説明

デジタル制御されたUWBミリメートル波レーダー

超広帯域(UWB)ミリメートル(ミリ)波レーダーシステム(100)が、制御入力(106)、GHz信号出力、および周波数制御された出力(108)を有する信号源(105)を含む。制御ループ(146)が、GHz信号出力と制御入力との間に結合され、周波数分割器(110)と、デジタル制御されたPLL(115)とを含み、PLL(115)は、信号源の制御入力に結合されたロックされた出力を提供して、離散周波数掃引された、または離散周波数ホップされた、周波数ロックされた出力信号(119)を提供する。周波数乗算器(127)が、複数のミリ波周波数を出力するために、信号源の周波数制御された出力に結合される。アンテナ(134)が、ミリ波周波数を、応答信号を送られることになる表面(151)に送信し、そこから反射ミリ波信号を受信する。混合器(140)が、反射ミリ波信号とミリ波周波数とを混合し、処理回路(165)が、混合出力から、表面に関連した少なくとも1つのパラメータを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]開示される実施形態は、周波数領域レーダー探知に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]非接触の電磁検出および電磁探知は、対象の存在もしくはシグネチャ(対象の分類もしくは形状)、または物質の表面までのレベルもしくは距離を判定するために、他の探知方法が確実な、および/または正確な情報を提供するのに困難を有するときに、使用され得る。たとえば、石油産業およびガス産業では、不正確な、または確実でないタンクレベル計測が、タンクレベル測定用途において収益性/収入の著しい損失を招くことがある。バルク貯蔵タンク(直径40〜80メートル)におけるレベル計測の1ミリメートル(ミリ)の誤差は、数立方メートルの容積誤差に相当することがある。原油価格は、一般に、少なくとも159リットル(1バレル=42米ガロン)につき、70米ドルであることから、1ミリの誤差は、取引および石油移送に関与する1つまたは複数の関係先にとって、数千ドルの損失をもたらすことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
[0003]レーダーは、非接触のレベル測定器の一種として、この数十年間使用されている。しかしながら、レーダー計測は、タンク壁、タンク底部、タンク屋根、ならびに攪拌器、はしご、および熱コイルを含むタンク障害物に起因するような、タンク内部の複数の反射によって影響されることがある。さらに、あらゆるタンクは、一般に、石油の貯蔵および移送のための最大容量を使用しなければならない。計測は、生産物のレベルがタンクの底部または屋根に近づくにつれ、常に確実であることが要求される。
【0004】
[0004]さらに、従来のレーダーシステムにおける電子部品および誘電材料は、温度に依存する。レーダー計測の安定性は、局地的な気象条件による温度変化、ならびに、中東(たとえば非常に高温)、または北極地方(たとえば非常に低温)などにおける、設置基盤が配置される地理的位置の大規模な多様性によって、影響されることがある。実際の利用においては、限定されたタンクノズルの数が、より大きなサイズのデバイスの設置を強いることがあり、可能な追加のノズルがあるとしても、大きなサイズのユニットのコストは上昇することになる。したがって、温度ドリフトに対する再較正の必要性、および障害物の干渉のために、あいにくレーダーレベル測定器の定期的な現場メンテナンスは必須であり、それが顧客および/またはサプライヤにとっての余分なコストを招く。
【0005】
[0005]本概要は、37C.F.R.§1.73に準拠して提供される。本概要は、特許請求の範囲または意味を解釈する、または限定するために使用されるのではないという理解を有して提出される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[0006]本明細書で説明される開示される実施形態は、ミリメートル(ミリ)波周波数において高分解能能力を提供する超広帯域(UWB)レーダーシステムを含む。本明細書で定義されるように、UWBは、少なくとも0.5ギガヘルツ(GHz)の帯域幅、または少なくとも25%の比帯域幅を指し、ミリ波は、30GHzから300GHzまでの範囲の周波数における信号を指す。
【0007】
[0007]典型的な実施形態において、システム動作中、レーダー周波数は、数十ミリ秒において、典型的には40から100ミリ秒の時間の長さにおいて、少なくとも2GHzの、たとえば4GHzの帯域幅で掃引される。
