説明

デング熱セロタイプ1弱毒株

【課題】【解決手段】PDKで継代し、ベロ細胞で衛生化(sanitization)された、天然型のデング−1株16007に由来する弱毒VDV1(ベロ由来デングセロタイプ1ウィルス)株と、このVDV1株を含むワクチン組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然型のデング熱1株16007をPDKおよびベロ毒素細胞で継代培養し、衛生化(sanitization)することによって得られた、生きた弱毒化VDV1株(ベロ由来デング熱セロタイプ1株、VERO-Derived Fengue serotype 1 virus)に関するものである。
本発明はさらに、このVDV1を含むワクチン組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デング熱病はフラヴィ ウィルス(ガブラー、1988年)の4種類の非常に密接な関連性は有するが抗原性は区別されるウィルス セロタイプによって引き起こされる(ガブラー、1988年;コートナー達、1997年;リゴー・ペレス達、1998年;ヴォーン達、1997年)。デング熱ウィルス セロタイプに感染すると、不特定なウィルス症状から重篤で死に至る出血性疾患までの広範囲の臨床的症状が生じる。蚊に刺された後のデング熱(DF)の潜伏期間は平均4日(3〜14日の範囲)である。このDFの特徴は2期の熱、頭痛、身体の各部の痛み、衰弱、発疹、リンパ節障害、白血球減少にある(コートナー達、1997年;リゴー・ペレス達、1998年)。ウィルス血症期間は熱病と同じである(ヴォーン達、1997年)。通常はDFから7〜10日で回収するが、その後一般に喘息が続く。しばしば白血球と血小板の減少を伴う。
【0003】
出血熱(DHF)は、ホメオスタシス異常および血管透過増加を特徴とする激しい熱病であり、循環血液量減少および低血圧(デング性ショック症候群、DSS)に至り、しばしば厳しい内出血によって事態は複雑になる。DHFの致死率は、治療をしない場合には10%の高さになるが、治療経験のある大部分のセンターでは1%以下である(WTOテクニカルガイド、1986年)。
【0004】
デング熱感染の実験室的診断法はウィルスの単離および/またはデング熱ウィルス特異抗体の検出である。
【0005】
デング熱病はマラリアに続く第2の最も重要な熱帯感染病であり、世界の人口の半数以上(25億人)が伝染の危険にある地域に居住している。5千万〜1億と見積もられるデング熱症例の中で毎年50万人がDHF患者として入院し、2万5千人が死亡している。デング熱はアジア、太平洋沿岸、アフリカ、ラテンアメリカ、カリブ人に特有である。100以上の熱帯国に特有のデング熱ウィルス感染があり、DHFはそのうちの60以上で確認されている(ガルバー、2002年;モナス、1994年)。人口増加、特に貧困に起因する予期及び抑制が不可能な都市化、飛行機による旅行の増加、蚊の有効な制御手段の欠如、公衆衛生および公共健康インフラの悪化など数多くの要因がデング熱の感染に関わっていると考えられる(ガルバー、2002年)。旅行者や国外在住者がデング熱に感染している例も増えている(シャトクリフ達、1998年)。デング熱は米軍がデング熱特定熱帯地域に配備されたときに感染する熱病の主たる感染源であることが証明されている(ドゥフレイトら、1994年)。
【0006】
このウィルスはヒトと日中に好んでヒトを刺す(day-biting)蚊であるネッタイシマカ(Aedes aegypti)含む循環サイクルで保持される。感染したネッタイシマカが血を吸う間にウィルスが注入され、ヒトが感染する。唾液腺ウィルスは主として血管外組織に蓄積される。植菌後に感染する第1の細胞サブセットは樹状細胞であり、その後、排出リンパ節へマイグレートする(ウー達、2000年)。この皮膚での初期複製とリンパ節の排出後、ウィルスは一般に3〜5日間の激しい発熱期中、血液中に居る。
【0007】
単核細胞とマクロファージはデングウィルスの初期のターゲットの樹状細胞と共存する。同型再感染に対する保護は完全で、おそらく生涯にわたって続くが、デング熱タイプ間の交叉保護は12週間以下しか続かない(サビン、1952年)。従って、被検者は異なる別のセロタイプに対して第2回目の感染をすることがある。この第2回目のデング熱感染は激しいデング熱病を引き起こす理論的に危険ファクタである。しかし、DHFは関連するウィルス株と、年齢、免疫状態および患者の遺伝素因を含む多因子性の疾患である。DHFの発生には2つのファクタ、すなわち、高いウィルス血症を伴う急速なウイルス複製(この病気の激しさはこのウィルス血症レベルに関連している(ヴォーン達、2000年)と、大きな炎症反応およびそれに伴う高レベルの炎症メディエータの放出 (ロスマン及びエニス、1999年) が主要な役割をしている。
【0008】
デング熱病には具体的な治療方法はない。安静にし、解熱剤と鎮痛剤を用いて発熱と痛みを抑え、適切な流動食を摂取する。DHFの処置では流体のロスを補い、凝固因子を置換し、ヘパリンの注射することが必要である。
【0009】
現在行なわれている予防的対策はベクターの管理と個人的な保護対策であるが、これらは実施が難しく、コストのかかる対策である。デング熱を予防するワクチンとして現在までに登録されたものはない。デング熱の4つのセロタイプが世界的規模で広まっており、これらがDHFに関係していると報告されているので、ワクチン接種は4つのデング熱ウィルスセロタイプの全てに対して理想的に保護するものでなければならない。
【0010】
自然免疫を再生する弱毒化生ワクチン(LAV)は多くの病気に対するワクチンの開発で使われており、その中にはデング熱と同じ属のウィルスもある(例えば、市販のフラビウイルスの弱毒化生ワクチンは黄熱病と日本脳炎に対するワクチンから成る)。弱毒化生ウィルスワクチンの利点はその複製能力と液性免疫応答および細胞免疫応答の誘導にある。さらに、ウィルスの異なる成分に対する全ウィリオンワクチンによって誘導される免疫応答(構造タンパクおよび非構造タンパク)は自然感染によって誘発される免疫応答を再生する。
【0011】
デング熱ワクチンの最初のプロジェクトはタイのCentre for Vaccine Development, Institute of Sciences and Technology for Development Mahidol Universityのプロジェクトである。イヌ髄質様腎(Primary Dog Kidney、PDK)細胞でデング熱セロタイプ1(株16007、継代数13)、セロタイプ2(株16681、継代数53=LAV2)およびセロタイプ4(株1036、継代数48)ウィルス、そして、ミドリザル髄質様腎(Primary Green Monkey Kidney、PGMK)細胞(継代数30)および胎児アカゲザル肺(Fetal Rhesus Lung、FRhL)細胞(継代数3)でセロタイプ3(株16562)ウィルスに対する候補となる弱毒化生ワクチンの開発が実験室レベルで成功した。これらのワクチンはタイの志願者に対して一価(単一セロタイプ)、二価(2つのセロタイプ)、三価(3つのセロタイプ)および四価(4つのセロタイプ全て)ワクチンとしてテストされた。そして、これらワクチンは安全であり、子供および成体で免疫原であることがわかった(Gubler、1997)。これらのLAV1〜4株については下記特許にマヒドール大学(Mahidol University)の名称で開示され、また、CNCMにCNCM 1−2480;CNCM 1−2481;CNCM 1−2482およびCNCM 1−2483の番号で寄託されている。
【特許文献1】欧州特許第EP 1159968号公報
【0012】
デング熱−1の弱毒化生ウイルス株(LAV1)の完全な配列はキンニー(R. Kinney et al.)によって確立されている(CDC, Fort Collins)。親のDEN―1株16007(配列番号2)とLAV1株(配列番号3)との間の配列の違いは[表1]に示してある。この表は天然型ウィルス株16007とLAV1株との遺伝的比較からLAV1弱毒化に関連できる14ポイントの変異セットを示している。
【0013】
【表1】

