説明

データ処理装置、医用装置、データ処理方法、およびプログラム

【課題】読影効率を改善する。
【解決手段】被検体に造影剤を投与した後の各時相(肝動脈相、門脈相、肝細胞造影相)の画像データと、被検体に造影剤を投与する前の画像データとの差分を求める。そして、肝動脈相に対応する差分後の時相の画像データを、赤チャンネルのデータに変換し、門脈相に対応する差分後の時相の画像データを、青チャンネルのデータに変換し、肝細胞造影相に対応する差分後の時相の画像データを、緑チャンネルのデータに変換する。次に、肝動脈相、門脈相、肝細胞造影相の色チャンネルのデータを合成し、RGB画像データを作成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造影剤が投与された被検体の撮像部位の画像データを処理するデータ処理装置、医用装置、データ処理方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴装置、CT装置、超音波診断装置などの医用装置を用いて被検体の診断を行う方法として、被検体に造影剤を投与し、造影剤を投与した後に現れる各時相の画像データを取得する方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2006/051831号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、多時相造影撮像では、読影しなければならない画像枚数が非常に増えており、読影に要する時間が長くなっている。したがって、読影効率を改善することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本形態の第1の態様は、造影剤が投与された被検体の撮像部位の画像データを処理するデータ処理装置であって、
前記被検体に造影剤を投与した後の各時相の画像データと、前記被検体に造影剤を投与する前の画像データとの差分を求める差分手段と、
前記差分手段により得られた差分後の各時相の画像データを、各時相を識別するための異なる色チャンネルのデータに変換する変換手段と、
前記変換手段により得られた前記各時相の色チャンネルのデータを合成する合成手段と、
を有するデータ処理装置である。
本形態の第2の態様は、第1の態様のデータ処理装置を有する医用装置である。
【0006】
本形態の第3の態様は、造影剤が投与された被検体の撮像部位の画像データを処理するデータ処理方法であって、
前記被検体に造影剤を投与した後の各時相の画像データと、前記被検体に造影剤を投与する前の画像データとの差分を求める差分ステップと、
前記差分ステップにより得られた差分後の各時相の画像データを、各時相を識別するための異なる色チャンネルのデータに変換する変換ステップと、
前記変換ステップにより得られた前記各時相の色チャンネルのデータを合成する合成ステップと、
を有するデータ処理方法である。
【0007】
本形態の第4の態様は、造影剤が投与された被検体の撮像部位の画像データを処理するためのプログラムであって、
前記被検体に造影剤を投与した後の各時相の画像データと、前記被検体に造影剤を投与する前の画像データとの差分を求める差分処理と、
前記差分処理により得られた差分後の各時相の画像データを、各時相を識別するための異なる色チャンネルのデータに変換する変換処理と、
前記変換処理により得られた前記各時相の色チャンネルのデータを合成する合成処理と、
を計算機に実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0008】
変換手段により得られた各時相の色チャンネルのデータを合成することによって、異なる時相のデータを一つの画像データにすることができるので、各時相ごとに読影をする必要がなく、読影効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の形態の磁気共鳴装置の概略図である。
【図2】本形態で実行されるスキャンを示す図である。
【図3】撮影部位を概略的に示す図である。
【図4】MR装置100の動作フローを示す図である。
【図5】画像データの差分を求める方法の説明図である。
【図6】差分後の各時相の画像データΔD〜ΔDを、各時相を識別するための色チャンネルのデータに変換するときの説明図である。
【図7】RGB画像データDrgbの作成方法の説明図である。
