説明

データ・キャリアとその製造方法

本発明は、有価ドキュメント、証券のようなデータ・キャリアに関する。データ・キャリアは基板(20)と、この基板上にコーティング(12)を有し、このコーティング層にレーザ照射によりマーキングが、パターン、文字、番号、イメージの形態で導入される。本発明によれば、コーティング(12)は、レーザ照射吸収層(22)と、その上に配置され、部分的にレーザ光を透過する押圧層(24)とを有する。さらに、印刷された基板は、部分的にレーザ光を透過する押圧層(24)の形成の間あるいは後、押圧される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有価ドキュメント、証券のようなデータ・キャリアに関する。データ・キャリアは基板を有し、この基板上にコーティングが施され、このコーティング層にレーザ照射によりマーキングが、パターン、文字、番号、イメージの形態で導入される。本発明は、さらにデータ・キャリアの製造方法と装置に関する。
【背景技術】
【0002】
データ・キャリアの一例である銀行券、株券、ボンド(債権等)、証明書、バウチャー、小切手、入場券等の有価ドキュメントは、通常連続番号のような固有のマークを有する。セキュリティを増すために、このマークは有価ドキュメントに複数回付される。例えば、銀行券は二重に番号が付され、その結果銀行券のそれぞれの半分は唯一識別可能である。この場合通常2つの番号は同一である。
【0003】
【特許文献1】ドイツ特許第3048733号明細書
【0004】
識別カードは、固有のマーキングを具備しているが、これはレーザ・エングレービング(laser engraving:レーザによる刻印)の手段により形成される。レーザ・エングレービングによりマーキングをする際に、レーザ・ビームを適宜ガイドすることによりカード材料の光学特性は、所望のマーキングの形態で不可逆的(取消不能)に変化する。例えば、特許文献1は、一方の表面に情報を取り入れ、視覚的に知覚可能な個人データにより少なくとも一部は形成されない積層された様々な着色層領域を示す識別(ID)カードを開示する。
【0005】
中央銀行と銀行券のデザイナーは、セキュリティ特徴のために、銀行券により多くのスペースを必要とする。これは、レーザ刻印を介した個別化と同様に、ナンバリングは、銀行券に利用可能なスペースを他のセキュリティ特徴と奪い合う。この問題は、デザインを変更することのない既に市中に出回っている銀行券のセキュリティを強化する際に、より頻繁に発生する。
【0006】
従来のナンバリングは、白色あるいは少なくとも明るい背景を必要とし、さらに凹刻印刷の実行を必要とする。その理由は、そうしないとインクの残留物がナンバリングの部分に残り、その機能を損なうからである。かくして通常の位置合わせのずれにより、比較的大きなスペースをナンバリング用にとっておかなければならない。
【0007】
レーザによるナンバリングの場合には、デザインのある広さのスペースが、他のプリンティング要素あるいはセキュリティ手段が邪魔されない限り、ナンバリング用に特別に用意される。その理由は、レーザ・マーキングで積層した複数の層においては、その上に重ねられる非吸収性のオーバープリントが、吸収性のインク層と共に除去されてしまうからである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記の種類のデータ・キャリアに、高い偽造対策を施した固有のマーキングを容易に具備させることである。特にこのマーキングは、データ・キャリア上でスペースをあまり必要とすることなく、既存のデザインあるいはプリントイメージに容易に組み込むことができなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的は、特許請求の範囲の特徴を有するデータ・キャリアとその製造方法により解決される。本発明のさらなる変形例は、従属クレームに記載されている。
【0010】
本発明によると、本発明のパターン、文字、番号、イメージの形態で視覚的に知覚可能なマーキングを有するデータ・キャリアの製造方法は、
(a) 所定のレーザ光スペクトラムを選択する、
(b) レーザ光吸収層を前記データ・キャリアの基板に形成する、
(c) 前記レーザ光吸収層の上に前記レーザ光を少なくとも部分的に透過する部分的透過層をインプリント(印刷)する、
(d) 前記部分的透過層を形成する間あるいは後で、基板を押圧する、
(e) 前記所定のレーザ波長スペクトラムのレーザ光で、形成されたコーティング層をインピンジする
ステップを有し、
前記少なくともレーザ光吸収層に視覚的に知覚可能なマークを生成する。
【0011】
具体的な説明とは離れて、現在発明者が理解しているところによれば、基板を押圧する際の高圧に起因して、少なくとも部分的透過プリント・インクが基板と良好に結合されるため、その後のステップ(e)のマーキングにおいて、吸収層を部分的透過プリント層を破損することなく、取り除くことができる。
【0012】
かくして固有のマーキングは、通常且つ便宜上データ・キャリアを製造するのに必要な様々なプリント・プロセス終了時にのみ導入することができる。同時に、マーキングの上に配置される少なくとも部分的透過層により、見る人にとってマーキングは製造ラインの開始時の作業ステップで既に導入していたかのような外観を呈する。これにより、光学的に訴える全体的な印象を有するデザインが可能となり、高い偽造対策となる。この理由は、このような固有のマーキングは、その後に形成されるプリント層を通して再度導入することができないからである。
【0013】
本発明の変形例によれば、前記ステップ(c)の部分的透過層を凹刻印刷手段により形成し、その間に前記基板を押圧する。本発明の別の変形例によれば、前記レーザ光吸収層と部分的透過層の形成後、基板をブラインド・エンボスする。本発明のさらに別の変形例によれば、前記レーザ光吸収層と部分的透過層の形成後、基板をカレンダ処理する。
【0014】
本発明の全ての変形例によれば、前記ステップ(c)の部分的透過層を、組みひも飾り模様、マイクロテキスト、グラフィック要素の微細パターンでインプリントする。
【0015】
前記ステップ(b)のレーザ光吸収層は、例えば銀色インクや金色インクのような金属効果インクを用いて、スクリーン・プリンティングの手段によりインプリントされる。別の方法として、前記ステップ(b)において、コーティング済みホイルまたは未コーティング・ホイルを、レーザ光吸収層として形成する。例えば、コーティング済みホイルとして、選択したレーザ波長においても非吸収性であり、蒸着したアルミニウム層にような薄い金属層を有する着色ホイルを用いることもできる。本発明の変形例よれば、前記ステップ(b)のレーザ光吸収層は、連続領域として形成される。
【0016】
前記(b)ステップのレーザ光吸収層は、異なるプリンティング方法あるいはプリンティング・パラメータで小領域に形成し、前記小領域は、前記ステップ(e)で異なる影響を受ける。例えば、吸収層の第1の小領域は凹刻印刷でインプリントされ、第2小領域はナイロプリント方法でインプリントされる。前記ステップ(e)において、第1小領域が押圧により維持されるている間、第2小領域は下層の吸収層と共に除去される。
