説明

データ印字装置およびヘッドギャップ調整方法

【課題】厚さが一律でない印字媒体に対して印字するにあたり無駄なヘッドギャップ調整を行わないようにして、印字完了までに要する時間を短縮すること。
【解決手段】印字基準面との間に搬送される印字媒体に印字する印字ヘッドにより印字媒体に対して印字を開始する位置を特定し、特定した印字開始位置における印字媒体の厚さを検知する。そして、検知した厚さに応じて印字ヘッドと印字基準面との間に形成されるヘッドギャップを調整して印字を開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帳票等の印字媒体に印字するデータ印字装置に係わり、特に印字媒体の厚さに合わせてヘッドギャップを調整する機能を備えたデータ印字装置および該データ印字装置のヘッドギャップ調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ドットプリンタ、サーマルプリンタ、インクジェットプリンタ、およびレーザプリンタ等のデータ印字装置は、印字ヘッドとプラテンとの間に搬送される印字媒体に対して前記印字ヘッドにより印字するよう構成されている。データ印字装置の印字結果を高品質に保つには、印字ヘッドとプラテンとの間に形成されるヘッドギャップを印字媒体の厚さに応じた適切な大きさに調整しておく必要がある。そのため、異なる厚さの印字媒体に対する印字を想定した従来のデータ印字装置は、印字媒体の厚さに応じてヘッドギャップを調整する機能を備えていることが一般的である。(例えば、特許文献1を参照)
印字媒体に合わせてヘッドギャップを調整すれば、好適な印字結果を得ることができる。しかしながら、一枚の印字媒体の厚さが全体的に均一であるとは限らず、例えばサイズの異なるカーボン紙を部分的に複数枚束ねてなる帳票のように全体の厚さが一律でない印字媒体も存在する。
【0003】
このように厚さが一律でない印字媒体に対する印字を想定したデータ印字装置は、印字媒体の厚さの変化に合わせてヘッドギャップが調整されるようにアプリケーションプログラムにてヘッドギャップ調整のタイミングを制御している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記したように、印字媒体の厚さの変化に合わせてヘッドギャップを調整する機能を備えたデータ印字装置であっても、印字媒体を印字位置にフィードした段階ではその変化を把握することができない。したがって、どのような印字媒体に印字する場合であっても印字媒体の厚さが全体に亘って一律であると仮定し、印字媒体の端部を基準に定められた固定のライン・カラム位置にて第一回目のヘッドギャップ調整が行われている。
【0005】
しかし、前記固定のライン・カラム位置での印字媒体の厚さと実際に印字を開始する位置での印字媒体の厚さとが同一でない場合には、印字を開始するまでに再度ヘッドギャップを調整する必要が生じる。この場合には、なかなか印字が開始されないことに対してユーザに不安感を与えかねないし、ヘッドギャップを再調整した分だけ印字の完了までに要する時間が増大してしまう。特に大量の印字媒体に連続して印字したい場合には、ヘッドギャップ調整による印字作業の遅延時間が膨大なものとなる。
【0006】
本発明は、上記のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、厚さが一律でない印字媒体に対して印字するにあたり無駄なヘッドギャップ調整を行わないようにして、印字完了までに要する時間を短縮することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、次の手段を講じている。
本発明の第1の視点は、印字基準面との間に搬送される印字媒体に印字する印字ヘッドと、前記印字媒体に対して前記印字ヘッドにより印字を開始する位置を特定する位置特定手段と、前記位置特定手段により特定された印字開始位置における前記印字媒体の厚さを検知する媒体厚検知手段と、前記媒体厚検知手段により検知された厚さに応じて前記印字ヘッドと前記印字基準面との間に形成されるヘッドギャップを調整するギャップ調整手段とを備えたデータ印字装置である。
【0008】
本発明の第2の視点は、印字基準面との対向位置に搬送される印字媒体に印字する印字ヘッドと前記印字基準面との間に形成されるヘッドギャップを調整する方法であって、前記印字媒体に対して前記印字ヘッドにより印字を開始する位置を特定する位置特定ステップと、前記位置特定ステップにて特定された印字開始位置における前記印字媒体の厚さを検知する媒体厚検知ステップと、前記媒体厚検知ステップにて検知された厚さに応じて前記ヘッドギャップを調整するギャップ調整ステップとを備えたヘッドギャップ調整方法である。
【発明の効果】
【0009】
上記のような手段を講じた本発明によると、厚さが一律でない印字媒体に対して印字するにあたり無駄なヘッドギャップ調整を行わないようにして、印字完了までに要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】データ印字装置の一実施形態である事務用コンピュータの外観斜視図。
