説明

デュアル硬化接着剤配合物

主成分として、重合可能な成分と、周囲温度ラジカル重合触媒系と、光開始剤とを含む接着剤組成物。接着剤は、接着促進剤と、強化剤と、エポキシと、充填剤材料とを任意選択で含むことができる。さらに、(i)少なくとも1つの遊離ラジカル重合可能なモノマーと、(ii)少なくとも1つの還元剤と、(iii)光開始剤とを含む第一の部分と、周囲温度で還元剤と反応することによって、遊離ラジカル重合を開始および伝播することが可能である遊離ラジカルを生成する酸化剤を含む第二の部分とを含む2つの部分からなる反応性接着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、名称「デュアル硬化接着剤配合物」として2006年7月28日に出願した米国仮出願第60/820,680号、および名称「デュアル硬化接着剤配合物」として2006年12月15日に出願した米国仮出願第60/870,143号の利益を主張し、それらを参照により組み込むものである。
【0002】
本発明は、周囲温度硬化系と、光開始剤とを含有する接着剤に関する。この接着剤は、周囲温度硬化系を活性化すること、および接着剤の表面部分を硬化させるために光開始剤を活性化することによって硬化する。
【背景技術】
【0003】
レドックス活性化アクリル構造接着剤は、商品としてよく知られたものであり、その物品は、金属を金属に結合させる目的、および2つの異なる基材用材料を架橋結合させる目的で商業的に使用される。溶接、および機械式固定技法から金属部材の接着結合に置き換わりつつある自動車業界では、アクリル構造接着剤の使用が増加しつつある。しかし、こうした用途によって、これまで利用可能であった接着剤では満たすのが容易でない独特の要件がもたらされている。こうした要件として高い結合強度、および破壊モードの改良が挙げられる。
【0004】
レドックス硬化アクリル接着剤は、一般に、メタクリル酸メチルまたはメタクリル酸などの1つまたは複数の反応性オレフィンモノマーと硬化剤の混合物を含み、硬化または重合は、酸化剤および還元剤を用いる周囲温度レドックス開始機構を介して行われる。典型的な還元剤は、第三級アミンである。アニリンの二置換誘導体が開示されている(3,4−二置換アニリン)(例えば、特許文献1参照)。3,4−二置換されたp−ハロゲン体が開示され、空気阻害の発生が克服されたことが示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
双方が参照により本明細書に組み込まれている特許文献3および特許文献4には、イソシアネートキャップ化オレフィン末端ポリアルカジエンの組合せが開示されている。組成物はまた、オレフィンモノマーなどの遊離ラジカル重合可能なモノマーと、任意選択で第二の重合材料とを含む。好ましい実施形態では、組成物は、やはりリン含有化合物と、周囲温度活性レドックス触媒とを含む接着剤である。
【0006】
アクリル接着剤のさらなる重要な特徴は、表面粘着性および開放時間である。本明細書で使用される「表面粘着性」とは、硬化作用を受けない、施用接着剤の暴露表面上の接着剤量を意味する。かかる未硬化接着剤は、アセンブリの他の部分、または施用装置まで移動することができ、これによって清浄化コストの増加がもたらされる。大気中の酸素は遊離ラジカル反応の強力な阻害剤であるので、表面粘着性の通常の原因は、「空気阻害」と呼ばれる。したがって、表面上の任意の未硬化接着剤の厚さを求めることによって、表面粘着性量を計量することができる。
【0007】
2つの部分からなる反応性接着剤系の典型的な用途では、2つの部分を一緒に混合し、混合した材料を結合のために第一の基材に施用し、次いで、第二の基材を接着剤施用済みの第一の基材に接触させる。かかる混合、施用、および接触のために要する時間は、本明細書では「開放時間」と呼ばれる。
【0008】
当技術分野では、多様な手法を使用することによって、空気阻害を受けた接着剤中の残留粘着性を克服してきた。特許文献5には、プレ接着剤が開示され、このプレ接着剤は、パッケージ材料と組合せ、さらに重合させることによってパッケージ化ホットメルト接着剤組成物を形成し、次いでその組成物を結合の際に使用する。この接着剤は、(a)アルキル基が炭素原子1から20個(例えば、3から18個)を有する非第三級アルキルアルコールのアクリルまたはメタクリルエステルのうちの少なくとも1つを含む重合可能な成分50から100重量部と、(b)前記アクリルまたはメタクリルエステル以外の、少なくとも1つの成分(a)と共重合可能な修飾モノマーを含む重合可能な成分0から50重量部であって、(a)と(b)の和が100重量部に等しくなるような重量部と、(c)有効量の重合開始剤と、(d)有効量の連鎖移動剤とを含む。重合開始剤は光開始剤または熱開始剤であることが好ましい。
【0009】
特許文献6は、構造アセンブリを製造するための方法であって、それぞれの物品が表面を有する少なくとも2つの物品を用意するステップと、少なくとも1つの表面の少なくとも一部分にデュアル硬化接着剤混合物を施用するステップと、接着剤混合物が少なくとも2つの物品の間に配置されるように、少なくとも2つの物品を接合するステップと、構造アセンブリが形成されるように、電子線エネルギーを用いて少なくとも1つの物品を照射することによって接着剤混合物の第一の部分を少なくとも部分的に硬化させるステップであって、接着剤混合物の少なくとも部分的に硬化した第一の部分によって少なくとも2つの物品が接着剤で一緒に結合し、第一の部分は硬化するが、残りの部分は、電子線エネルギーによって未硬化のままであるステップと、接着剤混合物の残りの部分が熱で硬化するようになることが可能であるステップとを含む方法に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4,421,879号明細書
【特許文献2】米国特許第5,932,638号明細書
【特許文献3】米国特許第5,641,834号明細書
【特許文献4】米国特許第5,710,235号明細書
【特許文献5】米国特許第6,294,249号明細書
【特許文献6】米国特許第5,997,682号明細書
【特許文献7】米国特許第4,223,115号明細書
【特許文献8】米国特許第4,452,944号明細書
【特許文献9】米国特許第4,769,419号明細書
【特許文献10】米国特許第4,467,071号明細書
【特許文献11】国際公開第97/39074号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特にアセンブリ構造体が、最も剛性の高い熱可塑性プラスチックなど、熱の適用下で歪む材料から作製される場合には、硬化を開始するためにいかなる熱も追加する必要がない接着剤を提供することが有利となろう。また、空気阻害という課題を克服するために特別の還元剤を使用することがなく、空気に暴露した接着剤中の表面粘着性を速やかに解消することが有利となろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、本発明の一実施形態の目的は、少なくとも1つの遊離ラジカル重合可能なモノマーと、周囲温度ラジカル開始剤系と、光開始剤とを含む接着剤を提供することである。本発明の一実施形態では、アクリル接着剤は、接着促進剤と、強化剤と、エポキシと、充填剤材料とをさらに含む。
【0013】
本発明のさらなる実施形態では、光開始剤は、ホスフィンオキシド光開始剤、α−ヒドロキシケトン、または2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノンを含む。
【0014】
本発明のさらなる他の実施形態では、モノマーは、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸、およびメタクリル酸メチルのうちの少なくとも1つなどのオレフィンモノマーを含む。本発明のさらなる別の実施形態では、モノマーは、20〜70重量%の量で存在する。
【0015】
本発明のさらなる一実施形態では、還元剤は、式(I)などの第三級アミンを含む
【0016】
【化1】

