説明

デッキボードの支持構造

【課題】
シートレールを荷室床下収納部側へ延出した構成であるにもかかわらず、荷室床下収納部の収容容積を従来に比して大きくできるとともにデッキボードに補強部材が必要でなくなり、コスト低減を図ることができるデッキボードの支持構造を提供する。
【解決手段】
3列目シート70が摺動するロングスライドレール14を、荷室床下収納部56の上において、前後方向に延びるように架け渡す。ロングスライドレール14及び荷室床下収納部56の上部によりデッキボードを着脱自在に支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の荷室床下収納部を覆うデッキボードの支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の後部の荷室空間となる後方へ一対のシートレールを延出し、該シートレール上に後部座席シートを移動自在及び固定可能とした構成が公知である(特許文献1)。そして、後方へ延出された一対のシートレール間において、荷室床下収納部が位置するように配置されている。このような構成を採用すると、前記シートレールにより、後部座席を荷室床下収納部の上方にまで移動できるため、後部座席シートのレイアウトの幅が広がる利点がある。
【0003】
特許文献1では、荷室床下収納部を覆うトランクボード(デッキボードに相当する)が、一対のシートレール間において、前後方向に移動自在に配置された構成となっている。この構成により、トランクボードを前方に移動させることにより、荷室床下収納部の上方を開けることができ、反対に後方へ移動させることにより、前記荷室床下収納部を覆うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−120354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記の構成では、荷室床下収納部の車幅方向に隣接するフロアパネルにおいて、後方へ延出したシートレール全体が固定されている構成のため、荷室床下収納部の車幅方向の長さを大きくとれず、荷室床下収納部の収容容積が小さくなる問題がある。
【0006】
又、前記トランクボードを、荷室床下収納部を覆うように配置した場合、自重で下方へ撓まないように、補強部材(リンフォース)を備える必要がある。このため、トランクボードのコスト高となる問題がある。
【0007】
本発明の目的は、シートレールを荷室床下収納部側へ延出した構成であるにもかかわらず、荷室床下収納部の収容容積を従来に比して大きくできるとともにデッキボードに補強部材が必要でなくなり、コスト低減を図ることができるデッキボードの支持構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、車両のフロアパネルに荷室床下収納部を有し、前記荷室床下収納部を覆うデッキボードの支持構造において、座席シートが摺動するシートレールを、前記荷室床下収納部の上において、前後方向に延びるように架け渡し、前記シートレール及び前記荷室床下収納部の上部によりデッキボードを着脱自在に支持することを特徴とするデッキボードの支持構造を要旨としている。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1において、前記シートレールにより、前記荷室床下収納部の上部空間を複数に区画し、前記区画された複数の上部空間毎に、前記荷室床下収納部の上部及び前記シートレールに、複数のデッキボードをそれぞれ着脱自在に支持する支持部を設けたことを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項2において、前記支持部が、係止段部であることを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項2又は請求項3において、前記荷室床下収納部に架け渡した前記シートレールは、少なくとも一対を含み、前記シートレール間に、前記デッキボードの支持部が設けられ、該シートレール間において、デッキボードを着脱自在に支持することを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1乃至請求項4のうちいずれか1項において、前記シートレールには、前記荷室床下収納部を照らす照明手段が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、シートレールを荷室床下収納部側へ延出した構成であるにもかかわらず、荷室床下収納部の収容容積を従来に比して大きくできるとともにデッキボードに補強部材が必要でなくなり、コスト低減を図ることができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、荷室床下収納部上に配置されたシートレールにより、荷室床下収納部上部空間を複数に区画し、区画した上部空間にそれぞれデッキボードを配置できる。この結果、荷室床下収納部を単一の部材からなるデッキボードにより覆う場合に比してデッキボードに補強部材が必要でなくなり、コスト低減を図ることができる。又、荷室床下収納部内に小物の荷を収納する場合、或いは荷室床下収納部内から小物を取り出す場合、全てのデッキボードを支持部から取り外したり、取り付けする必要がなく、必要な箇所のデッキボードのみを支持部から取り外したり、取付するだけでよくなり、デッキボードの取り扱いが楽になる。
