説明

デジタルズーム機構、デジタルズーム制御方法およびデジタルズーム制御プログラム

【課題】デジタルズームの倍率の変更操作中であっても、違和感を与えることがない映像が得られるデジタルズーム機構を提供する。
【解決手段】第一デジタルズーム手段11はカメラセンサ1の画素読み出し用のサンプリング動作をサンプリング部2にて切り変えてデジタルズームした第一映像データを第一メモリ3に記録し、第二デジタルズーム手段12は第一メモリ3に記録した第一映像データを読み出してリサイズ部4にてリサンプリングを行ってデジタルズームした第二映像データを生成して第二メモリ5に記録して外部の表示部に出力表示する。ユーザの倍率変更操作中は、第一デジタルズーム手段11のデジタルズーム処理を行うことなく、第二デジタルズーム手段12のデジタルズーム処理のみでユーザが所望する倍率の映像に変換する。倍率変更操作後に双方のデジタルズーム手段11,12にてデジタルズーム処理を行い、変更後の倍率で最適な映像を生成し直す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルズーム機構、デジタルズーム制御方法およびデジタルズーム制御プログラムに関し、特に、携帯電話機を含む携帯型情報通信機器一般、デジタルカメラ、携帯型ゲーム機における動画撮影に好適に適用可能なデジタルズーム機構、デジタルズーム制御方法およびデジタルズーム制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
撮像装置における動画の記録密度は、SD(Standard Definition)画質(標準画質)の720ドット×480ドットかHD(High Definition)画質(高精細画質)の1920ドット×1080ドットのいずれかが主流になってきており、これらの他の種々のサイズは不要となってきているのに対して、カメラセンサの画素密度については、5Mピクセルから10Mピクセルを超えて、今後も、画素密度はさらに拡大する傾向にある。
【0003】
記録密度に対するカメラセンサの画素密度の高さを有効に活用するために、映像のデジタルズーム(デジタル拡大やデジタル縮小等の倍率変更)処理を行う場合には、高密度カメラセンサが撮影した映像データを間引き読み出しや加算読み出しを行うことによってデジタルズームする方が、高密度カメラセンサから読み出してメモリに一旦記録した映像データをリサンプリングしてデジタルズームする場合よりも、画像品質的には有利である。
【0004】
したがって、かくのごときカメラセンサからの読み出し時のサンプリング動作を切り替えるデジタルズーム方法が広く採用されており、特許文献1の特開2005−191867号公報「撮像装置および電子ズーミング方法」や特許文献2の特開2004−260431号公報「電子ズームの制御方法並びに制御プログラム」等にも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−191867号公報(第5−6頁)
【特許文献2】特開2004−260431号公報(第6−7頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のように、デジタルズーム(デジタル拡大やデジタル縮小等の倍率変更)処理を行う方法として、カメラセンサからの読み出し時のサンプリング動作を切り替える第一のデジタルズーム方法と、カメラセンサから読み出してメモリに一旦記録した映像データをリサンプリングする第二のデジタルズーム方法とがある。
【0007】
かかる2つのデジタルズーム方法を同時に利用して、映像の倍率を変更することが可能な場合、前記第一のデジタルズーム方法を利用する場合、前述のように、カメラセンサの画素密度が映像として記録させる記録密度よりも大きい場合には、拡大しても、映像の精細感が残り易く、拡大画質として、前記第二のデジタルズーム方法よりも高画質な映像が得られる。
【0008】