【図8】モニタに表示された断層面の一例である。
【図9】、第2の形態で実行されるスキャンの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明を実施するための形態について説明するが、本発明は、以下の形態に限定されることはない。
【0011】
(1)第1の形態
図1は、本発明の第1の形態の磁気共鳴装置の概略図である。
磁気共鳴装置(以下、「MR装置」と呼ぶ。MR:Magnetic Resonance)100は、マグネット2、テーブル3、受信コイル4などを有している。
【0012】
マグネット2は、被検体12が収容されるボア21を有している。また、マグネット2には、超伝導コイル22、勾配コイル23、送信コイル24などが内蔵されている。超伝導コイル22は静磁場を印加し、勾配コイル23は勾配パルスを印加し、送信コイル24はRFパルスを送信する。尚、超伝導コイル22の代わりに、永久磁石を用いてもよい。
【0013】
テーブル3は、クレードル3aを有している。クレードル3aは、ボア21内に移動できるように構成されている。クレードル3aによって、被検体12はボア21に搬送される。
【0014】
受信コイル4は、被検体12の腹部に取り付けられている。受信コイル4は、被検体12からの磁気共鳴信号を受信する。
【0015】
MR装置100は、更に、シーケンサ5、送信器6、勾配磁場電源7、受信器8、中央処理装置9、操作部10、および表示部11を有している。
【0016】
シーケンサ5は、中央処理装置9の制御を受けて、パルスシーケンスの情報を送信器6および勾配磁場電源7に送る。
【0017】
送信器6は、シーケンサ5から送られた情報に基づいて、RFコイル24を駆動するための信号を出力する。
【0018】
勾配磁場電源7は、シーケンサ5から送られた情報に基づいて、勾配コイル23を駆動するための信号を出力する。
【0019】
受信器8は、受信コイル4で受信された磁気共鳴信号を信号処理し、中央処理装置9に出力する。
【0020】
中央処理装置9は、シーケンサ5および表示部11に必要な情報を伝送したり、受信器8から受け取ったデータに基づいて画像を再構成するなど、MR装置100の各種の動作を実現するように、MR装置100の各部の動作を制御する。中央処理装置9は、例えばコンピュータ(computer)によって構成される。中央処理装置9は、画像データ作成手段91〜合成手段94などを有している。
【0021】
画像データ作成手段91は、被検体12に造影剤を投与した後の各時相の画像データと、被検体12に造影剤を投与する前の画像データとを作成する。
【0022】
差分手段92は、被検体12に造影剤を投与した後の各時相の画像データと、被検体12に造影剤を投与する前の画像データとの差分を求める。
【0023】
変換手段93は、差分手段92により得られた差分後の各時相の画像データを、各時相を識別するための異なる色チャンネルのデータに変換する。
【0024】
合成手段94は、変換手段93により得られた各時相の色チャンネルのデータを合成する。
【0025】
中央処理装置9は、画像データ作成手段91〜合成手段94を構成する装置の一例であり、所定のプログラムを実行することにより、これらの手段として機能する。中央処理装置は、データ処理装置の一例である。
【0026】
操作部10は、オペレータにより操作され、種々の情報を中央処理装置9に入力する。表示部11は種々の情報を表示する。
MR装置100は、上記のように構成されている。
【0027】
図2は本形態で実行されるスキャンを示す図、図3は撮影部位を概略的に示す図である。
本形態では、肝臓を含む部位を撮影部位Rとして、スキャンSC〜SCが実行される。
【0028】
スキャンSCは、被検体12に造影剤を投与する前に撮影部位Rを撮影するためのスキャンである。スキャンSC〜SCは、被検体12に造影剤を投与した後に撮影部位Rを撮影するためのスキャンである。
【0029】
スキャンSCは、撮影部位Rが肝動脈相のときに実行される。肝動脈相は、造影剤が主に肝動脈から肝臓に取り込まれるときの時相であり、造影剤を投与してから早期の段階(例えば、造影剤を投与してから数十秒後)に現れる時相である。
【0030】
スキャンSCは、撮影部位Rが門脈相のときに実行される。門脈相は、造影剤が主に門脈から肝臓に取り込まれるときの時相であり、肝動脈相の後(例えば、肝動脈相の数十秒後)に現れる時相である。
【0031】