【0017】
述べたように、前記(e)のレーザ・パラメータは、前記部分的透過層がレーザ照射後完全に維持されるよう、選択される。しかし、前記レーザ・パラメータを、前記ステップ(e)の間変化させ、前記部分的透過層を部分的に残したり部分的に除去することもできる。
【0018】
さらに、エンボス、特にインクの制御なしで得られたエンボスは、前記ステップ(e)においてレーザ・パラメータの適切な選択を介して得ることができ、その結果集合した要素のセキュリティが増す。別の方法として、前記レーザ・パラメータを、前記ステップ(e)の間変化させ、コーティングのエンボスを部分的に残したり部分的に除去することもできる。
【0019】
前記ステップ(e)のレーザ光による照射は、基板の前面から、すなわち前記レーザ光吸収層と前記部分的透過層が形成された基板の側から行われる。しかし、レーザ光による照射を前記基板の裏面から行うこともできる。この場合、基板がレーザ波長においてできるだけ低い吸収を示せば効果があると言える。
【0020】
前記レーザ光吸収層と前記部分的透過層は、完全に重なるか部分的に重なるよう形成される。さらに、保護層を、前記レーザ光による照射の前と/または後に形成してもよい。
【0021】
前記ステップ(e)において、レーザ光スペクトラムの選択は、適切なレーザ波長の選択により通常行われる。前記波長範囲が0.8μm−3μmの間の赤外線レーザ、Nd:YAGレーザが、ステップ(e)のレーザ・ソースとして使用される。前記ステップ(e)のインピンジにおいて、前記レーザ・ビームは、前記基板に、速度が1m/s以上、好ましくは4m/s以上、より好ましくは10m/s以上であるよう、ガイドされ、セキュリティ・プリントの高速処理に対応する。
【0022】
本発明はまた、上記した種類のデータ・キャリアを含む。このデータ・キャリアにおいては、コーティング層は、レーザ光吸収層とプリント層とを有し、プリント層は、レーザ光吸収層の上に配置され、レーザ光に対し少なくとも部分的に透過性を有し、プリントされた基板は、部分的透過層をインプリンティングする間または後に、押圧されるて形成される。
【0023】
本発明の好ましい実施例によれば、前記部分的透過層は、凹刻印刷手段により形成される。本発明の別の実施例によれば、前記部分的透過層は、インク混合物を有し、前記インク混合物は、レーザ光吸収性混合成分とレーザ光透過混合成分とを有する。
【0024】
後述するようにレーザ光の作用により、吸収性混合成分は、例えば漂白され、蒸発し、反射特性が変化し、化学反応により他の光学特性を有する材料に変化する。しかし、レーザ照射の作用により、吸収性混合成分は、裸眼に知覚できる変化を受けるないようにすることも可能である。このインク混合物は、レーザ光に透明な混合成分として、光学的に可変の色素、特に光学的な可変の液晶色素、又は透明な凹刻インク(intaglio ink)と、吸収性混合成分として、光学的に可変な干渉層色素を含む。光学特性が不可逆的に変化可能な他のインク成分(例えば凹刻インク、金属効果インク、金属色素、発光インク、発光色素、光沢のある色素、熱クロム・インク)を吸収性混合成分として使用してもよい。
【0025】
ステップ(e)のマーキングにおいて、吸収性混合成分の光学特性を変化させずに、インク混合物が、吸収性混合成分と共働作用し、その光学特性が間接的に不可逆的に変化する、すなわち吸収性混合成分へのレーザ光の吸収により、特に局部温度上昇がコーティング層内で引き起こされるようなインク成分を含むことも可能である。
【0026】
特に、それ自身が非吸収性のインク成分(例えばある種の凹刻インク、発光インク、発光色素、光沢色素、熱クロム・インク)をコーティング・インク成分として使用してもよい。吸収性混合成分として、インク混合物は、例えば、すす、グラファイト、TiO、赤外線吸収材を含む。
【0027】
好ましくは、前記部分的透過層は、組みひも飾り模様、マイクロテキスト、グラフィック要素の微細パターンでインプリントされている。
【0028】
一方、前記レーザ光吸収層は、連続領域として形成され、特に、プリント層例えばスクリーン・プリント層あるいはコーティング済みホイルまたは未コーティング・ホイルで形成される。本発明のさらなる変形例においては、前記部分的透過層は、インク混合物を有し、前記インク混合物は、レーザ光吸収性混合成分とレーザ光透過混合成分とを有する。
【0029】
本発明の実施例によれば、前記コーティング層は、光学的に変化する特性を示し、レーザ・インピンジの前あるいは後に形成される1つあるいは複数の保護層を有する。本発明の全ての実施例において、前記レーザ光吸収層と前記部分的透過層は、完全に重なるか部分的に重なる。
【0030】
前記レーザ光吸収層の下の保護層は、レーザ光に少なくとも部分的透過性を有し、前記ステップ(e)で照射された層をさらに有する。前記部分的透過層は、マーキングの領域に視覚的に知覚可能な特徴を有し、前記特徴は、紫外線照度のようなある条件下で活性化されるか機械で読み取り可能な特徴である。
【0031】
前記データ・キャリアの基板は、コットン・ペーパあるいはPETあるいはPPホイルのようなプラスティック・ホイルである。前記データ・キャリアは、セキュリティ要素、銀行券、有価ドキュメント、パスポート、識別(ID)カード、証書あるいは他の製品保護手段である。
【0032】
本発明はまた、上記の方法を実行するレーザ・システムを有する印刷機械を有し、前記レーザ・システムは、印刷機械のインプレッション・シリンダ上方に配置され、レーザ照射で前記インプレッション・シリンダ上でマークすべきデータ・キャリアにインピンジする。好ましくは、前記レーザ・システムは、プリント・プロセスの間、印刷機械に発生する振動に対し設計されている。これは例えば、レーザ・システムが、発生する振動の有限要素法解析に従って設計された支持フレームを有することで形成され、それによりレーザ・システムがロックされずに印刷機械の振動を共同で実行するような場合に起こる。
【0033】
前記レーザ・システムは、水平方向に配置されたレーザ共振器を有する少なくとも1個のマーキング・レーザを有し、前記レーザ共振器は、ビーム・パイプを介して、レーザ・ビームを偏光するスキャン・ヘッドに接続される。本発明の実施例において、レーザ・システムは、1個以上のマーキング・レーザ、例えば2個、4個6個のマーキング・レーザを有する。
【0034】
前記レーザ・システムは、データ・キャリア上にレーザ・インピンジするための1つあるいは複数の作業位置と印刷機械のインプレッション・シリンダと下流インクユニットがアクセス可能なサービス位置との間で、垂直方向に移動可能である。
【0035】
さらに、前記レーザ・システムは、前記インプレッション・シリンダの真上に配置され、シールドされたチェンバを有し、前記シールドされたチェンバは、レーザ照射をシールドし、マーキングの際に発生したガスとゴミを排気する。
【実施例】
【0036】
