説明

デジタル秤用フィーダ及びそれを備えたデジタル秤

【課題】 デジタル秤用フィーダにおける振動の時間的変化に拘わらず、被計量物の搬送量を高精度に推定することができるデジタル秤用フィーダ及びそれを備えたデジタル秤を提供する。
【解決手段】 振幅検出手段である歪み検出部材3は、振動装置2によって生じるフィーダパン1の振動振幅aを検出する(ステップS104)。制御部41は、搬送量演算手段41bとして機能し、歪み検出部材3によって検出されたフィーダパン1の振動振幅aの時間的変化を積分して被計量物の推定搬送量Σを演算する(ステップS108)。さらに、制御部41は、制御手段41aとして機能し、推定搬送量Σに基づいて振動装置2の駆動振幅及び駆動時間の少なくとも何れか一方を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル秤用フィーダ及びそれを備えたデジタル秤に関し、特に、被計量物が載置されるフィーダパンを振動装置により振動させることで被計量物を搬送するデジタル秤用フィーダ及びそれを備えたデジタル秤に関する。
【背景技術】
【0002】
組合せ秤等のデジタル秤に設けられるデジタル秤用フィーダにおいては、振動装置によりフィーダパンを振動させる振動の振幅又は駆動時間を予め設定することにより、所定の供給量が搬送されるように被計量物を供給している。即ち、被計量物の供給量を変更する場合には、改めて、フィーダの振動の振幅又は駆動時間を設定し直している。
【0003】
このような被計量物の供給量の変更時においてフィーダの振動の振幅又は駆動時間を再設定するための指標として、特許文献1のようにフィーダによる被計量物の供給量を推定する構成が公知となっている。即ち、特許文献1においては、フィーダパン上の被計量物を計量する手段が設けられており、供給量を振動振幅の設定値、駆動時間及びフィーダパン上の被計量物の重量から推定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−227717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、フィーダパンの振動振幅は、被計量物の供給量等によって時間的に変化し、一定値とはならないため、特許文献1のような推定方法は誤差が大きい。さらに、特許文献1においては、フィーダパン上の被計量物の重量を計量し、これに基づいて供給量を推定しているが、フィーダパン上の被計量物の重量を計量する最中もフィーダパンには上流の供給装置から被計量物が逐次供給されるため、フィーダパンの振動成分としてフィーダパンに供給される被計量物による振動が加えられ、フィーダパン上の被計量物の重量を高精度に計量することができない。従って、このようなフィーダパン上の被計量物の重量を用いて被計量物の供給量を推定する方法は高い精度を保持することができない。
【0006】
本発明は、以上のような課題を解決すべくなされたものであり、デジタル秤用フィーダにおける振動の時間的変化に拘わらず、被計量物の搬送量を高精度に推定することができるデジタル秤用フィーダ及びそれを備えたデジタル秤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るデジタル秤用フィーダは、被計量物が載置されるフィーダパンと、前記フィーダパンを振動させる振動装置と、前記振動装置を制御する制御手段とを備え、前記制御手段が前記振動装置を制御して前記フィーダパン上の被計量物を搬送するデジタル秤用フィーダであって、前記振動装置によって生じる前記フィーダパンの振動振幅を検出する振幅検出手段と、前記振動振幅の時間的変化を積分して被計量物の推定搬送量を演算する搬送量演算手段と、を備え、前記制御手段は、前記推定搬送量に基づいて前記振動装置の駆動振幅及び駆動時間の少なくとも何れか一方を制御するように構成されている。
【0008】
上記構成を備えたデジタル秤用フィーダによれば、実際に生じるデジタル秤用フィーダの振動振幅を検出し、当該振動振幅の時間的変化を積分することにより被計量物の推定搬送量が演算されるため、デジタル秤用フィーダにおける振動の時間的変化に拘わらず、被計量物の搬送量を高精度に推定することができ、デジタル秤用フィーダの振動装置に対してきめ細かな駆動制御を行うことができる。
【0009】