スキャンSCは、撮影部位Rが肝細胞造影相のときに実行される。肝細胞造影相は、正常肝細胞の部分を高信号で取得するのに適した時相であり、造影剤を投与してから或る程度の時間が経過した段階(例えば、造影剤を投与してから数十分後)に現れる時相である。
次に、MR装置100の動作フローについて説明する。
【0032】
図4は、MR装置100の動作フローを示す図である。
ステップST1では、被検体12に造影剤を投与する前のスキャンSCを実行する。スキャンSCを実行することによって、被検体12に造影剤を投与する前の撮影部位Rから磁気共鳴信号が取得される。画像データ作成手段91(図1参照)は、スキャンSCにより得られた磁気共鳴信号に基づいて、造影剤を投与する前の撮影部位Rの画像データを作成する。スキャンSCを実行した後、ステップST2に進む。
ステップST2では、被検体12に造影剤を投与する。
【0033】
ステップST3では、撮影部位Rが肝動脈相のときの磁気共鳴信号を収集するためのスキャンSCを実行する。撮影部位Rが肝動脈相であるか否かを判断する方法の一例としては、造影剤を投与する前から、肝動脈(又は肝動脈の上流側の血管)から磁気共鳴信号を収集するためのスキャンを繰り返し実行し、信号強度の時間変化を求める方法がある。肝動脈(又は肝動脈の上流側の血管)に造影剤のボーラスが近づくと、それに伴って、信号強度が大きくなるので、信号強度の時間変化を求めることによって、撮像部位が肝動脈相であるか否かを判断することができる。画像データ作成手段91は、スキャンSCにより得られた磁気共鳴信号に基づいて、肝動脈相における撮影部位Rの画像データを作成する。スキャンSCを終了したら、ステップST4に進む。
【0034】
ステップST4では、撮影部位Rが門脈相のときの磁気共鳴信号を収集するためのスキャンSCを実行する。撮影部位Rが門脈相であるか否かを判断する方法の一例としては、門脈(又は門脈の上流側の血管)から磁気共鳴信号を収集するためのスキャンを繰り返し実行し、信号強度の時間変化を求める方法がある。画像データ作成手段91は、スキャンSCにより得られた磁気共鳴信号に基づいて、門脈相における撮影部位Rの画像データを作成する。スキャンSCを終了したら、ステップST5に進む。
【0035】
ステップST5では、撮影部位が肝細胞造影相のときの磁気共鳴信号を収集するためのスキャンSCを実行する。肝細胞造影相は、造影剤を投与してから或る程度の時間が経過した段階(例えば、造影剤を投与してから数十分後)に現れる。したがって、オペレータは、造影剤を投与してから数十分(例えば、20分)が経過したら、スキャンSCを実行する。画像データ作成手段91は、スキャンSCにより得られた磁気共鳴信号に基づいて、肝細胞造影相における撮影部位Rの画像データを作成する。スキャンSCを終了したら、ステップST6に進む。
【0036】
ステップST6では、差分手段92(図1参照)が、造影剤を投与した後の各時相の画像データと、造影剤を投与する前の画像データとの差分を求める。
【0037】
図5は、画像データの差分を求める方法の説明図である。
図5(a)は、肝動脈相の画像データと、造影剤投与前の画像データとの差分を求めるときの説明図、図5(b)は、門脈相の画像データと、造影剤投与前の画像データとの差分を求めるときの説明図、図5(c)は、肝細胞造影相の画像データと、造影剤投与前の画像データとの差分を求めるときの説明図である。
【0038】
例えば、肝動脈相の画像データと、造影剤投与前の画像データとの差分を求める場合(図5(a)参照)、各ボクセルごとに、信号強度の差を求める。例えば、ボクセルVにおける信号強度の差を求める場合、肝動脈相の画像データDのボクセルVの信号強度Si1から、造影剤投与前の画像データDのボクセルVの信号強度Si0を減算し、ボクセルViの信号強度の差ΔSi1を求める。その他のボクセルについても、同様の手順で、信号強度の差を求める。このようにして、差分後の肝動脈相の画像データΔDが得られる。
【0039】
以下同様に、門脈相の画像データDから、造影剤投与前の画像データDを減算し、差分後の門脈相の画像データΔDを求め(図5(b)参照)、更に、肝細胞造影相の画像データDから、造影剤投与前の画像データDを減算し、差分後の肝細胞造影相の画像データΔDを求める(図5(c)参照)。差分後の各時相の画像データΔD〜ΔDを求めた後、ステップST7に進む。
【0040】