【0017】
[式中、同じでも異なっていてもよいR1およびR2は、それぞれ独立に、直鎖または分枝で飽和または不飽和のC1〜C10アルキル、および直鎖または分枝で飽和または不飽和のC1〜C10ヒドロキシアルキル(すなわち、−OHによって置換されたアルキル)からなる群から選択され;
3およびR4は、それぞれ独立に、水素、および直鎖または分枝で飽和または不飽和のC1〜C10アルキルからなる群から選択され;
Xはハロゲンである]。
【0018】
本発明の代替実施形態では、還元剤は、N,N−ジイソプロパノール−p−クロロアニリン、N,N−ジイソプロパノール−p−ブロモアニリン、N,N−ジイソプロパノール−p−ブロモ−m−メチルアニリン、N,N−ジメチル−p−クロロアニリン、N,N−ジメチル−p−ブロモアニリン、N,N−ジエチル−p−クロロアニリン、およびN,N−ジエチル−p−ブロモアニリンから選択される。
【0019】
本発明の一実施形態では、酸化剤は有機過酸化物を含む。本発明の別の実施形態では、組成物は、リン含有接着促進剤などの接着促進剤をさらに含み、接着促進剤は、主成分の全重量に対して0.01から20重量%を占める。
【0020】
本発明のさらなる他の実施形態では、組成物は、ヒドロキシル末端ポリアルカジエンから製造されるオレフィン末端液体エラストマ−などの強化剤をさらに含む。本発明の別の実施形態では、強化剤はA−B−Aブロックコポリマーを含み、Aブロックは、スチレン、環アルキル化スチレン、またはそれらの混合物から選択され、Bブロックは、共役ジエンまたはエチレン−プロピレンから選択されたTgが低いエラストマーセグメントである。
【0021】
本発明のさらなる別の実施形態では、強化剤は、約1から10重量%の量で存在し、別の実施形態では、組成物は、主成分の全重量に対して約1から約15重量%の量で存在する補助強化剤を含む。
【0022】
本発明の第二の態様では、少なくとも1つの遊離ラジカル重合可能なモノマーと、少なくとも1つの還元剤と、光開始剤とを含む第一の部分と、周囲温度で還元剤と反応することによって、遊離ラジカル重合を開始および伝播することが可能である遊離ラジカルを生成する酸化剤を含む第二の部分とを含む2つの部分からなる反応性接着剤が提供される。
【0023】
本発明の一実施形態では、2つの部分からなる反応性接着剤は、約18,000超のMwまたは約10,000超のMnを有する高分子量補助強化剤をさらに含む。そして本発明の別の実施形態では、2つの部分からなる反応性接着剤は、0.1から20重量%の、1つまたは複数のオレフィン基を有するリン含有化合物をさらに含む。
【0024】
本発明の第三の態様では、基材を一緒に結合させることによってアセンブリを形成する方法であって、
a)重合可能な成分と、周囲温度ラジカル触媒系と、光開始剤とを含む接着剤に基材を接触させるステップと、
b)結合ライン中の過剰の接着剤が空気に曝露されるようになるまで基材を一緒に加圧することによって基材を接合するステップと、
c)周囲温度ラジカル触媒系によって接着剤が部分的なまたは全部の強度を発達させることが可能になるステップと、
d)空気曝露接着剤を活性化電磁エネルギーにさらすことによって接着剤の曝露部分を硬化させるステップと、を含む方法が提供される。
【0025】
本発明の第四の態様では、基材を一緒に結合させることによってアセンブリを形成するための方法であって、
a)接着剤が、双方の基材を接触させ、基材間の領域を少なくとも部分的に充填し、少なくとも部分的に空気に曝露されるように、重合可能な成分と、周囲温度ラジカル触媒系と、光開始剤とを含む接着剤を2つの基材間に施用するステップと、
b)接着剤が、周囲温度ラジカル触媒系を介して少なくとも部分的に硬化することが可能になるステップと、
c)空気に曝露した接着剤部分を活性化電磁エネルギーで照射することによって光開始剤を介して接着剤の曝露部分を硬化させるステップと、を含む方法が提供される。
【0026】
本発明の第五の態様では、ヘムフランジアセンブリを形成する方法であって、
(a)第二のパネルのエッジが、第一のパネルのエッジを超えて延在するように、第二のパネルに隣接させるが接触はさせないように第一のパネルを配置するステップと、
(b)重合可能な成分と、周囲温度ラジカル触媒系と、光開始剤とを含む接着剤を2つのパネルの重なる部分の間に供給するステップと、
(c)第二のパネルの重なっていない部分を第一のパネルのエッジ上に折りたたむステップと、
(d)所定の距離だけ離れたままである点までパネルが相互に移動し、接着剤の少なくとも一部分が、第一および第二パネル間のギャップに滞留し、接着剤の一部分が大気に曝露されるように、パネルの重なる部分に圧力をかけるステップと、
(e)周囲温度での硬化が行われることが可能になるステップと、
(f)接着剤の曝露部分を電磁エネルギーにさらすことによって接着剤の曝露部分を硬化させるステップと、を含む方法が提供される。
【0027】
本発明の別の実施形態では、接着剤の曝露部分を電磁エネルギーにさらす前は、接着剤の曝露表面が粘着性であり、接着剤の曝露部分を電磁エネルギーにさらした後、表面が非粘着性である。
【0028】
本発明のさらなる別の実施形態では、電磁エネルギー源を備えるロボットアームによって、接着剤が電磁エネルギーに曝露され、別の実施形態では、制御可能なロボットアーム上に取り付けられたアプリケータチップを介して、接着剤が分配される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
空気阻害を受けることが知られている周囲温度硬化可能接着剤は、本発明の一実施形態に従って、有効量の光開始剤で処理される。驚くべきことには、レドックス開始系は、光開始剤を妨害せず、空気に暴露した接着剤は、表面の解消とともに局部的に硬化が進む。加えて、本明細書で記載の配合物は接着剤と呼ばれるが、コーティング、シーラーなどとしてもさらに使用することができる。
【0030】
本明細書では、本発明の多様な実施形態の「主成分」は、少なくとも1つの遊離ラジカル重合可能なモノマー、レドックス開始系を含む周囲温度活性化遊離ラジカル重合開始剤、および光開始剤である。任意選択の成分として、接着促進剤、可塑剤、顔料、充填剤、UV遮蔽剤など、従来の慣用添加剤が挙げられる。
【0031】
加えて、本明細書で使用される「周囲温度」という用語は、接着剤の施用温度、または接着すべき部材を囲む領域の作業環境温度を指す。この温度は、通常、10℃から40℃、好ましくは、17℃と35℃の間であるが、周囲温度が、例えば、光開始剤を活性化するための放射を提供する部屋または筺体では、70℃以上にもなる場合があり得る。主として、周囲温度硬化可能接着剤の利点は、それらがベークサイクル、または接着剤を硬化させるために印加される他の意図的なエネルギーを必要としない点である。例えば、部屋のヒータ、光、または加熱分配装置からの入射エネルギー以外には、接着剤を硬化させるために意図的な熱エネルギーは全く必要としない。
【0032】
モノマー
本発明の一実施形態によれば、好ましい遊離ラジカル重合可能なモノマーは、−C=C−基の存在を特徴とするオレフィンモノマーを含む。代表的なオレフィンモノマーとして、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸エチル、ジエチレングリコールジメタクリレート、メタクリル酸ジシクロペンタジエニルオキシエチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸グリシジル、およびメタクリル酸テトラヒドロフルフリルなどの(メト)アクリル酸エステル;メタクリル酸;アクリル酸;イタコン酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、およびメタクリルアミドなどの置換(メト)アクリル酸;スチレン;ビニルスチレン、クロロスチレン、メチルスチレン、およびn−ブチルスチレンなどの置換スチレン;酢酸ビニル;塩化ビニリデン;ならびに2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエンおよび2−クロロ−1,3−ブタジエンなどのブタジエンが挙げられる。他のオレフィンモノマーとして、マレイン酸エステル;フマル酸エステル;スチレン、クロロスチレン、メチルスチレン、ブチルスチレン、およびビニルスチレンなどのスチレン化合物が挙げられる。
【0033】
本発明の一実施形態では、モノマーは、主成分の10〜90重量%の量で存在する。本発明のさらなる実施形態では、モノマーは、主成分の20〜70重量%の量で存在する。本発明のさらなる他の実施形態では、モノマーは、主成分の30〜60重量%の量で存在する。
【0034】
レドックス開始剤系
一実施形態では、接着剤は、周囲温度反応性レドックス開始剤または触媒系を含有する。周囲温度反応性触媒系は、よく知られたレドックスカップル系であるので、本明細書では深く詳細まで議論する必要はないが、それらは、少なくとも1つの酸化剤と、少なくとも1つの還元剤とを含み、それらは、周囲温度で共反応することによって付加重合反応を開始させ、接着剤を硬化させるのに有効な遊離ラジカルを生成する。適切なレドックス(酸化−還元)開始剤として、限定されないが、メタ亜硫酸水素ナトリウムおよび亜硫酸水素ナトリウムなどの還元剤と過硫酸塩開始剤の組合せ;有機過酸化物および第三級アミン(例えば、過酸化ベンゾイル+ジメチルアニリン)をベースとする系;および有機ヒドロペルオキシドおよび遷移金属、例えば、クメンヒドロペルオキシド+ナフテン酸コバルトをベースとする系が挙げられる。
【0035】
本発明の一実施形態では、実質的に、周知の酸化剤のいずれをも用いることができる。代表的な酸化剤として、限定されないが、過酸化ベンゾイルおよび他の過酸化ジアシルなどの有機過酸化物、クメンヒドロペルオキシドなどのヒドロペルオキシド、β−ブチルペルオキシベンゾエートなどのペルエステル;メチルエチルケトンヒドロペルオキシドなどのケトンヒドロペルオキシド、ナフテン酸コバルトなど遷移金属の有機塩、および塩化スルホニルなどの不安定塩素を有する化合物が挙げられる。
【0036】
代表的な還元剤として、限定されないが、スルフィン酸;アゾイソ酪酸ジニトリルなどのアゾ化合物;ビス(トリスルホンメチル)−ベンジルアミンなどのα−アミノスルホン;ジイソプロパノール−p−トルイジン(DIIPT)、ジメチルアニリン、p−ハロゲン化アニリン誘導体、およびジメチル−p−トルイジンなどの第三級アミン;ならびにアミンアルデヒド縮合生成物、例えば、ブチルアルデヒドなどの脂肪族アルデヒドとアニリンまたはブチルアミンなどの第一級アミンの縮合生成物が挙げられる。好ましい還元剤は、式(I)を有するp−ハロゲン化アニリン誘導体である
【0037】
【化2】