前記搬送量演算手段は、前記振動振幅の時間的変化から近似式を演算し、当該近似式を積分して被計量物の推定搬送量を演算し、前記制御手段は、前記近似式の積分値に基づいて前記振動装置の駆動振幅及び駆動時間の少なくとも何れか一方を制御するように構成されてもよい。この構成によれば、振動振幅の時間的変化を近似した上で積分するため、推定搬送量の演算量を減らすことができる。しかも、振動振幅の時間的変化を近似した近似式の積分値に基づいて振動装置が制御される。例えば、搬送量を半分にするためには、同じ近似式において近似式の積分値が半分となるような積分時間が振動装置の駆動時間に設定されたり、同じ積分時間において近似式の積分値が半分となるような近似式に対応する振幅が振動装置の駆動振幅に設定されたりする。このように、近似式の積分値を用いて制御量を容易に設定することができ、振動装置の駆動制御を容易に行うことができる。
【0010】
さらに、デジタル秤用フィーダは、前記デジタル秤用フィーダによって搬送された被計量物を保持して排出する計量ホッパと、前記計量ホッパに保持されている被計量物の重量を検出する計量手段とを備えたデジタル秤で得られた被計量物の計量重量を記憶し且つ前記計量重量と前記推定搬送量との間の相関関係を予め記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された前記相関関係を用いて被計量物の推定搬送量から被計量物の推定搬送重量を演算する推定搬送重量演算手段と、前記推定搬送重量と前記計量重量との差を演算し、前記差が所定の許容値以上である場合に、前記相関関係を補正する補正手段とを備えてもよい。この構成によれば、被計量物の推定搬送量から相関関係を用いて演算される被計量物の推定搬送重量を計量ホッパにおいて実際に計量された計量重量と比較し、推定搬送重量と計量重量との間のずれが大きくなった場合に、相関関係を補正するため、実際のフィーダの振動状況に応じて推定される推定搬送重量を実際の計量重量に容易に近づけることができる。従って、より高精度にフィーダの駆動制御を行うことができる。
【0011】
前記相関関係は、所定の比例係数を有する比例関係であり、前記補正手段は、前記差が所定の許容値以上である場合に、前記比例係数を補正するように構成されてもよい。これにより、推定搬送重量と実際の計量重量との相関関係が所定の比例係数を有する比例関係として設定されるため、推定搬送重量を簡単に演算することができ、比例係数を容易に補正することができる。
【0012】
本発明に係るデジタル秤は、上記構成のデジタル秤用フィーダと、前記デジタル秤用フィーダによって搬送された被計量物を保持して排出する計量ホッパと、前記計量ホッパに保持されている被計量物の重量を検出する計量手段と、を備えている。本発明のデジタル秤によれば、上記構成を備えたデジタル秤用フィーダを備えているため、デジタル秤用フィーダにおける振動の時間的変化に拘わらず、デジタル秤用フィーダの振動装置に対してきめ細かな駆動制御をより高精度に行うことができる。
【0013】
以下、特許請求の範囲及び明細書の記載に用いられる用語の定義について説明する。
【0014】
特許請求の範囲及び明細書にいう「計量ホッパ」とは、計量手段によって被計量物を含む計量ホッパの重量が計量可能なホッパ機構を意味する。
【0015】
特許請求の範囲及び明細書にいう「計量手段」は、計量ホッパの重量を検出する重量センサと、この重量センサで検出された重量に基づいて計量ホッパに保持されている被計量物の重量を演算する(計量する)演算手段と、この演算手段で演算された被計量物の重量を記憶する記憶手段とを含んだ概念である。
【発明の効果】
【0016】
本発明は以上に説明したように構成され、デジタル秤用フィーダにおける振動の時間的変化に拘わらず、被計量物の搬送量を高精度に推定することができ、デジタル秤用フィーダの振動装置に対してきめ細かな駆動制御を行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係るデジタル秤用フィーダを示す斜視図である。
【図2】図1に示すデジタル秤用フィーダが適用されたデジタル秤の概略構成を側方から見た断面で示す断面図である。
【図3】図2に示すデジタル秤の制御系統の概略構成を示すブロック図である。
【図4】図1に示すデジタル秤用フィーダの制御動作を示すフローチャートである。
【図5】図1に示すデジタル秤用フィーダの駆動補正処理における制御動作を示すフローチャートである。
【図6】本実施形態のフィーダを用い、フィーダパン上に被計量物を載置した状態で振動装置を駆動させた際の駆動信号及び検出波形を対比して示すグラフである。
【図7】本実施形態のフィーダを用い、振動装置を駆動させながらフィーダパン上に被計量物を供給した際の駆動信号及び検出波形を対比して示すグラフである。