【図2】同事務用コンピュータの制御回路を示すブロック図。
【図3】同事務用コンピュータの印字機構を示す模式図。
【図4】同事務用コンピュータが備えるプリンタの回路構成を示すブロック図。
【図5】同プリンタのプリンタ制御部が実行する処理のフローチャート。
【図6】同プリンタが備えるバッファに格納された印字データを示す模式図。
【図7】同プリンタが備える紙厚検知部を印字開始位置に移動した状態の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
なお、本実施形態は、本発明を帳票印字用の事務用コンピュータに適用した一例である。
【0012】
[全体構成]
図1は、本実施形態における事務用コンピュータ1の外観斜視図である。図示したように事務用コンピュータ1は、本体2に機械式のキーボード3と、LCD(Liquid Crystal Display)であるディスプレイ4と、マウス5とを備えている。また、ディスプレイ4とキーボード3との間には、印字媒体を吸入する給紙ユニット6が設けられており、本体2のディスプレイ4を介して給紙ユニット6と対向する位置には、給紙ユニット6から吸入された印字媒体を排出する排紙ユニット7が設けられている。
【0013】
図2は、事務用コンピュータ1の制御回路を示すブロック図である。本体2には、制御の中枢として機能するCPU10が内蔵されており、このCPU10に対してROM(Read Only Memory)11、RAM(Random Access Memory)12、HDD(Hard Disk Drive)コントローラ13、補助記憶装置ドライバ14、キーボードコントローラ15、ディスプレイコントローラ16、マウスインタフェース(I/F)17、パラレルインタフェース18、および通信インタフェース19等が、アドレスバスやデータバスからなるバスライン20を介して接続されている。
【0014】
そして、HDDコントローラ13にHDD21が接続され、補助記憶装置ドライバ14に補助記憶装置22が接続され、キーボードコントローラ15にキーボード3が接続され、ディスプレイコントローラ16にディスプレイ4が接続され、マウスインタフェース17にマウス5が接続され、パラレルインタフェース18にプリンタ23が接続され、通信インタフェース19にLAN(Local Area Network)回線24が接続されている。
【0015】
ROM11は、事務用コンピュータ1の動作プログラム等の固定的データを記憶している。RAM12は、事務用コンピュータ1の処理場面に応じて書き換え可能な各種の作業用記憶領域を形成する。
【0016】
HDD21は、OS(Operating System)ファイルやユーザに各種の機能を提供するアプリケーションファイル等を記憶している。HDDコントローラ13は、HDD21への情報の書き込み/読み出しを制御する。
【0017】
補助記憶装置22は、例えばフロッピー(登録商標)ディスクドライブ、CD−Rドライブ、DVD−Rドライブ等の記憶デバイスである。補助記憶装置ドライバ14は、補助記憶装置22を駆動して補助記憶装置22にセットされた記憶メディアへの情報の書き込み/読み出しを制御する。
【0018】
キーボード3は、アルファベットキー、テンキーおよびその他のファンクションキーを有しており、押下げられた操作キーに応じたキー信号を出力する。キーボードコントローラ15は、キーボード3から出力されるキー信号を取り込んでCPU10に通知する。
【0019】
ディスプレイ4は、ユーザに報知すべき情報を処理場面に応じて選択的に表示する。ディスプレイコントローラ16は、CPU10から表示を指令された画像データに基づいてディスプレイ4を制御し、該画像データに応じた情報を表示させる。
【0020】
通信インタフェース19は、LAN回線24を介して接続された上位機器とのデータ通信を制御する。
【0021】
プリンタ23は、カーボン紙等が挿入され帳票に情報を印字するドットプリンタである。
【0022】
[印字機構]
プリンタ23の印字機構について説明する。
図3は、ディスプレイ4の背面にあるカバーを開放した際に露出する印字機構の模式図である。
【0023】
図示したように、本体2の左右フレームに設けられた一対の支持部材100によってキャリアシャフト101の両端が担持されている。このキャリアシャフト101にはドットプリンタ用の印字ヘッド111を搭載したキャリア110が摺動可能に取り付けられており、印字ヘッド111と対向する位置にはキャリアシャフト101と略平行となるように長尺状のプラテン102(印字基準面)が設けられている。
【0024】
キャリア110には、印字ヘッド111の他に印字位置近傍の印字媒体に押し当てて媒体暴れ等を防止するためのウィングガイド112と、このウィングガイド112に設けられた紙厚検知部113(押当部材)とを備えている。紙厚検知部113のプラテン102と対向する面には、印字ヘッド111やウィングガイド112よりもプラテン102との対向方向に僅かに突出した接点式のスイッチが設けられている。このスイッチは、印字媒体と接触したことに応じて検知信号を出力するようになっている。なお、紙厚検知部113による印字媒体の検知位置と印字ヘッド111による印字位置とを結ぶラインとがキャリアシャフト101と略平行となるように、紙厚検知部113の固定位置が調整されている。