【0038】
[式中、同じでも異なっていてもよいR1およびR2は、それぞれ独立に、直鎖または分枝で飽和または不飽和のC1〜C10アルキル、および直鎖または分枝で飽和または不飽和のC1〜C10ヒドロキシアルキル(すなわち、−OHによって置換されたアルキル)からなる群から選択され;R3およびR4は、それぞれ独立に、水素、および直鎖または分枝で飽和または不飽和のC1〜C10アルキルからなる群から選択され;Xはハロゲンである]。
【0039】
式(I)の好ましい実施形態では、R1およびR2は、それぞれ独立に、C1〜C4アルキル、およびC1〜C4ヒドロキシアルキルからなる群から選択され、より好ましくは、R1およびR2はそれぞれ、同じであり、メチルまたはイソプロパノールであり;R3およびR4はそれぞれ水素であり;Xは、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素であり、より好ましくは、塩素または臭素である。還元剤の例として、限定されないが、N,N−ジイソプロパノール−p−クロロアニリン、N,N−ジイソプロパノール−p−ブロモアニリン、N,N−ジイソプロパノール−p−ブロモ−m−メチルアニリン、N,N−ジメチル−p−クロロアニリン、N,N−ジメチル−p−ブロモアニリン、N,N−ジエチル−p−クロロアニリン、およびN,N−ジエチル−p−ブロモアニリンである。
【0040】
適切な還元剤である第三級アミンとして、次式を有するものが挙げられる
【0041】
【化3】

