説明

デュアルベイトレポーターを用いてscFvスクリーニングにおける特異性を増大させる方法

所望の特異性を有する抗体の選択効率を高めるために、本発明者らは、1つのベイトが標的であり、1つまたは複数のベイトが非標的であるマルチベイト株を作り出す。非標的ベイトは、標的ベイトのものとは異なる1つまたは複数のDNA結合ドメインを使用し、それによって、標的ベイトによって活性化されるものとは異なる1種または複数種のレポーターを活性化し得る。レポーターの両方のセットを活性化するライブラリーヒットは、不適切に特異的であると推測され、それ以上の考察から除外されてよい。あるいは、非標的ベイトは第2の標的ベイトと交換されてもよく、レポーターの両方のセットを活性化するヒットが選択される。要素の他の組合せも使用され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、抗体の分野に関する。特に、望ましい抗体を得るための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
「プロテオミクス」という用語は、生物にコードされた大半またはすべてのタンパク質の解析を可能にする並列処理システムを説明するための試みに適用される。このような解析は、正常または異常な細胞挙動の原因の決定にあたって極めて有益である。タンパク質は、変異、過剰発現もしくは過小発現、および/または翻訳後修飾のいずれかによって細胞挙動を調節することができる。抗体を用いると、タンパク質の完全性、量、および改変の解析が非常に容易になり得る。
【0003】
免疫グロブリンG(IgG)は、プロトタイプの抗体(Ab)分子である(図1)。IgGは、ジスルフィド結合によってヒンジ領域内で連結された2つのポリペプチド軽鎖および2つのポリペプチド重鎖からなる。抗原(Ag)に結合するAbの部分は「Fab領域」または「結合部位」としても公知であり;IgGのFc部分は、免疫系の構成要素(補体および食細胞)に対する認識部位として働く。Fab領域の配列は、Ab分子の他の部分よりもずっと可変性が高く、特に、同系Agに結合するための抗体の特異性を決定するいわゆる「超可変領域」は可変性が高い。
【0004】
Ag-Ab相互作用のX線結晶解析研究では、抗原決定基がAbの結合部位によって形成される窪み(cleft)にうまく収まっている(nestle)ことが示される。したがって、Ag-Ab相互作用の1つの概念は、錠(Ab)に合致する鍵(Ag)という概念である。AgをAb結合部位に固定する結合はすべて、天然には非共有結合性である。これらには、水素結合、静電結合、ファンデルワールス力、および疎水結合が含まれる。AgとAbの間の複数の結合により、Agが抗体に堅く結合されることが確実になる。Ag-Ab反応は非共有結合を介して起こるため、これらは本質的に可逆的である。
【0005】
Ab親和性とは、抗原決定基とAb上の結合部位との反応の強さである。言い換えると、親和性とは、抗原決定基とAbの結合部位の間で作用する引力および反力の正味の結果である。親和性は、式:Ag+Ab←→AgAbで例示されるような、Ag-Ab反応を説明する平衡定数を特徴とする。質量作用の法則を適用すると、Keq=[AgAb]/{[Ag][Ab]}であり、解離定数(K dissociation)={[Ag][Ab]}/[AgAb]である。大半のAbは、それらのAgに対して高親和性を有する。
【0006】
親和性は、単一の抗原決定基と単一のAb結合部位の間の結合の強度を指すが、結合活性は、多価AgとAbの間の結合の全体の強度を指す。結合活性は、個々の親和性の合計より大きい。
【0007】
特異性は、個々のAb結合部位が相互作用する異なる抗原決定基の数、または個々のAbもしくはAb分子の集団(例えばポリクローナル抗体の場合)が反応する異なるAgの数に反比例の関係にある。すなわち、あるAbと相互作用する異なる抗原決定基またはAgの数が少ないほど、そのAbの特異性は高い。一般に、Ag-Ab反応において高度の特異性を有することが望ましい。Abは、(1)Agの一次構造、(2)Agの異性体形態、ならびに(3)Agの二次構造および三次構造における違いを識別することができる。
【0008】
交差反応性とは、個々のAb結合部位が複数の抗原決定基と反応する能力またはAb分子集団が複数のAgと反応する能力を意味する。交差反応は、交差反応Agが免疫Agと共通の「エピトープ」を共有するため、または交差反応Agが免疫Ag上のものと構造的に類似しているエピトープを有するために起こる(多重特異性)。
【0009】
Ab選択へのアプローチは典型的に、多段階のプロセスを伴う。最初は、少なくとも最小限レベルの親和性(または結合活性)で標的Agに結合するAbを同定する試みがなされる。このような基準が満たされた時にのみ、Abの特異性、すなわち非標的Agの欠如または非標的Agとの交差反応性がさらに評価される。いくつかのAgに関して、特定の目的のために適切な特異性を有するAbを同定するのが困難なことが知られている。親和性に基づいて選択し、その後に、許容できないレベルの交差反応性を示すAbを続いて排除する連続的なプロセスは、特に標的Agを作製するのが高価かつ/または困難である場合には、冗長で、時間がかかり、高価である。
【0010】
単一のタンパク質Agに対する抗体を作製する最新技術は高度なレベルに達しているが、プロテオミクス解析に必要であると思われる、極めて多数のタンパク質に対する抗体を作製する試みは、費用および規模の問題によって妨げられている。タンパク質Ag標的に対するAbの作製は、Ag精製およびそれに続く動物におけるポリクローナルAbまたはモノクローナルAbいずれかの作製、ならびに親和性および特異性に関するいくつかの最低基準を満たすAbの選択という高価で時間のかかるプロセスを典型的に伴う。動物におけるAb作製は数週間かかる。これらの従来の方法の律速事項はしばしば、Abを作製するために動物に注射するためだけでなく、適切な親和性および特異性を有するAbの単離および特徴付けのためにも必要である精製タンパク質のミリグラム量であった。ファージディスプレイ法は、Ab選択のインビトロの代替方法であり、動物免疫化よりもいくつかの有利な点があるが、やはり大量の精製Agを要求するという欠点がある。
【0011】
インビボまたはインビトロのいずれかでAbを選択するためにミリグラム量のAgが必要であることは、単に費用の問題ではない。全タンパク質の60〜70%しか容易に精製することができず、精製が適用できるタンパク質に対する精製手順の多くは大きな労働力を要し、長期間に及ぶ。特に、膜結合型タンパク質、ある種の補助因子を含むタンパク質、および安定するために複合体を要するタンパク質は、続くAb作製に使用するために発現させ精製するのが非常に困難である。完全長オープンリーディングフレームおよび部分的なオープンリーディングフレームの両方を含む、潜在的なAgの細胞内発現の使用は、タンパク質を調製および精製する必要を無くすための1つの方法である。
【0012】
酵母ツーハイブリッド(Y2H)アッセイ法は、高親和性でAgに結合するAbを同定するための手段として使用され得る。Agの細胞内発現により、タンパク質精製の必要が無くなる。
【0013】
Y2Hは、多数の潜在的な相互作用物質をスクリーニングするのが容易であるため、タンパク質-タンパク質相互作用を同定するために広く利用されてきた(Fields 1989; Chien 1991)。Y2Hシステムの相互作用トラップ型(Gyuris, 1993)では、通常「ベイト」と呼ばれる公知のタンパク質が、Lex Aオペレーター-DNA結合ドメイン(DBD)を含む細菌Lex Aタンパク質のカルボキシル末端に融合される。lex Aオペレーターの同系のDNA結合エレメントは、酵母ゲノム中に組み込まれた選択可能な栄養要求性レポーター遺伝子(典型的にはLeuまたはHis)および自律複製プラスミド上のlacZ遺伝子の両方の上流に組み入れられる。標的タンパク質をコードする遺伝子は、通常「プレイ」と呼ばれ、転写活性化ドメイン(AD)のカルボキシル末端に融合されたランダムな配列またはcDNAのいずれかとしてクローニングされる。AD-プレイ融合物とDBD-ベイトが結合すると、機能的な転写因子が再構成され、栄養要求性レポーター遺伝子およびlacZレポーター遺伝子が発現される(図2)。このようにして、Y2Hは、接触しているタンパク質またはタンパク質ドメインを検出および定義するために使用される。しかしながら、研究する各タンパク質についてcDNAライブラリー全体を再変換および選択することが必要であるため、このアプローチは大規模な相互作用マッピングには適切ではなかった。その後、相互作用接合(interaction mating)が、ライブラリーを再使用するため(Bendixen 1994)およびより大規模な関連したタンパク質コレクション(Finley 1994)、プロテオーム(Bartel 1996; Giot 2003; Ito 2000; Li 2004; Uetz 2000)、または個々の生物物理学的複合体のメンバー(Fromont-Racine 1997)に対する相互作用を評価するための手段として開発された。