【0014】
請求項3の発明によれば、支持部を係止段部とすることにより、各デッキボードを着脱自在にすることができる。
請求項4の発明によれば、少なくとも一対のシートレール間において、配置されるデッキボードを着脱自在にすることができる。
【0015】
請求項5の発明によれば、シートレールに設けられた照明手段により、荷室床下収納部を照明でき、車両が暗い場所に駐車している場合、或いは夜間において、荷室床下収納部を明るくできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明を具体化した一実施形態の車両の背面開口の斜視図。
【図2】ロングスライドレールにデッキボードが支持された状態の断面図。
【図3】ロングスライドレールと荷室床下収納部との位置関係を示す側断面図。
【図4】ロングスライドレールと荷室床下収納部との位置関係を示す平面図。
【図5】デッキボードの平面図。
【図6】他の実施形態におけるロングスライドレールにデッキボードが支持された状態の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のデッキボードの支持構造を具体化した一実施形態について図1〜5を参照して説明する。なお、本明細書において、「前」とは車両を基準としてフロント側を指し、「後」とはリア側を指す。又、「左」及び「右」とは車両の走行方向(すなわち、前方方向)に向かって、左側及び右側を指す。
【0018】
本実施形態のデッキボードの支持構造を備えた車両10は、3列シートを有するワンボックスカータイプの車両である。前記車両は、後端部に形成された背面開口20が跳ね上げ式の図示しない背面ドアにより開閉可能に構成されている。
【0019】
そして、背面開口20の下側には、図1に示すようにバンパー40が設けられている。前記バンパ−40は、図3では図示はしないが、後端横梁材50に取付けされている。後端横梁材50は、図3に示すように、ロアバックアウタパネル52とロアバックインナパネル54とにより中空閉断面状に形成されている。
【0020】
図3に示すようにフロアパネル12と後端横梁材50間には、上向きに開口する荷室床下収納部56が形成されている。
図1、図3に示すように車両10のフロアパネル12には、シートレールとして、一対のロングスライドレール14が前後方向に延びるように固定されている。一対のロングスライドレール14は、前後方向に延びる中心線O(図4参照)を挟むように配置されている。なお、図4には、中心線Oから、車両10の右側に位置するロングスライドレール14が図示されている。ロングスライドレール14の後方へ延びる部位は、荷室床下収納部56の上方空間を過ぎるとともに後端がロアバックインナパネル54に固定されたブラケット55に固定されている。
【0021】
又、左右のホイールハウス60の上面に固定されたショートスライドレール62は、ロングスライドレール14に対して平行に配置されている。図1,図4では、車両10の右側のショートスライドレール62のみが図示されている。
【0022】
ロングスライドレール14及びショートスライドレール62を一組とした、各組のスライドレールには、座席シートとしての3列目シート70を構成するシートクッション72の下部及び3列目シート70の車壁側に設けられた図示しないアッパレール支持部73に設けられたスライドレールアッパ74が摺動自在に配置されている。又、スライドレールアッパ74は、図示しない公知のロック機構により、所望の前後位置で各スライドレールに対して停止可能に支持される。本実施形態では、3列目シート70は、ロングスライドレール14により、図3に実線で示す位置を基本ポジションとして、前方に移動、及び後方へ移動可能になっている。
【0023】
又、図2に示すように、ロングスライドレール14には、上面にスリット16が長手方向に沿って形成され、スリット16を介してスライドレールアッパ74が挿通されて摺動自在にされている。
【0024】
又、ロングスライドレール14の左右両側部には、それぞれ支持部としての係止段部18が形成されている。本実施形態では、係止段部18は、ロングスライドレール14の全長に渡って形成されているが、少なくとも荷室床下収納部56の上方空間を過ぎる部分に形成されていればよく、フロアパネル12に配置される部分はなくてもよい。又、図2に示すように、ロングスライドレール14の上面には、モール17が被覆されている。
【0025】
又、荷室床下収納部56を形成する周壁の上部の周縁には、支持部として、係止段部57が形成されている。係止段部57の上面と係止段部18の上面の高さは同一となっている。
