説明

デジタル化されたビデオ信号における画像ジッタの防止

【課題】 デジタルビデオ信号の画像ジッタを防止すること。
【解決手段】 本発明は、アナログ入力信号からデジタルビデオ信号を生成する方法を提案する。その方法は、アナログ入力ビデオ信号が、規格と完全に対応しないとき、デジタル化されたビデオ信号における画像ジッタを防止する。
本発明によると、方法は、
信号源のタイプを検出し(1)、
信号源のタイプが、規格外である場合、エラー状態の存在を検出し(2)、
アナログ入力ビデオ信号をデジタルビデオ信号に変換し(3)、
エラー状態が存在する場合、デジタル化されたビデオ信号のエラーになりがちな部分を代わりの信号部分と置き換え(4)、
信号源のタイプが、規格タイプである場合又はエラー状態が存在しない場合、デジタル化されたビデオ信号をそのままにしておく、というステップを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アナログ入力ビデオ信号からデジタルビデオ信号を生成する方法に関し、そのような方法を使用してアナログ入力ビデオ信号をデジタル化する手段を備える装置に関する。
【背景技術】
【0002】
HDDレコーダやDVDレコーダのような、デジタル記憶デバイスは、通常アナログビデオ入力及びアナログビデオ出力を有する。しかし、ビデオ信号は、MPEG圧縮などのような処理をするために、内部でデジタル化される。入力アナログビデオ信号は、デジタル処理又は圧縮が行われる前に、8、9又は10ビットのADC(アナログ・デジタル・コンバータ)を用いて、最初にデジタル化される。ADCは以下ビデオコンバータと呼ばれる。デジタル化されたビデオ信号は、一般に、ITU R−656規格に対応する。処理されたビデオ信号は、例えば、DVD、VCDディスク、又はDVHSテープのような記録媒体に記憶され得る。処理されたビデオ信号はまた、MPEGデコーディング後に、直接表示され得る。この目的のために、デジタル化されたビデオ信号は、DAC(デジタル・アナログ・コンバータ)を用いて、アナログビデオ信号に再び変換される。
【0003】
これに関連して、米国特許第6,300,985号明細書に、通常のアナログCVBS信号をシリアル・デジタル・インターフェース出力信号に変換する方法が記載されている。
【0004】
規格(PAL用のITU−R BT624、NTSC用のSMPTE 170M等)と対応するアナログ入力ビデオ信号があると機能するICを使用して、アナログ・デジタル・コンバータが、実行される。しかし、例えば、(一時停止や早送りのような)トリックモードのVCRからアナログ入力ビデオ信号が入ってくる場合、時にはアナログ入力ビデオ信号が規格と完全に対応しないこともある。これらの場合、例えば、フィールド(上位フィールド、下位フィールド)が取り違えられる。ADCのICは、それでもなおデジタルビデオ信号を生成するが、この信号は、エラーを含む。
【0005】
アナログ入力ビデオ信号が、NTSC及びPALのような規格と完全に対応する場合、テレビに表示されるエンコードされた及びデコードされたビデオ信号は、正常である。これは、インタレースされたフィールドシーケンスが、正しく表示され、画像のジッタがないことを意味する。
【0006】
しかし、アナログ入力ビデオ信号が、ビデオ規格に完全に対応しないとき、デジタル化されたビデオ信号は、不完全になり、第1のフィールド及び第2のフィールドが誤ったシーケンスで表示されるとき、ジッタのある画像のような欠陥が生じる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、アナログ入力ビデオ信号が、規格と完全に対応しない場合に、デジタル化されたビデオ信号の画像ジッタを防ぎ、アナログ入力ビデオ信号からデジタルビデオ信号を生成する方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、この目的は、アナログ入力ビデオ信号からデジタルビデオ信号を生成する方法により達成され、その方法は、
信号源のタイプを検出し、
信号源のタイプが、規格外のタイプである場合、エラー状態の存在を検出し、
アナログ入力ビデオ信号をデジタルビデオ信号に変換し、
エラー状態が存在する場合に、デジタル化されたビデオ信号のエラーが起こりがちな部分を代わりの信号部分に置き換え、
信号源のタイプが、規格タイプの場合又はエラー状態が存在しない場合には、デジタル化されたビデオ信号をそのままにしておく、
というステップを含む。
【0009】
アナログ入力ビデオ信号をデジタル化する前に、その信号が、規格外のタイプの発信源、例えばVCRから入ってくるかどうかが判断される。テレビ放送局又はDVDから信号を受信するならば、当然エラーのないことが期待される。つまり、規格外の信号源が、エラーの起こりそうな状態にあるならば、エラー状態の存在がチェックされる。例えば、VCRに起こり得るエラー状態は、一時停止又は早送り、巻戻しのような、トリックモードである。そのようなエラー状態が存在するならば、デジタル化されたビデオ信号のエラーが起こりがちな部分は、代わりの信号部分と置き換えられる。例えば、CVBS信号を配信するトリックモードのVCRに関して、デジタル化された(ITU656)ビデオ信号内の特に第1/第2のフィールドに関する情報が、アナログ入力ビデオ信号の規格外のタイミング信号により、妨げられることがわかる。フィールド情報を修正するために、所定のプレースホルダが、デジタル化されたビデオ信号に挿入される。この所定のプレースホルダは、ほとんどの場合又は全ての場合において、誤りのないように決められる。好ましくは、安定したタイミングを有するビデオコンバータの内部信号が、フィールドビットを置き換えるために使用される。この目的のために、好ましくは、フィールド全体が、決められた数のライン分だけ、シフトされる。この方法を異なる規格外のタイプの信号源に適合するため、決められた数のラインが、ユーザにより又は自動的に調整される。信号源のタイプが規格タイプである場合、又はエラー状態が存在しない場合、デジタル化されたビデオ信号は、そのままにされる。「安全な」アナログ入力ビデオ信号、つまり、おそらくエラーがないであろう信号には、このような置き換えが予想外のエラーを引き起こし得るので、置き換えを行う必要がない。上述のステップが、好ましくは、絶えず繰り返される。