【0025】
印字媒体は、給紙ユニット6から吸入された後、プラテン102と印字ヘッド111とが対向する位置の搬送方向前後に設けられたフィードローラ103,104の回転に伴って搬送される。なお、図3ではベールローラ105が持ち上げられた状態を示しているが、印字に際してはこのベールローラ105が押し下げられて、フィードローラ104とベールローラ105とで印字媒体が狭持されるようになっている。
【0026】
図4にプリンタ23の回路構成を示している。プリンタ23は、印字動作を統括的に制御するプリンタ制御部200に対して、キャリア駆動部201と、ギャップ調整モータ202と、紙送りモータ203と、エッジセンサ204と、バッファ205と、前記紙厚検知部113とを接続して構成されている。
【0027】
キャリア駆動部201は、キャリア110をキャリアシャフト101の軸方向(ライン方向)に移動させるステッピングモータ等で構成され、印字媒体に1ライン分の印字データを印字する際の印字ヘッド111による印字タイミングを制御する。ギャップ調整モータ202は、プリンタ制御部200から供給される駆動パルスに応じて回転する正逆回転可能なステッピングモータであり、歯車等で構成される動力伝達機構(不図示)を介して支持部材100と連結されている。前記動力伝達機構は、ギャップ調整モータ202の回転に伴ってキャリア110がプラテン102と接離する方向に移動するように構成されている。紙送りモータ203は、紙送り用のステッピングモータを駆動してフィードローラ103,104を始めとする搬送路の各所に設けられたフィードローラを回転させる。エッジセンサ204は、前記搬送路上の所定位置に設けられており、搬送される印字媒体の先端および後端を検知する。バッファ205は、本体2からパラレルインタフェース18を介して送られる印字データを記憶する。
【0028】
[ギャップ調整方法]
続いて、前記ヘッドギャップの調整方法について説明する。
印字媒体の厚さを検知する際には、プリンタ制御部200がギャップ調整モータ202を制御してキャリア110をプラテン102と接離する方向のホームポジションからプラテン102に向けて移動させ、紙厚検知部113からの検知信号の出力を待つ。やがて紙厚検知部113が印字媒体を介してプラテンに接触すると前記スイッチから検知信号が出力される。この信号を受けてプリンタ制御部200はギャップ調整モータ202を停止させる。この一連の動作においてプリンタ制御部200がギャップ調整モータ202に供給した駆動パルスの数に単位パルス当たりのギャップ調整モータ202による搬送距離を乗じた値を、前記ホームポジションにキャリア110が位置する場合のヘッドギャップから除することで、印字媒体の厚さを特定する。
なお、上記のように印字媒体の厚さを検知するプリンタ制御部200の動作は、本実施形態における媒体厚検知手段を構成する。
【0029】
印字媒体の厚さを検知した後、プリンタ制御部200は、印字媒体の厚さに応じた最適なヘッドギャップを確保すべく、ギャップ調整モータ202に所定数の駆動パルスを供給してキャリア110をプラテン102から離間させる。この駆動パルスの供給数は、種々の方法にて決定し得る。例えば、印字媒体の厚さに対して駆動パルスの供給数を対応付けたテーブルをROM11に記憶しておき、このテーブルから印字媒体の厚さに応じた駆動パルスの供給数を取得するようにしてもよいし、所定の計算式を用いて駆動パルスの供給数を算出するようにしてもよい。また、印字媒体の厚さによらず、紙厚検知部113が印字媒体に接触した位置から一定量だけキャリア110を後退させるようにしてもよい。
なお、上記のように印字媒体の厚さに応じてヘッドギャップを調整するプリンタ制御部200の動作は、本実施形態におけるギャップ調整手段を構成する。
【0030】
[印字動作]
次に、事務用コンピュータ1による一連の印字動作について説明する。
帳票作成用のアプリケーションが実行されると、ディスプレイ4に印字媒体である帳票に印字すべき情報を入力するためのアプリケーション画面が表示される。このときユーザは、キーボード3およびマウス5を操作して所望の情報を入力する。前記アプリケーション画面への情報入力が完了して帳票への印字が指示されると、入力された情報や帳票のフォーマットデータに基づいてRAM12に印字データが作成される。そしてCPU10からプリンタ23のプリンタ制御部200に対して印字開始が指示される。この指示を受けたことに応じて、プリンタ制御部200は、図5のフローチャートに沿った処理を実行するようにプログラム構成されている。
【0031】
この処理において、先ずプリンタ制御部200は、紙送りモータ203を駆動して各フィードローラを回転させ、ユーザが手差しで給紙ユニット6に差し込んだ帳票を印字位置にフィードさせる(ステップS1)。具体的には、各フィードローラにて搬送される帳票の先端がエッジセンサ204によって検知された位置から予め定められた距離だけ帳票を搬送し、ライン方向およびカラム方向のホームポジションにある印字ヘッド111とプラテン102とが対向する位置(印刷出力位置)に帳票の先端を位置決めする。
