説明

データ伝送方式および監視システム

【課題】 従来のデータ伝送方式に対応した以前からある端末機を残したまま、新たなデータ伝送方式に対応した端末機を追加して既存の伝送路に接続し、データを収集することができるデータ伝送方式および監視システムを提供する。
【解決手段】 データ列を、スタートビットとストップビットとの間に、データ収集のためのデータ列であるか端末制御のためのデータ列であるかを示す情報が入るモード領域と、端末機を指定するアドレス格納領域と、端末に対する指令の内容を示す情報が入るコマンド領域と、返送データが入る返送データ領域とが配置された構造とし、ストップビットを該ビットを表わす波形とは異なる波形に対応された拡張ビットに置き換え可能にし、ストップビットを拡張ビットに置き換えた場合には、該拡張ビットの後に返送データが入る拡張返送データ領域を付加したデータ列として伝送するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、伝送路を使用したデータ伝送方式に関し、例えば防災システムや防犯システムなどの監視システムにおけるデータ伝送に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ビルや工場などの建物や、イベント会場に敷設され、熱感知器や煙感知器、ガス漏れ検知器などからの検知信号を受信して火災等の災害の発生を監視する監視装置(受信機)を備えた防災システムにおいては、監視装置(受信機)と複数の感知器とを伝送路で接続して検知信号を伝送する場合、伝送路の長さが非常に長くなる。そのため、信号を伝送する伝送線や電力を供給する電源線の本数は少ないことが望ましい。
【0003】
そこで、従来、熱感知器や煙感知器、ガス漏れ検知器などからの検知信号を受信して火災等の災害の発生を監視する図7に示すような監視システムにおけるデータ伝送方式として、監視装置(受信機)と複数の感知器や中継器などの端末機とを2本の伝送線からなる伝送路で接続し、信号を伝送するとともに電力を供給するようにしたデータ伝送方式が実用化されている。
【0004】
かかる2線式のデータ伝送式の例として、例えば特許文献1に開示されているように、2値信号の“0”と“1”を図8(B)と(C)の波形(パルス)で定義し、これらをつなぎ合せて図8(A)のようなパルス列を生成してデジタルデータを送受信する方式が知られている。
【0005】
具体的には、図8(A)の符号Tの部分は監視装置(受信機)から端末機へ送信するアドレスやコマンドなどの送信データ領域、符号Rの部分は端末機からの返送データ領域である。データ返送の際、監視装置(受信機)は、図8(C)のような“1”を表す信号を連続して出力し、端末機は、信号がロウレベルに下がっている期間に伝送線間に電流を流すか流さないかを制御する。図8(A)において、斜線が付されている部分は伝送線間に電流が流れている状態を表しており、監視装置(受信機)がこの状態を検出することで、“0”,“1”のデータを受信することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭60−28341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、ビルの大型化や感知器の多様化および防災システムの大型化さらにはシステムの高機能化に伴い、監視装置(受信機)が端末機側から収集したい情報の量が多くなって来ている。ところが、特許文献1に開示されているデータ伝送方式では、返送データ領域Rが少ないビット数で構成されており、拡張性がないため、少ないビット数で現わせるデータしか送信することができない。そのため、特許文献1のデータ伝送方式では、感知器の数や種類が増加して、防災システムの大型化および高機能化した場合に対応することが困難である。その結果、防災システムを大型化したり高機能化したい場合には、監視装置(受信機)と端末機をすべて新規なものと取り替える必要があり、大幅なコストアップを招くという課題があることが分かった。
【0008】
本発明は上記のような課題に着目してなされたもので、その目的とするところは、従来のデータ伝送方式に対応した以前からある端末機を残したまま、新たなデータ伝送方式に対応した端末機を追加して既存の伝送線に接続し、データを収集することができるデータ伝送方式および監視システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
制御装置と複数の端末機とを伝送路で接続し、所定のデータ列からなるパルス信号を伝送するデータ伝送方式であって、
前記データ列は、スタートビットとストップビットとの間に、データ収集のためのデータ列であるか端末制御のためのデータ列であるかを示す情報が入るモード領域と、端末機を指定するアドレス格納領域と、端末に対する指令の内容を示す情報が入るコマンド領域と、返送データが入る返送データ領域と、が配置された構造を有し、