【0026】
荷室床下収納部56の上部空間は、図1に示すようにロングスライドレール14により、中央空間域56a、左空間域56b、及び右空間域56cとに区画されている。そして、中央空間域56a、左空間域56b、及び右空間域56cには、図5に示すように、中央空間域用、左空間域用、及び右空間域用のデッキボード80〜82がそれぞれ配置可能となっている。すなわち、デッキボード80〜82は、それぞれ、中央空間域用、左空間域用、及び右空間域用に位置するロングスライドレール14の係止段部18、及び荷室床下収納部56の係止段部57の上面に対して下面周縁が着脱自在に係止される。
【0027】
デッキボード80〜82は、例えば、合成樹脂からなり、平板状に形成されている。又、デッキボード80〜82は、図5の左右方向に延びる一点鎖線で示す部分にはヒンジ部80a,81a,82aが形成され、該ヒンジ部80a,81a,82aにより、前記合成樹脂が有する弾性に抗して折り曲げ可能になっている。すなわち、ヒンジ部80a,81a,82aは、折れ曲がり状態が解除された際には、自身の弾性により、平板状に復帰可能である。
【0028】
3列目シート70が図3の二点鎖線で示す荷室床下収納部56の上方に位置した場合、後部側となる部分は係止段部18及び係止段部57に係止している状態を保つとともに、前部側となる部分はヒンジ部80aで折れ曲げられて3列目シート70の背面に対して前記弾性により当接状態を保持することが可能となっている。
【0029】
このヒンジ部80aをデッキボード80〜82に設ける位置は、限定するものではない。なお、本実施形態では、3列目シート70が背面開口20に最も接近する限界位置に位置したとき、例えば図3で二点鎖線で示す位置が、限界位置としたとき、デッキボード80〜82の前後方向の長さの略1/2の位置に設けられている。
【0030】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1) 本実施形態のデッキボードの支持構造は、3列目シート70(座席シート)が摺動するロングスライドレール14(シートレール)を、荷室床下収納部56の上において、前後方向に延びるように架け渡しした。そして、ロングスライドレール14(シートレール)及び荷室床下収納部56の上部によりデッキボード80〜82を着脱自在に支持するようにした。この結果、ロングスライドレール14を荷室床下収納部56側へ延出した構成であるにもかかわらず、荷室床下収納部56の収容容積を従来に比して大きくできる。又、デッキボード80は、左右方向においては一対のロングスライドレール14にて支持される。
【0031】
なお、特許文献1では、単一のデッキボードは、左右両端のみで支持されて、中央が自重で下方へ撓まないようにそれなりの剛性が必要となり、補強部材が必要となる。それに対して、本実施形態の車両と特許文献1の車両が仮に同じ車幅であった場合、デッキボード81,82は左右方向においてはロングスライドレール14と、荷室床下収納部56の上部(係止段部57)により支持すればよい。従って、各デッキボード80〜82は、特許文献1の場合よりも自重により下方へ撓むことを抑制できる利点があり、その分左右方向における剛性を小さい物にできて、剛性を上げるための補強部材が必要でなくなり、コスト低減を図ることができる。
【0032】
(2) 本実施形態のデッキボードの支持構造は、ロングスライドレール14(シートレール)により、荷室床下収納部56の上部空間を複数に区画した。そして、区画された複数の中央空間域56a,左空間域56b,右空間域56c(上部空間)毎に、荷室床下収納部56の上部及びロングスライドレール14に、複数のデッキボード80〜82をそれぞれ着脱自在に支持する係止段部18、係止段部57(支持部)を設けた。
【0033】
従って、荷室床下収納部56上に配置されたロングスライドレール14により、区画した上部空間にそれぞれデッキボード80〜82を配置できる。この結果、特許文献1と異なり荷室床下収納部56を単一の部材からなるデッキボード80により覆う場合に比してデッキボードに補強部材が必要でなくなり、コスト低減を図ることができる。又、荷室床下収納部56内に小物の荷を収納する場合、或いは荷室床下収納部56内から小物を取り出す場合、全てのデッキボードを支持部から取り外したり、取り付けする必要がなく、必要な箇所のデッキボードのみを支持部から取り外したり、取り付けするだけでよくなり、デッキボードの取り扱いが楽になる。
【0034】
(3) 本実施形態のデッキボードの支持構造は、荷室床下収納部56に架け渡したロングスライドレール14は、一対備えている。又、ロングスライドレール14間には、デッキボード80の係止段部18(支持部)が設けられ、ロングスライドレール14間において、デッキボード80を着脱自在に支持するようにした。この結果、一対のロングスライドレール14間において、配置されるデッキボード80を着脱自在にすることができる。
【0035】
なお、本実施形態は以下のように変更してもよい。