【図8】図7に示す検出波形に、対応する近似曲線を重ねたものを部分的に拡大して示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。図1は本発明の一実施形態に係るデジタル秤用フィーダを示す斜視図である。
【0019】
本実施形態に係るデジタル秤用フィーダ10は、図1に示すように、被計量物が載置されるフィーダパン1と、フィーダパン1を振動させる振動装置2とを備えている。フィーダパン1は、例えばトラフ状に形成されている。振動装置2は、デジタル秤(図示せず)に固定される固定フレーム21と、フィーダパン1が固定され、固定フレーム21に対し上下方向及び搬送方向(前後方向)に揺動可能な可動フレーム22と、固定フレーム21及び可動フレーム22の間に設けられ、可動フレーム22を固定フレーム21に対し振動させる加振器23と、両端部が固定フレーム21及び可動フレーム22のそれぞれに固定され、固定フレーム21に対する可動フレーム22の振動に応じて弾性変形可能な弾性部材24A,24Bとを有している。また、振動装置2の弾性部材24A,24Bの何れか一方(図1においては前方の弾性部材24A)には、当該弾性部材の歪みを検出する歪み検出部材3が設けられている。
【0020】
固定フレーム21は、防振ばね25を介してデジタル秤に固定される。弾性部材24A,24Bは、例えば、一対の板ばね24A,24Bで構成されている。固定フレーム21の前端部には鉛直方向に延びる一方の板ばね24Aの基端部が固定されている。固定フレーム21の後端部には後方に傾斜して上方に延びる他方の板ばね24Bの基端部が固定されている。そして、可動フレーム22の前端部及び後端部がそれぞれ一方の板ばね24Aの上端部及び他方の板ばね24Bの上端部に固定されている。可動フレーム22は水平に延在するように固定されている。可動フレーム22の前端部には下方に延びるように被吸着板固定部22aが形成されている。この被吸着板固定部22aには、鉄等の磁力によって引き寄せられる材料で形成された被吸着板(アーマチュア)27が固定されている。加振器23は、マグネットコイルで構成されており、被吸着板27に対向するように固定フレーム21に配設されている。そして、可動フレーム22にフィーダパン1が前後方向に延在するように取り付けられている。フィーダパン1は取付金具26によって可動フレーム22に着脱自在に取り付けられている。これにより、加振器23がONされると、可動フレーム22に固定された被吸着板27が加振器23に吸引されるとともに一対の板ばね24A,24Bが後方に曲がる。これにより、フィーダパン1が初期位置から後方かつ下方に移動する。そして、加振器23がOFFされると、可動フレーム22に固定された被吸着板27が加振器23の吸引力から解放されるとともに一対の板ばね24A,24Bがその弾性反発力により前方に曲がる。これにより、フィーダパン1が下方位置から初期位置を越えて前方かつ上方に移動する。それ故、加振器23がON−OFFされると、フィーダパン1が上下方向及び前後方向に振動される。この振動により、フィーダパン1上の被計量物が前方に搬送される。歪み検出部材3は、例えば、板ばね24Aに貼着されたピエゾフィルム等の圧電素子により構成され、板ばね24Aの弾性変形量を検出する。即ち、歪み検出部材3が弾性部材である板ばね24Aの弾性変形に応じて歪むことにより、歪み検出部材3は、当該歪みに応じた電圧を出力するため、後述する制御装置4は、この出力を検出することで弾性変形量を検出する。このように、制御装置4及び歪み検出部材3は、弾性部材24の弾性変形量を検出することにより、フィーダパン1の振動振幅を検出する振幅検出手段として機能する。なお、振幅検出手段は、歪み検出部材を用いる構成に限られず、例えば、レーザー変位計、ホール素子、渦電流計等を用いてもよい。
【0021】
図2は図1に示すデジタル秤用フィーダが適用されたデジタル秤の概略構成を側方から見た断面で示す断面図である。また、図3は図2に示すデジタル秤の制御系統の概略構成を示すブロック図である。本実施形態におけるデジタル秤は、被計量物が自動的に供給され、組合せ演算の後、排出組合せに選ばれた被計量物が自動的に排出される全自動式の組合せ秤である。なお、本発明のデジタル秤用フィーダ10が適用されるデジタル秤は、デジタル秤用フィーダ10を用いて被計量物を供給し得るデジタル秤である限り、これに限られない。
【0022】
