示すように、スルー画上に輪郭画像34が重畳表示され、被写体2と被写体3との境界が識別表示されないように、被写界深度内にある被写体にどれほど高周波成分が含まれていても識別表示されることはない。従って表示が煩雑になりすぎて被写体が見えないといった現象を防止できる。また、被写体距離に基づいて識別表示が行われるため、被写体パターンが低コントラストであっても輪郭画像の検出と識別表示は行われる。これにより、被写体パターンの高周波成分に依存した従来の識別表示方法よりも、焦点合わせを行った被写体を見易くわかりやすく表示することができる。
【0024】
また、上述の実施の形態においては、スルー画上に被写体2及び被写体3の領域に対応する輪郭画像34を重畳表示しているが、スルー画上に被写体2及び被写体3の領域に対応する画像を重畳表示するようにして、被写体2及び被写体3の領域を識別表示するようにしてもよい。
【0025】
また、上述の実施の形態において、撮影時の絞りとして制御絞り値が設定されている場合には、撮影時の制御絞り値から算出される被写界深度を用いて識別表示処理を行うようにしてもよい。
【0026】
また、上述の実施の形態において、識別表示処理に用いる被写界深度について複数の条件を指定し、指定された複数の条件に対応する被写界深度内にある被写体を異なる形態で識別表示するようにしてもよい。例えば、操作者が操作部材26を用いて、複数の条件としての絞り値として開放F値と1段絞りF値を指定した場合には、開放F値に対応する絞り開放被写界深度Dに含まれる被写体距離の被写体と、1段絞りF値に対応する1段絞り被写界深度D(図3参照)に含まれる被写体距離の被写体とをそれぞれ異なる形態で識別表示する。即ち、図4(d)に示すように、スルー画上に被写体2及び3の領域に対応する輪郭画像36を例えば赤色で重畳表示し、被写体1の領域に対応する輪郭画像38を例えば橙色で重畳表示する。これにより、絞り開放被写界深度D内にある被写体2及び3と、1段絞り被写界深度D内にある被写体1をわかりやすくLCD表示部28に表示することができる。
【0027】
また、上述の実施の形態において、図5(a)に示すように、カメラ2の撮影画角内においてカメラ2から同一距離に複数の被写体5〜9が存在し、被写体5が焦点位置となっている場合、図5(b)に示すように、絞り開放被写界深度Dには被写体5〜9が入る。図6(a)は、図5(b)に示す被写体5〜9及び背景Wの撮影から取得された被写界の距離分布を示す図である。ここで、AFエリア40に被写体5が位置しており、被写体5までの被写体距離を基準とする絞り開放被写界深度D内にある被写体を識別表示するとする場合には、図6(b)に示すように被写体5〜9の領域に対応する輪郭画像42を例えば赤色でスルー画上に重畳表示する。これにより、絞り開放被写界深度D内にある被写体5〜9の領域の輪郭をわかりやすくLCD表示部28に表示することができる。
【0028】
また、上述の実施の形態において、撮影画面のAFエリア40の近傍について識別表示処理を行うようにしてもよい。この場合、画像処理部20により取得された撮影画面の画素ごとの被写体距離について、AFエリア40を中心として上下左右方向の各画素について最初に絞り開放被写界深度D外となる画素(距離エッジ)を検出する。即ち、図7(a)に示すように、AFエリア40に位置する被写体5の輪郭の画素が距離エッジとして検出され、検出された距離エッジに対応する輪郭画像を検出する。そして、図7(b)に示すように、検出された輪郭画像44をスルー画上に例えば赤色で重畳表示する。これにより、被写体5〜9及び背景Wが表示されている状態で、AFエリア40の近傍にある被写体5の領域の輪郭をわかりやすくLCD表示部28に表示することができることから、カメラ2から同一距離に複数の被写体が存在するような場合でも、どの被写体に対して焦点合わせの動作が行われているのか明確にすることができる。
【0029】
また、上述の実施の形態において、AFエリア40の近傍の絞り開放被写界深度D内にある被写体と、AFエリア40の近傍以外の絞り開放被写界深度D内にある被写体を異なる形態で識別表示するようにしてもよい。例えば、図8に示すように、スルー画上に被写体5の領域に対応する輪郭画像46を赤色で重畳表示し、被写体6〜9の領域に対応する輪郭画像48を橙色で重畳表示する。これにより、被写体5〜9及び背景Wが表示されている状態で、被写体5の領域の輪郭及び被写体6〜9の領域の輪郭をわかりやすくLCD表示部28に表示することができる。また、スルー画上に被写体5の領域に対応する輪郭画像46を太線且つ高輝度で重畳表示し、被写体6〜9の領域に対応する輪郭画像48を細線且つ低輝度で重畳表示するようにしてもよい。