図1,2を参照して、銀行券を一例に本発明の原理を以下説明する。図1は、銀行券10の概念図である。この銀行券10の前面に、コーティング層12が赤外線レーザ・ビームの作用により形成される。マーキング14が、この実施例では数列「1234」で形成される。図2は、前記図1の銀行券10の、マーキング14の線II−IIに沿った断面図である。
【0037】
図1,2から分かるように、銀行券10の紙製基板20に形成されたコーティング層12は、2つの層からなる。即ちマーキング用に使用される赤外線レーザ光を吸収する吸収層である第1層22と、使用されるレーザ光を透過する透過層である第2層24である。
【0038】
レーザ照射を行うと、紙製基板20の前面から入射したレーザ光は、透過性第2層24を貫通し、吸収性第1層22内にマーキング14を形成する。使用される材料によって、吸収性第1層22は、局部的に漂白されたり蒸発したりして、反射特性あるいは吸収特性が、様々な光学特性を有する材料中での化学反応により、変化する。
【0039】
透過性第2層24は、マーキング14の領域でも保持される。本発明によれば、これは、紙製基板20が透過性第2層24をインプリントする間あるいはその後、押圧されることにより達成される。
【0040】
圧力が発生することにより、現在の理解によれば、透過性第2層24と紙製基板20との安定した結合が生成され、これにより、透過性第2層24を破損することはなく、マーキング14が吸収性第1層22内に導入される。
【0041】
図1,2に示す実施例においては、紙製基板20の押圧は、透過性第2層24を例えば50,000kPaの高圧で凹刻印刷技術(intaglio printig method)を用いて刷り込む(imprinting)ことにより、行われる。他の一般的な印刷技術に比較すると、凹刻印刷技術により比較的厚いインクのコーティングが可能となる。紙表面の部分変形部26と共に、ペーパを印刷プレートのリセスに押しつけることにより形成される厚いインク層である透過性第2層24は、容易に手で感じることができ、同時にその良好な触覚性に基づいて普通の人が、認証特徴を看取しやすい。
【0042】
図3により複雑な実施例を示す。同図は本発明による銀行券30の上面図である。銀行券30をマーキングするために、波長が1.064μmのNd:YAGレーザが用いられる。これに関して以下説明する。
【0043】
銀行券30の製造時に、コインの形態の銀色効果インク層(silver-colored effect ink layer)32がスクリーン・プリント方法により銀行券の基板に接触して最初に形成される。ここで、銀色効果インク層32は、所定の赤外線レーザ光に対し吸収層を構成する。その後、ポートレート34が、凹刻印刷プレートで銀色効果インク層32内にブラインド・エンボスされ、組み紐飾り型エッジパターン36が、凹刻印刷でインプリントされる。
【0044】
その後、このマーク領域を銀行券30のプリントされた側からレーザで形成する。その間に、所望のマーキング38(例えばこの実施例では一連の番号)あるいは他の固有のマークの形態が、銀色効果インク層32内に形成される。この実施例においては、マーキング38は数字列「12345」である。この高い吸収力により、銀色効果インク層32は、マーキング38から完全に取り除かれ、マーキング38が反射光の中で高いコントラストで浮かび上がり、特に透過光の場合にそうである。
【0045】
マーキング領域38において、組み紐飾り型エッジパターン36の凹刻印刷インクは依然として知覚できる。この組み紐飾り型エッジパターン36の凹刻印刷インクは、銀色効果インク層32の上に形成され、レーザ光に対し透明(透過)性を有し、凹刻印刷インクと紙製基板との間が高い圧力による良好な結合性により、レーザ光でも破損することはない。かくして、プリント・イメージ内に固有のマーキング38が形成される。このマーキング38は、銀行券の様々なプリント・プロセスの終了時に導入されるが、見る人にとっては、プリント・プロセスの初期段階で既に生成されているかのように見える。これにより、偽造対策が大幅に向上するが、この理由は、再生が困難であり、マーキング38は、組み紐飾り型エッジパターン36がマーキング38の上を部分的にカバーしているために、白インクあるいは明るいインクでその後インプリントすることはできないからである。
【0046】
図4,5に本発明の他の実施例を示す。図4は、本発明のさらなる実施例の銀行券のマーキングの上面図であり、図5は、図4の銀行券のマーキングの領域の線V−Vに沿った断面図である。
【0047】
この実施例において、最初に、マーキングに使用されるレーザ光に対し透明である着色された線型インプリント42が、銀行券の紙製基板40に形成される。このインプリントは、例えばナイロプリント方法(nyloprint method)により行われる。着色された線型インプリント42上に効果インク層44でプリントされる。この効果インク層44は、所定のレーザ波長の光を吸収する。その後、プリントされた基板40は、そのレーザ波長に透明性のある凹刻印刷インク46でプリントされる。その間に、プリント基板は同時に押圧される。
【0048】
後続のマーキング・ステップにおいて、一連の層が、所定波長(例、1.064μm)のレーザ光でもってプリントされた側から形成され、所望のマーキング48(この実施例では「1234」)を導入する。吸収性のある効果インク層44が、レーザ光の作用により局部的に除去され、その結果、下にある着色された線型インプリント42は、その透明性故に、レーザ光の影響を受けず、可視状態となる。同様に、凹刻印刷インク46は、レーザ光に対し透明であるので、押圧プロセスによる紙製基板への良好な密着性により、マーキング48で維持され、その結果図4に示すイメージの印象が得られる。
【0049】
本発明の他の実施例においては、インプリント42は、例えば虹色に輝く印刷方法で実行される。その色の遷移はマーク領域に現れる。このインプリントもまた、裸眼で見ることができず、またUV光のようなある照射条件によってのみ活性化されたり見ることができる特徴を有する。機械で読み込み可能な特徴も具備することができる。
【0050】
同様に、図2,5の実施例の吸収性第1層22または効果インク層44も、虹色に見えるプリント方法で実行することもできる。これは、虹色に見えるプリント用に使用される所定のレーザ波長で吸収特性が異なる2種類のインクを使用する。マーキング・ステップにおいて、2種類のインクが違って見えるようにすることもできる。可視スペクトラム領域において、使用される2種類のインクは、同一の色合いでレーザ波長の赤外線吸収特性のみ異なる。
【0051】
本発明の他の実施例によれば、スチール・エングレイビング(steel engraving)方法において、着色エッジを、透過性第2層24または凹刻印刷インク層46用に使用することができる。この着色エッジは、裸眼では見ることができないが、IRレーザ波長で異なる吸収性となる。かくして、部分的な透明層が、高いIR吸収性を有するサブ領域では除去され、低いIR吸収性を有するサブ領域では保持される。
【0052】
図6,7は、本発明の他の実施例を示す。同図において、透過(透明)層の代わりにレーザ光を部分的に吸収する部分的透過層がインプリントされる。同図において、説明を明瞭にするために、図2,5に示す凹刻印刷による層のエンボスは、凹刻印刷方法が用いられても、それ以降の図には示さない。