【0014】
1983年に最初に確認されたLAV1株は潜在的なワクチン候補として早くから同定されていた(バマラプヴァナティとヨクサン、1997年)。
【0015】
しかし、当時は哺乳動物の倍養物を介した海綿状脳炎(Encephalitis)のヒトへの伝播がリスクであるとは思われておらず、ウィルスはイヌ髄質様腎(Primary Dog Kidney、PDK)細胞でルーチン通りに維持された。このLAV1株は異種個体群に対応する。この異質性には別のリスクもある。すなわち、組成物中に存在する株の1つをインビボおよびインビトロで選択することに起因するリスクがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明者は上記のようなリスクを全く無くすための衛生化(sanitization)方法を確立した。
本発明者はLAV1ワクチン株をPDKからベロ細胞へ移植(transfer)し、ベロ細胞をLAV1の精製された遺伝子RNAで形質移入し、その後、2回の連続したプラーク精製階段を経ることで新規なベロ誘導(Vero-Derived)セロタイプ−1ウィルス(VDV1)を得た。
【0017】
すなわち、この新規なVDV1株はベロ細胞への移入によって得られ、生物学的クローニングは配列、不均一プラーク寸法および温度敏感性がLAV1株とは異なり、さらに重要なことは表現型およびLAV1の遺伝的特徴、例えば弱毒点、小プラーク表現型、高温での成長抑制等を維持し、LAV1株の免疫原は保存することにある。これらの特徴によってこの新規な株はヒトの予防接種ワクチンの重要な候補となる。
【0018】
「デングウィルス」はフラビウィルス科系統のフラビウィルス属に属するプラスセンス一本鎖RNAウィルスである。デングウィルス1(DEN−1)株16007の場合、全配列は10735ヌクレオチド長である(配列番号2)。RNAゲノムは5’末端にタイプ1のキャップを含むが、3’末端のポリA末端は有さない。遺伝子構造は5’モノコドン領域(NCR)、構造タンパク(カプシド(C)、プリメンブラン/メンブラン(prM/M)、エンベロップ(E))、非構造タンパク(NS1−NSA−NS2B−NS3−NS4A−NS4B−NS5)および3’NCRである。このウィルス性RNAゲノムはCタンパクと結合してヌクレオカプシド(正二重面体対称)を形成する。他のフラビウィルスと同様にこのDENウィルスゲノムは連続オープンリーディングフレーム(OFR)をコードし、単一のポリタンパク質に翻訳する。
【0019】
デング1株の毒性(発病性)株を連続継代培養すると、「生きた弱毒化」ウィルス、例えば感染性はあるが発病性はない変性されたウィルスが単離される。この変性ウィルスの弱毒化度は通常サルでのテストで計られる。しかし、霊長類の中で臨床疾患の兆候を示すのはヒトだけである。「生きた弱毒化」とはテストしたヒトの大多数で副作用が軽い(例えば法規制の観点で許容される、利点/リスク比が正)か、副作用(例えば、全身状態及び/または生物学的異常及び/または局所反応)が少ないか、ゼロで、しかも感染し且つ免疫反応を誘因するものをいう。
【0020】
「LAV」という用語は生きた弱毒化デングウィルス株を意味する。本発明中で「LAV」とはデングセロタイプ1(DEN−1)株から出発し、イヌ髄質様腎(PDK)細胞で継代培養、例えば10,11,12,13回継代した生きた弱毒化株である。例えば、「LAV1/PDK13」は株16007をPDK細胞で13回継代した後に得られた樹立された弱毒株である(DEN−1 16007/PDK13ともよばれる)。LAV1/PDK13ヌクレオチド配列は配列番号3に記載してある。
【0021】
「VDV1」は本発明に開示の衛生化(sanitization)方法によって得られるLAVである。すなわち、VDVはヒト特有の中和抗体を含む特定の体液性免疫反応を誘導可能な生物的クローンの(均質な)VERO-適応デングセロタイプ1ウィルスである。本発明のVDV1株は本明細書に記載のVDV1配列から直接簡単に再生できる。上記の特定の体液性免疫反応が誘導されたか否かはELISA分析で簡単に決定できる。血清中にワクチンの中和抗体が存在か否かの評価は下記の4.1.2.2に記載のプラーク抑制中和試験で行うことができる。この評価方法で検出された中和抗体力価が1:10以上の場合に血清は中和抗体の存在が正であると見なす。
【0022】
「突然変異」という用語は遺伝物質、例えばDNA、RNA、cDNAなどの検出可能な変化もしくはこの変化のプロセス、メカニズムおよび結果の全てをいう。突然変異にはヌクレオチドの置換が含まれる。本明細書でデング1ウィルスゲノム配列またはポリプロテインに見られる突然変異はダンネン及びアントナラキスの命名法(2000年)に準拠する。このダンネンとアントナラキスの定義では核酸レベルでの置換は「>」で表わされる(例えば、「31A>G」は参照配列のヌクレオチド31の所でAがGに置換したことを意味する)。
【0023】
タンパク質レベルの変化は突然変異の結果を示し、以下のように記載される。すなわち、停止コドンはXで示される(例えば、R97XはArg96が終始コドンに変わったことを意味する)。アミノ酸の置換は例えば「S9G」で表される。これは位置9のSerがGlyに変わったことを意味する。
【0024】
ベロ由来デングセロタイプ1ウィルス(VDV1)
これまでに開発されたデング1ワクチン候補LAV1の組成は本発明の衛生化方法によって改善された。
【0025】
本発明が開示するベロ由来デングセロタイプ1ウィルス(VDV1)はPDK細胞での連続継代培養で弱毒化したDEN−1 16007ウィルスを用いる。このVDV1は生きた弱毒化DEN−1ウィルスの全遺伝子配列を含み、弱毒化とリンクしたヒトで試験され出発材料のLAV1株と同じ領域を有する。
【0026】
このLAV1ワクチン候補の衛生化はタンパクを除去し、精製したウィルス性遺伝物質のみをベロ細胞へ導入することで行なわれる。より具体的にはウィルス株の衛生を下記の2段階で行う:
1)DEN16007/PDK11(LAV1/PDK11)をベロ細胞で32℃で増殖し、
2)ウィルス性RNAを精製し、ベロ細胞へ導入する。
【0027】
上記第1段階はLAV1/PDK11をベロ細胞で一回継代培養して行う。このためにベロ細胞を感染多重度0.01でLAV1/PDK11に感染させ、32℃で5日間培養する。
【0028】
上記第2段階の場合、ウィルスゲノムが感染性RNAであるとことの利点、すなわち、細胞に導入した時に完全な感染性ウィルスが再生できるという点を考慮した。従って、上記第2段階の精製および導入は下記a)〜e)の段階から成る:
a)プラーク精製ウィルスからのウィルス性RNAを抽出し、精製し、
b)好ましくは、精製RNAを陽イオンリピッドと混合し、
c)ベロ細胞、特にベロ細胞LS10をトランスフェクトし、
d)新たに合成されたウィルスを回収し、
e)プラーク精製によってVDVを精製し、必要な場合にはそれをホスト細胞、特にベロ細胞でさらに増殖する。
【0029】
ベロ細胞技術は他の商業品(注射用または経口用のポリオワクチン、狂犬病ワクチン)で既に用いられている公知の技術である。本発明では外因性因子の存在と潜在的に関連する危険性を排除するために特定条件を満たしたベロ細胞を用いる。「特定条件を満たしたベロ細胞」とは培養環境が明らかな細胞または細胞株で、その細胞が外因性因子とは無縁であることを意味する。これには例えば本出願人(サノフィ・パスツール)のベロ細胞LS10がある。
【0030】
こうして単離されたVDV株は従来通り冷凍組成物または凍結乾燥商品の形で保存される。従って、上記VDVは従来通りの緩衝水溶液、例えば糖アルコールや安定剤のような凍結保護剤を含む緩衝水溶液の希釈剤と混合できる。pHは冷凍および凍結乾燥前に室温でpHメーターで6〜9の範囲、例えば7.5±0.2すなわちpH7前後にセットするのが好ましい。凍結乾燥品を使用前に薬学的に許容される希釈剤、例えば無菌食塩の4%水溶液および添加物と混合して液体の免疫原性組成物やワクチンにする。
【0031】
形質移入後に回収したウィルスの弱毒種の遺伝子座での配列はLAV1/PDK13株に比べて何らかの突然変異も生じていなかった。生物学的にクローンされたこのVDV1ウィルスは弱毒化遺伝子型の保存から推定されるように親のLAV1と比べて均一なプラーク表現型および顕著な遺伝安定性を示す。
【0032】
VDV1株の配列を決定し、セロタイプ1デングの生きた弱毒化ウィルス(LAV1/PDK13)株の配列(配列番号3)と比較した。3組のヌクレオチドが基準LAV1配列と異なることが発見された。その1つはアミノ酸レベル(位置2719)で記載がなく、他の2つ(位置5962および位置7947)は非構造タンパクのコード配列(それぞれNS3−481およびNS5−125)中に位置している。これらの差異はいずれもLAV1弱毒化部位と対応しない。
【課題を解決するための手段】
【0033】
本発明は、天然型のウィルスDEN−1 16007をPDK細胞で連続継代し、次いでベロ細胞で継代および衛生化することよって弱毒化して得られる生きた弱毒化デング1ウィルス株を提供する。
特に、本発明の弱毒化株は天然型のDEN−1 16007株及びLAV1/PDK13株のヌクレオチド配列またはポリプロテイン配列に対して(非サイレント(non-silent)およびオプショナリーにサイレント(optionally silent)な)少なくとも同じ配列突然変異を含んでいる
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明は、少なくとも位置5962と7947のヌクレオチドが変異し、必要な場合にはさらに位置2719のヌクレオチドも変異したLAV1/PDK13株(配列番号3)の配列を含み(または成り)、ただし、位置1323,1541,1543、1545,1567,1608、2363,2695,2782,5063、60448,6806,7330および9445のヌクレオチドは変異していない、単離した生きた弱毒化デング1ウィルス株に関するものである。
【0035】
上記の突然変異は置換であるのが好ましい。また、位置5962のヌクレオチドはAで、位置7947のヌクレオチドはGであるのが好ましい。さらに、本発明で単離した株は突然変異2719G>A、5962C>A、7947A>Gを有する配列番号3を含むのが好ましい。
【0036】
本発明の生きた弱毒化デング1ウィルス株は天然型デング1ウィルス株16007(配列番号2)の配列を有し、この配列は少なくとも突然変異1323T>C,1451G>A,1543A>G,1545G>A,1567A>T,1608C>T,2363A>G,2695T>C,2782C>T,5063G>A,5962C>A,6048A>T,6806A>G,7330A>G,7947A>Gおよび9445C>Tを含む。本発明の生きた弱毒化株は天然型株16007(配列番号2)のヌクレオチド配列を基準として突然変異2719G>Aをさらに有するのが好ましい。
【0037】
本発明の生きた弱毒化デング1ウィルス株は上記定義のように5962位置と7947位置が突然変異した配列番号3の配列を有し、さらに、所定コドン位置に一つまたは複数のヌクレオチドの置換(この置換は上記所定コドン位置でコードされるアミノ酸を変化しない)を有する。
【0038】
本発明の生きた弱毒化デング1ウィルス株は配列番号1とは所定数、例えば好ましくは5以下、より好ましくは2以下の突然変異で相違する配列を有するのが有利である。
【0039】
本発明のデング1ウィルス株の遺伝子配列は配列番号1のヌクレオチド配列から成るのが好ましい。
【0040】
本発明はさらに、配列番号1のVDV1株に由来し、さらに細胞、特にベロ細胞で継代することによって得られる生きた弱毒化デング1株にも関するものである。
【0041】
本発明はさらに、配列番号1のDNA配列またはこれと等価なRNA配列を含む(または成る)単離された核酸にも関するものである。
【0042】
「核酸分子」とはリボヌクレオシドのリン酸エステル重合体の形(アデノシン、グアノシン、ウリジンまたはシチジン;「RNA分子」)またはデオキシリボヌクレオシド(デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、デオキシチミジンまたはデオキシシチジン;「DNA分子」)またはその任意のホスホエステル類似物(例えば一重糸または二重螺旋糸の形のホスホロチオ酸およびチオエステル等)を意味する。
【0043】
配列番号1と「等価な」RNA配列とは、デオキシチミジンがウリジンで置換された配列番号1を意味する。配列番号1はVDV1のcDNA配列を構成するので、上記の等価なRNA配列はVDV1の正鎖RNAに対応する。
【0044】
本発明はさらに、配列番号41のポリプロテイン及びこのフラグメントにも関するものである。配列番号41は配列番号1がコードするポリプロテインの配列である。
【0045】
基準プロテインの「フラグメント」とは、その配列が基準プロテインの続発アミノ酸を含むポリペプチドをいう。フラグメントのアミノ酸長少なくとも8、少なくとも12、少なくとも20である。
【0046】
配列番号41のポリプロテインのフラグメントは少なくともNS3プロテインの481位置(配列番号41の1956位置)にリジンを有し、及び/または、NS5プロテインの125位置(配列番号41の2618位置)にアルギニンを有する。
【0047】
本発明の一つの実施例では、配列番号1でコードされるポリプロテインのフラグメントはNS3プロテイン及び/またはNS5プロテインであるか、これらを含む。
【0048】
免疫原性組成物及びワクチン組成物
本発明はさらに、本発明のVDV1株から成るワクチンとして使用されるのに適した免疫原性組成物にも関する。
本発明の免疫原性組成物は、中和抗体を含むデングウィルスに対する特定の液性免疫反応を誘発する。
免疫原性組成物はワクチンであるのが好ましい。
【0049】
本発明の一つの実施例では、本発明免疫原性組成物は単価の組成物、例えば特定の免疫反応を誘導し、及び/または、デング1ウィルスのみに対して保護する単価の組成物から成る。
【0050】
本発明の他の実施例では、本発明は多価のデング免疫原性組成物に関連する。この多価免疫原組成物またはワクチンは複数の一価のデング熱ワクチンを組み合わせて得ることができる。この多価免疫原性組成物またはワクチンは少なくとも1つの別のセロタイプの生きた弱毒化デング1ウィルスを含むことができる。特に、免疫原性組成物またはワクチン組成物は本発明のVDV1をセロタイプ1、セロタイプ2、セロタイプ3およびセロタイプ4から選択される少なくとも1つの生きた弱毒化デングウィルスとを組み合わせたものにすることができる。
【0051】
免疫原性組成物またはワクチン組成物は三価のデングワクチン組成物、例えば本発明のVDV1を生きた弱毒化デング2ウィルス株、生きた弱毒化デング3ウィルス、生きた弱毒化デング4ウィルスと組み合わせたワクチン組成物にするのが好ましい。
【0052】
生きた弱毒化デング2、デング3、デング4ウィルス株についは前記の通りであり、マヒドール大学でデングセロタイプ2(株16681、継代数53;LAV2)、イヌ髄質様腎(PDK)細胞のセロタイプ4(株1036、継代数48;LAV4)ウィルス、ミドリザル髄質様腎(PGMK)細胞(継代数30)(株16681)、胎児アカゲザル肺(FRhL)細胞(継代数3)のセロタイプ3を継代培養して開発された生きた弱毒化ワクチンを参照することができる。LAV2(配列番号42)、LAV3(配列番号43)、LAV4(配列番号44)のヌクレオチド配列は添付の配列リストに示してある。
【0053】
生きた弱毒化デング2株はマヒドール大学でのベロ細胞の衛生化プロセスで培養されたLAV2株から得られるVDV2に対応するのが有利である。特に、生きた弱毒化デング2株(VDV2)は配列番号40を有し(または成る)のが有利である。
【0054】
ワクチンを含む免疫原性組成物は液体の溶液、懸濁液、乳化物に対応可能な注射物にすることができる。この活性な免疫原性成分を薬学的に許容される相溶性の添加剤と混合することもできる。
【0055】
本発明の免疫原性組成物またはワクチンは当業者に公知の任意の従来法を用いて製造することができる。従来法と同様に、本発明の抗原は薬学的に許容される希釈剤や添加剤、例えば、水やリン酸塩緩衝生理食塩水、湿潤剤、充填剤、乳化安定剤と混合される。添加剤や希釈剤は選択した薬剤の型、投与方法や投与手段、医薬品のプラクティスに応じて選択する。適切な賦形剤または希釈剤と医薬品調合条件は当該分野の代表的な参考図書のRemington's Pharmaceutical Sciencesに記載されている。
【0056】
免疫原組成物またはワクチンはpHを例えば6〜9の範囲(pHメータで室温で求める)に維持する緩衝水溶液から成る注射薬組成物に対応するのが好ましい。
【0057】
本発明組成物はさらに、アジュバント、すなわちVDV1株が誘導する免疫応答を改良または強化する物質を含むことができる。ヒト用ワクチンの分野でこの目的で使用可能な任意の薬学的に許容されるアジュバントまたはアジュバント混合物を使用することができる。
【0058】
本発明の免疫原組成物またはワクチンは、ヒト用ワクチンの分野で通常使用される任意の従来ルート、例えば非経口(例えば経皮内、経皮下、経筋内)ルートで投与できる。本発明では、免疫原組成物またはワクチンは三角筋領域に皮下注射可能な注射薬組成物であるのが好ましい。
【0059】
免疫化方法
本発明はさらに、本発明のワクチン組成物の免疫有効量をホスト(受容者、寄主)に投与することから成るデング熱感染に対して免疫を必要とするホストを免疫化する方法を提供する。
【0060】
「免疫化を必要とするホスト」とは、例えばデングウィルス感染が存在する地域に旅行した個人などのデング熱感染の危険がある人、およびこれら地域の居住者をいう。
【0061】
投与法はワクチンの分野で使用される任意の従来法にすることができる。投与法は製剤法に応じて選択される。免疫原組成物またはワクチンは三角筋領域に経皮下ルートで投与される注射薬組成物にするのが好ましい。
【0062】
免疫原組成物またはワクチン中のLAVまたはVDV、特にVDV1の量は一般にウイルスプラークユニット(PFU)単位で表すか、従来の製薬方法を用いて作ったCell Culture Infectious Dose 50%(CCID50)投与量の形で表すことができる。例えば、一価組成物の場合、本発明組成物は10〜106CCID50または103〜105CCID50のLAVまたはVDV、例えば4±0.5log10CCID50のVDV1の投与量にすることができる。ウィルス干渉現象を避けてバランスした免疫応答(すなわち組成物中に含まれる全てのセロタイプに対する免疫応答)を誘導するための多価組成物の場合には、投与ワクチン中の各デング熱セロタイプの量は同じでなくてもよい。
【0063】
「免疫効果量」とは、ワクチン接種を受けたヒトの血清中の抗体を中和する特異的液性免疫応答を誘発することができる量で、4.1.1.2.2で説明するプラーク減少中和テストで評価される。すなわち、求めた中和抗体の力価が少なくとも1:10以上の時に、血清は中和抗体の存在がポジティブであるとみなされる。
【0064】
投与容積は投与ルートに従って変わる。皮下注射では約0.1ml〜1.0 mlであり、好ましくは0.5 mlである。
【0065】
組成物の最適投与時期はデング熱ウィルスに最初に曝される時の1〜3ヵ月前である。本発明のワクチンはデング感染の危険に曝された成人または子供の病気予防薬として投与ができる。従って、目標個体群はデング熱ウィルスに対してナイーブおよび非ナイーブな人が含まれる。本発明のワクチンは一回で投与でき、また、当業者が適切であると判断した場合には、必要に応じて、プライマー投与(初回抗原刺激)に続いて、例えば2〜6ヵ月後にブースター投与をすることができる。
以下の添付図面および実施例を参照して本発明を説明する。
【実施例】
【0066】
実施例1
衛生化
1.1 ウィルスRNAの精製
先ず最初は、DEN−16007/PDK10またはDEN−16007/PDK11(サノフィ・パスツール社の製品、力価:4.60logTCID50/ml)のワクチン株の初期種(seed)から直接抽出されたウィルスRNAを精製、移入(transfect)してLAV1の衛生化を目指した。この方法を用いてRNA量を103〜107に変えて8つのアッセイをしたが成功しなかった。そこで、RNAの抽出、移入の前にベロ細胞で継代することにした。
【0067】
ベロ細胞(VERO LS10 p142〜145)をマスター種DEN−1/PDK11のサンプルで感染多重度0.01に感染させ、32℃で5日間培養した。次に、培養液を感染液(10mM MgSO4を含む)と置換した。翌日、細胞変性が見られ、培養液の上澄み中にウィルスRNAが存在することをRT−PCRで確認した。感染後8日目に培養液を回収し、同量の凍結保護剤(pH=7.5)を含む水性緩衝溶液で稀釈し、使用時まで−70℃で冷凍保存した。このベロ増幅ウィルスをDEN−1/V100と命名した。このベロ細胞の感染力価は6.9logTCID50/mlであった。
【0068】
RNAの精製及び移入工程は以下の通り:DEN−1V100懸濁液を希釈して、1ミリリットル当たり少なくとも3×104〜最大で3×107TCID50またはPFUのウィルスを含むようにした。0.01mlのウィリアム媒地中に稀釈した一単位のベンゾナーゼを0.5mlのウィルスに加えて、細胞由来のDNAまたはRNA分子を消化させ、溶液を攪拌機上で4℃で2時間培養した。培養段階の最後に塩化グアニジウム洗浄剤(SNS)およびβメルカプトエタノール(kit RNeasy Mini kit, Qiagen Ref. 74104で提供されるRTL−βメルカプトエタノール)を含む0.65mlの変性用緩衝物を加えた後、タンパクをフェノール/クロロフォルム(1/1vol/vol)で一回、次にクロロフォルム(vol/vol)で抽出した。その後、室温で14000rpmで5分間遠心分離した。各々の抽出後、界面の材料(白色沈殿物)を集めないように注意しながら水相を集め、清潔な1mlのエッペンドル管中に移した。RNA溶液をメーカ(RNeasy minikit、 QlAgen)推奨の方法に従ってQlAgenカラム通して、痕跡量の溶剤を除去し、核酸分解酵素を含まない0.06mlのH2Oで溶離した。ウィルスRNAが存在することはウィルスの公知量を用いて確立してある基準曲線(TCID50/ml)を用いて定量RT−PCRで確認した。
【0069】
1.2 精製RNAを用いたベロ細胞へのトランスフェクション
トランスフェクションはリポフェクタミン(LF2000 試薬、ライフテクノロジー)を使用して行った。これは電価相互作用を通じてRNAと結合し、細胞膜と融合することで錯体を細胞質中へ移入させる陽イオンリピドの混合物である。LF2000試薬の最適量は、16〜24時間前に塗布したベロ細胞(6ウェルプレートで1ウェル当たり0.3〜0.5×106細胞)をリポフェクタミンの投与量を増加させながら(5〜20μl)培養する予備実験によって決定した。細胞を32℃、5%CO2で4〜5時間培養した後、培地をFCSを含まない新鮮な培地に変え、さらに32℃で培養を続けた。毒性(円形、屈折または浮遊した細胞、細胞単分子層が不均一)は逆相顕微鏡で48時間定期的にチェックした。上記条件下で毒性のないリポフェクタミンの最大投与量は10μlであり、RNAトランスフェクション用に選択した。
【0070】
1/10の精製RNA調合液(約4×105TCID50に相当)を用いて4つのトランスフェクションを並行して行った。12μlのウィルス性RNA水溶液を10μlのLF2000のReagent(電価相互作用を通じRNAと結合し、細胞膜と融合して細胞質中へ錯体が移入できるようにする陽イオン脂質の混合物)を含む500μlのOptiMEM溶剤で稀釈した。4つの反応物のうち2つでキャリアとして酵母菌tRNA200ナノグラムを加えた。
【0071】
これら4つのトランスフェクションミックスを室温で10分間沈降させた後、6ウェルプレートの融合性ベロ細胞に加えた。32℃で4時間培養した後、トランスフェクションミックスを除去し、細胞をPBSで一回洗浄処理した。3リットルのトランスフェクション済み培地(ウィリアムス、GIBCO)を加え、32℃で5日間培養を続けた。次に、培養培地を3mlのデング熱感染培地(10mMのMgSO4を補足したウィリアムス)に代えた。
【0072】
トランスフェクションから24時間後にわずかな中毒作用が観察されたが、3日後には消えた。全トランスフェクション試験でトランスフェクションから6〜8日目に典型的な細胞変性作用(円形細胞、屈折細胞)が見られた。これら細胞の上澄み中へのウィルスの放出はqRT-PCRで確認された。トランスフェクションから6〜8日後に培養液(3ml)を回収し、プールした。ウィルスを6mlの凍結防止剤を含む緩衝水溶液(pH=7.5)で稀釈し、増殖まで凍結した。
【0073】
トランスフェクション後に得られた4つのウィルス性溶液をTV(ベロ細胞へのトランスフェクションの意味)10、TV200,TV300,TV400と命名したこれらは下記の類似した感染性力価を有していた:
TV100:6.95 log TCID50
TV200:6.80 log TCID50
TV300:6.95 log TCID50
TV400:6.85 log TCID50
トランスフェクション効果がtRNA(TV300及びTV400)の存在下で移入したサンプルで急激には増加しないことが注目される。
【0074】
1.3 トランスフェクション後に回収したウィルスの特性解析
DEN−1V100とTV100〜400のプラーク寸法を求めた。簡単にいうと、4%FBSを含む細胞液中にベロ細胞を1.000.000セル/cm2の密度で塗布し、一晩培養した後、培地を回収し、ウィルスを2倍または5倍に稀釈したもので細胞を感染させた。37℃、5%CO2で1.5時間培養後に、接種材料を取り除き、細胞を1.26%のメチルセルロースと10%FBSとを含む最少イーグル培地(MEM)中で37℃、5%CO2で培養した。11日間培養した後、プレートを−20℃の冷却アセトン中で20分間固定し、2.5μg/mlに希釈されたフラビウィルス特異的mAbを用いて免疫着色して視覚化した。画像解析ソフト(Saisam/Microvision)を用いてウィルス性プラークを計測した。
【0075】
対照実験としてDEN−1 16007とLAV1を並行して植付けた。データは[表1]に示してある。
【0076】
【表1】