【0008】
[0008]超大規模な帯域幅が、安定した信号源を使用して掃引される。掃引周波数は、各周波数において、位相ロックループ(PLL)によって制御され、−40℃から+85℃までなどの、広い範囲の温度にわたって安定化され得る。温度変化の影響は、安定した水晶発振器などの、PLLのための単一の基準周波数源によって全体的に抑制される。
【0009】
[0009]当技術分野で知られるように、距離分解能は、送信される信号帯域幅、システム掃引時間に依存する受信機帯域幅、および伝播媒体に基づく。4GHz信号帯域幅では、結果として得られる距離分解能は、4センチメートルと同等、またはそれよりもよい。約4センチメートル、またはそれよりよい高い距離分解能は、センサのための高い分解された力につながる。掃引される周波数の広帯域は、75GHzから85GHzの間(EN302372による、レベル測定用途のためにヨーロッパにおいて現在許容される帯域)などの、ミリ波範囲におけるさまざまな周波数を利用することができる。
【0010】
[00010]高い周波数動作のために、レーダーアンテナは、小さなノズルの中に収まるように小型化されることが可能であり、典型的な実施形態では、レドームとアンテナとを合わせて、100ミリ未満の横方向寸法、および100ミリ未満の全長を有する。開示される実施形態は、上の背景技術で説明された問題を概ね克服する。たとえば、下の実施例において実証されるように、高分解能レーダーは、他のレーダーが極度の精度低下に悩まされる、タンク壁の影響の問題を解決する。また、提供される高分解能は、複数の密集した物体(たとえば、障害物)からの干渉を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】[00011]本発明の実施形態による、例示的なUWBミリ波レーダーシステムのブロック図である。
【図2A】[00012]本発明の実施形態による、ハウジングに収められた例示的なUWBミリ波レーダーシステムの断面図である。
【図2B】本発明の実施形態による、ハウジングに収められた例示的なUWBミリ波レーダーシステムの上面図である。
【図3】[00013]タンク壁の上部に取り付けられた、本発明の実施形態によるミリ波レーダーシステムをテストするために用いられる例示的な計測装置の概略図である。
【図4A】[00014]図3に示されるターゲットが、下の実施例において説明される計測中の可変ステップにおいてどのように動くかを示す図である。
【図4B】[00015]ターゲットの動きが、下の実施例において説明されるレーダーシステムによってどのように検出され、追跡されるかを示す図である。
【図5A】[00016]以下の実施例において説明されるように、現行のレーダーシステムの約2倍から4倍よい、約4センチメートルの非常に高い距離分解能により、9.57メートルにおいて検出された対象を示す図である。
【図5B】[00017]以下の実施例において説明されるように、高性能レーザーの計測精度に匹敵する計測精度を証明する4GHzBWを有するレーダーシステムによって計測された処理データから取得された結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[00018]開示される実施形態は、添付の図面を参照して説明され、図面において、同様の参照番号が、図面全体を通して、同様のまたは均等な要素を示すために使用される。図面は、一定の縮尺で描かれているのではなく、開示される実施形態を単に図示するために提供される。いくつかの態様が、説明のための例示的な応用を参照して以下で説明される。多数の特定の詳細、関連、および方法が、開示される実施形態の十分な理解を与えるために述べられることが理解されるべきである。しかしながら、関連技術分野の当業者は、開示される実施形態が、1つまたは複数の特定の詳細なしに、あるいは他の方法により実践され得ることを容易に認識するであろう。他の例において、よく知られた構造または作用は、開示される実施形態を曖昧にするのを避けるために、詳細には示されない。いくつかの行為は、異なる順序で、および/または他の行為または事象と同時に発生してもよいことから、開示される実施形態は、行為または事象の図示された順序によって限定されない。さらに、すべての図示された行為または事象が、開示される実施形態に従った方法論を実装するために必要とされるわけではない。
【0013】
[00019]図1は、本発明の実施形態による、例示的なUWBミリ波レーダーシステム100のブロック図である。システム100は、限定はしないが、距離、レベル、およびシグネチャの判定を含む用途に、周波数領域レーダー探知および計測を提供する。