前記ストップビットを該ビットを表わす波形とは異なる波形に対応された拡張ビットに置き換え可能にし、前記ストップビットを前記拡張ビットに置き換えた場合には、該拡張ビットの後に返送データが入る拡張返送データ領域を付加したデータ列として伝送することを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、
監視装置と該監視装置から延設された伝送路に接続された複数の端末機とを備え、前記伝送路を介して前記監視装置と複数の端末機との間で、所定のデータ列からなるパルス信号によりデータ伝送が可能に構成された監視システムであって、
前記データ列は、スタートビットとストップビットとの間に、データ収集のためのデータ列であるか端末制御のためのデータ列であるかを示す情報が入るモード領域と、端末機を指定するアドレス格納領域と、端末に対する指令の内容を示す情報が入るコマンド領域と、返送データが入る返送データ領域と、が配置された構造を有し、
前記ストップビットは該ビットを表わす波形とは異なる波形に対応された拡張ビットに置き換え可能であり、
前記監視装置は、前記ストップビットを前記拡張ビットに置き換えた場合には、該拡張ビットの後に返送データが入る拡張返送データ領域を付加したデータ列として伝送することを特徴とする。
【0011】
請求項1または請求項5に記載の発明によれば、ストップビットを拡張ビットに置き換え可能であるため、該拡張ビットを判別する機能を端末機に持たせることでデータ列を拡張することができる。そして、拡張ビットを有するデータ列には返送データ領域を付加することができるため、従来型の端末機では送ることができなかった量のデータを送ることができるようになり、従来のデータ伝送方式に対応した以前からある端末機を残したまま、新たなデータ伝送方式に対応した端末機を追加して伝送線に接続し、データを収集することができる。従って、既に敷設されている監視システムの規模を拡張したり高機能化を図りたい場合に、機器を全面的に取り替える必要がなく部分改修で対応することができ、コストアップを回避することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載のデータ伝送方式において、
前記返送データ領域および拡張返送データ領域は、端末機が返送するデータに応じて波形が変化されることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項5記載の監視システムにおいて、
前記監視装置から伝送路を介して伝送される前記データ列の前記返送データ領域および拡張返送データ領域は、前記端末機が返送するデータに応じて波形が変化されることを特徴とする。
【0014】
請求項2または請求項6に記載の発明によれば、データ列の返送データ領域および拡張返送データ領域は、端末機が返送するデータに応じて波形が変化されるため、伝送路によってデータ列とともに電力を供給する機能を容易に実現することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2記載のデータ伝送方式において、
前記返送データ領域および拡張返送データ領域には、これらの領域内のデータの前後に、端末機によってサブスタートビットとサブストップビットが付加される領域が含まれていることを特徴とする。
【0016】
請求項7に記載の発明は、請求項5または6に記載の監視システムにおいて、
前記返送データ領域および拡張返送データ領域には、これらの領域内のデータの前後に、端末機によってサブスタートビットとサブストップビットが付加される領域が含まれていることを特徴とする。
【0017】
請求項3または請求項7に記載の発明によれば、返送データ領域および拡張返送データ領域内のデータの前後に、端末機によってサブスタートビットとサブストップビットが付加されるため、監視装置は返送データ領域および拡張返送データ領域内のデータの範囲および拡張ビットを含むデータ列に対応可能な端末機が応答していることを確実に検知することができる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載のデータ伝送方式において、
前記モード領域に格納される情報は、時間長が同じで波形が異なる第1のパルス波形または第2のパルス波形で表され、前記ストップビットは前記第1のパルス波形と同一波形で表され、前記拡張ビットは前記第2のパルス波形と同一波形で表されることを特徴とする。
【0019】
請求項8に記載の発明は、請求項5〜7のいずれかに記載の監視システムにおいて、
前記モード領域に格納される情報は、時間長が同じで波形が異なる第1のパルス波形または第2のパルス波形で表され、前記ストップビットは前記第1のパルス波形と同一波形で表され、前記拡張ビットは前記第2のパルス波形と同一波形で表されることを特徴とする。