ステップST7では、変換手段93(図1参照)が、ステップST6で得られた差分後の各時相の画像データΔD〜ΔDを、各時相を識別するための色チャンネルのデータに変換する。
【0041】
図6は、差分後の各時相の画像データΔD〜ΔDを、各時相を識別するための色チャンネルのデータに変換するときの説明図である。
【0042】
本形態では、差分後の肝動脈相の画像データΔDを赤チャンネルのデータに変換し(図6(a)参照)、差分後の門脈相の画像データΔDを青チャンネルのデータに変換し(図6(b)参照)、差分後の肝細胞造影相の画像データΔDを緑チャンネルのデータに変換する(図6(c)参照)。
【0043】
例えば、差分後の肝動脈相の画像データΔDを赤チャンネルのデータに変換する場合(図6(a)参照)、各ボクセルの信号強度の差に基づいて、赤チャンネルの階調値を決定する。本形態では、階調は、256段階の階調に分けられているが(最小値0、最大値255)、256段階に限定されることはなく、例えば128段階でもよい。図6(a)には、ボクセルVの信号強度の差ΔSi1に基づいて、赤チャンネルの階調値Griを決定するときの例と、ボクセルVの信号強度の差ΔSj1に基づいて、赤チャンネルの階調値Grjを決定するときの例とが示されている。尚、ボクセルVの信号強度の差ΔSi1と、ボクセルVの信号強度の差ΔSj1との間には、以下の関係があるとする。
ΔSi1>ΔSj1 ・・・(1)
【0044】
ボクセルVは信号強度の差がΔSi1であるので、変換手段93は、赤チャンネルがとり得る階調値0〜255の中から、ΔSi1の値に対応する階調値Griを求める。したがって、差分後の肝動脈相の画像データΔDのボクセルVは、階調値Griの赤チャンネルに変換される。一方、ボクセルVの信号強度の差ΔSj1は、ボクセルVの信号強度の差ΔSi1よりも小さいので、ボクセルVは、ボクセルVよりも小さい階調値Grjの赤チャンネルに変換される。
【0045】
以下同様に、他のボクセルについても、信号強度の差に基づいて、赤チャンネルの階調値を決定する。このようにして、差分後の肝動脈相の画像データΔDから、肝動脈相の赤チャンネルのデータDrを得ることができる。
【0046】
そして、差分後の門脈相の画像データΔDは青チャンネルのデータDbに変換され(図6(b)参照)、肝細胞造影相の画像データΔDは緑チャンネルのデータDgに変換される(図6(c)参照)。青チャンネルおよび緑チャンネルの階調値の決定方法は、赤チャンネルの階調値の決定方法と同じである。
【0047】
このようにして、差分後の肝動脈相の画像データΔD、差分後の門脈相の画像データΔD、差分後の肝細胞造影相の画像データΔDは、それぞれ、赤チャンネルのデータD(肝動脈相のデータ)、青チャンネルのデータD(門脈相のデータ)、緑チャンネルのデータD(肝細胞造影相のデータ)に変換される。この変換が終了したら、ステップST8に進む。
【0048】
ステップST8では、合成手段94(図1参照)が、赤チャンネルのデータD(肝動脈相のデータ)、青チャンネルのデータD(門脈相のデータ)、緑チャンネルのデータD(肝細胞造影相のデータ)を合成し、RGB画像データを作成する(図7参照)。
【0049】
図7は、RGB画像データDrgbの作成方法の説明図である。
RGB画像データを作成する場合、赤チャンネルのデータD(肝動脈相のデータ)、青チャンネルのデータD(門脈相のデータ)、緑チャンネルのデータD(肝細胞造影相のデータ)を、各ボクセルごとに合成する。例えば、RGB画像データのボクセルVのデータを作成する場合、以下のボクセルのデータを合成する。
(1)赤チャンネルのデータDのボクセルVの階調値Gri
(2)青チャンネルのデータDのボクセルVの階調値Gbi
(3)緑チャンネルのデータDのボクセルVの階調値Ggi
【0050】
階調値Gri、Gbi、およびGgiは、それぞれ、肝動脈相に対応する赤チャンネルの階調値、門脈相に対応する青チャンネルの階調値、および肝細胞造影相に対応する緑チャンネルの階調値を表している。したがって、これらの階調値Gri、Gbi、およびGgiを合成することによって、ボクセルVにおけるRGBデータDV=(Gri,Gbi,Ggi)が得られる。以下同様に、他のボクセルについても、赤チャンネルのデータD(肝動脈相のデータ)、青チャンネルのデータD(門脈相のデータ)、緑チャンネルのデータD(肝細胞造影相のデータ)を合成する。このようにして、撮影部位のRGB画像データDrgbが作成される。RGB画像データDrgbを作成したら、ステップST9に進む。
