説明

データ処理装置

【課題】データの送受信処理等を行うデータ処理装置に関し、装置としての信頼性を向上すると共に、省電力化を図る。
【解決手段】クロックに従ってデータ処理を実行する装置であって、クロックの供給停止を制御するクロックゲーティング部20,21を備え、このクロックゲーティング部20,21は、0系と1系とのデータ処理部、例えば、端末対応部10,11対応のクロックの供給停止を制御する構成を備え、0系と1系とのデータ処理部対応に正常性を監視して、異常発生側のクロックゲーティング部を介したクロック供給を停止し、正常側のクロックゲーティング部を介してクロック供給を行わせる調停部30等の制御部を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データの送受信処理等を行い、且つ比較的簡単な構成により省電力化を可能としたデータ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
データの送受信処理等を行う複数のデータ処理装置を、二重化構成の伝送路によってリング状に接続したデータ伝送システムは、既に各種の構成が提案され、且つ実用化されている。このようなデータ伝送システムに於いて、例えば、送信側のデータ処理装置から右回り方向と左回り方向とに同一のデータを送信し、受信側のデータ処理装置は、右回り方向と左回り方向とからのそれぞれの受信データについて誤りチェック等により、正常なデータを選択受信し、信頼性を向上したデータ伝送システムが知られている。しかし、右回り方向と左回り方向との両方向に同一のデータを伝送するものであるから、各データ処理装置は、右回り方向と左回り方向との両方向の送受信機能部を常時動作状態とすることになり、消費電力が大きくなる問題があった。これに対して、右回り方向と左回り方向との何れか一方を運用系とし、他方を待機系として、各データ処理装置の運用系側に動作電力を供給してデータ送受信動作を行わせ、待機系側は動作電力供給を停止することにより、省電力化を図り、運用系側の障害発生時は、待機系側に動作電力を供給して、待機系側を運用状態とし、データ伝送を継続することにより、信頼性の維持を図るデータ伝送システムも知られている。
【0003】
又前述の二重化構成の伝送路により複数のデータ処理装置を、リング状に接続したデータ伝送システムに於いて、複数のデータ処理装置の中の1台を主データ処理装置とし、他のデータ処理装置を従データ処理装置とて、主データ処理装置からのクロックを、運用系の伝送路を介して順次従データ処理装置に伝送し、各従データ処理装置は、運用系クロックとして従属同期化処理したクロックにより、データの送受信処理を実行し、運用系障害発生時には、従データ処理装置に於いて、運用系の伝送路ではなく、待機系の伝送路を介して伝送される待機系クロックに同期化させたクロックを発生させるように切替制御し、そのクロックにより、待機系伝送路を介したデータの送受信処理を行う構成とし、運用系と待機系との切替えによりデータ伝送の継続を可能とし、且つ運用系クロックから待機系クロックへの切替えに於ける過渡期の擾乱発生を、運用系クロックに弱結合した引込発振器を用いて回避する手段が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平03−205935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
運用系と待機系との二重化構成の伝送路により複数のデータ処理装置がリング状に接続された従来例のデータ伝送システムに於いて、待機系と運用系との送受信機能部がそれぞれ別個のパッケージ等により構成され、動作電力供給用のスイッチを介してそれぞれ動作電力を供給する構成の場合、その動作電力供給用のスイッチのオン、オフ制御により、運用系の送受信機能部に動作電力を供給している間は、待機系の送受信機能部には動作電力の供給を停止して省電力化を図ることが可能である。しかし、動作電力供給によって各部が直ちに正常動作を開始するには、動作電圧の立上り時間が短い程、安定切替動作を実現することができるが、そのためには、動作電力供給能力を非常に大きくしなければならず、コストアップや配置スペース確保の問題がある。又高密度実装化技術の進歩により、待機系と運用系との送受信機能部等を、高密度実装可能の、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)によって構成することが可能である。その場合、待機系と運用系との送受信機能部に対して、それぞれの動作電力を選択的に供給、停止を可能とする電源スイッチ構成をFPGAに組み込むことは不可能に近いものである。即ち、内部に電源スイッチ構成を設けて、動作電力供給を選択的に行う省電力化構成を実現することは困難であった。