【0030】
また、上述の実施の形態において、図9に示すように、カメラ2の撮影画角内に被写体10が収まっていない状態で被写体10が焦点位置となっている場合には、図10(a)に示すように、LCD表示部28には被写体10の領域に対応する輪郭画像50の一部しか表示されず、被写体10及び背景Wのどちらに焦点が合っているのかわかりにくい場合がある。このような場合には、撮影画像の上下左右の辺を絞り開放被写界深度Dの範囲外となる画素として、画像処理部20により輪郭検出画像処理を行い、被写体10の領域及び被写体10が接している撮影画面枠に対応する輪郭画像を検出する。そして図10(b)に示すように、LCD表示部28に被写体10の領域及び被写体10が接している撮影画面枠に対応する輪郭画像52を識別表示する。これにより、被写体が撮影画面より大きい場合でも、焦点合わせを行った被写体をわかりやすくLCD表示部28に表示することができる。
【0031】
また、上述の実施の形態において、画像処理部20により生成された画像を表示する表示素子として、LCD表示部28や、EVF(電子ビューファインダー)として構成されたLCDパネル等が用いられる。これら表示素子は電子ディスプレイであるため、スルー画と重ねて、任意の画像を被写体に重ねて表示することができる。
【0032】
また、上述の実施の形態において、対物レンズ4の光を分岐して光学ファインダーを構成し、光学ファインダーにハーフミラー等でLCD表示部28に表示される画像を合成することで、光学ファインダーでも任意の画像を被写体に重ねて表示することができる。
【符号の説明】
【0033】
2…カメラ、4…対物レンズ、6…瞳分割フィルタ、8…偏光分離プリズム、10…第1撮像素子、12…第2撮像素子、14…撮像駆動部、20…画像処理部、22…制御部、28…LCD表示部、40…AFエリア。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影画面の画素ごとに対応する被写体までの被写体距離を取得可能な測距手段と、
前記被写体の撮影画像を表示する表示部と、
前記被写体距離の二次元配列のうち、焦点合わせを行った距離を基準とする所定範囲にある画素と前記所定範囲外となる画素を識別する識別部と、
前記識別部による識別結果に基づいて、前記表示部に表示されている前記被写体の撮影画像において、前記所定範囲にある画素と前記所定範囲外となる画素を識別表示する表示制御部と
を備えることを特徴とするデジタルカメラ。
【請求項2】
前記表示制御部は、前記所定範囲にある画素と前記所定範囲外となる画素との境界を識別表示することを特徴とする請求項1記載のデジタルカメラ。
【請求項3】
前記所定範囲は、撮影時の制御絞り値から算出される被写界深度であることを特徴とする請求項1または2記載のデジタルカメラ。
【請求項4】
前記所定範囲として複数の条件を指定する条件指定部を備え、
前記表示制御部は、前記条件指定部により指定された前記複数の条件に対応するそれぞれの所定範囲にある画素を異なる形態で識別表示すること特徴とする請求項1または2記載のデジタルカメラ。
【請求項5】
前記所定範囲は、開放絞り値の被写界深度であることを特徴とする請求項1または2記載のデジタルカメラ。
【請求項6】
前記識別部は、前記撮影画像の上下左右の辺を前記所定範囲外の画素として用いることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載のデジタルカメラ。
【請求項7】
前記撮影画面内に設定される焦点検出領域を有し、
前記識別部は、前記焦点検出領域を中心として前記所定範囲にある画素と前記所定範囲外となる画素とを識別し、
前記表示制御部は、前記焦点検出領域を含む前記所定範囲にある画素と前記所定範囲外となる画素を識別表示することを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載のデジタルカメラ。
【請求項8】
前記表示制御部は、前記焦点検出領域を含む前記所定範囲にある画素と、前記焦点検出領域の近傍の以外の前記所定範囲にある画素を異なる形態で識別表示することを特徴とする請求項7記載のデジタルカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−235180(P2012−235180A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100346(P2011−100346)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】