説明

データ伝送装置および方法

【課題】大量データの伝送を既存のネットワークを最大限に有効利用してい効率良く行うことが可能なデータ伝送装置および方法を提供する。
【解決手段】特徴量モニタ部は複写機の駆動回路の特徴量のモニタを行い、モニタしている特徴量と特徴量の正常データとを比較する。そして、特徴量モニタ部がモニタしている特徴量と特徴量の正常データとの差異を認識した場合、異常部分抽出部は特徴量モニタ部が認識した差異を異常部分のデータとして抽出し、抽出した異常部分のデータをデータ伝送部に渡し、データ伝送部は異常部分のデータを受け取ると、受け取った異常部分のデータをPCに伝送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ伝送装置および方法に関し、特に、装置を監視するためのデータを管理装置に伝送するデータ伝送装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、データの送受信について、そのデータ量が大きい場合には、一般的に圧縮を施して送受信を行う。ただし、近年のデータは高速送信が必要、或いはデータ量が大きいといったことが往々にしてあり、圧縮にも限界がある。また、データの種類による圧縮の向き/不向きも存在する。
【0003】
近年では、遠隔地に設置されている複数の装置の故障状況等をネットワークを利用して1ヶ所に設けた管理装置によって把握するシステムの構築が試みられているが、このシステムにおいて伝送される故障状況等を示すデータ量は数十MB、数百MB、時には更に大きくなり膨大な容量となる場合がある。そこで、このような膨大な容量のデータを伝送するために様々な技術が提案されている。
【0004】
例えば、画像形成装置と管理装置間のデータ転送手段として電子メールを用い、送信側は電子メールの容量制限回避のために電子メールを分割送信し、受信側は分割された電子メールを合成する遠隔管理システム、画像形成システム、画像形成装置、管理装置、遠隔管理方法、及び情報記録媒体がある(例えば、特許文献1および特許文献2参照。)。
【0005】
また、例えば、複写機の動作状態に応じて情報ダウンロードまたはアップロードを行う画像形成装置管理システムがある(例えば、特許文献3参照。)。
【特許文献1】特開2002−259070号公報
【特許文献2】特開2002−259312号公報
【特許文献3】特開2003−264648号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1および特許文献2に記載の技術では、接続されるいくつものネットワークに負担がかかり、連続送信時には何度も同じデータを送信するという問題があり、特許文献2に記載の技術では、ネットワーク自体がビジー状態だと有効性に乏しいという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、大量データの伝送を既存のネットワークを最大限に有効利用してい効率良く行うことが可能なデータ伝送装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、ネットワークを介して接続する機器に対して特定データを伝送するデータ伝送装置において、前記特定データに関連するデータを前記機器に伝送する際に、該特定データと該データとの差異を該機器に伝送するデータ伝送手段を具備することを特徴とする。
【0009】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記特定データを予め格納する格納手段と、前記格納手段に格納された特定データと、前記データとを比較する比較手段と、前記比較手段で認識した前記特定データと前記データとの差異を抽出する差異抽出手段とを更に具備し、前記データ伝送手段は、前記差異抽出手段が抽出した差異を前記機器に転送することを特徴とする。
【0010】
また、請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記差異のテンプレートを予め用意し、前記データ伝送手段は、前記差異抽出手段で抽出した差異に最も類似する前記差異のテンプレートの情報を前記機器に伝送することを特徴とする。
【0011】
また、請求項4の発明は、請求項2の発明において、前記特定データは波形を示し、前記格納手段は、前記特定データを予めテンプレート波形として格納し、前記比較手段は、前記テンプレート波形と前記データが示す波形とを比較し、前記差異抽出手段は、前記比較手段で認識した前記テンプレート波形と前記データが示す波形との差異波形を抽出し、前記データ伝送手段は、前記差異抽出手段で抽出した差異波形と、前記比較手段で比較したテンプレート波形の情報とを前記機器に伝送することを特徴とする。
