説明

デジタルモールドをテクスチャリングする方法、材料及び基板

モールド表面をテクスチャリングするための方法、材料及びシステムが開示される。本発明の1つの方法及びシステムでは、最初のステップは、所望のテクスチャパターンの画像ファイルを生成することを含む。画像ファイルは、次に、酸エッチングレジストインクを使用してプリントするように構成されたインクジェットプリンタに出力される。酸エッチングレジストインクは、最適のインクジェットプリント特性をもたらすように配合され、且つ、優れた酸エッチングレジスト及び優れた取扱い性をもたらす。モールド表面への酸エッチングレジストの転写を可能にする1枚の担体基板上に酸エッチングレジストインクがプリントされ、その後、モールド表面は強酸でエッチングされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[優先権]
本願は、2006年1月19日出願の米国特許仮出願第60/760,208号(「デジタルモールドをテクスチャリングする方法及び材料」という名称)、及び2007年1月9日出願の米国特許仮出願第60/884,115号(「デジタルモールドをテクスチャリングする方法、材料及び基板」という名称)の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、モールドをテクスチャリングするための方法及び材料を対象とする。具体的には、本発明は、転写基板上への酸エッチングレジストのインクジェットプリントを用いてモールドをテクスチャリングし、次いで、テクスチャリングすべきモールド表面へ酸エッチングレジストを転写する方法を対象とする。
【背景技術】
【0003】
現在、モールドをテクスチャリングするためのパターンは、一般に、非能率的か、粗悪な結果を生じるか、又は労働集約的である、いずれかの方法によって作製されている。例えば、現行の方法は、ワックスをベースとした酸エッチングレジストをライスペーパー上に堆積するライスペーパープロセスを含む。このライスペーパー法は、テクスチャリングパターンを生成する主要な手段として、酸でエッチングされた亜鉛板を作製することを含む。ワックスは、亜鉛板へ押し付けられ、ライスペーパーに転写され、次いで、ライスペーパーを使用してモールド表面に適用される。この方法は高くつき、時間がかかる。さらなる問題として、ライスペーパーは、透明ではなく、特に隣接するパターンとの位置合わせが望まれるときに、パターンの配置がより困難になる。さらに、ワックスベースの酸エッチングレジストは、適用中に柔らかくなってパターンの劣化及び歪みが生じることがあり、それによってモールドの品質が低下する。
【0004】
代替手法に、パターンを担体基板上へスクリーンプリントすることを利用し、次いで、エッチングすべきモールド基板へパターンを転写するものがある。この方法はいくつかの用途には普及しているが、比較的高くつき、画像ファイルがスクリーンプリントされているという事実のために、パターンがしばしば仕様を満たさない。スクリーンプリントされたパターンを使用して、高精度のパターンを生成するのは特に困難である。また、この方法を用いると、複数の深さのエッチングでモールドをテクスチャリングするのに必要な、正確に重ね合わさったイメージを作製するのが困難である。
【0005】
したがって、モールド表面上にテクスチャリングされたパターンを作製する改善された方法が必要とされている。
【特許文献1】米国特許仮出願第60/760,208号
【特許文献2】米国特許仮出願第60/884,115号
【発明の開示】
【0006】
本発明は、モールド表面をテクスチャリングするための方法、材料及びシステムを対象とする。本発明の1つの方法及びシステムでは、最初のステップは、所望のテクスチャパターンの画像ファイルを生成するステップを含む。一般に、そのような画像ファイルはコンピュータ上に生成される。画像ファイルは、次に、酸エッチングレジストインクを使用してプリントするように構成されたインクジェットプリンタに出力される。酸エッチングレジストインクは、最適のインクジェットプリント特性をもたらすように配合されており、その一方で優れた酸エッチングレジスト及び優れた取扱い性ももたらす。酸エッチングレジストのモールド表面への転写を可能にする1枚の担体転写基板上に酸エッチングレジストインクがプリントされ、その後、モールド表面は強酸でエッチングされる。
【0007】
インクジェット法を用いてプリントされた適当な酸エッチングレジストは、水ベースの組成物及び溶剤ベースの組成物を含む。熱硬化可能な組成物又はUV硬化可能な組成物など様々な相変化材料を使用することができる。レジストは、プリントして硬化(例えばUV硬化又は溶剤蒸発による)させた後には、高炭素鋼への接着性を示す一方で、硝酸及び塩化第二鉄などの強酸に対して耐酸性を示すはずである。酸エッチングレジストは、一般にインクジェットプリントヘッドにまつわる動作温度にも耐えるはずである。
【0008】
酸エッチングレジストが堆積される担体転写基板は、1つ又は複数の層を含むことができる。例えば、担体転写基板は、リリースコーティングを有して除去可能な担体層(ポリエステルなど)を含むことができるか、あるいは追加のバインダ層及び/又はインク受容層を有する除去可能な担体層を含むことができる。したがって、いくつかの実施形態では、担体基板は、不溶性担体層とこの担体層から除去可能なインク受容層とを含む。インク受容層は、バインダ層によって不溶性担体層に付着されていてもよい。そのような実施形態では、酸エッチングレジストがインク受容層上にプリントされた後に、不溶性担体層及びバインダ層は、剥離されて担体層が廃棄される。次いで、バインダ層と、その上に酸エッチングレジストのパターンがプリントされているインク受容層とが、エッチングされるべき金属表面に付与される。テクスチャリングされるべき金属表面上に、酸エッチングレジストのインクジェットプリントされたパターンを押し付けるように、バインダ層の露出した表面に圧力をかける。その後、バインダ層は、酸化、湿らせ、加熱又はUV放射へのさらなる露光などによって除去することができる。バインダ層の除去後、酸エッチングに耐性のあるパターンは、テクスチャリングされるべき表面に付着したままであり続け、金属表面を酸にさらすことによりテクスチャリングプロセスを進めることができる。
【0009】
従来方法に対する本発明の方法の利点には、本発明の方法がデジタル化されたプロセスであって、スクリーンプリントを使用せず、正確な位置合わせで正確な画像再現を可能にし、亜鉛板を化学エッチングすることなく容易にパターン生成が可能になることが含まれる。この方法は、外部のサービスプロバイダにパターンファイルを送る必要性なくオンサイトで作製されたカスタマイズされたパターンを使用することもでき、それによって、プロセスの容易さ、スピード及び信頼性がかなり増進される。最後に、この方法は、フォトリソグラフィを含まず、非常に高品位で遂行することができる。