【0014】
[00020]システム100は、周波数変調連続波(FMCW)と対比されることがある、ステップ周波数連続波(SFCW)または周波数ホッピングを実装する。FMCWは、それぞれ個々の周波数のシステム知識を提供しない、時間に対する連続(線形)周波数掃引を使用するが、全周波数帯域(いわゆる瞬時帯域)を上におよび/または下に掃引するのにかかる時間が比較的短いという点において有利である。それに対して、SFCWおよび関連する周波数ホッピングは、離散周波数において実現され、以下で説明されるように、各離散周波数が、安定したコヒーレントな出力信号を確立するための時間と、信号リターン(たとえば、反射)を計測するための時間とを必要とするために、離散周波数はPLLを使用して制御される。したがって、SFCWおよび関連する周波数ホッピングは、FMCWに比べ、システムパフォーマンスを改善するそれぞれ個々の周波数の知識を提供するものの、一般には、FMCWと比較すると、帯域幅を横断するのに時間がかかる。
【0015】
[00021]信号源105は、制御入力106、ベースGHz信号出力107、および複数の離散周波数制御されたGHz信号を提供する周波数制御された出力108を有する。図1に関連して説明される実施形態における信号源105は、電圧制御発振器(VCO)を含むことができる。当技術分野で知られるように、VCOは、その入力に印加される電圧信号によって、発振器周波数において制御されるように設計された電子発振器である。発振器の周波数は、一般に、印加されるDC電圧の振幅を変えることによって制御される。あるいは、一般的によりコスト高になるものの、信号源105は、ダイレクトデジタルシンセサイザ(DDS)として具体化されてもよい。
【0016】
[00022]システム100は、周波数制御回路145を含み、周波数制御回路145は、GHz信号出力107と制御入力106との間に結合された制御ループ146を含む。制御ループ146は、プリスケーラ110として示される周波数分割器110と、PLL115と、ループフィルタ120と、第1の増幅器125(たとえば、演算増幅器)とを含む。
【0017】
[00023]プリスケーラ110は、一般に、PLL115に提供される周波数分割された信号の出力周波数が、PLL115が信号を処理するのに十分に低い、≦3GHzなどであるように、周波数分割を提供する。特定の一例において、GHz信号出力107は、15GHzであり、プリスケーラ110は、少なくとも6つ、たとえば8つの周波数分割を提供する。周波数分割器110は、プリスケーラを含んで図1に示されるが、周波数分割器110は、周波数分割を提供する任意のデバイスをより広く含むことができる。
【0018】
[00024]プリスケーラ110の出力は、ネガティブフィードバックを使用して安定した周波数出力を生成する、本技術分野で知られるようなPLL115に結合される。PLL115は、一般に、インテジャーおよびフラクショナルの両方のモード演算を提供するデュアルモードPLLである。PLL115は、プリスケーラ110の出力に結合されて周波数分割された信号を受信する第1の入力116と、制御ユニット130からデジタル制御信号を受信するための第2の入力117と、基準周波数生成器122から基準周波数信号を受信するための第3の入力118とを有し、整定するための時間の後で、ロックされた出力119が生成される。ロックされた出力119は、ソフトウェアまたはファームウェアにおいてプログラムされてよい、制御ユニット130からのデジタル制御信号に基づいて、周波数掃引または周波数ホッピングを制御するための出力信号を提供する。基準周波数生成器122は、高い温度安定性を提供する水晶発振器、または内部のPLLロックされたクロックに一体化された発振器を含むことができ、あるいは、合成的にロックされた周波数クロックが、PLD、FPGA、および内部に一体化されたPLLクロックを備えたチップなどの他のプログラマブルデバイスから取得されてもよい。第1の増幅器125によって提供される出力レベルが、信号源105の制御入力106への同調電圧レベル範囲(たとえば、0から10ボルト)を提供することなどによって、信号源105の周波数同調を制御する。
【0019】
[00025]周波数制御された出力108によって提供されるロックされた信号は、第2の増幅器126に結合され、次いで複数のミリ波周波数を出力する周波数乗算器127に結合され、それが次いで、第3の増幅器128に結合される。第3の増幅器128によって出力された信号は次いで、対象150の表面151に向かうミリ波信号の送信のために、アンテナ134へと誘導される部分に分離される。