しかしながら、前記第一のデジタルズーム方法は、選択可能な倍率の値が不連続となり、限定的な段階状の倍率値に設定されているため、スムーズな拡大縮小映像が得られ難く、また、倍率の切り替えを行う際にカメラクロックの再設定が必要になる等のために倍率の設定変更に時間がかかってしまったりするなどの制約がある。したがって、ユーザが倍率の変更操作中において、撮影した映像を、動画として、記録したり表示させたりする場合に、映像のコマ落ちが生じ易く、また、画質や倍率の不連続な映像などが生じ易く、視聴するユーザに対して違和感がある映像となり易い。
【0009】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、デジタルズーム機構を備えた撮像装置として、デジタルズームの倍率の変更操作中であっても、コマ落ち映像を生じさせたり、画質や倍率が不連続になる映像を生じさせたりすることがなく、違和感を与えることがない映像が得られるデジタルズーム機構、デジタルズーム制御方法およびデジタルズーム制御プログラムを提供することを、その目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述の課題を解決するため、本発明によるデジタルズーム機構、デジタルズーム制御方法およびデジタルズーム制御プログラムは、主に、次のような特徴的な構成を採用している。
【0011】
(1)本発明によるデジタルズーム機構は、撮像装置のカメラセンサによって撮影した映像をデジタルズームするデジタルズーム機構であって、前記カメラセンサの画素読み出し用のサンプリング動作を切り替えることによってデジタルズームした第一映像データをメモリに記録するという動作を行う第一デジタルズーム手段と、前記メモリに記録した第一映像データを読み出してリサンプリングを行うことによりデジタルズームした第二映像データを生成して外部の表示部に出力表示するという動作を行う第二デジタルズーム手段と、を少なくとも備えていることを特徴とする。
【0012】
(2)本発明によるデジタルズーム制御方法は、撮像装置のカメラセンサによって撮影した映像をデジタルズームする動作を制御するデジタルズーム制御方法であって、前記カメラセンサの画素読み出し用のサンプリング動作を切り替えることによってデジタルズームした第一映像データをメモリに記録する第一デジタルズーム処理ステップと、前記メモリに記録した第一映像データを読み出してリサンプリングを行うことによりデジタルズームした第二映像データを生成して外部の表示部に出力表示する第二デジタルズーム処理ステップと、を少なくとも有していることを特徴とする。
【0013】
(3)本発明によるデジタルズーム制御プログラムは、少なくとも前記(2)に記載のデジタルズーム制御方法を、コンピュータによって実行可能なプログラムとして実施していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のデジタルズーム機構、デジタルズーム制御方法およびデジタルズーム制御プログラムによれば、以下のような効果を奏することができる。
【0015】
すなわち、本発明においては、所望の映像の倍率に拡大・縮小するために、ユーザがデジタルズームの倍率を変更する操作を行っている間は、メモリに記録した映像データを読み出してリサンプリングすることによって倍率を変更するという、連続的で、かつ、迅速な倍率変更が可能な第二デジタルズーム手段(または第二デジタルズーム処理ステップ)を用いて、所望の倍率に達するまでデジタルズーム処理を行う。
【0016】
しかる後、ユーザのデジタルズームの倍率変更操作が完了した後で、所望の映像倍率において最適な映像品質が得られるようにあらかじめ登録されている拡大率の組み合わせに応じて、カメラセンサの画素読み出し用のサンプリング動作を切り替えることによってデジタルズームした映像データをメモリに記録する第一デジタルズーム手段(または第一デジタルズーム処理ステップ)のデジタルズーム倍率と、該メモリに記録した映像データを読み出してリサンプリングすることによってデジタルズームした映像データを得る第二デジタルズーム手段(または第二デジタルズーム処理ステップ)のデジタルズーム倍率と、を設定し直す動作を行う。
【0017】
