説明

デンプン結合ドメインおよびその使用

本発明は、デンプン結合ドメイン、組換えタンパク質、およびその複合体に関する。本発明はまた、本発明のデンプン結合ドメインを含む組換えタンパク質を分離する方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デンプン結合ドメイン、組換えタンパク質およびその複合体に関する。本発明はまた、本発明のデンプン結合ドメインを含む組換えタンパク質を分離する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
微生物系において発現させ作製されたタンパク質は、価値の高い、医学的に重要なタンパク質の主な供給源となっている。組換えタンパク質の精製および回収は、発酵プロセスを計画する上で主要な検討事項である。従来のタンパク質精製法は生成物の分離に使用されるが、改良された方法には組換えタンパク質の使用が含まれる。組換えタンパク質は親和性カラムクロマトグラフィーにより精製され、親和性マトリックスと結合して、ポリペプチドへ共有結合することによって組換えタンパク質の任意の構成成分が精製される。
【0003】
親和性カラムクロマトグラフィーの原理によりタンパク質を分離する所定のシステムは存在する。
【0004】
米国特許第5643758号は、マルトース結合タンパク質(MBP)を含むシステムが記載されている。クローン化した遺伝子をmaIEから下流のpMALベクターへ挿入し、MBPをコードする。そのベクターが宿主細胞へ形質転換され、その宿主細胞で組換えタンパク質が発現する。細胞可溶化物または培地画分を親和性マトリックスであるアミロースを含むカラムに負荷して数回洗浄し、大量のマルトースを用いて組換えタンパク質を溶出する。
【0005】
米国特許第5202247号では、セルロース結合ドメインを含むシステムについて詳述されている。セルロース・カラムを使用して、セルロース結合ドメインを含む組換えタンパク質が精製される。細胞可溶化物または培地画分をカラムに負荷して洗浄する。セルロース結合ドメインとセルロースとの間の相互作用は、pHが中性時の疎水性相互作用に左右されると考えられる。一般的な溶出方法ではエチレングリコールなどの極性の低い溶媒が使用され、その後その極性の低い溶媒は、透析および濾過により除去される。
【0006】
キチン結合ドメインおよび誘導型のスプライシングを受けたリンカー領域は、標的タンパク質のC末端またはN末端で融合され得る。細胞可溶化物または培地画分はカラムに負荷され、洗浄される。キチン結合ドメインがキチンカラムに結合して、組換えタンパク質を固定する。DTTまたはシステインなどのチオール類の存在下で、リンカー領域は特異的な自己切断を受け、キチンが結合したキチン結合ドメインから標的タンパク質を遊離させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5643758号
【特許文献2】米国特許第5202247号
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】組換えpET-23a(+)-SBD-L-eGFPおよびpET-23a(+)-eGFP-L-SBDのプラスミドマップを示す。
【図2】大腸菌により発現されるSBD-PK-eGFPおよびSBD-PPT-eGFPのSDS-PAGE解析を示す。
【図3】大腸菌により発現されるeGFP-PK-SBDおよびeGFP-PPT-SBDのSDS-PAGE解析を示す。
【図4】精製融合タンパク質のSDS-PAGE解析を示す。
【図5】修飾デンプンカラムクロマトグラフィーを使用するSBD-PH-eGFPの精製を示す。
【図6】SBD-PH-eGFPのコーンスターチに対する結合能におけるpHの影響を示す。
【図7】融合タンパク質のコーンスターチに対する結合能における温度の影響を示す。(A) 組換えタンパク質のN末端におけるSBD (B) 組換えタンパク質のC末端におけるSBD
【図8】RoCBM21のNMRスペクトルを示す。A: 1H-15N HSQCスペクトルにおけるRoCBM21のアミド共鳴の配置。全てのアミドピークのバックボーンは、Y12に重複するQ10、およびE87に重複するY86を除き、十分に解析される。B: HNCACBスペクトルにおける一連のF21残基からY26残基の例示的配置。Cαピークは、ポジティブフェーズにフェーズされる(黒)。Cβは、ネガティブフェーズのピークである(グレー)。CおよびD: Nシートにおけるふくらみ構造およびCシートにおけるループを有する反平行二次構造。太矢印は逐次Hαおよびアミド部分の間に見られるNOEを示し、太両矢印はストランド間Hα-HαNOEを示し、細両矢印はストランド間アミド部分からアミド部分NOEを示し、細矢印はストランド間Hαからアミド部分NOEを示し、ならびに点線はストランド間水素結合を示す。ループ領域のNOEは示されていない。
【図9】RoCBM21の溶液構造示す。A: RoCBM21集合体の立体視。RoCBM21の正面側は、N末端ループを上に、C末端ループを下に示されている。ストランドはシアン色である。BおよびC: RoCBM21のβサンドイッチ折りたたみ部分のNシートおよびCシート側。DおよびE: BおよびCの表面視。
【図10】SBDのI型トポロジーおよびII型トポロジーを示す。赤、黄、緑、青、紺および紫は、RoCBM21における8個のβストランドの領域、および他のSBDにおけるそれに相当するストランドを表す。ストランド7および8は、両方とも紫で示され、ストランド6と水素結合を形成する。TvCBM34 IのN末端における(RoCBM21のふくらみ構造に相当する)最初の2個のβストランドの間の余剰ループ。A: SBDの一次構造。二次構造に相当する配列を、上記の色で示す。B: I型トポロジーおよびII型トポロジーの模式図。ストランドの順序はAに示されたものであり、II型トポロジー図の上に示す。C: (AnCBM20で示される)I型トポロジーおよび(RoCBM21で示される)II型トポロジーの三次元構造。
【図11】RoCBM21のリガンド結合およびリガンドドッキングを示す。A: 滴定(リガンドとしてβシクロデキストリン)の前(黒のピーク)および後(赤のピーク)のRoCBM21 H-15N HSQCスペクトル。より大きい化学シフト摂動を伴うピークが緑矢印で示される。B: 残基数の点における加重平均化学シフト変化。黒、明黄、および赤はリガンド:それぞれ、マルトトリオース、マルトヘプタオース、およびβシクロデキストリンを表す。星印は、化学シフト変化が>0.1であるポリNループにおけるアスパラギン(N)残基を示す。摂動閾値は、>0.1および0.06-0.1(横軸平ら)にセットされている。C: 滴定において影響される残基に標識したRoCBM21構造。化学シフト変化が>0.06である残基を、有意に影響されるとみなし、緑色に示し、化学シフト変化が>0.1である残基(それゆえリガンド結合に重要な役割を果たすと仮定される)を、棒状構造で示す。D: 2分子のβシクロデキストリンが、RoCBM21にドッキングする。EおよびF: シクロマルトヘキサイコサオース(v-アミロース)のRoCBM21に対するドッキング。v-アミロースとドッキングしたRoCBM21のE.略図視およびF表面視。Eにおいて、ストランドは黄色であり、v-アミロースは球と棒の構造として示す。Fにおいて、タンパク質は黄色であり、v-アミロースは白である。
【図12】RoGACBM21-βCD複合体結晶を示す。
【図13】RoGACBM21-βCD複合体を示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、配列番号1、2または3で示されるアミノ酸配列を有するデンプン結合ドメインに関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明はまた、
(SBD)m-Ln-X-L'p-(SBD)q
[前記式中、SBDはデンプン結合ドメインを表し、Lはリンカーを表し、L'はリンカーを表し、Xは標的タンパク質またはポリペプチドを表し、mは0,1,または2を表し、nは0または1であり、pは0または1であり、qは0,1,または2を表し、ここでmとqは同時に0ではない]
を有する組換えタンパク質にもまた関する。
【0011】
本発明はまた、
(SBD)m-X-(SBD)q
[前記式中、SBDはデンプン結合ドメインを表し、Xは炭水化物を表し、mは0,1,または2を表し、qは0,1,または2を表し、ここでSBDは同時に炭水化物に結合する別個の単位を使用する]
を含む複合体にもまた関する。
【0012】
本発明はさらに、
(a) 親和性マトリックスに直接組換えタンパク質を含む生物学的液体に適用する工程、
(b) 温度変化、pH、イオン強度、糖濃度、または酵素成分により組換えタンパク質を溶出する工程
を含む、上記のデンプン結合ドメインを含む組換えタンパク質を分離する方法に関する。
【0013】
本発明は、配列番号1、2または3で示されるアミノ酸配列を有するデンプン結合ドメイン(SBD)
