説明

データ再生装置、データ再生方法、及びデータ記録再生装置

【課題】データを再生するための信号処理の一単位が複数のトラックに分けて記録された記録媒体からのデータの再生において、トラックごとの再生信号を分離する際にチャネル行列の逆行列を演算していた。しかし、逆行列を演算には多大な演算量を要し、回路規模の増大、消費電力の増大を招くという課題があった。
【解決手段】チャネル行列と逆行列または一般化逆行列との組み合わせをチャネル行列記憶部234に予め記憶しておき、このチャネル行列記憶部234から、チャネル推定演算によって求められたチャネル行列に対応する逆行列を取り出して信号分離演算に用いることとする。これにより、信号分離演算部235にて逆行列の演算を行わずに信号分離演算を行うことが可能となり、信号分離演算の演算量の大幅な低減及び処理速度の向上を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データを再生するための信号処理の一単位が複数のトラックに分けて記録された記録媒体からデータを再生するデータ再生装置、データ再生方法、及びデータ記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気ヘッドにおいては、磁気記録メディアの大容量化を図るために、更なる高密度記録が求められ、トラックのトラック幅を狭くすること(以下、「狭幅化」という。)に適した磁気ヘッドが採用されるようになってきている。一般的には、トラックの狭幅化にはトラック・サーボの精度向上が鍵となる。
【0003】
磁気テープ記録再生装置においては、狭幅化に伴い、サーボが困難になる対策案として、所謂ノントラッキング・システムが提唱され、実用化に至っている(たとえば特許文献1−5など)。このノントラッキング方式は、ヘリカル・スキャンにてダブルアジマス記録を行ったトラックに対し、識別のために、ブロックに分けてデータを記録することによって、目的のトラックを1回のトレースで再生できなくても、データを再構成できるものである。このノントラッキング方式によって、従来のトラック・サーボで必要とされる1トラック以内のトラック制御に対して、4倍以上のマージンが許容されるようになる。
【0004】
また、ノントラッキング技術は、ヘリカル・スキャンに留まらずリニア記録で使用されるための可能性が検討されている(たとえば特許文献6,7など)。
【0005】
ところで、磁気記録メディアの基板に、たとえばポリエステルフィルムのような伸縮性をもった非磁性支持体を使用した場合、ダブルアジマス記録を行ったとしても、許容できる変形量はトラック・サーボを併用して、例えばトラック幅の2倍程度までであり、これ以上の変形が発生する場合は、十分なSN比をもって信号を再生することができなかった。また、ダブルアジマスを持たない記録の場合では、トラックをまたがない所謂ガードバンドの幅を、トラック・サーボを併用した状態でも、エラーレート等の信頼性を劣化させないために、テープの変形量以下に押さえ込む必要があった
【0006】
このような問題は、これまで実現されていた信号再生方式においては、少なくとも1つの再生ヘッドが同時に複数のトラックから信号を読み込むことによって信号品質が著しく劣化することに起因する。それを回避するために、ガードバンドやダブルアジマス記録を行い、また再生ヘッドからは1つのトラックからの信号のみを拾うように工夫されてきた。
【0007】
しかし、さらに高トラック密度化を行う場合においては、先ずガードバンドの設置はその妨げとなる。また、再生時において隣接するトラックからの干渉を少なくすることができるダブルアジマス記録は、狭幅化した場合その効果は減少してしまう。
【0008】
このことは、ノントラッキング方式であっても同じであり、再生ヘッドは複数のトラックに跨って信号を再生するように見えるが、時間分割した場合、再生している信号は常に1つのトラックに対してだけであり、同一時間に複数のトラックを再生するということは行っていなかった。
【0009】
また、ノントラッキング方式で高トラック密度化に対応しようとした際に、対象トラックの隣接するトラックからの信号を拾うことによってノイズが混入するようになるため、トラックの狭幅化対応が限界になってきている。
【0010】
磁気ヘッド装置の背景技術としてこのほか、記録密度を向上させるために、1つのブロックに複数のヘッドを配置し、同一アジマスのブロックで形成する方式として、一度に複数のデータ・フレームを記録する技術がある(たとえば特許文献8及び特許文献9など)。
【0011】
これらの公知技術は、再生ヘッド幅をトラックの幅の半分程度にしなければならなくなるため、再生信号の出力を大きくとることができないという制約が生じ、たとえばSN比の確保の点で不利であり、更なる高密度記録化には必ずしも向いていなかった。
【0012】
MIMO(Multi-Input/Multi-Output)技術は、無線通信に用いられるものとして広く知られている(たとえば特許文献10など)。
【0013】
また、MIMOに関する技術を磁気記録に使用する技術も知られている(たとえば非特許文献1など)。しかし、たとえば記録したトラックよりも広幅の再生ヘッドを使用する場合など、実用化に際して発生する課題が解決されていなかった。
【0014】
本発明においては、MIMOを使用した磁気記録方法としては前項で紹介した論文をもって実現しえなかった、磁気記録再生方法へのMIMO技術の実用化を実現するにあたり、公知技術からは予見しえなかった技術内容を明らかにするものである。
【特許文献1】特許1842057号公報
【特許文献2】特許1842058号公報
【特許文献3】特許1842059号公報
【特許文献4】特開平04−370580号公報
【特許文献5】特開平05−020788号公報
【特許文献6】特開平10−283620号公報
【特許文献7】特開2003−132504号公報
【特許文献8】特開2003−338012号公報
【特許文献9】特開2004−071014号公報
【特許文献10】特許3664993号公報
【非特許文献1】論文IEEE Trans.Mag.Vol.30.No.6 Nov.1994 5100ページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上述したように従来の磁気記録再生方式では、記録密度を高めるに磁気記録メディアでのトラック幅を狭くする方法が採用されてきた。しかし、このまま高記録密度を追い求めてトラック幅を狭くしていくと、再生時にトラックを追いきれなくなるという問題が生じる。そこで、トラックに対する再生ヘッドの位置が多少とも外れていても、そのトラックから信号を読み取ることができるノントラッキング方式が提案されている。しかしながら、ノントラッキング方式で適切に再生信号を得るためには、再生ヘッドの設定に厳しい制約が伴う。この面からトラック幅の狭小化による高記録密度化には限界があった。
【0016】
そこで、本発明者らは、磁気記録メディアに記録ヘッドにより、データを再生するための信号処理の一単位である複数のトラックを記録し、磁気記録メディアの複数のトラックに跨って信号を再生することが可能な再生ヘッドにより、複数のトラックに対する信号を、複数のトラックに対して異なる位置関係で複数再生し、これら再生信号を一単位にまとめ、信号処理を行うことで、トラックごとの再生信号を生成するという方式を提案した。これによると、再生ヘッドの幅を決める制約が軽減し、トラック幅の狭小化、高記録密度化が可能である。
【0017】
図25は、上記の磁気記録再生方式を採用した記録装置800の構成を示す図である。
【0018】
同図に示すように、この記録装置800は、マルチトラック化部110、マルチトラック記録符号化部120、マルチトラックプリアンブル付加部130、マルチトラック記録部140、記録ヘッドアレイ150で構成される。
【0019】
マルチトラック化部110は、マルチトラック化のために記録データ1を記録ヘッドアレイ150に設けられた記録ヘッドW−1,W−2,W−3の数(M=3)分のデータに振り分けるデータ分配器111で構成される。
【0020】
マルチトラック記録符号化部120は、データ分配器111にてM個に振り分けられた記録データを符号化するM個の記録符号化部121−1,121−2,121−3で構成される。
【0021】
マルチトラックプリアンブル付加部130は、マルチトラック記録符号化部120によって符号化された各記録データに、トラックごとに特定のプリアンブルを付加するM個のプリアンブル付加部131−1,131−2,131−3で構成される。
【0022】
マルチトラック記録部140は、プリアンブルが付加された各トラックの記録符号列を記録媒体に記録する手段であり、より詳細には、プリアンブルが付加された記録符号列に所望のタイミングを与えるM個の出力タイミング設定部141−1,141−2,141−3と、記録補償処理を行うM個の記録補償部144−1,144−2,144−3と、記録補償処理後の記録符号列をもとに個々の記録ヘッドW−1,W−2,W−3を駆動するM個の記録アンプ147−1,147−2,147−3とで構成される。
【0023】
図26は、この記録装置800によるユニット記録の動作を示すフローチャートである。この記録装置100では、まず、入力された記録データ1がマルチトラック化部110にて、記録ヘッドW−1,W−2,W−3の数(M=3)のデータ、すなわちユニットを構成するトラック数分のデータに分配される(ステップS801)。
【0024】
分配された各データは、それぞれマルチトラック記録符号化部120の記録符号化部121−1,121−2,121−3にて、磁気記録メディア2の記録再生特性を考慮した符号列に符号化される。このときデータの符号列に、復調用同期パターンなどの、データ復調時に必要な情報も付加される(ステップS802)。
【0025】
次に、符号化されたそれぞれの記録データの所定の位置に、マルチトラックプリアンブル付加部130のプリアンブル付加部131−1,131−2,131−3にて、ユニット単位のデータを再生する制御のために必要なパターンがプリアンブルとして付加され、記録符号列が得られる(ステップS803)。
【0026】
ここで、符号化されたそれぞれの記録データの所定の位置とは、連続して記録符号列が記録再生されることを考慮して決められた位置である。また、プリアンブルとしては、例えば、再生信号に対するゲイン制御のための学習に用いられるゲイン制御パターン、ビット同期処理などに用いられる同期パターン、及び、複数の再生ヘッドと1ユニット分の複数のトラックとのトラック幅方向の位置関係に相当するチャネル行列を演算するために必要な分離パターンなどがある。ここで、1ユニット分の複数のトラックとは、データを再生するための信号処理の一単位を構成する複数のトラックである。同期パターンはトラックごとの分離パターンやデータの開始位置を特定するための情報としても用いられる。これらのパターンは、マルチトラック記録符号化部120の記録符号化部121−1,121−2,121−3で生成される符号列の規則を考慮して作成されたものである。
【0027】
それぞれのトラックごとの記録符号列は、マルチトラック記録部140の出力タイミング設定部141−1,141−2,141−3にて所望のタイミングが与えられた後、記録補償部144−1,144−2,144−3にて、磁気記録メディア2への記録に最適化するための記録補償処理が施される。
【0028】
この後、トラックごとの記録符号列は、記録アンプ147−1,147−2,147−3において電圧から電流に変換されて記録ヘッドW−1,W−2,W−3に送られ、記録ヘッドW−1,W−2,W−3によって磁気記録メディア2に記録される(ステップS804)。
【0029】
そして、以上の磁気記録メディア2へのユニット単位の記録動作は、トラック方向に複数のユニットが連続して配置されるように繰り返される。
【0030】
次に、上記の磁気記録再生方式を採用した再生装置について説明する。
【0031】
図27は上記の磁気記録再生方式を採用した再生装置900の構成を示す図である。
【0032】
同図に示すように、この再生装置900は、再生ヘッドアレイ210、チャネル再生部220、信号分離部230、マルチトラック復調部240、及び復元部260を備える。
【0033】
再生ヘッドアレイ210は、磁気記録メディア2に記録された各トラックから信号を読み出すN(N=3)個の再生ヘッドR−1,R−2,R−3を有する。それぞれの再生ヘッドR−1,R−2,R−3は、磁気記録メディア2上で隣接する1以上のトラックから信号を再生することが可能なように、そのヘッド幅及び配置が決められている。
【0034】
チャネル再生部220は、再生ヘッドアレイ210に搭載されたN個の再生ヘッドR−1,R−2,R−3によって再生された信号を増幅するN個の再生アンプ221−1,221−2,221−3と、N個の再生アンプ221−1,221−2,221−3の出力の振幅レベルが所定の値になるようにゲインを制御するゲイン調整部224−1,224−2,224−3と、ゲイン調整部224−1,224−2,224−3の出力を所定のビット幅のディジタル値に量子化するA/Dコンバータ225−1,225−2,225−3とを備える。
【0035】
なお、A/Dコンバータ225−1,225−2,225−3の直前には必要に応じて不要な高域成分を除去するローパス・フィルタが備えられていてもよい。
【0036】