本実施形態のデジタル秤は、複数(例えば14個)の計量ホッパ5を有している。これらの複数の計量ホッパ5は、例えば、円状(円周上)に配置されているが、他の態様(楕円状、直線状等)に配置されていても構わない。複数の計量ホッパ5は、上方から供給された被計量物を一時的に保持し、その下部に設けられた開閉可能なゲート51を開放することにより、被計量物を下方へ排出する。複数の計量ホッパ5のそれぞれは、当該計量ホッパ5の重量を検出する重量センサ6に支持されている。重量センサ6には、例えば、ロードセルが用いられる。重量センサ6は、制御装置4に接続されており、重量センサ6で計量された重量は、制御装置4に送信される。ここで、計量ホッパ5の重量は、既知であるので、制御装置4は、重量センサ6によって検出された重量から計量ホッパ5の重量を差し引くことにより当該計量ホッパ5に保持されている被計量物の重量を計量する。このように、本実施形態における計量ホッパ5の重量を検出する重量センサ6と、重量センサ6で検出された重量に基づいて計量ホッパ5に保持されている被計量物の重量を演算する演算手段として機能する制御装置4とは、計量手段を構成している。
【0023】
なお、計量ホッパ5とは、計量手段によって被計量物を含む計量ホッパ5の重量が計量可能なホッパ機構を意味する。即ち、デジタル秤は、計量ホッパ5の下流にメモリホッパが配置されるように構成されてもよい。この場合、メモリホッパで保持される被計量物の重量が、対応する(上流の)計量ホッパ5で計量され、制御装置4において対応付けて記憶される。
【0024】
計量ホッパ5の上流には、供給ホッパ7が設けられている。本実施形態においては、複数の計量ホッパ5の上方に複数の供給ホッパ7がそれぞれ配設されている。供給ホッパ7は、上方から供給された被計量物を一時的に保持し、その下部に設けられた開閉可能なゲート71を開放することにより、被計量物を下方へ排出する。
【0025】
供給ホッパ7の上流には、デジタル秤用フィーダ10を含む供給部50が設けられている。供給部50は、組合せ秤上部の中央に外部の供給装置100から供給される被計量物を振動によって放射状に分散させるメインフィーダ11と、メインフィーダ11から送られてきた被計量物を振動によって送り込む複数の直進フィーダであるデジタル秤用フィーダ10とを有している。メインフィーダ11は、外部の供給装置100の供給口の下方に配設された円錐形のトップコーン111と、トップコーン111を上下方向に振動させる加振器112と、を有している。加振器112は、例えば、電磁石のON−OFFを連続的に切り替えることによりトップコーン111を振動させる。また、複数のフィーダ10は、供給ホッパ7に対応して設けられており、複数のフィーダ10により送り込まれた被計量物は、対応する供給ホッパ7に供給される。このように、本実施形態の組合せ秤には、フィーダ10、供給ホッパ7、計量ホッパ5及び重量センサ6を一組とするヘッド部が複数組設けられている。
【0026】
計量ホッパ5の下流には、後述する排出組合せに選ばれた1又は複数の計量ホッパ5に保持されている被計量物を集合させつつ機外へ排出する集合排出部8が配設されている。集合排出部8は、逆円錐状の集合シュート81と、集合シュート81の下方に配設された排出シュート82と、を有している。ゲート51を通じて1又は複数の計量ホッパ5から排出された被計量物は、集合シュート81を滑落することによって集合され、集合シュート81の下方に設けられた排出シュート82を通じて機外の包装機(図示せず)へと排出される。なお、集合排出部8は、排出シュート82の位置にホッパが配設された構成としてもよい。
【0027】
本実施形態において、制御装置4は、被計量物が保持されている計量ホッパ5のうちから、重量センサ6及び制御装置4を含む計量手段で計量された被計量物の重量の1以上の組合せの合計が目標組合せ重量を含む所定範囲内の重量となる計量ホッパ5の組合せを、被計量物を排出すべき計量ホッパ5の組合せ(以下、排出組合せという)として選択する組合せ演算を行うように構成されている。
【0028】
制御装置4は、さらに、各供給ホッパ7のゲート71及び各計量ホッパ5のゲート51の開閉制御並びに供給部50の供給制御を行っている。また、本実施形態の組合せ秤は、種々の操作設定を行い、当該設定を表示可能な操作設定表示装置9を備えている。そして、この制御装置4は、デジタル秤用フィーダの振動装置2を制御する制御手段41aとしても機能する。
【0029】
また、本実施形態の組合せ秤は、図2及び図3に示すように、外部の供給装置100からメインフィーダ11のトップコーン111への被計量物の供給状況を検出する供給レベル検出器12を備えている。供給レベル検出器12及び外部の供給装置100は、それぞれ制御装置4に接続されており、制御装置4は、供給レベル検出器12で検出された被計量物の供給状況に応じて被計量物の供給量を変化させるように外部の供給装置100を制御する。外部の供給装置100は、例えば、ベルトコンベヤでもよいし、トラフ状の供給パンを振動させるものでもよい。供給レベル検出器12は、例えば、トップコーン111上の被計量物の重量を検出する重量センサ、同じく層厚を検出するレベルセンサ等で構成することができる。