【0020】
請求項4または請求項8に記載の発明によれば、モード領域に格納される情報を表わす波形と、ストップビットおよび拡張ビットを表わす波形を共通化できるため、多種類の波形を生成する必要がなくなり、制御装置もしくは監視装置の負担を軽減するとともに波形の種類が少ない分、単位波形の時間長を短くしてデータ返送速度を高めることが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、従来のデータ伝送方式に対応した以前からある端末機を残したまま、新たなデータ伝送方式に対応した端末機を追加して既存の伝送路に接続し、データを収集することができるデータ伝送方式および監視システムを実現できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係るデータ伝送方式を適用した監視システムの一実施形態を示すシステム構成図である。
【図2】実施形態の監視システムにおいてデータ伝送に用いられるデータ列を構成する波形の定義を示す説明図である。
【図3】実施形態の監視システムにおいて従来型の端末機に対するデータ伝送に用いられるデータ列の構成例を示す説明図である。
【図4】実施形態の監視システムにおいて新機能の端末機に対するデータ伝送に用いられるデータ列の構成例を示す説明図である。
【図5】実施形態の監視システムにおける従来型の端末機によるデータ伝送処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【図6】実施形態の監視システムにおける新機能の端末機によるデータ伝送処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【図7】従来の監視システムの一例を示すシステム構成図である。
【図8】従来の監視システムにおけるデータ伝送に用いられるデータ列およびそれを構成する波形の定義を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1には、本発明を一例として火災監視システムに適用した場合の実施形態を示す。この実施形態の火災監視システムは、制御装置もしくは監視装置としての受信機10と、該受信機10に伝送路20を介して接続されている中継器30A,30Bと、中継器30A,30Bにそれぞれに接続された熱感知器41A,41B、煙感知器42A,42B、排煙ダンパー43などから構成されている。また、熱感知器41A,41B、煙感知器42A,42Bには、中継器30を介さず伝送路20によって直接受信機10に接続されているものもある。
【0024】
図1には明示されていないが、伝送路20は、2本の伝送線によって構成されており、2本の伝送線により信号を伝送する一方、電力も供給することができるようにされている。本明細書においては、監視装置としての受信機10に伝送路20を介してデータ伝送可能に接続される機器を総称して端末機と称する。従って、感知器のみならず中継器も端末機である。また、火災監視システムにおいては、伝送路20に、人間が操作して異常の発生を知らせる押しボタン式の発信機が接続されることがある。また、防排煙中継器に接続される端末機としては、ドアエジェクター、防火シャッターなど扱うことができる。
【0025】
図1において、符号41Aが付されているのは従来型の熱感知器、符号42Aが付されているのは従来型の煙感知器で、符号41Bが付されているのは本発明のデータ伝送方式による拡張伝送が可能な新機能の熱感知器、符号42Bが付されているのは拡張伝送が可能な新機能の煙感知器である。図1に示すように、本実施形態の火災監視システムは、伝送路20に従来型の感知器と拡張伝送が可能な新機能の感知器とが接続され、新旧の感知器が混在していてもデータ送信が可能である点に特徴がある。
【0026】
なお、図1の受信機10は、本発明のデータ伝送方式による拡張伝送が可能な新機能の受信機である。また、中継器30も該中継器に接続される感知器の中に新機能の感知器がある場合には、従来型の中継器30Aに代えて、拡張伝送が可能な新機能の中継器30Bが用いられる。
【0027】
上記受信機10は、内部の不揮発性メモリに、伝送路20に接続されているすべての中継器30A,30Bおよび感知器(41A,41B,42A,42B)のアドレスと機器の種別(新旧の区別を含む)を示す情報が記憶されたテーブルが格納されている。受信機10は、このテーブルに記憶されているアドレスを用いて、ポーリングやアドレッシングにより各端末機とデータ(制御コマンドを含む)の伝送を行うことができる。
【0028】
次に、受信機(監視装置)10による従来型の端末機(30A,41A,42A)に対するデータ伝送と、新機能の端末機(30B,41B,42B)に対するデータ伝送のそれぞれについて詳しく説明する。