【0077】
ベロ細胞で増殖したV100ウィルスは均質な小さなプラーク(SP)表現型を示した。これらのプラークは観察された別のLAV1サンプルよりもわずかに大きい(直径<2mmに対して2〜3mm)。このSP表現型はトランスフェクション後に回収したウィルスでも保持される。植付けた90のウィルスの中でTV200に一つの大きなプレート(LP)が発見された。しかし、この割合はベロ細胞で一度だけ増幅継代した後に植付けた82のSPに対して10のLPであることからLPの個体数が支配的であることを示唆している。
【0078】
LAV1と比較して、並行して行った弱毒−臨界位置の配列にはトランスフェクションしたウィルスに突然変異が全く見られなかったことは注目すべきことである。
【0079】
1.4 プラーク精製
プラーク精製のために均質なSP表現型を示すDEN−1/TV100ウィルスのサンプルを選択した。簡単にいうと、ベロ細胞を6ウェルプレートに植え付け、一連のウィルス稀釈物に感染させ、各プレートに1〜20のプラークを得る。37℃、5%CO2で1.5時間培養後、接種材料を取り除き、細胞を42℃に予熱したMEM−10%FCSから成る3mlの個体培地下で培養し、42℃で平衡した2%の溶融アガロースと混合した。フローフード下で培地を室温で30分間で固化し、プレートを逆位置では32℃、5%CO2で10日間培養した。0.01%のニュートラルレッドを補足した同じ培地の第2層を加えてさらに一晩プレートを32℃で培養した。先端が0.1mlのマイクロピペットを用いて無菌状態で4つの十分に離れた小プラークを取り出し、0.2mlのMEM−4 FCSを含む無菌チューブに移した。検査液は攪拌して均質化し、同じ培地で稀釈した後、直ちにベロ細胞の6ウェルを感染させるのに用いた。上記手順を繰り返し、二次採取物として6つのSPを採った。採取した各プラークを1mlの培地で稀釈した後、T25フラスコ中でベロ細胞で増殖した。感染後6日後に培養培地を回収し、同量の抗凍結剤(pH=7.5)を含む緩衝水溶液で稀釈し、−70℃に凍結した。上記の段階は全て32℃で行った。
【0080】
プラーク精製ウィルスはそれぞれDEN−1/TV111,DEN−1/TV112,DEN−1/TV121,DEN−1/TV131,DEN−1/TV132およびDEN−1/TV141と命名した。ベロ細胞で求めた感染力価は下記の通り:
TV111=6.85LogCCID50/ml
TV112=6.80LogCCID50/ml
TV121=6.80LogCCID50/ml
TV131=6.70LogCCID50/ml
TV132=6.45LogCCID50/ml
TV141=5.70LogCCID50/ml
【0081】
3つのクローン:TV111,TV112およびTV121でベロ細胞での第2回目の増殖を行った。
【0082】
1.5 クローンウィルスの特性解析
DEN−1/TV111,DEN−1/TV112,DEN−1/TV121,DEN−1/TV131,DEN−1/TV132およびDEN−1/TV141候補のプラーク寸法を求めた。特定弱毒化遺伝子座のスポット配列決定も行い、突然変異がないことが明らかにされた([表2])。
【0083】
【表2】