【0010】
本発明の上記の概要は、本発明の開示された各実施形態を説明するようには意図されていない。これは、以下の詳細な説明の目的である。
【0011】
本発明を、以下の図面を参照しながらより十分に説明する。
【0012】
本発明の原理は、様々な変更及び代替形式に適用可能であるが、その特定のものが例として図示されており、詳細に説明される。しかし、説明された特定の実施形態に本発明を限定するようには意図されていないことを理解されたい。それと反対に、すべての変更形態、等価物、及び代替形態を、本開示の趣旨及び範囲内の対象として含むように意図されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、モールド表面をテクスチャリングするための方法、材料及びシステムを対象とする。以下で説明されるように、材料は、担体基板上にプリントされるインクジェット可能な酸エッチングレジストを含む。担体基板によって、酸エッチングレジストが一時的に保持されることが可能になるが、レジストは、その後エッチングされるべき金属モールド表面へ転写される。
【0014】
[酸エッチングレジスト]
酸エッチングレジストは、ドロップオンデマンド(DOD)プリントヘッドを使用してインクジェットによってプリントされる液体を含むことができる。インクジェット法を用いてプリントされた適当な酸エッチングレジストは、水ベースの組成物及び溶剤ベースの組成物を含む。レジストは、プリントして硬化(UV硬化又は溶剤蒸発によるものなど)させた後には、高炭素鋼への接着性を示す一方で、硝酸及び塩化第二鉄などの強酸に対して耐酸性であるはずである。酸エッチングレジストは、一般にDODプリントヘッドにまつわる高い動作温度(90℃まで)にも耐え、また、担体基板から金属表面へ転写可能なはずである。
【0015】
ある実施形態では、酸エッチングレジストは、例えば水及び酢酸塩を含むことができる。酸エッチングレジストは、様々な溶剤ベースの希釈可能な感圧性接着剤(PSA)も含むことができる。プリント可能な酸エッチングレジストは、4を超える炭素を有するアルコール、グリコール、多価アルコール、グリコールエーテル、グリコールエーテルエステル、5以上の炭素を有するケトン(環状ケトンを含む)、炭化水素(アルカン、芳香族化合物、シクロ脂肪族化合物)、乳酸塩(「ブチル−」より大きなもの)及びエステル(酢酸ブチルより大きなもの)を含む様々な溶剤を含むことができる。
【0016】
前述のように、インクジェットプリンタを使用して酸エッチングレジストをプリントできるはずである。インクジェット能力を決定するプリント可能な酸エッチングレジストのパラメータには、いくつかの実施形態においては、20℃から90℃の温度範囲で8cpsから20cpsの粘度を有することが含まれる。インクジェットに先立って酸エッチングレジストが適切に流れることができ、酸エッチングレジストがインクジェット装置から十分に噴出することができ、かつ、酸エッチングレジストが担体基板上にコンパクトな堆積を形成して横方向に流れにくく、堆積したパターンがぼけないようにすることができる粘度を選択することが重要である。堆積は、その耐酸性の特性を保つ一方で金属表面への転写のために十分に厚いことが必要である。
【0017】
いくつかの実装形態では、粘度は20cpsを上回るが、他の実装形態では、20℃から90℃の温度範囲で粘度は8cps未満である。より狭い温度範囲でこれらの粘度を示すこともあり得る。具体的には、特定の実施形態では、酸エッチングレジストは、温度90℃で20cpsを上回る粘度を有する。
【0018】
特定の実施形態では、酸エッチングレジストは、温度90℃で50cpsを上回る粘度を有し、その一方で、ある実施形態では、酸エッチングレジストは、温度90℃で70cpsを上回る粘度を有する。特定の実施形態では、酸エッチングレジストは、温度20℃で20cpsを上回る粘度を有する。特定の実施形態では、酸エッチングレジストは、温度20℃で50cpsを上回る粘度を有し、その一方で、ある実施形態では、酸エッチングレジストは、温度20℃で70cpsを上回る粘度を有する。特定の実施形態では、酸エッチングレジストは、温度50℃で20cpsを上回る粘度を有する。特定の実施形態では、酸エッチングレジストは、温度50℃で50cpsを上回る粘度を有し、その一方で、ある実施形態では、酸エッチングレジストは、温度50℃で70cpsを上回る粘度を有する。
【0019】
特定の実施形態では、酸エッチングレジストは、温度20℃で100cps未満の粘度を有する。特定の実施形態では、酸エッチングレジストは、温度20℃で50cps未満の粘度を有し、その一方で、ある実施形態では、酸エッチングレジストは、温度20℃で70cps未満の粘度を有する。特定の実施形態では、酸エッチングレジストは、温度50℃で100cps未満の粘度を有する。特定の実施形態では、酸エッチングレジストは、温度50℃で50cps未満の粘度を有し、その一方で、ある実施形態では、酸エッチングレジストは、温度50℃で70cps未満の粘度を有する。インクジェットに先立って酸エッチングレジストが適切に流れることができ、酸エッチングレジストがインクジェット装置から十分に噴出することができ、かつ酸エッチングレジストが基板上にコンパクトな堆積を形成して横方向に流れにくく、堆積したパターンがぼけないようにすることができる粘度を選択することが重要である。堆積は、その耐酸性の特性を保つ一方で金属表面への転写のために十分に厚いことが必要である。
【0020】
また、一般に、酸エッチングレジストが、基板上に置かれた場所で、インクの堆積を実質的に保持するのに十分な表面張力を示し、その一方で、互いに異なる堆積が近隣のドットとわずかに融合するように十分に流れることが依然として可能であることが必要である。そのような特性は、部分的には粘度によるが、表面張力にもよるものである。一般に、酸エッチングレジストの組成物は、24から36ダイン/cmの表面張力を有することができる。いくつかの実施形態では、表面張力は24ダイン/cm未満か又は36ダイン/cmを上回る。特定の酸エッチングレジストの組成物は、24ダイン/cmを上回る表面張力を有する。別の特定の酸エッチングレジストの組成物は、36ダイン/cm未満の表面張力を有する。
【0021】