また、ゲイン調整部224−1,224−2,224−3は、A/Dコンバータ225−1,225−2,225−3の前段ではなく後段に配置されてもよい。これは、A/Dコンバータ225−1,225−2,225−3のビット幅をより有効に用いたり、ゲイン調整部224−1,224−2,224−3の構成を、プリアンプルに含まれる各パターンの検出を考慮した簡単なものとしたい場合に有効である。
【0037】
信号分離部230は、A/Dコンバータ225−1,225−2,225−3の出力から同期パターンの検出を行う同期信号検出器231と、同期信号検出器231によって検出された同期信号をもとに分離パターンの開始位置を特定して、その分離パターンを用いてチャネル推定演算および信号分離演算を行うことによって、複数の再生ヘッドR−1,R−2,R−3によってそれぞれ再生された1ユニット分の再生信号からトラックごとの再生信号を分離する信号分離処理部236とを備える。
【0038】
マルチトラック復調部240は、信号分離処理部236にて分離されたトラックごとの再生信号に対して等化処理を行うM個の等化器241−1,241−2,241−3と、等化器241−1,241−2,241−3の出力からビット同期を行うM個のPLL242−1,242−2,242−3と、PLL242−1,242−2,242−3で生成されたビット同期信号を用いて各トラックごとの再生信号を二値化して符号列を生成する、たとえばビタビ検出器などM個の検出器243−1,243−2,243−3と、検出器243−1,243−2,243−3の出力である2値化された再生信号から符号列上の同期パターンを検出するM個の同期信号検出器244−1,244−2,244−3と、同期信号検出器244−1,244−2,244−3により検出された同期パターンをもとにデータの開始位置を特定して符号列からデータ列を復号するM個の復号器245−1,245−2,245−3とを備える。
【0039】
復元部260は、マルチトラック復調部240内のM個の復号器245−1,245−2,245−3より出力された各トラックのデータを、記録時と逆の動作により連結して再生データ3を復元するデータ結合器261を備える。
【0040】
図28は、この再生装置900のユニット再生の動作の流れを示すフローチャートである。この再生装置900では、まず、それぞれ隣接する1以上のトラックから信号を再生することが可能なN個の再生ヘッドR−1,R−2,R−3によって、磁気記録メディア2の1ユニット分の複数のトラックから信号が再生される(ステップS901)。
【0041】
次に、ゲイン調整部224−1,224−2,224−3にて、各再生アンプ221−1,221−2,221−3の出力の振幅レベルが調整された後、ゲイン調整部224−1,224−2,224−3の出力はA/Dコンバータ225−1,225−2,225−3にてディジタル値に変換されて同期信号検出器231に出力される(ステップS902)。
【0042】
同期信号検出器231は、A/Dコンバータ225−1,225−2,225−3の出力ごとに、プリアンブル内の分離パターンの開始位置などを知るための同期パターンの検出を行う(ステップS903)。
【0043】
次に、信号分離処理部236は、同期信号検出器231によって検出された同期信号をもとに分離パターンの開始位置を特定して、その分離パターンを用いてチャネル推定演算によって各再生ヘッドR−1,R−2,R−3と1ユニット分の複数のトラックとのトラック幅方向の位置関係に相当するチャネル行列を求めた後(ステップS904)、このチャネル行列をもとに、各再生ヘッドR−1,R−2,R−3によって再生された1ユニット分の再生信号から、トラックR−1,R−2,R−3ごとの再生信号を分離する(ステップS905)。
【0044】
この後は、トラックごとの再生信号からマルチトラック復調部240にてデータ列の復号が行われ(ステップS906)、復元部260にて各トラックごとのデータが連結されて再生データ3が得られる(ステップS907)。
【0045】
ところで上記の磁気記録再生方式を採用する場合における、システム構成上の技術的課題としては、信号分離処理の際の演算の複雑さがあった。例えば、データ再生のための信号処理の一単位が3本のトラックからなる場合、信号分離処理においては、3×3の逆行列演算を行うこととなる。このような逆行列演算には多大な演算量を要し、回路規模の増大、消費電力の増大を招くことになる。また、このような問題は、ユニットを構成するトラックの数をさらに増やした場合には、より一層顕著なものとなる。
【0046】
本発明は、かかる事情を鑑み、データを再生するための信号処理の一単位が複数のトラックに分けて記録された記録媒体からのデータの再生において、トラックごとの再生信号を分離する処理の演算量の低減及び処理速度の向上を図ることのできるデータ再生装置、データ再生方法、及びデータ記録再生装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0047】
上記の課題を解決するために、本発明のデータ再生装置は、複数のトラックを有し、前記トラックごとに、データと、1以上の前記トラックに跨って信号を再生することが可能な再生ヘッドと前記複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係を検出するために必要なパターンを含むプリアンブルとが記録され、前記複数のトラックの前記データ及び前記プリアンブルが、前記データを再生するための信号処理の一単位であるユニットとして記録された記録媒体から前記データを再生する装置であって、前記ユニットごとの前記パターンの再生信号をもとに、前記再生ヘッドと前記複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係に相当するチャネル行列を演算するチャネル推定演算部と、前記チャネル行列と逆行列または一般化逆行列との組み合わせが予め複数記憶され、前記チャネル推定演算部の演算結果である前記チャネル行列に対応する前記逆行列または前記一般化逆行列を出力するチャネル行列記憶部と、前記チャネル行列記憶部より出力された前記逆行列または前記一般化逆行列を用いて、前記再生ヘッドによって再生された前記1ユニット分の前記データの再生信号から、前記トラックごとの前記データの再生信号を分離する信号分離演算部とを具備する。
【0048】
この発明によれば、チャネル行列の演算後の信号分離演算において、チャネル推定演算によって求められたチャネル行列に対応する一般化逆行列をチャネル行列記憶部から得ることができる。すなわち、逆行列演算を行わずに一般化逆行列を得ることができるので、信号分離演算の演算量の低減及び処理速度の向上を図れる。
【0049】
また、本発明のデータ再生装置は、前記チャネル推定演算部の演算結果である前記チャネル行列を前記チャネル行列記憶部に予め記憶されたチャネル行列に同定するチャネル行列変換部をさらに有し、前記チャネル行列記憶部は、前記チャネル行列変換部によって同定された前記チャネル行列に対応する前記逆行列または前記一般化逆行列を出力することとしてもよい。これにより、チャネル行列記憶部に、チャネル推定演算部の演算結果の種類分の数のチャネル行列と一般化逆行列とのペアを記憶することなく、一般化逆行列を得ることができ、チャネル推定演算部の記憶容量を抑制できるとともに、実用的な構成が実現される。
【0050】
本発明のデータ再生装置において、前記信号分離演算部は、前記チャネル推定演算部の演算結果である前記チャネル行列を入力して、このチャネル行列の前記逆行列または前記一般化逆行列を求める逆行列演算部をさらに有し、前記チャネル行列記憶部より出力された前記逆行列または前記一般化逆行列を用いて前記トラックごとの前記データの再生信号を分離する第1のモードと、前記逆行列演算部によって求められた前記逆行列または前記一般化逆行列を用いて前記トラックごとの前記データの再生信号を分離する第2のモードとを切り替えて動作することとしてもよい。これにより、負荷の大きい逆行列演算を制限して行うことができ、データ再生時の速やかな処理が可能になるとともに、消費電力を低減できる。
【0051】
本発明のデータ再生装置において、前記ユニットは前記記録媒体にトラック方向に複数配置されており、連続する複数の前記ユニット内の前記パターンの再生信号をもとに前記チャネル推定演算部にて求められた複数の前記チャネル行列を用いて、前記データの区間内で可変の複数の前記チャネル行列を推定するチャネル行列推定部をさらに具備し、前記チャネル行列記憶部は、前記チャネル行列推定部により推定された前記複数のチャネル行列にそれぞれ対応する前記逆行列または前記一般化逆行列を出力することとしてもよい。
【0052】
この発明によれば、データの区間内で、再生ヘッドと複数のトラックとのトラック幅方向の位置関係に相当するチャネル行列をトラックずれの状況に応じて可変にすることによって、トラックずれに対するデータ再生の安定化を図ることのできるデータ再生装置において、チャネル行列推定部により推定された複数のチャネル行列にそれぞれ対応する一般化逆行列を、逆行列演算に拠ることなく得ることができ、信号分離演算の演算量の低減及び処理速度の向上を図ることができる。
【0053】
本発明のデータ再生装置において、前記チャネル行列推定部により推定された前記複数のチャネル行列を、前記チャネル行列記憶部に予め記憶された前記チャネル行列にそれぞれ同定するチャネル行列変換部をさらに有し、前記チャネル行列記憶部は、前記チャネル行列変換部によってそれぞれ同定された前記複数のチャネル行列にそれぞれ対応する前記逆行列または前記一般化逆行列を出力することとしてもよい。これにより、チャネル行列記憶部に、チャネル行列推定部の推定結果の種類分の数のチャネル行列と一般化逆行列とのペアを記憶することなく、一般化逆行列を得ることができ、チャネル推定演算部の記憶容量を抑制できるとともに、実用的な構成が実現される。
【0054】
また、前記チャネル行列推定部は、連続する複数の前記ユニット内の前記パターンの再生信号をもとに前記チャネル推定演算部によって求められた前記複数のチャネル行列から、直線補間によって、前記データの個々の区間にそれぞれ対応する複数のチャネル行列を推定することとしてもよい。このようにして直線補間を用いることで、データの区間を分割した個々の区間ごとに、トラックずれの状況に応じた適切なチャネル行列を得ることができ、トラックずれに対するデータ再生の安定化を図ることができる。
【0055】
前記パターンとしては、前記トラックごとにユニークな位置に配置された、最小記録波長と同等あるいはそれ以上の記録波長の信号からなる分離パターンを用いることができる。また、トラッキングサーボ情報を用いてもよい。
【0056】
本発明のデータ再生装置は、前記1ユニット分の複数のトラックに対してそれぞれ異なる位置関係で信号を再生可能なように、前記再生ヘッドを複数備えたものであってもよい。
【0057】
本発明の別の観点に基づくデータ再生方法は、複数のトラックを有し、前記トラックごとに、データと、1以上の前記トラックに跨って信号を再生することが可能な再生ヘッドと前記複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係を検出するために必要なパターンを含むプリアンブルとが記録され、前記複数のトラックの前記データ及び前記プリアンブルが、前記データを再生するための信号処理の一単位であるユニットとして記録された記録媒体から前記データを再生する方法であって、前記ユニットごとの前記パターンの再生信号をもとに、チャネル推定演算によって、前記再生ヘッドと前記複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係に相当するチャネル行列を求めるステップと、前記チャネル行列と逆行列または一般化逆行列との組み合わせが予め複数記憶されたチャネル行列記憶部を設けておき、このチャネル行列記憶部から、前記チャネル推定演算の結果であるチャネル行列に対応する逆行列または一般化逆行列を出力するステップと、前記出力された逆行列または一般化逆行列を用いて、前記再生ヘッドによって再生された前記1ユニット分の前記データの再生信号から、前記トラックごとの前記データの再生信号を分離するステップとを具備する。
【0058】
この発明によれば、チャネル行列の演算後の信号分離演算において、チャネル推定演算によって求められたチャネル行列に対応する一般化逆行列をチャネル行列記憶部から得ることができる。すなわち、逆行列演算を行わずに一般化逆行列を得ることができるので、信号分離演算の演算量の低減及び処理速度の向上を図れる。
【0059】
本発明のデータ再生方法において、前記チャネル推定演算の結果であるチャネル行列を前記チャネル行列記憶部に予め記憶されたチャネル行列に同定するステップをさらに有し、前記逆行列出力ステップは、前記同定されたチャネル行列に対応付けて前記チャネル行列記憶部に記憶された逆行列または一般化逆行列を出力することとしてもよい。これにより、チャネル行列記憶部に、チャネル推定演算結果の種類分の数のチャネル行列と一般化逆行列とのペアを記憶することなく、一般化逆行列を得ることができ、チャネル推定演算部の記憶容量を抑制できるとともに、実用的な構成が実現される。
【0060】
また、本発明のデータ再生方法において、前記ユニットは前記記録媒体にトラック方向に複数配置されており、連続する複数の前記ユニット内の前記パターンの再生信号をもとに前記チャネル推定演算によって求められた複数のチャネル行列を用いて、前記データの区間内で可変の複数のチャネル行列を推定するステップをさらに具備し、前記逆行列出力ステップは、前記推定されたチャネル行列に対応付けて前記チャネル行列記憶部に記憶された逆行列または一般化逆行列を出力することとしてもよい。