【0084】
各クローンを差別化する基準がないので、予備マスターVDV1としてTV121を任意に選択した。
【0085】
結論として、ベロ細胞で総数6世代の継代を行って初期DEN−1 16007/PDK11弱毒株を順化及びクローン化した。産業的用途に適合するように(環境保護、原材料及び実験の追跡可能性、動物由来生成物の分析証明)、ウィルス性RNAを精製し、ベロ細胞へ移入した。ベロ−順化株はプラーク精製でクローン化し、ベロ継代数6でVDV1ワクチン候補のプレマスターシードが得られた。
【0086】
このLAV1とは対照的に、VDV1は均質な小プラーク寸法表現型を示した。弱毒化特定位置での突然変異も見られなかった。さらに、VDV1の完全配列を決定し、表現型テストをして特徴解析も行った。
【0087】
実施例2
配列決定
ウィルスの完全配列は下記の方法で求めた。VDV1−含有サンプルから出発して遺伝子RNAを抽出し、精製し、cDNAに逆転写した。その後、このcDNAから全重複PCR増幅を行い、各PCR生成物の両端に配列タグを付加した。全ての個々の配列は自動機器で作り、分析した。次のステップは全ての個々の配列を多重整合させてゲノムを再構築する段階である。この段階で、参照配列に対して予測しえないヌクレオチドの変化を生データに戻って注意深く再分析した。各変化は新しいPCR生成物で行った別の配列決定で体系的に確認した。不確かな点が解決できれた段階でウィルスゲノムの配列が完成し、新しい分子がベクターNYiデータベースに作られた。内部ゲノム分析には多重配列整合を用いることができる。
【0088】
2.1 材料
2.1.1 ウィルス
使用したウィルスはDEN−1 16007;LAV−1/PDK13およびVDV1である。これらの配列は添付の[配列表]に示してある。これらのウィルスの完全なゲノム配列の長さは10735ヌクレオチドである。
【0089】
2.1.2 プライマー
全てのプライマーはSeqweb bioinformatic package(Accelrys)のプライマデザインモジュールで設計した([表3])。
【0090】
【表3】