配列番号1:ASIPSSASVQ LDSYNYDGST FSGKIYVKNI AYSKKVTVVY ADGSDNWNNN GNIIAASFSG PISGSNYEYW TFSASVKGIK EFYIKYEVSG KTYYDNNNSA NYQVSTS;
配列番号2:ASIPSSASVQ LDSYNYDGST FSGKIYVKNI AYSKKVTVIY ADGSDNWNNN GNTIAASYSA PISGSNYEYW TFSASINGIK EFYIKYEVSG KTYYDNNNSA NYQVSTS;または
配列番号3:ASIPSSASVQ LDSYNYDGST FSGKIYVKNI AYSKKVTVIY ANGSDNWNNN GNTIAASYSA PISGSNYEYW TFSASINGIK EFYIKYEVSG KTYYDNNNSA NYQVSTS;配列番号1、2または3がデンプン結合ドメインの一部である、デンプン結合能を有する対立遺伝子バリエーションおよびその誘導体
に関する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のSBDは、炭水化物結合モジュール(CBM) CBM20またはCBM21のファミリーの一員より取得されうる。ある実施態様において、SBDはCBM21由来のグルコアミラーゼのデンプン結合ドメインより取得されうる。好ましい実施態様において、SBDはクモノスカビ(Rhizopus spp)より取得されうる。より好ましい実施態様において、SBDはクモノスカビのグルコアミラーゼのデンプン結合ドメインより取得されうる。
【0015】
本発明のSBDは、炭水化物結合のための配列の32, 47, 58, 67, 83, 93および94番目のアミノ酸残基の芳香族群にリガンド結合(または炭水化物結合)部位を有し、そのアミノ酸残基はチロシンまたは/およびトリプトファンである。好ましい実施態様において、活性部位は残基32のチロシン、残基47のトリプトファン、残基58のチロシン、残基83のチロシン、および残基93のチロシンである。
【0016】
本発明はまた、
(SBD)m-Ln-X-L'p-(SBD)q
[前記式中、SBDはデンプン結合ドメインを表し、Lはリンカーを表し、L'はリンカーを表し、Xは標的タンパク質またはポリペプチドを表し、mは0,1,または2を表し、nは0または1であり、pは0または1であり、qは0,1,または2を表し、ここでmとqは同時に0ではない]
を有する組換えタンパク質にもまた関する。SBDは上記のとおりである。
【0017】
好ましい実施態様において、リンカーはRoLK: リゾパス・オリザエ(Rhizopus oryzae) GAのリンカー、PH: 6個のヒスチジン、PK: 8個のリジン、PPT: スレオニンとプロリン-スレオリンの4回リピート[T(PT)4]、あるいは58L: pET39b(+)における SpeIおよびNcoIの切断部位の間の領域である。
【0018】
本発明はまた、
(SBD)m-X-(SBD)q
[前記式中、SBDはデンプン結合ドメインを表し、Xは炭水化物を表し、mは0,1,または2を表し、qは0,1,または2を表し、ここでSBDは同時に炭水化物に結合する別個の単位を使用する]
を含む複合体にもまた関する。
【0019】
好ましい実施態様において、X全体は構造中にα-1,4-グルコース連鎖またはα-1,6-グルコース連鎖を有する炭水化物である。より好ましい実施態様において、炭水化物は、オリゴマーの、または環状の炭水化物である。デンプン結合ドメインはリガンド結合(炭水化物結合)部位またはコンフォメーションにより炭水化物に結合する。デンプン結合ドメインは、炭水化物のサイズに応じて多数の単位を有する。
【0020】
本発明はさらに、
(a) 親和性マトリックスに直接組換えタンパク質を含む生物学的液体を適用する工程、
(b) 温度変化、pH、イオン強度、糖濃度、または酵素成分により組換えタンパク質を溶出する工程
を含む、上記のデンプン結合ドメインを含む組換えタンパク質を分離する方法に関する。
【0021】
本方法の親和性マトリックスは、式
(X-X)n
[前記式中、Xはグルコース分子であり、グルコースとグルコースとの間の連鎖はα-1,4-連鎖またはα-1,6-連鎖であり、nは1以上である;主鎖、側鎖、または修飾残基を含むそのいずれの構造においても]
を含む。好ましい実施態様において、親和性マトリックスはデンプンである。好ましい実施態様において、温度変化は温度を37°Cまたはそれより高く上昇させることであり、工程(a)を0°Cから25°Cで実行する。
【実施例】
【0022】
以下の実施例は非限定的であり、本発明の種々の面および特徴を単に例示するものである。
【0023】
微生物株およびプラスミド
大腸菌Top10F' (F' {proAB lacq, lacZΔM15, Tn10(TetR)} mcrA, A(mrr-hsdRMS-mcrBC), 80lacZΔM15, AlacX74, deoR, recAl, areD139, A(ara-leu)7697 , galU, galK, rpsL (StrR) endA1, nupGλ-)を、ベクター構築およびDNA操作のための宿主として使用した。
【0024】
大腸菌BL21-CodonPlus(登録商標) (DE3) (Stratagene, USA) (B F- ompT hsdS(rB- mB-) dcm+ Tetr galλ(DE3) endA Hte [argU proL Camr] [argU ileY leuW Strep/Specr])を、融合タンパク質産生のための宿主として使用した。
【0025】
T7プロモーターを含むベクターpET-23a(+) (Novagen, USA)を使用して、大腸筋細胞で融合タンパク質を発現し、配列解析を行った。
【0026】
微生物培養
大腸菌を、50 μg/mlアンピシリンを含むルリア-ベルターニ(LB)培地[1% (w/v) トリプトン, 2% (w/v) 酵母抽出物, 2% (w/v)塩化ナトリウム, pH 7.5]中で培養した。形質転換体を1.5% 寒天および50 μg/mlアンピシリンを含むLB培地からなる固体プレート上で、37°Cで選択した。
【0027】
実施例1
(A) プラスミド構築
組換え構築物の模式的な表示を図1に示す。eGFPの断片、リンカー、およびSBDを、設計したプライマーとのPCRにより増幅し、その配列を表1に示す。リンカー領域は、5個のリンカー候補(RoLK: Rhizopus oryzae GAのリンカー、PH: 6個のヒスチジン、PK: 8個のリジン、PPT: スレオニンとプロリン-スレオリンの4回リピート[T(PT)4]、あるいは58L: pET39b(+)における SpeIおよびNcoIの切断部位の間の領域)で置換する。PCR反応を、以下のように調製する:蒸留H2Oで最終容量50 μl中、鋳型 10 ng、各プライマー(10 μM) 0.5 μl、反応バッファー(10x) 5 μl、デオキシヌクレオチド(2.5 mM) 5 μl、Ex Taq DNAポリメラーゼ (Takara Mirus Bio, Japan, 5 U/μl) 0.8 μl。この混合物を、95°C5分を1サイクル、95°C30秒(変性)を30サイクル、53°C30秒(アニーリング)、72°C20秒から2分(伸長)、および72°C5分で反応させた。
【0028】
【表1】

【0029】
直前の工程からの断片をpGEM(登録商標)-T Easyベクター(Promega, USA)とライゲーションした。蒸留H2Oでを加えて最終容量10 μl中、DNA断片100 ng、ベクター1 μl、リガーゼバッファー1 μl [66 mM Tris-ΗCl (pΗ 7.6), 6.6 mM MgCl2, 10 mM DTTおよび0.1 mM ATP]、およびT4リガーゼ(Takara Mirus Bio, Japan)溶液 1 μlを一緒に混合し16°Cに16時間設置した。その後ライゲーション産物をコンピテント大腸菌細胞に形質転換した。所望の配列を有するT-ベクターを有する大腸菌の形質転換体を青白セレクションプレートから選択した。選択されたコロニーからのさらなる細胞培養から、プラスミドをGene-Spin(登録商標)Miniprep Purification Kit (Protech, Taiwan)で精製した。プラスミドを特異的な制限酵素で切断し、その後切断された断片を、1xTAEバッファー(40 mMトリス塩基, 40 mM酢酸, および1 mM EDTA)中100 V電圧の1%アガロースゲル電気泳動でDNA断片の大きさにより分離した。EtBr (エチジウムブロミド 0.5 mg/ml)を使用して、ゲルを10分間染色し、DNA断片を紫外線光下で示した。所望の断片を、ゲル/PCR DNA断片抽出キット(Geneaid Biotech, Taiwan)により精製し、さらに使用した。
【0030】
Before ligation, pET-23a(+) vector was treated with specific restriction enzymes.