【0012】
また、請求項5の発明は、請求項4の発明において、前記データ伝送手段は、前記差異波形の外装を伝送することを特徴とする。
【0013】
また、請求項6の発明は、請求項4の発明において、前記データ伝送手段は、前記差異波形を分割して伝送することを特徴とする。
【0014】
また、請求項7の発明は、ネットワークを介して接続する機器に対して特定データを伝送するデータ伝送方法において、前記特定データに関連するデータを前記機器に伝送する際に、該特定データと該データとの差異を該機器に伝送することを特徴とする。
【0015】
また、請求項8の発明は、請求項7の発明において、予め格納した前記特定データと、前記データとを比較し、該比較により認識した前記特定データと前記データとの差異を抽出し、該抽出した差異を前記機器に転送することを特徴とする。
【0016】
また、請求項9の発明は、請求項8の発明において、前記差異のテンプレートを予め用意し、前記差異に最も類似する前記差異のテンプレートの情報を前記機器に伝送することを特徴とする。
【0017】
また、請求項10の発明は、請求項8の発明において、前記特定データは波形を示し、予め格納した前記特定データに対応するテンプレート波形と、前記データが示す波形とを比較し、該比較により認識した前記テンプレート波形と前記データが示す波形との差異波形を抽出し、該抽出した差異波形と、前記比較手段で比較したテンプレート波形の情報とを前記機器に伝送することを特徴とする。
【0018】
また、請求項11の発明は、請求項10の発明において、前記差異波形の外装を伝送することを特徴とする。
【0019】
また、請求項12の発明は、請求項10の発明において、前記差異波形を分割して伝送することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、大量データの伝送を既存のネットワークを最大限に有効利用して効率良く行うことが可能になるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係るデータ伝送装置及び方法の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明を適用した異常抽出装置1を内蔵する複写機2の管理システム3の一例を示す図である。
【0023】
図1に示すように、管理システム3は、ネットワーク4に接続された異常抽出装置1を内蔵した複数の複写機2、複数の対応する複写機2の動作状態を監視しているPC5から構成されている。
【0024】
なお、図1に示す管理システム3においては、複数のPC5が対応する複写機2の動作状態を監視する構成であるが、1つの管理装置によりネットワーク4上の全ての複写機2の動作状態を監視する構成でも適用可能である。また、管理システム3を構成するのは複写機2に限定する必要はなく、他のOA機器、家電等を監視することも可能である。
【0025】
図2は、異常抽出装置1の機能的な構成の一例を示す図である。
【0026】
図2に示すように、異常抽出装置1は、特徴量モニタ部6、正常データ格納部7、異常部分抽出部8、データ転送部9を具備して構成される。
【0027】
特徴量モニタ部6は、複写機2の構成部の駆動回路10の電流値、電位等の特徴量を高速サンプリングしてモニタを行うとともに、正常データ格納部7に格納されている特徴量の正常データとモニタしている特徴量とを比較する処理を行う。
【0028】
異常部分抽出部8は、特徴量モニタ部6で特徴量の正常データとモニタしている特徴量との差異を認識した場合、その差異を異常部分のデータとして抽出する処理を行う。
【0029】
データ伝送部9は、異常部分抽出部8が抽出した異常部分をPC5に伝送する処理を行う。
【0030】
次に、異常抽出装置1の機能的な動作について図2を参照して説明する。
【0031】
特徴量モニタ部6は複写機2の駆動回路10の特徴量のモニタを行い、モニタしている特徴量と特徴量の正常データとを比較する。
【0032】
そして、特徴量モニタ部6がモニタしている特徴量と特徴量の正常データとの差異を認識した場合、異常部分抽出部8は特徴量モニタ部6が認識した差異を異常部分のデータとして抽出し、抽出した異常部分のデータをデータ伝送部9に渡し、データ伝送部9は異常部分のデータを受け取ると、受け取った異常部分のデータをPC5に伝送する。