【0010】
本発明は、例えば、トリックモードのVCRからのような、わずかにひずみのあるアナログ入力ビデオ入力信号の場合でさえ、結果として生じるデジタルビデオ信号にエラーがないという利点を有する。もちろん、本発明は、信号源としてVCRに限定されるわけではない。記録媒体としてテープを使用する、例えば、ビデオカメラ又は規格外のアナログビデオ信号を配信する他のデバイスのような他のタイプの発信源にも同様に適用できる。
【0011】
好ましくは、本発明による方法は、デジタルビデオ信号を受信する及び/又は記録する装置で使用され、その装置は、アナログビデオ信号を受信する入力と、受信したアナログビデオ信号をデジタル化する手段とを備える。
【0012】
本発明は、よりよく理解するために、図を参考にして以下の説明の記載において、より詳細に説明される。本発明は、典型的な実施形態に限定されるのではなく、本発明の範囲に反することなく、特定の特徴もまた、便宜上、組み合わされ、及び/又は変更され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1aでは、垂直タイミング(Vタイミング)の瞬間における、誤りのない等化前のパルス、鋸歯状パルス及び等化後のパルスを有する、通常のCVBSアナログビデオ信号が示される。この信号の拡大部分が、図1bに示される。
【0014】
ゆがんだアナログビデオ信号が、図2aに示される。図2bは、この信号の拡大部分を示す。この実施例では、信号は、トリックモード、例えば、一時停止又は早送り/巻戻しモードで作動するVCRから生じる。このような信号には、たいてい欠陥があり、規格外のライン長又は規格外の垂直同期信号のような複数のゆがみを示す。このことは、VCRがトリックモードのとき、出力CVBS信号のVタイミングが、規格外になるということを意味する。この場合、ビデオコンバータは、H(水平)及びVタイミングから適切なフィールド信号を生成できず、結果として生じるデジタルビデオ信号がジッタになる。図2の実施例では、約4ラインの遅延が、等化前パルスと鋸歯状パルスとの間にある。この追加的な遅延は、フィールド信号の生成を妨げる。
【0015】
このようなジッタのあるデジタルビデオ信号が、図3aに示される。これまでのように、図3bは、この信号の拡大部分を示す。描かれているのは、トリックモード(一時停止)中のフィールド信号(下位又は上位、イーブン又はオッドとも呼ばれる)と、通常モードのフィールド信号である。見て分かるとおり、フィールド信号が低いレベルの周期の継続時間Tでは、通常モードの期間とトリックモードの期間が同じである。しかし、フィールド信号が高いレベルの周期の継続期間では、トリックモードの期間が、遅延Δにより変化する。この特定の実施例では、下位フィールドの開始部分が、3ラインの遅延に対応する約180μsだけシフトされる。従って、テレビ画面の画像の下位フィールドも、通常より3ライン遅く表示される。図では、フィールド信号の立下りが、トリガtrとして使用されている。
【0016】
ジッタのあるビデオ信号を処理するため、第1のステップ1において、信号源のタイプが検出される。不要な又は誤った動作を避けるため、ビデオ信号の変更は、A/V入力モードでのみ行われる。VCRと他のタイプの発信源とを区別する一つの可能性は、ビデオ信号のタイムベースを分析することである。VCR信号は、安定しないタイムベースを有し、テレビ局又はDVDプレーヤーから入って来る信号は、安定するタイムベースを有するので、この特徴が、信号源を検出することに利用される。入力信号が、安定しないタイムベースを有する場合、VCRから受信したものとみなされる。
【0017】
アナログ入力ビデオ信号が、VCRから受信された場合、第2のステップ2において、そのVCRがエラー状態かどうか、つまり、エラーを引き起こし易いトリックモードのような状態であるかどうかが分析される。たいていのVCRでは、トリックモードにおいて、メイン・シグナル・プロセッサにより、Vsync(垂直同期)が挿入される。一般に、この挿入されたVsyncの周波数は、規格外である。このことは、Vsyncの周波数が特定領域の範囲外と決定されれば、VCRはトリックモードであるということを意味する。
【0018】
次のステップ3では、アナログ入力ビデオ信号が、デジタル化される。アナログ入力ビデオ信号がVCRから受信されない場合、又は信号が通常モードで作動しているVCRから受信される場合、デジタル化3の後、デジタル化されたビデオ信号は、修正を行う必要がないので、変更されない。実際、不要な修正は、所望しないエラーを生み出してしまう。しかし、もし入力信号がトリックモードで作動しているVCRから入って来ているならば、デジタル化3の後、更なるステップ4において、デジタル化された信号のエラーになりがちな部分を、代わりの信号部分と置き換える。