ライゲーション前に、pET-23a(+)べくたーを、特異的制限酵素で処理した。5'末端にSBDを含む構築物には、ベクターをNdeIおよびEcoRIで処理し、リンカーを有するSBDのDNA断片を、NdeIおよびKpnIにより切断した。eGFPDNA断片をKpnIおよびEcoR1にょり消化した。一方、3'末端にSBDを有するプラスミドを構築するために、ベクターをEcoRIおよびXhoIで処理され、一方リンカーを有するeGFPのDNA断片をEcoRIおよびHindIIIで処理し、リンカーを有するSBDは、HindIIIおよびXhoIにより切断した。ライゲーション産物は、大腸菌BL21-CodonPlus(登録商標)(DE3)に形質転換する前にDNA調製およびDNA配列の確認のために大腸菌Top10F'細胞に形質転換された。
【0031】
(B)コンピテント細胞と大腸菌形質転換体の調製
1970年にMandelおよびHigaにより開発されたCaCl2介在形質転換法を適用し、形質転換する前にコンピテント大腸菌Top10F'およびBL21-CodonPlus(登録商標)(DE3)を調製した。はじめに、50 μg/mlテトラサイクリンを含む凍結した50 μg/mlテトラサイクリンを含むLB培地5 mlと、100 μlのアリコートを一緒にインキュベートし、37°Cで16時間培養し、その後一晩後の細胞の100 μlアリコートを、テトラサイクリンを含む新鮮なLB培地5 ml中37°CでOD600が0.5~0.6に達するまででインキュベートした。細胞ペレットを16,000 x gで4°C5分の遠心により回収し、10 ml氷冷塩化カルシウム(100 mM)中に再懸濁した。細胞のインキュベーションを、氷水槽中で30分実行した後、遠心した。最終コンピテント細胞懸濁物を、前工程からの細胞ペレットを15%グリセロールを含む氷冷塩化カルシウム500 μl中に3時間かけて緩やかに再懸濁することにより取得した。
【0032】
大腸菌の形質転換において、よく調製されたコンピテント細胞の100 μlのアリコートをライゲーション混合物10 μlと混合し、氷上で30分インキュベートした。混合物を42°Cに90秒設置する熱ショック工程の後、LB培地500 μlを混合物に添加し、37°Cで30分さらにインキュベートした。最後に、細胞を16,000 x gで25°C10分の遠心により回収し、50 μg/mlアンピシリンを含むLB寒天プレート上に設置した。プレートを37°Cで16時間インキュベートした。
【0033】
(C) プラスミドの小規模調製
組換え大腸菌をLB培地中で37°Cで16時間培養し、16,000 x gで4°C5分の遠心により回収した。プラスミドDNAをGene-Spin(登録商標)Miniprep Purification Kitにより単離した。ペレットを、溶液I(50 mM EDTA5 25 mM Tris pH 8.0, 50 mMグルコース)200 μl中に懸濁した。溶液II(0.2N NaOH, 1% SDS)200 μlを順次添加し、溶液が透明になるまでマイクロ遠心チューブを緩やかにひっくり返した。溶液III(KOAc, 11.5% 氷酢酸, pH 4.8)200 μlを添加し、チューブを5から6回ひっくり返した。不溶物質を、16,000 x gで4°C5分の遠心により除去した。上清を直接透明カラムに移し、16,000 x gで30秒遠心することにより除去した。濾過物を廃棄し、洗浄溶液(70% エタノール)700 μlを添加し、16,000 x gで1分遠心した。濾過物を廃棄し、16,000 x gでさらに4°C3分で遠心し、残留エタノールを除去した。スピンカラムを除き、新しいエッペンドルフチューブを設置した。50から100 μlの滅菌蒸留水をカラム中に添加した。最後に、DNAを16,000 x gで4°C5分の遠心により溶出し、-20°Cで保存した。
【0034】
(D) In situ PCR
大腸菌形質転換体のプレート上における数個のコロニーを選択し、PCRの鋳型として使用した。鋳型としての形質転換体コロニー、10 μMフォワードプライマー0.3 μl、10 μMリバースプライマー0.3 μl、2.5 mM dNTP (dGTP, dATP, dCTPおよびdTTP) 2 μl、10x反応バッファー 2 μl、5 U/μl Vio Taq DNAポリメラーゼ(Viogene, USA)0.3 μl、および蒸留H2O15.1 μlを混合した。パーキンエルマー(Perkin Elmer)Gene Amp PCR system 2400を利用した。熱サイクルの条件は以下のとおりである
【表2】

【0035】
(E) DNAシークエンス
シークエンス反応を、BigDye(登録商標) Terminator V3.1 Cycle Sequencing Kit (ABI, USA)により実行した。反応混合物を、96°C1分1サイクル、96°C30秒25サイクル、50°C30秒、60°C2分で反応させた。その後生成物を3M酢酸ナトリウムpH 4.6 2 μl、95%エタノール50 μl、および蒸留H2O10 μlと混合し、25°Cに15分設置し、伸長生成物を沈殿させた。それらを16,000 x g4°C20分で遠心し、上清を除去した。70%エタノール180μlを各チューブに軽く混合しながら添加した。伸長DNA生成物を含むチューブを真空遠心で5分間乾燥させ、その後Hi-Diホルムアミド10 μlを添加し、オートシークエンスのための生成物を溶解させた。自動DNAシークエンスをABI PRISM(登録商標) 3100 Genetic Analyzerにより実行した。
【0036】
(F) 大腸菌による融合タンパク質の発現
大腸菌BL21-CodonPlus(登録商標) (DE3)を、微生物宿主として使用し、融合タンパク質を生成させた。融合タンパク質の遺伝子断片を含むプラスミドを大腸菌BL21-CodonPlus(登録商標) (DE3)に形質転換し、50 μg/mlアンピシリンを含むLB寒天プレートで37°Cで16時間増殖させることにより選択した。単一のコロニーを、50 μg/mlアンピシリンを含むLB 1ml中に播種し、37°CでOD600が0.4~0.6に達するまででインキュベートした。イソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)を最終濃度1 mMとなるように添加することによる誘導を20°Cで実行した。16時間後、細胞を回収し、結合バッファー(50 mM NaOAc, pH 5.5)0.1 ml中に再懸濁し、ソニケーター(Misonix, USA)により溶菌した。融合タンパク質の可溶性および不溶性形態を、16,000 x g4°C10分の遠心により分離した。
【0037】
(G) ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS-PAGE)
SDS-不連続PAGEを、Laemmli [25]の方法に基づいて実行し、その際に溶解ゲル(pH 8.8)およびすスタッキングゲル(pH 6.8)からなる1 mmスタブゲルを使用した。サンプルを99°Cで10分間サンプルバッファー[100 mM Tris-HCl (pH 6.8), 200 mM DTT, 4% SDS, 0.2% ブロモフェノールブルー、および20%グリセロール]で処理した。12% (w/v)ポリアクリルアミドゲル上25 mAで60分間、Electrical Supply MP-250により電気泳動を実施した。クーマシーブルー溶液(2.5%クーマシーブリリアントブルー(Coomassie brilliant blue) R-250, 45 %メタノール、および10%酢酸)を使用して、電気泳動後15分間ゲルを染色した。脱色Iバッファー(40%メタノールおよび10%酢酸)中で1時間、脱色工程としてゲルを設置し、その後脱色IIバッファー(7%メタノールおよび5%酢酸)中でさらに脱色し、残留した染色を除去した。タンパク質分子量マーカー(Fermentas, USA)を、平行して泳動した。
