説明

データ伝送装置

【課題】システムLSI1から外部メモリ2へのデータ伝送時に、システムLSI1に設けた波形整形回路4により伝送データや制御信号の変化部の波形を急峻に整形し、制御信号の振幅変動やジッター等の非対称歪の発生を抑えたデータ伝送装置を提供する。
【解決手段】システムLSI1と、伝送路6を通してLSI1に接続された外部メモリ2を備え、LSI1のデータ処理時に外部メモリ2との間でデータ伝送を行なうデータ伝送装置であって、LSI1に配置した波形整形回路4により、LSI1からデジタル信号が出力される際に信号波形の歪を監視し、信号波形に歪が発生する可能性があれば、伝送路6に供給される信号電流値を調整することによりその信号波形に発生する歪を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ伝送装置に係わり、特に、基板上でシステムLSIのデータ処理時に外部メモリとの間で高速、大容量のデジタルデータ伝送が行われる際に、システムLSI内に配置した波形整形回路によって伝送路に流れる電流を調整し、伝送路に出力されるデジタル信号に波形歪が発生するのを防ぐようにしたデータ伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
システムLSIは、通常内部にプロセッサが配置されており、データ処理時にはプロセッサの制御によって外部メモリとの間でデータの書き込みや、データの読み出しを行っている。このとき、処理データが映像信号等の高速、大容量のデータである場合、システムLSIと外部メモリとの間のデータ伝送も高速、大容量となり、高速、大容量のデータ伝送を行うことが可能な伝送システムが必要になる。
【0003】
図7(a)乃至(c)は、かかる高速、大容量のデータ伝送を行うことが可能な伝送システムの一例を示す構成図であって、3つの伝送系からなっている。
【0004】
(a)は、その第1伝送系を示すもので、伝送路73(1)、73(2)で結合されたシステムLSI71(1)及び2つのメモリ72(1)、72(2)からなり、(b)は、その第2伝送系を示すもので、伝送路73(3)、73(4)で結合されたシステムLSI71(2)及び2つのメモリ72(3)、72(4)からなり、(c)は、その第3伝送系を示すもので、伝送路73(5)、73(6)で結合されたシステムLSI71(3)及び2つのメモリ72(5)、72(6)からなっている。
【0005】
この場合、第1伝送系の伝送路73(1)を伝送されるデータは、8ビットデータで、クロック周波数100MHzであるのに対し、第2伝送系の伝送路73(2)を伝送されるデータは、8ビットデータであるものの、クロック周波数200MHzで高速伝送ができるものであり、また、第3伝送系の伝送路73(3)を伝送されるデータは、クロック周波数100MHzであるものの、16ビットデータでデータバス幅が拡大されている。そして、第1伝送系に対して並列状態で第2伝送系、第3伝送系が配置されているので、このような伝送システムを用いることにより、システムLSIと外部メモリとの間のデータ伝送を高速、大容量で行うことができる。
【0006】
ところで、このような伝送システムを用いてデータ伝送が行われた場合、伝送される数多くのデータ及び制御信号がそれぞれハイレベルとローレベルとの間を高速で切替えられることになり、システムLSIの内部ではその切替えの影響を受け、データや制御信号のハイレベルとローレベルとが基準値に対して揺さぶられる状態になることがある。
【0007】
図8(a)乃至(e)は、そのような揺さぶられる状態が生じる理由を説明するための波形図であって、(a)は本来の正常なクロック信号、(b)は外部メモリに供給されるデジタル制御信号で、例えばアドレス信号、制御信号、デジタルデータ等、(c)は電圧レベルが変動した電源電圧、(d)は基準電位レベル変動した接地電圧、(e)はハイ及びローレベルが一時的に変動したクロック信号である。
【0008】
システムLSIの内部では、外部メモリに供給されるデジタル制御信号が形成されたとき、デジタル制御信号の形成に伴って、図8(c)、(d)、(e)に示すように、電源電圧、接地電圧、クロック信号の各レベルがそれぞれ変動することを表している。図8に示す例では、デジタル制御信号が1つだけ形成されているが、現実には外部メモリにそれぞれ供給されるアドレス信号、制御信号、デジタルデータ等多くのデジタル制御信号が同じまたは近いタイミングでオン/オフするため、そのオン/オフの瞬間、電源電圧は、規定電圧値から若干低下し、その後に規定電圧値から過渡的に若干上昇する跳ね返り電圧が発生する。