堆積された酸エッチングレジストの粒径は、2μm未満であることが多く、しばしば1μm未満である。しかし、いくつかの実施形態では、粒径が2μmより大きくなることが理解されよう。プリント可能な例示的な酸エッチングレジストの蒸気圧は、50トル未満が多く、一般に30トル未満、また、任意選択で20トル未満である。
【0022】
前述のように、いくつかの実装形態では、酸エッチングはUV硬化可能である。UV源は、水銀ランプ、発光ダイオード及び他のUV源を含むことができる。一般に、必要に応じて、酸エッチングレジストの急速硬化を可能にするUV源を有することが望ましい。また、以下でより十分に論じられるように、2つのステップの硬化プロセスが顕著な利益を提供する。そのような2つのステップの硬化プロセスでは、レジストは、望ましくないレジストの流れを防ぐために、最初に低いUV線量で硬化され、それに続いて、レジストをより十分に硬化させるために第2の高いUV線量が用いられる。いくつかの実装形態では、レジストが金属表面に転写された後に酸エッチングレジストの最終硬化を行なうことも望ましい。そのような硬化ステップは、その後レジストを再転写する必要がなく、したがってレジストは粘着性のままである必要がないので、より完全なものであり得る。
【0023】
いくつかの実装形態では、酸エッチングレジストは、反応性希釈剤、大抵は反応性モノマー希釈剤と混ぜ合わせた炭化水素樹脂を含むUV硬化可能な材料を含む。反応性モノマー希釈剤は、アクリレート反応基を含むことが多い。適切な炭化水素樹脂は、酸エッチングレジストへの粘着性を強める特性をもたらすように選択することができる。いくつかの実施形態では、樹脂は、例えば60℃から100℃のTを有することができるが、いくつかの実施形態では、ガラス転移温度は60℃未満又は100℃超が適切である。モノマーであることが多い反応性希釈剤は、しばしば100を上回り一般に150を上回る分子量を有する。1000未満の分子量が望ましいことが多く、さらに一般的には500未満が望ましい。適切なモノマーは、100から500までの分子量を有する多くの反応性モノマーを含む。組成物内のすべてのモノマーが反応性であったり、反応基を含んでいたりする必要はなく、転写可能な酸エッチングレジストを生成するために十分なUV硬化をもたらすように、樹脂とモノマーとの組成物中に十分な反応点が存在する必要があることが理解されよう。
【0024】
本発明に使用するのに適する例示の酸エッチングレジストは、Norsolene S−135炭化水素粘着性付与剤(ペンシルバニア州エクストンのSartomer社から入手可能である)、これもSartomer社から入手可能なSR−504及びSR−256など単官能基のモノマー希釈剤、並びにIrgacure 819などのUV硬化開始剤を含む。さらなる成分には、小量のMEHQ(UV抑制剤)、Irganox 1076(単官能基のヒンダードフェノール系酸化防止剤)及びOrasol Blue GL(染料)が含まれ得る。SR−256は、2(2−エトキシエトキシ)−エチルアクリレートの商品名であり、これは水分散性単官能基のモノマーであって、分子量188を有し、Tは−54℃であり、25℃で6cpsの粘度を有する。SR−504はエトキシ化ノニルフェノールアクリレートの商品名であり、これは、UV重合及び電子ビーム重合で使用される低臭気、低揮発性のモノマーであって、分子量450を有し、表面張力は33.5ダイン/cmであり、25℃で100cpsの粘度を有する。Norsolene S−135は、薄い色で低臭気の芳香族樹脂(aromatic resin)であり、室温では固体で、軟化点133℃、81.7℃のTを有する。
【0025】
例示の一実施形態では、酸エッチングレジストは、約23重量部のNorsolene S−135、約36.5重量部のSR−504、約34重量部のSR 256、それに加えて約2.8重量部のIrgacure 819、0.09重量部のMEHQ、0.14重量部のIrganoz 1076及び2.83重量部のOrasol Blue GLを含む。
【0026】
[担体基板]
本発明に従って使用される担体基板は、組成及び構成が変化し得る。一般に、担体基板は、酸エッチングレジストを受け取り、これを扱いかつモールド上へ歪みなしで位置決めするために十分に保持しなければならないが、次いで、位置決め(及び担体基板からレジストを溶剤で分離することなどの任意選択の処理)の後に、酸エッチングレジストを金属モールド表面上へ解放しなければならない。担体基板は、可撓性で、薄く、透明又は実質的に透明で、伸縮が最小限であり、かつ様々な周囲湿度レベルの下で安定であるのが好ましい。
【0027】
上で論じたように、担体基板(その上に酸エッチングレジストが堆積される)は、薄い最上層を、より厚い担体層と共に含むことができる。薄い最上層は、好ましくは、モールド表面上の曲線のまわりで容易に曲がるように、厚さは約5ミクロンから15ミクロンである。いくつかの実装形態では、酸エッチングレジストを受け取る最上層が薄すぎて、それ自体を支持することができないか、又は酸エッチングレジストを歪みなく支持することができない。そのような実装形態では、酸エッチングレジストを受け取る最上層にこの最上層を保持するための担体層を加えた2層基板を有することが特に望ましい。
【0028】
いくつかの実施形態では、酸エッチングレジストの1つ又は複数の層は、水又は別の溶剤で担体基板を湿らすことなどの特定条件下で容易に解放される、担体基板への接着結合を有する。他の実施形態では、酸エッチングレジストは、担体基板へのより強い結合を有するが、担体基板が除去されるとき、酸エッチングレジストの一部は担体基板上に残されるものの酸エッチングレジストのほとんどがモールドの表面上に保たれるように、凝集破壊する。一般に、モールド表面と酸エッチングレジスト間の結合は、酸エッチングレジストと担体基板間の結合よりかなり強いことが望ましい。また、酸エッチングレジストは、望ましくは比較的高い凝集力を有し、その結果、酸エッチングレジストと担体基板の間に、凝集破壊でなく接着破壊が生じる。
【0029】
担体基板は、ポリエステル、ポリプロピレン、ならびに、セルロース、変性セルロース、セロハン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン及びデキストリン、ペクチン、アルギンを含む炭水化物ポリマーを含むことができる。これらの炭水化物ポリマーは、担体フィルム上に水溶性又は非水溶性の薄いフィルムとしてコーティングすることができる。具体的には、基板は、例えば加水分解されたポリビニルアルコールのコーティングを含むポリエステルでよい。いくつかの用途に適する別の特定の担体基板は、例えば、一般に厚さが50ミクロン未満で、3〜20ミクロンであることが多く、好ましくは約5〜10ミクロンの十分に加水分解されたポリビニルアルコールでコーティングされた0.0762〜0.1016mm(3〜4ミル)のポリエステルを含む。