【0014】
Abは酵母中で機能することができる。いくつかのグループが、酵母細胞または哺乳動物細胞のいずれかにおいてツーハイブリッドアプローチを用いた、機能的な細胞内Abに関するインビボアッセイ法を開発した(例えば、Portner-Taliana 2000; der Maur 2002)。典型的には、転写トランス活性化ドメインに連結されている、Abの単鎖可変領域(「scFv」;図1を参照されたい)が、DNA結合ドメインに連結されている標的Agと相互に作用し、それによってレポーター遺伝子を活性化する(図2)。いくつかのAbが、このツーハイブリッド形式で標的Agに結合できると特徴付けられている。このようなAbはインビトロで作製および試験された場合、それらの同系Agに結合する能力を示した。
【0015】
ある生物にコードされた大半またはすべてのタンパク質に対して所望の特異性を有するAbを効率的に作製することは、当技術分野において引き続き必要である。
【発明の概要】
【0016】
本発明の1つの局面によれば、ポリペプチドAgと単鎖抗体可変断片(scFv)との相互作用を検出するための方法が提供される。宿主細胞の集団が培養される。この宿主細胞は以下を含む:
○転写活性化ドメインが第1のレポーター遺伝子の上またはそれに隣接した第1の結合部位の十分近くに近付けられ、該転写活性化ドメインを含むポリペプチドによって第1のレポーター遺伝子が活性化された場合、第1のレポータータンパク質を発現する第1のレポーター遺伝子;
○転写活性化ドメインが第2のレポーター遺伝子の上またはそれに隣接した第2の結合部位の十分近くに近付けられ、該転写活性化ドメインを含むポリペプチドによって第2のレポーター遺伝子が活性化された場合、第2のレポータータンパク質を発現する第2のレポーター遺伝子;
○以下を含む、第1のハイブリッドタンパク質:
■第1のレポーター遺伝子の上またはそれに隣接した第1の結合部位を認識する第1のDNA結合ドメイン;
■第1のポリペプチド抗原;
○以下を含む、第2のハイブリッドタンパク質:
■転写活性化ドメイン;
■単鎖抗体可変断片;
○以下を含む、第3のハイブリッドタンパク質:
■第2のレポーター遺伝子の上またはそれに隣接した第2の結合部位を認識する第2のDNA結合ドメイン;
■第2のポリペプチド抗原。
【0017】
前記宿主細胞における第1のポリペプチド抗原と単鎖抗体可変断片との相互作用が原因となって、転写活性化ドメインが第1のレポーター遺伝子の転写を活性化する。宿主細胞における第2のポリペプチド抗原と単鎖抗体可変断片との相互作用が原因となって、転写活性化ドメインが第2のレポーター遺伝子の転写を活性化する。集団中の細胞は、ポリペプチド抗原に関して同種であり、かつ単鎖抗体可変断片に関して異種である。第1のレポーター遺伝子の発現は、細胞における第1のポリペプチド抗原と単鎖抗体可変断片との相互作用を示し、第2のレポーター遺伝子の発現は、細胞における第2のポリペプチド抗原と単鎖抗体可変断片との相互作用を示す。集団の中から細胞が選択される。選択された細胞は、(i)第1のレポーター遺伝子を発現するが、第2のレポーター遺伝子を発現しないか、または(ii)第1のレポーター遺伝子および第2のレポーター遺伝子を発現する。
【0018】
本発明の別の局面によれば、ポリペプチド抗原と単鎖抗体可変断片との相互作用を検出するための別の方法が提供される。第1の宿主細胞の集団が培養される。第1の宿主細胞は以下を含む:
○転写活性化ドメインが第1のレポーター遺伝子の上またはそれに隣接した結合部位の十分近くに近付けられ、該転写活性化ドメインを含むポリペプチドによって第1のレポーター遺伝子が活性化された場合、第1のレポータータンパク質を発現する第1のレポーター遺伝子;
○以下を含む、第1のハイブリッドタンパク質:
■第1のレポーター遺伝子の上またはそれに隣接した結合部位を認識する第1のDNA結合ドメイン;
■第1のポリペプチド抗原;
○以下を含む、第2のハイブリッドタンパク質:
■転写活性化ドメイン;
■単鎖抗体可変断片;
ここで、第1の宿主細胞の集団中の細胞は、第1のポリペプチド抗原に関して同種であり、かつ単鎖抗体可変断片に関して異種である。
【0019】
第2のハイブリッドタンパク質をコードするDNA分子は、第1のレポーター遺伝子を発現する細胞から第2の宿主細胞に移入される。第2の宿主細胞は、以下を含む:
○転写活性化ドメインが第2のレポーター遺伝子の上またはそれに隣接した第2の結合部位の十分近くに近付けられ、該転写活性化ドメインを含むポリペプチドによって第2のレポーター遺伝子が活性化された場合、第2のレポータータンパク質を発現する第2のレポーター遺伝子;
○以下を含む、第3のハイブリッドタンパク質:
■第2のレポーター遺伝子の上またはそれに隣接した第2の結合部位を認識する第2のDNA結合ドメイン;
■第2のポリペプチド抗原。
【0020】
第1の宿主細胞における第1のポリペプチド抗原と単鎖抗体可変断片との相互作用が原因となって、第1の転写活性化ドメインが第1のレポーター遺伝子の転写を活性化する。第2の宿主細胞が選択される。第1の宿主細胞で選択されたscFvと第2のポリペプチド抗原との第2の宿主細胞における相互作用が原因となって、第2の転写活性化ドメインが第2のレポーター遺伝子の転写を活性化する。第2の宿主細胞は、第2のハイブリッドタンパク質をコードするDNA分子を含むが、(i)第2の宿主細胞において第2のレポーター遺伝子を発現しないか、または(ii)第2の宿主細胞において第2のレポーター遺伝子を発現する。宿主細胞の第1の集団中の細胞における第1のレポーター遺伝子の発現は、第1のポリペプチド抗原と単鎖抗体可変断片との相互作用を示す。第2のレポーター遺伝子の発現は、第2の宿主細胞における第2のポリペプチド抗原と単鎖抗体可変断片との相互作用を示す。
【0021】
本発明のさらに別の局面によれば、宿主細胞の集団は、単鎖可変領域を選択する際に使用するために提供される。これらの細胞は以下を含む:
○転写活性化ドメインが第1のレポーター遺伝子の上またはそれに隣接した第1の結合部位の十分近くに近付けられ、該転写活性化ドメインを含むポリペプチドによって第1のレポーター遺伝子が活性化された場合、第1のレポータータンパク質を発現する第1のレポーター遺伝子;
○転写活性化ドメインが第2のレポーター遺伝子の上またはそれに隣接した第2の結合部位の十分近くに近付けられ、該転写活性化ドメインを含むポリペプチドによって第2のレポーター遺伝子が活性化された場合、第2のレポータータンパク質を発現する第2のレポーター遺伝子;
○以下を含む、第1のハイブリッドタンパク質:
■第1のレポーター遺伝子の上またはそれに隣接した第1の結合部位を認識する第1のDNA結合ドメイン;
■第1のポリペプチド抗原;
○以下を含む、第2のハイブリッドタンパク質:
■転写活性化ドメイン;
■単鎖抗体可変断片;
○以下を含む、第3のハイブリッドタンパク質:
■第2のレポーター遺伝子の上またはそれに隣接した第2の結合部位を認識する第2のDNA結合ドメイン;
■第2のポリペプチド抗原
ここで、集団中の細胞は、ポリペプチド抗原に関して同種であり、かつscFvに関して異種である。
【0022】
宿主細胞における第1のポリペプチド抗原と単鎖抗体可変断片との相互作用が原因となって、転写活性化ドメインが第1のレポーター遺伝子の転写を活性化する。宿主細胞における第2のポリペプチド抗原と単鎖抗体可変断片との相互作用が原因となって、転写活性化ドメインが第2のレポーター遺伝子の転写を活性化する。
【0023】
本発明のさらに別の局面によれば、ポリペプチドの相互作用スクリーニングのためのキットが提供される。キットの構成要素は、単一の容器または中が仕切られた容器中に存在する。構成要素は以下のものである:
○転写活性化ドメインが第1のレポーター遺伝子の上またはそれに隣接した第1の結合部位の十分近くに近付けられ、該転写活性化ドメインを含むポリペプチドによって第1のレポーター遺伝子が活性化された場合、第1のレポータータンパク質を発現する第1のレポーター遺伝子;
○転写活性化ドメインが第2のレポーター遺伝子の上またはそれに隣接した第2の結合部位の十分近くに近付けられ、該転写活性化ドメインを含むポリペプチドによって第2のレポーター遺伝子が活性化された場合、第2のレポータータンパク質を発現する第2のレポーター遺伝子;
○以下を含む、第1のハイブリッドタンパク質を作製するためのベクター:
■第1のレポーター遺伝子の上またはそれに隣接した第1の結合部位を認識する第1のDNA結合ドメイン;
■および第1のポリペプチド抗原をコードする配列のための挿入部位;
○それぞれ以下を含む、第2のハイブリッドタンパク質をコードするベクターのライブラリー:
■転写活性化ドメイン;
■単鎖抗体可変断片;
○以下を含む、第3のハイブリッドタンパク質を作製するためのベクター
■第2のレポーター遺伝子の上またはそれに隣接した第2の結合部位を認識する第2のDNA結合ドメイン;
■第2のポリペプチド抗原をコードする配列のための挿入部位。
【0024】