【0029】
図3および図4には、本実施形態の監視システムにおけるデータ伝送に用いられるデータ列の構成例を、また図2には図3および図4のデータ列を構成する単位波形の定義を示す。なお、図3および図4において、点線で示されている波形は、伝送するビットデータが予め決定されておらず、送信もしくは返送するデータに応じて“0”か“1”かいずれかが入ることを意味し、ハッチングで示されている波形は、端末機側から返送するデータが“1”であることを意味している。2本の伝送線を介して上記のようなデータの返送や信号の送信と同時に電力を供給するシステムは、前述の特許文献1に開示されている発明等公知の技術によって実現できるので、説明は省略する。
【0030】
図3および図4のデータ列は、基本的には受信機10が出力する。このうち図3は、従来型の端末機との間のデータ伝送に用いられるデータ列で、図3(A)は受信機10が各端末機から端末の種別情報を収集するために使用されるデータ列、図3(B)は端末機の状態や検出量などの監視対象の情報(本明細書ではこれをアナログデータと称する)を収集するために使用されるデータ列、図3(C)は受信機10が各端末機に対して指令(コマンド)を送って制御するために使用されるデータ列である。
【0031】
図3に示されているように、本実施形態で使用される伝送データ列は、伝送路上ではスタートパルスとなるスタートビットの入る先頭領域A1、当該データ列がデータ収集のためのものであるか端末機の制御のためのものであるかを示す情報が入るモード領域A2、端末機の識別情報であるアドレスが入るアドレス領域A3、端末機に対する指令の内容を示す情報が入るコマンド領域A4、返送データが入る返送データ領域A5、伝送路上ではストップパルスとなるストップビットの入る終端領域A6から構成されている。
【0032】
上記アドレス領域A3には、アドレスとエラーチェック用のパリティビットとが格納される。コマンド領域A4には、コマンドコードと、パリティビットと、命令終了を示す命令終了ビットが格納される。返送データ領域A5には、返送スタートビット(サブスタートビット)と、端末機から受信機へ返送するデータと、パリティビットと、返送ストップビット(サブストップビット)が格納される。
【0033】
受信機10から出力される返送データ領域A5の波形は、図2(B)に示す“0”の繰り返しであり、この波形が、端末機が返送するデータに応じて図3や図4にハッチングや点線で示されているように変化され、その波形の変化を直接あるいは間接的な手法によって受信機が検出することで、端末機が出力したデータを認識するように構成されている。返送データ領域A5の先頭の返送スタートビットと末尾の返送ストップビットは、端末機により必ず“1”が出力されるように決められている。従って、受信機はこれらのビットを監視してそれが“1”でないときは伝送エラーなどとして処理することができる。
【0034】
なお、受信機10から端末機に対して指令(コマンド)を送るために使用される図3(C)のデータ列においては、返送データ領域A5を省略した構成としてもよい。そして、その場合にも、返送ストップビットは設けるようにしてもよい。図3(C)のデータ列においても返送データ領域A5を設けることにより、他のデータ列と構成が同じになることで、処理手順の共通化を図り、設計が容易になるという利点がある。図3(C)のデータ列において返送データ領域A5を省略した場合、受信機から端末機への送信はアドレッシングによるアクセスとみなすことができる。そして、その場合、モード領域A2の情報は、受信機10からの送信がポーリングかアドレッシングかを示す情報とみることもできる。
【0035】
図4(A)には受信機10が新機能の端末機から端末機の種別情報を収集するために使用されるデータ列、図4(B)には新機能の端末機から端末機の状態や検出量などの監視対象の情報を収集するために使用されるデータ列が示されている。受信機10が新機能の端末機に対して指令(コマンド)を送って制御するために使用されるデータ列は、図3(C)に示されている従来型の端末機に対するデータ列と同じであるので、図示および説明は省略する。
【0036】
図4(A)および(B)に示されているように、新機能の端末機に対して伝送されるデータ列は、スタートビットの入る先頭領域A1から返送データが入る返送データ領域A5までは、図3(A)および(B)に示されている従来型の端末機に対するデータ列と同じである。一方、終端領域A6に入る波形は、従来型の端末機に対するデータ列の終端領域A6に入る波形と異なる。具体的には、従来型の端末機に対するデータ列における終端領域A6の波形(ストップビット)は図2(A)の“1”の波形と同じであるが、新機能の端末機に対して伝送されるデータ列において領域A6に入る波形は、図2(A)とは異なる図2(B)の“0”の波形と同じにされている。