【0030】
図3に示すように、制御装置4は、例えば、制御部41及び記憶部42を有する制御基板(図示せず)で構成されている。制御装置4は、例えば、マイクロコンピュータを備えており、制御部41には、例えばこのマイクロコンピュータのCPUが用いられる。また、記憶部42には例えばこのマイクロコンピュータの内部メモリが用いられる。制御部41と記憶部42とは相互に接続されている。記憶部42には制御プログラムが格納されている。さらに、記憶部42は各種データを記憶する。また、制御部41は、記憶部42に格納された制御プログラムを読み出して実行することにより、演算等の処理や制御を行う。具体的には、制御部41は、歪み検出部材3及び重量センサ6から信号を受け取り、これらの信号に基づいて演算を行い、これらの演算結果を記憶部42に記憶する。また、これらの信号に基づいて、振動装置2に制御信号を送信して制御する。換言すると、制御部41は、制御手段41a、搬送量演算手段41b、推定搬送重量演算手段41c、補正手段41dとして機能する。
【0031】
なお、本実施形態においては1つの制御基板で制御装置4を構成しているが、本発明は同様の制御を行い得る限りこれに限られない。即ち、例えば、各種制御に応じて複数の制御基板を設け、その複数の制御基板で制御装置4を構成してもよい。また、本実施形態において、制御装置4は、デジタル秤用フィーダ10が設けられるデジタル秤の制御装置4として構成しているが、デジタル秤の制御装置とは別にフィーダ10専用の制御装置を設けることとしてもよい。さらに、例えば、パソコン等を外部の制御装置として接続することにより当該外部の制御装置でフィーダ10を制御することとしてもよい。また、図3においては、1組のヘッド部のみが示されているが、複数のヘッド部を備えたデジタル秤においては、複数のヘッド部が制御装置4にそれぞれ接続されている。
【0032】
以下に、制御装置4の動作を順に説明する。記憶部42には、後述する推定搬送量Σと推定搬送重量Wkとの間の相関関係が予め記憶される。本実施形態における相関関係は比例関係であり、記憶部42には、所定の比例係数Kが記憶される。即ち、推定搬送重量Wkは、推定搬送量Σと比例係数Kとを掛けた値となる。
【0033】
フィーダ10を含むデジタル秤の起動後、制御装置4がデジタル秤の計量ホッパ5へ被計量物を供給するためのフィーダ駆動命令を受けると(ステップS101でYes)、制御部41は、制御手段41aとして機能し、振動装置2へ駆動信号を送り、フィーダパン1を振動させて被計量物の搬送を開始させる(ステップS102)。なお、フィーダ駆動命令は、デジタル秤の制御装置とフィーダ10の制御装置とが異なる場合には、デジタル秤の制御装置からフィーダ10の制御装置へ送られるフィーダ駆動信号であるが、デジタル秤の制御装置とフィーダ10の制御装置とが同一である本実施形態のような構成においては、制御プログラムにおける命令であってもよい。
【0034】
フィーダ10の駆動開始と同時に、制御部41は、内部タイマ等により駆動時間tをカウントする(ステップS103)。
【0035】
制御部41は、搬送量演算手段41bとして機能し、歪み検出部材3によって検出されたフィーダパン1の振動振幅aの時間的変化を積分して被計量物の推定搬送量を演算する。具体的には、まず、制御部41は、振幅検出手段である歪み検出部材3からフィーダ10の振動振幅aを検出し、駆動時間tと関連付けて記憶する(ステップS104)。
【0036】
フィーダ10の振動振幅aを検出した後、制御部41は、駆動時間tが目標駆動時間Tに達したか否かを判定する(ステップS105)。駆動時間tが目標駆動時間Tに達していない場合(ステップS105でNo)には、フィーダ10の駆動を継続し、同様に歪み検出部材3からフィーダ10の駆動振幅aを検出し、駆動時間tに対応付けて記憶する(ステップS104)。駆動時間tが目標駆動時間Tに達した場合(ステップS105でYes)には、制御部41は、振動装置2の駆動を停止させる(ステップS106)。
【0037】
そして、制御部41は、記憶部42に記憶されたフィーダ10の振動振幅aを積分する。本実施形態において、搬送量演算手段41bとして機能する制御部41は、振動振幅aの時間的変化から近似式Fを演算し(ステップS107)、当該近似式Fを積分して被計量物の推定搬送量Σを演算する(ステップS108)。
【0038】