【0053】
銀行券あるいは他の有価ドキュメントのような基板50上に、レーザ光吸収層52例えば連続する銀色スクリーン・プリンティング層が、最初に形成される。このレーザ光吸収層52上に、微細な第2パターンの形態でレーザ光に部分的に透過性のマーキング層54がインプリントされる。レーザ光吸収層52とマーキング層54の色デザインに応じて、マーキング層54は、重なった領域で裸眼で多少とも明白に知覚できる。マーキング層54は、光原色56とすす粒子58からなる混合インクから構成される。光原色56は、マーキング用に後で使用される赤外線レーザ光に対し透明であり、すす粒子58は、レーザ光を吸収する。この実施例においては、レーザ光に透過性の光原色56とレーザ光に対し吸収性のあるすす粒子58からなる混合インク層が付加される。
【0054】
領域60において、基板50は、所定のレーザ・パラメータのマーキング・レーザで照射され、これにより吸収性混合物成分であるすす粒子58は、このレーザ光の作用により、除去されたり変質したり非活性化する。使用される材料に応じて、吸収性のすす粒子58は、他の光学特性を有する材料中への化学反応により、例えば漂白されたり蒸発したりその反射特性が変化したり、変質したりする。その結果このレーザ光に起因して、インク混合物の光学特性は、領域60で不可逆的に変化する。使用される可能な効果とは、変色、色反復の生成、色の明るさの向上、効果インク混合物のチルト・カラーの変化、マーキング層54の偏光特性あるいは発光特性の局部的変化である。ここに示した実施例においては、レーザ光により、すす粒子58はインク混合物から除去され、その結果領域60内で光原色56だけがその上に残り、図6ように見える。
【0055】
マーキング層54そのものの変化に加えて、レーザ光は、領域60のマーキング層である部分的透過層54を透過し、レーザ光吸収層52内に視覚的に知覚可能な変化を生成する。この実施例では、数列「12」として示される領域60が、見当が完全に合って2つの層52、54内に刻印される。マーキング層54により形成されたライン・パターンは、1回の作業ステップでインプリントされるために、マーキング領域60の内側あるいは外側の明るいパターン部分と暗いパターン部分とは、完全に見当が合う。かくして、従来方法で再生されることのなかった見当合わせ(位置の一致)の状況が形成される。
【0056】
図8に示す本発明の他の実施例において、基板70の上に吸収マーキング層72がインプリントされる。この吸収マーキング層72は、上記した種類の混合物成分74、76からなるインク混合物から形成される。この吸収マーキング層72の上に、レーザ光透過層78がプリントされる。このレーザ光透過層78は、例えば凹刻印刷方法でインプリントされる。別の構成として、プリントされた基板を押圧するために、基板は、エンボスされていないプリント層であるレーザ光透過層78を形成した後、カレンダ(calendering step:ロール機械に通してつや出ししたり平滑にしたりする)処理される。
【0057】
プリントされた基板の領域80にレーザ照射を行った後、混合物成分76は、吸収マーキング層72から除去されたり、変化したり、非活性化される。かくして、マーキングがコーティング層に導入される。レーザ光透過層78は、インクと紙製基板との良好な接着性により、レーザ処理された領域80で維持される。
【0058】
図9は、本発明の他の実施例の銀行券90を示す。この実施例において、吸収層92は、薄いアルミニウム層96が蒸気コーティングされる着色ホイル94により形成される。レーザ光透過層98が着色ホイル94にインプリントされ、プリント基板はこのプリント・プロセスの間あるいは後に押圧される。マーキングするために、銀行券は、所望の領域100に赤外線レーザ光でインプリントされ、レーザ光透過層98は、局部的に蒸発しあるいは透過性形態に変化する。所望の領域100でもレーザ光透過層98は、保持される。
【0059】
図10に示す実施例においては、吸収層110と部分透過層120は、上記した種類の2種類の混合成分からなるインク混合物から形成され、それぞれがレーザ光透過混合物成分112、122と、吸収混合物成分114、124を有する。層110、120を形成した後、プリントされた基板は、カレンダ処理され押圧される。
【0060】
レーザ照射の後、2つの層110,120の吸収混合物成分114、124が、インピンジされたマーキング領域116で除去され、変質され、非活性化される。その結果、このマーキング領域116は、周囲の色とは高いコントラスト比で浮き出した混合色を示す。
【0061】
図11は、ベクトル・レーザ・コーダのスキャン・ヘッド200を示す。このスキャン・ヘッド200で、マークされるべき基板202に、シリアル番号204(ここでは、数字列「57721566」)あるいは別の個別のマーキングが形成される。基板202は、既に完全に切り離した有価ドキュメント、有価ドキュメントの複数の起伏(up)を有するシート、あるいは連続する証券である。
【0062】
赤外線レーザビーム220が、バックミラーと出力ミラーとの間のモード絞り224を有するレーザ共振器222内に生成される。そのモード絞り224は、いわゆるモードと称するあるビーム直径とある空間的に分布した振動状態に関連する。レーザ共振器222から出力されたビーム226は、ビーム拡大テレスコープ228を通り、拡大ビーム206となり、スキャン・ヘッド200の入口開口212を通過し、2つの可動ミラー208で方向を曲げる。可動ミラー208の一方はx方向に光を曲げ、他方はy方向に光を曲げる。フラット・フィールド・レンズ210は、拡大ビーム206を基板202上に集光し、インピンジし、コーティング層にマーキングを生成する。
【0063】
ビーム拡大テレスコープ228を用いて、ビームの良好な焦点機能を確保する。ビームの拡張が大きくなると、ビーム・パスの終端におけるフラット・フィールド・レンズ210の焦点性が良好となる。しかし拡張が大きくするには、より大きな可動ミラー208を用いなければならない。これにより、慣性が大きくなりビームの偏光(方向を変えること)が遅れる。ビーム拡張は、光ビームと平行に走るビームのウエストが、フラット・フィールド・レンズ210の面内になるように設定すると、ビームの良好な焦点が得られる。
【0064】
別の設定方法は、ビームのビーム・ウエストをスキャン・ヘッド200の入口開口212に設定し、ビーム・パターンのエッジの損失を回避する。その結果基板202上でより高いビーム強度が得られる。
【0065】
使用されるフラット・フィールド・レンズ210は、100mmと420mmの間の焦点長さを有し、160mmの焦点長さが好ましい。基板202は、マーキング・プロセスの間、ある速度vで移動する。この速度vは、センサにより検出され、コンピュータに送られ、可動ミラー208の動きを制御する。その結果、基板の速度vは、マーキングの間補償される。このマーキング方法は、特にプリント・ショップで通常使用されるような高速で処理する有価ドキュメントを非接触でマーキングするのに特に優れているために採用される。
【0066】