宿主細胞における第1のポリペプチド抗原と単鎖抗体可変断片との相互作用が原因となって、転写活性化ドメインが第1のレポーター遺伝子の転写を活性化する。宿主細胞における第2のポリペプチド抗原と単鎖抗体可変断片との相互作用が原因となって、転写活性化ドメインが第2のレポーター遺伝子の転写を活性化する。
【0025】
本明細書を読めば当業者に明らかになると考えられるこれらおよび他の態様は、所望の特異性を有する抗体を効率的に作製ならびに選択およびスクリーニングするための手段を当技術分野に提供する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】免疫グロブリンG(「IgG」)の構造。この構造は、2つの重鎖および2つの軽鎖からなる。IgGの主なAg結合部分は、それぞれ重鎖の一部分および軽鎖の一部分からなる、Fab断片のいわゆる可変部分(「Fv」)内部にある。軽鎖のFv構成要素を重鎖のFv構成要素と連結して単鎖可変断片(「scFv」)を作製することにより、Fv領域の組換え型を作製することができる。
【図2】ツーハイブリッドアッセイ法およびプレイcDNAベクター。(A)ツーハイブリッドアッセイ法は、細胞内環境でのタンパク質解析を可能にし、2つの融合タンパク質の発現を必要とする。個別には、DNA結合ドメイン(DBD)も活性化ドメイン(AD)も酵母において転写を活性化できない。プレイライブラリーはscFv cDNAからなる。
【図3】ライブラリー構築の方法。重複部分があるオリゴヌクレオチドを用いて、細胞内で機能的なscFvの7つのフレームワーク部分に対応する7つのDNA断片を合成し、大腸菌(E. coli)ベクター中にクローニングした。6つのCDR(重鎖遺伝子および軽鎖遺伝子中にそれぞれ3つ)に対応するDNAを、変異誘発プライマーを用いて増幅し、最終scFvのフレームワーク部分間にスプライシングした。第2の段階で、VH遺伝子およびVL遺伝子をそれぞれ別々に異なるベクター中にクローニングした。次いで、2つの遺伝子断片を酵母ツーハイブリッドベクター中に最後にクローニングし、適切な酵母株に形質転換させた。
【図4】ベイト特異性の再試験。scFvを大腸菌中で回収(rescue)し、次いで、適切な酵母株に再導入した。次いで、他の残る17種のベイトに対してこれらのAbクローンを再試験した。8種のベイトに対する5種のscFvの試験をこの実施例で示す。同時選択プレートは、プレイベクターとベイトベクターの両方が2倍体酵母中に存在することを示している。相互作用プレートは、His(-)最少培地を含む。寒天プレート上の標的ベイト(右上から時計回りに);Akt 1-481、Raf 542-647、Bcl2 1-234、Src 150-249、p53 160-292、p53 95-292、Raf 191-271、Akt 79-144。
【図5】デュアルベイト概念。標的ベイトおよび無関係なベイトを、異なるDNA結合部位をそれぞれ認識するDNA結合ドメインとのハイブリッドにする。標的ベイトと非標的ベイトの両方を認識するAbは望ましくないとみなされ、適切な量の5-FOAを含むプレート上で淘汰(select against)される。
【図6】標的ベイトに対するDNA結合ドメイン(DBD)ハイブリッドに結合するAbを排除するためのデュアルベイト選択。例示する非限定的な例において、対抗選択のために使用されるベイトは、同系のDNA結合配列に結合するDBDの能力が変異によって失われた、DBD1の変異型である変異DBD(「DBD1*」)である(標的ベイトとのDBDハイブリッド)。
【図7】選択を強化するためのデュアルベイトの使用。
【発明を実施するための形態】
【0027】
発明の詳細な説明
この説明では、酵母システムにしばしば言及する。これらのシステムは、細胞内相互作用スクリーニングのための哺乳動物細胞、昆虫細胞、および細菌細胞と交換可能である。したがって、酵母ツーハイブリッド(Y2H)システムに言及する場合、これらは、任意の細胞内ツーハイブリッドスクリーニングシステムを代表する。例えば、Fiebitz, 「High-throughput mammalian two-hybrid screening for protein-protein interactions using transfected cell arrays」 BMC Genomics. 2008; 9: 68; Institute Pasteur, WO/2001/073108 「A Bacterial Two-Hybrid System For Protein Interaction Screening」を参照されたい。
【0028】
抗体(Ab)またはモノクローナル抗体(mAb)に言及する場合、これらは第一に、細胞スクリーニングシステムにおいて発現され得る単鎖可変鎖分子(scFv)を意味する。scFv分子は、同じCDR領域を共有する全Ab分子に日常的に変換することができる。Agは典型的には、約4〜約5000残基長のアミノ酸オリゴマーまたはアミノ酸ポリマーである。これらは、ポリペプチドもしくはタンパク質またはエピトープと様々に呼ばれる。
【0029】
scFv分子の作製および選択に対する統合されたアプローチは、個々のscFv分子の同定を容易にするように設計される。さらに、これにより、標的Ag(Ag)に対して高い親和性および選択性で結合する能力に関してそれぞれ選択されたscFv分子の非常に大きな集団を作製することが可能になる。本発明者らは、デュアルベイト株および対抗選択を用いることにより、望ましいAbの選択効率を改善するための手段を開発した。
【0030】
選択プロセスの効率を高めるために、本発明者らは、1つのベイトが標的であり、1つまたは複数のベイトが非標的であるマルチベイト株を作り出す。非標的ベイトは、標的ベイトのものとは異なる1つまたは複数のDNA結合ドメインを使用し、それによって、標的ベイトによって活性化されるものとは異なる1種または複数種のレポーターを活性化することができる。レポーターの両方のセットを活性化するライブラリーヒットは、不適切に特異的であると推測され、それ以上の考察から除外されてよい。この対抗選択アプローチは、所望よりも特異性が低い相互作用物質の選択を減らすことを意図する。対抗選択の1つの非限定的な例では、Ura+レポーターおよび5-FOA[5-フルオロオロト酸]を使用して、対抗選択された遺伝子(URA)を活性化するscFvライブラリーメンバーの増殖を抑制する(図5)。
【0031】
1つの非限定的な例において、複数のポリペプチド抗原が、DBDとのハイブリッドへと融合される。複数のポリペプチドが関係するか、または関係しなくてよい。複数のポリペプチドが、直線状に並んだ抗原またはエピトープを形成する。
【0032】
細胞の選択は、当技術分野において公知の任意の技術を用いて実施することができる。これらには、抗生物質選択、代謝拮抗物質選択、毒素選択などが含まれ得る。異なる栄養素、異なる温度などを用いた条件付き増殖に関するスクリーニングが使用され得る。
【0033】
対抗選択は、オリジナルのベイトがスクリーニングされるのと同じ酵母細胞内で同時に行うことができ、その場合、デュアルベイトはそれぞれ、標的ベイトが、1種または複数種の選択可能または検出可能なマーカー(例えば、βGal、His、Leuなど)の上流のDNA配列を認識するDNA結合ドメイン(DBD)に結合され、対抗選択されるベイトが、異なるマーカー、例えばURAの上流に位置する異なるDNA結合部位を認識するDBDに結合されるように、異なるDNA結合部位を制御し得る。1つまたは複数の対抗選択されるベイトは、第2のDBDとのハイブリッドにされ得る。非限定的な例において、各ベイトの発現の個別の制御を用いて、一度に1つのベイトを独立に試験することができる。同じDBDが、すべてのベイトに対して使用され得る。例えば、標的ベイトが発現され、非標的ベイトが抑制され、ライブラリーはURA(-)プレート上で選択される。次いで、所望のベイトの発現は抑制され、非標的ベイトは発現を誘導され、細胞は5-FOAを含むプレート上に播種される。
【0034】
1つの非限定的な例において、対抗選択は、標的ベイトハイブリッドを用いた一次スクリーニングの後に行ってよい。この例において、選択は、最初に標的ベイトを用いて行われ、次いで、1種または複数種の対抗選択マーカーに対して1種または複数種の非標的ベイトを用いて行われる。一次スクリーニングおよび二次スクリーニングは同時に実施されないため、所望のベイトと非標的ベイトの両方に対して同じDBDを使用することが可能である。非限定的な例において、標的ベイトを用いたスクリーニングのポジティブ「ヒット」をプールし、1種または複数種の非標的ベイトをコードする株においてまとめて試験することができる。本明細書において説明する大半の態様において、非標的ベイトは、増強した選択方法のために使用され得る第2の標的ベイトと交換されてよいことを理解すべきである。
【0035】