【0038】
(H) タンパク質濃度の測定
サンプルのタンパク質濃度を、ウシ血清アルブミン(BSA)を標準とするビシンコニン酸アッセイ(BCAアッセイキット, Pierce, USA)により測定した。
【0039】
(I) アミロースレジンクロマトグラフィーによる精製融合タンパク質の調製
アミロースレジンを2.5 x 10 cmカラム中に充填した。融合タンパク質を含有する大腸菌の細胞ペレットを、結合バッファー(50 mM NaOAc, pH 5.5)中に再懸濁し、その後超音波破砕した。16,000 x g4°C15分で遠心した後、透明な上清をクロマトグラフィーのために保持した。8カラム容量の結合バッファーでカラムを洗浄した後、透明な細胞溶解物を流速1 ml/分でカラムに通した。その後、さらに12カラム容量の結合バッファーでカラムを洗浄した後、融合タンパク質を溶出バッファー(10 mMグリシン/NaOH, pH 11.0)で溶出した。
【0040】
(J) 結果
SBDを親和性タグとして使用する適用潜在性を広め、タンパク質発現および精製に対する種々のペプチドリンカーの効果を調査するために、異なるリンカー、58L, RoLK, PH, PKおよびPPTを有するeGFPおよびSBDを含有する複数の組換えクローンを、図1に示すように構築した。10個の融合タンパク質のうち、5個の融合タンパク質はN末端にSBDを保持し、他のものはC末端にSBDを含有する。N末端SBDを有する場合、可溶性SBD-58L-eGFP, SBD-RoLK-eGFP, およびSBD-PH-eGFPの過剰発現が大腸菌発現系で達成され、一方SBD-PK-eGFPおよびSBD-PPT-eGFPは封入体(inclusion body)として発現した。SBDがC末端に位置する場合、eGFP-58L-SBD, eGFP-RoLK-SBDおよびeGFP-PH-SBDもまた可溶性画分に発現されたが、eGFP-PK-SBDおよびeGFP-PPT-SBDの発現は、また封入体の生成に至った。不溶性SBD-PK-eGFPおよびSBD-PPT-eGFPの過剰発現、ならびにeGFP-PK-SBDおよびeGFP-PPT-SBDの過剰発現は、それぞれ図2および図3に示されている。過剰発現 SBD-PK-eGFP, SBD-PPT-eGFP, eGFP-PK-SBD and eGFP-PPT-SBDの分子量は、12% SDS-PAGEにより約40 kDaと見積もられた。
【0041】
6個の融合タンパク質(SBD-58L-eGFP, SBD-itaLK-eGFP, SBD-PH-eGFP, eGFP-58L-SBD, eGFP-RoLK-SBDおよびeGFP-PH-SBD)を、大腸菌BL21-CodonPlus(登録商標) (DE3)で発現させることに成功し、ここで可溶性融合タンパク質を取得するために誘導を 20°Cで16時間実行した。細胞を遠心により回収した後、結合バッファー(50 mM NaOAc, pH 5.5)中に再懸濁し、その後超音波破砕し、可溶性融合タンパク質を有する上清を遠心により回収し、アミロースレジンで充填されたカラムを使用する親和性カラムクロマトグラフィーにかけた。溶出バッファー(10 mMグリシン/NaOH, pH 11.0)を適用し、カラムから純粋な融合タンパク質を溶出した。その後精製組換えタンパク質を、図4に示すように12% SDS-PAGEにより解析した。およぼ100から150 mgの純粋な融合タンパク質を、1 L細胞培養からの全ての組換えクローンに対して取得することができた。これらのタンパク質を、以下の特徴づけアッセイに使用した。
【0042】
実施例2
(A) 結合能に対するpHの効果
結合能に対するpHの効果を調査する実験において、16 μMの濃度を有する精製融合タンパク質を、25°Cで1時間バッファー中で、コーンスターチ(Sigma- Aldrich, EC 232-679-6, USA)の種々のpH値および最終濃度0.1 mg/mlとなるよう撹拌した。2.0から11.0の範囲であるpH値で結合を実行し、そこでバッファーは100 mMグリシン/HCl (pH 2-3), 100 mM酢酸ナトリウム/酢酸(pH 4-5), 100 mM Na2HPO4ZNaH2PO4 (pH 6-7), 100 mM Tris/HCl (pH 8)および100 mMグリシン/NaOH (pH 9-11)を含んだ。結合前後の上清中の遊離融合タンパク質濃度を、BCAアッセイにより測定した。pH 5.0でアッセイされた融合タンパク質の相対的結合能を、100%として標準化した。
【0043】
(B) 結合能に対する温度の効果
デンプン結合能に対するpHの効果を調査する実験において、16 μMの濃度である精製融合タンパク質を、4°C, 25°C および37°Cで3時間、結合バッファー(50 mM NaOAc, pH 5.5)中で、コーンスターチの最終濃度が0.1 mg/mlとなるよう撹拌した。結合前後の上清中の遊離融合タンパク質濃度を、BCAアッセイにより測定した。4°Cでアッセイされた融合タンパク質の相対的結合能を、100%として標準化した。
【0044】
(C) 撹拌法による精製
この精製法は、緑膿菌(Pseudomonas amyloderamosa)イソアミラーゼを精製するために開発された撹拌法と呼ばれる(Fang, T. Y. et al., (1994) Enzy Microb Tech 16, 247-252)。融合タンパク質を含む大腸菌の細胞ペレットを、結合バッファー(50 mM NaOAc, pH 5.5)中に再懸濁し、その後超音波破砕した。16,000 x g 4°Cで15分遠心した後、不溶ペレットを廃棄した。50 mgのコーンスターチ(Sigma, EC 232-679-6)を、溶出バッファー(10 mMグリシン/NaOH, pH 11.0) 1 ml中で3回洗浄し、その後蒸留H2O 1 mlで洗浄した。16,000 x gで5分遠心することにより蒸留H2Oを除去した。融合タンパク質を含む上清1 mlを、撹拌しながら3時間、25°Cでデンプン溶液からのデンプン50 mgとインキュベートした。16,000 x g 4°Cで10分遠心した後、上清を除去した。デンプンペレットを、結合バッファー1 mlで3回洗浄し、その後溶出バッファー250 μlにより4回溶出した。洗浄および溶出からの画分を全て、SDS-PAGEおよびさらなる解析のために保持した。
【0045】
(D) デンプンクロマトグラフィーによる精製
この精製法は、生デンプンとともに、フンネル型ガラスフィルターによる緑膿菌(Pseudomonas amyloderamosa)イソアミラーゼを精製するために開発された精製スキームと呼ばれる(Lin, L. L. et al., (1994) Lett Appl Microbiol 19, 383-385)。融合タンパク質を含む大腸菌の細胞ペレットを、結合バッファー(50 mM NaOAc, pH 5.5)中に再懸濁し、その後超音波破砕した。16,000 x g 4°Cで15分遠心した後、不溶ペレットを廃棄した。200 mgのコーンスターチ(Sigma)を、溶出バッファー(10 mMグリシン/NaOH, pH 11.0) 2 ml中で3回洗浄し、その後蒸留H2O 2 mlで洗浄した。デンプンペレットを、結合バッファー(50 mM NaOAc, pH 5.5)2 mlで3回洗浄し、最後に結合バッファー中に分散させた。デンプン溶液を5-mlディスポーザブルシリンジ中に充填し、その中で針を除去し、フィルターペーパーを底に設置し、デンプンが漏出するのを止めた。細胞の超音波破砕後回収された可溶性画分3 mlを、デンプンカラムにかけ、重力で流出を達成させた。非特異的結合タンパク質を結合バッファー6 mlで洗浄し、その後溶出バッファー3 mlを使用して融合タンパク質を溶出した。洗浄および溶出工程を、底に別のシリンジを使用する吸引により加速化することができた。結合バッファーによる洗浄からの画分、および溶出バッファーによる溶出からの画分を全て、SDS-PAGEおよびさらなる解析のために保持した。