例えば、近似式Fを駆動時間tに関する関数F=Vsin(2πtf)とすることができる。ここで、Vは、歪み検出部材3によって検出された振動振幅aの最大値であり、fは、振動装置2の駆動周波数である。振動装置2の駆動周波数は、オペレータが入力することとしてもよいし、振動装置2の定格値が予め設定されることとしてもよい。あるいは、別途振動装置2の駆動周波数を検出し、検出された値がfとして設定されることとしてもよい。
【0039】
本実施形態において、Vの値は、振動装置2の駆動信号の周期ごとに設定される。即ち、近似式Fにおいて2πft=2nπ(nは整数)となる時刻t=n/fごとに、異なるVの値が設定される。つまり、本実施形態における近似式Fは、振動装置2の駆動信号の周期ごとに設定される。
【0040】
この場合において、記憶部42には、近似式F=Vsin(2πtf)が予め記憶されている。制御部41は、ステップS104においてその周期内の複数時刻で検出された振動振幅aのうち、最大の値をその周期におけるVに設定する。従って、複数の近似式Fnは、以下のように示される。
F1=V1sin(2πft) ( 0<t<1/f)
F2=V2sin(2πft) (1/f<t<2/f)
F3=V3sin(2πft) (2/f<t<3/f)

Fn=Vnsin(2πft) ((n−1)/f<t<n/f)
制御部41は、このように設定された複数の近似式Fnを駆動時間tで積分して足し合わせることにより、被計量物の推定搬送量Σを演算する。即ち、制御部41は、推定搬送量Σ=∫F1・dt+∫F2・dt+…+∫Fn・dt+…を演算する。
【0041】
なお、記憶部42に記憶された一搬送サイクル(振動装置2の駆動信号がONした後、OFFするまでの間)において検出される振動振幅aのうち、最大の振幅を近似式FのVに設定し、振動装置2の駆動周波数をfに設定してもよい。
【0042】
また、近似式Fを積分する際、求める面積は、+側(搬送方向)のみ積算したものでも+側及び−側の両方を積算したものでも構わない。また、近似式Fの絶対値の1周期分を積分して2で割ったものでもよい。また、近似式Fは、上記に限られず、例えば最小二乗法等を用いて求められた式であってもよい。
【0043】
次回以降の被計量物の搬送において、制御部41は、制御手段41aとして機能し、推定搬送量Σに基づいて次回以降の振動装置2の駆動振幅及び駆動時間の少なくとも何れか一方を制御する。即ち、本実施形態における制御部41は、近似式Fの積分値に基づいて振動装置2の駆動振幅及び駆動時間の少なくとも何れか一方を制御するように構成する。
【0044】
上記構成を備えたデジタル秤用フィーダ10によれば、実際に生じるデジタル秤用フィーダ10の振動振幅aを検出し、当該振動振幅aの時間的変化を積分することにより被計量物の推定搬送量Σが演算されるため、デジタル秤用フィーダ10における振動の時間的変化に拘わらず、被計量物の搬送量を高精度に推定することができ、デジタル秤用フィーダ10の振動装置2に対してきめ細かな駆動制御を行うことができる。
【0045】
また、振動振幅aの時間的変化を近似した上で積分するため、推定搬送量Σの演算量を減らすことができる。しかも、振動振幅aの時間的変化を近似した近似式Fの積分値に基づいて振動装置2が制御される。例えば、搬送量を半分にするためには、同じ近似式Fにおいて近似式Fの積分値が半分となるような積分時間が振動装置2の駆動時間に設定されたり、同じ積分時間において近似式Fの積分値が半分となるような振幅が振動装置2の駆動振幅に設定されたりする。このように、近似式Fの積分値を用いて制御量を容易に設定することができ、振動装置2の駆動制御を容易に行うことができる。
【0046】
ここで、所定の駆動信号によって被計量物を搬送中のフィーダパン1を振動させた際の歪み検出部材3によって検出される波形の例について説明する。図6及び図7は、本実施形態のフィーダを用いて被計量物を搬送した際の駆動信号及び検出波形を対比して示すグラフである。また、図8は、図7に示す検出波形に、対応する近似曲線を重ねたものを部分的に拡大して示すグラフである。
【0047】
図6に示す例Aにおいては、被計量物400gをフィーダパン1上に載置した状態で振動装置2を一定の振幅で所定時間駆動させた際の歪み検出部材3の出力(ピエゾ出力)を示している。例Aにおいては、被計量物の搬送開始直後のフィーダ10の振動振幅から徐々に振動振幅が小さくなっている。
【0048】
また、図7に示す例Bにおいては、振動装置2を駆動させながら、フィーダパン1上に被計量物400gを供給した際の歪み検出部材3の出力(ピエゾ出力)を示している。例Bにおいては、被計量物がフィーダパン1上に落下した衝撃による振動成分が出力に加算されており、駆動時間によってフィーダ10の振動振幅が上下している。
