説明

データキャリアシステムの質問応答器

【課題】データキャリアシステムにおいて、質問機能および応答機能の両方を有するパッケージ機器を提供する。
【解決手段】データキャリアシステムの質問応答器は、高周波通信による質問機能と応答機能を有するデータキャリアシステムにおいて、制御回路1を有する1パッケージのなかに、質問機能側の、キャリア波発振回路11と、制御回路1からの質問信号をキャリア発振回路11からのキャリア波で変調する変調回路13と、変調回路13からの変調波を送信する送信回路15、および応答機能側の、キャリア波検出回路23と、応答信号の変調信号をあたえる変調回路21、制御回路1に繋がる応答信号の記憶回路25、および質問機能側および応答機能側としてのいずれにも動作する、制御回路1に繋がり復調回路を含む受信回路5と、送信回路15並びに受信回路5に繋がるアンテナ3を有することを特徴とする質問応答器である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信で結ばれた質問機能と応答機能からなるデータキャリアシステムにおける操作機器であって、質問機能と応答機能とを1パッケージに合わせ持った質問応答器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
データキャリアシステムでは、例えば特定な部屋への入退室管理、スキー場のリフト券、鉄道の乗車券、駐車場の入出車管理、高速道路の通行券、電子マネー、商品の万引き防止などに質問器(リーダライタ)と応答器(データキャリア)が使用されている。質問器と応答器の間は無線通信で接続されている。質問器は、ホストコンピュータと有線または無線で接続され、その指示にもとづいて応答器のデータを読み取り、応答器に対してデータを書込む。応答器は、カード形、コイン形、あるいは箱形の形状をしており、人が携帯したり、商品や自動車等に取付けられて移動する。
【0003】
特許文献1の図2にはデータキャリアシステムの基本構成が示されている。質問器1のアンテナコイル10と応答器2のコイルとの結合、すなわち質問器1のコイルの磁気フィールド内に応答器2のコイルが置かれることにより通信を行うものである。従来、質問器は主に固定設置型であったが、特許文献1には、質問器1がバッテリにより駆動するハンディターミナル15とアンテナコイル10からなる携帯式が開示されている(図1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2003−6585号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかるデータキャリアシステムにおいて、質問器に質問機能のみならず、応答機能(パッシブ機器としての機能)も併せ持てば、実用上、非常に便利である。しかし、そのような機器は存在しなかったし、また文献上の開示もなされていない。
【0006】
そこで本発明は、データキャリアシステムで1パッケージのなかに、質問機能および応答機能の両方を有するパッケージ機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するためになされた本発明の請求項1に係る発明は、高周波通信による質問機能と応答機能を有するデータキャリアシステムにおいて、制御回路を有する1パッケージのなかに、質問機能側の、キャリア波発振回路と、制御回路からの質問信号を該キャリア発振回路からのキャリア波で変調する変調回路と、該変調回路からの変調波を送信する送信回路、および応答機能側の、キャリア波検出回路と、応答信号の変調信号をあたえる変調回路、前記制御回路に繋がる応答信号の記憶回路、および質問機能側および応答機能側としてのいずれにも動作する、制御回路に繋がり復調回路を含む受信回路と、該送信回路並びに該受信回路に繋がるアンテナを有することを特徴とする質問応答器である。
【0008】
同じく本発明の請求項2に係る発明は、前記制御回路に有線あるいは無線で繋がる上位制御回路から質問機能側と応答機能側とに切換えが可能であることを特徴とする請求項1に記載の質問応答器である。
【0009】
請求項3に係る発明は、上位制御回路から質問機能側と応答機能側とに切換えが可能な請求項2に記載の質問応答器において、常時は応答機能側に切換えられており、上位コントローラから質問機能に対応する制御命令を受けたときに、質問機能側に切換えられることを特徴とする質問応答器である。
【0010】
請求項4に係る発明は、質問機能側と応答機能側とに切換のスイッチを備えたことを特徴とする請求項1に記載の質問応答器である。