【0006】
本発明は、前述の従来例の問題点を解決するもので、FPGA等による高密度実装構成に於いても、省電力化構成を実現可能とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のデータ処理装置は、クロックに従ってデータ処理を行うデータ処理装置であって、前記クロックの供給と停止とを選択的に制御するクロックゲーティング部と、このクロックゲーティング部からデータ処理を実行するデータ処理部に対してのみ前記クロックを供給するように制御する制御部とを備えている。
【0008】
又前記クロックゲーティング部は、0系と1系とのデータ処理部対応のクロックの供給停止を制御する構成を備え、前記0系と1系とのデータ処理部対応に正常性を監視して、異常発生側のクロックゲーティング部を介したクロック供給を停止し、正常側のクロックゲーティング部を介してクロック供給を行わせる制御部を備えている。
【0009】
又前記クロックゲーティング部は、バス接続された複数のデータ処理部に対して上位装置からのアドレス指定に従ってクロックを順次選択的に供給する構成を備えている。
【0010】
又前記クロックゲーティング部は、複数のチャネル対応回路部に対するクロックを、制御処理部からの制御に従って選択的に供給する構成を備えている。
【発明の効果】
【0011】
クロックゲーティング部は、例えば、FPGAにより他の回路構成と共に構成することも可能であり、且つ各部の構成は、クロック供給により動作し、それにより動作電力を消費するものであるから、動作不要の回路部分には、クロックゲーティング部によりクロック供給を停止制御することによって省電力化を図ることができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例1の要部説明図である。
【図2】本発明の実施例1の要部フローチャートである。
【図3】本発明の実施例2の要部説明図である。
【図4】本発明の実施例3の要部説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のデータ処理装置は、クロックに従ってデータ処理を実行する装置であって、図1を参照して説明すると、クロックの供給停止を制御するクロックゲーティング部を備え、このクロックゲーティング部は、0系と1系とのデータ処理部対応のクロックの供給停止を制御する構成を備え、前記0系と1系とのデータ処理部対応に正常性を監視して、異常発生側のクロックゲーティング部を介したクロック供給を停止し、正常側のクロックゲーティング部を介してクロック供給を行わせる制御部を備えている。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明の実施例1の要部説明図であり、10,11は0系、1系のデータ処理部に相当する端末対応部、20,21は0系、1系のクロックゲーティング部、30は調停部、40は受信系選択部、50は端末回路を示すもので、端末対応部10,11とクロックゲーティング部20,21と調停部30と受信系選択部40とを含むと共に、一部図示を省略した他の機能部を含めたラインインタフェースユニット(LIU;Line Interface Unit)を示す。又1,5は付加TS生成部、2,6は上り速度変換部、3,7は付加TS終端部、4,8は下り速度変換部を示し、0系と1系との何れか一方がデータ伝送処理を行う現用系、他方が待機系となる。又付加TS生成部1,5は、端末対応部10,11からの送信データに各種制御情報等を付加する為のタイムスロットを生成する機能を有し、又付加TS終端部3,7は、受信データに付加されているタイムスロットの終端処理を行い、そのタイムスロットに、BAIS(Back Alarm Indication Signal)情報が付加されている場合、調停部30へ転送する。この調停部30は、BAIS情報に従ってクロックゲーティング部20,21と受信系選択部40とを制御する機能を備えており、0系と1系との状態を監視して、クロック供給の選択制御を行うものである。
【0015】