【0020】
[00026]図1はまた、アンテナ134によって送信される前のミリ波信号振幅を増幅または分割する、オプションの能力を提供するための、制御ユニット130によってレベル制御される第1の可変減衰器131、および第4の増幅器132を示す。アンテナ134は、単一のアンテナとして示されているが、当技術分野で知られるように、アンテナは、別々の送信アンテナおよび受信アンテナとして、具体化されてもよい。送信されるレーダー信号および反射されたレーダー信号について、別々のレーダーアンテナを使用することは可能であるが、送信ならびに受信のために同じレーダーアンテナを使用するのが一般的なやり方である。レーダーシステム100は、送信されるレーダー信号と、受信されるレーダー信号との間の時間差Δtを、間接的に計測することができる。送信されるレーダー信号の速度が既知である場合、液体の表面までの距離は、好適な計測手段を使用して、単純なやり方で判定され得る。表面151は、入射ミリ波信号に応答して、反射された(または拡散された)信号リターンを提供する。
【0021】
[00027]システム100はまた、ダイオードベースのデバイスによって提供されるような混合出力を含む周波数混合器140を含む。当技術分野で知られるように、周波数混合器140は、2つの異なる周波数をその入力において受け入れ、入力信号の周波数の合計、入力信号の周波数間の差、および両方の元の入力周波数を含む、いくつかの周波数における信号の混合をその出力において提示する、非線形の、または時間変化する回路もしくはデバイスである。
【0022】
[00028]周波数混合器140は、検出される対象150からの信号リターンを、第3の増幅器128の後に分離されたミリ波信号の一部と混合する。制御ユニット130によって制御される第2の可変減衰器141、および第5の増幅器142が、分離によって提供されたUWBミリ波信号の部分を増幅または分割する、オプションの能力を提供する。システム100の動作中、離散したミリ波周波数ごとに、PLL115は、短い時間をかけて安定したコヒーレントな出力信号を確立し、その一部が周波数混合器140に結合されて、検出される対象150からの信号リターンと混合される。周波数混合器140によって提供される目的の周波数は、アンテナ134によって送信されるミリ波信号と比較すると、信号リターン(すなわち、反射信号)の位相シフトから生じる、一般的に非常に低い周波数(たとえば、DC信号)における差信号である。ローパスフィルタ149が、低い周波数差信号を通し、周波数混合器140によって出力された他の信号を遮断する。
【0023】
[00029]当技術分野で知られるように、非常に高い周波数動作は、非常に小さなサイズのアンテナを可能にする。一般に、アンテナが送信機により生成された信号に適合する限り、特別なアンテナは必要ない。アンテナと組み合わせられたフランジ(図示せず)が、凝結を抑制し、一定の安全な関係(たとえば、気密にする)を満たすように設計されてもよい。ミリ波信号によって可能にされる小さなサイズのアンテナの利点は、アンテナが、一般的に、容器、コンテナ、およびタンクのさまざまな市販のノズルの中に収まり得ることである。たとえば、特定の一実施形態では、レドームとアンテナとを合わせて、59ミリの横方向寸法、および45ミリの全長を有することができる。
【0024】
[00030]入力信号振幅を調節してオフセット残留を取り除くための、信号調整器143によるオプションの信号調整と、第6の増幅器147による増幅との後で、低い周波数の信号は、アナログデジタル変換器(ADC)160によってデジタル化される。ADC160の出力は、処理ユニット165に結合される。処理ユニット165は、逆FFTなどのデジタル信号処理を実行して、混合器140からの個々のミリ波周波数のそれぞれに関連付けられた、デジタル化された低い周波数の信号を処理することができる。処理ユニット165は、処理された低い周波数差信号から、対象150の表面151からの距離、レベル、またはシグネチャなどの範囲情報を判定することができる。
【0025】
[00031]図2Aおよび図2Bは、本発明の実施形態による、構造的かつ防水性の囲いを提供するハウジング210を有する、例示的なUWBミリ波レーダーシステム200の断面図および上面図を示す。システム200は、図1に示されるシステム100の構成要素に基づくことができる。レドーム214は、耐化学性のためのPTFE様の材料を含むことができる。レドーム214と合わせたハウジング210は、中の電子機器が水、化学薬品、および他の液体により損傷されるのを防ぎ、EMC準拠のための不要な放射を遮蔽し、危険なエリアでの使用についてのATEX安全性要件に準拠し、気体および蒸気がハウジング内部のチャンバに入るのを防ぐことができる。レドーム214により見られる局面形状は、凝結、および一般にタンク内部に存在する汚染に対処することができる。