【0051】
ステップST9では、読影医が、RGB画像データDrgbの読影を行う。読影医は、RGB画像データDrgbの読影を行うために、RGB画像データDrgbをモニタに表示する。本形態では、RGB画像データDrgbを表示する場合、RGB画像データDrgbの断層面を表示させる(図8参照)。
【0052】
図8は、モニタに表示された断層面の一例である。図8では、RGB画像データDrgbのボクセルVを横切るアキシャル面SAの画像データXを表示した例が示されている。
【0053】
アキシャル面SAの画像データXの各ピクセルは、RGBデータで表される。例えば、ピクセルP(ボクセルVに対応するピクセル)のRGBデータDPは、肝動脈相に対応する赤チャンネルの階調値Gri、門脈相に対応する青チャンネルの階調値Gbi、および肝細胞造影相に対応する緑チャンネルの階調値Ggiで表される。画像データXの他のピクセルも、ピクセルPと同様に、RGBデータで表される。
【0054】
モニタに表示されたアキシャル面SAの画像データXの各ピクセルは、肝動脈相に対応する赤チャンネルの階調値、門脈相に対応する青チャンネルの階調値、および肝細胞造影相に対応する緑チャンネルの階調値で表される。したがって、読影医は、モニタに表示されたアキシャル面SAの画像データXを見るだけで、3つの時相(肝動脈相、門脈相、および肝細胞造影相)のうちのどの時相でアキシャル面SAのどの部分が造影剤で染まったのかを、確認することができる。このため、読影医は、3つの時相それぞれの画像データを見なくても読影ができるので、読影に必要な時間を短縮することができ、読影効率を向上させることができる。特に、Gd-EOB-DTPA(ethoxybenzyl diethylenetriamine pentaacetic acid)を用いた造影剤による肝腫瘍評価に関しては、肝動脈のわずかな造影剤の染まり具合を評価する必要があるので、3つの時相のデータを異なる色チャンネルのデータに変換することによって、造影剤の染まり具合の識別が容易となる。
【0055】
尚、本形態では、肝動脈相、門脈相、および肝細胞造影相には、それぞれ赤チャンネル、青チャンネル、および緑チャンネルが割り当てられているが、色チャンネルの割当ては、これに限定されることはない。例えば、肝動脈相に青チャンネルを割り当てて、門脈相に赤チャンネルを割り当ててもよい。しかし、医用分野では、動脈は赤色で表示し、静脈は青色で表示するのが通例であるので、これに合わせて、本形態では、動脈に関する時相(肝動脈相)には赤チャンネルを割り当てて、静脈に関する時相(門脈相)には青チャンネルを割り当てている。したがって、読影医は、モニタに表示された画像の色を識別することによって、肝動脈相において造影剤で染まった部分、門脈相において造影剤で染まった部分を、直感的に認識することができる。
【0056】
また、本形態では、肝動脈相、門脈相、および肝細胞造影相の3つの時相の画像データを取得しているが、必ずしも3つの時相の画像データを取得する必要はなく、2つの時相の画像データのみを取得してもよい。例えば、肝動脈相および肝細胞造影相の2つの時相の画像データのみを取得してもよい。この場合、門脈相の画像データは取得されないので、RGB画像データを作成するときには、門脈相に対応する青チャンネルの階調値をゼロに設定し、肝動脈相に対応する赤チャンネルのデータDと、肝細胞造影相に対応する緑チャンネルのデータDとを合成すればよい。ただし、青チャンネルの階調値はゼロに設定されているので、作成されたRGB画像データは、青チャンネルは使用されておらず、赤チャンネルおよび緑チャンネルだけを用いて作成された画像データとなる。
【0057】
(2)第2の形態
第2の形態では、被検体12の脚部の血流を撮影する場合について説明する。
【0058】
図9は、第2の形態で実行されるスキャンの説明図である。
第2の形態では、スキャンSC〜SCなどが実行される。
【0059】
スキャンSCは、造影剤を投与する前に実行されるスキャンである。
スキャンSCは、造影剤のボーラスが脚部の位置pまで到達したときの第1の時相で実行されるスキャンである。
スキャンSCは、造影剤のボーラスが脚部の位置qまで到達したときの第2の時相で実行されるスキャンである。
スキャンSCは、造影剤のボーラスが脚部の位置rまで到達したときの第3の時相で実行されるスキャンである。
【0060】