・ 前記実施形態において、図6に示すように、ロングスライドレール14において、荷室床下収納部56を過ぎる部分の下面に、照明手段としての照明ランプ90が設けられている。照明ランプ90は、車室内に設けられた図示しないスイッチにより、点灯消滅が可能である。このように照明ランプ90を設けた場合、照明ランプ90により、荷室床下収納部56を照明でき、車両が暗い場所に駐車している場合、或いは夜間において、荷室床下収納部56を明るくできる。なお、照明ランプ90は、電球、キセノンランプ、或いは、LED等のいずれでもよい。
【0036】
・ 前記実施形態では、ロングスライドレール14には、支持部として係止段部18を形成したが、係止段部に限定するものではない。ロングスライドレール14の左右両側面に対して、水平に突出する係止片を取付固定し、該係止片上にデッキボードを着脱自在に載せるようにしてもよい。又、支持部を係止片以外にも複数の併設した係止突部として具体化してもよい。
【0037】
・ 前記実施形態では、デッキボードは、3つとしたが、単一のデッキボードであってもよい。この場合、デッキボード80〜82を互いにロングスライドレール14の幅分の連結部を介して連結した構成となる。この場合も、前記実施形態と同様にヒンジ部を有することが好ましい。このように構成しても、単一のデッキボードは、シートレール及び荷室床下収納部の上部の係止段部57によりデッキボードを着脱自在に支持することが可能となる。
【0038】
・ 前記実施形態では、一対のロングスライドレール14をシートレールとしたが、ショートスライドレール62の代わりに、ロングスライドレールを一対を1組として、2組のロングスライドレールを互いに平行に配置し、各組のシートレールを荷室床下収納部56の上部を過ぎるように架設してもよい。この場合、ロングスライドレール間に配置されるデッキボードと、ロングスライドレールと荷室床下収納部56の左右の上部側壁間にそれぞれ位置するデッキボードが設けられる。これらのデッキボードの荷室床下収納部56の上部空間における支持は、例えば、前記実施形態と同様に係止段部18.57を形成することで行えばよい。
【0039】
・ 前記実施形態では、3列目シート70は、ロングスライドレール14により、図3に実線で示す位置を基本ポジションとして、前方に移動、及び後方へ移動可能にしている。すなわち、本実施形態では、シートレールをロングスライドレール14としたが、シートレールはロングスライドレールに限定するものではない。例えば、図3において、基本ポジションから後方のみへ移動できるシートレールとしてもよい。
【0040】
・ 前記実施形態では、3列シートを有する車両に具体化したが、2列シートを有する車両、或いは、4列シート以上を有する車両にも具体化することが可能である。
【符号の説明】
【0041】
14…ロングスライドレール(シートレール)、
56…荷室床下収納部、
56a…中央空間域、56b…左空間域56b、56c…右空間域、
70…3列目シート(座席シート)、
80〜82…デッキボード。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロアパネルに荷室床下収納部を有し、前記荷室床下収納部を覆うデッキボードの支持構造において、
座席シートが摺動するシートレールを、前記荷室床下収納部の上において、前後方向に延びるように架け渡し、
前記シートレール及び前記荷室床下収納部の上部によりデッキボードを着脱自在に支持することを特徴とするデッキボードの支持構造。
【請求項2】
前記シートレールにより、前記荷室床下収納部の上部空間を複数に区画し、前記区画された複数の上部空間毎に、前記荷室床下収納部の上部及び前記シートレールに、複数のデッキボードをそれぞれ着脱自在に支持する支持部を設けたことを特徴とする請求項1に記載のデッキボードの支持構造。
【請求項3】
前記支持部が、係止段部であることを特徴とする請求項2に記載のデッキボードの支持構造。
【請求項4】
前記荷室床下収納部に架け渡した前記シートレールは、少なくとも一対を含み、
前記シートレール間に、前記デッキボードの支持部が設けられ、該シートレール間において、デッキボードを着脱自在に支持することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のデッキボードの支持構造。
【請求項5】
前記シートレールには、前記荷室床下収納部を照らす照明手段が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちいずれか1項に記載のデッキボードの支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−245877(P2011−245877A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117515(P2010−117515)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【Fターム(参考)】