ツーハイブリッド相互作用物質システムにおいて条件的に不可欠なレポーター遺伝子(栄養要求性マーカーなど)を使用すると、条件的に不可欠なレポーター遺伝子の発現が無い場合、接合(mated)細胞は最少培地で増殖できないため、scFv分子の選択が可能になる。その一方で、選択的増殖条件下での細胞の生存に基づくだけでは直ちに明らかにならない、scFv分子に関する定性的および定量的特徴を区別することがしばしば望ましい。上記のように、選択されたAbの潜在的な価値を決定するための2つの重要な基準は、同系Agに対する親和性および特異性である。Golemisおよびder Maurならびに彼らの同僚は、β-ガラクトシダーゼ(βGal)活性が、ツーハイブリッドスクリーニングにおいて相互作用するベイトタンパク質およびプレイタンパク質の結合親和性を推定するための読出し情報として使用され得ることを別々に示した(Serebriiskii 1999, 2000, 2005; Moll 2001)。簡単に説明すると、ベイトタンパク質とプレイタンパク質との相互作用により、適切な酵素基質の添加によってその存在を検出および定量することができるβGal遺伝子の転写および翻訳が起こる。Golemisの結果(Estojak 1995を参照されたい)から、このようなβGal測定値から予測される相互作用の強度は、インビトロの直接的結合の研究から決定される強度と全般的に相関しており、βGalアッセイ法を用いて高親和性相互作用、中親和性相互作用、および低親和性相互作用を幅広く識別することが少なくとも可能になることが示される。さらに、βGalレポーターの一部は、活性化の閾値を示し、その結果、弱い相互作用は一般に検出されなかった。Golemisの研究で予測されたKd値は、10-4〜10-15Mの範囲に及んだ。Y2Hアッセイ法における有意な識別は、10-8Mの範囲で生じた:例えば、1×10-8MのKdでインビトロにおいて相互作用するタンパク質から得られるβGal活性の読出し情報は、2.7×10-7MのKdを有するタンパク質のものより10倍超大きかった。der Maurによって研究された範囲の方が狭かったが(10-9M〜10-10Mの間のKd)、ここでもまた、βGal活性との全般的相関が観察された。
【0036】
いくつかの結合研究のいずれかを実施して、Ag-Ab反応が生じたか否かを明らかにすることができる。AgとAbの間で形成された複合体は、直接的または間接的に検出され得る。Ag-Ab相互作用を平易に検出できるかは、親和性(Agに対するAbの親和性が高いほど、相互作用は安定であり、したがって、相互作用を容易に検出できる)および結合活性(多価Agと多価Abとの間の反応の方がより安定であり、したがって検出がより容易である)を含む、いくつかの因子に依存する。Abの特徴付けにおいて明らかな考慮すべき事柄は、Abを作製、精製、および探究する必要である。これらの各プロセスを最適化するための当技術分野において公知の多くの技術がある。
【0037】
増殖能力および酵素活性を用いて、標的Agに結合したAbを含む宿主細胞を特定することができる。増殖および酵素活性は、視覚的に、したがって半定量的に採点することができる。宿主細胞の増殖もしくは酵素活性、または両方を評価するために、より定量的なアプローチが利用される。非限定的な多くの例の内の単に1つとして、液体中での細胞増殖は、濁度測定手段によって測定することができ、または、半固形培地もしくは固形培地における細胞増殖は、クローンのサイズの測定によって決定される。さらなる非限定的な例として、酵素活性は、比色定量分子または蛍光定量分子を測定するために日常的に使用される装置を用いて定量的に評価することができる。ツーハイブリッド条件の標準化は、ツーハイブリッド手順における標的Agに対するscFv分子の親和性の程度の推定を改善する任意のアプローチである。非限定的な例として、酵母のインキュベーション時間および酵素活性のアッセイ時間をどの試料に対しても一定に保つことができる。別の非限定的な例として、酵素活性は、分析する細胞の数に対して標準化される。当技術分野において周知のこれらまたは他のアプローチのいずれかを用いて、さらなる較正をもたらし、このようにして、ツーハイブリッド手順におけるAbと標的Agとの間の親和性レベルの予測能力を向上させる。
【0038】
Estojak(1995)および他の研究者らは、Y2H実験においてレポーター遺伝子の前方のオペレーターの数を変更することによって、酵母における酵素活性を測定(titrate)できることを示した。本発明の代替の態様において、親和性が公知であるタンパク質間の相互作用がβGal活性に基づいて検出される宿主クローンが獲得され、タンパク質親和性とβGal活性の関係に関して検量線が作成される。別の態様において、βGal遺伝子上のオペレーターの数は、親和性カットオフ閾値が予測されるように選択され、すなわち、scFv-Ag相互作用がカットオフ閾値以上の親和性を有する場合には、βGal活性は検出不可能であるか、またはポジティブな結果として採点される選択レベルを下回る。さらなる態様において、カットオフ閾値は、Kd<10-6である。さらなる態様において、カットオフ閾値は、Kd<10-10である。好ましい態様において、親和性カットオフ閾値は、Kd<10-8である。
【0039】
当技術分野において公知である多数の他の酵素活性を、ポジティブな応答をモニターするための手段として使用することができる。また、βGal活性の測定が実施されるいくつかの代替態様もある。一組の非限定的な例として、当技術分野において公知であるいくつかの異なるβGal基質のいずれかが使用される。1つのこのような非限定的な例として、Xgalが使用され得る。βGal活性を測定するために使用される他の基質には、次のものがある:非FDG、ONPG、およびCPRG。1つの非限定的な例において、βGalは、当技術分野において公知であるいくつかの方法のいずれかで透過処理された酵母細胞を用いて、溶液中で測定される。
【0040】
1つの態様において、選択されたscFvの親和性は、単離されたscFvおよびその標的Agの直接的解析によって決定される。この態様において、ツーハイブリッド手順で選択されたscFvならびにその標的Agは、当技術分野において周知であるいくつかの方法のいずれかによって調製される。次いで、標的Agに対するscFvの親和性が、当技術分野において定められたいくつかの方法のいずれかで測定される。好ましいが非限定的な1つの例として、表面プラズモン共鳴がBiacore機器によって測定される。この非限定的な例において、量を漸増させた未結合Agの存在下で、精製scFvが基板(substratum)に結合されたAgと相互作用する能力について動態が測定される。この非限定的な例の1つの態様において、scFvは約5nMまで希釈され、0〜15nMの範囲の様々な濃度の標的Agと一晩平衡化される。平衡化の後、Biacore機器を用いて結合動態が測定される。別の非限定的な例において、ビオチン化された標的Agが、前もってニュートラアビジンで最大密度までコーティングされたBiacoreセンサーチップに結合され、さまざまな量の未結合標的Agの存在下で、Hepes緩衝液(20mM Hepes、150mM NaCl、pH7.4)中で結合動態が測定(carry out)される。
【0041】
表Iで示すように、ツーハイブリッドシステムのベイトは自己活性化することができる。どのベイトが所与のプレイと相互作用すると思われるかを段階的に判定し、続いて、測定された相互作用が自己活性化の人為的結果であるかを判定することは、冗長で非効率的となり得る。類推するに、どのAbが所与のAg標的に結合するかを最初に判定して、結果的に、選択されたAbは非標的Agに対しても交差反応性を示すことからそれが許容されないことを続いて判定するだけとなることは、非効率的である。下記のアプローチは、使用されるツーハイブリッドシステムにおいて自己活性化を引き起こす不適切なAgベイトならびに非標的Agとの許容できないレベルの交差反応性を持つAbの両方を、さらなる考察から除外するための方法として利用される。いくつかの態様の内の1つにおいて、この手順は、あるタンパク質ファミリーの1つのメンバーに優先的に結合するが、同じタンパク質ファミリーの関連メンバーには結合しないmAbを同定するために使用される。同様に、特定の対立遺伝子変異体に対する特異性も確認され得る。変異体は例えば多型または変異でよい。
【0042】
以下の非限定的な例において、望ましいscFvを選択する効率は、相互作用する非特異的なscFvがさらなる解析のために選択される可能性を減らすことによって上昇する。この手順では、デュアルベイト株および対抗選択の使用を通じて、ライブラリーから非特異的なscFv相互作用物質を最初に除外することにより選択効率が改善する。
【0043】