而して、デジタルズームの倍率の変更操作中であっても、コマ落ち映像を生じさせたり、画質や倍率が不連続になる映像を生じさせたりすることがなく、倍率変更操作中の映像の連続性を保ちつつ、倍率変更確定後の映像を最適な映像品質に設定することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による撮像装置のデジタルズーム機構のブロック構成に関する実施形態の一例を示すブロック構成図である。
【図2】図1の撮像装置のデジタルズーム機構の動作の一例を説明するためのフローチャートである。
【図3】所望する映像の倍率に対応して図1に示す第一デジタルズーム手段および第二デジタルズーム手段に設定すべきデジタルズーム倍率をあらかじめ登録している倍率テーブルである。
【図4】図1と同様の撮像装置のデジタルズーム機構において従来のデジタルズーム方法を適用した場合の動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明によるデジタルズーム機構、デジタルズーム制御方法およびデジタルズーム制御プログラムの好適な実施形態について添付図を参照して説明する。なお、以下の説明においては、本発明によるデジタルズーム機構およびデジタルズーム制御方法について説明するが、かかるデジタルズーム制御方法をコンピュータにより実行可能なデジタルズーム制御プログラムとして実施するようにしても良いし、あるいは、デジタルズーム制御プログラムをコンピュータにより読み取り可能な記録媒体に記録するようにしても良いことは言うまでもない。
【0020】
(本発明の特徴)
本発明の実施形態の説明に先立って、本発明の特徴についてその概要をまず説明する。本発明は、撮影した映像をデジタルズームする撮像装置のデジタルズーム機構に関し、記録画素数よりも大きな画素数のカメラセンサにて映像を撮影して記録することができる撮像装置において、第一のデジタル拡大方法として、前記カメラセンサの画素読み出しサンプリングの間引き率を変えることが可能なデジタルズーム機構を有し、さらに、第二のデジタル拡大方法として、メモリから読み出し後の映像データをリサンプリングすることが可能なデジタルズーム機構も有し、撮影した映像の倍率変更操作時においては、前記第二のデジタル拡大方法のみを用いて所望の拡大率の映像になるまでデジタルズーム処理を行って出力表示し、しかる後に、倍率変更操作後において、前記第一のデジタル拡大方法と前記第二のデジタル拡大方法との両者におけるデジタルズームの倍率を画質の最適化が可能な拡大率に設定し直して、両者を組み合わせてデジタルズーム処理を行った結果の映像を出力させることを主要な特徴としている。
【0021】
かかるデジタルズーム処理を行うことにより、倍率変更操作中の映像変化の違和感を回避することができるとともに、デジタルズーム処理後の映像画質を最良にすることを可能としている。
【0022】
より具体的には、本発明においては、前記第一および第二の2つのデジタル拡大方法それぞれを実現するための第一デジタルズーム手段と第二デジタルズーム手段とを備えたデジタルズーム機構であって、倍率変更操作中においては、映像出力に関して、画質や倍率の間隔を連続的にスムーズに変更することができ、かつ、倍率の切り替えも高速に行うことができる第二デジタルズーム手段のみを用いてデジタルズーム処理を行うことによって、動画としての違和感を最小限に抑えることを可能とし、さらには、倍率を確定させた倍率変更操作後においては、確定させた倍率を維持しつつ、第一デジタルズーム手段と第二デジタルズーム手段との双方のデジタルズーム処理の倍率設定をし直して、双方のデジタルズーム処理を組み合わせて実施することによって、デジタルズーム処理結果の映像画質を最良にすることを可能としている。
【0023】
(実施形態の構成例)
次に、本発明によるデジタルズーム機構の実施形態について、図1を用いて説明する。図1は、本発明による撮像装置のデジタルズーム機構のブロック構成に関する実施形態の一例を示すブロック構成図であり、撮影した映像をデジタルズームする撮像装置のデジタルズーム機構の一例を示している。
【0024】