【0030】
ある実施形態では、担体基板は、モールドから担体基板の除去を容易にするように、水又は他の溶剤に浸透可能及び/又は可溶性である。一般に、水又は溶剤は、担体基板が柔らかくなるか除去されるとき、酸エッチングレジストも溶かすか又は過度に柔らかくするのを避けるように、酸エッチングレジストに及ぼす影響が著しく低いことになる。
【0031】
ある実施形態では、基板は、多層のインク受容基板を含み、インク受容基板は、微小多孔質のインク受容層、分解性バインダ層及び担体層を含む。分解性バインダ層は、微小多孔質のインク受容層と不溶性担体層との中間に配置される。いくつかの実施形態では、微小多孔質のインク受容層は、アルミナ粒子、又は、シリカ粒子などの他の非水溶性の粒子を含む。一般に、アルミナ粒子は、ポリビニルアルコール又は他の有機マトリックスによって適所に保持される。
【0032】
ある実装形態では、蛍光を発する染料が基板に付加されて、エッチングされるべき表面への酸レジストの適切な転写を確認するための基板の検査が可能になる。例えば、蛍光を発する染料は、インク受容層、バインダ層又はその両方に組み込まれてよい。これらの層に蛍光を発する染料を取り入れることによって、適切な酸レジストのプリント及び転写があったことを確認するために、エッチングされるべき表面を視覚的に検査することが可能である。
【0033】
インク受容層中に蛍光を発する染料を使用することは、酸レジストの適切な転写があり、プリントされていない領域を除去する(それによって酸エッチングを可能にする)ように酸レジストが適切に成長していることを確認するために特に有効である。一般に、そのような実装形態では、酸レジストを受け取っていない領域は、(エッチングされるべき表面への適用後に)フィルムの処理中に洗い流され、それらの領域中の蛍光を発する染料が同時に除去される。処理の後、いくらかの染料は、酸レジストを受け取った基板の一部に通常残っており、酸レジストの位置及び完全性を確認するため、ならびに、処理による基板の過剰部分の除去を確認するための目視検査を容易にする。
【0034】
ある実装形態では、微小多孔質のインク受容層は、ドライ重量で多孔質のアルミナ又はシリカを少なくとも10パーセント含み、別の実装形態では、微小多孔質のインク受容層は、ドライ重量で多孔質のアルミナ又はシリカを少なくとも50パーセント含み、また、別の実装形態では、微小多孔質のインク受容層は、ドライ重量で多孔質アルミナを少なくとも80パーセント含む。別の実装形態では、微小多孔質のインク受容層は、ドライ重量で多孔質アルミナを少なくとも70パーセント含む。
【0035】
微小多孔質のインク受容層でポリビニルアルコールが使用されるとき、インク受容層は、一般にドライ重量でポリビニルアルコールを少なくとも10パーセント含み、ある実施形態では、微小多孔質のインク受容層は、ドライ重量でポリビニルアルコールを少なくとも20パーセント含み、また、任意選択では、ドライ重量でポリビニルアルコールを少なくとも30パーセント含む。いくつかの実装形態では、インク受容層は、ポリビニルアルコールを、少なくとも50パーセントか、少なくとも70パーセントか、さらには90パーセント超を含む。一配合例では、微小多孔質のインク受容層は、ドライ重量で60から80パーセントの多孔質アルミナと、ドライ重量で20から40パーセントのポリビニルアルコールとを含む。
【0036】
分解性バインダ層は、例えばポリ酢酸ビニル及び/又はポリビニルアルコールを含むことができる。そのような一実装形態では、分解性バインダ層は、ドライ重量で少なくとも10パーセントのポリ酢酸ビニルとドライ重量で少なくとも50パーセントのポリビニルアルコールとを含み、任意選択では、ドライ重量で少なくとも15から35パーセントのポリ酢酸ビニルとドライ重量で65から85パーセントのポリビニルアルコールとを含む。この分解性バインダ層は、一般に、プリント後に担体層から剥離して除去することができる。担体層の除去後、バインダ層、インク受容層及び酸エッチングレジストが、モールド表面に適用される(酸エッチングレジスト及びインク受容層はモールド表面及び露出したバインダ層に接する)。適切な担体層には、例えばポリエステルが含まれる。一般に、担体層の厚さは少なくとも0.0254mm(1ミル)である。
【0037】
基板の一例は、多層のインク受容基板を備え、このインク受容基板は、少なくとも50重量パーセントの多孔質アルミナを含むインク受容層と、少なくとも25重量パーセントのポリビニルアルコールを含む分解性バインダ層と、実質的に非水溶性の担体層とを備え、分解性バインダ層は、微小多孔質のインク受容層と不溶性担体層との中間に配置される。
【0038】
適切な担体基板10の構成が図1に示され、この図は、不溶性担体層12(ポリエステル層など)に加えて分解性バインダ層14及び微小多孔質のインク受容層16の拡大した断面を示す。担体基板は上面18及び底面19を含む。上面18はインクジェットプリンタから酸エッチングレジストを受け取り、その一方で、底面19によって基板10の容易な取扱いが可能になる。
【0039】
図2は、本発明のプロセスの後続のステップを示し、そのステップで、担体基板10の上面18上に、具体的には微小多孔質のインク受容層16上に酸エッチングレジスト20が堆積されている。酸エッチングレジスト20は、いくぶん特異な局所的な起伏を有して示されている。実用では、この起伏と、酸エッチングレジスト20の堆積間の空間とは、レジストの硬化速度ならびに酸エッチングレジスト組成物20の粘度及び表面張力によって容易に調整することができる。
【0040】
酸エッチングレジスト20の十分な硬化の後(硬化可能な組成物が使用される場合)、金属表面に担体基板10を適用することができる。いくつかの実装形態では、エッチングされるべき金属22の表面に酸エッチングレジスト20が適用される前に不溶性担体層12が除去されるが、他の実装形態では、酸エッチングレジスト20が金属表面に適用された後に不溶性担体層12が除去される。しかし、担体基板10の残存部分は一般に不溶性担体層12よりはるかに可撓性であるので、酸エッチングレジスト20が金属表面に適用される前に不溶性担体層12を除去することがかなり望ましい。したがって、不溶性担体層12を除去すると、その上に酸エッチングレジスト20がプリントされている残存する分解性バインダ層14及びインク受容層16が、凹又は凸のモールド表面などのエッチングされる金属表面に順応するように曲げられることが可能となる。
【0041】