【0011】
請求項5に係る発明は、前記応答信号の記憶回路が書き込み禁止機能を持つことを特徴とする請求項1に記載の質問応答器である。
【発明の効果】
【0012】
本発明のデータキャリアシステムにおける質問応答器は、1パッケージのなかに、質問機能および応答機能の両方を備えているから、データキャリアシステムの導入コストを抑え、使い勝手が良く、操作性、作業効率を向上させることができる。従来、付加価値機能を有する応答器は存在するがコスト面や性能等で実用化は難しく、1パッケージに質問機能と応答機能を持たせ、さらに応答機能側に付加価値機能を装備することでコスト、性能の問題を排除し安定なシステムの提供が可能である。
【発明を実施するための好ましい形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための好ましい形態の一例を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明を適用するデータキャリアシステムにおける質問応答器の一実施例を示すブロック回路図である。図中の1は全回路の動作を制御するコントローラ(制御回路)で、外部の上位コントローラ、例えばパーソナルコンピュータ、PDA(Personal Digital Assistant:携帯情報端末)と有線または無線で繋がりデータの交換、指令の授受をできる。11は13.56 MHz帯の高周波のキャリア波を発振する発振器、13はコントローラ1からの質問信号をそのキャリア波に乗せる質問信号変調回路、15は送信回路でアンテナ3に繋がる。25は電気的に読み書きが可能な読取専用メモリ(EEPROM:Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)で応答信号を記憶している。21はその応答信号をスイッチング回路を通じて負荷変調する応答信号変調回路、23は前記高周波のキャリア波を検出し、コントローラ1に検出信号を送るキャリア波検出回路である。5は共振回路および復調回路を含む受信回路である。7はコントローラ1からの指令により働く切換スイッチである。
【0015】
図1の質問応答器の一つは、外部の上位コントローラから質問指令信号が入ると、コントローラ1から制御により切換スイッチ7が質問機能側に切換わり図2の回路状態になる。図2に示すとおり、発振器11で発振したキャリア波は、変調回路13で上位コントローラからコントローラ1を経て入った質問信号の変調を受け、送信回路15からアンテナ3を経て発振し、質問器として動作する。応答器からの応答信号は受信回路5で受信されコントローラ1に入力される。
【0016】
受信された応答信号はコントローラ1により上位コントローラに転送される。
【0017】
一方、図1の別の質問応答器の一つは、質問器からのキャリア信号がアンテナ3を経てキャリア波検出回路23にて検出されると、スイッチ7はオン状態に切替わり図3の回路状態となり、受信回路5にて質問信号が受信されコントローラ1に入力される。コントローラ1は質問器の質問信号に従った、応答信号をメモリ25から生成してスイッチ7を経由して変調回路21に入力させる。
【0018】
図4の波形図に示すように、変調回路21では、(A)のキャリア波に対して、内蔵するスイッチング回路により(B)の応答信号に対応してスイッチングすると、(C)の点線で示すスイッチ動作による負荷変動が与えられ、応答器として動作する。
【0019】
本発明のデータキャリアシステムにおける質問応答器には、付加価値的な機能、例えば時計やセンサーなどを搭載することができる。また、上位コントローラから1のメモリにアクセスし、システムとしてのデータを共有させることもできる。
【応用例】
【0020】
以下、本発明を適用するデータキャリアシステムにおける質問応答器の応用例を説明する。
【0021】
質問応答器はカード型にパッケージされており、工場で働く人がこれを携帯する。携帯者は工場に入門する際、電気的に施錠された門に取り付けられている質問器(リーダーライター)に、この質問応答器をかざすことで、応答がなされて入門権限があるものと判断され、電磁的施錠が外れて入門できるようになり、入門記録が質問器を通じて上位コントローラ(管理用ホストコンピュータ)に記録される。工場内ではベルトコンベアにのって搬送されてくる仕掛り製品に応答器(データキャリア)が取り付けられており、質問応答器をかざすことで応答器からのデータが読み取られ、質問応答器を経由して上位コントローラに送られる。すなわちこの例では、質問応答器は入門時に応答機能を動作させ、工場内の工程管理では質問機能を動作させている。