【0042】
[式中、Zはメチレンであり;Yは、水素、ヒドロキシ、アミノ、C1からC8アルキル、好ましくは、C1からC4アルキル、およびC1からC8アルコキシ、好ましくは、C1からC4アルコキシからなる群から選択され、aは0または1であり;bは1または2である]。この第三級アミンは、上記の不飽和有機リン化合物を含有する接着実施形態の硬化を加速する際に有利である。本文脈で特に好ましい第三級アミンは、N,N−ジメチルアニリンおよびN,N−ジメチルアミノメチルフェノールである。レドックスカップル触媒系とともに周知の加速剤および促進剤を使用することは有利であり得る。例えば、ジメチルアミノメチルフェノール、またはナフテン酸銅もしくはナフテン酸コバルトなどの遷移金属有機塩を用いることができる。
【0043】
好ましくは、酸化剤は、重合可能な接着剤組成物の約0.5から約50重量%の範囲の量で存在することになり、還元剤の量は、重合可能な接着剤組成物の約0.05から約10重量%、好ましくは、約0.1から約6重量%の範囲となる。
【0044】
光開始剤
光増感剤または光開始剤は、オレフィン性不飽和種の反応性をさらに促進することができる。光開始剤活性化ラジカル硬化系として用いられる有用な光開始剤は、当技術分野で周知である。適切な例として、ベンジルジメチルケタールおよび1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのアセトフェノン、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノンなどの置換α−ケトール、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾインエーテル、アニソインメチルエーテルなどの置換ベンゾインエーテル、塩化芳香族スルホニル、光活性オキシム、2−イソプロピルチオキサントンと4−イソプロピルチオキサントンのブレンドなどチオキサントンベースの光開始剤、ならびに2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドなどのホスフィンオキシド光開始剤が挙げられる。本発明の一実施形態では、好ましい光開始剤は、α−ヒドロキシケトン開始剤を含む。
【0045】
代表的な光開始剤として、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2,2 ジメトキシ−1,2 ジフェニルエタン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0046】
本発明の一実施形態では、光開始剤は、全モノマー100部当り、約0.001から約10.0重量部、好ましくは、全モノマー100部当り、約0.01から約5.0重量部の量で使用される。
【0047】
光開始剤は、接着剤配合物の他の構成成分との相容性、および活性化放射の所望の波長を含めての多数の因子に応じて選択される。本発明の好ましい実施形態では、光開始剤は、活性化放射が、近紫外および遠または真空紫外放射を含めての4から1000ナノメートルの任意の波長;可視放射;ならびに近赤外放射を含むように選択される。さらにより好ましい実施形態では、活性化放射は、約10から約400ナノメートルの波長を含み;本発明の別の好ましい実施形態では、約400から約700ナノメートルの波長を含む。本発明のさらなる他の実施形態では、放射は、誘電バリア放電エキシマランプからのインコヒーレントのパルス化紫外放射、または水銀ランプからの放射となる。
【0048】
強化剤
任意選択で、強化剤ポリマーは、主成分の約0から80重量%、より好ましくは、2〜50重量%で使用することができる。一例としての低分子量強化剤は、約18,000未満の重量平均分子量(Mw)、または約10,000未満の数平均分子量(Mn)を有する。強化剤ポリマー材料は、それ自体で重合可能かまたは少なくとも1つの上記の遊離ラジカル重合可能なモノマーと共重合可能であるオレフィン性不飽和構造を含んでも含まなくてもよい。重合材料は、例えば、多様な固体および液体エラストマー重合材料、特に、その全体の開示が参照により本明細書に組み込まれている特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献3、および特許文献4に記載の液体オレフィン末端エラストマー;ならびに、その全体の開示が参照により本明細書に組み込まれている特許文献7、特許文献8、特許文献10、および特許文献9に記載のイソシアネート官能性プレポリマーとヒドロキシ官能性モノマーのオレフィンウレタン反応生成物であり得る。
【0049】
特許文献11に開示の代表的なオレフィン末端液体エラストマーとして、ブタジエンホモポリマー、ブタジエンと少なくとも1つのそれと共重合可能なモノマー、例えば、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリルのコポリマー(例えば、ポリ(ブタジエン−(メト)アクリロニトリル)またはポリ(ブタジエン−(メト)アクリロニトリル−スチレン))、およびそれらの混合物;ならびに少なくとも1つの官能性モノマー(アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸、スチレン、および例えばメタクリレート末端ポリブタジエンホモポリマーおよび/またはコポリマーをもたらすメタクリル酸メチルなどの)の最高約5重量%までの微量のエラストマー材料とそれらが共重合することによって修飾された上記のブタジエンのホモポリマーおよびコポリマーなどの修飾エラストマーポリマー材料が挙げられる。好ましい強化剤ポリマーは、特許文献3に記載のヒドロキシル末端ポリアルカジエンから製造されたオレフィン末端液体エラストマーである。強化剤ポリマーの他の例は、特許文献9に記載のカルボン酸末端アルカジエンから製造されたウレタン修飾オレフィン末端液体エラストマーである。
【0050】
スチレン−イソプレン−スチレンA−B−Aブロックコポリマーなどの強化剤も有用である。典型的な形状として、線状三ブロック、放射状、分枝、および傾斜状の幾何形状が挙げられる。Aブロックは、使用温度で剛性であり、Bブロックは、通常、使用温度でエラストマー性である。有用なコポリマーとして、Aブロックが、ポリスチレン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、および他の環アルキル化スチレン、ならびに上記全てのうちの一部の混合物であり、Bが、平均分子量約5,000から約500,000を有するエラストマー性共役ジエン、すなわち、イソプレンであるものが挙げられる。
【0051】
本発明のさらなる実施形態では、補助強化剤が、主強化剤と合わせて使用される。補助強化剤ポリマーは、主成分の1〜15重量%、より好ましくは、約1〜10重量%の典型的な濃度で含ませることができる。補助強化剤ポリマーの例は、約18,000超のMw、または約10,000超のMnを有するポリマーである。本発明の一実施形態で使用可能な他の強化剤として、限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン−ブタジエン、ポリクロロプレン、EPDM、塩化ゴム、ブチルゴム、スチレン/ブタジエン/アクリロニトリルゴム、およびクロロスルホン化ポリエチレンを含めてのブロックコポリマーおよびランダムコポリマーが例えば挙げられる。
【0052】
接着促進剤
本発明のさらなる実施形態は、接着促進剤をさらに含む。本発明の一実施形態による接着促進剤は、当業者にとってアクリル接着剤の接着を促進するのに有用であることが周知である任意の接着促進剤を含む。本発明の一実施形態による好ましい接着促進剤は、金属接着を向上させ、少なくとも1つのP−OH基、およびオレフィン基が存在することを特徴とする好ましくは末端に位置する少なくとも1つの有機部分を有するホスフィン酸、ホスホン酸、またはリン酸の任意の誘導体であってもよいリン含有化合物である。かかるリン化合物のリストは、特許文献7に見られる。
【0053】
ビニル不飽和基を有するリン含有化合物は、アリル不飽和基を有するリン含有化合物より好ましく、ビニルまたはアリル、特にビニル不飽和基の一単位を有するホスフィン酸、ホスホン酸、およびリン酸のモノエステルが、現在好ましい。代表的なリン含有化合物として、限定されないが、リン酸;リン酸2−メタクリロイルオキシエチル;リン酸ビス−(2−メタクリロキシルオキシエチル);リン酸2−アクリロイルオキシエチル;リン酸ビス−(2−アクリロイルオキシエチル);リン酸メチル−(2−メタクリロイルオキシエチル);リン酸エチルメタクリロイルオキシエチル;リン酸メチルアクリロイルオキシエチル;リン酸エチルアクリロイルオキシエチル;ビニルホスホン酸;シクロヘキセン−3−ホスホン酸;アルファヒドロキシブテン−2ホスホン酸;1−ヒドロキシ−1−フェニルメタン−1,1−ジホスホン酸;1−ヒドロキシ−1−メチル−1−ジスホスホン酸:1−アミノ−1 フェニル−1,1−ジホスホン酸;3−アミノ−1−ヒドロキシプロパン−1,1−ジスホスホン酸;アミノ−トリス(メチレンホスホン酸);γ−アミノ−プロピルホスホン酸;γ−グリシドオキシプロピルホスホン酸;リン酸−モノ−2−アミノエチルエステル;アリルホスホン酸;アリルホスフィン酸;β−メタクリロイルオキシエチルホスフィン酸;ジアリルホスフィン酸;β−メタクリロイルオキシエチル)ホスフィン酸、およびアリルメタクリロイルオキシエチルホスフィン酸が挙げられる。最も好ましい接着促進剤は、リン酸2−ヒドロキシエチルメタクリレートである。
【0054】
接着促進剤として使用するのに適した追加の群のリン含有化合物は、次式を有するものを含む
【0055】
【化4】