【0061】
この発明によれば、データの区間内で、再生ヘッドと複数のトラックとのトラック幅方向の位置関係に相当するチャネル行列をトラックずれの状況に応じて可変にすることによって、トラックずれに対するデータ再生の安定化を図ることのできるデータ再生装置において、チャネル行列推定により得られた複数のチャネル行列にそれぞれ対応する一般化逆行列を、逆行列演算に拠ることなく得ることができ、信号分離演算の演算量の低減及び処理速度の向上を図ることができる。
【0062】
本発明のデータ再生方法において、前記推定された前記複数のチャネル行列をそれぞれ前記チャネル行列記憶部に予め記憶されたいずれかのチャネル行列に同定するステップをさらに有し、前記逆行列出力ステップは、前記同定されたチャネル行列に対応付けて前記チャネル行列記憶部に記憶された逆行列または一般化逆行列を出力することとしてもよい。これにより、チャネル行列記憶部に、チャネル行列推定部の推定結果の種類分の数のチャネル行列と一般化逆行列とのペアを記憶することなく、一般化逆行列を得ることができ、チャネル推定演算部の記憶容量を抑制できるとともに、実用的な構成が実現される。
【発明の効果】
【0063】
本発明のデータ再生装置、データ再生方法、及びデータ記録再生装置によれば、データを再生するための信号処理の一単位が複数のトラックに分けて記録された記録媒体からのデータの再生において、トラックごとの再生信号を分離する処理の演算量の低減及び処理速度の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0064】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0065】
(第1の実施形態)
【0066】
本発明の第1の実施形態として、マルチヘッドを用いた磁気記録再生方式について説明する。記録ヘッドの数をM、再生ヘッドの数をNとし、この実施形態では、M=3、N=3とする。
【0067】
図1は、本発明の第1の実施形態の磁気記録再生方式における記録装置100の構成を示す図である。
【0068】
同図に示すように、この記録装置100は、マルチトラック化部110、マルチトラック記録符号化部120、マルチトラックプリアンブル付加部130、マルチトラック記録部140、記録ヘッドアレイ150で構成される。
【0069】
マルチトラック化部110は、マルチトラック化のために記録データ1を記録ヘッドアレイ150に設けられた記録ヘッドW−1,W−2,W−3の数(M=3)分のデータに振り分けるデータ分配器111で構成される。
【0070】
マルチトラック記録符号化部120は、データ分配器111にてM個に振り分けられた記録データを符号化するM個の記録符号化部121−1,121−2,121−3で構成される。
【0071】
マルチトラックプリアンブル付加部130は、マルチトラック記録符号化部120によって符号化された各記録データに、トラックごとに特定のプリアンブルを付加するM個のプリアンブル付加部131−1,131−2,131−3で構成される。
【0072】
マルチトラック記録部140は、プリアンブルが付加された各トラックの記録符号列を記録媒体に記録する手段であり、より詳細には、プリアンブルが付加された記録符号列に所望のタイミングを与えるM個の出力タイミング設定部141−1,141−2,141−3と、記録補償処理を行うM個の記録補償部144−1,144−2,144−3と、記録補償処理後の記録符号列をもとに個々の記録ヘッドW−1,W−2,W−3を駆動するM個の記録アンプ147−1,147−2,147−3とで構成される。
【0073】
図2は、この記録装置100によるユニット記録の動作を示すフローチャートである。この記録装置100では、まず、入力された記録データ1がマルチトラック化部110にて、記録ヘッドW−1,W−2,W−3の数(M=3)のデータ、すなわちユニットを構成するトラック数分のデータに分配される(ステップS101)。
【0074】
分配された各データは、それぞれマルチトラック記録符号化部120の記録符号化部121−1,121−2,121−3にて、磁気記録メディア2の記録再生特性を考慮した符号列に符号化される。このときデータの符号列に、復調用同期パターンなどの、データ復調時に必要な情報も付加される(ステップS102)。
【0075】
次に、符号化されたそれぞれの記録データの所定の位置に、マルチトラックプリアンブル付加部130のプリアンブル付加部131−1,131−2,131−3にて、ユニット単位のデータを再生する制御のために必要なパターンがプリアンブルとして付加され、記録符号列が得られる(ステップS103)。
【0076】
ここで、符号化されたそれぞれの記録データの所定の位置とは、連続して記録符号列が記録再生されることを考慮して決められた位置である。また、プリアンブルとしては、例えば、再生信号に対するゲイン制御のための学習に用いられるゲイン制御パターン、ビット同期処理などに用いられる同期パターン、及び、複数の再生ヘッドと1ユニット分の複数のトラックとのトラック幅方向の位置関係に相当するチャネル行列を演算するために必要な分離パターンなどがある。ここで、1ユニット分の複数のトラックとは、データを再生するための信号処理の一単位を構成する複数のトラックである。同期パターンはトラックごとの分離パターンやデータの開始位置を特定するための情報としても用いられる。これらのパターンは、マルチトラック記録符号化部120の記録符号化部121−1,121−2,121−3で生成される符号列の規則を考慮して作成されたものである。
【0077】
それぞれのトラックごとの記録符号列は、マルチトラック記録部140の出力タイミング設定部141−1,141−2,141−3にて所望のタイミングが与えられた後、記録補償部144−1,144−2,144−3にて、磁気記録メディア2への記録に最適化するための記録補償処理が施される。
【0078】
この後、トラックごとの記録符号列は、記録アンプ147−1,147−2,147−3において電圧から電流に変換されて記録ヘッドW−1,W−2,W−3に送られ、記録ヘッドW−1,W−2,W−3によって磁気記録メディア2に記録される(ステップS104)。
【0079】
そして、以上の磁気記録メディア2へのユニット単位の記録動作は、トラック方向に複数のユニットが連続して配置されるように繰り返される。
【0080】
次に、本発明の第1の実施形態の磁気記録再生方式における再生装置について説明する。
【0081】
図3は本発明の第1の実施形態の磁気記録再生方式における再生装置200の構成を示す図である。
【0082】
同図に示すように、再生装置200は、再生ヘッドアレイ210、チャネル再生部220、信号分離処理部230、マルチトラック復調部240、及び復元部260を備える。
【0083】
再生ヘッドアレイ210は、磁気記録メディア2に記録された各トラックから信号を読み出すN(N=3)個の再生ヘッドR−1,R−2,R−3を有する。それぞれの再生ヘッドR−1,R−2,R−3は、磁気記録メディア2上で隣接する1以上のトラックから信号を再生することが可能なように、そのヘッド幅及び配置が決められている。
【0084】
チャネル再生部220は、再生ヘッドアレイ210に搭載されたN個の再生ヘッドR−1,R−2,R−3によって再生された信号を増幅するN個の再生アンプ221−1,221−2,221−3と、N個の再生アンプ221−1,221−2,221−3の出力の振幅レベルが所定の値になるようにゲインを制御するゲイン調整部224−1,224−2,224−3と、ゲイン調整部224−1,224−2,224−3の出力を所定のビット幅のディジタル値に量子化するA/Dコンバータ225−1,225−2,225−3とを備える。
【0085】
なお、A/Dコンバータ225−1,225−2,225−3の直前には必要に応じて不要な高域成分を除去するローパス・フィルタが備えられていてもよい。
【0086】
また、ゲイン調整部224−1,224−2,224−3は、A/Dコンバータ225−1,225−2,225−3の前段ではなく後段に配置されてもよい。これは、A/Dコンバータ225−1,225−2,225−3のビット幅をより有効に用いたり、ゲイン調整部224−1,224−2,224−3の構成を、プリアンプルに含まれる各パターンの検出を考慮した簡単なものとしたい場合に有効である。
【0087】
信号分離処理部230は、同期信号検出器231、チャネル推定演算部232、チャネル行列変換部233、チャネル行列記憶部234、及び信号分離演算部235を有している。
【0088】
同期信号検出器231は、A/Dコンバータ225−1,225−2,225−3の出力から同期パターンの検出を行う。
【0089】
チャネル推定演算部232は、同期信号検出器231によって検出された同期パターンをもとに分離パターンの開始位置を特定して、この分離パターンの再生信号を用いてチャネル推定演算を行う。
【0090】
チャネル行列変換部233は、チャネル推定演算部232によって得られたチャネル行列をチャネル行列記憶部234に予め記憶されたチャネル行列に同定する。より具体的には、チャネル行列変換部233は、チャネル行列記憶部234に予め記憶された複数のチャネル行列のうちチャネル推定演算部232の演算結果に最も近いチャネル行列を判断して、このチャネル行列をチャネル行列記憶部234に入力する。
【0091】
チャネル行列記憶部234は、チャネル行列と逆行列または一般化逆行列との組み合わせが予め複数記憶され、チャネル行列変換部233より入力されたチャネル行列に対応する逆行列または一般化逆行列を出力する。
【0092】
なお、ここで用いられているチャネル行列が正方行列の場合、チャネル行列記憶部234にはチャネル行列と逆行列との組み合わせが記憶され、正方行列でない場合には、チャネル行列と一般化逆行列との組み合わせが予め記憶されることになる。
【0093】
信号分離演算部235は、チャネル行列記憶部234より出力された逆行列または一般化逆行列を用いて、各再生ヘッドR−1,R−2,R−3によって再生された1ユニット分の再生信号からトラックごとの再生信号を分離する。
【0094】
信号分離処理部230は、処理を行うために必要なデータ等の情報を記憶する図示しない記憶部を持っている。信号分離処理部230は、この記憶部に、例えば、プリアンブルとデータからなる所定のユニット分の情報を記憶して処理を行う。
【0095】
マルチトラック復調部240は、図4に示すように、信号分離演算部235にて分離されたトラックごとの再生信号に対して等化処理を行うM個の等化器241−1,241−2,241−3と、等化器241−1,241−2,241−3の出力からビット同期を行うM個のPLL242−1,242−2,242−3と、PLL242−1,242−2,242−3で生成されたビット同期信号を用いて各トラックごとの再生信号を二値化して符号列を生成する、たとえばビタビ検出器などM個の検出器243−1,243−2,243−3と、検出器243−1,243−2,243−3の出力である2値化された再生信号から符号列上の同期パターンを検出するM個の同期信号検出器244−1,244−2,244−3と、同期信号検出器244−1,244−2,244−3により検出された同期パターンをもとにデータの開始位置を特定して符号列からデータ列を復号するM個の復号器245−1,245−2,245−3とを備える。なお、マルチトラック復調部240は、上記の処理を行うために必要なデータ等の情報を記憶する、図示しない記憶部を有している。
【0096】
図3に戻って、復元部260は、マルチトラック復調部240内のM個の復号器245−1,245−2,245−3より出力された各トラックのデータを、記録時と逆の動作により連結して再生データ3を復元するデータ結合器261を備える。
【0097】
図5は、この再生装置200のユニット再生の動作の流れを示すフローチャートである。この再生装置200では、まず、それぞれ隣接する1以上のトラックから信号を再生することが可能なN個の再生ヘッドR−1,R−2,R−3によって、磁気記録メディア2の1ユニット分の複数のトラックから信号が再生される(ステップS201)。
【0098】
次に、ゲイン調整部224−1,224−2,224−3にて、各再生アンプ221−1,221−2,221−3の出力の振幅レベルが調整された後、ゲイン調整部224−1,224−2,224−3の出力はA/Dコンバータ225−1,225−2,225−3にてディジタル値に変換されて同期信号検出器231に出力される(ステップS202)。
【0099】
同期信号検出器231は、A/Dコンバータ225−1,225−2,225−3の出力ごとに、プリアンブル内の分離パターンの開始位置などを知るための同期パターンの検出を行う(ステップS203)。
【0100】
次に、チャネル推定演算部232は、同期信号検出器231によって検出された同期パターンをもとに各再生信号に配置されている分離パターンの開始位置を特定し、その分離パターンの再生信号をもとに所定のチャネル推定演算によって各再生ヘッドR−1,R−2,R−3と1ユニット分の複数のトラックとのトラック幅方向の位置関係に相当するチャネル行列を求める(ステップS204)。
【0101】
次に、チャネル行列変換部233は、チャネル推定演算部232にて得られたチャネル行列をチャネル行列記憶部234に記憶された最も近いチャネル行列に同定する(ステップS205)。