図1に示すように、本実施形態の撮像装置のデジタルズーム機構は、カメラセンサ1、サンプリング部2、第一メモリ3、リサイズ部4、第二メモリ5を少なくとも備えている。カメラセンサ1は、被写体の映像を撮影するためのセンサであり、撮影した映像データは、記録画素数よりも大きな画素数を有している。サンプリング部2は、カメラセンサ1から撮影された映像データを読み出して、第一映像データとして、第一メモリ3を記録する部位である。ユーザからの倍率変更操作が終了した後において、必要に応じて、カメラセンサ1において撮影された映像データの画素読み出しサンプリングレートを指定された間引き率に設定して読み出すことにより、映像の倍率変更処理(拡大・縮小処理)を行い、第一映像データとして、第一メモリ3を記録することが可能である。
【0025】
第一メモリ3は、サンプリング部2からの前記第一映像データを一時的に記録するメモリであり、ユーザからの倍率変更操作が終了した後において、必要に応じて、サンプリング部2において再読み出しされて前記間引き率に間引きされた画素数に変換して第一映像データとして上書き記録することも可能である。
【0026】
また、リサイズ部4は、第一メモリ3に記録された第一映像データを読み出して、指定されたリサンプリング率でリサンプリングすることにより、リサイズされた第二映像データとして、第二メモリ5に記録する部位である。リサイズ部4においては、画質や倍率の間隔の設定を連続的に行うことができ、かつ、倍率の切り替えを高速に行うことができる。第二メモリ5は、前記第二映像データを記録して、デジタルズーム処理後の映像データとして外部の表示部に出力表示するためのメモリであり、リサイズ部4によって前記リサンプリング率にてリサンプリングした画素数にリサイズされた前記第二映像データを記録している。
【0027】
つまり、図1に示す撮像装置のデジタルズーム機構は、2つのデジタルズーム手段を備えており、サンプリング部2においてカメラセンサ1の画素読み出しのサンプリング動作を切り替えることによってデジタルズームした第一映像データを第一メモリ3に記録する第一デジタルズーム手段11と、第一メモリ3に記録した第一映像データを読み出してリサイズ部4においてリサンプリング率を変えてリサンプリングを行うことによりデジタルズームした第二映像データを第二メモリ5に記録して外部の表示部に出力表示する第二デジタルズーム手段12と、を備えている。
【0028】
ここで、所望の映像の倍率に拡大・縮小するために、ユーザがデジタルズームの倍率を変更する操作を行っている間は、倍率変更後の良好な画質が得られるものの、倍率の変更が不連続であり、かつ、変更に時間を要する第一デジタルズーム手段11による倍率変更処理を行うことなく、カメラセンサ1の画素を倍率'1'のまま第一映像データとして第一メモリ3に記録し、連続的でかつ迅速な倍率変更が可能な第二デジタルズーム手段12において、第一メモリ3に記録した第一映像データを読み出してリサンプリングすることによって倍率を変更することによって、所望の倍率に達するまでデジタルズーム処理を行う。而して、ユーザの倍率変更操作中であっても、倍率の変更に応じて連続的に変化する映像を得ることができ、違和感を与えることがない映像を外部の表示部に出力表示することができる。
【0029】
しかる後、ユーザのデジタルズームの倍率変更操作が完了した後で、所望の映像倍率において最適な映像品質が得られるようにあらかじめ登録されているデジタルズーム率(拡大率)の組み合わせに応じて、カメラセンサ1の画素読み出し用のサンプリング動作を切り替えることによってデジタルズームした第一映像データを第一メモリ3に記録するという動作を行う第一デジタルズーム手段11のデジタルズーム倍率(第一の拡大率)と、該第一メモリ3に記録した第一映像データを読み出してリサンプリングすることによってデジタルズームした第二映像データを得る第二デジタルズーム手段12のデジタルズーム倍率(第二の拡大率)と、を設定し直す動作を行う。而して、所望の映像倍率に変更後において、最も良好な画質の映像を表示部に出力表示することができる。
【0030】
(実施形態の動作の説明)
次に、図1に示した撮像装置のデジタルズーム機構の動作の一例を、図2のフローチャートを用いて説明する。図2は、図1の撮像装置のデジタルズーム機構の動作の一例を説明するためのフローチャートである。
【0031】