【0046】
(E) 改変デンプンクロマトグラフィーによる精製
デンプンクロマトグラフィーにおける改変を、流動床吸着とそれを組み合わせることにより達成した(Hicketier, M. and Buchholz, K. (2002) J Biotechnol 93, 253-268; Roy, I. et al., (2000) Protein Expr Purif 20, 162-168)。融合タンパク質を含む大腸菌の細胞ペレットを、結合バッファー(50 mM NaOAc, pH 5.5)中に再懸濁し、その後超音波破砕した。16,000 x g 4°Cで15分遠心した後、不溶ペレットを廃棄した。600 mgのコーンスターチ(Sigma)を、溶出バッファー(10 mMグリシン/NaOH, pH 11.0) 3 mlで3回洗浄し、その後蒸留H2O 3 mlで洗浄した。デンプンペレットを、結合バッファー(50 mM NaOAc, pH 5.5)3 mlで3回洗浄し、最後に結合バッファー中に分散させた。デンプン溶液を5-mlディスポーザブルシリンジ中に充填し、その中で針を除去し、フィルターペーパーを底に設置し、デンプンが漏出するのを止めた。改変デンプンクロマトグラフィーの設定を、図5に模式的に表示した。細胞の超音波破砕後回収された可溶性画分を、蠕動ポンプP1(Amersham Pharmacia Biotech, USA)により、流速1 ml/分でデンプンカラムに強制的に注入した。非特異的結合タンパク質を結合バッファー6 mlで洗浄し、その後溶出バッファーを使用して融合タンパク質を溶出した。結合バッファーによる洗浄からの画分、および溶出バッファーによる溶出からの画分を全て、SDS-PAGEおよびさらなる解析のために保持した。
【0047】
(F) 結果
生デンプンに対する吸着に対するpHおよび温度の効果
pH 5.0から6.0でSBDは単独で生デンプンによく結合し、その結合は6.0より高いまたは5.0より低い値のpHで破壊されることが明らかにされており、SBDを含有する融合タンパク質が、異なるpHで結合特性をなお保持していることを確認するために、25°Cで2.0から11.0の範囲の異なる値のpHで結合アッセイを行うために、融合タンパク質の一つであるSBD-PH-eGFPを選択した。図6に示すように、コーンスターチに対するSBD-PH-eGFPの結合はpH4.0およびpH5.0で最大であり、一方結合はpH 11.0で最も弱いものであることが観察された。相対的な結合を、pH 5.0における結合が100%であると推察されて計算した。融合タンパク質は、pH 4.0から8.0で生デンプンに非常によく結合し、一方結合は4より低い、または8より高いpH値で急速に下落した。
【0048】
さらに、各精製融合タンパク質の結合アッセイを、異なる温度で結合バッファー(50 mM NaOAc, pH 5.5)中で実行し、その結果を図7に示す。コーンスターチに対する吸着は、4°Cで最も高かった。25°Cにおける相対的結合は、SBD-58L-eGFP, SBD-RoLK-eGFP, and SBD-PH-eGFP, eGFP-58L-SBD, eGFP-RoLK-SBDおよびeGFP-PH-SBDに対してそれぞれ、92%, 94%, 95%, 88%, 81% および74%に減少した。結合は、37°Cで実行した際にさらに破壊された。4°Cにおける相対的結合は、SBD-58L-eGFP, SBD-RoLK-eGFP, およびSBD-PH-eGFP, eGFP-58L-SBD, eGFP-RoLK-SBDおよびeGFP-PH-SBDに対してそれぞれ、14%, 37%, 9%, 21%, 16% および 8%に減少した。その結果、4°Cと25°Cの間の温度範囲における結合条件は、コーンスターチと融合タンパク質の間の高い結合を達成するために必要であり、一方実験系に対する冷却における必要なコストは少なくするために、25°Cをさらなる実験に使用した。
【0049】
実施例3
(A) 構造決定のためのNMR分光法
NMRデータを、Bruker Avance 600 MHzまたは800 MHzスペクトロメーター上で取得した。構造決定のために、RoCBM21(非標識、15N-標識、または13C, 15N-二重標識のいずれか) 1 mMを、10 mM酢酸ナトリウム中に溶解し、25°CでNMR実験にかけた。タンパク質濃度を、Bio-Rad Protein Assayにより定量した。主鎖値(backbone assignment)を、HNCA, HN(CO)CA, HNCACB, CBCA(CO)NH, HNCO, およびHN(CA)CO実験で(Cavanagh, J. et al., (1996) Protein NMR spectroscopy, Academic Press Inc.)取得した。RoCBM21が相対的に高い濃度の芳香族残基を含有するため、芳香族側鎖の値を、HBCBCGCDHDおよびHBCBCGCDCEHE 実験(Yamazaki, T. et al., (1993) J. Am. Chem. Soc. 115, 11054-11055)で補正した。残りの原子の値を、結合介在相関スペクトル(through-bond correlation spectra)の補正を伴うホモ核二次元核オーバーハウザー上昇分光法(nuclear Overhauser enhancement spectroscopy (NOESY))と15Nヘテロ核単量子コヒーレンスNOESY (HSQC-NOESY)の両方を使用して取得した。ホモ核二重量子フィルター相関スペクトル(DQF-COSY)、ホモ核総相関スペクトル(TOCSY)および15N HSQC-TOCSYを利用して、結合介在相関を取得した。混合時間は以下のとおりである: TOCSYスペクトル, 90 ms, およびNOESYスペクトル, 50, 100または150 ms。全ての二次元(2D)スペクトルを、512 t1増大とともに記録し、2048 t2複合データポイントを、TopSpin 1.3 (Bruker)を使用して処理した。距離抑制は、100-ms混合時間で記録されたNOESYスペクトルに由来した。凍結乾燥RoCBM21を99% D2O中25°Cで36時間溶解させた後、2D 15N HSQCスペクトルを記録し、保護アミド部位を同定した。凍結乾燥後RoCBM21は容易に溶解せず、それゆえ過剰のD2Oを添加してそのタンパク質を完全に溶解させた。過剰D2Oを、。凍結乾燥により順次除去し、500-μlサンプルを回収した。水素結合制限を、HSQCアミド部位保護より取得し、包囲NOEシグナルおよびHNCOHB(水素介在結合コヒーレンス)(Cordier, F., and Grzesiek, S. (1999) J. Am. Chem. Soc. 121, 1601-1602)で確認した。二平面核制限を、N, HA, CA, CB, C原子の化学シフトを有するTALOSプログラム(Cornilescu, G. et al., (1999) JBiomol NMR 13, 289-302)を使用して取得した。2,2-ジメチル-2-シラペンタン-5-スルホン酸ナトリウム(DSS)を、プロトン化学シフトに対する内部レファレンスとして使用し、ヘテロ核化学シフトを、γ15N/γ1H = 0.101329118およびγ13C/γ1H = 0.251449530と推測して参照した。RoCBM21の化学シフトを、登録番号BMRB7083で生物学的磁気共鳴データバンク(Biological Magnetic Resonance Data Bank (BMRB))に登録した。
【0050】
(B) 構造計算および構造解析