【0009】
また、システムLSIにおいては、電源端子、接地端子を含む各種の端子が外部回路との接続のために導出され、それらの端子とLSIチップとの間は、図6に示すようなインダクタンスLaを含んだ等価回路により構成されており、それによりシステムLSIは、内部の電源ライン及び接地ラインに流れる電流の強弱によって電源電圧レベルや接地電位レベルが変動する。このように、クロック系の電源電圧レベルと接地電位レベル間の電位差は、本来一定であるべきものが前述のように変動するため、形成されたクロック信号の振幅も断続的に変化し、この変動が急激な場合に上下非対称な信号波形になるため、ジッターを発生させる原因になっている。
【0010】
図9(a)、(b)は、デジタル制御信号、例えばCAS信号をオン/オフ変化させためにクロック信号波形が変化した状態を表した信号波形図であって、(a)は上段に示すCAS信号がオン/オフした時に下段に示すクロック信号の一部の振幅が小さくなっている場合であり、(b)はクロック信号の一部の振幅が小さくなったことによりそのヂューティも変化している場合である。クロック信号にこのような一部の振幅の低下や一部のヂューティの変化が発生すると、データを正しく読み出すことができないという問題が生じる。
【0011】
このような問題に対して、この種のシステムにおいては、伝送データや制御信号の立上りタイミング、立下りタイミングをずらすことにより、一度に多くの電流が流れて電源電圧降下が発生するのを防いだり、システムLSIパッケージにおける電源層、接地層を強化することによりそれらの層でレベル変動が生じるのを抑えたり、LSI端子とLSIチップ間に形成される等価インダクタンスを見掛け上小さくするため、多くのLSI端子を電源端子、接地端子として使用することにより、悪影響の発生を抑える防御手段が採用されることがある。
【0012】
また、これらの防御手段を備える伝送システムとは別に、2つのLSI間に高周波データを高速伝送する際に、伝送路の寄生インダクタンスや寄生容量によってデータ波形にリンギングが発生するのを抑え、高い信頼性をもったデータ伝送を行なうことが可能なパルス伝送手段が特開平07−327054号によって提案されている。
【0013】
この特開平07−327054号によるパルス伝送手段は、2つのLSI間に高周波データを高速伝送する場合、伝送データとして、ローレベルからハイレベルに変化し、そのハイレベルが一定時間持続した後にローレベルに変化する矩形波と、その矩形波のハイレベル持続時間が若干短くなるように変形した変形矩形波とを重ね合わせて形成した階段状矩形波を用いているもので、その階段状矩形波をLSI間に伝送させることにより、矩形波のリンギングによる振動と変形矩形波のリンギングによる振動とが打ち消し合い、高い信頼性を有するパルス伝送が行われるものである。
【特許文献1】特開平07−327054号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、防御手段を備える伝送システムは、伝送データや制御信号の使用数が数10にも及んでおり、かつそれらのデータや制御信号が高速伝送されるものであるため、それぞれのデータや制御信号の立上りタイミング、立下りタイミングを相互にずらすことには自ずと限界があった。また、この種の伝送システムに使用されるシステムLSIは大規模なものであるため、1.2V、2.5V、3.3Vなどの複数の電源層とそれに対応した複数のグランド層が設けられており、それらの電源層及びグランド層を強化することにも自ずと限界があった。さらに、使用されるシステムLSIが大規模なものであっても、多くの場合、システムLSIから導出される端子数は限られており、それらの端子を電源端子やグランド端子にこれまで以上に振り分けて利用することは難しくなっている。
【0015】
一方、特開平07−327054号で提案されたパルス伝送手段は、リンギングの発生を抑えることができても、LSI内の電源変動によって発生するデジタル信号歪、特にクロック信号に発生する非対称歪について改善することはできないものである。
【0016】