図3は、金属物体22に適用された後の酸エッチングレジスト20を示す。この実施形態では、不溶性担体層12は除去されている。次のステップは、一般に、バインダ層14をあらゆる露出したインク受容層16とともに除去することである。バインダ層14は、とりわけ、バインダがポリ酢酸ビニル及び/又はポリビニルアルコールを含むとき、メタ過ヨウ素酸ナトリウムなどの酸化剤を使用して除去することができる。下にある金属の部分22をさらすために、バインダ層14の除去が必要となることが多い。
【0042】
図4は、プロセスの次のステップを示し、酸エッチングレジスト20は残っているが、バインダ層14及び大部分のインク受容層16が除去されている。実用では、とりわけ、インク受容層16が、酸エッチングレジストが結合している粒子(アルミナ、シリカなど)を含むとき、インク受容層16の一部は、酸エッチングレジスト20に接したままであり得る。インク受容層16のこれらの残留部分は、酸エッチングレジストが金属22のエッチングを防止するように意図される場所に保持されるので、金属22の上面24の酸エッチングに関していかなる深刻で否定的な問題ももたらさないことが理解されよう。実際、ある実施形態では、小量のインク受容層16が残されていると、露出した酸エッチングレジストの粘着性を低下させることができ、同時に耐酸性を少し加えることができる。
【0043】
図5は、保持された酸エッチングレジスト20と共にエッチングされた部分26を含む、エッチング後の金属22を示す。その後、図6に示されるように、酸エッチングレジストの残りが除去される。
【0044】
[インクジェットプリンタ]
酸エッチングレジストをプリントするために使用されるインクジェットプリンタは、ドロップオンデマンドの熱式又は圧電式のシステムを含む様々なインクジェットプリントプロセスを用いることができる。任意選択で、インクジェットプリンタは連続プリントを用いることができる。熱式プリントでは、電気的に加熱される一連の小さなチャンバを有するプリントカートリッジが使用される。プリンタは、加熱要素を介して電流パルスを流す。チャンバ内の水蒸気爆発がバブルを形成し、これが用紙上にインクの小滴を進ませる。インクの表面張力が、インク容器に取り付けられた狭いチャネルを通して、チャンバ内に別のインクの充てんを送り込む。一般に、熱式プリント技術は水性インクを使用する。
【0045】
代替形態では、インクジェットプリンタは、加熱要素の代わりに、各ノズル内に1つ又は複数の圧電結晶を有する圧電式インクジェットを使用してよい。電流が与えられると、結晶が曲がって、ノズルからインクの小滴を強制排出する。圧電式インクジェット技術によって、熱式又は連続式インクジェットプリントより広範囲のインクに対処できるようになる。
【0046】
最後に、連続式インクジェット法を用いることができる。連続式インクジェット技術では、高圧ポンプが、容器から極微のノズルを通して液体インクを導き、インク小滴の連続的ストリームを生成する。圧電結晶によって、液体ストリームは一定間隔で小滴へ分断される。インク小滴が形成すると、荷電電極によって生成された静電場の影響を受ける。この電場は、所望する滴の偏向の程度に応じて変えられる。このことは、各小滴に対して制御された可変静電荷をもたらす。隣接する小滴間の静電反発力を最小限にするために、帯電した小滴は、1つ又は複数の荷電していない「保護小滴」によって分離される。次いで、帯電した小滴は、静電偏向プレートによって、プリントされるべきレセプタ材料に向けられる(偏向される)か、又は、再利用のために、引き続き偏向されずに収集溝に向かうことができる。より高度に帯電した小滴は、より大きな度合いで偏向される。連続式インクジェットプリントの利点の1つに、ジェットが常時使用中であるためにノズルが詰まらないことがある。
【0047】
[方法]
本発明の一方法では、最初のステップは、所望のテクスチャパターンの画像ファイルを生成するステップを含む。一般に、そのような画像ファイルはコンピュータ上に生成される。このファイルは、次に、酸エッチングレジストインクを使用してプリントするように構成されたインクジェットプリンタに出力される。酸エッチングレジストが堆積される担体転写基板は、1つ又は複数の層を含むことができる。例えば、担体転写基板は、リリース被膜を有して除去可能な担体層(ポリエステルなど)を含むことができるか、あるいは、追加バインダ層及び/又はインク受容層を有する除去可能な担体層を含むことができる。したがって、いくつかの実施形態では、担体基板は、不溶性担体層とこの担体層から除去可能なインク受容層とを含む。インク受容層は、バインダ層によって不溶性担体層に付着されてよい。そのような実施形態では、酸エッチングレジストがインク受容層上にプリントされた後に、不溶性担体層及びバインダ層が別々に剥がされて担体層が廃棄される。次いで、バインダ層とその上に酸エッチングレジストのパターンがプリントされている及びインク受容層とが、エッチングされるべき金属表面に付与される。テクスチャリングされるべき金属表面上に、酸エッチングレジストのインクジェットプリントされたパターンを押し付けるように、バインダ層の露出した表面に圧力をかける。その後、バインダ層は、酸化、湿らせ、加熱又はUV放射へのさらなる露光などによって除去することができる。バインダ層の除去後、酸エッチングに耐性のあるパターンは、テクスチャリングされるべき表面に付着したままであり続け、金属表面を酸にさらすことによりテクスチャリングプロセスを進めることができる。
【0048】
酸エッチングレジストの2ステップ硬化を実行することが望ましいことが多い。これは、例えば、低出力の部分的初期硬化と、それに続くより高出力の第2の硬化によって望ましく達成することができる。低出力の部分的硬化は、より多くのソリッドパターンを生成するために、インクがたやすく滲んだり甚だしく流れたりせず、しかもドット間でわずかに広がることができるようにインクを濃くするように設けられる。したがって、初期硬化によって、インクジェットされた酸エッチングレジストのドットが、そのエッジに沿って互いにわずかに融合するが過度の流れによってパターンが崩壊するほどでない、適切な低流動性のレベルが可能になる。
【0049】
次に図7を参照すると、担体基板上に堆積された酸エッチングレジストのパターンの拡大写真が示されている。図7では、酸エッチングレジストの非常に詳細なパターンが生成されており、酸エッチングレジストの細い線42によって接続される酸エッチングレジストの実質的に円形のスポット40を有し、細い線42は、露出した基板44の小さな三角形によってすべて分離されている(この露出した基板44は、酸エッチングレジストがその上に堆積されていないインク受容層部分に対応する)。図7に示される例では、各スポット40の中心は約25ミクロン間隔である。したがって、本発明を用いると、サイズがわずか数ミクロンの酸エッチングレジストフィーチャを生成する能力が可能で有る。