【0102】
続いて、チャネル行列記憶部234は、チャネル行列変換部233より入力されたチャネル行列に対応した逆行列または一般化逆行列を信号分離演算部235に出力する(ステップS206)。
【0103】
次に、信号分離演算部235は、チャネル行列記憶部234より入力された逆行列または一般化逆行列をもとに、各再生ヘッドR−1,R−2,R−3によって再生された1ユニット分の再生信号から、トラックごとの再生信号を分離する(ステップS207)。
【0104】
この後は、トラックごとの再生信号からマルチトラック復調部240にてデータ列の復号が行われ(ステップS208)、復元部260にて各トラックごとのデータが連結されて再生データ3が得られる(ステップS209)。
【0105】
図6は、上記の本実施形態の記録装置100によって記録が行われた磁気記録メディア2上のデータフォーマットの概念図である。
【0106】
M個の記録ヘッドによって磁気記録メディア2に記録された、M個のトラックをまとめた一単位を「ユニット」と呼ぶことにする。図6において、トラック#1、トラック#2、トラック#3はそれぞれ、記録装置(たとえば記録装置100)のM(ここではM=3)個の記録ヘッドW−1,W−2,W−3によって磁気記録メディア2に記録されたトラックである。これらのトラック#1、トラック#2、トラック#3のまとまりがユニット51である。それぞれのユニット51間にはガードバンド52と呼ばれる、何も記録されていない領域が確保されている。このガードバンド52の目的は、隣のユニットのトラックが再生されないようにすることにある。
【0107】
トラック#1、トラック#2、トラック#3にはそれぞれ、プリアンブル21とデータ22が記録されている。プリアンブル21は、前述したように、データ22を再生する制御のために必要な情報として、再生信号に対するゲイン制御のための学習に用いられるゲイン制御パターン、ビット同期処理などに用いられる同期パターン、及び、複数の再生ヘッドと1ユニット分の複数のトラックとのトラック幅方向の位置関係に相当するチャネル行列を演算するために必要な分離パターンを含むものである。
【0108】
ここでM個のトラック#1、トラック#2、トラック#3それぞれの、M個のプリアンブル21とM個のデータ22とのまとまりが、データを再生するための信号処理の一単位としてのユニット51である。
【0109】
図7は、プリアンブル21の構成を示す図である。
【0110】
同図に示すように、プリアンブル21は、第1のプリアンブル23、同期パターン24、及び第2のプリアンブル25で構成されている。トラック上では、先頭より、第1のプリアンブル23、同期パターン24、第2のプリアンブル25の順に配置される。第2のプリアンブル25の後にはデータ22が配置される。データ22は、記録時に図1の記録装置100の記録符号化部121−1,121−2,121−3で作成された記録符号列である。第1のプリアンブル23、同期パターン24、第2のプリアンブル25は、プリアンブル付加部131−1,131−2,131−3によって記録符号列に対して付加されたものである。
【0111】
第1のプリアンブル23は、再生時に図3に示した再生装置200の中のゲイン調整部224−1,224−2,224−3による再生アンプ221−1,221−2,221−3のゲイン制御のための学習信号として使用される。また、第1のプリアンブル23は、必要に応じて、同期信号検出器231にて、ビット同期検出のための学習や、再生信号のレベル調整等にも用いられる。
【0112】
同期パターン24は、同期信号検出器231によって第2のプリアンブル25の開始位置及びデータ22の開始位置を知るための情報として使用される。
【0113】
第2のプリアンブル25は、再生時に複数の再生ヘッドR−1,R−2,R−3と1ユニット分の複数のトラック#1,#2,#3とのトラック幅方向における位置関係に相当するチャネル行列をチャネル推定演算部232にて求めるために使用されるパターンである。
【0114】
第2のプリアンブル25は、トラック#1,#2,#3ごとに、隣りのトラックとの間で、トラック方向での位置が重ならないように配置された分離パターン31,32,33で構成される。すなわち、トラック#1の分離パターン31はT1区間に、トラック#2の分離パターン32はT2区間に、トラック#3の分離パターン33はT3区間にそれぞれ記録されている。これにより分離パターンの種類は、トラック数に対応する3種類となる。隣り合うトラックの分離パターン31,32,33どうしの間には所定の時間分の隙間38が設けられており、ユニット内で各トラック#1,#2,#3の各分離パターン31,32,33が重ならないようにしてある。
【0115】
なお、分離パターン31,32,33は、最小記録波長と同等か、あるいはそれ以上の所定の記録波長で記録されたものである。
【0116】
チャネル推定演算部232は、この分離パターン31,32,33の再生信号を用いてチャネル推定演算を行い、その結果としてチャネル行列を生成する。このチャネル行列は、1ユニット内の各トラック#1,#2,#3に対する個々の再生ヘッドR−1,R−2,R−3のトラック幅方向での位置情報に相当するもので、言い換えると、個々の再生ヘッドR−1,R−2,R−3がそれぞれ、ユニット内のどのトラックとどんな割合で位置的に重なるかを示した情報である。
【0117】
なお、図7の例では、再生ヘッドR−1,R−2,R−3の幅はトラック幅の1.5倍とする。すなわち、再生ヘッドR−1,R−2,R−3の幅は、記録ヘッドW−1,W−2,W−3のヘッド幅の1.5倍とされ、個々の再生ヘッドR−1,R−2,R−3はそれぞれ複数のトラックから信号を再生できるものとする。図7の場合には、再生ヘッドR−1は、トラック#1とトラック#2から信号を再生し、再生ヘッドR−2は、3本のトラック#1,#2,#3から信号を再生し、再生ヘッドR−3はトラック#2とトラック#3から信号を再生する。
【0118】
なお、図7は本発明に適用可能なプリアンブル21の構成の一例にすぎず、データの再生制御に用いることができるものであれば、他の構成を有するものであってもよい。
【0119】
次に、この実施形態において、信号分離演算のために必要な逆行列を求める動作の詳細を説明する。
【0120】
発明が解決しようとする課題で説明したように、逆行列の演算は多大な演算量を要し、回路規模の増大、消費電力の増大を招くため、この実施形態では、チャネル行列と逆行列または一般化逆行列との組み合わせを図3に示したチャネル行列記憶部234に予め記憶しておくことで、信号分離演算部235にて、チャネル行列Hから逆行列または一般化逆行列への演算を行わずに、チャネル行列記憶部234に記憶された逆行列または一般化逆行列を用いることで信号分離処理を行うこととしている。
【0121】
この場合、チャネル行列記憶部234に、再生ヘッドR−1,R−2,R−3のトラックずれの量に応じた各チャネル行列に対応する逆行列または一般化逆行列の情報を記憶しておく必要がある。
【0122】
図8は再生ヘッドR−1,R−2,R−3がトラック幅に対して50%だけ下方にずれている状態を示す図である。なお、図7は再生ヘッドR−1,R−2,R−3のトラックずれがない状態を示すものである。このように、各再生ヘッドR−1,R−2,R−3は、図7に示す基準位置から、各再生ヘッドR−1,R−2,R−3間の位置関係は保たれたまま、トラックに対して上方あるいは下方にずれていく。図7及び図8のそれぞれ下の部分に、それぞれの状態でのチャネル行列Hとこれに対応する逆行列H(−1)を示している。チャネル行列Hは3行3列の要素からなる正方行列であり、要素の最大値は1.00とする。ここで、チャネル行列Hとこれに対応する逆行列H(−1)は、再生ヘッドR−1,R−2,R−3のトラックずれの量、すなわち、複数の再生ヘッドR−1,R−2,R−3と複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係に対応するものであることから、チャネル行列記憶部234には、チャネル行列Hと逆行列H(−1)との組み合わせを、検出すべき位置関係の数の分だけ記憶しておかねばならない。
【0123】
図9は、チャネル行列記憶部234に記憶されるチャネル行列Hと逆行列H(−1)との組み合わせの例を示す図であり、各再生ヘッドR−1,R−2,R−3の中心と各トラックの中心の位置が揃っている場合を0%として、トラック幅に対して10%きざみで、トラック中心に対して再生ヘッドR−1,R−2,R−3の中心位置がトラック幅の50%だけ下方にずれた場合までのチャネル行列Hとこれに対応する逆行列H(−1)とを組み合わせを示したものである。
【0124】
ところで、チャネル行列記憶部234のデータ記憶容量の制約などから、チャネル行列記憶部234に記憶されるチャネル行列と逆行列との組み合わせの数は限られる。したがって、チャネル推定演算部232によって求められたチャネル行列をチャネル行列記憶部234に記憶された最も近いチャネル行列に同定する機構が必要となる。
【0125】
この実施形態では、チャネル行列変換部233にて、チャネル推定演算部232による演算結果であるチャネル行列を、チャネル行列記憶部234に記憶されている最も近いチャネル行列に同定する処理を行うこととしている。もちろん、このチャネル行列の同定処理は、チャネル行列記憶部234に、チャネル推定演算部232の演算結果として出力され得る全てのチャネル行列とこれに対応する逆行列が記憶されている場合には不要であり、したがって、チャネル行列変換部233は不要である。以下に、チャネル行列の同定の具体例を示す。
【0126】
トラック中心に対して再生ヘッドR−1,R−2,R−3の中心がトラック幅の8%だけ下方にずれて再生が行われた場合を想定する。この場合、チャネル推定演算部232によるチャネル推定演算の結果は、トラックに対して再生ヘッドR−1,R−2,R−3の中心がトラック幅の8%程度下方にずれた位置情報を示すチャネル行列となる。
【0127】
このチャネル行列がチャネル行列変換部233に入力されると、チャネル行列変換部233は、チャネル行列記憶部234に格納されたチャネル行列の中から、チャネル推定演算部232より入力されたチャネル行列に最も近いもの、すなわち、トラックに対して再生ヘッドR−1,R−2,R−3の中心がトラック幅の10%だけ下方にずれたチャネル行列を同定結果として出力する。
【0128】
このチャネル行列変換部233によるチャネル行列の同定結果はチャネル行列記憶部234に入力され、この結果、チャネル行列記憶部234から、この入力されたチャネル行列に対応する逆行列が信号分離演算部235に出力される。これによって、信号分離演算部235は、トラック幅の10%だけ下方にずれたチャネル行列に対応した逆行列をもとに信号分離演算を行う。
【0129】
なお、図7、図8のチャネル行列は、ノイズが入っていないことを想定した場合のものであり、実際の再生信号からチャネル推定演算部232より出力されるチャネル推定行列は、たいていが図7、図8のチャネル行列とは異なるものとなることが予想される。
【0130】
以上のように、本実施形態の再生装置200においては、信号分離演算部235にて逆行列の演算を行わずに信号分離演算を行うことが可能となり、信号分離演算の演算量の大幅な低減及び処理速度の向上を図ることができる。
【0131】
また、本実施形態によれば、各再生ヘッドR−1,R−2,R−3がそれぞれ複数のトラックに跨って再生した各信号をユニットの単位にまとめ、所定の信号処理を行うことで、トラック毎の再生信号を分離することができる。このため、ユニット内のトラック間の距離を狭く設定することができ、あるいは再生ヘッドR−1,R−2,R−3の幅をトラック幅よりも広く設定することができるので、高トラック密度化を実現できる。
【0132】
次に、本実施形態の変形例を説明する。
【0133】
信号分離演算部235において、逆行列演算を行う機能を持たせておき、チャネル行列変換部233から信号分離演算部235に、同定結果であるチャネル行列を出力するように構成してもよい。
【0134】
例えば、チャネル推定演算部232によって求められたチャネル行列が、チャネル行列変換部233にとって想定外な値であった場合に、チャネル行列変換部233は、チャネル推定演算部232より入力されたチャネル行列をそのまま信号分離演算部235へ出力し、信号分離演算部235内の逆行列演算機能にて逆行列演算を行うようにする。
【0135】
また、2つのモードを用意しておき、チャネル行列変換部233が、図示しないシステムコントローラからの通知に従って、同定結果であるチャネル行列をチャネル行列記憶部234に入力して、チャネル行列記憶部234からそのチャネル行列に対応する逆行列を信号分離演算部235に出力する第1のモードと、同定結果であるチャネル行列を信号分離演算部235に出力して、信号分離演算部235内の逆行列演算機能にて逆行列演算を行わせる第2のモードとを切り替えるようにしてもよい。
【0136】
このほか、信号分離演算部235内の逆行列演算機能によって演算されたチャネル行列を、チャネル行列記憶部234に記憶しておき、この対応情報を例えばチャネル行列変換部233に与えておくことによって、前記、チャネル推定演算部232によって求められたチャネル行列が、チャネル行列変換部233にとって想定外な値であった場合においても、本発明を適用することができる。
【0137】
このように負荷の大きい逆行列演算を制限して行うことによっても、データ再生時の速やかな処理が可能になるとともに、消費電力を低減できる。