scFvは標的ベイトの代わりにDBDに直接結合し、それによってDNA結合エレメントの制御下の遺伝子の発現を誘発するため、ツーハイブリッド選択では、偽陽性選択を得る可能性がある。したがって、一般的なデュアルベイト対抗選択アプローチの別の非限定的な例では、1つまたは複数の対抗選択ベイトは、選択のために使用されるDBDに類似しているが、産生物がDNA結合配列として働くことができないように改変された配列からなる(例えば図6を参照されたい)。このような不活性化DBDは図6および以下ではDBD*と呼ばれる。DBD*のDNA結合能力の消失は、点変異、トランケーション、および/または再構成を含む当技術分野において周知であるいくつかの方法のいずれかによって実現することができる。この目的に適したDBD*は、本物の(legitimate)DBDに対してscFv分子を作製し、次いでそのようなscFv分子を候補DBD*への結合に関して試験することによって容易に同定される。本物のDBDに結合する1つまたは複数のscFv分子が結合するDBD*は、対抗選択ベイトとして有用であり、本物のDBDとのハイブリッドとしてこの目的のために使用され得る(図6を参照されたい)。本発明の他の非限定的な態様において、1つまたは複数のDBD*非標的ベイトは、対抗選択プロセスが、同じ選択スクリーニングにおいて、本物の標的と類似しているが異なっている1つまたは複数の非標的に結合するscFv分子だけでなく、DBD*に(およびしたがって、対応するDBDにも)結合するscFv分子も除外するように設計されるように、他の非標的ベイトと縦一列に並べてまたは別の方法で組み合わせて使用される。
【0044】
以下に提示する非限定的な例において、非標的ベイトは、DBD*または他の何らかの非標的配列を含んでよく、これらのベイトは別々にまたは一緒に(縦一列も含む)使用され得る。
【0045】
この一般的アプローチのさらに別の非限定的な例において、所与の一連の状況下(ポジティブ選択)では、DBDとの標的ベイトハイブリッドに結合するAbが選択され、一方、別の一連の状況(対抗選択)下では、DBDとの非標的ベイトハイブリッドにAbが結合する場合にはそれらのAbをさらなる考察から除外するよう同定するように、ベイト発現が操作される。ポジティブ選択の間に使用される一連の状況下で標的ベイトに結合するAbのみが、さらなる考察のために選択される。様々なパラメーターが、ポジティブ選択のための条件とネガティブ選択のための条件とを区別するために使用される。非限定的な例として、同じAbクローンが2つの異なる酵母株において試験され、一方はDBDに対する標的ベイトハイブリッドを発現し(株A)、他方は同じDBDに対する非標的ベイトハイブリッドを発現する(株B)。株Aでのみポジティブと採点されたAbが、さらなる考察のために選択される。
【0046】
さらに別の非限定的な例において、対抗選択は、標的ベイトに結合するAbを検出するための一次スクリーニングの後に行う。この例において、選択は、最初に標的ベイトを用いて行われ、続いて、対抗選択が、1種または複数種の非標的ベイトを用いて行われる。ポジティブ選択および対抗選択は同時に実施されないため、同じDNA結合部位が、標的ベイトおよび非標的ベイトの両方のために任意で使用される。この非限定的な例の1つの態様において、標的ベイトを含むハイブリッドタンパク質が、第1の誘導物質への曝露に応答して産生され、一方、非標的ベイトを含むハイブリッドタンパク質が、第2の誘導物質への曝露に応答して産生されるように、酵母が2種の異なる誘導物質に時間的に(temporally)曝露される。第1のハイブリッドタンパク質が産生された際に第1のハイブリッドタンパク質に結合するが、続いて第2のハイブリッドタンパク質が産生された際には第2のハイブリッドタンパク質に結合しないAbが、さらなる考察のために選択される。
【0047】
続いて対抗選択を行うポジティブ選択の1つの非限定的な態様において、ポジティブ選択段階に続くさらなる考察のために選択されたAbが単離され、1種または複数種の非標的ベイトに対して試験することによって対抗選択される株中にまとめて再クローニングされる。
【0048】
別の非限定的な例において、対抗選択プロセスはポジティブ選択の前に実施される。この態様において、1種または複数種の非標的ベイトに結合するAbを含む細胞は淘汰され、したがって、非標的ベイトに検出可能な程度に結合しなかったAbを含む細胞のみが、本物の標的ベイトへの結合についてさらに試験される。したがって、最初の対抗選択プロセスにより、特定の非標的ベイトに結合するメンバーがAbライブラリーから除外される。非限定的な例において、標的ベイトおよび非標的ベイトは同じ宿主細胞中に共存するが、非標的ベイトおよび標的ベイトの発現は、異なる誘導物質および/または抑制物質の使用によって時間的に操作される。
【0049】
さらに別の非限定的な例において、選択および対抗選択は、2つの異なる方法で選択に利用されるレポーターを用いて実施される。非限定的な例として、ポジティブ選択の場合、標的ベイトにAbが結合するとUra遺伝子が発現され、このようなAbを有する酵母はUra(-)プレート上で増殖できるようになる。対抗選択の場合、非標的ベイトにAbが結合すると、5-FOAの存在下でUra遺伝子が発現され、このようなAbを有する酵母は増殖できなくなる。ポジティブ選択および対抗選択の段階は、誘導物質および/もしくは抑制物質の差次的な使用によって、または異なる株へのAb活性化ドメインハイブリッド遺伝子の形質転換によって時間的に実施される。
【0050】
さらなる態様において、デュアルベイトは選択プロセスを強化するために使用される。非限定的な例(図7)として、あるタンパク質の特定のエピトープに対して選択されるが、完全長タンパク質にも結合できるAbを作製することが望ましい場合がある(完全長タンパク質のある種のエピトープが、立体構造的に改変された場合、または別の方法で、単離されたエピトープへの結合に関して選択されたAbに接近しにくくされた場合)。したがって、標的ベイト、すなわちエピトープは、第1のDBD(図7のDBD1)とのハイブリッドタンパク質分子の一部とされ、完全長タンパク質は、第2の異なるDBD(図7のDBD2)とのハイブリッドタンパク質の一部とされる。Abは、選択されるためには両方のベイトに結合しなければならない。選択可能な栄養要求性物質を活性化する選択可能な栄養要求性レポーター遺伝子(非限定的な例として、Leu経路に関与する遺伝子)の上流に組み込まれたオペレーターの同系DNA結合エレメントにDBD1を結合させることにより、および、別の選択可能な栄養要求性物質を活性化する別の選択可能な栄養要求性レポーター遺伝子(非限定的な例として、His経路に関与する遺伝子)の上流に組み込まれたオペレーターの別の同系DNA結合エレメントにDBD2を結合させることにより、これを実施することができ、その場合、選択は、両方のアミノ酸(所与の例ではLeuおよびHis)を欠く培地中で実施される。第2の選択は、同時または逐次的に実施される。
【0051】
高等生物に由来する完全長タンパク質を酵母において発現させることは困難な場合がある。したがって、強化された選択プロセスの別の態様において、完全配列の代わりに、標的エピトープを含むタンパク質の大きな一部分が第2の選択で使用される。
【0052】
強化された選択が望ましい他の状況が企図される。1つのこのような他の例において、目的は、共通のエピトープ配列または立体構造を有する多数の異なるタンパク質に結合するAbを同定することである。
【0053】
宿主細胞以外の種に由来する標的タンパク質またはタンパク質の標的エピトープは、それが宿主細胞において産生された場合、天然の宿主細胞において典型的に呈する「天然の」立体構造の形をとると先験的に推測すべきではない。天然の立体構造ではないタンパク質に対してツーハイブリッドで選択されたscFv分子は、インビボにおける標的タンパク質への結合物として不適切である場合がある。このことは、例えば、このようなscFv分子の治療用候補としての価値を低減すると思われる。さらに、いくつかの完全長タンパク質は、個々のエピトープと比べた場合に、酵母において産生されないか、または十分に産生されない場合がある;標的タンパク質の産生が低レベルであることにより、そのタンパク質に対して望ましいscFv分子を選択できる可能性が低下し得る。非酵母タンパク質の場合、個々のエピトープは酵母において完全長タンパク質より高いレベルで産生され得るが、scFv分子を選択するために個々のエピトープを使用すると、完全長タンパク質のフォールディングによって寄せ集められる不連続ドメインに結合するscFv分子の選択を妨げる可能性がある。上記の制限に対するアプローチは、標的にしたいと望むタンパク質内の特定の部位に対してより「天然な」三次元構造を作り出す骨格またはリンカーの使用である。このようなリンカーまたは骨格は、様々にアミノ酸、化学物質、またはこれら2種の組合せからさまざまに構成され得るが、ツーハイブリッドのようなインビボ用途のためには、リンカーおよび/または骨格はアミノ酸から構成されるのが最も好都合である。タンパク質モデリングおよび/または三次元測定が、リンカーおよび/または骨格の最適な大きさおよび構造を予測するために当技術分野において典型的に使用される。
【0054】