【0091】
2.2 方法
2.2.1 ウィルスRNAの精製
前の実験から次の段階の陽性RT−PCR反応には1000DICC50が必要なことがわかっている。すなわち、最低限104DICC50/mlのウィルス力価が必要である。メーカの推薦に従ってQlAampウィルス性RNAミニキット(Qiagen)を用いてウィルスゲノムRNAを精製した。簡単にいうと、溶菌溶液の存在下で140μlの粗ウィルスサンプルを培養し、キットコラムに入れる。洗浄後、精製したウィルスRNAを1μl(40単位置)のRNAse阻害剤(RNAse Out, Sigma)を含む60μlのヌクレアーゼを含まない無菌水で溶出した。
【0092】
2.2.2 逆転写
ABGeneからの逆転写酵素(リバースiT)を用いてウィルス性RNAをcDNAに逆転写した。10μlの精製済みRNAを用いて標準作業条件を再び適用して最終量を20μlにした。反応はマイナス鎖プライマーのハイブリダイゼーションから始めた。各PCRで1つのRT反応を行う([表1])。cDNA合成は47℃で45分間培養して得た。
【0093】
2.2.3 PCR
全てのPCRは[表1]の16対のプライマー(+)および(−)の全てを用いてExpand High Fidelity PCT system(Rochediagnostics)で行った。PCR条件は下記の通り:
【0094】
【表4】