【0138】
また、各再生ヘッドR−1,R−2,R−3と1ユニット分の複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係を検出するために必要なパターンとして、上記の実施形態では、図7、図8に示したような分離パターン31,32,33を用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、トラッキングサーボ情報などを用いることも可能である。この場合には、トラッキングサーボ情報の各記録パターンと各再生ヘッドとの位置関係をユニット単位にまとめたものがチャネル推定情報として生成される。
【0139】
また、分離パターンを用いて上記の位置関係を検出する手段と、トラッキングサーボ情報を用いて位置関係を検出する手段の両方を併用して、チャネル推定演算を行ってもよい。
【0140】
さらに、上記の実施形態では、3行3列の行列をチャネル推定情報として算出する場合を説明したが、例えば、4行4列の行列や、その他の正方行列であっても、その一般化逆行列を求めることによって信号分離処理を行うことが可能である。さらに、正方行列以外の行列でも、同様にしてその一般化逆行列を求めるようにすればよい。
【0141】
なお、行列の一般化逆行列を求められるようにするために、分離パターンの種類はトラック数に対応させておく必要がある。
【0142】
また、分離パターンは、互いに一次独立なトラック数のパターンとする。例えば、記録ヘッドの数を3、再生ヘッドの数を4とした場合、すなわち、記録トラックの数を3とし、再生信号の数を4とした場合は、分離パターンは、互いに一次独立な3通りのパターンで構成されるものとする。
【0143】
第1のプリアンブル23に配置されているゲイン制御パターンを、同期パターン24の後方に追加配置することによって、ゲイン制御のための情報量を増やしてもよい。
【0144】
第1のプリアンブル23に配置されているゲイン制御パターンと、第2のプリアンブル25に配置されている分離パターンとには、同一のパターンを採用してもかまわない。
【0145】
上記の実施形態では、時間軸上で直交する分離パターンを用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、周波数軸上で直交するような分離パターン、あるいは、直交符号を用いた分離パターンなどを用いてもよい。
【0146】
(第2の実施形態)
【0147】
次に、本発明の第2の実施形態として、シングルヘッドを用いた磁気記録再生方式を説明する。
【0148】
この実施形態の磁気記録再生方式は、1個、又はユニット当たりのトラック数より少ない個数の記録ヘッド及び再生ヘッドを有し、トラックごとに記録位置を揃えることなく記録されている記録媒体を、トラックごとに再生位置を揃えることなく再生する方式である。
【0149】
図10は本発明の第2の実施形態である磁気記録再生方式における記録装置300の構成を示す図である。
【0150】
この記録装置300は、シングルヘッドでユニットの記録を行うものである。ここで、一つの記録ヘッドによってユニットの記録を行う所定の回数をMとし、また一つの再生ヘッドによってユニットの再生を行う所定の回数をNとし、この実施形態では、M=3、N=3とする。
【0151】
同図に示すように、この記録装置300は、マルチトラック化部110、マルチトラック記録符号化部120、マルチトラックプリアンブル付加部130、マルチトラック記録部140、記録ヘッドアレイ150で構成される。
【0152】
マルチトラック記録符号化部120は、データ分配器111にてM個に振り分けられた記録データを符号化するM個の記録符号化部121−1,121−2,121−3で構成される。
【0153】
マルチトラックプリアンブル付加部130は、マルチトラック記録符号化部120によって符号化された各記録データに、トラックごとに特定のプリアンブルを付加するM個のプリアンブル付加部131−1,131−2,131−3で構成される。
【0154】
マルチトラック記録部140は、少なくとも1ユニット分の記録データを記憶する記憶部149と、プリアンブルが付加された記録符号列に所望のタイミングを与える1個の出力タイミング設定部141と、記録補償処理を行う1個の記録補償部144と、記録補償処理後の記録符号列をもとに記録ヘッドW−1を駆動する1個の記録アンプとで構成される。
【0155】
図11は、この記録装置300のユニット記録時の動作の流れを示すフローチャートである。この記録装置300では、まず、入力された記録データ1がマルチトラック化部110にて、M(M=3)個のデータ(トラックごとのデータ)に分配される(ステップS301)。
【0156】
分配された各データは、それぞれマルチトラック記録符号化部120の記録符号化部121−1,121−2,121−3にて、磁気記録メディア2の記録再生特性を考慮した符号列に符号化される。このとき符号列に、復調用同期パターンなどの、データ復調時に必要な情報も付加される(ステップS302)。
【0157】
次に、符号化されたそれぞれの記録データの所定の位置に、マルチトラックプリアンブル付加部130のプリアンブル付加部131−1,131−2,131−3にて、ユニット単位のデータの再生制御のために必要なパターンがプリアンブルとして付加され、記録符号列が得られる(ステップS303)。このようにしてプリアンブルが付加されたトラックごとの記録符号列は記憶部149に記憶される(ステップS304)。
【0158】
この後、記憶部149から、最初に記録するトラックの記録符号列が読み出され(ステップS305)、このトラックの記録符号列に対して出力タイミング設定部141によって所望のタイミングが与えられた後、記録補償部144にて、磁気記録メディア2への記録に最適化するための記録補償処理が施され、記録アンプ147にて電圧から電流に変換されて、記録ヘッドW−1によって磁気記録メディア2に記録される(ステップS306)。
【0159】
この後、1ユニット分のトラックの記録が終了したかどうかを判定し(ステップS307)、終了していなければ(ステップS307のNO)、記録ヘッドW−1を次の位置に移動させる(ステップS308)。この後、記憶部149から次のトラックの記録符号列を読み出して同様に記録のための処理を繰り返す。以上の動作を、1ユニット分のトラックの記録が終了するまで繰り返す。
【0160】
そして、以上の磁気記録メディア2へのユニット単位の記録動作は、トラック方向に複数のユニットが連続して配置されるように繰り返される。
【0161】
次に、この第2の実施形態の磁気記録再生方式における記録装置の変形例を示す。
【0162】
図12は、この第2の実施形態の磁気記録再生方式における記録装置の変形例である記録装置301の構成を示す図である。
【0163】
同図に示すように、この記録装置301は、所定の単位の記録データ、例えば所定のトラック数分の記録データを記録符号化する記録符号化部121と、トラックごとの符号化された記録データにトラックごとに特定のプリアンブルを付加するプリアンブル付加部131と、記憶部149と、プリアンブルが付加された記録符号列に所望のタイミングを与える出力タイミング設定部141と、記録補償処理を行う記録補償部144と、記録補償処理後の記録符号列をもとに記録ヘッドW−1を駆動する記録アンプ147とで構成されている。すなわち、図10に示す記録装置300の構成から、マルチトラック化部110(データ分配器111)が省かれているとともに、マルチトラック記録符号化部120は一つの記録符号化部121で構成され、マルチトラックプリアンブル付加部130は一つのプリアンブル付加部131で構成されている。
【0164】
図13は、この記録装置301のユニット記録の動作の流れを示すフローチャートである。
【0165】
この記録装置301では、まず、記録符号化部121にて、所定の単位の記録データ、例えば所定のトラック数分の記録データが、磁気記録メディア2の記録再生特性を考慮した符号列に符号化される。このときデータの符号列に、復調用同期パターンなどの、データ復調時に必要な情報も付加される(ステップS311)。
【0166】
次に、符号化されたそれぞれの記録データの所定の位置に、プリアンブル付加部131にて、ユニット単位のデータを再生する制御のために必要なパターンがプリアンブルとして付加され、記録符号列が得られる(ステップS312)。このようにしてプリアンブル符号が付加されたトラックごとの記録符号列は記憶部149に記憶される(ステップS313)。
【0167】
この後、記憶部149から最初に記録するトラックの記録符号列が読み出され(ステップS314)、このトラックの記録符号列に対して出力タイミング設定部141によって所望のタイミングが与えられた後、記録補償部144にて、磁気記録メディア2への記録に最適化するための記録補償処理が施され、記録アンプ147にて電圧から電流に変換されて、記録ヘッドW−1によって磁気記録メディア2に記録される(ステップS315)。
【0168】
この後、1ユニット分のトラックの記録が終了したかどうかを判定し(ステップS316)、終了していなければ(ステップS316のNO)、記録ヘッドW−1を次の位置に移動させ(ステップS317)、記憶部149から次のトラックの記録符号列を読み出して同様に記録のための処理を繰り返す。以上の動作を、1ユニット分のトラックの記録が終了するまで繰り返す。
【0169】
そして、以上の磁気記録メディア2へのユニット単位の記録動作は、トラック方向に複数のユニットが連続して配置されるように繰り返される。
【0170】
次に、本発明の第2の実施形態である磁気記録再生方式における再生装置について説明する。
【0171】
図14は本発明の第2の実施形態である磁気記録再生方式における再生装置400の構成を示す図である。
【0172】
同図に示すように、この再生装置400は、再生ヘッドアレイ210、チャネル再生部220、信号分離処理部230、マルチトラック復調部240、及び復元部260を備える。
【0173】
再生ヘッドアレイ210は、磁気記録メディア2に記録された各トラックから信号を読み出す1個の再生ヘッドR−1を有する。
【0174】
チャネル再生部220は、再生ヘッドアレイ210に搭載された再生ヘッドR−1によって再生された信号を増幅する1個の再生アンプ221と、再生アンプ221の出力の振幅レベルが所定の値になるようにゲインを制御する1個のゲイン調整部224と、ゲイン調整部224の出力を所定のビット幅のディジタル値に量子化する1個のA/Dコンバータ225とを備える。
【0175】
信号分離処理部230は、同期信号検出器231、チャネル推定演算部232、チャネル行列変換部233、チャネル行列記憶部234、信号分離演算部235、及び記憶部236を有している。
【0176】
同期信号検出器231は、A/Dコンバータ225の出力から同期パターンの検出を行う。
【0177】
記憶部236は、同期信号検出器231と信号分離演算部235との間に配置され、少なくとも1ユニット分の再生信号を記憶する。
【0178】
チャネル推定演算部232は、同期信号検出器231によって検出された同期パターンをもとに分離パターンの開始位置を特定して、この分離パターンの再生信号を用いてチャネル推定演算を行う。
【0179】
チャネル行列変換部233は、チャネル推定演算部232によって得られたチャネル行列をチャネル行列記憶部234に予め記憶されたチャネル行列に同定する。より具体的には、チャネル行列変換部233は、チャネル行列記憶部234に予め記憶された複数のチャネル行列のうちチャネル推定演算部232の演算結果に最も近いチャネル行列を判断して、このチャネル行列をチャネル行列記憶部234に入力する。
【0180】
チャネル行列記憶部234は、チャネル行列と逆行列または一般化逆行列との組み合わせが予め複数記憶され、チャネル行列変換部233より入力されたチャネル行列に対応する逆行列または一般化逆行列を出力する。
【0181】
なお、ここで用いられているチャネル行列が正方行列の場合、チャネル行列記憶部234にはチャネル行列と逆行列との組み合わせが記憶され、正方行列でない場合には、チャネル行列と一般化逆行列との組み合わせが予め記憶されることになる。
【0182】
信号分離演算部235は、チャネル行列記憶部234より出力された逆行列または一般化逆行列を用いて、再生ヘッドR−1によって再生された1ユニット分の再生信号からトラックごとの再生信号を分離する。
【0183】
マルチトラック復調部240は、図4に示したように、信号分離演算部235にて分離された各トラックごとの再生信号に対して等化処理を行うM個の等化器241−1,241−2,241−3と、等化器241−1,241−2,241−3の出力からビット同期を行うM個のPLL242−1,242−2,242−3と、PLL242−1,242−2,242−3で生成されたビット同期信号を用いて各トラックごとの再生信号を二値化して符号列を生成する、たとえばビタビ検出器などM個の検出器243−1,243−2,243−3と、検出器243−1,243−2,243−3の出力である2値化された再生信号から符号列上の同期パターンを検出するM個の同期信号検出器244−1,244−2,244−3と、同期信号検出器244−1,244−2,244−3により検出された同期パターンをもとにデータの開始位置を特定して符号列からデータ列を復号するM個の復号器245−1,245−2,245−3とを備える。なお、マルチトラック復調部240は、上記の処理を行うために必要なデータ等の情報を記憶する、図示しない記憶部を有している。