基板202上の刻印フィールドは、銀行券のサイズである。例えば、フラット・フィールド・レンズ210の163mmの焦点距離においては、刻印フィールドは190mmと140mmの軸方向長さを有する楕円により形成される。
【0067】
使用される基板によって、COレーザ、Nd:YAGレーザあるいは他のUVから遠赤外線の波長の他のレーザを、放射源として用いることができる。レーザは、周波数の2倍あるいは3倍の周波数で作用するのが好ましい。しかし、近赤外線のレーザ源、特に1064nmの基本波長を有するNd:YAGレーザを使用するのが好ましい。この理由は、この波長範囲は、使用される基板とプリント用インクの吸収特性に十分マッチするからである。アプリケーションによっては、レーザ光のスポットサイズは、数μmから数mmまで変更可能であり、これは、例えばフラット・フィールド・レンズ210と基板202と間の距離を変えることにより行われる。このスポットサイズは、大部分が100μmのオーダーである。
【0068】
フラット・フィールド・レンズ210と基板202との間の距離を変えることにより、あるいはスキャン・ヘッド200の前のビーム拡大テレスコープ228を調整することにより、スポットサイズは、システマティックに変更でき、高エネルギー密度の微細マーキングと低エネルギー密度の幅広いマーキングを生成できる。微細マーキングを得るには、ビーム拡大テレスコープ228は、ビーム・ウエストがフラット・フィールド・レンズ210の面に来るよう、設定される。この場合適用可能ならば、ビーム直径は、モード絞り224を通して減少させ、ビーム・パターンのエッジが入口開口のエッジをカバーするのを阻止しなければならない。かくしてビームのトータル・エネルギーは減少する。その部分に対し、エネルギー密度と全エネルギーが、マーキングの種類と外観に影響を与える。
【0069】
スキャン・ヘッド200をレーザに直接固定するか、あるいはレーザ光をレーザ・ヘッドまで光学導波路あるいはスルー・ビーム偏光を介してガイドする。ビーム偏光が、好ましいが、その理由はパワーとビームの品質の損失が非常に少ないからである。
【0070】
通常使用されるレーザ・マーカの連続出力は、数Wから数百Wの間である。Nd:YAGレーザは、全出力が低く小さな構造寸法と高いビーム品質のレーザ・ダイオードで、あるいは高い出力のポンプ・レーザで動作する。有価ドキュメントの製造ラインの速度を落とさないために、マーキングは、ビームを1m/s以上好ましくは4m/s以上の速度で基板にガイドできる高速ガルバノメータで実行される。10m/s以上の速度が特に好ましく、大きなトータル・エネルギーを必要としないために、特に適している。これらの速度では、セクション当たりのわずかなエネルギー量が基板あるいはコーティング層に堆積されるだけで、その結果、100Wのランプ・ポンプのNd:YAGレーザが使用される。
【0071】
刻印パラメータとセッティングの一例は次の通りである。モード絞りの開口は、1mmと5mmの間であり、好ましくは2mmである。ビーム拡張は、3倍と9倍の間で、好ましくは4.5倍である。ビーム拡張テレスコープの焦点は、最大パワースループットがスキャン・ヘッドの入口開口で得られるように設定される。スキャン・ヘッドのビーム開口は、7mmと15mmの間で、好ましくは10mmである。フラットフィールド・レンズの焦点長さは、100mmと420mmの間であり、好ましくは163mmである。レンズと基板との間の動作距離は、ある脱焦点が焦点長さに対応するよりも小さな焦点距離故に起こるように、選択される。パルス周波数は20kHzと連続波動作の間にある。
【0072】
刻印パラメータ(例えばレーザ出力、露光時間、スポットサイズ、刻印速度、レーザの動作モード等)を変化させることにより、マーキングの結果は、広い範囲で変更可能である。例えばライン状マーキング、例えば刻印あるいはラインパターンで充填した領域マーキングは、レーザにより生成することができる。
【0073】
ライン状のマーキング(例えば刻印)を形成するためにレーザ出力は、500Wと100Wの間の値に設定するのが好ましく、特に80Wに設定するのが好ましい。レーザ・ビームの速度は、2m/sと10m/sとの間で、好ましくは7m/sである。
【0074】
面のマーキングを生成する際には、レーザ・パワーは500Wと100Wの間で、好ましくは95Wである。レーザ・ビームの速度は、5m/sと30m/sの間で、好ましくは20m/sである。表面パターンを形成する個々のラインのライン距離は、50μmと380μmの間で、特に180μmと250μmの間が好ましい。
【0075】
かくして、レーザによりライン状のマーキング例えば刻印が形成される、或いはラインパターンで充填した領域マーキングを形成する。後者の場合のライン距離は、50μmと380μmの間で、好ましくは180μmと250μmの間である。前面(即ちプリントされた側)から基板202のレーザ照射に加えて、基板の裏面からのレーザ照射を用いることができる。この場合基板202は、レーザ波長でできるだけ少ない吸収性能を示すことが望ましい。
【0076】
レーザ・パラメータは、レーザ照射の間、変更できるので、異なる結果が得られる。例えば、パルス・レーザのパルス・シーケンス周波数をそのプロセスの間変化することにより、部分的な透過層がある領域で除去される。
【0077】
銀行券あるいは有価ドキュメントは、シート形状で通常プリントされるが、ウェブ上にプリントすることも可能である。一般的にシートへのプリントが行われる時には、+/−1.5mm程度の小さな見当のずれを達成できる。個々の節(以下において個々の領域とも称するが)は、隣の他の領域の行と他の1個下の領域の列に配置される。好ましくは、レーザ・マーキング用の装置は、図2に示すように、領域の列に配置されるよう取り付けられる。
【0078】
図12は、レーザ・マーカ230を示す。複数のレーザにより、シート232にレーザ・マーキングとレーザ修正領域が同時に施される。ここに示した実施例においては、シート232は、6個の列6個の行を有し、その結果、銀行券あるいは他のデータ・キャリアの36個の領域(individual up)234が、シート232上に配置される。このシート232は、矢印の方向に動く。各レーザ・チューブ236の列は、シート232の上方に配置されているために、レーザ・チューブ236は、スキャン・ヘッド238と関連して、その列に配置された個々の領域234のそれぞれに、レーザ・マーキングあるいは修正を生成する。この配置によりスループットは大幅に向上するが、その理由は1個のレーザ・ビームがプリント・シート全体に移動する必要はなくなり、単に一方向の移動だけでプリント・シートのコラムの境界に移動が要求されるだけであるからである。個々の領域234へのレーザ照射は、図11に示すように、スキャン・ヘッド238に含まれるミラーの手段によりレーザ光を曲げることにより行われる。
【0079】
シート供給型の印刷機の通常の速度は、10,000シート/hである。実施例においては、これは、2m/s−3.3m/sのウェブの速度に対応する。このウェブの速度は、ウェブ形状材料上にプリントする時にも達成される。レーザ・マーキング・プロセスは、その速度でプリント・ラインの条件に適合するために、マーキングは、上記の速度で移動する基板上に行わなければならない。プリント・イメージ検出が行われ、適用される場合には、この速度で行われる。