部分的割り当てピークリストおよび化学シフトリストは、プログラムSPARKY (Goddard, T. D., and Kneller, D. G. (1999))を使用する手動割り当てより取得した。ピーク強度は、ローレンツ線形を推定するデフォルトピークフィッティングプロトコルを使用し生成した。RoCBM21に対する構造計算を、ねじれ角力学(TAD)および標準模擬アニーリングプロトコル(Nilges, M. et al., (1988) FEBS Lett 239, 129-136)とともに、CNS 1.1 (Brunger, A. T. et al., (1998) Acta Cryst. D54, 905-921)およびARIA 2.0 (Nilges, M. et al., (1997) J. MoI. Biol. 269, 408-422)を使用して実行した。これらの計算後、OPLS力場(Linge, J. P. et al., (2003) Proteins 50, 496-506)を使用して明示的な水の微調整を行った。出願人が取得した200個の構造のうち、最低総エネルギーを有する15構造を、解析のために選択した。それらの質を、PROCHECK-nmr (Laskowski, R. A. et al., (1993) J. Appl. Cryst. 26, 283-291)で調査した。構造の集合体の原子座標を、登録番号2DJMでプロテインデータバンク(Protein Data Bank (PDB))に登録した。
【0051】
(C) 化学シフト摂動
RoCBM21のリガンド結合残基およびリガンド結合相互作用を調査するために、マルトトリオース、マルトヘプタオース、およびβシクロデキストリンを化学シフト摂動に適用する。マルトトリオースおよびマルトヘプタオースを、100-mMストックで調製する一方、安定性が低いため、βシクロデキストリンを20-mMで調製した。RoCBM21 (1 mM)を、個々のリガンドで滴定し、2D 15N HSQC実験を記録して相互作用をモニターした。加重平均1Hおよび15N化学シフト変化を、式Δδavg= [(Δδ1HN)2 + (0.17Δδ15N)2]1/2 ( SaRoh, T. et al., (2006) J Biol Chem 281, 10482-10488)を使用して計算した。
【0052】
(D) 構造比較
比較のためのSBD構造は、A. nigerグルコアミラーゼ(AnCBMlO) (Sorimachi, K. et al., (1996) J MoI Biol 259, 970-987)、サーモアクチノマイセス・ヴァルガリス(Thermoactinomyces vulgaris)R-47 α-アミラーゼ I (2VCBM34 I) (Abe, A. et al., (2004) J MoI Biol 335, 811-822)、バチルス・ハロデュランス(Bacillus halodurans )マルトヘキサオース形成アミラーゼ(BhCBM25およびBhCBMlβ) (Boraston, A. B. et al., (2006) J Biol Chem 281, 587-598)ならびにクレブシエラ・ニューモニア(Klebsiella pneumoniae)プルラナーゼ(KpCBMAV) (Mikami, B. et al., (2006) J MoI Biol 359, 690-707)からのCBM群である。構造を、ウェブサーバー"FAST" (Zhu, J., and Weng, Z. (2005) Proteins 58, 618-627)を使用して、重ね合わせた。
【0053】
(E) ドッキングシミュレーション
AutoDock3.05 (Morris, G. M. et al., (1998) J. Computational Chemistry 19, 1639-1662)を使用して、結合部位におけるデンプン分子の結合形式をシミュレートした。シクロマルトヘキサイコサオースの三次元構造を、PDB (コード: 1C58)からダウンロードした。炭水化物分子を、別のシミュレーションで異なる結合部位にドッキングさせた。0.375Å間隔の結合部位上の3D中心の親和性グリッド90 x 90 x 90、を、プログラムオートグリッド(autogrid、( Morris, G. M. et al., (1998) J. Computational Chemistry 19, 1639-1662))を使用して計算した。立体構造検索のために、ラマルク遺伝的アルゴリズム(Lamarckian genetic algorithm (LGA))を使用した。2つの結合部位のうち一つにおける各炭水化物に対して、1回の試行に150回の母集団サイズを有する100回試行を実行した。最初の位置および立体構造を、ランダムに選択した。移動ステップは2.0Åであり、回転ステップは50°であった。他のドッキングパラメーターは以下のとおりである:変異率= 0.02、交差率= 0.8、エリート(elitism) = 1、局地的調査率= 0.06、100万エネルギー計算を伴う。100回試行からの最終立体構造は、1.5Åの標準偏差(RMSD)許容範囲を使用してクラスター化した。
【0054】
(F) 結果
NMRスペクトルおよび分子構造
RoCBM21の15N HSQCにより、よく分散したパターンである典型的なβ-ストランドのピーク特性が示された(図8)。プロトン次元のスペクトル幅を16 ppmに設定し、ピークを適応させた。最も高磁場の化学シフトは、-1.181 ppmであり、179 Hδlに属し;W70のHε1は、11.88 ppmで最も低磁場の化学シフトという結果であった。RoCBM21における多数の芳香族残基により(18/106)、いくつかの化学シフトは、芳香環のπ-電子流の影響を受けた。芳香環に近い原子は、π-電子流のシールディング(環の上または下)またはデシールディング(環の面の中)効果のいずれかを体験してよい。複数の割り当て化学シフトは、化学シフト外れ値をチェックするためのBMRBにより現在使用されるソフトウェアによって、特異的、または疑わしいと報告されている(Moseley, H. N. et al., (2004) J Biomol NMR 28, 341-355)。これらの化学シフトを、BMRBアノテーターの要求に基づいて注意深く検証した。例えば、V39 Hβ (0.739)の化学シフトは、Y83およびW47の環により;N52 Hβ3 (0.775)はW47の環により;N97 Hβ3 (-0.09)はY102の環により;179 Hγl2 (-0.22)はY40の環により;ならびにY102 Hβ3 (0.482)はF82の環により影響を受け、結果的に、これらの化学シフトは、高磁場に移動する。HNCA, HN(CO)CA, CBCA(CO)NH, HNCACB, HNCO, およびHN(CA)COスペクトルにおいて、主鎖連続結合性(backbone sequential connectivity)は、プロリン残基およびグリシン18を除き、タンパク質配列全体を通して連続的に進行する。 Asp 17, Gly 18, およびSer19の間の結合性は、これら全ての主鎖結合実験において不在であり、そしてGly 18由来のアミド窒素の化学シフトは、明確に割り当てられることができなかった。HNCACBスペクトルにおける主鎖結合性を示す一連の例示的表示を、図8Bに示す。
【0055】
実験手順に記載したとおり2247個の制限に基づいて、構造を算出した:2071 NOE由来距離制限、102個の二面角制限、および74個の水素結合由来の距離制限。N-およびC-βシートのNOEを、図8Cに例示した。ARIA計算の最終反復において、総計200個の構造が生成された。総エネルギーが最低である15個の構造を、解析のために選択し、PDBに登録した。平均構造に対するRMSDが最低である構造を、代表的構造として選択した(図9A)。NMR統計を表2に概説する。平均構造に対するRMSDは、十分規定された領域において主鎖に対して0.48 ± 0.06Å、重原子に対して0.96 ± 0.11であり、全ての残基に対して主鎖に対して1.14 ± 0.31Å、重原子に対して1.43 ± 0.29であった。ラマチャンドランプロット(Ramachandran plot)において、95%の非グリシンおよび非プロリン残基が、最も好ましい、または付加的に許容される領域にあり、98.5%が、寛容に許容される領域にある。集合体におけるほとんどのN97残基、ならびに複数のN45およびN101残基が、許容されない領域に見られた。N97およびN101はループ8中に位置し、N45はループ4中にある。これらのループは、RoCBM21の最も柔軟性のある位置にある。