【0049】
このように、何れの例においてもフィーダ10の振動振幅aは時間的に変化する。本実施形態においては、前述したように、実際に生じるデジタル秤用フィーダ10の振動振幅aを検出し、当該振動振幅aの時間的変化を積分することにより被計量物の推定搬送量Σが演算されるため、デジタル秤用フィーダ10における振動の時間的変化に拘わらず、被計量物の搬送量を高精度に推定することができ、デジタル秤用フィーダ10の振動装置2に対してきめ細かな駆動制御を行うことができる。しかも、図8に示すように、実際に得られた振動振幅aの時間的変化に対応する近似曲線を描く近似式Fを用いて推定搬送量Σを演算することにより、推定搬送量Σの演算量を減らすことができる。
【0050】
本実施形態において、制御部41は、推定搬送重量演算手段41cとして機能し、記憶部42に記憶された比例係数Kを用いて検出された推定搬送量Σから推定搬送重量Wkを演算する(ステップS109)。この演算によって得られた推定搬送重量Wkは、記憶部42に記憶される。
【0051】
本実施形態における制御部41は、ステップS109で得られた推定搬送重量Wkに基づいてデジタル秤用フィーダ10に対し、駆動補正処理を行う(ステップS110)。図5は図1に示すデジタル秤用フィーダの駆動補正処理における制御動作を示すフローチャートである。まず、デジタル秤用フィーダ10によって対応する計量ホッパ5に供給された被計量物の重量が重量センサ6で検出されることにより計量される(ステップS201)。計量が完了した後(ステップS201でYes)、当該計量された被計量物の重量値が、記憶部42に計量重量Wとして記憶される(ステップS202)。
【0052】
制御部41は、推定搬送重量Wkと計量重量Wとの差を演算し、この差が所定の許容値ε未満かどうかを判定する(ステップS203)。そして、その差が許容値ε以上である場合(ステップS203でNo)には、制御部41は、補正手段41dとして機能し、比例係数KをK’に補正する(ステップS204,S205)。具体的には、Wk/K=Σから補正後の比例係数K’=W/Σ=K・W/Wkを演算し(ステップS204)、補正後の比例係数K’が新たな比例係数Kとして記憶部42に記憶される(ステップS205)。
【0053】
係数補正の態様について、より具体的に説明する。ここでは、計量ホッパ5に保持される被計量物の目標重量が40gである場合を例示する。まず、サンプル計量として、デジタル秤用フィーダ10の推定搬送量がΣ=100となったときに、対応する重量ホッパ6によって計量された被計量物の計量重量がW=40gとなった場合、比例係数K=W/Σ=0.4が求められる。この比例係数K=0.4を用いて、デジタル秤の計量動作を開始する。本例においては、ステップS203における許容値ε=0.5とする。
【0054】
計量動作開始後、ある計量サイクルにおいて、フィーダ10の推定搬送量がΣ=100のままで、対応する重量ホッパ6によって計量された被計量物の計量重量がW’=42gとなった場合、推定搬送重量はWk=K・Σ=40gであるため、計量重量W’と推定搬送重量Wkとの差は、|W’−Wk|=2>εとなり、許容値εを超えてしまう。従って、制御部41は、比例係数KをK’=W’/Σ=0.42に補正する(ステップS204,S205)。次回の計量時において、フィーダ10の推定搬送量がΣ’=95となったときに、計量重量がW”=40.2gとなった場合、推定搬送重量はWk’=K’Σ’=39.9gであるため、計量重量W”と推定搬送重量Wk’との差は、|W”−Wk’|=0.3<εとなり、許容値ε内に収まる。従って、この場合は比例係数K=K’を補正することなく次回の計量を行う。
【0055】
このような構成によれば、推定搬送重量演算手段41cとして機能する制御部41で得られた推定搬送重量Wkを計量ホッパ5において実際に計量された計量重量Wと比較し、推定搬送重量Wkと計量重量Wとの間のずれが大きくなった場合に、相関関係を規定する比例係数Kを補正するため、実際のフィーダ10の振動状況に応じて推定される推定搬送重量Wkを実際の計量重量Wに容易に近づけることができる。従って、より高精度にフィーダ10の駆動制御を行うことができる。また、推定搬送重量Wkと実際の計量重量Wとの相関関係が比例係数Kを有する比例関係として設定されるため、推定搬送重量Wkを簡単に演算することができ、比例係数Kを容易に補正することができる。