【0080】
図13は、銀行券等をマーキングするための本発明のレーザ・システム270を具備した印刷機械250を示す。このレーザ・システム270そのものの詳細は、図14に示す。印刷機械250は、ストリーム・フィーダー252と、シートを巻き上げる停止ドラム256とを有する印刷タワー254と、押印シリンダ258と、インク付着ユニット260と、トレイ262とを有する。押印シリンダ258は、2枚のシートを巻き上げるスパン(図13の黒い部分)とインターラプション(図13の白い部分)を有する。
【0081】
ストリーム・フィーダー252内に、ペーパー・シートが配置される。これらは、既に印刷済みのもの、これからレーザ・プリントされるもの、そしてマーキングを施こすために印刷機械250を通過したものである。しかし、レーザ・システム270の本発明の設計により、印刷機械250内で、ペーパ・シートをプリントすることとレーザ照射の両方が可能である。レーザ照射と同時に実行されるプリント・プロセスは、既にプリントされた銀行券のナンバリング(番号付け)あるいは凹刻印刷プリントの一般的なプリントステップである。
【0082】
レーザ照射に最もアクセスしやすい場所は、押印シリンダ258である。ストリーム・フィーダー252において、シートが積み上げられると、次に引き出される各シートが、後続の1つの下にガイドされる。トレイ262内にシートが「自由に揺れる(free fluttering)」状態であり、すなわちそれらが積み重なれるまで、グリッパー・エッジにガイドされ固定される。
【0083】
さらに、シリンダ形状をしているため、押印シリンダ258は、スパンが2枚のシートの寸法であり、最低の湾曲度を示す利点がある。曲率が小さくなると、補償しなければならない歪みも小さくなり、さらに、フラット・フィールド・レンズ210とプリント・シートとの間の距離(図11)が変わること起因するビームの直径の変化も小さくなる。
【0084】
本発明のレーザ・システム270の構造の主な利点は、ストリーム・フィーダー252とペーパ・ガイダンスを有する押印シリンダ258とインク付着ユニット260にアクセス可能なことである。かくして印刷機械250により従来のナンバリングが実行でき、特にレーザ処理と同時に実行できる。このため、ストリーム・フィーダー252上にレーザ・システム270を配置することは、あまり好ましくない。本発明によれば、各レーザのレーザ共振器222とスキャン・ヘッド200は、空間的に離れている。その理由は、レーザ共振器222は、傾斜させることができず、冷却水の流れを制御するために水平方向を維持しなければならないからである。
【0085】
原理的には、ミラーあるいは光学導波路を用いて、レーザ共振器222からのレーザ・ビームをスキャン・ヘッド200に向けることができる。しかし、光学導波路は、ビーム品質が劣化しパワー損失が起こる不利な点がある。さらに、パラメータの範囲が制限されるが、その理由は、パルスが強すぎてQスイッチのパルス・レーザが起こり、光学導波路を破損することがあるからである。図14から分かるように、本発明のレーザ・システム270においては、ビーム・パイプ274のコーナーに配置されるミラー272が用いられる。図14においては、1個のレーザのみが示されているが、複数のレーザ例えば6個のレーザを直列に配置することもできる(図12)。
【0086】
本発明のレーザ・システム270のスタンドは、強化フレーム276から構成される。強化フレーム276は、発生する振動を有限要素法で解析し設計したものである。レーザは、印刷機械250をロックをかけない同時プリントでは不可避な印刷機械250の振動を同時に起こす。強化フレーム276は、インク付着ユニット260のハウジングの上方に取り付けられ、半径方向アームの方向にレーザ・ポイントの冷却水導管が、印刷機械250を輸送用に持ち上げるクレーン用のネジ穴に固定される。これにより、大きな負荷の吸収を達成する。
【0087】
強化フレーム276は、2つの部品を有するよう形成される。すなわち、外側フレームと外側フレームにつり下げられた内側フレームである。外側フレームは、複数のロック位置と上部位置の間で、外側から取り付けられたガス圧スプリング(図示せず)の助けを借りて前後に急速に動かすことができる。このため、例えば日よけ用クランクとケーブル・ウインチを使用することができる。ロック位置は、フラット・フィールド・レンズ210とフラット・フィールド・レンズ210の様々な焦点長さに適合し、かくして様々な作業距離が得られる。
【0088】
内側フレームは、高さと角度が微細に調整可能で、これは例えばクランクの助けをかりて行われ、フラット・フィールド・レンズ210の高さと拡大ビーム206の寸法の微細な調整を容易にする。高さ位置は、スケールで示され正確に再生できる。ロック位置に起因して、この整合は、インク付着ユニット260への作業のために、レーザが持ち上げられたり降ろされたりしても、失われることはない。
【0089】
レーザ共振器222は、プレート278の上に配置される。このプレート278はビーム・パイプ274と共に移動可能で、これにより、領域列と刻印ユニットとを整合させる。押印シリンダ258上方にシールド・チェンバ280が配置される。このシールド・チェンバ280は、レーザ光をシールドし、出たガスとゴミをパイピング(図示せず)を介して排出する。シールド・チェンバ280は、その位置が標準の作業距離に対するさまざまなロック位置で変化することがないように埋め込まれる。インク付着ユニット260への作業位置でのみ上方向に移動する。シールド・チェンバ280は、押印シリンダ258の方向にはレーザ光に対し非透過性ブラシで、スキャン・ヘッド200の方向にはベローズ282で閉じる。
【0090】
レーザ処理の制御は、シートあるいはプリンティングを検出するセンサを介して及び速度を測定することにより、行われる。シート・エッジのセンサは、非常に精巧な高速拡散反射センサである。
【0091】
押印シリンダ258の速度は、磁気プローブによりピックアップされる。これは、押印シリンダ258のラインの下に配置された周期的に磁化されたバンドを介して、行われる。押印シリンダ258は、その上にはシートがこないスパンの一部を有する。スキャニングにおいて、25μmの解像度が達成される。一定速度を仮定することは可能ではない。その理由は、印刷機械250の様々な同時プロセスが、通常中央モータで駆動され、シートの動きは、周期的な変動にさらされるからである。
【0092】
拡散反射センサの信号は、レーザの制御を行う「トリガー・ボックス」に伝送される。レーザ発振を行うために、スタート距離は、磁気テープを介して測定され、後続のマーキングの距離は、コンピュータプログラムを介して、互いに独立に入力される。
【0093】
拡散反射センサのさらなる信号のブロックは、ブロッキング距離または磁気テープのシート位置の決定のいずれかにより決定される。スタート信号は、磁気テープの一端(シートヘッド)の後のみ許され、1個のスタート信号の後は、磁気テープの端部に再び到達するまでブロックされる。