前述の発明の1つの態様において、ツーハイブリッド選択における標的ベイトは、エピトープがより天然の構造を呈するような方法で、DBDとのハイブリッドタンパク質中に1つまたは複数のリンカーおよび/または骨格と共に1つまたは複数のエピトープを含む。別の態様において、選択されるscFv分子がリンカーおよび/または骨格ではなく標的エピトープに結合するものとなるように、同じ1つまたは複数のリンカーおよび/または骨格を含む(ただし標的エピトープは含まない)、第2のDBDとのハイブリッドタンパク質中に非標的ベイトが対抗選択としてさらに存在する。
【0055】
これらの方法の使用を容易にするためにキットが使用され得る。これらのキットは典型的には、1つの大きな容器内にすべて含まれる個別の容器中に個々の構成要素を含む。いくつかの態様において、DNAベクターおよび/またはレポーター遺伝子が単離される。いくつかの態様において、それらは宿主細胞中に存在してよい。この細胞は、液体形態、脱水形態、凍結乾燥形態、または凍結形態で提供されてよい。DNAも同様に、液体形態もしくは乾燥形態であるか、単離されているか、または細胞中に存在してよい。キット内に予め作製されたAbライブラリーを提供することが簡便な場合がある。あるいは、購買者が独自のライブラリーを作製する方を好む場合もある。後者の場合、キットは、Ab相補性決定領域(CDR)に対するフレームワークを含み、CDRを含まないベクターを任意で含んでよい。供給され得る任意の反応物には、組換え構築物を作製するための酵素、例えば、DNAリガーゼおよび制限エンドヌクレアーゼ、レポーター遺伝子を検出する際に使用するための基質、細胞増殖培地、レポーター遺伝子を発現する細胞の選択のための選択剤が含まれる。ハイブリッドタンパク質の構築およびレポータータンパク質の分析に関する、書面による取扱い説明書がキットと共に供給されてよい。書面による取扱い説明書は、紙製品として、コンピューターで読取り可能なデータ記憶媒体で、またはインターネット情報源へのアドレスとして、キット内に供給されてよい。
【0056】
レポータータンパク質発現のために必要とされるストリンジェンシーを調節するために様々な組換え技術が使用され得ることが認識されるであろう。これは、正の調節タンパク質または負の調節タンパク質が結合し得る1つまたは一連のオペレーターエレメントの使用を含み得る。このようなエレメントの間隔を変更してストリンジェンシーを変更することができる。変異を用いてストリンジェンシーを変更することができる。当技術分野において公知である任意の技術を用いて、シグナルとバックグラウンドを適切に識別する確実なアッセイ法を確立することができる。
【0057】
上記のように、本発明の方法は、第1のレポーターおよび第2のレポーターが1つの細胞において発現され分析されるか、またはそれらが複数の細胞において別々に発現され分析され得る構成で使用され得る。第1のレポーターおよび第2のレポーターは、誘導物質または他の条件的発現アプローチを用いて、時間的観点から別々に発現させることができる。
【0058】
本明細書の全体にわたって第1のレポータータンパク質および第2のレポータータンパク質を説明するが、さらなるレポータータンパク質も使用され得る。これらは、第1のレポータータンパク質および/または第2のレポータータンパク質の確認として使用され得る。さらなるレポーターを用いることにより、様々なレベルのストリンジェンシーの相互作用を同時に評価することができる。例えば、1つのレポーターはストリンジェントではなくてよく、付加的なレポーターの方がよりストリンジェントであってよい。あるいは、1つのレポーターは非定量的であってよく、他方は定量的な読出し情報を提供してよい。
【0059】
DNA結合ドメインが本明細書の全体にわたって使用されるが、当技術分野において公知であるように、RNA結合ドメインもまた使用され得る。例えば、米国特許第5,750,667号を参照されたい。
【0060】
1つの細胞から別の細胞への遺伝子構築物の移入は、当技術分野において公知である技術のいずれかを用いて実施することができる。これらには、非限定的に、接合、形質転換、トランスフェクション、エレクトロポレーション、細胞融合、コーティングされた粒子の弾道的移入(ballistic transfer)、ウイルスを介した移入、リポソームを介した移入、ナノ粒子を介した移入、および接合が含まれる。移入は、(生物化学的もしくは遺伝学的に)単離された遺伝子エレメントを用いて、または遺伝子エレメントを混合した集団を用いて、すなわちまとめて、実施することができる。
【0061】
酵素、薬剤耐性タンパク質、蛍光タンパク質、生物発光タンパク質を含む、当技術分野において公知である任意のタイプのレポーター遺伝子が使用され得る。前述したように、一部の状況では、レポーター遺伝子発現の定量化が望ましい。他の状況では、定量化が必要ではない場合がある。
【0062】
宿主細胞の培養は、液体培地または固形培地上で行われてよい。混合した集団または同種の集団を培養することができる。栄養素、温度、誘導物質、抑制物質、抗体などの条件を改変して、ハイブリッドおよびレポーター遺伝子の発現を操作することができる。
【0063】
宿主細胞の集団は、同種または異種でよい。同種の集団は、遺伝的に同一な細胞を含む。異種の集団は、異なる遺伝子エレメントを含む細胞を含む。集団中の宿主細胞は、任意の形態でよく、凍結したもの、新鮮なもの、凍結乾燥したもの、胞子などでよい。これらは、培養培地または保存培地中に存在してよい。これらは固体支持体上にあってよい。これらは、容器、仕切られた区画、または乳濁液内に含まれてよい。これらはライブラリーとしてマイクロタイター皿中に配列されてよい。これらは播種器具上に供給されてよい。同様に、ベクターは、その生物活性および完全性をベクターが保持することを可能にする任意の物理的形態で、同種調製物または異種調製物中で供給されてよい。
【0064】
細胞の選択は、所望の遺伝子構築物も所望のタンパク質-タンパク質相互作用も無い状況での非許容条件に細胞を供することによって遂行することができる。また、所望の遺伝子構築物または所望のタンパク質-タンパク質相互作用の存在下でのみ生じる所望の表現型を同定することによっても、選択を遂行することができる。このようにして、選択された細胞を同定することができ、選択されなかった細胞を除外することができる。
【0065】
上記の開示は、本発明を全体として説明する。本明細書において開示される参考文献はすべて、参照により明確に組み入れられる。より完全な理解は、以下の具体的な実施例を参照することにより得ることができ、これらの実施例は、例証のために本明細書において提供されるにすぎず、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【0066】
実施例
特異的Abをライブラリープールから選択することができる。本発明者らは、酵母において機能的であることが公知のフレームワークを用いてscFvライブラリーを作製し、24種のベイトを用いてこれをスクリーニングした。ベイトの選択は比較的任意であり、表Iにこれらを示す。これらのベイトはサイズが異なり、7種の異なるタンパク質の異なる部分を構成した。ライブラリーのための一定のフレームワーク鋳型は、コンセンサスなscFvであった。変異誘発オリゴヌクレオチド(CDR領域の一部のサイズを変更するための長さの異なるオリゴヌクレオチドを含む)を用いたPCRによって、このscFvのCDRをランダム化し、次いで、完全長scFvに組み立て直した(図3)。このようにして、本発明者らは機能的なフレームワークを有する所定のscFvを作製し、次いで、PCRによってその構築物のCDRに可変性を導入した。
【0067】
(表1)説明したスクリーニングにおいて使用したベイト。太字フォントのベイトは、自己活性化因子であることが判明し、scFvライブラリーに対してスクリーニングしなかった。


【0068】
標準的なY2H方法を用いて、24種のベイトをscFvライブラリーに対してスクリーニングした。有効なタンパク質-タンパク質相互作用を示すためにこの実験で使用された2つの表現型マーカーは、ヒスチジンの不在下で増殖する能力(すなわち、His原栄養性への復帰)およびβGal活性の獲得であった。選択を、His不在下での増殖が、「低ストリンジェンシー」(ただし、本発明者らはまた、阻害物質3-ATを用いてHis選択のストリンジェンシーを調節した;下記を参照されたい)であるが、βGalの発現は「高ストリンジェンシー」であるように設計した。これにより、本発明者らは、最初の選択で出来るだけ多くの結合物を同定し、次いでβGal活性に基づいてそれらを区別できるようになった。
【0069】
6種のベイトは、DBDベクター中にクローニングされると、自己活性化することが判明した(表1の太字フォント)。これは、プレイを介した相互作用無しにDNA結合部位にRNAポリメラーゼを動員するこれらのベイトの能力に起因する可能性が高い。これらのベイトはそれ以上探究しなかった。標準的なツーハイブリッド法を用いて、18種の他のベイトを前記ライブラリーに対してスクリーニングした。次いで、His(-)最小プレート上で現れる、各ベイトとのツーハイブリッド相互作用クローン約5〜10個(推定上のscFv「ヒット」)を大腸菌細胞中に回収して、scFvを含むプレイベクターを単離した。これらのプラスミドを酵母一倍体細胞中に再び形質変換し、次いで、(i)残る17種のベイトとの相互作用(オリジナルのスクリーニングで使用されたベイトへの特異性の試験として)および(ii)βGal活性についてさらに試験した(例えば、図4を参照されたい)。いくつかの無関係なベイトに対して反応するscFvがいくつか見出された;これらは非特異的とみなし、それ以上探究しなかった。