【0056】
[式中、R5は、H、C1からC8、好ましくは、C1からC4アルキル、およびH2C=CH−からなる群から選択され;R6は、H、C1からC6、好ましくは、C1からC4アルキルからなる群から選択され;Aは、−R7O−および(R6O)nからなる群から選択され、R7が脂肪族もしくは脂環式のC1からC9、好ましくは、C2からC6アルキレン基であり、R8がC1からC7アルキレン、好ましくは、C2からC4アルキレン基であり;nは、2から10の整数であり、mは、1もしくは2、好ましくは1である]を有するものを含む。
【0057】
本発明の一実施形態の組成物では、接着促進剤は、接着剤組成物の全量に対して、約0.01から約20重量%、好ましくは、約2から約10重量%の量で存在し得る。
【0058】
エポキシ化合物
本発明のさらなる実施形態では、組成物は、エポキシ成分を任意選択で含む。本発明の一実施形態では、エポキシ成分は、分子当り統計的に1を超えるオキシラン環を有する硬化可能なエポキシ官能性化合物(液体樹脂)を含む(ポリエポキシド)。好ましいエポキシ官能性材料は、分子当り2つのエポキシ基を含有する。モノ官能性エポキシ化合物はまた、反応性希釈剤として働く粘度調整剤としてのポリエポキシド成分と合わせることができる。本発明で使用するのに適したエポキシ樹脂として、多価アルコールのポリグリシジルエーテル、およびポリカルボン酸のポリグリシジルエステルが挙げられる。ポリグリシジルエステルは、エピクロロヒドリンまたはエピブロモヒドリンなどのエピハロヒドリンをシュウ酸、コハク酸、グルタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、および二量体化リノール酸などの脂肪族または芳香族ポリカルボン酸と反応させることによって得ることができる。芳香族ポリオールのポリグリシダールエーテルが好ましく、アルカリの存在下でエピハロヒドリンをポリヒドロキシフェノール化合物と反応させることによって調製される。適切な出発ポリヒドロキシフェノールとして、レゾルシノール、カテコール、ヒドロキノン、ビスフェノールAとも呼ばれるビス(4−ヒドロキシフェニル)−2,2−プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタン、4,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(4−ヒドロキシフェノール)−1,1−エタン、ビス(2−ヒドロキシフェニル)−メタン、および1,5−ヒドロキシナフタレン、ならびにビスフェノールAのジグリシジルエーテルが挙げられる。
【0059】
本発明の一実施形態では、エポキシ成分は、接着剤組成物の全重量に対して2重量%から15重量%、好ましくは、6重量%から13重量%を占める。
【0060】
アプリケーションパッケージ
本発明の多様な実施形態の接着剤は、多数のパッケージ形態をとることができるが、その1つは、一方のパッケージまたは部分が重合可能なまたは反応性の成分と還元剤とを含有し、第二のパッケージまたは部分が酸化剤を含有する複数パックまたは2つの部分からなる接着剤系である。光開始剤は、いずれのパッケージと一緒に含まれてもよいが、本発明の好ましい実施形態では、光開始剤は、還元剤と一緒に含まれる。2つの部分からなる接着剤系は、当技術分野で周知であるのと同様のレオロジー調整剤、ワックス、安定剤、および充填剤を任意選択で含むことができる。
【0061】
使用時に2つの部分を一緒に混合することによって反応性の硬化を開始させる。個々のパッケージを混合した後、接合すべき一方または双方の表面を混合された接着系でコートし、表面を相互に接着させて置く。第二のパッケージは、レドックス触媒系用の酸化剤と、任意選択でエポキシ化合物、接着促進剤、および充填剤とを含む結合活性化剤を含んでよい。結合活性化剤は、
(1)結合活性化剤の全重量に対して約0.5から約50重量%の、レドックスカップル触媒系の酸化剤として機能し得る少なくとも1つの酸化剤と、
(2)結合活性化剤の全重量に対して約30から約99.5重量%の担体ビヒクルと、を含む。
【0062】
結合活性化剤として使用するのに適している担体ビヒクルは、塩化メチレンまたはベンジルフタル酸ブチルなど単純な不活性溶媒または希釈剤、およびかかる溶媒または希釈剤の混合物であってよい。担体ビヒクルは、約5.0重量%を超えない、周囲温度で酸化剤と反応する任意の部分を含有すべきである。担体ビヒクルは、不活性溶媒または希釈剤に加えて少なくとも1つのフィルム形成結合剤を含むより複雑な混合物であってよい。担体ビヒクルは、溶媒、または溶媒とフィルム形成結合剤に加えて、外部可塑剤、柔軟剤、サスペンダー、および安定剤などの添加剤を含有してよいが、こうした添加剤のいずれもが、活性化剤組成物の安定性に許容不可能な程度まで悪影響を及ぼさないという条件においてである。
【0063】
2つの部分からなる系の一例は、
(I)以下のものを含む第一のパッケージと、
(a)(メト)アクリル酸;(メト)アクリル酸のエステル、アミド、またはニトリル;マレイン酸エステル;フマル酸エステル;ビニルエステル;共役ジエン;イタコン酸;スチレン化合物;およびハロゲン化ビニリデンからなる群から選択される、10〜90、好ましくは、20〜70重量%のオレフィンモノマー、
(b)酸化剤と相互作用をすることによって遊離ラジカル重合反応を開始および伝播することが可能である遊離ラジカルを生成する、0.05〜10、好ましくは、0.1〜6重量%の少なくとも1つの還元剤、
(c)全モノマー100部当り0.001から約10.0、好ましくは、0.01から約5.0重量部の光開始剤、
(d)10〜80、好ましくは、20〜50重量%の主強化剤、
(e)任意選択で1〜15、好ましくは、1〜10重量%の補助強化剤、
(f)任意選択で0.01〜20、好ましくは、2〜10重量%の、1つまたは複数のオレフィン基を有するリン含有化合物、
(II)周囲温度活性レドックスカップル触媒系の酸化剤であって、第一および第二のパッケージを混合することによって遊離ラジカル重合を開始および伝播させることが可能である遊離ラジカルを生成する場合、剤(b)と周囲温度で反応し、その量が剤(b)と相互作用するのに十分である酸化剤を含有する結合活性化剤を含む第二のパッケージと、
を含み、
重量%は、主成分の全量に対するものとする。
【0064】
応用