【0095】
2.2.4 配列決定
配列反応の主要な部分はGenome Express社に外注した。ゲノム末端、アンビギュイティー、PCR間接合、技術的な理由でGenome Express社で配列できなかった領域については自社(インハウス)で行った。
Genome Express社での配列決定
PCR生成物を+4℃で出荷し、配列結果は情報配列ファイルで受け取った。各配列に対してテキストファイル、特徴ファイル、クロマトグラムが入手できる。配列整合後、全ての矛盾をクロマトグラムでチェックし、配列アルゴリズムエラーとして同定された場合には修正した。
自社での配列決定
配列反応は、Sequitherm Excell II LCキット(Epicentre)を用いてサーモサイクラーPTC−200(MJ Research)で行った。各PCR生成物は単一の反応で両鎖で別個に配列決定した。反応物を配列決定用電気泳動ゲルにかけた。配列決定の実行と解析は自動配列機Gene ReadR 4200(Li-Cor)を用いて行った。
【0096】
【表5】

【0097】
2.3 結果
全てのPCR断片はテイルを加えた共通PCRを用いて両端から配列決定した。例えば、全ポリマーの5’端末に特定の単位を加えた:
5’プライマー:M13SEQ-GTTTTCCCAGTCACGAC(配列番号38)
3’プライマー:M13REV-AACAGCTATGACCATG(配列番号39)
のような、
【0098】
M13−SEQ配列及び−REV配列はユニバーサルM13プライマー単位(New England Biolabs参照)に対応する。
【0099】
最終コンティグアセンブリのためにCongig Express module (Informaxt)のVector NYiでクイック分析を行った。全ての個別配列結果をLAV1の基準配列と比較した。この条件下では欠落したコンティグアセンブリがあった場合でも、完全ゲノム整合がクイックに可視化でき、全ての結果は完全ゲノムの正しい場所に整合できた。
【0100】
2.3.1 完全VDV1配列アセンブリ
最終的な配列整合はVector NYi、AlignXモジュール(Informaxt)で行った。ソフトウェアとして従来の多重配列整合アルゴリズムClustalW(トンプソンら、1994年)を用いて全体の整合をした。全ての配列結果をLAV1基準配列と一緒に並べることでゲノムをさらに良く再構築できた。基準配列に対する全ての矛盾を確認するために別の独立した配列反応を必要とした。VDV1の完全配列は配列番号1に示してある。
【0101】
単配列、特に配列末端にはしばしば不明確な点(アンビギュイティ)が見られた。これは主としてPCRフラグメント両端での反応の品質が低いことに起因する。そうした低品質の配列は、他のPCR生成物から他の2つの別の配列反応が得られるまでアラインメントから除外した。基準配列に対する相違は少なくとも2つの独立した他の配列PCR配列が一致したことが確認されるまで最終アラインメントには考慮しなかった。逆に、2つの独立した配列で確認された差異は最終配列に保持した。
【0102】
[表6]は各々独立した配列反応の特徴を示し、開始、終了及び長さを表す。互いに隣接するPCR間の重複および基準配列に対する差異は最終列に記載してある。
【0103】
【表6】

【0104】
cDNA合成およびPCR DNA反応ではゲノム末端に相補的なオリゴヌクレオチドが必要なので、PCR増幅ではゲノム両端の配列決定はできない。これらのオリゴヌクレオチドは増幅段階でPCRフラグメント中に組み入れられる。配列結果は合成ヌクレオチドの結果であり、ウィルスそのもの配列ではない。ウィルスゲノムの両端からのPCRは正しく機能しない。このことはウィルス配列はオリゴヌクレオチドとそれほど大きく相違しないことを示唆している(そうでなかった場合にはPCR増幅は失敗したか、少なくとも低品質であったはずである)。ゲノムの両端は他の全てのPCR増幅と区別できなかった。従って、再生されたゲノムではゲノム両端はオリゴヌクレオチド配列と同一であり(また、基準配列とも同一であった)。5’末端での配列はヌクレオチド1〜34の配列である。3’末端での配列はヌクレオチド10707〜10735の配列である。
【0105】
2.3.2 配列の比較
VDV1株とLAV1基準とを直接比較すると3つのヌクレオチドの差異が示される。[表7]はこれらの位置の完全リストである。
【0106】
【表7】

【0107】
2719位置でのヌクレオチド変化はアミノ酸レベルではサイレントである。5962位置での第2の相違はNS3−481でのアミノ酸の変化を誘因する(アスパラギンからリジン)。いずれも親水性であるがリジンは正電荷を帯び、アスパラギンは帯びていない。最後の差はNS5ペプチドの位置で、NS5−125部位置でリジンをアルギニンに置換する。このアミノ酸置換は化学観点からは比較的保存的であり、アルギニンおよびリジンの両残基はいずれも親水性で、正電荷を帯びている。
【0108】
【表8】

【0109】
入手可能な全ての遺伝子バンク(Genbank)のセロタイプ1デングゲノム配列の配列アラインメントをすると、上記で特定した差異のほとんどが他の株にも存在することが分かる([表8]参照)。VDV1株では1つの位置が特有である(位置7947;NS5−125)。
【0110】
以上のようにしてデングウィルスのVDV1株の完全ゲノム配列が確立された。
【0111】
親LAV1ゲノム配列に対して3つのヌクレオチドの差異が検出された。VDV1ワクチン株はLAV1からウィルスの「衛生化」とイヌからサル細胞への継代を通じて導かれた。
【0112】
LAV1とVDV1との間に差異が生じた理由(起源)はいくつかある。先ず第1に、クローニング段階でLAV1で先に検出された主要な配列と100%同一ではないウィルス下位置個体群(subpopulation)が選択できることである。第2に、LAV1はPDK細胞で作られ、VDV1がベロ細胞で作られたことによる。こうしたイヌ細胞からサル細胞への継代は潜在的にウィルス変化を引き起こし、新しい細胞株への適合となって表われる。第3は、全てのRNAウィルスの場合と同様に、低RNAポリメラーゼ適合度がDNAポリメラーゼよりも高いゲノム突然変異を引き起こすことである。
【0113】
配列の点ではLAV1とVDV1はわずかに3つの差異した観察されず、これは2つのアミノ酸の置換だけに相当する。LAV1ウィルスの弱毒化に関する14のヌクレオチド位置は全てVDV1で保存される。さらに、マスター配列とバルクVDV1配列との比較も行った([表9])。
【0114】
【表9】