【0050】
図8は、図7に示されたものに類似の酸エッチングレジストパターンを使用してエッチングされた金属表面を示す。図8のエッチングされた表面は、エッチングされていない線52によって結合された実質的に円形のエッチングされていない領域50(図7の酸エッチングレジストのスポット40及び線42に対応する)がそれらを接続することを示す。エッチングされた金属54の周囲の三角形は、図7の露出した基板44の領域に対応する。
【0051】
図7及び図8に示される優れた細部は、酸エッチングレジストを基板上に堆積した直後に、酸エッチングレジストを非常に急速に部分的硬化することによってある程度可能になる。プリントのテストでは、プリントされた後に、酸エッチングレジストが担体基板上でわずかに広がることを示し、これは画像を歪める恐れがある。これは、UV源を使用した各プリントパスの後に、酸エッチングレジストを適所に「ピン止め(pinning)」ことにより克服することができる。強いUV源が使用されると、十分に硬化された後、インクの各パスはドーム形の形状を保持する。結果は、金属モールド上にプリントされた画像の表面上で、画像がエッチングされた後に、目に見える線をプリントしている。したがって、プリントユニットのプリントヘッドに隣接して取り付けられたLEDなど、インクをピンで留めるための比較的弱いUV源を使用することは一般に好ましい。初期硬化は、恐らく50mJ/cm未満のUV照射量を有し、より見込めるのは25mJ/cm未満であり、さらに典型的には、いくつかの用途では5mJ/cm未満又は1mJ/cm未満である。図9は、担体基板に付与されたが初期硬化ステップを用いて「ピン留め」されたいない酸エッチングレジストを示す。プリントされたパターンは図7のものに酷似して見えるはずであったが、著しく劣化してしまっており、酸エッチングレジスト部分60は、露出した基板64の領域で実質上ぼかされている。
【0052】
同様に、最終硬化は、しばしば不活性雰囲気中で、望ましくは、はるかに強いUV光源からのものである。適切な最終硬化は、しばしば100mJ/cm超、200mJ/cm超、また、任意選択で300mJ/cmを上回る照射量を含む。エネルギー照射量は、より優れた再位置決めを可能にするために引き上げることができ、あるいはエッチングされるべき金属表面へのより高い粘着及び接着を可能にするために引き下げることができる。照射量は、モールドへ適用する前に酸エッチングレジストが徐々に広がるのを防ぐように、十分に高いものであるべきである。
【0053】
複数のパターン転写を用いると、転写がともに整列して結合されることが必要になる。次いで、転写は表面上が磨かれ、解除剤を使用して組織担体が除去される。一致ラインと形にぴったり作られた輪郭は、液体の耐酸材料を使用して手で融合することができる。検査の後、モールドは、エッチング領域に移る準備ができている。モールドは、酸浴槽中に没しているか、又は垂直に掛けられて酸を吹きかけられてよい。合金のタイプが、使用されるべき酸の適切な配合を決定することになる。所望の深さは、モールド及び酸の温度とモールドが酸にさらされる合計時間との組合せによって決定される。
【0054】
[配合例]
様々な配合例が、本発明向けの適合性を求めるために評価された。鋼への接着に関する必要条件は、高度に研磨された1片のP20高炭素鋼に、硬化された酸エッチングレジスト試料を配置し、酸エッチングレジストの鋼からのリリースを試験することにより評価された。
【0055】
評価された第1の試料の組は、DODプリントヘッド中で動作すると分かっている確立したインクジェットインクであった。これらの試料は、溶剤ベースで、Sunjet(SOV、UPA)及びLavaInk(Ecosolvent 640)のUV硬化可能なインクを含むものであった。グループとして、試験された試料には、硬化後に鋼に対して著しい付着性を有するものはなかった。従来のプリント向けインクジェットインクは、扱い及び保存の目的のために硬化後に不粘着であるように配合されるので、これらの結果は一般的なものと見ることができる。
【0056】
評価された第2の試料の組は、耐酸性があると知られている液体であった。試料は、NazdarのBlue 212、Cudner&O’ConnerのCM−34449、Seoul ChemicalのSue−600B及びCoates ChemicalのNTC−W70を含むものであった。評価された試料には、硬化後に鋼試料に付着するものはなかった。
【0057】
溶剤ベースの感圧性接着剤(PSA)も評価された。試料は、Clifton AdhesivesのPS6776M1、ValpacのPS149及びDow Corningの280Aを含むものであった。これらのPSAの試料は、金属への優れた付着力を有するものであったが、DODプリント向けの所望の粘度範囲内(8cpsから20cps)にするために薄める必要があった。適切な粘度に薄められたとき、試料は5%から8%の固形分含有量であった。この固形分含有量は、本発明のほとんどの用途にとって比較的低いものであり、レジスト形成が困難になりがちで、基板上でインクジェットヘッドを複数回通す必要性が生じることがある。また、希釈に使用された溶剤(トルエン)は、表面張力が低く、そのためにDODプリントヘッドから小滴を射出するのが非常に困難であった。
【0058】
次に、UV硬化可能な感圧接着剤配合に基づく試料の組を試験した。この配合は、すべてSartomerから市販されている、炭化水素粘着性付与剤(S−135)及び2つの低粘度の単官能基のモノマー希釈剤(SR−256、SR−504)から成るものであった。粘度(25℃で110cps)を低減するためにモノマーの含有量を増加し、また、3%の開始剤Irgacure 819(UV露光に際して不飽和樹脂のラジカル重合用の光開始剤)を流体に付加した。流体のインクジェット能力は、SpectraのSM−128プリントヘッドを使用して70℃の温度で試験された。流体が優れたジェット特性を有するのが観測された。次いで、流体は、巻き線ロッドを使用して、1枚の0.0508mm(2ミル)のPET上に0.1524mm(0.6ミル)の厚さでコーティングされ、5kWの金属ハロゲン化物露光ユニットを使用して58.42cm(23インチ)離して100ユニットで硬化させた。硬化されたフィルムは、研磨済みの鋼サンプルに押し付けられ、高い付着性を示した。流体の高温安定性も、開始剤を加えた流体の試料を82℃(180°F)下に1週間置いて評価した。流体には、ゲル化又は粘度増加は観測されなかった。