接着剤系を使用することによって鋼、アルミニウム、および銅などの金属表面を、金属、プラスチック、および他のポリマーを含めての多様な基材、強化プラスチック、ファイバ、ガラス、セラミックス、木材などに結合させることができる。本発明の一実施形態の特徴は、本明細書記載の接着剤組成物を用いることによって、鋼、アルミニウム、および銅などの金属基材を結合させることができ、接着剤の施用に先立つ金属表面の予備処理はたとえあったとしてもわずかであることである。さらには、本発明の一実施形態の接着剤系は、周囲温度での有効な結合を提供し、したがって、基材に接着剤系を施用するためにも、硬化させるためにも熱を必要としない。
【0065】
本発明の一実施形態の接着剤は、金属表面を結合させるのに好ましいが、本発明の接着剤組成物は、接着剤を受容することが可能である任意の表面または基材に対する接着剤、プライマーまたはコーティングとして施用してもよい。本発明の接着剤を用いて結合させるのに好ましい金属として、亜鉛、銅、カドミウム、鉄、スズ、アルミニウム、銀、クロム、こうした金属の合金、およびホットディップした電気亜鉛メッキ鋼およびガルバニール鋼を含めての亜鉛メッキ鋼などのかかる金属の金属コーティングまたはメッキが挙げられる。
【0066】
接着剤コーティングは、60ミルを超えない所望の厚さまで、ブラシ、ロール、スプレイ、ドット、ナイフで、または他の方法で一方の基材、、好ましくは、双方の基材に施用してよい。2つの基材が相対的に移動することが予想される装置では、基材は、硬化中固定のためにクランプ止めしてもよい。例えば、金属表面を接着するために、接着剤組成物の接着量が一方の表面、好ましくは、双方の表面に施用され、表面をそれらの間に接着剤組成物がはいるように突き合せる。最適の結果を得るために、接着剤は、厚さ60ミル未満とすべきである。表面の平滑度、およびそれらの間隙(例えば、ナットとボルトの場合における)によって、最適の結合のための所要のフィルム厚さが決定されることになる。表面を結合させるのに十分な程度に接着剤組成物が硬化するまで、2つの前記金属表面および間に入った前記接着剤組成物は、係合状態で維持される。
【0067】
本明細書で議論されたように、本発明の多様な実施形態の接着剤配合物は、多様な用途で用いることができる。オーバーヘムシーラーとしての好ましい用途では、重合材料は、ジョイントを閉じた(ヘムした)後、ヘムフランジジョイントのカットエッジ上に施用される。その主目的は、ジョイントを腐食から保護し、アセンブリに魅力的な化粧仕上げ面を提供することである。
【0068】
上記で議論したように、接着剤は、遊離ラジカル重合を介して硬化するが、この化学薬品が酸素阻害されることによって、接着剤ビーズの表面が適切に硬化することが妨害され、粘着性の部分硬化した薄層がもたらされる。接着剤配合物中に含有された光開始剤によって、適切な量および型の電磁放射に曝露した後、表面硬化(塗装可能で、非粘着性の表面をもたらす)が可能になる。したがって、接着剤の使用では、施用ステップと放射曝露ステップが必要となる。光開始剤硬化は、周囲温度硬化と同時に行ってもよく、周囲温度硬化に続いて行ってもよい。周囲温度硬化は、接着剤系の2つの部分が混合されると直ちに開始されることになるが、硬化速度のために、接着剤が所望の強度に到達するまでに数時間かかることになることは、当業者なら理解されよう。
【0069】
本接着剤の応用、および光開始剤表面硬化は、多様な方法で実施することができるであろう。一部の非限定的実施例が続く。
【0070】
本発明の実施形態の接着剤用途の第一の態様では、接着剤組成物の2つの成分は、バルク容器から計量ユニットにポンプ輸送される。計量ユニットは、ギアポンプ、正変位ロッドメーター、または2つの成分の送出体積流量速度の比が混合ヘッドに先立って正しいことを確実にする他の任意の方法からなることができる。静的ミキサーまたは動的ミキサーで計量成分を合わせることによって混合を実施することができる。次いで、生成混合材料は、直接にシームを超えて部材上にアプリケータチップから押し出される。一度混合されると接着剤の開放時間は限られているので、施用点に近接して混合ヘッドを備えることが望ましく;流量速度が混合ヘッド中で接着剤がゲル化するのを防止するのに十分な速さでない場合、施用と施用の間で混合接着剤をパージすることが必要になる恐れがある。
【0071】
本発明の別の実施形態では、アプリケータチップおよび/または混合ヘッドは、ロボット上に設置することによって、(1)スムースな施用パターン、(2)再現可能なパターン、(3)および流量速度制御と合せて、ロボット速度が、接着剤ビーズの寸法を指示し得ることを確実にする助けとする。ロボット関連で記載の方法は、形状の審美性および再現性が必須でない場合、手動でも実施できるであろう。
【0072】
1つまたは複数の接着すべき部材に接着剤ビーズが一度施用されると、外層は、電磁放射源を用いて表面硬化させなければならない。接着剤の施用の場合と同様に、施用接着剤を表面硬化させるために多様な方法が存在する。
【0073】
本発明の第一の例示的実施形態では、施用接着剤ビーズを有する部材は、囲まれた空間内に移動され、その空間は電磁放射からの空間外遮蔽を提供する。次いで、光バンクの上方、下方、側方などに部材がロボットによって置かれる。部材が光源から特定の距離にある場合、曝露時間は、接着剤ビーズ上に焦点を合わせた電磁エネルギーの量で決まる。大抵の場合、この曝露はわずか2〜3秒である。光への動力供給法に応じて、光は、連続的に滞留してもよく、またマイクロウエーブ動力もしくは他の「インスタントオン」式光源を使用する場合、部材が存在する場合のみ、所望の曝露時間中のみスイッチオンしてもよい。
【0074】
本発明の別の例示的実施形態では、施用接着剤ビーズを有する部材は、囲まれた空間内に移動され、その空間は電磁放射からの空間外遮蔽を提供する。電磁放射源を備えたエンドアフェクタを有するロボットは、正確な距離にある未硬化接着剤ビーズ上に線源を通過させ、ビーズ表面の硬化を早める。ロボットは、接着剤を施用したのと同じロボットであってよく、異なるエンドアフェクタを使用するのみである。
【0075】
本発明のさらなる他の例示的実施形態では、作業セル自体の全体が遮蔽され、次いで、電磁放射源は、接着剤が部材に施用されつつあるとき直ちに表面硬化するように直接分配ノズルの背後に取り付けてもよい。接着剤の硬化反応速度に応じて、バルク接着剤が硬化する過程において、表面を硬化させる最適時間が存在する場合がある。
【0076】
以下の実施例は、例示を目的としてのみ提供されるものであり、如何なる意味においても本発明の範囲を限定するものではない。
【0077】
実施例1
以下のマスターバッチを調製した。
【0078】
【表1】