【0056】
【表3】

【0057】
RoCBM21ドメインは、106残基を含み、その配列は、他のSBDファミリーに対してほとんど類似性を有さない(<25%)。しかしながら、RoCBM21の溶液構造は、伝統的なβ-サンドウィッチ折りたたみ、およびほとんどのCBMに特徴的である免疫グロブリン様構造を示すBoraston, A. B. et al., (2004) Biochem J 382, 769-781)。β-サンドウィッチは対称性であり、8つの反平行β-ストランド:β1 (V9-Y16), β2 (F21-V27), β3 (V34-D42), β4 (I53-G60), β5 (Y67-A74), β6 (I79-V88), β7 (T92-N95), およびβ8 (Y102-V104)からなる。これらのβ-ストランドを、β1β2β5からなるβ-シート(N-シート)を含むN末端ストランド(図9B)、ならびにβ4により連結されるβ3β6β7/8からなるβ-シート(C-シート)を含むC末端ストランド(図9B)に分類することができる。N-シートの中央に位置するストランドβ2は、β1およびβ5と対になる反平行であり、一方C-シートの中央に位置するβ6は、β3, β7, およびβ8と対になる反平行である。β3およびβ5と部分的に対になる反平行であるストランドβ4は、両方のβ-シートに交差している。RoCBM21の疎水性コアは、N-シートのV9, L11, I14, Y16, F21, I25, V27, W70, およびF72、ならびにC-シートのV36, V38, Y40, F82, I84, Y86, V88, Y93, Y102, およびV104からなる。β1において、残基L11-Y14はβ2に水素結合しておらず、それらは膨らみ部分を形成する(図8C)。β7およびβ8は両方とも、β6に水素結合しており、それらはループ8により橋渡しされている(図8D)。RoCBM21構造の溶媒接触可能表面を、図9DおよびEに示す。DelPhi静電ポテンシャル(Rocchia, W. et al., (2001) J. Phys. Chem. B 105, 6507-6514)を、その表面にマッピングした。興味深いことに、N-およびC-シートの表面は、非常に異なる静電ポテンシャル分散を示し、N-シートの表面はより負に荷電した残基を含み、一方C-シートの表面はより正に荷電した残基を含む。
【0058】
SBDに対する構造比較
RoCBM21構造を、異なるSBDファミリーの構造と比較した(表3)。図10A-Dは、一次、二次、および三次構造における類似性を示す。SBDの異なるファミリーにおいて同等なβ-ストランドおよびループを、RoCBM21構造の構造に従って、ラベルし、着色した。2つの型のトポロジーを、構造比較より区別することができる。AnCBM20, BhCBM15, BhCBM26, およびRoCBM41の構造は、I型トポロジーを有し、一方RoCBM21および7VCBM34の構造は、II型トポロジーを有する。2つのトポロジーが重なるためにはストランドが移動しなければならない点を除き、これらの2つのトポロジー型は類似している。例えば、AnCBM20のβ1は、RoCBM21のβ2に同等であり;それに続くストランド同等物を一つずつ合わせることができ、RoCBM21の最後のストランド(β8)は、AnCBM20のストランド7に重ね合わせることができる。
【0059】
特に、RoCBM21の最後のストランドは、RoCBM21においてβ1の役割を果たし、N末端β-シートの中央ストランド(β2またはその同等物)と水素結合を形成する。RoCBM21における全てのβ-ストランドは反平行であるが、最初および最後のストランドはAnCBM20において平行である。つまり、RoCBM21の全体のトポロジー(II型トポロジー)は、AnCBM20の全体のトポロジー(I型トポロジー)に類似しているが、同等なストランドの順序は1つ移動している。最もN末端のSBDはII型トポロジーを有する一方、(KpCBM41を除き)C末端のSBDはI型トポロジーを有するようにみえる(表3) (Mikami, B. et al., (2006) J MoI Biol 359, 690-707)。
【表4】

【0060】
リガンド結合および化学シフト摂動
本研究で試験された3つの線状結合炭水化物(マルトトリオース、マルトヘプタオース、およびβシクロデキストリン)により、化学シフト摂動の類似したパターンが示され、同一のアミノ酸残基は滴定の影響を受けたが、変化の強度は炭水化物の間で異なった。βシクロデキストリンとの滴定前後におけるRoCBM21の15N HSQCスペクトルは重複し(図11A)、化学シフト変化および影響を受ける残基の概要を、図11Bにプロットした。有意な化学シフト摂動(>0.1 ppmおよび0.06-0.1 ppm)を提示するRoCBM21残基を、三次元構造上にマッピングした(図11C)。これらの摂動により、リガンド結合に影響を受ける残基を、3つの方に分類することができる。第一に、残基A41, W47, N52, Y83, K85, K91, D95, N96, N97, およびS99は、前に報告したSBDの相当する部位Iに位置する。同様に、残基N29, I30, A31, Y32, S33, K34, S57, F58, 162, N66, Y67, E68, およびY69は、相当する部位IIを形成する。有意な化学シフト摂動および2つの炭水化物結合部位を有する残基を、RoCBM21の構造上にマッピングした(図11C)。興味深いことに、疎水性コア中に位置する複数の残基もまた、リガンド結合部位に影響を受け、それらはL11, V36, V38, W70, およびI79である。ループ1, 4, および8は、>1.5Åの平均RMSD値を有する柔軟性のある領域である。高い柔軟性のほかに、ループ4および8は、部位Iを包含し、他の特徴-それらはアスパラギン残基に富む(N46, N48, N49, N50, およびN52はループ4にあり、N96, N97, N98, およびN101はループ8にある)-を共有する。炭水化物リガンドとの滴定により、アスパラギンN50, N52, N96, N97, およびN98において大きな化学シフト摂動がもたらされる。これらのポリ-Nループは、CBM-デンプン相互作用の分子決定因子として作用してよい。これらのポリ-Nループの存在は、いくつかのメンバーのCBM21の明確な特徴である(Machovic, M. et al., (2005) Febs J 272, 5497-5513)。2分子のβシクロデキストリンが、RoCBM21の部位IおよびIIにそれぞれドッキングする。部位Iにおいて、ドッキングしたβシクロデキストリンとRoCBM21のアスパラギンに富むループにおけるグルコース残基の水酸基O2およびO3の間にも水素結合が観察される。部位IIにおいて、側鎖N29およびY32がβシクロデキストリンと水素結合しており、これは大きな化学シフト摂動と一致する。
【0061】
SBD研究で利用されているほとんどのリガンドは相対的に小さいため(グルコースの数= 7)、デンプンの完全な二重らせん構造を含まなかった。より大きいアミロース分子の結合を模倣するために、シクロマルトヘキサイコサオース(Gessler, K. et al., (1999) Proc Natl Acad Sci USA 96, 4246-4251) (v-アミロース, PDBコード: 1C58)を、RoCBM21の部位IおよびIIにそれぞれドッキングさせた。ドッキング複合体の部位Iにおいて、ループ4はG1-G13とG14-G26との間の二重らせん溝においてグルコースと相互作用し、ループ8はG2-G4とG8-G10との間の二重らせん溝においてグルコースと相互作用する。部位IIにおいて、ループ3はG1-G13とG14-G26との間の二重らせん溝に挿入され、N29およびY32がグルコース残基と相互作用する。ループ5は溝においてよりも端でv-アミロース構造に結合する。