端末回路50からのデータと端末クロックとは、0系、1系の端末対応部10,11の上り速度変換部2,6にそれぞれ転送される。又調停部30は、例えば、初期設定時に、0系を現用系とし、1系を待機系とした場合、クロックゲーティング部20を介して0系装置クロックを、0系の端末対応部10の付加TS生成部1、上り速度変換部2、付加TS終端部3、下り速度変換部4に供給し、クロックゲーティング部21を閉じて、1系の端末対応部11に対する1系装置クロックの供給を停止する。それにより、1系の端末対応部11は、処理動作停止状態となるから、省電力状態に移行する。その場合、受信系選択部40を制御して、0系の端末対応部10側を選択させ、端末回路50と0系の端末対応部10との間のデータ転送を可能とする。従って、0系端末対応部10を現用系として端末回路50はデータ伝送処理を行わせ、1系端末対応部11は、クロックゲーティング部21を介してクロックが供給されていない休止状態であるから、動作電力は消費されない省電力状態となる。
【0016】
前述のように、0系を現用系としてデータ伝送を実行中に、0系の伝送経路に障害が発生すると、障害発生を通知する為に、付加タイムスロットTSにBAIS情報を付加して伝送する。これを受信した0系の端末対応部10は、付加TS終端部3によりBAIS情報を抽出して、調停部30へ転送する。調停部30は、0系と1系との何れが現用系であるかを認識しており、現用系の付加TS終端部3を介してBAIS情報が転送されたことにより、0系の伝送系統の障害発生として、クロックゲーティング部20からの0系端末対応部10に対する0系装置クロックの供給を停止させ、又クロックゲーティング部21から1系端末対応部11に対する1系装置クロックの供給を開始させて、現用,待機の系切替えを行い、障害発生の伝送径路側の0系端末対応部10を、クロック供給停止により省電力状態に移行させ、正常な伝送経路側の1系端末対応部11を動作状態に移行させ、且つ調停部30により受信系選択部40を制御して、1系端末対応部11による受信データを端末回路50に転送する処理を行わせ、障害発生による現用系と待機系との切替処理によってデータ伝送を継続可能とする。
【0017】
図2は、本発明の実施例1の要部フローチャートを示し、0系1系の伝送経路の0系選択(a1)の正常状態から、A局に於いて0系異状検出(a2)の場合、BAIS送出を行うから、B局は0系によるBAIS検出を行う(a3)。それにより、B局も0系障害発生を認識し、1系選択とする(a4)。0系と1系との伝送路により接続されたA局とB局とは、前述の0系選択(a1)の正常時に於いて、1系ゲーティング(A1),(B1)により、図1に示す0系端末対応部10に対して、クロックゲーティング部20を介してクロックを供給して動作状態とし、1系端末対応部11に対して、クロックゲーティング部21によってクロック供給を停止状態とすることにより、1系端末対応部11は省電力状態に移行している。
【0018】
又A局の現用系としての0系の異状検出(a2)の場合、A局は、1系ゲーティング解除、0系BAIS転送(A2)として示すように、A局の1系端末対応部11に対するクロックゲーティング部21によるクロックゲーティングを解除し、且つ0系BAIS転送を行う(A2)。A局と伝送路を介して接続されているB局に於いては、A局からの0系BAIS受信により、1系端末対応部11に対するクロックゲーティング部21によるクロックゲーティングを解除する(B2)。それによって、A局もB局も1系正常受信(A3),(B3)の状態となると、1系に対して受信系切替えを行うと共に、0系ゲーティングの状態に移行する(A4),(B4)。即ち、A局とB局とに於けるクロックゲーティング部20は0系端末対応部10に対するクロック供給を停止し、クロックゲーティング部21は、1系端末対応部11に対するクロック供給を継続する。従って、動作電力の供給制御を行うスイッチを構成することが困難なFPGA等により構成された場合でも、クロックゲーティング処理機能を実現する構成は、比較的容易に実現可能であるから、現用系と待機系とを含むデータ伝送処理構成に於いて、クロック供給停止の制御構成は容易に組み込むことが可能であるから、システムの一方のクロック供給端末対応部は動作電力を消費するが、他方のクロック供給を停止した端末対応部は動作電力を消費しない省電力状態を継続する構成として、クロック制御による処理動作部分のみ電力を使用し、他の処理動作を休止している部分を省電力化することができる。
【実施例2】
【0019】