本発明は、このような状況を鑑みてなされたもので、その目的は、システムLSIから伝送路を通して外部メモリにデータ伝送させる際、システムLSI内に波形整形回路を設けて伝送データや制御信号の変化部の波形を急峻になるように整形するとともに、電源電圧や接地レベルの変動に伴う制御信号の振幅変動やジッター等の非対称歪の発生を抑えられるデータ伝送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記目的を達成するために、本発明によるデータ伝送装置は、システムLSIと、システムLSIに伝送路を通して接続された外部メモリとを備え、システムLSIにおけるデータの処理時に伝送路を通して外部メモリとの間でデータ伝送が行われるものであって、システムLSIに波形整形回路を配置し、波形整形回路は、システムLSIから伝送路にデジタル信号が出力される際にその信号波形に発生する歪を監視し、その監視によって信号波形に歪が発生する可能性がある場合、伝送路に供給される信号電流値を調整することによって当該信号波形に発生する歪を除去することを特徴としている。
【0018】
この場合、前記データ伝送装置において、システムLSIから伝送路を通して外部メモリに供給されるデジタル信号は、デジタルデータ及びクロック信号等を含んだデジタル制御信号であることを特徴としている。
【0019】
また、前記データ伝送装置において、波形整形回路は、システムLSIから伝送路にデジタルデータが出力されるとき、電源電圧の変動を監視し、その監視によりデジタルデータ波形に歪が発生する可能性がある場合、伝送路に供給される信号電流値を調整することによってデジタルデータ波形に発生する歪を除去することを特徴としている。
【0020】
さらに、前記データ伝送装置において、波形整形回路は、システムLSIから伝送路にクロック信号が出力されるとき、電源電圧の変動を監視し、その監視によりクロック信号の振幅変動やジッターが発生する可能性がある場合、電源電圧の変動量を調整することによってクロック信号の振幅変動やジッターを除去することを特徴としている。
【0021】
また、前記データ伝送装置において、波形整形回路は、入力されたデジタル信号を増幅して伝送路に供給する駆動用トランジスタと、駆動用トランジスタに電源電圧を供給する電流調整用トランジスタと、電流調整用トランジスタの制御電極に電流調整電圧を供給する調整電圧発生回路とを有することを特徴としている。
【0022】
さらに、前記波形整形回路における調整電圧発生回路は、伝送路に出力されるデジタル信号波形の立上り及び立下りの鈍りを表す第1電圧を形成する第1回路と、伝送路に出力されるデジタル信号波形に跳ね返りが生じたとき及び電源電圧が変動したときに第2電圧を形成する第2回路と、第1電圧と第2電圧とを加減算及び積分して電流調整電圧を形成する第3回路とからなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、システムLSIに波形整形回路を設け、その波形整形回路によってシステムLSIと外部メモリとの間の伝送路に供給されるデジタルデータ及びデジタル制御信号が最適な状態になるように整形してその波形変化を改善させ、歪のないデータや制御信号を高速、大容量で伝送させることを可能にし、電源電圧、接地レベルの変動に伴うデジタル制御信号、特にクロック信号の振幅変動やジッター等の非対称歪の発生を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0025】
図1は、本発明のデータ伝送装置の一実施形態であって、その要部構成を示すブロック図である。
【0026】
図1に示すように、このデータ伝送装置は、システムLSI1と、外部メモリ2と、システムLSI1と外部メモリ2との間を結合する伝送路6(1)、6(2)とからなっている。そして、システムLSI1は、第1バッファ回路3(1)と、第2バッファ回路3(2)と、第3バッファ回路3(3)と、第1波形整形回路4(1)と、第2波形整形回路4(2)と、第1送受信切替スイッチ5とを含んでいる。この場合、前記各構成要素の中で、第1バッファ回路3(1)、第2バッファ回路3(2)、第1波形整形回路4(1)、送受信切替スイッチ5は、デジタルデータの送受信系を構成し、第3バッファ回路3(3)、第2波形整形回路4(2)は、制御データ、アドレス信号、クロック信号等のデジタル制御信号の送信系を構成しており、デジタルデータの送受信系を構成する各構成要素、及び、制御信号、アドレス信号、クロック信号等の送信系を構成する各構成要素は、それぞれ図1に図示されるように相互接続されている。
【0027】