【0059】
この初期配合は以下に示されるが、粘度が25℃で290cpsであり、温度を上げてもインク噴射には高すぎるものであった。
粘着性付与剤 S−135 32.95
モノマー SR−256 31.43
モノマー SR−504 33.52
安定剤 MEHQ 0.04
酸化防止剤 1076 0.1
光開始剤 TZT 1.96
合計 100
変更された配合は以下のように作製された。
粘着性付与剤 S−135 24.27
モノマー SR−504 37.65
モノマー SR−256 35.17
光開始剤 819 2.91
100.00
第1の例では、この変更された配合を試験するために、十分に加水分解されたPVA 90−50/水溶液(10%)をポリエステルシート上で厚さ0.0508mm(2ミル)の層にコーティングし、70℃で15分間乾燥することにより担体基板を作製した。生じたPVA層は厚さ7ミクロンであった。
【0060】
次のステップでは、この試験配合は、Apollo IIプリントヘッドコントローラと共にSpectra SE128プリントヘッドを使用してPVA層上にプリントされた。ヘッドの電圧は75ボルト、パルス幅は8ミリ秒、間隔(rise and fall)は2ミリ秒であった。ヘッドの温度は70℃に設定された。インクジェットプリントは、1つの担体基板上に手動で行なわれた。その後、この配合は、1KW中圧Hgバルブを15cm離して使用して、100ユニットの露光でUVにさらされた。
【0061】
担体基板のPVAサブ層上の硬化された酸レジストは、P−20の高度に研磨された鋼表面上に押し付けられ、ポリエステルのバッキングが除去された。PVA層の上に水が噴霧されて3分間置かれ、その後、PVAにはしわが寄っており、金属表面上に酸レジストを残して除去された。転写された酸レジストは顕微鏡で調査され、金属にわたって汚れが最小限であると判明し、大部分のパターンフィーチャは、PVA層上で転写の前に見られた通りのものであった。
【0062】
第2の例では、前述のものと同一の技術が用いられたが、担体基板向けのPVA/ポリエステル構成の代わりに、単一層の担体には0.0127mm(0.5ミル)の厚さのセロハンが使用された。酸レジストを硬化させ、P−20の鋼物品上に押し付けた後に、水を噴霧して3分間動作させた。セロハンシートを除去すると、金属上に酸レジストが残った。
【0063】
第3の例では、第1の例で説明された酸レジスト流体がワイヤロッド#6を使用してポリエステル上にコーティングされた。UV硬化が行われ、窒素下で5KWの中圧Hgバルブを用いて91.44cm(36インチ)離して流体が露光された。これらの条件で、100mJ/cmの照射量で酸レジストの十分な硬化が実現された。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】酸エッチングレジストの堆積に先立って、本発明に使用するのに適する担体基板の断面図である。
【図2】酸エッチングレジストの堆積後の担体基板の断面図である。
【図3】酸エッチングレジストの堆積後、かつ金属表面への適用後の担体基板の断面図である。
【図4】金属表面への適用後、かつ担体基板の除去後であるが、酸エッチング前の酸エッチングレジストの断面図である。
【図5】エッチング後であるが残留酸エッチングレジストを除去する前の金属表面の図である。
【図6】エッチング後、かつ残留酸エッチングレジストの除去後の金属表面の図である。
【図7】基板へレジストをしっかり固定するための初期硬化を受け、担体基板上に堆積された酸エッチングレジストの写真である。
【図8】図7の酸エッチングレジストを使用してエッチングされた金属表面の写真である。
【図9】基体へレジストを固定するための初期硬化を受けずに、担体基板上に堆積された酸エッチングレジストの写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テクスチャリングされた表面を生成する方法であって、
画像ファイルを生成するステップと、
前記画像ファイルをインクジェットプリンタに送るステップと、
酸エッチングレジスト組成物中の前記画像ファイルを基板材料上にプリントするステップと、
前記酸エッチングレジスト組成物をテクスチャリングされるべき表面上に転写するステップと、
酸を使用して前記表面をエッチングするステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
プリントするのにインクジェットプリンタを使用することを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酸エッチングレジスト組成物は、硬化可能な組成物を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記酸エッチングレジスト組成物は、UV硬化可能な組成物を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記酸エッチングレジスト組成物は、UV硬化後に粘着性を保つことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記酸エッチングレジストが、硬化前に20℃で8cps〜20cpsの粘度を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記酸エッチングレジストは、硬化後に90℃で8cps〜20cpsの粘度を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記酸エッチングレジストは、プリント後で且つ前記テクスチャリングされるべき表面上への堆積の前に、硬化されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記酸エッチングレジストは、10mJ/cm未満の照射量で硬化されることを含む第1のステップと50mJ/cmを上回る照射量で硬化されることを含む第2のステップとの2つのステップのプロセスで硬化されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記酸エッチングレジストは、5mJ/cm未満の照射量で硬化されることを含む第1のステップと150mJ/cmを上回る照射量で硬化されることを含む第2のステップとの2つのステップのプロセスで硬化されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項11】
10〜50重量パーセントの粘着性付与剤と、
20〜90重量パーセントの1つ以上の反応性モノマーと、
光開始剤と、