【0184】
図14に戻って、復元部260は、マルチトラック復調部240内のM個の復号器245−1,245−2,245−3より出力された各トラックのデータを、記録時と逆の動作により連結して再生データ3を復元するデータ結合器261を備える。
【0185】
なお、シングルヘッドによる再生時のトラックのトレースは、少なくとも1ユニットの記録トラック数の回数だけ繰り返される。すなわち、トラック数以上の回数トレースを繰り返してもよい。その際、1ユニット分の全てのトラックが少なくとも1回はトレースされるようにする。記憶部236には、再生ヘッドR−1が移動した各位置で再生したユニット分の信号、すなわち再生ヘッドR−1が各位置で複数のトラックからそれぞれ再生した信号であり、同期信号検出器231によって分離パターン以降の必要な再生信号が記憶される。
【0186】
図15は、この再生装置400のユニット再生動作を示すフローチャートを示す。
【0187】
この再生装置400では、まず、再生ヘッドR−1によって、最初の位置で複数のトラックから信号が再生される(ステップS401)。次に、ゲイン調整部224にて、再生アンプ221の出力の振幅レベルが調整された後、その出力はA/Dコンバータ225にてディジタル値に変換されて同期信号検出器231に出力される(ステップS402)。
【0188】
同期信号検出器231では、A/Dコンバータ225の出力から分離パターンの開始位置を知るための同期パターンの検出が行われた後(ステップS403)、トラックの再生信号は記憶部236に記憶される(ステップS404)。
【0189】
次に、1ユニット分の再生信号が記憶部236に記憶されたかどうかを判断し(ステップS405)、1ユニット分の再生信号が記憶部236にまだ記憶されていない場合には、再生ヘッドR−1をトラック幅方向の次の位置にずらし(ステップ406)、ステップS401からステップS405までの動作を繰り返す。
【0190】
1ユニット分の再生信号が記憶部236に記憶された場合、チャネル推定演算部232は、記憶部236に記憶された1ユニット分の再生信号を読み出し、その再生信号に配置されている同期パターンをもとに分離パターンの開始位置を特定してその分離パターンの再生信号を用いてチャネル推定演算を行う(ステップS407)。
【0191】
次に、チャネル行列変換部233は、チャネル推定演算部232にて得られたチャネル行列をチャネル行列記憶部234に記憶された最も近いチャネル行列に同定する(ステップS408)。
【0192】
続いて、チャネル行列記憶部234は、チャネル行列変換部233より入力されたチャネル行列に対応した逆行列または一般化逆行列を信号分離演算部235に出力する(ステップS409)。
【0193】
次に、信号分離演算部235は、チャネル行列記憶部234より入力された逆行列と、再生ヘッドR−1によって再生された1ユニット分の再生信号から、トラックごとの再生信号を分離する(ステップS410)。
【0194】
この後は、トラックごとに分離された再生信号からマルチトラック復調部240にてデータ列の復号が行われ(ステップS411)、復元部260にて各トラックごとのデータが連結されて再生データ3が得られる(ステップS412)。
【0195】
なお、A/Dコンバータ225の直前には必要に応じて不要な高域成分を除去するローパス・フィルタが備えられていてもよい。また、ゲイン調整部224については、A/Dコンバータ225の後段に接続して量子化後にゲインを制御するようにしてもよい。これは、A/Dコンバータ225のビット幅をより有効に用いたり、ゲイン調整部224の構成を、プリアンプルに含まれる各パターンの検出を考慮した簡単なものとしたい場合に有効である。あるいは、同期信号検出器231において利得目標値との誤差をとった情報を用いてゲイン調整部224においてゲイン調整を行うようにしてもよい。
【0196】
また、マルチトラック復調部240にて、トラックごとの出力タイミングを制御しながら復調処理を行うようにすれば、復元部260でのデータの連結処理は不要となる。したがって、この場合には復元部260は不要である。
【0197】
(第3の実施形態)
【0198】
次に、本発明の第3の実施形態を説明する。
第3の実施形態にかかる磁気記録再生装置における記録装置の構成は、第1の実施形態で説明した記録装置100と同様であるが、第3の実施形態の記録装置では、磁気記録メディア2へのユニット単位の記録動作を、トラック方向に複数のユニットが連続して配置されるように繰り返すこととしている。
【0199】
図16は、本発明の第3の実施形態にかかる磁気記録再生方式における再生装置500の構成を示す図である。
【0200】
同図に示すように、この再生装置500は、第1の実施形態の再生装置200における信号分離処理部230にチャネル行列推定部237を付加したものである。
【0201】
すなわち、信号分離処理部230は、同期信号検出器231、チャネル推定演算部232、チャネル行列変換部233、チャネル行列記憶部234、及び信号分離演算部235を有している。
【0202】
同期信号検出器231は、A/Dコンバータ225−1,225−2,225−3の出力から同期パターンの検出を行う。
【0203】
チャネル推定演算部232は、同期信号検出器231によって検出された同期パターンをもとに分離パターンの開始位置を特定して、この分離パターンの再生信号を用いてチャネル推定演算を行う。
【0204】
チャネル行列推定部237は、データを挟んで連続する複数のプリアンブルの再生信号からチャネル推定演算によってそれぞれ求められた複数のチャネル行列を用いて、データの区間内で可変のチャネル行列を推定する。
【0205】
チャネル行列変換部233は、チャネル行列推定部237によって推定された、データの区間内で可変のチャネル行列を、チャネル行列記憶部234に予め記憶されたチャネル行列に同定する。より具体的には、チャネル行列変換部233は、チャネル行列記憶部234に予め記憶された複数のチャネル行列のうちチャネル行列推定部237の推定結果に最も近いチャネル行列を判断して、このチャネル行列をチャネル行列記憶部234に入力する。
【0206】
チャネル行列記憶部234は、チャネル行列と逆行列または一般化逆行列との組み合わせが予め複数記憶され、チャネル行列変換部233より入力されたチャネル行列に対応する逆行列または一般化逆行列を出力する。
【0207】
なお、ここで用いられているチャネル行列が正方行列の場合、チャネル行列記憶部234にはチャネル行列と逆行列との組み合わせが記憶され、正方行列でない場合には、チャネル行列と一般化逆行列との組み合わせが予め記憶されることになる。
【0208】
信号分離演算部235は、チャネル行列記憶部234より出力された逆行列または一般化逆行列を用いて、各再生ヘッドR−1,R−2,R−3によって再生された1ユニット分の再生信号からトラックごとの再生信号を分離する。
【0209】
図17は、この再生装置500のユニット再生の動作の流れを示すフローチャートである。この再生装置500では、まず、それぞれ隣接する1以上のトラックから信号を再生することが可能なN個の再生ヘッドR−1,R−2,R−3によって、磁気記録メディア2の1ユニット分の複数のトラックから信号が再生される(ステップS501)。
【0210】
次に、ゲイン調整部224−1,224−2,224−3にて、各再生アンプ221−1,221−2,221−3の出力の振幅レベルが調整された後、ゲイン調整部224−1,224−2,224−3の出力はA/Dコンバータ225−1,225−2,225−3にてディジタル値に変換されて同期信号検出器231に出力される(ステップS502)。
【0211】
同期信号検出器231は、A/Dコンバータ225−1,225−2,225−3の出力ごとに、プリアンブル内の分離パターンの開始位置などを知るための同期パターンの検出を行う(ステップS503)。
【0212】
次に、チャネル推定演算部232は、同期信号検出器231によって検出された同期パターンをもとに各再生信号に配置されている分離パターンの開始位置を特定し、その分離パターンの再生信号をもとに所定のチャネル推定演算によって各再生ヘッドR−1,R−2,R−3と1ユニット分の複数のトラックとのトラック幅方向の位置関係に相当するチャネル行列を求める(ステップS504)。
【0213】
次に、チャネル行列推定部237は、トラック上でデータを挟んで連続する複数のプリアンブル中の分離パターンの再生信号からチャネル推定演算によって求められた複数のチャネル行列を用いて、そのデータの区間内で可変のチャネル行列を推定する(ステップS505)。
【0214】
次に、チャネル行列変換部233は、チャネル行列推定部237によって推定された、データの区間内で可変のチャネル行列をチャネル行列記憶部234に記憶された最も近いチャネル行列に同定する(ステップS506)。
【0215】
続いて、チャネル行列記憶部234は、チャネル行列変換部233より入力されたチャネル行列に対応した逆行列または一般化逆行列を信号分離演算部235に出力する(ステップS507)。
【0216】
次に、信号分離演算部235は、チャネル行列記憶部234より入力された逆行列または一般化逆行列をもとに、各再生ヘッドR−1,R−2,R−3によって再生された1ユニット分の再生信号から、トラックごとの再生信号を分離する(ステップS508)。
【0217】
この後は、トラックごとの再生信号からマルチトラック復調部240にてデータ列の復号が行われ(ステップS509)、復元部260にて各トラックごとのデータが連結されて再生データ3が得られる(ステップS510)。
【0218】
図18は、この第3の実施形態の磁気記録再生方式の記録装置によって記録が行われた磁気記録メディア2上のデータフォーマットの概念図である。前述したように、この第3の実施形態の記録装置では、磁気記録メディア2へのユニット単位の記録動作を、トラック方向に複数のユニットが連続して配置されるように繰り返すこととしている。
【0219】
すなわち、図18に示すように、トラック#1、トラック#2、トラック#3はそれぞれ、記録装置100のM(M=3)個の記録ヘッドによって磁気記録メディア2に記録されたトラックである。トラック#1、トラック#2、トラック#3にはそれぞれ、プリアンブル21(1),21(2),・・・とデータ22(1),22(2),・・・が記録されている。プリアンブル21(1)は、前述したように、データ22(1)を再生するために必要な情報として、再生信号に対するゲイン制御のための学習に用いられるゲイン制御パターン、ビット同期処理などに用いられる同期パターン、及び、複数の再生ヘッドと1ユニット分の複数のトラックとのトラック幅方向の位置関係に相当するチャネル行列を演算するために必要な分離パターンを含むものであり、プリアンブル21(2)も同様にデータ22(2)を再生するために必要な上記の各パターンを含むものである。
【0220】
ここでM個のトラック#1、トラック#2、トラック#3それぞれの、M個のプリアンブル21とM個のデータ22とのまとまりが、データを再生するための信号処理の一単位としてのユニット51(1),51(2),・・・,51(E)である。また、M個のトラック#1、トラック#2、トラック#3のまとまりを、以降「ユニット構成トラック列」と呼ぶこととする。
【0221】
ユニット構成トラック列61には、複数のユニット51(1),51(2),・・・,51(E)がトラック方向に連続して配置されている。この実施形態では、トラック上でデータ22を挟んで連続する複数のプリアンブル21、例えば2つのプリアンブル21内の分離パターンの再生信号をもとに、チャネル推定演算によってそれぞれ求められた例えば2つのチャネル行列から、そのデータ22の区間内で可変のチャネル行列として、データ22の区間を分割した各区間にそれぞれ対応する複数のチャネル行列を推定することとしている。このため、M個のトラック#1、トラック#2、トラック#3それぞれの最後のデータ22(E)の後にもプリアンブル21(E+1)が追加されている。
【0222】
また、磁気記録メディア2には、S個のユニット構成トラック列61が互いに平行に配置され、隣接する各ユニット構成トラック列61の間にはガードバンド52が配置されている。
【0223】
図19は、図18に示すフォーマット上での各再生ヘッドR−1,R−2,R−3のトラックずれの例を示す図である。
【0224】
再生ヘッドR−1,R−2,R−3の移動方向を符号13の矢印方向とすると、各トラック#1,#2,#3からプリアンブルは、プリアンブル21(1)、プリアンブル21(2)の順で再生される。再生時に例えば外乱等によりトラッキングが不安定となった場合に、プリアンブル21(1)の位置では各再生ヘッドR−1,R−2,R−3と各トラック#1,#2,#3との位置関係が適正であったのが、プリアンブル21(2)の位置では適正な位置関係から逸脱してしまうことがある。図19の例では、プリアンブル21(2)の位置で、各再生ヘッドR−1,R−2,R−3と各トラック#1,#2,#3との位置関係は適正な状態から図中下方にトラック幅の50%ずれた状態を示している。このような場合、プリアンブル21(1)の再生信号に基いて得られた分離信号は、データ22(1)区間の後半部分において、品質が低下する。なお、ここでは再生ヘッドR−1,R−2,R−3が移動するものとして説明したが、再生ヘッドR−1,R−2,R−3が固定で、磁気記録メディア2が符号14の矢印方向に移動する場合も同様である。