次に、第2の形態においてRGB画像データを作成する手順について説明する。この説明に当たっては、第1の形態と同様に、図4のフローを参照しながら説明する。
【0061】
ステップST1において、スキャンSCを実行し、造影剤が投与される前の画像データを取得する。次に、ステップST2において造影剤を投与する。そして、ステップST3、ST4、およびST5において、それぞれスキャンSC、SC、およびSCを実行する。スキャンSC、SC、およびSCを実行することによって、造影剤が投与された後の第1の時相、第2の時相、および第3の時相における脚部の画像データが得られる。スキャンSC、SC、およびSCを実行したら、ステップST6に進む。
【0062】
ステップST6では、第1の形態と同様の手順で、第1の時相、第2の時相、および第3の時相によって得られた信号強度と、造影剤投与前に得られた信号強度との差を算出し、差分後の各時相の画像データを算出する(図5参照)。
【0063】
ステップST7では、第1の形態と同様の手順で、差分後の各時相の画像データを、赤チャンネルのデータ、青チャンネルのデータ、緑チャンネルのデータに変換する(図6参照)。
【0064】
ステップST8では、第1の形態と同様の手順で、各時相に対応する赤チャンネルのデータ、青チャンネルのデータ、および緑チャンネルのデータを合成し、RGB画像データを作成する(図7参照)。最後に、ステップST9において、モニタにRGB画像データを表示し、読影を行う。
【0065】
第2の形態では、各時相ごとに得られた脚部の血流の画像データを合成し、RGB画像データを作成している。したがって、読影医は、モニタに表示された断層画像の色を識別することによって、脚部を流れる血液の速さがどの位であるのかを判断することが可能となる。
【0066】
また、第2の形態では、3つの時相のデータを取得してRGB画像データを作成しているが、2つの時相のデータを取得してRGB画像データを作成してもよい。
【0067】
尚、第1および第2の形態では、MR装置で造影剤投与後の各時相の画像データを取得し、RGB画像データを合成する場合について説明したが、本発明は、MR装置に限定されることはなく、CT装置などの医用装置を用いて造影剤投与後の各時相の画像データを取得し、RGB画像データを合成する場合にも適用することができる。
【0068】
また、第1および第2の形態では、RGB画像データを作成する例について説明しているが、本発明は、RGB画像データを作成する場合に限定されることはない。例えば、シアン(C)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、ブラック(K)を用いた画像データを作成してもよい。この場合、4つの時相のデータを1つの画像データに合成することが可能となる。
【符号の説明】
【0069】
2 マグネット
3 テーブル
3a クレードル
4 受信コイル
5 シーケンサ
6 送信器
7 勾配磁場電源
8 受信器
9 中央処理装置
10 操作部
11 表示部
12 被検体
21 ボア
22 超伝導コイル
23 勾配コイル
24 送信コイル
91 画像データ作成手段
92 差分手段
93 変換手段
94 合成手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
造影剤が投与された被検体の撮像部位の画像データを処理するデータ処理装置であって、
前記被検体に造影剤を投与した後の各時相の画像データと、前記被検体に造影剤を投与する前の画像データとの差分を求める差分手段と、
前記差分手段により得られた差分後の各時相の画像データを、各時相を識別するための異なる色チャンネルのデータに変換する変換手段と、
前記変換手段により得られた前記各時相の色チャンネルのデータを合成する合成手段と、
を有するデータ処理装置。
【請求項2】
前記合成手段は、
前記変換手段により得られた前記各時相の色チャンネルのデータを合成し、カラー画像データを作成する、請求項1に記載のデータ処理装置。
【請求項3】
前記被検体に造影剤を投与した後の各時相の画像データと、前記被検体に造影剤を投与する前の画像データとを作成する画像データ作成手段を有する、請求項2に記載のデータ処理装置。
【請求項4】
前記画像データ作成手段は、
前記被検体に造影剤を投与した後の各時相の画像データとして、前記第1の時相の画像データ、第2の時相の画像データ、および第3の時相の画像データを作成する、請求項3に記載のデータ処理装置。