【0079】
【表2】

【0080】
この接着剤を体積比4:1で混合し、アルミニウム基材上にビーズ形状(幅1/4”×厚さ1/8”×長さ3”)で分配し、各種のエネルギー水準でUV硬化ユニット内を通過させた。UV放射への曝露直後および曝露後24時間で試料の粘着性のない表面を観察した。以下の表に示す光開始剤濃度は、2つの側、AおよびBが混合された後の接着剤の百分率である。
【0081】
【表3−1】

【0082】
【表3−2】

【0083】
実施例2
A側に添加された1%の光開始剤Bを含む上記のマスターバッチのビーズを基材に施用し、周囲温度で24時間硬化させた。表面に未硬化接着剤の薄膜を有する硬化接着剤を600mj/cm2のUV放射に曝露した。表面を粘着性なしにした。次いで、試料を塗装した。塗料が完全に硬化した後、ASTM F 1842−02に従って、クロスハッチ接着試験を実施したが、結果として得られた接着は優れていた。
【0084】
実施例3
以下の光開始剤を上記マスターバッチのA側に2および4重量%で加え、完全に混合した。
1.光開始剤なし
2.光開始剤C(2−イソプロピルおよび4−イソプロピルチオキサントンのブレンド)
3.光開始剤D(2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド)
これらの材料それぞれを体積比4:1で、上記マスターバッチのB側と一緒に混合し、幅0.25”のビーズになるように分配し、周囲温度で60分間硬化させた。硬化後、試料全ての表面は粘着性であった。次いで、試料全てを強度2000mJ/cm2でUV光に曝露した。双方の試料#2および#3の表面は、粘着性がなく、#1の表面は、粘着性のままであった。
【0085】
実施例4
代替のレドックス開始剤系を含む以下の配合物を調製した。
【0086】
【表4】

【0087】
この配合物に、光開始剤E(ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスフィンオキシドと2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパノンの50/50重量%混合物)を0、2、および4重量%で加えた。これらの混合物をブチルアルデヒドとアニリンの重量比10:1の縮合生成物を含むB側と合わせ、周囲温度で60分間硬化させた。試料はすべて、硬化後非常に粘着性の表面であった。次いで、試料をすべて強度2000mJ/cm2でUV光に曝露した。光開始剤Eを含有する双方の試料の表面は、粘着性がなく、光開始剤のない試料の表面は、粘着性のままであった。
【0088】
実施例5a
以下のマスターバッチを、実施例1と同様に、調製し、混合し、次いで施用し、硬化させた。結果は以下の通りである。
【0089】
【表5】