【0225】
そこで本実施形態では、データを挟んで連続する複数のプリアンブルの再生信号からそれぞれチャネル推定演算の結果として求められた複数のチャネル行列をもとに、そのデータの区間内で可変のチャネル行列を推定し、この可変のチャネル行列を用いて、1ユニット分の各再生ヘッドR−1,R−2,R−3の再生信号からトラックごとの再生信号を分離する処理を行うこととしている。
【0226】
次に、チャネル行列推定部237によるチャネル行列推定動作の詳細を説明する。なお、この詳細説明では、データ区間内で可変のチャネル行列の例として、データ区間を分割した各区間ごとのチャネル行列を採用することとする。
【0227】
チャネル行列推定部237は、チャネル推定演算部232によって、連続する複数のユニット、例えば2つのユニットのプリアンブル21内の分離パターンの再生信号をもとに、チャネル推定演算部232によってそれぞれ求められた2つのチャネル行列を用いて、その2つのプリアンブル21の間のデータ22の個々の分割区間に対応する複数のチャネル行列を推定する。
【0228】
図20は、このチャネル行列推定部237によるチャネル行列推定動作の具体例を示す図である。
【0229】
この例では、2つのプリアンブル21(1),21(2)の間のデータ22(1)の区間をn分割する。ここではn=3とする。この場合、チャネル行列推定部237は、2つのプリアンブル21(1),21(2)内の分離パターンの再生信号からチャネル推定演算によってそれぞれ得られた2つのチャネル行列を用いて、例えば、直線補間などによって、データ22(1)の区間をn分割した各区間に対応するn個のチャネル行列を推定する。
【0230】
この例において、チャネル行列を推定するための前提条件を示す。チャネル行列に用いられる値の最大値は1.0、最小値は0.0とする。例えば推定演算において、チャネル行列の値が0.0を下回る場合は0.0に固定し、1.0を上回る場合は1.0に固定する。また再生ヘッドR−1,R−2,R−3の幅はトラック幅の1.5倍とする。すなわち、再生ヘッドR−1,R−2,R−3の幅は、記録ヘッドW−1,W−2,W−3のヘッド幅の1.5倍とされ、個々の再生ヘッドR−1,R−2,R−3はそれぞれ複数のトラックから信号を再生できるものとする。図20の場合には、再生ヘッドR−1は、トラック#1とトラック#2から信号を再生し、再生ヘッドR−2は、3本のトラック#1,#2,#3から信号を再生し、再生ヘッドR−3はトラック#2とトラック#3から信号を再生する。
【0231】
チャネル行列推定部237は、まず、2つのプリアンブル21(1),21(2)内のそれぞれの分離パターンの再生信号から、チャネル推定演算によって求められた2つのチャネル行列34,35を比較し、最大差分及び正負変移方向を検出する。次に、最大差分と与えられた分割の数から、変移量を求める。ここではn=3であって、かつ推定を行うのがT2区間のみであるから、最大差分の1/2倍の値を変位量とする。すなわち、最大差分が0.5であるため、変位量として0.25が得られる。そして変移量と変移方向をもとに、図20に示すチャネル行列36が、データ区間の中間であるT2区間に対応するチャネル行列として推定される。また、チャネル行列推定部237は、プリアンブル21(1)の再生信号からチャネル推定演算によって求められたチャネル行列34を、データ区間のT1区間に対するチャネル行列の推定結果とし、さらにプリアンブル21(2)の再生信号からチャネル推定演算によって求められたチャネル行列35を、データ区間のT3区間に対するチャネル行列の推定結果とする。
【0232】
なお、ここではn=3としてT2区間を推定する場合とし、最大差分の1/2倍を変移量としたが、例えばn=4として、T1からT4の区間のうち、T2とT2の区間を推定とする場合は、最大差分の1/3倍を変移量とする。
【0233】
チャネル行列変換部233は、このようにしてチャネル行列推定部237によって推定された各区間T1,T2,T3ごとのチャネル行列をそれぞれ、チャネル行列記憶部234に記憶されたチャネル行列に同定する。この後、チャネル行列記憶部234からは、チャネル行列変換部233より入力された各区間T1,T2,T3ごとのチャネル行列に対応した逆行列が信号分離演算部235に出力される。
【0234】
信号分離演算部235による信号分離処理は、分割区間T1,T2,T3のそれぞれに対してチャネル行列記憶部234から出力された各チャネル行列を用いて、分割区間T1,T2,T3ごとに行われる。すなわち、信号分離演算部235は、T1区間ではプリアンブル21(1)の再生信号からチャネル推定演算によって求められたチャネル行列34を
チャネル行列変換部233にてチャネル行列記憶部234に記憶されたチャネル行列に同定されたものに対応する逆行列を用いて信号分離処理を行い、T2区間ではチャネル行列推定部237により推定されたチャネル行列36をチャネル行列変換部233にてチャネル行列記憶部234に記憶されたチャネル行列に同定されたものに対応する逆行列を用いて信号分離処理を行い、T3区間ではプリアンブル21(2)の再生信号からチャネル推定演算によって求められたチャネル行列35をチャネル行列変換部233にてチャネル行列記憶部234に記憶されたチャネル行列に同定されたものに対応する逆行列を用いて信号分離処理を行う。
【0235】
以上説明したように、本実施形態によれば、データを挟んで連続する複数のプリアンブルの再生信号からそれぞれチャネル推定演算の結果として求められた複数のチャネル行列をもとに、そのデータの区間内で可変のチャネル行列を推定し、この可変のチャネル行列を用いて、1ユニット分の各再生ヘッドR−1,R−2,R−3の再生信号からトラックごとの再生信号を分離する処理を行うことによって、各再生ヘッドと1ユニット分の各トラックとのトラック幅方向での位置関係が、外乱等によるトラックずれによって適正な状態から外れた場合においても、データ再生を良好に行うことが可能になる。
【0236】
そして、本実施形態によれば、このような効果に加えて、信号分離演算部235で、従来行っていた逆行列の演算を行わずに信号分離演算を行うことができるので、速やかな演算を実現することができる。また、逆行列演算を省略できることより、回路規模を小さくでき、消費電力を少なくすることができる。
【0237】
なお、上記では、連続する2つのユニット内のプリアンブル内の分離パターンの再生信号をもとにチャネル推定演算によって求められた2つのチャネル行列から、トラックずれの状況を反映した、データ区間で可変のチャネル行列を推定することとしたが、連続する3つ以上のユニット内のプリアンブル内の分離パターンの再生信号をもとにチャネル推定演算によって求められた3つ以上のチャネル行列から、各々のデータ区間ごとに可変のチャネル行列を推定して、信号分離処理に用いるようにしてもよい。さらに、複数の参照するプリアンブルは、必ずしも連続していなくても良く、チャネル推定演算が行うための情報が得られることが出来れば良い。また、チャネル行列推定部237によるチャネル行列の補間方法としては、直線補間以外の手法を用いても構わない。
【0238】
また、図20では、各チャネル行列34,35,36が適用される分割区間T1,T2,T3の長さは均等としたが、各チャネル行列34,35,36がそれぞれ適用される分割区間の長さは均等である必要はない。例えば、図21に示すように、データ区間を均等に4分割して、T1区間では最初のプリアンブル21(1)内の分離パターンの再生信号より得られたチャネル行列34を用いて信号分離処理を行い、T2区間とT3区間では、2つのチャネル行列34,35からチャネル行列推定部237により補間されたチャネル行列36を用いて信号分離処理を行い、T4区間ではプリアンブル21(2)内の分離パターンの再生信号より得られたチャネル行列35を用いて分離処理を行うようにしてもよい。
【0239】
また、データ区間を均等に5分割して、T2区間からT4区間でチャネル行列推定部237により補間されたチャネル行列36を用いて信号分離処理を行うようにしたり、データ区間を均等に7分割して、T3区間からT5区間でチャネル行列推定部237により補間されたチャネル行列36を用いて信号分離処理を行うようにしてもよい。その他の数にデータ区間を分割した場合も同様である。
【0240】
さらに、データ区間の均等に2分割し、T1区間ではプリアンブル21(1)内の分離パターンの再生信号より得られたチャネル行列34を用いて信号分離処理を行い、T2区間ではプリアンブル21(2)内の分離パターンの再生信号より得られたチャネル行列35を用いて信号分離処理を行うようにしてもよい。この方式では、チャネル行列推定部237によるチャネル行列36の補間は不要である。
【0241】
さらに、データ区間の分割数nを1として、プリアンブル21(1)内の分離パターンの再生信号より得られたチャネル行列34とプリアンブル21(2)内の分離パターンの再生信号より得られたチャネル行列35とを所定の条件で選択して分離処理を行うようにしても構わない。この場合も、チャネル行列推定部237によるチャネル行列36の補間は不要である。
【0242】
本発明は、所定の複数のチャネル行列から、そのシステム及びその時の状況に適したチャネル行列を再生成し、これを用いることによって、よりデータ再生を良好に行うものである。
【0243】
なお、本発明において、プリアンブル21の構成は図7に示したものに限定されるものではなく、チャネル行列の演算に使用できるものであれば何でもよい。
【0244】
図22は、本発明に係るデータフォーマットの別の例を示す図である。先に説明した図18のデータフォーマットでは、データ22(1)を挟んで連続する2つのプリアンブル21(1),21(2)内の分離パターンの再生信号からチャネル推定演算によってそれぞれ得られた2のチャネル行列を用いて、データ22(1)の区間内で可変のチャネル行列を推定することとしたが、例えば、データ22(2)よりも前方に配置された複数のプリアンブル、例えば、2つのプリアンブル21(1),21(2)内の分離パターンの再生信号からチャネル推定演算によって得られた2つのチャネル行列を用いて、データ22(2)の区間内で可変のチャネル行列を推定することによっても同様の効果を期待できる。このような場合には、図18に示した最後のデータ22(E)の後のプリアンブル21(E+1)は不要である。なお、この場合には、プリアンブル21とデータ22の再生信号を信号分離処理部230の記憶部内に記憶していなくても信号分離処理を行うことが可能である。
【0245】
本発明は、上記で説明したリニア記録方式、ノンアジマス記録方式の磁気記録再生に適用されることに限らず、ヘリカル記録方式、アジマス記録方式にも適用可能である。
【0246】
その具体例を以下に示す。
【0247】
図23は、複数の記録ヘッドW−1,W−2,W−3を用いて、ノンアジマス方式とヘリカル・スキャン方式で磁気記録メディア2に記録されるデータフォーマットの概念図である。ヘリカル・スキャン方式においても、トラック#1,トラック#2,トラック#3で構成されるユニット構成トラック列61の間にはガードバンド52が配置される。トラック#1,トラック#2,トラック#3に記録されるプリアンブル21は、例えば図7に示したものと同様でよい。このようなヘリカル・スキャン方式の磁気記録再生方式においても、本発明は適用可能であり、第1の実施形態の磁気記録再生方式を採用することができる。
【0248】
図24は、複数の記録ヘッドW−1,W−2,W−3,W−4,W−5,W−6を用いて、ダブルアジマス方式とヘリカル・スキャン方式により記録媒体に記録されるデータフォーマットの概念図である。
【0249】
本例では、記録用と再生用のそれぞれに6つの記録ヘッドW−1,W−2,W−3,W−4,W−5,W−6が用いられている。これらの記録ヘッドのうち、連続する3つの記録ヘッドW−1,W−2,W−3と、残る連続する3つの記録ヘッドW−4,W−5,W−6とは、互いにトラックの磁化方向であるアジマス方向が異なるようにしてある。すなわち、トラック#1−#3とトラック#4−#6とはアジマス方向が異なる。これらのトラック#1−#6が、データを再生するための処理の一単位であるユニットを複数含むユニット構成トラック列61となる。なお、このダブルアジマスの場合においては、ガードバンドは不要である。
【0250】
なお、この例では、トラック#1−#6のまとまりを、データを再生するための信号処理の一単位(ユニット)としているが、アジマス方向が同一である3つの連続するトラック(例えばトラック#1−#3、トラック#4−#6)を、それぞれ一つのユニットとして信号処理を行うようにしてもよい。
【0251】
各トラック#1−#6に記録されるプリアンブルは、例えば図8に示したものと同様でよい。このようなダブルアジマス方式とヘリカル・スキャン方式の磁気記録再生方式においても、本発明は適用可能であり、第1の実施形態の磁気記録再生方式の構成を採用することができる。
【0252】
なお、本発明は、上記実施の形態に示す構成のものに限定されるものではなく、請求項に記載した技術的範囲を逸脱しない範囲において種々に変更し変形することは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0253】
【図1】本発明の第1の実施形態の磁気記録再生方式における記録装置の構成を示す図である。