【0056】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更、修正が可能である。例えば、推定搬送量Σの演算方法は、上記実施形態のように連続変数を積分する態様に限定されるものではなく、例えば振動振幅aの時間的変化を微小区間に分割して検出し、それらを足し合わせることによって演算する態様としてもよい。具体的には、ステップS104で検出した振動振幅aを足し合わせた値を推定搬送量Σとすることとしてもよい。あるいは、例えばステップS104で検出した振動振幅aに比例係数Kを掛けてその都度推定重量を求めた上で、当該推定重量を足し合わせた値を推定搬送量Σ(即ち、推定搬送重量Wk)とすることとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明のデジタル秤用フィーダ及びそれを備えたデジタル秤は、被計量物が載置されるフィーダパンを振動装置により振動させることで被計量物を搬送するデジタル秤用フィーダ及びデジタル秤等に有用である。
【符号の説明】
【0058】
1 フィーダパン
2 振動装置
3 歪み検出部材
4 制御装置
5 計量ホッパ
6 重量センサ(計量手段)
7 供給ホッパ
8 集合排出部
9 操作設定表示装置
10 デジタル秤用フィーダ
11 メインフィーダ
12 供給レベル検出器
21 固定フレーム
22 可動フレーム
23 加振器
24 弾性部材
25 防振ばね
26 取付金具
41 制御部(制御手段、搬送量演算手段、推定搬送重量演算手段、補正手段)
41a 制御手段
41b 搬送量演算手段
41c 推定搬送重量演算手段
41d 補正手段
42 記憶部
50 供給部
51 計量ホッパのゲート
71 供給ホッパのゲート
81 集合シュート
82 排出シュート
100 外部の供給装置
111 トップコーン
112 メインフィーダの加振器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被計量物が載置されるフィーダパンと、前記フィーダパンを振動させる振動装置と、前記振動装置を制御する制御手段とを備え、前記制御手段が前記振動装置を制御して前記フィーダパン上の被計量物を搬送するデジタル秤用フィーダであって、
前記振動装置によって生じる前記フィーダパンの振動振幅を検出する振幅検出手段と、
前記振動振幅の時間的変化を積分して被計量物の推定搬送量を演算する搬送量演算手段と、を備え、
前記制御手段は、前記推定搬送量に基づいて前記振動装置の駆動振幅及び駆動時間の少なくとも何れか一方を制御するデジタル秤用フィーダ。
【請求項2】
前記搬送量演算手段は、前記振動振幅の時間的変化から近似式を演算し、当該近似式を積分して被計量物の推定搬送量を演算し、
前記制御手段は、前記近似式の積分値に基づいて前記振動装置の駆動振幅及び駆動時間の少なくとも何れか一方を制御する請求項1に記載のデジタル秤用フィーダ。
【請求項3】
前記デジタル秤用フィーダによって搬送された被計量物を保持して排出する計量ホッパと、前記計量ホッパに保持されている被計量物の重量を検出する計量手段とを備えたデジタル秤で得られた被計量物の計量重量を記憶し且つ前記計量重量と前記推定搬送量との間の相関関係を予め記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された前記相関関係を用いて被計量物の推定搬送量から被計量物の推定搬送重量を演算する推定搬送重量演算手段と、
前記推定搬送重量と前記計量重量との差を演算し、前記差が所定の許容値以上である場合に、前記相関関係を補正する補正手段とを備えた請求項1に記載のデジタル秤用フィーダ。
【請求項4】
前記相関関係は、所定の比例係数を有する比例関係であり、
前記補正手段は、前記差が所定の許容値以上である場合に、前記比例係数を補正する請求項3に記載のデジタル秤用フィーダ。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のデジタル秤用フィーダと、
前記デジタル秤用フィーダによって搬送された被計量物を保持して排出する計量ホッパと、
前記計量ホッパに保持されている被計量物の重量を検出する計量手段と、を備えたデジタル秤。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−249590(P2010−249590A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−97673(P2009−97673)
【出願日】平成21年4月14日(2009.4.14)
【出願人】(000208444)大和製衡株式会社 (535)
【Fターム(参考)】