を含むことを特徴とするインクジェット可能な酸エッチングレジスト。
【請求項12】
前記レジストが、
10〜30重量パーセントの粘着性付与剤と、
30〜70重量パーセントのモノマーと、
光開始剤と、
を含むことを特徴とする請求項11に記載のインクジェット可能な酸エッチングレジスト。
【請求項13】
前記酸エッチングレジストは、90℃の温度で8cps〜20cpsの粘度を有することを特徴とする請求項11に記載のインクジェット可能な酸エッチングレジスト。
【請求項14】
前記酸エッチングレジストは、20℃の温度で8cps〜20cpsの粘度を有することを特徴とする請求項11に記載のインクジェット可能な酸エッチングレジスト。
【請求項15】
前記酸エッチングレジストはUV抑制剤をさらに含むことを特徴とする請求項11に記載のインクジェット可能な酸エッチングレジスト。
【請求項16】
多層のインク受容基板であって、
微小多孔質のインク受容層と、
分解性バインダ層と、
担体層と、
を備え、
前記分解性バインダ層は、前記微小多孔質のインク受容層と前記不溶性担体層との中間に配置されることを特徴とする多層のインク受容基板。
【請求項17】
前記微小多孔質のインク受容層は、アルミナ粒子又はシリカ粒子を含むことを特徴とする請求項16に記載の多層のインク受容基板。
【請求項18】
前記微小多孔質のインク受容層は、実質的に非水溶性の粒子を含むことを特徴とする請求項16に記載の多層のインク受容基板。
【請求項19】
前記実質的に非水溶性の粒子は、アルミナ粒子又はシリカ粒子を含むことを特徴とする請求項18に記載の多層のインク受容基板。
【請求項20】
前記微小多孔質のインク受容層は、アルミナ粒子を含むことを特徴とする請求項16に記載の多層のインク受容基板。
【請求項21】
前記微小多孔質のインク受容層は、ポリビニルアルコール及び多孔質のアルミナ粒子を含むことを特徴とする請求項16に記載の多層のインク受容基板。
【請求項22】
前記微小多孔質のインク受容層は、ドライ重量で少なくとも10パーセントの多孔質のアルミナを含むことを特徴とする請求項16に記載の多層のインク受容基板。
【請求項23】
前記微小多孔質のインク受容層は、ドライ重量で少なくとも30パーセントの多孔質のアルミナを含むことを特徴とする請求項16に記載の多層のインク受容基板。
【請求項24】
前記微小多孔質のインク受容層は、ドライ重量で少なくとも60パーセントの多孔質のアルミナを含むことを特徴とする請求項16に記載の多層のインク受容基板。
【請求項25】
前記微小多孔質のインク受容層は、ドライ重量で少なくとも80パーセントの多孔質のアルミナを含むことを特徴とする請求項16に記載の多層のインク受容基板。
【請求項26】
前記微小多孔質のインク受容層は、ドライ重量で少なくとも10パーセントのポリビニルアルコールを含むことを特徴とする請求項16に記載の多層のインク受容基板。
【請求項27】
前記微小多孔質のインク受容層は、ドライ重量で少なくとも20パーセントのポリビニルアルコールを含むことを特徴とする請求項16に記載の多層のインク受容基板。
【請求項28】
前記微小多孔質のインク受容層は、ドライ重量で少なくとも30パーセントのポリビニルアルコールを含むことを特徴とする請求項16に記載の多層のインク受容基板。
【請求項29】
前記微小多孔質のインク受容層は、ドライ重量で60〜80パーセントの多孔質アルミナとドライ重量で20〜40パーセントのポリビニルアルコールとを含むことを特徴とする請求項16に記載の多層のインク受容基板。
【請求項30】
前記分解性バインダ層は、ポリ酢酸ビニルを含むことを特徴とする請求項16に記載の多層のインク受容基板。
【請求項31】
多層のインク受容基板であって、
少なくとも50重量パーセントの多孔質アルミナを含むインク受容層と、
少なくとも25重量パーセントのポリビニルアルコールを含む分解性バインダ層と、
実質的に非水溶性の担体層と、
を備え、
前記分解性バインダ層は、前記微小多孔質のインク受容層と前記不溶性担体層との中間に配置されることを特徴とする多層のインク受容基板。
【請求項32】
前記インク受容層は、60〜80重量パーセントの多孔質のアルミナを含むことを特徴とする請求項31に記載の多層のインク受容基板。
【請求項33】
前記インク受容層は、65〜75重量パーセントの多孔質のアルミナを含むことを特徴とする請求項31に記載の多層のインク受容基板。
【請求項34】
前記インク受容層は、25〜35重量パーセントのポリビニルアルコールを含むことを特徴とする請求項31に記載の多層のインク受容基板。
【請求項35】
酸レジストパターンを形成する方法であって、
多層のインク受容基板を与えるステップであって、前記インク受容基板が、微小多孔質のインク受容層と、分解性バインダ層と、担体層とを備え、前記分解性バインダ層は、前記微小多孔質のインク受容層と前記不溶性担体層との中間に配置されるステップと、
耐酸性インクジェットによってUV硬化可能な材料を前記多層のインク受容基板上に堆積するステップと、
前記耐酸性インクジェットによるUV硬化可能な材料を少なくとも部分的に硬化するステップと、
前記耐酸性インクジェットによるUV硬化された材料をエッチングされるべき基板に転写するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項36】
前記耐酸性インクを少なくとも部分的に硬化する前記ステップは、2つのステップの硬化プロセスを含むことを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記2つのステップの硬化プロセスが、低出力による第1の硬化と、それに続く高出力による第2の硬化とを含むことを特徴とする請求項35に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−523917(P2009−523917A)
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−551558(P2008−551558)
【出願日】平成19年1月19日(2007.1.19)
【国際出願番号】PCT/US2007/060793
【国際公開番号】WO2007/084999
【国際公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(508218176)イコニクス コーポレーション (2)
【氏名又は名称原語表記】IKONICS CORPORATION
【住所又は居所原語表記】4832 Grand Avenue, Duluth, MN 55807, U.S.A.
【Fターム(参考)】