【0033】
次に、異常抽出装置が行う特徴量の異常部分の判別および伝送の処理手順について図3に示すフローチャートを参照して説明する。
【0034】
複写機の駆動回路の特徴量をモニタし(ステップS301)、モニタしている特徴量の異常を判別した場合(ステップS302でYES)、判別した異常部分のデータを抽出し(ステップS303)、抽出した異常部分のデータをPCに伝送し(ステップS304)、ステップS301に戻る。
【0035】
次に、異常部分抽出部が抽出する特徴量の異常部分のデータについて具体例を参照して説明する。
【0036】
図4は、一定時間における駆動回路の特徴量のひとつをグラフ化した一例を示す図である。
【0037】
図4(a)は、一定時間における特徴量の正常データをグラフ化した一例であり、この正常データのグラフは正常データ格納部に格納されている。ここで、異常抽出装置はモニタしている特徴量のグラフが図4(a)に示す正常データのグラフと一致している間は、PCに何もデータを伝送しない。
【0038】
図4(b)に示すように、時間t1から時間t3までの特徴量、および時間t5から時間t7までの特徴量は正常データと一致するものの、時間t3から時間t5までの特徴量(実線部分)は正常データ(点線部分)と異なる。異常抽出装置はこの特徴量の異なる部分を異常部分と認識し、この実線部分の波形のみを抽出し、抽出した波形を異常部分のデータとしてPCに伝送する。なお、波形を分割(例えば、時間範囲毎に)してPCに伝送する構成、波形の外装をイメージデータとしてPCに伝送する構成も適用可能である。
【0039】
従って、PCに伝送されるデータ量は、逐次全データを伝送する場合と比較して各段に削減されることになる。
【0040】
図5は、正常データ格納部に格納されている複数の正常データをグラフ化した一例を示す図である。
【0041】
図5(a)は、マシン状態が「Mode A」の場合における時間変動に対する電流値の正常データのグラフであり、図5(b)は、マシン状態が「Mode B」の場合における時間変動に対する電流値の正常データのグラフであり、図5(c)は、マシン状態が「Mode C」の場合における時間変動に対する電流値の正常データのグラフであり、図5(d)は、マシン状態が「Mode D」の場合における時間変動に対する電流値の正常データのグラフである。
【0042】
ここで、異常抽出装置は異なるマシン状態の場合における正常データを有している以上、マシン状態を常時把握しており、モニタしている電流値の変動に異常が生じた際には、現状のマシン状態における異常部分の波形を抽出し、抽出した波形を異常部分のデータとしてPCに伝送する。また、異常抽出装置はモニタしている電流値のグラフが正常データのグラフと一致している間は、PCに何もデータを伝送しないか、若しくはマシン状態の情報を伝送しても良い。
【0043】
図6(a)は、マシン状態が「Mode A」の場合における時間変動に対する電流値の正常データのグラフであり、図6(b)に示すように、時間t2から時間t4までの電流値は図6(a)に示す正常データと異なる。異常抽出装置はこの特徴量の異なる部分を異常部分と認識し、時間t2から時間t4までの波形のみを抽出し、抽出した波形を異常部分のデータとしてPCに伝送するとともに「Mode A」の正常データもPCに伝送する。
【0044】
図6(c)は、マシン状態が「Mode B」の場合における時間変動に対する電流値の正常データのグラフであり、図6(d)に示すように、時間t2から時間t3までの電流値は図6(c)に示す正常データと異なる。異常抽出装置はこの特徴量の異なる部分を異常部分と認識し、時間t2から時間t3までの波形のみを抽出し、抽出した波形を異常部分のデータとしてPCに伝送するとともに「Mode B」の正常データもPCに伝送する。
【0045】
なお、波形を分割(例えば、時間範囲毎に)してPCに伝送する構成、波形の外装および正常データの波形の外装をイメージデータとしてPCに伝送する構成、異常部分のデータをいくつかのテンプレートとして保持し、異常と認識した波形形状に最も近いテンプレートの番号等の情報をPCに伝送する構成も適用可能である。
【0046】
従って、PCに伝送されるデータ量は、逐次全データを伝送する場合と比較して各段に削減されることになる。
【0047】
なお、どの実施例でもそうであるが、伝送するデータの即時必要性が高い場合を事前に検討する工程を設けている。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明を適用した異常抽出装置1を内蔵する複写機2の管理システム3の一例を示す図である。