【0062】
実施例4
(A) 材料と方法
結晶化に使用されるRoGACBM21の濃度は、およそ10 mg/mLであった。RoGACBM21-βシクロデキストリン(βCD)複合体が、モル比1:2で成長した。一連の結晶化を、水滴ぶら下がり気化分散法(hanging-drop vapor-diffusion method)により実行した。1 μlのタンパク質溶液を、1 μlの貯蔵溶液と混合し、リンブロプレート(Linbro plate)中で500 μlの貯蔵溶液と平衡化した。最初の結晶化条件を、Hampton Research Crystal Screenキットを使用して取得され、その後さらに最適化されて、回折品質結晶を取得した。RoGACBM21-βCD複合体のX線回折データを、台湾のNSRRCで、波長0.9762Åを使用するBL13C1上で収集した。結晶を、ナイロンループを中にマウントし、100Kの液体窒素流の中で急速凍結した。プログラムHKL2000を使用して、データを解析し、調整した。
【0063】
(B) 結果
RoGACBM21-βCD複合体結晶(図12)を、0.1 M Naカコジル酸バッファー(pH 6.5)中の18% PEG 8000および0.2 M酢酸亜鉛を使用して293 Kで4日間、0.2x0.2 x 0.5 mmの最大寸法に成長させた。RoGACBM21-βCD複合体結晶は、1.8Åで回折し、ユニットセルパラメーターがa = 42.58Å, b = 42.71Å, c = 70.06Å, α =β = γ = 90°およびRmergeが3.4%である、斜方晶P212121空間群に属する。VM (Matthews 1968)は2.73Å3Da-1と算出され、結晶中に1個の非対称単位を含む55%の溶媒容量に相当した。RoGACBM21-βCD複合体(図13)において、1個のRoGACBM21が1個のβシクロデキストリン分子に結合する。2つの結合部位、部位IおよびIIが、RoGACBM21-βCD複合体において観察された。部位Iは、キーとなるY32残基を含むループβ2-β3の周辺に位置し、部位IIは、別の多糖認識残基W47を有するループβ3-β4の周辺に位置する。
【0064】
本発明は、当業者が作成し使用することができる程度に詳細に記載および例示されている一方、種々の変形、改変、および改善は、本発明の精神および範囲を逸脱することなく明白であってよい。
【0065】
本明細書に固有の物と同様に、目的を実行し、言及される目的および利点を取得するために、本発明がよく調整されることを当業者は容易に理解する。胚、動物、植物、微生物、ならびにそれらを生成するためのプロセスおよび方法は、好ましい実施態様の代表であり、例示的なものであり、本発明の範囲を限定するものとは意図されていない。本明細書における改変および他の使用が当業者により実施されるであろう。これらの改変は本明細書の精神に含有され、特許請求の範囲により規定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1から3すなわち、
配列番号1
【表1】

配列番号2
【表2】

または配列番号3
【表3】

に示されるアミノ酸配列、ならびにデンプン結合能を有するその対立遺伝子変異体およびその誘導体を有しており、配列番号1、配列番号2、または配列番号3が本請求項の一部であり、炭水化物結合に関するアミノ酸配列の芳香族アミノ酸残基32、47、58、67、83、93および94の上に活性部位を有する、デンプン結合ドメイン。
【請求項2】
前記アミノ酸残基がチロシンまたは/およびトリプトファンである、請求項1に記載のデンプン結合ドメイン。
【請求項3】
前記活性部位が残基32のチロシン、残基47のトリプトファン、残基58のチロシン、残基83のチロシン、残基93のチロシン、および残基94のチロシンである、請求項1に記載のデンプン結合ドメイン。
【請求項4】
(SBD)m-Ln-X-L'p-(SBD)q
[前記式中、SBDはデンプン結合ドメインを表し、Lはリンカーを表し、L'はリンカーを表し、Xは標的タンパク質またはポリペプチドを表し、mは0,1,または2であり、nは0または1であり、pは0または1であり、qは0,1,または2を表し、ここでmとqは同時に0ではない]
を有する組換えタンパク質。
【請求項5】
SBDが請求項1に記載されている、請求項4に記載のタンパク質。
【請求項6】
リンカーがRoLK:リゾパス・オリザエGAのリンカー、PH: 6個のヒスチジン、PK: 8個のリジン、PPT: スレオニンとプロリン-スレオリンの4回リピート[T(PT)4]、あるいは58L: pET39b(+)における SpeIおよびNcoIの切断部位の間の領域である、請求項4に記載のタンパク質。
【請求項7】
(SBD)m-X-(SBD)q
[前記式中、SBDはデンプン結合ドメインを表し、Xは炭水化物を表し、mは0,1,または2であり、qは0,1,または2であり、SBDは別個の単位を使用して同時に炭水化物に結合する]
を含む複合体。
【請求項8】
前記炭水化物が、α-1,4-グルコース連鎖またはα-1,6-グルコース連鎖を構造中に有する、請求項7に記載の複合体。
【請求項9】
前記炭水化物が、環状炭水化物である、請求項7に記載の複合体。
【請求項10】
前記デンプン結合ドメインがリガンド結合部位またはコンフォメーションにより前記炭水化物に結合する、請求項7に記載の複合体。
【請求項11】
前記デンプン結合ドメインが、炭水化物のサイズに依存して複数の単位を有する、請求項7に記載の複合体。
【請求項12】
(a) 親和性マトリックスに直接、組換えタンパク質を含む生物学的液体を適用する工程、
(b) 温度変化、pH、イオン強度、糖濃度、または酵素成分により組換えタンパク質を溶出する工程
を含み、親和性マトリックスが、式:
(X-X)n
[前記式中、主鎖、側鎖、または修飾残基を含むそのいずれの構造においても、Xはグルコース分子を意味し、グルコースとグルコースとの間の連鎖はα-1,4-連鎖またはα-1,6-連鎖であり、nは1以上である]
を包含する、請求項1に記載のデンプン結合ドメインを含む組換えタンパク質を分離する方法。
【請求項13】
前記親和性マトリックスがデンプンである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記温度変化により温度を37°Cまたはそれより高く上昇させる、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
工程(a)を0°Cから25°Cの下で実行する、請求項12に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図9】
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【図12】
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【図13】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2010−508246(P2010−508246A)
【公表日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−533642(P2009−533642)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【国際出願番号】PCT/CN2006/002915
【国際公開番号】WO2008/052387
【国際公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(509122212)シンプソン・バイオテック・カンパニー・リミテッド (3)
【Fターム(参考)】