【請求項5】
前記差分手段は、
前記第1の時相の画像データ、第2の時相の画像データ、および第3の時相の画像データと、前記被検体に造影剤を投与する前の画像データとの差分を求め、
前記変換手段は、
差分後の第1の時相の画像データを第1の色チャンネルのデータに変換し、差分後の第2の時相の画像データを第2の色チャンネルのデータに変換し、差分後の第3の時相の画像データを第3の色チャンネルのデータに変換し、
前記合成手段は、
前記第1の色チャンネルのデータ、前記第2の色チャンネルのデータ、および前記第3の色チャンネルのデータを合成し、前記カラー画像データを作成する、請求項4に記載のデータ処理装置。
【請求項6】
前記第1の色チャンネルのデータ、前記第2の色チャンネルのデータ、前記第3の色チャンネルのデータは、それぞれ、赤チャンネルのデータ、青チャンネルのデータ、および緑チャンネルのデータである、請求項5に記載のデータ処理装置。
【請求項7】
前記撮影部位は肝臓を含んでおり、
前記第1の時相、第2の時相、および第3の時相は、それぞれ肝動脈相、門脈相、および肝細胞造影相である、請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載のデータ処理装置。
【請求項8】
前記画像データ作成手段は、
前記被検体に造影剤を投与した後の各時相の画像データとして、前記第1の時相の画像データおよび第2の時相の画像データを作成する、請求項3に記載のデータ処理装置。
【請求項9】
前記差分手段は、
前記第1の時相の画像データおよび第2の時相の画像データと、前記被検体に造影剤を投与する前の画像データとの差分を求め、
前記変換手段は、
差分後の第1の時相の画像データを第1の色チャンネルのデータに変換し、差分後の第2の時相の画像データを第2の色チャンネルのデータに変換し、
前記合成手段は、
前記第1の色チャンネルのデータと前記第2の色チャンネルのデータとを合成し、前記カラー画像データを作成する、請求項8に記載のデータ処理装置。
【請求項10】
前記カラー画像データは、
赤チャンネル、青チャンネル、および緑チャンネルのうちのいずれか2つの色チャンネルを用いて作成された画像データである、請求項9に記載のデータ処理装置。
【請求項11】
前記撮影部位は肝臓を含んでおり、
前記第1の時相および第2の時相は、それぞれ肝動脈相および肝細胞造影相である、請求項8〜10のうちのいずれか一項に記載のデータ処理装置。
【請求項12】
前記撮影部位は脚部を含んでいる、請求項1〜6、8〜10のうちのいずれか一項に記載のデータ処理装置。
【請求項13】
請求項1〜12のうちのいずれか一項に記載のデータ処理装置を有する医用装置。
【請求項14】
造影剤が投与された被検体の撮像部位の画像データを処理するデータ処理方法であって、
前記被検体に造影剤を投与した後の各時相の画像データと、前記被検体に造影剤を投与する前の画像データとの差分を求める差分ステップと、
前記差分ステップにより得られた差分後の各時相の画像データを、各時相を識別するための異なる色チャンネルのデータに変換する変換ステップと、
前記変換ステップにより得られた前記各時相の色チャンネルのデータを合成する合成ステップと、
を有するデータ処理方法。
【請求項15】
造影剤が投与された被検体の撮像部位の画像データを処理するためのプログラムであって、
前記被検体に造影剤を投与した後の各時相の画像データと、前記被検体に造影剤を投与する前の画像データとの差分を求める差分処理と、
前記差分処理により得られた差分後の各時相の画像データを、各時相を識別するための異なる色チャンネルのデータに変換する変換処理と、
前記変換処理により得られた前記各時相の色チャンネルのデータを合成する合成処理と、
を計算機に実行させるためのプログラム。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−94229(P2013−94229A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237061(P2011−237061)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(300019238)ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー (1,125)
【Fターム(参考)】