図2のフローチャートにおいては、まず、ユーザのデジタルズームの倍率変更操作として、ユーザが撮影した映像の倍率を拡大(または縮小)するための倍率UP操作(または倍率DOWN操作)の入力がなされたか否かを確認する(ステップS1)。倍率変更操作がなされていなかった場合は(ステップS1のNo)、第一デジタルズーム手段11のサンプリング部2においてデジタルズーム処理を行うことなく第一メモリ3に記録されている第一映像データを、第二デジタルズーム手段12においても、デジタルズーム処理を行うことなく、そのまま、第二映像データとして第二メモリ5に記録して、外部の表示部に出力表示する。
【0032】
一方、倍率変更操作がなされていた場合には(ステップS1のYes)、倍率を1ステップだけインクレメント(またはデクリメント)し(ステップS2)、インクレメント(またはデクリメント)した倍率になるように、第二デジタルズーム手段12のリサイズ部4のリサンプリング率を変更設定する。しかる後、変更設定したリサンプリング率にしたがって第一メモリ3に記録した第一映像データに対してデジタルズーム処理(デジタル拡大・縮小処理)を行って、デジタルズーム処理された結果を、第二映像データとして、第二メモリ5に記録して、外部の表示部に出力表示する(ステップS3)。ここで、第一メモリ3に記録した第一映像データは、カメラセンサ1にて撮影された映像データに対して第一デジタルズーム手段11のサンプリング部2にてデジタルズーム処理が施されることなく、そのまま記録されている。
【0033】
表示部に出力表示された映像を視認したユーザが、映像の拡大・縮小倍率が所望の値までデジタルズーム(デジタル拡大・縮小)された映像が表示されているか否かを確認した結果として、ユーザの倍率変更操作が停止されたか否か、すなわち、映像データの倍率を拡大・縮小するための倍率UP操作(または倍率DOWN操作)の入力が停止されたか否かを判定する(ステップS4)。ユーザが所望する値にまだ達していないと判断した結果として、ユーザの倍率変更操作が継続されていた場合には(ステップS4のNo)、ステップS2に復帰して、倍率のインクレメント動作(またはデクリメント動作)を行い、第二デジタルズーム手段12によるデジタルズーム処理を繰り返す。
【0034】
一方、ユーザが所望する値に達したと判断した結果として、ユーザの倍率変更操作が停止された場合には(ステップS4のYes)、ユーザが決定した映像倍率にしたがって、図3に示す倍率テーブルを参照して、まず、該倍率テーブルから得られた第一の拡大率を用いて、第一デジタルズーム手段11のサンプリング部2におけるデジタルズーム処理を行う(ステップS5)。さらに、ユーザが決定した映像倍率にしたがって、図3に示す倍率テーブルを参照して、該倍率テーブルから得られた第二の拡大率を用いて、第二デジタルズーム手段12のリサイズ部4におけるデジタルズーム処理を行う(ステップS6)。デジタルズーム処理された結果は、第二映像データとして、第二メモリに記録されて、外部の表示部に出力表示される。
【0035】
ここに、図3は、所望する映像の倍率に対応して図1に示す第一デジタルズーム手段11および第二デジタルズーム手段12にそれぞれ設定すべきデジタルズーム倍率を、第一の拡大率、第二の拡大率として、あらかじめ登録している倍率テーブルである。なお、図3の倍率テーブルには、第一デジタルズーム手段11のデジタルズーム倍率(第一の拡大率)と第二デジタルズーム手段12のデジタルズーム倍率(第二の拡大率)との積が、所望する映像の倍率に一致するように設定されており、所望する映像の倍率において最適な画質の映像が得られるようにあらかじめ設定登録されている。
【0036】
例えば、図3の倍率テーブルにおいて、所望の映像の倍率が、'2'であった場合には、第一デジタルズーム手段11のデジタルズーム倍率(第一の拡大率)が'×1'であり、第二デジタルズーム手段12のデジタルズーム倍率(第二の拡大率)が'×2'となる。また、所望の映像の倍率が、'3'であった場合には、第一デジタルズーム手段11のデジタルズーム倍率(第一の拡大率)が'×2'であり、第二デジタルズーム手段12のデジタルズーム倍率(第二の拡大率)が'×1.5'となる。
【0037】