【図2】異常抽出装置1の機能的な構成の一例を示す図である。
【図3】異常抽出装置が行う特徴量の異常部分の判別および伝送の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】一定時間における駆動回路の特徴量のひとつをグラフ化した一例を示す図である。
【図5】正常データ格納部に格納されている複数の正常データをグラフ化した一例を示す図である。
【図6】時間変動に対する電流値のグラフの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
1 異常抽出装置
2 複写機
3 管理システム
4 ネットワーク
5 PC
6 特徴量モニタ部
7 正常データ格納部
8 異常部分抽出部
9 データ伝送部
10 駆動回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークを介して接続する機器に対して特定データを伝送するデータ伝送装置において、
前記特定データに関連するデータを前記機器に伝送する際に、該特定データと該データとの差異を該機器に伝送するデータ伝送手段
を具備することを特徴とするデータ伝送装置。
【請求項2】
前記特定データを予め格納する格納手段と、
前記格納手段に格納された特定データと、前記データとを比較する比較手段と、
前記比較手段で認識した前記特定データと前記データとの差異を抽出する差異抽出手段と
を更に具備し、
前記データ伝送手段は、
前記差異抽出手段が抽出した差異を前記機器に転送する
ことを特徴とする請求項1記載のデータ転送装置。
【請求項3】
前記差異のテンプレートを予め用意し、
前記データ伝送手段は、
前記差異抽出手段で抽出した差異に最も類似する前記差異のテンプレートの情報を前記機器に伝送する
ことを特徴とする請求項2記載のデータ転送装置。
【請求項4】
前記特定データは波形を示し、
前記格納手段は、
前記特定データを予めテンプレート波形として格納し、
前記比較手段は、
前記テンプレート波形と前記データが示す波形とを比較し、
前記差異抽出手段は、
前記比較手段で認識した前記テンプレート波形と前記データが示す波形との差異波形を抽出し、
前記データ伝送手段は、
前記差異抽出手段で抽出した差異波形と、前記比較手段で比較したテンプレート波形の情報とを前記機器に伝送する
ことを特徴とする請求項2記載のデータ転送装置。
【請求項5】
前記データ伝送手段は、
前記差異波形の外装を伝送する
ことを特徴とする請求項4記載のデータ転送装置。
【請求項6】
前記データ伝送手段は、
前記差異波形を分割して伝送する
ことを特徴とする請求項4記載のデータ転送装置。
【請求項7】
ネットワークを介して接続する機器に対して特定データを伝送するデータ伝送方法において、
前記特定データに関連するデータを前記機器に伝送する際に、該特定データと該データとの差異を該機器に伝送する
ことを特徴とするデータ伝送方法。
【請求項8】
予め格納した前記特定データと、前記データとを比較し、
該比較により認識した前記特定データと前記データとの差異を抽出し、
該抽出した差異を前記機器に転送する
ことを特徴とする請求項7記載のデータ転送方法。
【請求項9】
前記差異のテンプレートを予め用意し、
前記差異に最も類似する前記差異のテンプレートの情報を前記機器に伝送する
ことを特徴とする請求項8記載のデータ転送方法。
【請求項10】
前記特定データは波形を示し、
予め格納した前記特定データに対応するテンプレート波形と、前記データが示す波形とを比較し、
該比較により認識した前記テンプレート波形と前記データが示す波形との差異波形を抽出し、
該抽出した差異波形と、前記比較手段で比較したテンプレート波形の情報とを前記機器に伝送する
ことを特徴とする請求項8記載のデータ転送方法。
【請求項11】
前記差異波形の外装を伝送する
ことを特徴とする請求項10記載のデータ転送方法。
【請求項12】
前記差異波形を分割して伝送する
ことを特徴とする請求項10記載のデータ転送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−94173(P2006−94173A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−277540(P2004−277540)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】