【0094】
以上の説明は、本発明の一実施例に関するもので、この技術分野の当業者であれば、本発明の種々の変形例を考え得るが、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。特許請求の範囲の構成要素の後に記載した括弧内の番号は、図面の部品番号に対応し、発明の容易なる理解の為に付したものであり、発明を限定的に解釈するために用いてはならない。また、同一番号でも明細書と特許請求の範囲の部品名は必ずしも同一ではない。これは上記した理由による。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の一実施例によるマークを有する銀行券を表す図。
【図2】図1の銀行券のマークされた領域の線II−IIに沿った断面図。
【図3】本発明の他の実施例の銀行券のマーキングの上面図。
【図4】本発明のさらなる実施例の銀行券のマーキングの上面図。
【図5】図4の銀行券のマーキングの領域の線V−Vに沿った断面図。
【図6】本発明のさらなる実施例の有価ドキュメントの上面図。
【図7】本発明のさらなる実施例の有価ドキュメントの断面図。
【図8】本発明の一実施例による銀行券の断面図。
【図9】本発明の一実施例による銀行券の断面図。
【図10】本発明の一実施例による銀行券の断面図。
【図11】本発明のデータ・キャリアのマーキングのベクトル・レーザ・コーダのブロック図。
【図12】セキュリティ・シートを刻印するためのベクトル・レーザ・コーダのブロック図。
【図13】銀行券等をマークするための本発明の一実施例のレーザ・システムを具備する印刷機械の概念図。
【図14】図13のレーザ・システムの断面図。
【符号の説明】
【0096】
10 銀行券(紙幣)
12 コーティング層
14 マーキング
20 紙製基板
22 吸収性第1層
24 透過性第2層
26 部分変形部
30 銀行券(紙幣)
32 銀色効果インク層
34 ポートレート
36 組み紐飾り型エッジパターン(印刷層)
38 マーキング
40 紙製基板
42 着色された線型インプリント
44 効果インク層
46 凹刻印刷インク
48 マーキング
50 基板
52 レーザ光吸収層
54 マーキング層
56 光原色
58 すす粒子
56,58 混合物成分
60 領域
70 基板
72 吸収マーキング層
74,76 混合物成分
78 レーザ光透過層
80 領域
90 銀行券(紙幣)
92 吸収層
94 着色ホイル
96 薄いアルミニウム層
98 レーザ光透過層
100 領域
110 吸収層
120 部分透過層
110,120 層
112,122 レーザ光透過混合物成分
114,124 吸収混合物成分
116 マーキング領域
200 スキャン・ヘッド
202 基板
204 シリアル番号
206 拡大ビーム
208 可動ミラー
210 フラット・フィールド・レンズ
212 入口開口
220 赤外線レーザビーム
222 レーザ共振器
224 モード絞り
226 出力ビーム
228 ビーム拡大テレスコープ
230 レーザ・マーカ
232 シート
234 インディビデュアル・アップ
236 レーザ・チューブ
238 スキャン・ヘッド
250 印刷機械
252 ストリーム・フィーダー
254 印刷タワー
256 停止ドラム
258 押印シリンダ
260 インク付着ユニット
262 トレイ
270 レーザ・システム
272 ミラー
274 ビーム・パイプ
276 強化フレーム
278 プレート
280 シールド・チェンバ
282 ベローズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターン、文字、番号、イメージの形態で視覚的に知覚可能なマーキングを有するデータ・キャリアの製造方法において、
(a) 所定のレーザ光スペクトラムを選択する、
(b) レーザ光吸収層を前記データ・キャリアの基板に形成する、
(c) 前記レーザ光吸収層の上に前記レーザ光を少なくとも部分的に透過する部分的透過層をインプリント(印刷)する、
(d) 前記部分的透過層を形成する間あるいは後で、基板を押圧する、
(e) 前記所定のレーザ波長スペクトラムのレーザ光で、形成されたコーティング層をインピンジする
ステップを有し、
前記少なくともレーザ光吸収層に視覚的に知覚可能なマークを生成する
ことを特徴とするデータ・キャリアの製造方法。
【請求項2】
前記ステップ(c)の部分的透過層を凹刻印刷手段により形成し、その間に前記基板を押圧する
ことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記レーザ光吸収層と部分的透過層の形成後、基板をブラインド・エンボスする
ことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記レーザ光吸収層と部分的透過層の形成後、基板をカレンダ処理する
ことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記ステップ(c)の部分的透過層を、組みひも飾り模様、マイクロテキスト、グラフィック要素の微細パターンでインプリントする
ことを特徴とする請求項1〜4の1つに記載の方法。
【請求項6】
前記ステップ(b)のレーザ光吸収層は、スクリーン・プリンティングの手段によりインプリントされる
ことを特徴とする請求項1〜5の1つに記載の方法。
【請求項7】
前記ステップ(b)において、コーティング済みホイルまたは未コーティング・ホイルを、レーザ光吸収層として形成する
ことを特徴とする請求項1〜5の1つに記載の方法。
【請求項8】
前記ステップ(b)のレーザ光吸収層は、連続領域として形成される
ことを特徴とする請求項1〜7の1つに記載の方法。
【請求項9】
前記(b)ステップのレーザ光吸収層は、異なるプリンティング方法あるいはプリンティング・パラメータで小領域に形成し、
前記小領域は、前記ステップ(e)で異なる影響を受ける
ことを特徴とする請求項1〜8の1つに記載の方法。
【請求項10】
前記(e)のレーザ・パラメータは、前記部分的透過層がレーザ照射後完全に維持されるよう、選択される
ことを特徴とする請求項1〜9の1つに記載の方法。
【請求項11】
前記レーザ・パラメータを、前記ステップ(e)の間変化させ、前記部分的透過層を部分的に残したり部分的に除去する
ことを特徴とする請求項1〜9の1つに記載の方法。
【請求項12】
前記ステップ(e)のレーザ・パラメータは、前記コーティング層のエンボスが維持されるよう、選択される
ことを特徴とする請求項1〜11の1つに記載の方法。
【請求項13】
前記レーザ・パラメータを、前記ステップ(e)の間変化させ、前記コーティング層のエンボスを部分的に残したり部分的に除去する
ことを特徴とする請求項1〜11の1つに記載の方法。
【請求項14】
前記ステップ(e)のレーザ光による照射は、前記プリント層が形成された基板の前面から行われる
ことを特徴とする請求項1〜13の1つに記載の方法。
【請求項15】
前記ステップ(e)のレーザ光による照射は、前記基板の裏面から行われる