また、外部メモリ2は、第2送受信切替スイッチ7と、第4バッファ回路8(1)と、第5バッファ回路8(2)と、第6バッファ回路8(3)とを含んでいる。これらの構成要素の中で、第2送受信切替スイッチ7と、第4バッファ回路8(1)と、第5バッファ回路8(2)は、デジタルデータの送受信系を構成し、第6バッファ回路8(3)は、制御データ、アドレス信号、クロック信号等の受信系を構成しており、デジタルデータの送受信系を構成する各構成要素、及び、制御データ、アドレス信号、クロック信号等の受信系を構成する構成要素は、それぞれ図1に図示されるように相互接続されている。
【0028】
さらに、伝送路6(1)、6(2)は、システムLSIパッケージに形成されるもので、伝送路6(1)については、その一端がシステムLSI1のデジタルデータ入出力端(記号なし)に接続され、その他端が外部メモリ2のデジタルデータ入出力端(記号なし)に接続されている。また、伝送路6(2)については、その一端がシステムLSI1の各種デジタル信号出力端(記号なし)に接続され、その他端が外部メモリ2の各種デジタル信号入力端(記号なし)に接続される。
【0029】
前記構成を有するデータ伝送装置は、次のように動作する。
【0030】
システムLSI1は、内部でデジタルデータの処理を行うために、処理中のデジタルデータを伝送路6(1)を通して外部メモリ2との間で送受信させ、当該データの外部メモリ2への書き込みや、当該データの外部メモリ2からの読み出しを行っている。
【0031】
システムLSI1が外部メモリ2に処理中のデジタルデータの書き込みを行う場合は、当該データを第1バッファ回路3(1)から第1波形整形回路4(1)に入力し、後述するように第1波形整形回路4(1)において当該データの波形が所定の形状になるように整形した後、第1送受信切替スイッチ5に供給する。このとき第1送受信切替スイッチ5にはその制御ラインを通してライトイネーブル信号(WE)が供給され、それにより第1送受信切替スイッチ5は接点が送信側に切替られ、第1送受信切替スイッチ5に供給された当該データがプリント基板等により構成されている伝送路6(1)を通して外部メモリ2に伝送される。
【0032】
また、システムLSI1で発生するデジタルデータ以外のデジタル制御信号、例えば、外部メモリ2の制御信号であるアドレス信号、クロック信号等を外部メモリ2に伝送する場合は、当該制御信号を第3バッファ回路3(3)から第2波形整形回路4(2)に入力し、第2波形整形回路4(2)において当該デジタル制御信号の波形が所定の形状になるように整形した後、同じくプリント基板等により構成されている伝送路6(2)を通して外部メモリ2に伝送され、外部メモリ2の制御が行われる。
【0033】
ここで、図2は、図1に図示された第1波形整形回路4(1)の内部構成の一例を示す一部ブロック化された回路図である。
【0034】
図2に示すように、第1波形整形回路4(1)は、駆動用トランジスタ(ドライバ用Tr)9と、電流調整用トランジスタ(電流調整用Tr)10とを備え、その他に、第1コンパレータ11と、第2コンパレータ12と、第3コンパレータ13と、第4コンパレータ14と、第1基準電源15と、第2基準電源16と、第3基準電源17と、第4基準電源18と、排他的論理和回路(EXOR)19と、加算回路20と、加減算回路21と、積分回路22とからなる調整電圧発生回路(記号なし)とを備えている。
【0035】
そして、ドライバ用Tr9は、ベースが前段にある第1バッファ回路3(1)の出力端子に、コレクタが出力ライン23を通して後段にある第1送受信切替スイッチ5の送信側端子に、エミッタが接地接続され、電流調整用Tr10は、ベースが調整電圧発生回路の出力に、コレクタが電源ライン24に、エミッタが出力ライン23に接続される。調整電圧発生回路において、第1コンパレータ11は、非反転入力(+)が出力ライン23に、反転入力(−)が第1基準電源15に、出力がEXOR19の一方の入力に接続される。第2コンパレータ12は、非反転入力(+)が出力ライン23に、反転入力(−)が第2基準電源16に、出力がEXOR19の他方の入力に接続される。第3コンパレータ11は、非反転入力(+)が出力ライン23に、反転入力(−)が第3基準電源17に、出力が加算回路20の一方の入力に接続される。第4コンパレータ12は、非反転入力(+)が第4基準電源18に、反転入力(−)が電源ライン24に、出力が加算回路20の他方の入力に接続される。加減算回路21は、加算端子(+)がEXOR19の出力に、減算端子(−)が加算回路20の出力に接続される。積分回路22は、入力が加減算回路21の出力に接続され、出力が電流調整用Tr10ベースに接続される。
【0036】