【0037】
受信機10は、新機能の端末機に対しては図2(B)の波形の入る領域A6に後に、拡張返送データ領域A7とストップビットの入る終端領域A8とを付加して伝送するようになっている。拡張返送データ領域A7は、従来型の端末機に対するデータ列における返送データ領域A5と類似しており、返送スタートビットと、端末機から受信機へ返送するデータと、パリティビットと、返送ストップビットが格納される。終端領域A8に入るストップビットの波形は、従来型の端末機に対するデータ列の終端領域A6に入るストップビットの波形(図2(A)の“1”)と同じ波形である。返送データ領域A5および拡張返送データ領域A7の先頭と末尾に返送スタートビットと返送ストップビットが付加されるため、監視装置としての受信機10は、返送データ領域および拡張返送データ領域内のデータの範囲および拡張ビットを含むデータ列に対応可能な端末機が応答していることを確実に検知することができる。
【0038】
種別情報収集コマンドを含むデータ列(図4(A))の拡張返送データ領域A7に格納される返送データとしては、例えば返送データ領域A5で種別として「中継器」を示すコードが格納されている場合に、「火災報知用中継器」と「防排煙用中継器」とを区別するコードなどである。同様に、返送データ領域A5で種別として「熱感知器」または「煙感知器」を示すコードが格納されている場合に、感知方式や機能の異なる感知器が複数ある場合にそれらを区別するコードを格納して返送することができる。
【0039】
新機能の端末機は、受信機10から伝送路20に出力されたデータ列を検出し、その領域A6に入っている波形が、図2(A)のような波形であるか図2(B)のような波形であるかを判別する機能を備えており、領域A6の波形が図2(B)のような波形であった場合には、領域A6に後に続く拡張返送データ領域A7の波形に対して返送データを載せる処理を実行する。つまり、領域A6に入っている図2(B)のような波形は、新機能の端末機に対してはデータの拡張信号(拡張ビット)として機能することとなる。
【0040】
一方、領域A6に入っている波形が、図2(A)のような波形であった場合は、新機能の端末機がその波形を検出した時点でデータ返送処理を終了する。なお、伝送路20に接続されている従来型の端末機は、領域A6に入っている波形が、図2(A)のような波形であるか図2(B)のような波形であるかを判別する機能を備えていないため、図4(A)および(B)に示されているようなデータ列が伝送されて来ても、図3(A)および(B)に示されているようなデータ列が伝送されてきた場合と同じ動作を行う。すなわち、領域A6および領域A7に対しては何ら応答しない。
【0041】
図5には、従来型の端末機におけるデータ伝送処理の手順が示されている。従来型の端末機は、伝送線上の信号を常時監視しており、信号が入ってくると、先ずスタートビット(スタートパルス)であるか否か判定する(ステップS1)。ここで、スタートビットでない(No)と判定すると何ら処理をせずに終了し、スタートビットである(Yes)と判定すると次のステップS2でモード領域A2の波形を見てモードが情報収集である否か判別する。
【0042】
ステップS2で、情報収集モードである(Yes)と判定すると、アドレス領域A3に入っているアドレスが自分に割り当てられているアドレスと一致しているか否か判定する(ステップS3)。ここで、アドレスと一致していない(No)と判定するとそのまま処理を終了し、アドレスと一致している(Yes)と判定すると、次のステップS4でコマンド領域A4の波形を見てコマンドが端末機の状態等のアナログ情報の収集を指令するコマンドである否か判定する。
【0043】
ステップS4で、情報収集コマンドである(Yes)と判定すると、返送するアナログデータを作成する処理(ステップS6)および作成した返送データを出力する処理(ステップS7)を行なって処理を終了し、ステップS1へ戻る。
【0044】
一方、上記ステップS4で、コマンド領域A4の波形から受信したデータ列がアナログ情報の収集を指令するものでない(No)と判定すると、ステップS10へ移行して種別情報の収集を指令するコマンドである否か判定する。ここで、種別情報収集コマンドである(Yes)と判定すると、返送データ(種別コード)を出力する処理(ステップS12)を行なって処理を終了し、ステップS1へ戻る。
【0045】