【0019】
ITU656の規格によれば、SAV/EAVのヘッダのビット6が、フィールドを示す。
【表1】

【0020】
ビデオコンバータの多くは、安定したタイミングを有する内部信号(例えばVgate)を提供する。この信号は、SAV/EAVのヘッダのフィールドビットを置き換えることに使用される。この置き換えは、ビデオコンバータのレジスタのセッティングを変更することにより行われる。
【0021】
最終ステップ5では、デジタル化されたビデオ信号が、MPEGコーディングなどのような、更なる処理に送り出される。上記のステップが、好ましくは絶えず繰り返される。
【0022】
フィールドビットを置き換えるということは、好ましくは、一定数のラインの分だけ、例えば3ラインだけ、フィールド全体をシフトすることを意味する。内部信号の値(Vgate)は、通常、プログラム可能である。従って、信号は、安定するようにプログラムされ得る。例えば、信号が、1ライン分だけ遅延されてもよい。信号の開始点は、上位から下位への移行である。上記の実施例の約180μsの遅延では、3ライン分だけ逆シフトが行われている。
【0023】
好ましくは、画像ジッタを防止するこの方法を使用するデバイスは、ユーザにより調整が可能である。ユーザは、ジッタがなくなるまで、例えば、3、4又は5ラインというように、異なる数のライン分だけ、遅延を調整し得る。一つのアナログ入力ビデオ信号の発信源だけが使用される場合でも、例えば、発信源が他のデバイスに記録されたテープを使用する場合でも、異なる遅延値は、都合が良い。このような場合、より大きな遅延値が、ジッタを低減するために必要とされ得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】通常のCVBSアナログビデオ信号を示す。
【図2】トリックモードのVCRによる、ゆがんだアナログビデオ信号出力を示す。
【図3】トリックモードにより生じたジッタのあるデジタルビデオ信号を示す。
【図4】本発明による方法のフローチャートを示す。
【符号の説明】
【0025】
1 信号源の検出
2 エラー状態の検出
3 ビデオ信号のデジタル化
4 デジタル化されたビデオ信号の修正
5 デジタル化されたビデオ信号の処理

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナログ入力ビデオ信号からデジタルビデオ信号を生成する方法であって、
信号源のタイプを検出し(1)、
前記信号源のタイプが、規格外である場合、エラー状態の存在を検出し(2)、
前記アナログ入力ビデオ信号をデジタルビデオ信号に変換し(3)、
エラー状態が存在する場合、デジタル化されたビデオ信号のエラーになりがちな部分を代わりの信号部分と置き換え(4)、
前記信号源のタイプが規格タイプである場合又はエラー状態が存在しない場合、前記デジタル化されたビデオ信号をそのままにしておく、
というステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記規格外のタイプの信号源が、テープの再生又は記録用の装置であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記エラー状態は、前記信号源のトリックモードであることを特徴とする請求項1または2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記アナログ入力ビデオ信号が、CVBS信号であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記デジタル化されたビデオ信号が、ITU656信号であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記デジタル化されたビデオ信号のエラーになりがちな部分が、ヘッダのフィールドビットであることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
安定したタイミングを有するビデオコンバータの内部信号が、前記フィールドビットを置き換えることに利用されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記フィールドビットを置き換えるために、前記フィールド全体が、決められた数のライン分だけシフトされることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記決められた数のラインが、調節可能であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
アナログビデオ信号を受信するための入力と、受信したアナログビデオ信号をデジタル化する手段とを備える、デジタルビデオ信号を受信及び/又は記録する装置であって、
前記受信したアナログビデオ信号からデジタルビデオ信号を生成する請求項1から9のいずれか一項に記載の方法を実行することを特徴とする装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−54862(P2006−54862A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−207081(P2005−207081)
【出願日】平成17年7月15日(2005.7.15)
【出願人】(501263810)トムソン ライセンシング (2,848)
【氏名又は名称原語表記】Thomson Licensing 
【Fターム(参考)】