すなわち、所望の映像の倍率が、'1'から'2'へ1ステップ遷移する場合は、第一デジタルズーム手段11のデジタルズーム倍率(第一の拡大率)は'×1'のままであって、変更することはないが、迅速な倍率の変更が可能な第二デジタルズーム手段12のデジタルズーム倍率(第二の拡大率)を'×1'から'×2'に変更することになる。しかる後、所望の映像の倍率が、'2'から'3'へ1ステップ遷移する場合は、第一デジタルズーム手段11のデジタルズーム倍率(第一の拡大率)を'×1'から'×2'に変更し、かつ、第二デジタルズーム手段12のデジタルズーム倍率(第二の拡大率)も'×2'から'×1.5'に変更することが必要になる。
【0038】
映像の倍率の変更設定において、第一デジタルズーム手段11のデジタルズーム倍率(第一の拡大率)の変更に要する所要時間は、前述したように、サンプリング部2においてカメラセンサ1からの読み出しクロックの再設定を行うなど、時間を要する動作となるため、第一デジタルズーム手段11のデジタルズーム倍率(第一の拡大率)に関する変更を行った場合には、倍率の変更に要する所要時間が、変更する倍率ごとに変わってしまうことになる。
【0039】
したがって、ユーザが倍率変更操作を行っている最中において、映像の倍率を変更しながら、映像の記録や表示を行う場合、時間的な変化の不均一が目立つ映像になり、ユーザに対して違和感を与える映像になってしまう。
【0040】
かかる事態を避けるために、例えば、第一デジタルズーム手段11のデジタルズーム倍率(第一の拡大率)を変更する場合には、如何なる倍率変更の場合であっても、倍率の変更に要する所要時間を均一に設定しようとすると、第一デジタルズーム手段11のデジタルズーム倍率の変更速度を最も遅い処理に合わせることになるため、倍率変更のインクリメント速度が遅くなり、被写体の移動速度が早い映像を撮影している場合においては、間に合わなくなって、コマ落ちが発生してしまう。
【0041】
そこで、本実施形態においては、ユーザの倍率変更操作中の状態にある場合には、如何なる倍率への変更が発生しても、第一デジタルズーム手段11のデジタルズーム倍率(第一の拡大率)の変更を行うことなく、迅速に変更することが可能な第二デジタルズーム手段12のデジタルズーム倍率(第二の拡大率)の変更のみを行うことにしている。
【0042】
しかる後、ユーザが所望する映像の倍率に達して、ユーザの倍率変更操作が完了したことを検出すると、所望の映像の倍率において、映像品質が最適になるように倍率テーブルにあらかじめ登録されている第一の拡大率、第二の拡大率の組み合わせに応じて、第一デジタルズーム手段11のデジタルズーム倍率(第一の拡大率)、第二デジタルズーム手段12のデジタルズーム倍率(第二の拡大率)を変更して設定するようにしている。
【0043】
次に、図1に示す撮像装置のデジタルズーム機構と同様の装置構成からなっている場合において、従来から存在している通常のデジタルズーム方法を適用した場合の動作について、図4のフローチャートを用いて説明する。図4は、図1と同様の撮像装置のデジタルズーム機構において従来のデジタルズーム方法を適用した場合の動作を説明するためのフローチャートである。
【0044】
図4のフローチャートにおいては、図2のフローチャートの場合と同様、まず、ユーザのデジタルズームの倍率変更操作として、ユーザが撮影した映像の倍率を拡大するための倍率UP操作の入力がなされたか否かを確認する(ステップS11)。倍率変更操作がなされていなかった場合は(ステップS11のNo)、第一デジタルズーム手段11のサンプリング部2においてデジタルズーム処理を行うことなく第一メモリ3に記録した第一映像データを、第二デジタルズーム手段12においても、デジタルズーム処理を行うことなく、そのまま、第二映像データとして第二メモリ5に記録して、外部の表示部に出力表示する。
【0045】