【0022】
商品の配送や流通で運転手または/および管理者、あるいは事務機器の保守、修理、管理のサービスマンが質問応答器を携帯する場合も同じような応用ができる。さらに配送される商品等に質問応答器を取り付けておく応用も可能である。
【0023】
また、上位コントローラとデータの整合性を取りデータキャリアの特徴であるアンチコリジョン(衝突回避)方式により管理用ホストコンピュータに一括でデータ転送することも可能である。
【0024】
例えばサービスマンがコピー機の保守・点検で客先回りをした履歴などを客先の機器に貼り付けた応答器に点検履歴を書き残しながら、上位のコントローラから質問応答器のメモリに同一データを書き込む。同時に、顧客とのデータの整合性を取りながら複数人いるサービスマン(それぞれが本発明の質問応答器を使用している)が作業した客先の履歴データをアンチコリジョンを使用して一気にメインコンピュータ側に転送することができる。質問応答器は外部の上位コントローラ(例えば携帯情報端末)との組み合わせで動作させるが、携帯情報端末側にもつメモリスティックなどにデータを書き込みメインコンピュータにデータを転送することもある。しかし、サービスマンが10人いれば10回この作業をしなくてはならない。メインコンピュータ側にデータキャリアのインターフェイスを持っていれば、質問応答器を応答器機能に切り替え、一気に10人分のデータをメインコンピュータに転送することが可能となる。
【0025】
この例でも分るように、データキャリアという同一のインターフェイスでシステムが構築できるため様々な機器を付け替える(例えばメモリスティックの付け替え)と言った手間を必要としなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明を適用するデータキャリアシステムにおける質問応答器の一実施例を示すブロック回路図である。
【0027】
【図2】本発明を適用する質問応答器が質問機能側に切換わっているときの回路状態の一実施例を示すブロック回路図である。
【0028】
【図3】本発明を適用する質問応答器が応答機能側に切換わっているときの回路状態の一実施例を示すブロック回路図である。
【0029】
【図4】質問応答器が応答機能側で動作しているときの変調波生成の波形図である。
【符号の説明】
【0030】
1はコントローラ、3はアンテナ、5は受信回路、7は切換スイッチ、11は発振器、13は質問信号変調回路、15は送信回路、21は応答信号変調回路、23は検出回路、25は読取専用メモリである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波通信による質問機能と応答機能を有するデータキャリアシステムにおいて、制御回路を有する1パッケージのなかに、
質問機能側の、キャリア波発振回路と、制御回路からの質問信号を該キャリア発振回路からのキャリア波で変調する変調回路と、該変調回路からの変調波を送信する送信回路、および
応答機能側の、キャリア波検出回路と、応答信号の変調信号をあたえる変調回路、前記制御回路に繋がる応答信号の記憶回路、および
質問機能側および応答機能側としてのいずれにも動作する、制御回路に繋がり復調回路を含む受信回路と、該送信回路並びに該受信回路に繋がるアンテナを有することを特徴とする質問応答器。
【請求項2】
前記制御回路に有線あるいは無線で繋がる上位制御回路から質問機能側と応答機能側とに切換えが可能であることを特徴とする請求項1に記載の質問応答器。
【請求項3】
上位制御回路から質問機能側と応答機能側とに切換えが可能な請求項2に記載の質問応答器において、常時は応答機能側に切換えられており、上位コントローラから質問機能に対応する制御命令を受けたときに、質問機能側に切換えられることを特徴とする質問応答器。
【請求項4】
質問機能側と応答機能側とに切換のスイッチを備えたことを特徴とする請求項1に記載の質問応答器。
【請求項5】
前記応答信号の記憶回路が書き込み禁止機能を持つことを特徴とする請求項1に記載の質問応答器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−34543(P2007−34543A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−215218(P2005−215218)
【出願日】平成17年7月26日(2005.7.26)
【出願人】(390035884)株式会社ウェルキャット (18)
【Fターム(参考)】