また、上記ステップS2で、モード領域A2の波形からモードが情報収集でない(No)と判定すると、ステップS15へ移行して、モードが端末制御であるか否かの判定をする。ここで、端末制御でない(No)と判定するとそのまま処理を終了し、端末制御である(Yes)と判定すると、アドレス領域A3に入っているアドレスが自分に割り当てられているアドレスと一致しているか否か判定する(ステップS16)。そして、自己のアドレスと一致していない(No)と判定するとそのまま処理を終了し、自己のアドレスと一致している(Yes)と判定すると、次のステップS17でコマンド領域A4の制御コマンドに応じた端末機内部の制御信号を生成して出力する。その後、受信した制御コマンドを返送データとして出力する処理(ステップS18)を行なって処理を終了し、ステップS1へ戻る。
【0046】
図6には、新機能の端末機におけるデータ伝送処理の手順が示されている。図6のフローチャートと図5のフローチャートとの違いは、図6のフローチャートでは、図5のフローチャートのステップS7の返送データの出力処理の後に、データ列に拡張信号(拡張パルス)があるか否かを判定する処理(ステップS8)および拡張信号があった場合にさらに返送データを付加して出力する処理(ステップS9)が設けられている点と、図5のフローチャートのステップS12の返送データの出力処理後に、データ列の返送データ領域A5のうしろに拡張信号があるか否かを判定する処理(ステップS13)および拡張信号があった場合にさらに返送データを付加して出力する処理(ステップS14)が設けられている点にある。それ以外は、図5のフローチャートの処理と同じであるので、重複した説明は省略する。
【0047】
上記のように、新機能の端末機は、データ列の返送データ領域A5のうしろに拡張信号があるか否かを判定する機能と拡張信号があった場合にさらに返送データを付加して出力する機能を備える一方、従来型の端末機はそのような機能を備えていないため、同一の伝送路20に、従来型の端末機と新機能の端末機とが混在して接続されている場合にも、いずれの端末機も正常にデータ伝送を実行することができる。
【0048】
また、従来型の端末機と新機能の端末機が、受信機10からのデータ伝送に対して上記のような処理を実行するため、受信機10は、種別情報収集コマンドに対する端末機からの応答に基づいて、受信機10内のテーブルに登録されているアドレスと端末機の種類を示す情報と伝送路20を介して端末機から収集した種別情報とが一致していない場合には、接続に誤りがあることを検知することができる。
【0049】
具体的には、例えば新機能の端末機が接続されるべき箇所(アドレス)に誤って従来型の端末機が接続されたままの場合、受信機10が拡張信号を付加したデータ列を出力しても従来型の端末機は拡張データ領域に対して何ら応答しないので、受信機10は新機能の端末機が接続されていないことを検知することができる。また、端末機が拡張データ領域に対して応答して来た場合であっても、返送されてきた種別情報が自己の保持するテーブル内のデータと異なっている場合には、接続間違いを検知することができる。
【0050】
なお、新機能の端末機における図5および図6のフローチャートに従った処理は、適宜必要に応じて切り換えるようにしてもよい。すなわち、通常の監視時には、図3に示されている非拡張型のデータ列を伝送することでデータ収集および制御を行うようにしてもよく、本実施形態を適用したシステムではそのような対応が可能となる。
【0051】
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。例えば、前記実施形態では、感知器として熱感知器と煙感知器を使用したシステムを示したが、火災感知器としてはこれらのものに限定されず、イオン式火災感知器や熱と煙を同時に検知できる複合型の火災感知器、焦電素子を使用した火災感知器など種々の感知器を伝送路に接続するように構成してもよい。また、伝送路により伝送されるデータ列の領域の並び方は、図3や図4のようなものに限定されず、例えばアドレス格納領域とモード領域とは逆の順序であっても良い。
【0052】
さらに、前記実施形態では、従来型の端末機と新機能の端末機が混在するシステムに適用する場合に有効であると説明したが、従来型の機器は低機能の機器、新機能の機器は高機能の機器と言い換えることができる。つまり、新築のビル等に監視システムを敷設する際に、低機能の機器と高機能の機器とを混在させてシステムを構築することができ、それによってシステム全体のコストを抑制することができる。また、新型の高機能の機器を旧型の低機能の機器として働かせることが出来るので、感知器のメーカーにとっても旧型の低機能の機器を製品として提供し続けることができ、旧型から新型の機器へ移行する際の在庫を減らせるという利点がある。
【0053】
また、前記実施形態では、伝送するデータ列において返送データ領域A5を拡張する場合を例にとって説明したが、アドレス領域A3を拡張したい場合にも同様な手法を適用することで、拡張を行うことが可能である。これにより、1本の伝送路により多く(例えば256個以上)の端末機器を接続した監視システムを構築することができるようになる。
【0054】