一方、倍率変更操作がなされていた場合には(ステップS11のYes)、図2のフローチャートの場合と同様、倍率を1ステップだけインクレメントする(ステップS12)。しかる後、図2のフローチャートの場合とは異なり、インクレメントした倍率になるように、図3の倍率テーブルを参照して、該倍率テーブルの第一の拡大率を用いて、第一デジタルズーム手段11のサンプリング部2におけるデジタルズーム処理(デジタル拡大処理)を行うとともに(ステップS13)、該倍率テーブルの第二の拡大率を用いて、第二デジタルズーム手段12のリサイズ部4におけるデジタルズーム処理(デジタル拡大処理)を行う(ステップS14)。第一デジタルズーム手段11および第二デジタルズーム手段12にてそれぞれデジタルズーム処理された結果は、第二映像データとして、第二メモリ5に記録されて、外部の表示部に出力表示される。
【0046】
表示部に出力表示された映像を視認したユーザが、映像の拡大倍率が所望する値までデジタルズームされた映像が表示されているか否かを確認した結果として、ユーザの倍率変更操作が停止されたか否か、すなわち、映像データの倍率を拡大するための倍率UP操作の入力が停止されたか否かを判定する(ステップS15)。ユーザが所望する値にまだ達していないと判断した結果として、ユーザの倍率変更操作が継続されていた場合には(ステップS15のNo)、ステップS12に復帰して、倍率のインクレメント動作を行い、第一デジタルズーム手段11および第二デジタルズーム手段12によるデジタルズーム処理を繰り返す。
【0047】
一方、ユーザが所望する値に達したと判断した結果として、ユーザの倍率変更操作が停止された場合には(ステップS15のYes)、所望の映像の倍率が得られたものとして、デジタルズーム処理を終了する。
【0048】
図4のフローチャートに示す従来から用いられている通常のデジタルズーム処理においては、ユーザが倍率変更操作を継続中であっても、倍率の変更に要する所要時間が変更する倍率ごとに変わる第一デジタルズーム手段11のデジタルズーム処理を行うことにしているため、前述したように、時間的な変化の不均一が目立つ映像になり、ユーザに対して違和感を与える映像になってしまう。
【0049】
(実施形態の効果の説明)
以上に詳細に説明したように、本実施形態においては、次のような効果が得られる。
【0050】
すなわち、本実施形態においては、所望の映像の倍率に拡大・縮小するために、ユーザがデジタルズームの倍率を変更する操作を行っている間は、第一メモリ3に記録した第一映像データを読み出してリサイズ部4においてリサンプリングすることによって倍率を変更するという、連続的で、かつ、迅速な倍率変更が可能な第二デジタルズーム手段12を用いて、所望の倍率に達するまでデジタルズーム処理を行う。
【0051】
しかる後、ユーザのデジタルズームの倍率変更操作が完了した後で、所望の映像倍率において最適な映像品質が得られるように倍率テーブルにあらかじめ登録されている第一、第二の拡大率の組み合わせに応じて、サンプリング部2においてカメラセンサ1の画素読み出し用のサンプリング動作を切り替えることによってデジタルズームした第一映像データを第一メモリ3に記録する第一デジタルズーム手段11のデジタルズーム倍率(第一の拡大率)と、該第一メモリ3に記録した第一映像データをリサイズ部4において読み出してリサンプリングすることによってデジタルズームした第二映像データを得る第二デジタルズーム手段12のデジタルズーム倍率(第二の拡大率)と、を設定し直す動作を行う。
【0052】
而して、デジタルズームの倍率の変更操作中であっても、コマ落ち映像を生じさせたり、画質や倍率が不連続になる映像を生じさせたりすることがなく、倍率変更操作中の映像の連続性を保ちつつ、倍率変更確定後の映像を最適な映像品質に設定することができるという効果が得られる。
【0053】
以上、本発明の好適な実施形態の構成を説明した。しかし、かかる実施形態は、本発明の単なる例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではないことに留意されたい。本発明の要旨を逸脱することなく、特定用途に応じて種々の変形変更が可能であることが、当業者には容易に理解できよう。
【符号の説明】
【0054】
1 カメラセンサ
2 サンプリング部
3 第一メモリ
4 リサイズ部
5 第二メモリ
11 第一デジタルズーム手段