【図2】図1の記録装置によるユニット記録の動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の第1の実施形態の磁気記録再生方式における再生装置の構成を示す図である。
【図4】図3の再生装置の中のマルチトラック復調部の構成を示す図である。
【図5】図3の再生装置によるユニット再生の動作を示すフローチャートである。
【図6】図1の記録装置によって記録が行われた磁気記録メディア上のデータフォーマットの概念図である。
【図7】図6のデータフォーマットにおけるプリアンブルの構成を示す図である。
【図8】再生ヘッドがトラック幅に対して50%だけ下方にずれている状態を示す図である。
【図9】チャネル行列とこれに対応する逆行列を示す図である。
【図10】本発明の第2の実施形態である磁気記録再生方式における記録装置の構成を示す図である。
【図11】図10の記録装置によるユニット記録の動作を示すフローチャートである。
【図12】第2の実施形態の磁気記録再生方式における記録装置の変形例である記録装置の構成を示す図である。
【図13】図12の記録装置によるユニット記録の動作を示すフローチャートである。
【図14】本発明の第2の実施形態である磁気記録再生方式における再生装置の構成を示す図である。
【図15】図14の再生装置によるユニット再生の動作を示すフローチャートである。
【図16】本発明の第3の実施形態にかかる磁気記録再生方式における再生装置の構成を示す図である。
【図17】図16の再生装置によるユニット再生の動作を示すフローチャートである。
【図18】第3の実施形態の磁気記録再生方式の記録装置によって記録が行われた磁気記録メディア上のデータフォーマットの概念図である。
【図19】図18に示すフォーマット上での各再生ヘッドのトラックずれの様子の例を示す図である。
【図20】チャネル行列推定部によるチャネル行列推定動作の具体例を示す図である。
【図21】チャネル行列推定部によるチャネル行列推定動作の他の具体例を示す図である。
【図22】本発明に係るデータフォーマットの別の例を示す図である。
【図23】複数の記録ヘッドを用いてノンアジマス方式とヘリカル・スキャン方式で磁気記録メディアに記録されるデータフォーマットの概念図である。
【図24】複数の記録ヘッドを用いてダブルアジマス方式とヘリカル・スキャン方式により記録媒体に記録されるデータフォーマットの概念図である
【図25】本発明者らが過去に提案した磁気記録再生方式を採用した記録装置の構成を示す図である。
【図26】図20の記録装置によるユニット記録の動作を示すフローチャートである。
【図27】本発明者らが過去に提案した磁気記録再生方式を採用した再生装置の構成を示す図である。
【図28】図22の再生装置のユニット再生の動作の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0254】
1 記録データ
2 磁気記録メディア
3 再生データ
21 プリアンブル
22 データ
31,32,33 分離パターン
34,35,36 チャネル行列
51 ユニット
100 記録装置
200 再生装置
210 再生ヘッドアレイ
220 チャネル再生部
221−1,221−2,221−3 再生アンプ
224−1,224−2,224−3 ゲイン調整部
225−1,225−2,225−3 A/Dコンバータ
230 信号分離処理部
231 同期信号検出器
232 チャネル推定演算部
233 チャネル行列変換部
234 チャネル行列記憶部
235 信号分離演算部
236 記憶部
237 チャネル行列推定部
240 マルチトラック復調部
241−1,241−2,241−3 等化器
243−1,243−2,243−3 検出器
244−1,244−2,244−3 同期信号検出器
245−1,245−2,245−3 復号器
260 復元部
261 データ結合器
R−1,R−2,R−3 再生ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のトラックを有し、前記トラックごとに、データと、1以上の前記トラックに跨って信号を再生することが可能な再生ヘッドと前記複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係を検出するために必要なパターンを含むプリアンブルとが記録され、前記複数のトラックの前記データ及び前記プリアンブルが、前記データを再生するための信号処理の一単位であるユニットとして記録された記録媒体から前記データを再生する装置であって、
前記ユニットごとの前記パターンの再生信号をもとに、前記再生ヘッドと前記複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係に相当するチャネル行列を演算するチャネル推定演算部と、
前記チャネル行列と逆行列または一般化逆行列との組み合わせが予め複数記憶され、前記チャネル推定演算部の演算結果である前記チャネル行列に対応する前記逆行列または前記一般化逆行列を出力するチャネル行列記憶部と、
前記チャネル行列記憶部より出力された前記逆行列または前記一般化逆行列を用いて、前記再生ヘッドによって再生された前記1ユニット分の前記データの再生信号から、前記トラックごとの前記データの再生信号を分離する信号分離演算部と
を具備することを特徴とするデータ再生装置。
【請求項2】
請求項1に記載のデータ再生装置であって、
前記チャネル推定演算部の演算結果である前記チャネル行列を前記チャネル行列記憶部に予め記憶されたチャネル行列に同定するチャネル行列変換部をさらに有し、
前記チャネル行列記憶部は、前記チャネル行列変換部によって同定された前記チャネル行列に対応する前記逆行列または前記一般化逆行列を出力することを特徴とするデータ再生装置。
【請求項3】
請求項1に記載のデータ再生装置であって、
前記信号分離演算部は、前記チャネル推定演算部の演算結果である前記チャネル行列を入力して、このチャネル行列の前記逆行列または前記一般化逆行列を求める逆行列演算部をさらに有し、前記チャネル行列記憶部より出力された前記逆行列または前記一般化逆行列を用いて前記トラックごとの前記データの再生信号を分離する第1のモードと、前記逆行列演算部によって求められた前記逆行列または前記一般化逆行列を用いて前記トラックごとの前記データの再生信号を分離する第2のモードとを切り替えて動作することを特徴とするデータ再生装置。
【請求項4】
請求項1に記載のデータ再生装置であって、
前記ユニットは前記記録媒体にトラック方向に複数配置されており、
連続する複数の前記ユニット内の前記パターンの再生信号をもとに前記チャネル推定演算部にて求められた複数の前記チャネル行列を用いて、前記データの区間内で可変の複数の前記チャネル行列を推定するチャネル行列推定部をさらに具備し、
前記チャネル行列記憶部は、前記チャネル行列推定部により推定された前記複数のチャネル行列にそれぞれ対応する前記逆行列または前記一般化逆行列を出力することを特徴とするデータ再生装置。
【請求項5】
請求項4に記載のデータ再生装置であって、
前記チャネル行列推定部により推定された前記複数のチャネル行列を、前記チャネル行列記憶部に予め記憶された前記チャネル行列にそれぞれ同定するチャネル行列変換部をさらに有し、
前記チャネル行列記憶部は、前記チャネル行列変換部によってそれぞれ同定された前記複数のチャネル行列にそれぞれ対応する前記逆行列または前記一般化逆行列を出力することを特徴とするデータ再生装置。
【請求項6】
請求項4に記載のデータ再生装置であって、
前記チャネル行列推定部は、連続する複数の前記ユニット内の前記パターンの再生信号をもとに前記チャネル推定演算部によって求められた前記複数のチャネル行列から、直線補間によって、前記データの個々の区間にそれぞれ対応する複数のチャネル行列を推定することを特徴とするデータ再生装置。
【請求項7】
請求項1に記載のデータ再生装置であって、
前記パターンが、前記トラックごとにユニークな位置に配置された、最小記録波長と同等あるいはそれ以上の記録波長の信号からなる分離パターンであることを特徴とするデータ再生装置。
【請求項8】
請求項1に記載のデータ再生装置であって、
前記パターンが、トラッキングサーボ情報であることを特徴とするデータ再生装置。
【請求項9】
請求項1に記載のデータ再生装置であって、
前記1ユニット分の複数のトラックに対してそれぞれ異なる位置関係で信号を再生可能なように、前記再生ヘッドを複数備えることを特徴とするデータ再生装置。
【請求項10】
複数のトラックを有し、前記トラックごとに、データと、1以上の前記トラックに跨って信号を再生することが可能な再生ヘッドと前記複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係を検出するために必要なパターンを含むプリアンブルとが記録され、前記複数のトラックの前記データ及び前記プリアンブルが、前記データを再生するための信号処理の一単位であるユニットとして記録された記録媒体から前記データを再生する方法であって、
前記ユニットごとの前記パターンの再生信号をもとに、チャネル推定演算によって、前記再生ヘッドと前記複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係に相当するチャネル行列を求めるステップと、
前記チャネル行列と逆行列または一般化逆行列との組み合わせが予め複数記憶されたチャネル行列記憶部を設けておき、このチャネル行列記憶部から、前記チャネル推定演算の結果であるチャネル行列に対応する逆行列または一般化逆行列を出力するステップと、
前記出力された逆行列または一般化逆行列を用いて、前記再生ヘッドによって再生された前記1ユニット分の前記データの再生信号から、前記トラックごとの前記データの再生信号を分離するステップと
を具備することを特徴とするデータ再生方法。
【請求項11】
請求項10に記載のデータ再生方法であって、
前記チャネル推定演算の結果であるチャネル行列を前記チャネル行列記憶部に予め記憶されたチャネル行列に同定するステップをさらに有し、
前記逆行列出力ステップは、前記同定されたチャネル行列に対応付けて前記チャネル行列記憶部に記憶された逆行列または一般化逆行列を出力することを特徴とするデータ再生方法。
【請求項12】
請求項10に記載のデータ再生方法であって、
前記ユニットは前記記録媒体にトラック方向に複数配置されており、
連続する複数の前記ユニット内の前記パターンの再生信号をもとに前記チャネル推定演算によって求められた複数のチャネル行列を用いて、前記データの区間内で可変の複数のチャネル行列を推定するステップをさらに具備し、
前記逆行列出力ステップは、前記推定されたチャネル行列に対応付けて前記チャネル行列記憶部に記憶された逆行列または一般化逆行列を出力することを特徴とするデータ再生方法。
【請求項13】
請求項12に記載のデータ再生方法であって、
前記推定された前記複数のチャネル行列をそれぞれ前記チャネル行列記憶部に予め記憶されたいずれかのチャネル行列に同定するステップをさらに有し、
前記逆行列出力ステップは、前記同定されたチャネル行列に対応付けて前記チャネル行列記憶部に記憶された逆行列または一般化逆行列を出力することを特徴とするデータ再生方法。
【請求項14】
記録媒体に複数のトラックを記録するデータ記録装置であって、
前記トラックごとに記録すべきデータを符号化するマルチトラック記録符号化部と、
前記マルチトラック記録符号化部により符号化された前記トラックごとの前記データの符号列にそれぞれ、1以上の前記トラックに跨って信号を再生することが可能な再生ヘッドと前記複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係を検出するために必要なパターンを含むプリアンブルを付加するマルチトラックプリアンブル付加部と、
前記複数のトラックの前記プリアンブル及び前記データを、前記データを再生するための信号処理の一単位であるユニットとして、このユニットが前記トラック方向に複数配置されるように、前記マルチトラックプリアンブル付加部によって前記プリアンブルが付加された前記トラックごとのデータを前記記録ヘッドにより前記記録媒体に記録するマルチトラック記録部と
を具備するデータ記録装置と、
前記記録媒体から前記データを再生するデータ再生装置であって、
前記ユニットごとの前記パターンの再生信号をもとに、前記再生ヘッドと前記複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係に相当するチャネル行列を演算するチャネル推定演算部と、
前記チャネル行列と逆行列または一般化逆行列との組み合わせが予め複数記憶され、前記チャネル推定演算部の演算結果である前記チャネル行列に対応する前記逆行列または前記一般化逆行列を出力するチャネル行列記憶部と、
前記チャネル行列記憶部より出力された前記逆行列または前記一般化逆行列を用いて、前記再生ヘッドによって再生された前記1ユニット分の前記データの再生信号から、前記トラックごとの前記データの再生信号を分離する信号分離演算部と
を具備するデータ再生装置と
を具備することを特徴とするデータ記録再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2008−282504(P2008−282504A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−127423(P2007−127423)
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】