さらに、以上の説明では主として本発明者によってなされた発明を火災監視システムに適用した場合を例にとって説明したが、本発明は、感知器としてさらにCOなどの有害ガスのガス漏れ検知器を備えた防災システムや移動体感知器などを備えた防犯システムその他の監視システムはもちろん、制御装置と比較的離れた位置に設置されている複数の端末機器との間でデータ伝送をする場合に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0055】
10 受信機(監視装置,制御装置)
20 伝送路
30 中継器
30A 従来型の中継器
30B 新機能の中継器
41 熱感知器
41A 従来型の熱感知器
41B 新機能の熱感知器
42 煙感知器
42A 従来型の煙感知器
42B 新機能の煙感知器
43 排煙ダンパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御装置と複数の端末機とを伝送路で接続し、所定のデータ列からなるパルス信号を伝送するデータ伝送方式であって、
前記データ列は、スタートビットとストップビットとの間に、データ収集のためのデータ列であるか端末制御のためのデータ列であるかを示す情報が入るモード領域と、端末機を指定するアドレス格納領域と、端末に対する指令の内容を示す情報が入るコマンド領域と、返送データが入る返送データ領域と、が配置された構造を有し、
前記ストップビットを該ビットを表わす波形とは異なる波形に対応された拡張ビットに置き換え可能にし、前記ストップビットを前記拡張ビットに置き換えた場合には、該拡張ビットの後に返送データが入る拡張返送データ領域を付加したデータ列として伝送することを特徴とするデータ伝送方式。
【請求項2】
前記返送データ領域および拡張返送データ領域は、端末機が返送するデータに応じて波形が変化されることを特徴とする請求項1に記載のデータ伝送方式。
【請求項3】
前記返送データ領域および拡張返送データ領域には、これらの領域内のデータの前後に、端末機によってサブスタートビットとサブストップビットが付加される領域が含まれていることを特徴とする請求項1または2に記載のデータ伝送方式。
【請求項4】
前記モード領域に格納される情報は、時間長が同じで波形が異なる第1のパルス波形または第2のパルス波形で表され、前記ストップビットは前記第1のパルス波形と同一波形で表され、前記拡張ビットは前記第2のパルス波形と同一波形で表されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のデータ伝送方式。
【請求項5】
監視装置と該監視装置から延設された伝送路に接続された複数の端末機とを備え、前記伝送路を介して前記監視装置と複数の端末機との間で、所定のデータ列からなるパルス信号によりデータ伝送が可能に構成された監視システムであって、
前記データ列は、スタートビットとストップビットとの間に、データ収集のためのデータ列であるか端末制御のためのデータ列であるかを示す情報が入るモード領域と、端末機を指定するアドレス格納領域と、端末に対する指令の内容を示す情報が入るコマンド領域と、返送データが入る返送データ領域と、が配置された構造を有し、
前記ストップビットは該ビットを表わす波形とは異なる波形に対応された拡張ビットに置き換え可能であり、
前記監視装置は、前記ストップビットを前記拡張ビットに置き換えた場合には、該拡張ビットの後に返送データが入る拡張返送データ領域を付加したデータ列として伝送することを特徴とする監視システム。
【請求項6】
前記監視装置から伝送路を介して伝送される前記データ列の前記返送データ領域および拡張返送データ領域は、前記端末機が返送するデータに応じて波形が変化されることを特徴とする請求項5に記載の監視システム。
【請求項7】
前記返送データ領域および拡張返送データ領域には、これらの領域内のデータの前後に、端末機によってサブスタートビットとサブストップビットが付加される領域が含まれていることを特徴とする請求項5または6に記載の監視システム。
【請求項8】
前記モード領域に格納される情報は、時間長が同じで波形が異なる第1のパルス波形または第2のパルス波形で表され、前記ストップビットは前記第1のパルス波形と同一波形で表され、前記拡張ビットは前記第2のパルス波形と同一波形で表されることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−135407(P2011−135407A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293905(P2009−293905)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000111074)ニッタン株式会社 (93)
【Fターム(参考)】