12 第二デジタルズーム手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置のカメラセンサによって撮影した映像をデジタルズームするデジタルズーム機構であって、前記カメラセンサの画素読み出し用のサンプリング動作を切り替えることによってデジタルズームした第一映像データをメモリに記録するという動作を行う第一デジタルズーム手段と、前記メモリに記録した第一映像データを読み出してリサンプリングを行うことによりデジタルズームした第二映像データを生成して外部の表示部に出力表示するという動作を行う第二デジタルズーム手段と、を少なくとも備えていることを特徴とするデジタルズーム機構。
【請求項2】
ユーザがデジタルズームの倍率を変更する操作を行っている間は、前記第一デジタルズーム手段におけるデジタルズーム処理を行うことなく、前記第二デジタルズーム手段におけるデジタルズーム処理によって、該ユーザが所望する倍率の前記第二映像データを生成することを特徴とする請求項1に記載のデジタルズーム機構。
【請求項3】
ユーザがデジタルズームの倍率を変更する操作を終了したことを検出した後、所望の映像倍率において最適な映像品質が得られるように、前記第一デジタルズーム手段におけるデジタルズーム倍率と、前記第二デジタルズーム手段におけるデジタルズーム倍率と、を設定し直して、それぞれにおいてデジタルズーム処理を行うことを特徴とする請求項2に記載のデジタルズーム機構。
【請求項4】
それぞれの映像倍率において最適な映像品質が得られる前記第一デジタルズーム手段におけるデジタルズーム倍率と前記第二デジタルズーム手段におけるデジタルズーム倍率とをあらかじめ設定登録している倍率テーブルを備えていることを特徴とする請求項3に記載のデジタルズーム機構。
【請求項5】
撮像装置のカメラセンサによって撮影した映像をデジタルズームする動作を制御するデジタルズーム制御方法であって、前記カメラセンサの画素読み出し用のサンプリング動作を切り替えることによってデジタルズームした第一映像データをメモリに記録する第一デジタルズーム処理ステップと、前記メモリに記録した第一映像データを読み出してリサンプリングを行うことによりデジタルズームした第二映像データを生成して外部の表示部に出力表示する第二デジタルズーム処理ステップと、を少なくとも有していることを特徴とするデジタルズーム制御方法。
【請求項6】
ユーザがデジタルズームの倍率を変更する操作を行っている間は、前記第一デジタルズーム処理ステップによるデジタルズーム処理を行うことなく、前記第二デジタルズーム処理ステップによるデジタルズーム処理によって、該ユーザが所望する倍率の前記第二映像データを生成することを特徴とする請求項5に記載のデジタルズーム制御方法。
【請求項7】
ユーザがデジタルズームの倍率を変更する操作を終了したことを検出した後、所望の映像倍率において最適な映像品質が得られるように、前記第一デジタルズーム処理ステップにおけるデジタルズーム倍率と、前記第二デジタルズーム処理ステップにおけるデジタルズーム倍率と、を設定し直して、それぞれにおいてデジタルズーム処理を行うことを特徴とする請求項6に記載のデジタルズーム制御方法。
【請求項8】
それぞれの映像倍率において最適な映像品質が得られる前記第一デジタルズーム処理ステップにおけるデジタルズーム倍率と前記第二デジタルズーム処理ステップにおけるデジタルズーム倍率とをあらかじめ設定登録している倍率テーブルを備えていることを特徴とする請求項7に記載のデジタルズーム制御方法。
【請求項9】
請求項5ないし8のいずれかに記載のデジタルズーム制御方法を、コンピュータによって実行可能なプログラムとして実施していることを特徴とするデジタルズーム制御プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−151585(P2012−151585A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7593(P2011−7593)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(310006855)NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】