なお、システムLSI1には、複数の電源が存在し、これらの基準電圧15、16、17、18を作り出す電源電圧やコンパレータ11、12、13、14、EXOR19、加算回路20、加減算回路21、積分回路22の電源電圧は電源電圧Vcc24とは別系統の高い電圧であり、電源電圧Vcc24の電圧変動の影響は受けない。
【0037】
また、第2波形整形回路4(2)は、その内部構成が第1波形整形回路4(1)の内部構成と同じであって、ドライバ用Tr9のベースに第3バッファ回路3(3)の出力端子が接続され、出力ライン23が直接伝送路6(2)に接続される点において第1波形整形回路4(1)と接続関係が異なっているだけである。そして、第1波形整形回路4(1)と第2波形整形回路4(2)とは、その内部構成が同じであるので、以下に詳しく述べる第1波形整形回路4(1)の動作と第2波形整形回路4(2)の動作とは、ほぼ同じ動作になる。
【0038】
ここで、前記構成による第1波形整形回路4(1)の動作を、図3(a)乃至(d)及び図4(a)乃至(d)及び図5(a)乃至(c)の波形図を参照して説明する。
【0039】
前段にある第1バッファ回路3(1)から出力されたデジタルデータによりドライバTr9のベースが駆動されると、そのコレクタに増幅反転されたデジタルデータが出力され、そのデジタルデータの一部が第1コンパレータ11及び第2コンパレータ12の各非反転入力(+)に入力される。第1コンパレータ11は、その反転入力(−)が電圧Vaを出力する第1基準電源15に、第2コンパレータ12は、その反転入力(−)が電圧Vbを出力する第1基準電源16にそれぞれ接続され、電圧Vaと電圧Vbとの関係は、それらの中間電圧に対し、Vb>中間電圧>Vaに選んでいるので、ドライバTr9から図3(a)に示すような立上り部及び立下り部が直立状態でなく傾斜した波形鈍りが生じているデジタルデータが出力されたとき、第1コンパレータ11及び第2コンパレータ12におけるデジタルデータの検出タイミングに違いが生じる。
【0040】
すなわち、第1コンパレータ11の出力は、図3(b)に示すように、電圧Vaが中間電圧よりも低いので、デジタルデータの立上り開始部分に近いところでローレベルからハイレベルに立上り、デジタルデータの立下り終了部分に近いところでハイレベルからローレベルに立下る若干幅広の矩形波になる。これに対して、第2コンパレータ12の出力は、図3(c)に示すように、電圧Vbが中間電位より高いので、デジタルデータの立上り終了部分に近いところでローレベルからハイレベルに立上り、デジタルデータの立上り開始部分に近いところでハイレベルからローレベルに立下る若干幅狭の矩形波になる。そして、第1コンパレータ11の出力及び第2コンパレータ12の出力は、EXOR15に入力され、EXOR15の出力に図3(d)に示すようなデジタルデータの立上り部及び立下り部に相当する2つのパルスが発生し、加減算回路21の加算端子(+)に入力される。なお、ここで得られたパルスの幅は、ドライバ用Tr9から出力されるデジタルデータの立上り部及び立下り部の波形鈍りが大きいほど拡がったものになる。
【0041】
また、第3コンパレータ13には、その非反転入力(+)にドライバ用Tr9から出力されるデジタルデータの一部が入力され、その反転入力(−)に電圧Vcを出力する第3基準電源17に接続されているので、図4(c)に示すようにドライバ用Tr9の出力デジタルデータが電圧Vcより高電圧レベルになった場合、図4(d)に示すように第3コンパレータ13の出力がハイレベルになる。すなわち、ドライバ用Tr9から出力されるデジタルデータに跳ね返りが発生している場合、その跳ね返り発生部分において第3コンパレータ13の出力から正パルスが導出される。このように、第3コンパレータ13は、ドライバ用Tr9から出力されるデジタルデータにおける電圧Vcよりも高くなっている過渡電圧の発生を検出している。
【0042】
第4コンパレータ14は、電源ライン24の電源電圧Vccを監視するもので、その反転入力(−)に電源ライン24の電源電圧Vccが入力され、その非反転入力(+)に第4基準電源18に接続されている。そして、図5(a)に示すようなデジタルデータがドライバ用Tr9から出力された場合、デジタルデータの極性の切替えに伴い、図5(b)に示すように電源ライン24の電源電圧Vccが一時的に変動する。このとき、電源ライン24の電源電圧Vccは、一時的であっても、電圧Vdより低下することがあるので、その低下時点に第4コンパレータ17の出力がそれまでのローレベルからハイレベルに変化し、第4コンパレータ14の出力には図5(c)に示すようなハイレベルのパルスが出力される。