【0026】
[00032]ハウジング210は、図2Aに示されるような複数のゾーン、または「部屋」211、212、213に分割されているのが見られる。部屋は、ミリ波前端ユニットおよびDSPボードを含む第1の部屋と、本質安全(I.S.)ではない電力および通信ボードを含む第2の部屋と、PT100温度プローブもしくは圧力伝送器などの外部センサ、またはデジタルディスプレイのためのI.S.ボードを含む第3の部屋とを含むことができる。第2および第3の部屋は、単一の部屋に一体化されてもよい。
【0027】
[00033]上記では、位相シフトに基づいて、距離、レベル、またはシグネチャを判定することが説明されたが、当業者は、本発明の実施形態とおしなべて使用されてよい他の方法の実施を可能にするように、システム100が変更され得ることを認識するであろう。たとえば、国際出願公開WO2009031884に開示されるように、送信された信号と受信された(すなわち反射された)レーダー信号との間の位相差Δψが判定されてもよく、その値がレベル距離Lを判定するための基礎を形成することができる。
【0028】
[00034]上記で説明されたように、提供される高い距離分解能は、高い帯域幅に基づく。さらなる利点は、短い掃引時間であり、これにより、タンク内の液面の素早い動きに関わる用途について、短時間の容器の水増しおよび/または排出など、急激に変わりやすい状態の間の後で、計測を綿密に行うことができる。
【0029】
[00035]本明細書において開示された実施形態の適用は、レベル測定にとどまらない。たとえば、速度計測および対象認識は、ほんの数例にすぎない。
実施例
[00036]本発明の実施形態が、以下の特定の実施例によりさらに説明されるが、これらの実施例は、本発明の実施形態の範囲または内容をいかなる形でも制限するように解釈されるべきではない。
【0030】
[00037]図1に示されるシステム100に類似した、プロトタイプのW帯域レーダー測定器システムが構築され、一連のデモンストレーションにおいてそのパフォーマンスが評価された。アンテナによるミリ波部分とアンテナレドームの両方は、(プロセッサの用の)DSP、複合プログラマブルロジックデバイス(CPLD)、およびPLLを備えた制御ボードに一体化された。加えて、RS232、およびさまざまな部品へのオンボードの電源供給が、制御ボード上に実装された。外部接続は、6Vの電源供給およびRS232通信線のみを含んだ。レーダーシステムパラメータは、PCにより、RS232通信を通して構成された。システムは、金属接地面(タンク壁)の上1.5メートルに設置された。
【0031】
[00038]これは、制御回路を含むPLLが、ミリ波帯域において、≧4GHzの帯域幅レーダーを制御するのに使用された初回であると考えられる。レーダーシステムは、51ミリ秒以内に4GHz帯域幅を掃引することがわかった。上で説明されたように、信号源から生成された周波数は、PLL制御技術によって制御される。2つの異なるPLL技術、すなわち、フラクショナルおよびインテジャーが、デモンストレーションにおいて実装された。
【0032】
[00039]図3は、タンク壁の上部に取り付けられた、本発明の実施形態によるミリ波レーダーシステムをテストするために用いられた計測装置300の概略図である。レーダーシステム320は、ターゲット340に向けられた。レーザー基準器350もまた提供された。
【0033】
[00040]図3に示された装置300から取得された結果が、図4A〜5Bを参照して以下で説明される。図4Aは、計測間での可変ステップ、第1:ステップにつき3ミリ、第2:ステップにつき40ミリ、第3:ステップにつき3ミリ、および第4:ステップにつき40ミリにおいて、ターゲット340がどのように動くかを示す。図4Bは、ターゲット340の動きが、レーダーシステムによってどのように検出され、追跡されるかを示す。
【0034】
[00041]図5Aは、現行のレーダーシステムの距離分解能よりも約2倍から4倍よい、約4センチメートルの非常に高い距離分解能により、9.57メートルにおいて検出された対象を示す。図5Bは、4GHzBWを有するレーダーシステムによって計測された処理データから取得された結果を示す。図5Bは、+/−8ミリよりもよいサブミリ精度を証明する。測定された精度は、高性能レーザーの精度に匹敵するが、システムは、比較的安価で構成可能である。