図3は、本発明の実施例2の要部説明図であり、60はメインプロセッサ盤(MP;Main Processer)、61はプロセッサ(CPU)、62は制御処理部(マスタ)、63はアドレスデコード部、64はクロックゲーティング部、65はアドレス・データバス、66−1〜66−nはインタフェース盤(LIU;Line Interface Unit)、67は制御処理部(スレーブ)を示す。プロセッサ61は、インタフェース盤66−1〜66−nを指定するアドレスと転送するデータとを制御処理部62とアドレスデコード部63とに加え、アドレスデコード部63によるデコード信号をクロックゲーティング部64に加え、このデコード信号に従って選択指定されたインタフェース盤66−1〜66−nに対して、クロックゲーティング部62から制御クロックを供給して動作状態とし、制御処理部62からアドレス・データバス65を介して転送されたデータを制御処理部67に於いて処理する。この場合も、クロック供給されたインタフェース盤のみが動作状態となり、他のインタフェース盤は休止状態であるから、省電力化を図ることが可能となる。なお、クロックゲーティング制御を行う構成は、図1に示す現用系と待機系との2系統に対するクロックゲーティング制御構成を、複数系統に対するクロックゲーティング制御構成に適用した場合に相当する。
【実施例3】
【0020】
図4は、本発明の実施例3の要部説明図であり、71は制御処理部(スレーブ)、72はCH使用/未使用設定部、73はクロックゲーティング部、74は共通部、75−1〜75−nはチャネル(CH1〜CHn)対応の端末回路を示す。制御処理部71は、図3に示す制御処理部67に対応するものであるが、複数の端末回路75−1〜75−nを含み、選択指定した端末回路に対してのみ、端末クロックを、クロックゲーティング部73を介して供給する構成とする。チャネル対応の端末回路75−1〜75−nの使用、未使用を、制御処理部71の制御によってCH使用/未使用設定部72に設定する。この設定内容に応じて、クロックゲーティング部73は、端末クロックを、端末回路75−1〜75−nに供給する。それにより使用する端末回路に対して、クロックゲーティング73を介して端末クロックが供給されて動作状態となり、端末クロックが供給されない端末回路は休止状態となる。即ち、端末クロックが供給されない端末回路は、省電力モードに移行することになる。又システム運用中に、休止中の端末回路を動作状態に移行させるには、制御処理部71からCH使用/未使用設定部72にCH使用に設定変更することにより、クロックゲーティング部73を介して端末クロックが供給されるから、休止状態から動作状態に移行させることができる。反対に、動作状態の端末回路を休止状態とする場合、CH使用/未使用設定部72にCH未使用の設定に変更することにより、端末クロックの供給が停止される。
【符号の説明】
【0021】
1,5 付加TS生成部
2,6 上り速度変換部
3,7 付加TS終端部
4,8 下り速度変換部
10,11 0系、1系の端末対応部
20,21 クロックゲーティング部
30 調停部
40 受信系選択部
50 端末回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロックに従ってデータ処理を行うデータ処理装置に於いて、
前記クロックの供給と停止とを選択的に制御するクロックゲーティング部と、
該クロックゲーティング部からデータ処理を実行するデータ処理部に対してのみ前記クロックを供給するように制御する制御部と
を備えたことを特徴とするデータ処理装置。
【請求項2】
前記クロックゲーティング部は、0系と1系とのデータ処理部対応のクロックの供給停止を制御する構成を備え、前記0系と1系とのデータ処理部対応に正常性を監視して、異常発生側のクロックゲーティング部を介したクロック供給を停止し、正常側のクロックゲーティング部を介してクロック供給を行わせる制御部を備えたことを特徴とする請求項1記載のデータ処理装置。
【請求項3】
前記クロックゲーティング部は、バス接続された複数のデータ処理部に対して上位装置からのアドレス指定に従ってクロックを順次選択的に供給する構成を備えたことを特徴とする請求項1記載のデータ処理装置。
【請求項4】
前記クロックゲーティング部は、複数のチャネル対応回路部に対するクロックを、制御処理部からの制御に従って選択的に供給する構成を備えたことを特徴とする請求項1記載のデータ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−74463(P2013−74463A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211977(P2011−211977)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000237662)富士通テレコムネットワークス株式会社 (682)
【Fターム(参考)】