【0043】
第3コンパレータ13の出力と第4コンパレータ14の出力は、加算回路20において加算され、加減算回路21の減算端子(−)に入力される。
【0044】
加減算回路21から出力された加減算出力電圧は積分回路22に供給され、そこで積分される。積分回路22は、電源ライン24の電源電圧Vccが低下した場合とドライバ用Tr9から出力されたデジタルデータに跳ね返りが発生している場合にその積分出力が低下するように動作する。これに対して、EXOR19の出力は加減算回路21の加算端子(+)に入力され、同じように積分回路22で積分される。積分回路22は、ドライバ用Tr9から出力されるデジタルデータの変化部の波形が鈍っている場合に、積分回路22の積分出力電圧が高くなるように動作する。
【0045】
積分回路22の積分出力電圧は、電流調整用Tr10のベースに供給される。このとき、積分回路22の積分出力電圧が高くなれば、電流調整用Tr10及びドライバ用Tr9の各コレクタ電流が増加し、一方、積分回路22の積分出力電圧が低くなれば、電流調整用Tr10及びドライバ用Tr9の各コレクタ電流が減少する。
【0046】
したがって、ドライバ用Tr9から出力されるデジタルデータの変化部の波形が鈍った場合、電流調整用Tr10に流れるコレクタ電流が増加し、その結果、ドライバ用Tr9から出力されるデジタルデータの波形の変化部の鈍りが解消されるようになり、逆に、デジタルデータにおける立上り部や立下り部に跳ね返りが発生したり、電源電圧Vccの電圧降下が大きい場合、電流調整用Tr10に流れる電流が減少してデジタルデータにおける立上り部や立下りの部の跳ね返りの発生が解消されたり、電源電圧Vccの電圧降下を解消させる方向に働く。
【0047】
このように、第1波形整形回路4(1)は、ドライバ用Tr9から出力されるデジタルデータの波形に対し、フィードバックループを構成しているので、常時、ドライバ用Tr9から出力されるデジタルデータは、最適な波形を保持することができる。
【0048】
次に、電流調整用Tr10のさらなる働きについて説明する。
【0049】
電流調整用Tr10は、電源ライン24に接続され、第1波形整形回路4(1)の出力ライン23の電流を調整するものであるが、この出力ライン23の電流が規定値よりも不足した場合は、ドライバ用Tr9のオン/オフに対して、必要となる値の電流を供給することができず、第1波形整形回路4(1)からは図4(b)に示すようにデジタルデータの立上り部及び立下り部の傾斜が鈍ったデジタルデータが出力される。これに対して、必要となる値の電流を供給することができた場合は、第1波形整形回路4(1)からは図4(a)に示すようになデジタルデータの立上り部及び立下り部の傾斜が急峻なデジタルデータ出力される筈であるが、実際にはシステムLSIの内部は、図6に示すようにLSIパッケージ内でチップとの間の配線により直流抵抗分(Ra、Rb)や浮遊容量分(Ca、Cb)それにインダクタンス成分(La)を有している。そのため、この配線部に電流が流れると、過渡現象により発振が生じ、それによって図4(c)に示すような跳ね返りのある波形となるが、前述のように第1波形整形回路4(1)により、かかる跳ね返りの発生を抑えることができる。
【0050】
以上、第1波形整形回路4(1)の動作について説明したが、前述のように、第2波形整形回路4(2)の動作は、波形整形処理の対象信号がデジタルデータからデジタル制御信号に変わるだけで、殆ど同じ動作が行われる。
【0051】
このように、本発明によるデータ伝送装置によれば、システムLSI1から伝送路6(1)、6(2)を通して外部メモリ2にデジタルデータ及びデジタル制御信号を伝送する際に、システムLSI1内に第1波形整形回路4(1)及び第2波形整形回路4(2)を配置することにより、システムLSI1から出力される伝送データや制御信号の変化部の波形を急峻になるように整形するとともに、電源電圧や接地レベルの変動に伴う制御信号の振幅変動やジッター等の非対称歪の発生を抑えることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明のデータ伝送装置の一実施形態であって、その要部構成を示すブロック図である。
【図2】図1に図示の第1波形整形回路の内部構成の一例を示す一部ブロック化された回路図である。
【図3】第1波形整形回路において、変化部が鈍ったデジタルデータからEXORの出力が導出される過程を説明する各部の波形である。