【0035】
[00042]デモンストレーションに基づいて、タンク壁の影響に対処するすぐれたパフォーマンスが実証された。大きな金属面のそば1.5メートルに設置されたレーダーでは、他のレーダーであれば通常被る、レーダーに課せられることになる計測可能なタンク壁の影響が見られなかった。取得されたレーダー測定精度は、上記で説明されたハードウェアおよび変調技術に加えて、主にUWBのために、非常に高かった。上記で説明されたように、ミリ波(高い周波数)動作は、より小さなアンテナサイズ、ならびに小型化された送信機および受信機を可能にする。
【0036】
[00043]本発明のさまざまな実施形態が上記で説明されてきたが、これらは、限定ではなく、例としてのみ提示されていることが理解されるべきである。開示された実施形態の趣旨または範囲から逸脱することなく、本明細書における開示に従って、開示された実施形態に対する多数の変更が行われてよい。したがって、本発明の実施形態の広さおよび範囲は、上で明示的に説明された実施形態のいずれによっても限定されるべきではない。むしろ、そのような実施形態の範囲は、以下の特許請求の範囲、およびその均等物に従って定義されるべきである。
【0037】
[00044]本発明の実施形態が、1つまたは複数の実装形態に関して図示され、説明されてきたが、当業者であれば、同等の変更形態および修正形態が、本明細書および添付の図面を読み、理解するときに思い浮かぶであろう。加えて、特定の特徴が、いくつかの実装形態のうちの1つのみに関して開示されている場合があるが、そのような特徴は、任意の与えられた、または特定の用途について、所望され、かつ有利となり得るように、他の実装形態の1つまたは複数の他の特徴と組み合わされてもよい。
【0038】
[00045]本明細書において使用される術語は、特定の実施形態のみを説明する目的のためのものであり、それが本発明の実施形態に制限を設けることは意図されない。本明細書において使用されるとき、単数形である「a」、「an」、および「the」は、文脈が別段明確に指示しない限り、複数形を同様に含むことが意図される。さらに、用語「含む(including、includes)」、「有する(having、has)」、「備えた(with)」、またはその変形が、詳細な説明および/または特許請求の範囲のいずれかで使用される限りでは、そのような用語は、用語「含む、備える(comprising)」と同じように包括的であることが意図される。
【0039】
[00046]別段定義されない限り、本明細書において使用されるすべての用語(技術的および科学的な用語を含む)は、本発明の実施形態が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。一般に使用される辞書において定義されるような用語は、関連技術の文脈におけるそれらの意味と一貫する意味を有するように解釈されるべきであり、本明細書においてそうであると明確に定義されない限り、理想化された、または過剰に形式的な意味において解釈されないということが、さらに理解されるであろう。
【0040】
[00047]本開示の要約は、読者が技術的な開示の本質を素早く確認できることを要約に求める、37C.F.R.§1.72(b)に準拠して提供される。要約は、以下の特許請求の範囲または意味を解釈する、または限定するために使用されるのではないという理解を有して提出される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御入力(106)、ギガヘルツ(GHz)信号出力(107)、および複数の周波数制御された信号を提供する周波数制御された出力(108)を有する信号源(105)と、
前記GHz信号出力と前記制御入力との間に結合された制御ループ(146)であって、
(i)周波数分割された信号を生成するために、前記GHz信号出力に結合された周波数分割器(110)、ならびに
(ii)前記周波数分割器の出力に結合された第1の入力(116)、デジタル制御信号を受信するための第2の入力(117)、基準周波数信号を受信するための第3の入力(118)、および、前記信号源の前記制御入力に結合されたロックされた出力(119)であって、前記デジタル制御信号によって周波数掃引された、または周波数ホップされた周波数ロックされた出力信号を提供するロックされた出力(119)を有する位相ロックループ(PLL)(115)
を含む制御ループ(146)と、