【0115】
VDV1マスター種の完全配列をバルク配列と整合させた。両配列で差異は見られず、継代を超えて遺伝子が安定であることが示唆している。
【0116】
VDV1はその親に対して驚くべき遺伝的安定性を示した。
【0117】
実施例3
特徴付け
【0118】
本実施例の目的は弱毒化の変化が継代を通じて起こるか否かを評価することにある。
【0119】
「販売製品、フィルド・プロダクト(一価)」(「直ぐに使用可能な」投与物)を製造するために開発された製造プロセスは[図2]のフローチャートに要約してある。
【0120】
簡単にいうと、研究部門から送られたウィルスのプレマスター種(シード)であるベロ細胞で2回の連続した継代をして、それぞれ作業種を得る。最後のウィルス培養もベロ細胞の懸濁物への感染で行う。製造されたウィルスを収穫する。デオキシリボ核酸(DNA)を酵素処理で切断する。不純物は限外濾過で除する。感染力価は濃縮段階で高強化された。凍結防止剤を含む緩衝水溶液(pH=7.5)を加え、濾過したこの0.22−im混合物を同じ溶液中に目標分量まで稀釈した。活性物質をガラス瓶に入れ、凍結乾燥し、使用時まで保存した。
【0121】
3.1 表現型マーカー
結果は[表10]に示してある。マスター種およびバルク種で行った有効テストは下記の通り:
プラーク寸法:
37℃で7日間培養した後にベロ細胞でアッセーを行った。プラーク寸法はビデオカメラで画像を撮り、専用ソフト:Saisam v5.2.0(Microversion Instruments)で求めた。LAV1では2つの個体群(0.3mmと0.8mm)が検出された。主個体群が最も小さかった。ベロ細胞への適用と生物学的クローニング後のVDV1プラークの寸法分布は均一に見え、個体群の98%以上が単一ピークを示し、直径0.8mmに集中していた。このプラークはDEN−1 16007ウィルスから得られるプラークとは明らかに異なっていた([図4][図5]参照)。
【0122】
温度感受性:
温度非感受(Ts)の天然型(WT)D1−16007に比べて一価1は39℃で明らかに成長が制限されていた。このことは感染力価試験及びウィルスRNA評価のいずれでもみられた。一価1の種のマスター、バルクおよび18継代(バルク継代後10継代)は37℃の場合に比べて39℃では90%以上の力価減少を示す。
【0123】
【表10】

【0124】
3.2 遺伝子型マーカー
VDV1ワクチン株は親株と遺伝子レベルで区別できる。弱毒化特異遺伝子座が同定された。これら遺伝子座はマスター種及びバルク種では保存されている。
【0125】
実施例4
サルにおける免疫原性、ウィルス血症、毒性
サルから得られる最も確実かつ多くのデータは免疫原性とウィルス血症である。特に、ウィルス血症はヒトでの毒性および疾病重症度に関連する要素の一つと同定されており、考慮すべき大切なパラメータである。当然ながら、免疫原性はワクチンテストでのキーパラメタである。
【0126】
本発明者はウィルス血症および免疫原性での最低限/最高値を確立した。
【0127】
【表11】

【0128】
4.1 材料と方法
4.1.1 サルでの実験
サル実験は動物実験に関する欧州ガイドラインに従って行った。
【0129】
マウリチウス(CRP Le Vallon)からのカニクイザル(Macaca fascicularis)に免疫接種した。免疫接種前にサルは本出願人(サノフィ・パスツール)の動物施設で6週間隔離した。
【0130】
0.5mlのワクチン(各章参照)をサルの腕に皮下(SC)ルートで免疫接種した。ケタミン(Imalgene,Merial)で軽く全身麻酔した後、鼠径または伏在静脈の血管から血液を採取した。0日目に28.5mlの血液をサンプル採取して抗体反応を調べ、2〜10日目には1mlの血液をサンプル採取してウィルス血症を調べた。血清分離するまで血液は氷上で採取し、氷上に保存した。血清分離のため、血液を4℃で20分間遠心分離し、血清を集め、Rich Kinney研究所で試験するまで−80℃で保存した。米国へはドライアイスに入れて輸出した。
【0131】
4.1.2 ウィルス血症および抗体中和反応(プラーク減少中和試験、PRNT)
全ての実験は米国フォートコリンズ、CDCのKinney研究所で行われた。血清サンプルは試験まで−80℃で輸出、保存された。最初の解凍時にサンプルのウィルス血症をテストした。血清の1:5稀釈物を作り、この1:5稀釈血清を56℃で30分間不活性化した後、中和抗体テストを行った。
【0132】
4.1.2.1 ウィルス血症
0.125mlの血清を96ウェルプレートの最初のウェル中に入れた0.125mlの希釈液(RPMI溶剤)に加え、一連の10倍希釈を行った。各稀釈で0.025mlを0.225mlの希釈液中へ移した。0.2mlの100.3〜105.3希釈シリーズをベロ細胞の6ウェルプレートに植付けた(ウィルスは37℃、1.5時間で吸着され、4mlのナチュラルレッドを含まないアガロースを被せ、6〜7日後に、2mlのナチュラルレッドを含むアガロースを被せ、プラーク数が数えた)。ウィルスの検出限界は10PFU/mlである。参照として、ストックのDEN−16007 PDK−13(LAV1)ワクチンを植付けた。
【0133】
4.1.2.2 PRNT(プラーク減少中和試験)
中和抗体はファンら(2000年)に記載の方法で定量した。簡単にいうと、0.2mlの熱不活性化した1:5稀釈血清を96ウェルプレートの最初のウェルに加え、一連の2倍希釈シリーズを作る。各稀釈では0.1mlを0.1mlの希釈液(RPMI溶剤)中に移した。その結果、1:10〜1:320の血清希釈シリーズが得られる。各血清希釈ウェルに0.1mlのDENウィルス(60〜160PFU;親DEN1 16007ウィルス)を加え、全部で0.2mlの血清ウィルス混合物にした。96ウェルプレートを4℃で一晩培養した。0.1mlの血清ウィルス混合液(入力ウィルス30〜80PFUを含む)を6ウェルベロプレート(上記ウィルス血症の章に記載のもの)に植え付け、ナチュラルレッドで着色後にプラークを数えた。2倍、1倍、0.5倍テスト濃度での入力ウィルスの多重逆滴定によって入力PFUが直接実験的に得られる。これを基に50%(PRNT50)と70%(PRNT70)エンドポイント抗体力価を求めた。負の血清結果は中性抗体力価<1:10を有する。中和力価320を示す血清を稀釈度1:80〜1:2560で再試験してエンドポイント力価を決定した。
【0134】
4.2 VDV候補の評価
4.2.1 VDV1/プレマスター
D1候補の精製/選択を実施例1に記載の方法で行った。(表現型マーカーおよび配列に基づいて)選択したクローンを、本出願人(サノフィ・パスツール)のMarcy l'Etoile動物施設、l15で、CRP Le Vallon, Mauritius由来の雄カニクイザル(Macaca fascicularis、平均体重3.1kg)で上記の材料と方法に記載の方法で試験した。
【0135】
免疫化後のD0と、その後のD2〜D10でウィルス血症を測定し、免疫原性はD0とD28で測定した。全てのウィルスとワクチンは、液状の場合、−70℃で保存した。
【0136】
LAV1
力価:103.9DICC50/ml、凍結乾燥物、0.5mlのPBS(Ca2+とMg2+を含む;CaCl2・2H2O 0.133g/l;MgCl2・6H2O、 0.1g/l)中に再懸濁し、全量を投与。
プレマスターVDV1 DEN1−TV111
力価:105.9DICC50/ml;液体、105.3pfu/mlでPBS(Ca2+とMg2+を含む;CaCl2・2H2O 0.133g/l;MgCl2・6H2O、 0.1g/l)で稀釈;0.5mlを投与。
【0137】
VDV1の場合には23G1注射を用いて105DICC50の投与量で腕にSCルートで注射した。
【0138】
結果は[表12]に示してある。28日目の力価試験は三倍体(PRNT70)または二倍体(PRNE50)で行った。
【0139】
【表12】