【0090】
【表6】

【0091】
【表7】

【0092】
実施例5b
以下のマスターバッチを実施例1と同様にワックス成分の添加によって調製し、混合し、施用した。
【0093】
【表8】

【0094】
【表9】

【0095】
接着剤を1000および2000mJ/cm2で硬化させた。ワックスと光開始剤とを含む接着剤は、当初の粘着性を示さず、24時間後も粘着性はなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1つの遊離ラジカル重合可能なモノマーと、
(b)周囲温度ラジカル開始剤系と、
(c)光開始剤と、
を含むことを特徴とするラジカル硬化組成物。
【請求項2】
光開始剤はホスフィンオキシド光開始剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
光開始剤はα−ヒドロキシケトンを含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
光開始剤は2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノンを含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
モノマーはオレフィンモノマーを含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
モノマーは、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸、およびメタクリル酸メチルのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
モノマーは、成分(a)、(b)、および(c)の全量に対して20〜70重量%の量で存在することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
還元剤は第三級アミンを含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
還元剤は、式(I)を有することを特徴とする請求項1に記載の組成物
【化1】

[式中、同じでも異なっていてもよいR1およびR2は、それぞれ独立に、直鎖または分枝で飽和または不飽和のC1〜C10アルキル、および直鎖または分枝で飽和または不飽和のC1〜C10ヒドロキシアルキル(すなわち、−OHによって置換されたアルキル)からなる群から選択され;
3およびR4は、それぞれ独立に、水素、および直鎖または分枝で飽和または不飽和のC1〜C10アルキルからなる群から選択され;
Xはハロゲンである]。
【請求項10】
還元剤は、N,N−ジイソプロパノール−p−クロロアニリン、N,N−ジイソプロパノール−p−ブロモアニリン、N,N−ジイソプロパノール−p−ブロモ−m−メチルアニリン、N,N−ジメチル−p−クロロアニリン、N,N−ジメチル−p−ブロモアニリン、N,N−ジエチル−p−クロロアニリン、およびN,N−ジエチル−p−ブロモアニリンから選択されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
酸化剤は有機過酸化物を含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
接着促進剤をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
接着促進剤はリン含有接着促進剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
接着促進剤は、主成分の全重量に対して0.01から20重量%を占めることを特徴とする請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
強化剤をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
強化剤は、ヒドロキシル末端ポリアルカジエンから製造されるオレフィン末端液体エラストマ−を含むことを特徴とする請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
強化剤はA−B−Aブロックコポリマーを含み、Aブロックは、スチレン、環アルキル化スチレン、またはそれらの混合物から選択され、Bブロックは、共役ジエンまたはエチレン−プロピレンから選択されたTgが低いエラストマーセグメントであることを特徴とする請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
強化剤は、約1から10重量%の量で存在することを特徴とする請求項15に記載の接着剤組成物。
【請求項19】
主成分の全重量に対して約1から約15重量%の量で存在する補助強化剤をさらに含むことを特徴とする請求項15に記載の組成物。
【請求項20】
(a)以下のものを含む第一の部分と、
(i)少なくとも1つの遊離ラジカル重合可能なモノマー、
(ii)少なくとも1つの還元剤、および
(iii)光開始剤、
(b)周囲温度で還元剤と反応することによって、遊離ラジカル重合を開始および伝播することが可能である遊離ラジカルを生成する酸化剤を含む第二の部分と、
を含むことを特徴とする2つの部分からなる反応性接着剤。
【請求項21】
(a)は、約18,000超のMwまたは約10,000超のMnを有する高分子量補助強化剤をさらに含むことを特徴とする請求項20に記載の2つの部分からなる反応性接着剤。
【請求項22】
(a)は、0.1から20重量%の、1つまたは複数のオレフィン基を有するリン含有化合物をさらに含むことを特徴とする請求項20に記載の2つの部分からなる反応性接着剤。
【請求項23】
基材を一緒に結合させることによってアセンブリを形成する方法であって、
a)重合可能な成分と、周囲温度ラジカル触媒系と、光開始剤とを含む接着剤に基材を接触させるステップと、
b)結合ライン中の過剰の接着剤が空気に曝露されるようになるまで基材を一緒に加圧することによって基材を接合するステップと、
c)周囲温度ラジカル触媒系によって接着剤が部分的なまたは全部の強度を発達させることが可能になるステップと、
d)空気曝露接着剤を活性化電磁エネルギーにさらすことによって接着剤の曝露部分を硬化させるステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項24】
基材を一緒に結合させることによってアセンブリを形成するための方法であって、
a)接着剤が、双方の基材を接触させ、基材間の領域を少なくとも部分的に充填し、少なくとも部分的に空気に曝露されるように、重合可能な成分と、周囲温度ラジカル触媒系と、光開始剤とを含む接着剤を2つの基材間に施用するステップと、
b)接着剤が、周囲温度ラジカル触媒系を介して少なくとも部分的に硬化することが可能になるステップと、
c)空気に曝露した接着剤部分を活性化電磁エネルギーで照射することによって光開始剤を介して接着剤の曝露部分を硬化させるステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項25】
ヘムフランジアセンブリを形成する方法であって、
(a)第二のパネルのエッジが、第一のパネルのエッジを超えて延在するように、第二のパネルに隣接させるが接触はさせないように第一のパネルを配置するステップと、
(b)重合可能な成分と、周囲温度ラジカル触媒系と、光開始剤とを含む接着剤を2つのパネルの重なる部分の間に供給するステップと、
(c)第二のパネルの重ならない部分を第一のパネルのエッジ上に折りたたむステップと、
(d)所定の距離だけ離れたままである点までパネルが相互に移動し、接着剤の少なくとも一部分が、第一および第二パネル間のギャップに滞留し、接着剤の一部分が大気に曝露されるように、パネルの重なる部分に圧力をかけるステップと、
(e)周囲温度での硬化が行われることが可能になるステップと、
(f)接着剤の曝露部分を電磁エネルギーにさらすことによって接着剤の曝露部分を硬化させるステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項26】
接着剤の曝露部分を電磁エネルギーにさらす前は、接着剤の曝露表面が粘着性であることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項27】
接着剤の曝露部分を電磁エネルギーにさらした後、表面が非粘着性であることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項28】
電磁エネルギー源を備えるロボットアームによって、接着剤が電磁エネルギーに曝露されることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項29】
接着剤が、制御可能なロボットアーム上に取り付けられたアプリケータチップを介して分配されることを特徴とする請求項25に記載の方法。

【公表番号】特表2010−513573(P2010−513573A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−522022(P2009−522022)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【国際出願番号】PCT/US2007/074613
【国際公開番号】WO2008/014466
【国際公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(501337605)ロード・コーポレーション (12)
【Fターム(参考)】