ことを特徴とする請求項1〜13の1つに記載の方法。
【請求項16】
前記レーザ光吸収層と前記部分的透過層は、完全に重なるか部分的に重なるよう形成される
ことを特徴とする請求項1〜15の1つに記載の方法。
【請求項17】
保護層を、前記レーザ光による照射の前と/または後に形成する
ことを特徴とする請求項1〜16の1つに記載の方法。
【請求項18】
前記波長範囲が0.8μm−3μmの間の赤外線レーザ、Nd:YAGレーザが、ステップ(e)のレーザ・ソースとして使用される
ことを特徴とする請求項1〜17の1つに記載の方法。
【請求項19】
前記ステップ(e)のインピンジにおいて、前記レーザ・ビームは、前記基板に、速度が1m/s以上、好ましくは4m/s以上、より好ましくは10m/s以上であるよう、ガイドされる
ことを特徴とする請求項1〜18の1つに記載の方法。
【請求項20】
基板と前記基板上に形成されたコーティング層とを有する有価ドキュメント、証券のようなデータ・キャリアにおいて、
前記コーティング層には、レーザ光を介してパターン、文字、番号、またはイメージの形態のマーキングが形成されており、
前記コーティング層は、レーザ光吸収層とプリント層とを有し、
前記プリント層は、前記レーザ光吸収層の上に配置され、前記レーザ光に対し少なくとも部分的に透過性を有し、
前記プリントされた基板は、前記部分的透過層をインプリンティングする間または後に、押圧されるて形成される
ことを特徴とするデータ・キャリア。
【請求項21】
前記部分的透過層は、凹刻印刷手段により形成される
ことを特徴とする請求項20に記載のデータ・キャリア。
【請求項22】
前記部分的透過層は、インク混合物を有し、
前記インク混合物は、レーザ光吸収性混合成分とレーザ光透過混合成分とを有する
ことを特徴とする請求項20に記載のデータ・キャリア。
【請求項23】
前記データ・キャリアは、前記マーキング領域にブラインド・エンボスを示す
ことを特徴とする請求項20〜22の1つに記載のデータ・キャリア。
【請求項24】
前記部分的透過層は、前記マーキング領域で壊れていない
ことを特徴とする請求項20〜23の1つに記載のデータ・キャリア。
【請求項25】
前記部分的透過層は、組みひも飾り模様、マイクロテキスト、グラフィック要素の微細パターンでインプリントされている
ことを特徴とする請求項20〜24の1つに記載のデータ・キャリア。
【請求項26】
前記レーザ光吸収層は、プリント層特にスクリーン・プリント層で形成される
ことを特徴とする請求項20〜25の1つに記載のデータ・キャリア。
【請求項27】
前記レーザ光吸収層は、コーティング済みホイルまたは未コーティング・ホイルで形成される
ことを特徴とする請求項20〜26の1つに記載のデータ・キャリア。
【請求項28】
前記レーザ光吸収層は、金属ホイル・コーティングを有する着色ホイルで形成される
ことを特徴とする請求項27に記載のデータ・キャリア。
【請求項29】
前記レーザ光吸収層は、連続領域として形成される
ことを特徴とする請求項20〜28の1つに記載のデータ・キャリア。
【請求項30】
前記部分的透過層は、インク混合物を有し、
前記インク混合物は、レーザ光吸収性混合成分とレーザ光透過混合成分とを有する
ことを特徴とする請求項20〜29の1つに記載のデータ・キャリア。
【請求項31】
前記保護層は、光学的に変化する特性を示す
ことを特徴とする請求項20〜30の1つに記載のデータ・キャリア。
【請求項32】
前記コーティング層は、1つあるいは複数の保護層を有する
ことを特徴とする請求項20〜31の1つに記載のデータ・キャリア。
【請求項33】
前記レーザ光吸収層と前記部分的透過層は、完全に重なるか部分的に重なる
ことを特徴とする請求項20〜32の1つに記載のデータ・キャリア。
【請求項34】
前記レーザ光吸収層の下の保護層は、レーザ光に少なくとも部分的透過性を有する層をさらに有する
ことを特徴とする請求項20〜33の1つに記載のデータ・キャリア。
【請求項35】
前記部分的透過層は、マーキングの領域に視覚的に知覚可能な特徴を有し、
前記特徴は、ある条件下で活性化されるか機械で読み取り可能な特徴である
ことを特徴とする請求項34に記載のデータ・キャリア。
【請求項36】
前記データ・キャリアの基板は、コットン・ペーパあるいはプラスティック・ホイルである
ことを特徴とする請求項20〜35の1つに記載のデータ・キャリア。
【請求項37】
前記データ・キャリアは、セキュリティ要素、銀行券、有価ドキュメント、パスポート、識別(ID)カード、証書あるいは他の製品保護手段である
ことを特徴とする請求項20〜36の1つに記載のデータ・キャリア。
【請求項38】
偽造を防止するために、ある種の商品を補償する、請求項1−37のいずれかに記載のデータ・キャリアの使用方法。
ことを特徴とする請求項1〜37の1つに記載のデータ・キャリアの使用。
【請求項39】
請求項1−19の1つの方法を実行するレーザ・システムを有する印刷機械において、
前記レーザ・システムは、印刷機械のインプレッション・シリンダ上方に配置され、レーザ照射で前記インプレッション・シリンダ上でマークすべきデータ・キャリアにインピンジする
ことを特徴とする請求項1〜19の1つに記載の方法を実行する印刷機械。
【請求項40】
前記レーザ・システムは、プリント・プロセスの間、印刷機械に発生する振動に対し設計されている
ことを特徴とする請求項39に記載の印刷機械。
【請求項41】
前記レーザ・システムは、水平方向に配置されたレーザ共振器を有する少なくとも1個のマーキング・レーザを有し、
前記レーザ共振器は、ビーム・パイプを介して、レーザ・ビームを偏光するスキャン・ヘッドに接続される
ことを特徴とする請求項39あるいは40に記載の印刷機械。
【請求項42】
前記レーザ・システムは、データ・キャリア上にレーザ・インピンジするための1つあるいは複数の作業位置と印刷機械のインプレッション・シリンダと下流インクユニットがアクセス可能なサービス位置との間で、垂直方向に移動可能である
ことを特徴とする請求項39〜41の1つに記載の印刷機械。
【請求項43】
前記レーザ・システムは、前記インプレッション・シリンダの真上に配置され、シールドされたチェンバを有し、
前記シールドされたチェンバは、レーザ照射をシールドし、マーキングの際に発生したガスとゴミを排気する
ことを特徴とする請求項39〜42の1つに記載の印刷機械。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公表番号】特表2008−542070(P2008−542070A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−513972(P2008−513972)
【出願日】平成18年5月22日(2006.5.22)
【国際出願番号】PCT/EP2006/004819
【国際公開番号】WO2006/128607
【国際公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(503404095)ギーゼッケ アンド デブリエント ゲーエムベーハー (5)
【Fターム(参考)】