【0070】
scFvライブラリーのサイズは小さいが、本発明者らは、3種の異なるタンパク質に由来する4種の異なるベイトに対する特異的Abを単離した。いくつかのscFvが、同じタンパク質の重複領域を含むベイトに対して反応し(例えば、実施例6B5-2、6B5-3、および7F10-9を参照されたい;図4を参照されたい)、エピトープ認識がサイズの異なる断片において保存され得ることが示唆されたことは、非常に有望であった。図4は、例示したAbの内の2つ(scFv6B5-2、scFv75F-1)は、それらを選択した対象のエピトープには結合したが、より大型の標的Agには結合しなかったのに対し、別のAb(scFv6B5-7)は、選択のために使用されたエピトープと完全長標的Agの両方に結合したことをさらに実証する。
【0071】
参考文献
引用される各参考文献の開示は、本明細書に明確に組み入れられる。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の段階を含む、ポリペプチド抗原と単鎖抗体可変断片との相互作用を検出するための方法:
(a)以下を含む宿主細胞の集団を培養する段階:
○転写活性化ドメインが第1のレポーター遺伝子の上またはそれに隣接した第1の結合部位の十分近くに近付けられ、該転写活性化ドメインを含むポリペプチドによって第1のレポーター遺伝子が活性化された場合、第1のレポータータンパク質を発現する第1のレポーター遺伝子;
○転写活性化ドメインが第2のレポーター遺伝子の上またはそれに隣接した第2の結合部位の十分近くに近付けられ、該転写活性化ドメインを含むポリペプチドによって第2のレポーター遺伝子が活性化された場合、第2のレポータータンパク質を発現する第2のレポーター遺伝子;
○以下を含む、第1のハイブリッドタンパク質:
■第1のレポーター遺伝子の上またはそれに隣接した第1の結合部位を認識する第1のDNA結合ドメイン;
■第1のポリペプチド抗原;
○以下を含む、第2のハイブリッドタンパク質:
■転写活性化ドメイン;
■単鎖抗体可変断片;
○以下を含む、第3のハイブリッドタンパク質:
■第2のレポーター遺伝子の上またはそれに隣接した第2の結合部位を認識する第2のDNA結合ドメイン;
■第2のポリペプチド抗原;
ここで、宿主細胞における第1のポリペプチド抗原と単鎖抗体可変断片の相互作用が原因となって、転写活性化ドメインが第1のレポーター遺伝子の転写を活性化し、
宿主細胞における第2のポリペプチド抗原と単鎖抗体可変断片の相互作用が原因となって、転写活性化ドメインが第2のレポーター遺伝子の転写を活性化し、
集団中の細胞は、ポリペプチド抗原に関して同種であり、かつ単鎖抗体可変断片に関して異種である;
(b)(i)第1のレポーター遺伝子を発現するが、第2のレポーター遺伝子を発現しないか、または(ii)第1のレポーター遺伝子および第2のレポーター遺伝子を発現する細胞を選択する段階であって、第1のレポーター遺伝子の発現が、細胞における第1のポリペプチド抗原と単鎖抗体可変断片との相互作用を示し、第2のレポーター遺伝子の発現が、細胞における第2のポリペプチド抗原と単鎖抗体可変断片との相互作用を示す、段階。
【請求項2】
宿主細胞が以下をさらに含む、請求項1記載の方法:
○以下を含む、第4のハイブリッドタンパク質:
○第2のレポーター遺伝子の上またはそれに隣接した第2の結合部位を認識する第2のDNA結合ドメイン;
○第3のポリペプチド抗原。
【請求項3】
第3のハイブリッドタンパク質が、以下をさらに含む、請求項1記載の方法:
○少なくとも1つの第3のポリペプチド抗原。
【請求項4】
宿主細胞が以下をさらに含む、請求項1記載の方法:
○以下を含む、第4のハイブリッドタンパク質:
○第3のレポーター遺伝子の上またはそれに隣接した第3の結合部位を認識する第3のDNA結合ドメイン;
○第3のポリペプチド抗原;および
○転写活性化ドメインが第3のレポーター遺伝子の上またはそれに隣接した結合部位の十分近くに近付けられ、該転写活性化ドメインを含むポリペプチドによって第3のレポーター遺伝子が活性化された場合、第3のレポータータンパク質を発現する第3のレポーター遺伝子。
【請求項5】
第1のポリペプチド抗原および第2のポリペプチド抗原が、1つのタンパク質ファミリーのメンバーであり、ランダムを上回る程度の相同性を有する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
第1のポリペプチド抗原、第2のポリペプチド抗原、および第3のポリペプチド抗原が、1つのタンパク質ファミリーのメンバーであり、ランダムを上回る程度の相同性を有する、請求項2、3、および4のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
第1のポリペプチド抗原および第2のポリペプチド抗原が、単一のタンパク質の別個のエピトープを含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
第1のポリペプチド抗原および第2のポリペプチド抗原が、1つのタンパク質のエピトープを含み、第2のポリペプチドが、第1のポリペプチドよりも大きな該タンパク質の部分を含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
第1のポリペプチド抗原および第2のポリペプチド抗原が異なるが、少なくとも1つの共通のエピトープを含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
第1のレポータータンパク質により、さもなければ許容されない条件下での宿主細胞の増殖が可能になる、請求項1記載の方法。
【請求項11】
第2のポリペプチド抗原が、第1のレポーター遺伝子の上またはそれに隣接した結合部位を効率的に認識しない不活性型の第1のDNA結合ドメインを含む、請求項1記載の方法。
【請求項12】
第2のポリペプチド抗原が、第1のレポーター遺伝子の上またはそれに隣接した結合部位を効率的に認識しない不活性型の第1のDNA結合ドメインを含む、請求項3記載の方法。
【請求項13】
第1のレポータータンパク質を分析して、細胞で発現される第1のタンパク質の量を決定することができる、請求項1記載の方法。
【請求項14】
第1のレポータータンパク質を比色測定で分析することができる、請求項1記載の方法。
【請求項15】
第1のレポータータンパク質を蛍光に関して分析することができる、請求項1記載の方法。
【請求項16】
第2のレポータータンパク質が毒性産物を生じる、請求項1記載の方法。
【請求項17】
第1のレポータータンパク質および第2のレポータータンパク質の発現を同時に測定する、請求項1記載の方法。
【請求項18】
第2のレポータータンパク質の発現を測定するのに先立って、第1のレポータータンパク質の発現を測定する、請求項1記載の方法。
【請求項19】
第1のレポータータンパク質および第2のレポータータンパク質の発現を異なる条件下で測定する、請求項1記載の方法。
【請求項20】
第1のハイブリッドタンパク質および第3のハイブリッドタンパク質の発現が第1の誘導物質および第2の誘導物質によって誘導可能であり、宿主細胞が第1の誘導物質および第2の誘導物質に別々に供される、請求項1記載の方法。
【請求項21】
第1のレポータータンパク質が第2のレポータータンパク質と同一である、請求項20記載の方法。
【請求項22】
第1のDNA結合ドメインおよび第2のDNA結合ドメインが同一である、請求項20記載の方法。
【請求項23】
以下の段階を含む、ポリペプチド抗原と単鎖抗体可変断片との相互作用を検出するための方法:
(a)以下を含む第1の宿主細胞の集団を培養する段階:
○転写活性化ドメインが第1のレポーター遺伝子の上またはそれに隣接した結合部位の十分近くに近付けられ、該転写活性化ドメインを含むポリペプチドによって第1のレポーター遺伝子が活性化された場合、第1のレポータータンパク質を発現する第1のレポーター遺伝子;
○以下を含む、第1のハイブリッドタンパク質:
■第1のレポーター遺伝子の上またはそれに隣接した結合部位を認識する第1のDNA結合ドメイン;
■第1のポリペプチド抗原;
○以下を含む、第2のハイブリッドタンパク質:
■転写活性化ドメイン;
■単鎖抗体可変断片;
(b)第2のハイブリッドタンパク質をコードするDNA分子を第1のレポーター遺伝子を発現する細胞から以下を含む第2の宿主細胞に移入する段階:
○転写活性化ドメインが第2のレポーター遺伝子の上またはそれに隣接した第2の結合部位の十分近くに近付けられ、該転写活性化ドメインを含むポリペプチドによって第2のレポーター遺伝子が活性化された場合、第2のレポータータンパク質を発現する第2のレポーター遺伝子;