【図4】第1波形整形回路において、デジタルデータに跳ね返りが生じた際に第3コンパレータから出力パルスが導出される過程を説明する各部の波形である。
【図5】第1波形整形回路において、電源電圧Vccの変動が生じた際に第4コンパレータから出力パルスが導出される過程を説明する各部の波形である。
【図6】システムLSI内の端子とLSIチップとの間の配線の等価回路を示す回路図である。
【図7】高速、大容量のデータ伝送を行うことが可能な既知の伝送システムの一例を示す構成図である。
【図8】デジタル制御信号のレベル変化時に電源電圧、接地レベルの変動に伴ってクロック信号のハイレベル及びローレベルが変化する状態を説明する波形図である。
【図9】現実に発生するクロック信号のハイレベル及びローレベルの変化の一例を表わした波形図である。
【符号の説明】
【0053】
1 システムLSI
2 外部メモリ
3(1) 第1バッファ回路
3(2) 第2バッファ回路
3(3) 第3バッファ回路
4(1) 第1波形整形回路
4(2) 第2波形整形回路
5 第1送受信切替スイッチ
6(1)、6(2) 伝送路
7 第2送受信切替スイッチ
8(1) 第4バッファ回路
8(2) 第5バッファ回路
8(3) 第6バッファ回路
9 駆動用トランジスタ(ドライバ用Tr)
10 電流調整用トランジスタ(電流調整用Tr)
11 第1コンパレータ
12 第2コンパレータ
13 第3コンパレータ
14 第4コンパレータ
15 第1基準電源
16 第2基準電源
17 第3基準電源
18 第4基準電源
19 排他的論理和回路(EXOR)
20 加算回路
21 加減算回路
22 積分回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムLSIと、前記システムLSIに伝送路を通して接続された外部メモリとを備え、前記システムLSIにおけるデータの処理時に前記伝送路を通して前記外部メモリとの間でデータ伝送が行われるデータ伝送装置において、前記システムLSIに波形整形回路を配置し、前記波形整形回路は、前記システムLSIから前記伝送路にデジタル信号が出力される際にその信号波形に発生する歪を監視し、その監視によって信号波形に歪が発生する可能性がある場合、前記伝送路に供給される信号電流値を調整することによって当該信号波形に発生する歪を除去することを特徴とするデータ伝送装置。
【請求項2】
請求項1に記載のデータ伝送装置において、前記システムLSIから前記伝送路を通して前記外部メモリに供給されるデジタル信号は、デジタルデータ及びクロック信号等を含んだデジタル制御信号であることを特徴とするデータ伝送装置。
【請求項3】
請求項1に記載のデータ伝送装置において、前記波形整形回路は、前記システムLSIから前記伝送路にデジタルデータが出力されるとき、電源電圧の変動を監視し、その監視によりデジタルデータ波形に歪が発生する可能性がある場合、前記伝送路に供給される信号電流値を調整することによってデジタルデータ波形に発生する歪を除去することを特徴とするデータ伝送装置。
【請求項4】
請求項1に記載のデータ伝送装置において、前記波形整形回路は、前記システムLSIから前記伝送路にクロック信号が出力されるとき、電源電圧の変動を監視し、その監視によりクロック信号の振幅変動やジッターが発生する可能性がある場合、電源電圧の変動量を調整することによってクロック信号の振幅変動やジッターを除去することを特徴とするデータ伝送装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のデータ伝送装置において、前記波形整形回路は、入力されたデジタル信号を増幅して伝送路に供給する駆動用トランジスタと、前記駆動用トランジスタに電源電圧を供給する電流調整用トランジスタと、前記電流調整用トランジスタの制御電極に電流調整電圧を供給する調整電圧発生回路とを有していることを特徴とするデータ伝送装置。
【請求項6】
請求項5に記載のデータ伝送装置において、前記調整電圧発生回路は、伝送路に出力されるデジタル信号波形の立上り及び立下りの鈍りを表す第1電圧を形成する第1回路と、伝送路に出力されるデジタル信号波形に跳ね返りが生じたとき及び電源電圧が変動したときに第2電圧を形成する第2回路と、前記第1電圧と前記第2電圧とを加減算及び積分して電流調整電圧を形成する第3回路とからなることを特徴とするデータ伝送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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