前記デジタル制御信号を前記PLLの前記第2の入力に提供するための制御ユニット(130)と、
前記信号源の前記周波数制御された出力に結合された周波数乗算器(127)であって、複数のミリ波周波数を出力する周波数乗算器と、
前記複数のミリ波周波数を、応答信号を送られることになる表面(151)に送信するための、かつ前記表面から反射信号を受信するための少なくとも1つのアンテナ(134)と、
前記表面からの前記反射ミリ波信号と前記複数のミリ波周波数とを混合するための混合器(140)であって、混合出力を提供する混合器と、
前記混合出力から、前記表面に関連した少なくとも1つのパラメータを判定するために、前記混合器の出力に結合された信号処理回路(165)と
を含む超広帯域(UWB)ミリメートル(ミリ)波レーダーシステム(100)。
【請求項2】
前記制御ループ(146)が、前記PLL出力(119)と前記信号源の前記制御入力(106)との間に接続された第1の増幅器(125)であって、増幅されたPLL出力信号を生成するために前記周波数ロックされた出力信号を増幅するための第1の増幅器をさらに含む請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記PLL(115)と前記第1の増幅器との間に結合されたローパスフィルタ(120)をさらに含む請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記信号源(105)が電圧制御発振器(VCO)を含む請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記周波数分割器(110)がプリスケーラを含む請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記PLLの前記第3の入力(118)に結合されており、前記基準周波数信号を前記PLLに提供する基準周波数源(122)であって、水晶発振器、または内部のPLLロックされたクロックに一体化された発振器を含む基準周波数源をさらに含む請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記混合器(140)と前記信号処理回路(165)との間に結合されたローパスフィルタ(149)であって、前記複数のミリ波周波数と、前記反射ミリ波信号のうちの対応する1つとの間の差信号を、選択的に通すローパスフィルタをさらに含む請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
対象の表面までのレベルまたは距離を判定するための周波数変調UWBミリメートル波レーダー方法であって、
複数の離散した、ステップされたまたはホップされた周波数ミリ波レーダー信号を前記対象の前記表面に送信するステップであって、前記複数のステップされたまたはホップされた周波数ミリ波レーダー信号の帯域幅が>2GHzである、送信するステップと、
時間シーケンスにおいて前記表面から反射された、反射ミリ波レーダー信号を受信するステップと、
前記複数の離散した、ステップされたまたはホップされた周波数ミリ波レーダー信号、および前記反射ミリ波レーダー信号のうちのその対応する1つに基づいて、前記レベルまたは距離を判定するステップと
を含む方法。
【請求項9】
前記帯域幅が≧4.0GHzである請求項8に記載の方法。
【請求項10】
デジタル制御されたPLLが、前記帯域幅にわたって周波数掃引を制御する請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記判定するステップが、前記複数の離散した、ステップされたまたはホップされた周波数ミリ波レーダー信号と、前記反射ミリ波レーダー信号のうちのその対応する1つとの間の周波数の差に基づく請求項8に記載の方法。
【請求項12】
タンクまたは容器の中の液体について、前記レベルを判定するステップを含む請求項8に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate


【公表番号】特表2013−510295(P2013−510295A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−536932(P2012−536932)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/054010
【国際公開番号】WO2011/056526
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】