○以下を含む、第3のハイブリッドタンパク質:
■第2のレポーター遺伝子の上またはそれに隣接した第2の結合部位を認識する第2のDNA結合ドメイン;
■第2のポリペプチド抗原;
ここで、第1の宿主細胞における第1のポリペプチド抗原と単鎖抗体可変断片との相互作用が原因となって、第1の転写活性化ドメインが第1のレポーター遺伝子の転写を活性化し、
第2の宿主細胞における第2のポリペプチド抗原と単鎖抗体可変断片との相互作用が原因となって、第2の転写活性化ドメインが第2のレポーター遺伝子の転写を活性化し、
第1の宿主細胞の集団中の細胞は、第1のポリペプチド抗原に関して同種であり、かつ単鎖抗体可変断片に関して異種である;
(c)第2のハイブリッドタンパク質をコードするDNA分子を含むが、(i)第2の宿主細胞において第2のレポーター遺伝子を発現しないか、または(ii)第2の宿主細胞において第2のレポーター遺伝子を発現する第2の宿主細胞を選択する段階であって、第1の宿主細胞の集団中の細胞における第1のレポーター遺伝子の発現が、第1のポリペプチド抗原と単鎖抗体可変断片との相互作用を示し、第2のレポーター遺伝子の発現が、第2の宿主細胞における第2のポリペプチド抗原と単鎖抗体可変断片との相互作用を示す、段階。
【請求項24】
段階(b)において、第1のレポーター遺伝子を発現する複数の細胞に由来する第2のハイブリッドタンパク質をコードする複数のDNA分子をまとめて第2の宿主細胞に移入する、請求項23記載の方法。
【請求項25】
第1のハイブリッドタンパク質および第3のハイブリッドタンパク質が同一のDNA結合ドメインを含む、請求項1または23記載の方法。
【請求項26】
第1のハイブリッドタンパク質および第3のハイブリッドタンパク質の発現が、それぞれ第1の誘導物質および第2の誘導物質によって誘導可能である、請求項25記載の方法。
【請求項27】
第1のポリペプチド抗原および第2のポリペプチド抗原が1つのタンパク質のエピトープを含み、かつ第2のポリペプチドが、第1のポリペプチドよりも大きな比率(percentantigene)の該タンパク質を含む、請求項23記載の方法。
【請求項28】
第1のポリペプチド抗原および第2のポリペプチド抗原が異なるが、少なくとも1つの共通のエピトープを含む、請求項23記載の方法。
【請求項29】
第2のポリペプチド抗原が、第1のレポーター遺伝子の上またはそれに隣接した結合部位を効率的に認識しない不活性型の第1のDNA結合ドメインを含む、請求項23記載の方法。
【請求項30】
第3のハイブリッドタンパク質が、少なくとも1つの第3のポリペプチド抗原をさらに含む、請求項23記載の方法。
【請求項31】
第2のポリペプチド抗原が、第1のレポーター遺伝子の上またはそれに隣接した結合部位を効率的に認識しない不活性型の第1のDNA結合ドメインを含む、請求項30記載の方法。
【請求項32】
以下を含む、宿主細胞の集団:
○転写活性化ドメインが第1のレポーター遺伝子の上またはそれに隣接した第1の結合部位の十分近くに近付けられ、該転写活性化ドメインを含むポリペプチドによって第1のレポーター遺伝子が活性化された場合、第1のレポータータンパク質を発現する第1のレポーター遺伝子;
○転写活性化ドメインが第2のレポーター遺伝子の上またはそれに隣接した第2の結合部位の十分近くに近付けられ、該転写活性化ドメインを含むポリペプチドによって第2のレポーター遺伝子が活性化された場合、第2のレポータータンパク質を発現する第2のレポーター遺伝子;
○以下を含む、第1のハイブリッドタンパク質:
■第1のレポーター遺伝子の上またはそれに隣接した第1の結合部位を認識する第1のDNA結合ドメイン;
■第1のポリペプチド抗原;
○以下を含む、第2のハイブリッドタンパク質:
■転写活性化ドメイン;
■単鎖抗体可変断片;
○以下を含む、第3のハイブリッドタンパク質:
■第2のレポーター遺伝子の上またはそれに隣接した第2の結合部位を認識する第2のDNA結合ドメイン;
■第2のポリペプチド抗原;
ここで、宿主細胞における第1のポリペプチド抗原と単鎖抗体可変断片との相互作用が原因となって、転写活性化ドメインが第1のレポーター遺伝子の転写を活性化し、
宿主細胞における第2のポリペプチド抗原と単鎖抗体可変断片との相互作用が原因となって、転写活性化ドメインが第2のレポーター遺伝子の転写を活性化し、
集団中の細胞は、ポリペプチド抗原に関して同種であり、かつ単鎖抗体可変断片に関して異種である。
【請求項33】
第1のレポーター遺伝子および第2のレポーター遺伝子が同一であり、かつ第1のハイブリッドタンパク質および第3のハイブリッドタンパク質の発現が第1の誘導物質および第2の誘導物質によって誘導可能である、請求項32記載の宿主細胞の集団。
【請求項34】
細胞が、細菌細胞、哺乳動物細胞、酵母細胞、および昆虫細胞からなる群より選択される、請求項1または請求項23記載の方法。
【請求項35】
細胞が、細菌細胞、哺乳動物細胞、酵母細胞、および昆虫細胞からなる群より選択される、請求項32記載の細胞の集団。
【請求項36】
第1のポリペプチド抗原および第2のポリペプチド抗原が、1つのアミノ酸多型を別にすれば同一である、請求項1記載の方法。
【請求項37】
第1のポリペプチド抗原および第2のポリペプチド抗原が、1つの変異を別にすれば同一である、請求項1記載の方法。
【請求項38】
第1のポリペプチド抗原および第2のポリペプチド抗原が、1つのアミノ酸多型を別にすれば同一である、請求項32記載の宿主細胞の集団。
【請求項39】
第1のポリペプチド抗原および第2のポリペプチド抗原が、1つの変異を別にすれば同一である、請求項32記載の宿主細胞の集団。
【請求項40】
第3のハイブリッドタンパク質が、少なくとも1つの第3のポリペプチド抗原をさらに含む、請求項32記載の宿主細胞の集団。
【請求項41】
第2のポリペプチド抗原が、第1のレポーター遺伝子の上またはそれに隣接した結合部位を効率的に認識しない不活性型の第1のDNA結合ドメインを含む、請求項40記載の宿主細胞の集団。
【請求項42】
第2のポリペプチド抗原が、第1のレポーター遺伝子の上またはそれに隣接した結合部位を効率的に認識しない不活性型の第1のDNA結合ドメインを含む、請求項32記載の方法。
【請求項43】
単一の容器または中が仕切られた容器中に以下を含む、キット:
○転写活性化ドメインが第1のレポーター遺伝子の上またはそれに隣接した第1の結合部位の十分近くに近付けられ、該転写活性化ドメインを含むポリペプチドによって第1のレポーター遺伝子が活性化された場合、第1のレポータータンパク質を発現する第1のレポーター遺伝子;
○転写活性化ドメインが第2のレポーター遺伝子の上またはそれに隣接した第2の結合部位の十分近くに近付けられ、該転写活性化ドメインを含むポリペプチドによって第2のレポーター遺伝子が活性化された場合、第2のレポータータンパク質を発現する第2のレポーター遺伝子;
○以下を含む、第1のハイブリッドタンパク質を作製するためのベクター:
■第1のレポーター遺伝子の上またはそれに隣接した第1の結合部位を認識する第1のDNA結合ドメイン;
■および第1のポリペプチド抗原をコードする配列のための挿入部位;
○それぞれ以下を含む、第2のハイブリッドタンパク質をコードするベクターのライブラリー:
■転写活性化ドメイン;
■単鎖抗体可変断片;
○以下を含む、第3のハイブリッドタンパク質を作製するためのベクター:
■第2のレポーター遺伝子の上またはそれに隣接した第2の結合部位を認識する第2のDNA結合ドメイン;
■第2のポリペプチド抗原をコードする配列のための挿入部位;
ここで、宿主細胞における第1のポリペプチド抗原と単鎖抗体可変断片との相互作用が原因となって、転写活性化ドメインが第1のレポーター遺伝子の転写を活性化し、
宿主細胞における第2のポリペプチド抗原と単鎖抗体可変断片との相互作用が原因となって、転写活性化ドメインが第2のレポーター遺伝子の転写を活性化する。
【請求項44】
第1のハイブリッドタンパク質、第2のハイブリッドタンパク質、および第3のハイブリッドタンパク質を発現させるための宿主細胞をさらに含む、請求項1記載のキット。
【請求項45】
第1のレポーター遺伝子および第2のレポーター遺伝子が宿主細胞中に存在する、請求項1記載のキット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2010−538659(P2010−538659A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−525107(P2010−525107)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【国際出願番号】PCT/US2008/076662
【国際公開番号】WO2009/039166
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(510046435)アフォミックス コーポレイション (3)
【Fターム(参考)】