【0140】
要約すると、応答は各グループでほぼ均一であり、各構築物である程度明らかな傾向がみられる。VDV1とLAV1との間には大きな差異は見られない。遅くにわずかなウィルス血症が見られたLAV1サルもあった。VDV1は完全に見え、特に、ウィルス血症は存在しなかった。
【0141】
4.2.2 VDV1バルク
プレマスター段階でのワクチンの免疫原性をテストするために、バルク段階での各一価を試験するための実験を設計した。
【0142】
前回と同様にCRP Le Vallon, lle Maurice由来の雄カニクイザル(24匹、平均体重3.4kg)を用いた。
VDV1;Batch:力価:8.37log10DICC50/ml
偽薬:Ca2+とMg2+を含むPBS
【0143】
ワクチンはPBS(Ca2+とMg2+を含む;CaCl2・2H2O 0.133g/l; MgCl2・6H2O、 0.1g/l)中に稀釈して105.3DICC50/mlとし、0.5mlを23G1注射を用いて腕にSCルートで注射した。これは105DICC50に対応する。
【0144】
ウィルス血症は免疫原性はR Kinneyで通常のCDCで測定した。結果は[表13]に示してある。
【0145】
VDV1一価ワクチンは大きな免疫応答を誘導し、しかも、ウイルス血症はない。従って、この一価VDV1はサルで定義される成功基準を満たしている。
【0146】
【表13】

【0147】
4.3 サルでの神経毒試験
各ウィルス型に対してマウリチウスのカニクイザルに脳間ルートで(各脳半球の視床に107.23CCID50/ml)VDV1マスター種を植菌した。テストの最後にサルを犠牲にし、ホルマリン溶液でかん流した。各サルの脳のサンプル(延髄、橋部、小脳、中脳、左右部分を含む視床、左右大脳皮質)を採取した。各部位を8imに切断し、エオシンとガロシアニンで着色した。
【0148】
VDV1種を注射したサルの脳に病理組織学的病原性の兆候は見られなかった。
【0149】
実施例5
フラビウィルス−ナイーブな18〜40歳の健康な成人での一価VDV1の安全性
このフェーズ1トライアルの目的は、フラビウィルス−ナイーブなの成人におけるウィルス濃度104CCID50での一価VDV1の安全性、ウィルス血症、免疫原性を、スタマリル(Stamaril、登録商標(対照群として使用)との比較で、調べることである。注射を1回行い、6〜12ヶ月間追跡調査した。この研究では安全予防措置として継続的にインクルージョンを行った。
【0150】
そのため、登録とワクチン接種をずらし、第1のコホート(n=4/群、計n=12)にワクチン接種した。28日目までの安全データは独立データモニター委員会(IDMC)とロイヤルアデレード病院研究薬副委員会とで調べ、残りの対象(n=8/群、計n=16)のワクチン接種を進めるか否かを決定した。試験計画の概略は[図6]に示してある。
【0151】
ワクチン投与後、患者は定期的に各種の医学的試験を受けた。このフローは[表14]に示してある。
【0152】
登録群はインクルージョン日に18〜40歳(すなわち18歳の誕生日から41歳の誕生日前日まで)のフラビウィルス−ナイーブな成人から成る[すなわち、フラビウィルス病(例えば黄熱、日本脳炎、デング熱)のワクチン接種を受けた人;フラビウィルス感染歴を有する人(臨床的、血清学的、微生物学的のいずれかで確認されるもの)、デング感染地域の住民か、流行地域への旅行歴のある人(期間は問わない)またはノースクイーンズランドの滞在者または旅行者(2週間以上)は除かれる]。
【0153】
【表14】

【0154】
テストした製品は以下の通り:
評価したワクチン:小瓶に入れた凍結乾燥物を別個に用意した希釈剤で現場で再構成したもの。
有効成分:0.5mlの投与量当たりいずれかの一価のベロデングウィルスセロタイプ1(VDV1)を4±0.5log10CCID50含む。
希釈剤:ワクチン再構築用の4%無菌食塩溶液。
【0155】
再構築ワクチン、例えば0.5mlの一価VDV1の4%食塩溶液は直ちに使用するか、使用まで+2〜+8℃に保存しなければならない。
【0156】
0.5mlのワクチン投与量を三角筋部の皮下に投与する。
【0157】
対照ワクチンのスタマリル(Stamaril、登録商標)はアヴェンティス・パスツール社が製造した黄熱病用ワクチンである。このスタマリル(Stamaril、登録商標)はトリ−白血病−フリーな安定化された凍結乾燥品として提供され、使用直前に希釈剤で再構築する。(有効成分:生きた弱毒化黄熱病ウィルス(17D株):1000マウス致死量(LD50)/希釈剤:4%無菌食塩溶液)。
【0158】
対照ワクチンは三角筋部に皮下投与する。
【0159】
試験の予備結果は[表15]に示してある。
【0160】
【表15】

【0161】
[表15]は生物学的異常(WCC減少、血小板数減少)は全て少ないことを示している。症状は主としてけん怠感、吐き気、下痢、まれな嘔吐で、重篤性は中程度ある。一つの大きな発疹は12日目に生じる「ウィルス性」丘疹で、カバレッジは90%である。
【0162】
第2コホートでの安全性データも生物学的異常のない満足なものであった。デング1ワクチン(力価1315〜13150)の接種後28日後に全ての対象者に抗体応答があった。
【0163】
参照文献
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820
【図面の簡単な説明】
【0164】
【図1】VDV1未成熟種の経歴概略。
【図2】「直ちに使用可能な」投与物の販売製品(Filled Product、一価)を得るために本発明で開発した製造プロセスを要約した流れ図。
【図3】VDV1ゲノム地図で、上側矢印はポリタンパクコード配列、下側矢印は成熟ペプチドコード配列を示し、垂直棒は野生型デング1株16007とLAV1株との間のヌクレオチドの変化を象徴的に示し、星はLAV1とVDV1との間のヌクレオチドの変化を示す。
【図4】デング1ウィルスLAV1、VDV1、株16007を37℃で7日間培養した後のプラーク寸法分析図。
【図5】デング1ウィルスLAV1、VDV1、株16007のプラーク寸法分布を示す解析グラフ。
【図6】健康なフラビウイルス-ナイーブな成人での一価VDV1の安全性アセスメントのための試験法の概要。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号3を有する生きた弱毒化デング−1ウィルス株において、
少なくとも5962位置及び7947位置のヌクレオチドが変異し、1323,1541,1543,1545,1567,1608,2363,2695,2782,5063,6048,6806,7330および9445位置のヌクレオチドは変異していないことを特徴とする生きた弱毒化デング−1ウィルス株。
【請求項2】
2719位置のヌクレオチドがさらに変異している請求項1記載の弱毒化デング−1ウィルス株。
【請求項3】
上記の配列番号3が変異2719G>A、5962C>A、7947A>Gを含む請求項1または2に記載の弱毒化デング−1ウィルス株。
【請求項4】
特定のコドン位置で1つまたは複数のヌクレオチドの置換を含むが、その特定のコドン位置でコードされるアミノ酸は変化しない請求項1〜3のいずれか一項に記載の弱毒化デング−1ウィルス株。
【請求項5】
配列番号1を有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の弱毒化デング−1ウィルス株。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の生きた弱毒化デング−1ウィルス株を薬学的に許容される担体中に含む免疫原性組成物。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の生きた弱毒化デング−1ウィルス株を薬学的に許容される担体中に含むワクチン組成物。
【請求項8】
単価ワクチン組成物である請求項7に記載のワクチン組成物。
【請求項9】
多価デングワクチン組成物である請求項7に記載のワクチン組成物。
【請求項10】
配列番号40を有する生きた弱毒化デング−2ウィルス株を含む請求項9に記載のワクチン組成物。
【請求項11】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の生きた弱毒化デング−1ウィルス株を103〜106CCID50含む請求項7〜10のいずれか一項に記載のワクチン組成物。
【請求項12】
配列番号1のDNA配列またはそれと等価なRNA配列を含む単離された核酸。
【請求項13】
少なくともNS3プロテインの481位置にリジン、及び/または、NS5プロテインの125位置にアルギニンを含む、配列番号1またはその断片によってコードされる単離されたポリプロテイン。
【請求項14】
NS3プロテイン及び/またはNS5プロテインを含む請求項13に記載のポリプロテインの断片。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−546382(P2008−546382A)
【公表日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−516427(P2008−516427)
【出願日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際出願番号】PCT/IB2006/001313
【国際公開番号】WO2006/134433
【国際公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(592055820)サノフィ・パスツール (20)
【氏名又は名称原語表記】SANOFI PASTEUR
【出願人】(507410939)
【Fターム(参考)】