【0032】
帳票を印刷出力位置までフィードした後、プリンタ制御部200は、パラレルインタフェース18を介してRAM12に作成された印字データを受信する(ステップS2)。受信した印字データは、ドット展開された後にバッファ205に格納される。
【0033】
次に、プリンタ制御部200は、バッファ205に記憶された印字データに基づいて帳票全体における印字開始位置を特定する(ステップS3)。前記印字開始位置は、一枚の帳票の中で最初に印字像を形成するライン位置およびカラム位置である。この印字開始位置を特定すると、プリンタ制御部200は、紙送りモータ203を制御して帳票を搬送するとともにキャリア駆動部201を制御してキャリア110を移動させて、紙厚検知部113とプラテン102とが対向する位置に当該印字開始位置を位置決めする(ステップS4)。
【0034】
ステップS3の処理における印字開始位置の特定方法について具体的に説明する。図6は、バッファ205に格納された印字データを示す模式図である。300は帳票の外縁を示しており、この外縁300内に文字列A,文字列B,文字列C,文字列Dが所在している。この印字データは、外縁300の左端が印字の開始カラムであり、右端が印字の終了カラムである。また、外縁300の上端が印字の開始ラインであり、下端が印字の終了ラインである。各文字列は、開始ラインを基準として文字列A,文字列B,文字列C,文字列Dの順に配置されている。また、文字列A,B,Cの左端は同一カラム上に位置し、文字列Dの左端は文字列A,B,Cの左端よりも終了カラム側に位置している。なお、図中に破線で示したエリア301は印字データではなく、帳票が部分的に複数枚束ねられたことによって生じる段差の位置を概念的に示したものである。この印字データの印字が予定されている帳票は、エリア301の内側が外側よりも厚くなっている。
印字に際しては、キャリア駆動部201が印字箇所の存在する一つのラインに沿ってキャリア110を移動させ、該ラインの印字が完了した後に紙送りモータ203が次の印字箇所が存在するラインまで帳票をフィードさせる。この処理を繰り返すことでバッファ205に記憶された印字データが帳票に印字される。すなわち、当該印字データにおける印字開始位置は、文字列Aの左端(図中に丸印を付して示している)ということになる。なお、文字列Aが複数のラインに跨っている場合には、当該複数のラインの最上段の左端が印字開始位置となる。ステップS3の処理では、この印字開始位置の開始ラインからのライン数Xline(整数:Xline≧0)および開始カラムからのカラム数Xcolumn(整数:Xcolumn≧0)を特定する。
【0035】
図6に示した印字データを印字する場合に、ステップS4の処理にてキャリア110が移動された状態の概略図を図7に示している。400は印字に使用される帳票であり、その大きさは図6に示した印字データの外縁300と対応している。また、破線で示したエリア401は周辺部よりも隆起した部分を示すものであり、図6に示したエリア301と対応している。ステップS3の処理の後、帳票400が紙送りモータ203により図中に矢印で示した搬送方向に搬送され、キャリア駆動部201によりキャリア110がホームポジションからキャリアシャフト101に沿って移動することで、紙厚検知部113がプラテン102と対向する位置が、印字開始位置(Xline,Xcolumn)に位置決めされている。
【0036】
図5の説明に戻り、ステップS4の処理の後、プリンタ制御部200は、前述した方法によって印字ヘッド111の先端とプラテン102とのヘッドギャップを調整する(ステップS5)。しかる後、プリンタ制御部200は、キャリア駆動部201を制御してキャリア110をキャリアシャフト101に沿って移動させ、印字ヘッド111の先端を印字開始位置(Xline,Xcolumn)に位置決めする(ステップS6)。そして、プリンタ制御部200は、バッファ205に格納した印字データに基づいてキャリア駆動部201および紙送りモータ203を制御し、印字ヘッド111による帳票への印字を行う(ステップS7)。バッファ205に格納された印字データに含まれる全ての印字箇所を印字し終えると、プリンタ制御部200は、紙送りモータ203を制御して当該帳票を排紙ユニット7に排紙させる(ステップS8)。以上で、一連の印字動作が終了する。
【0037】
[作用]
以上説明したように、本実施形態における事務用コンピュータ1が備えるプリンタ23は、印字媒体たる帳票全体に対する印字開始位置(Xline,Xcolumn)を特定し、特定した印字開始位置における帳票の厚さに応じて印字ヘッド111とプラテン102との間に形成されるヘッドギャップを調整する。すなわち、従来のように固定されたライン・カラム位置にてヘッドギャップを調整することはないので、印字位置とその周辺部との厚さが異なるような帳票に印字する場合であってもヘッドギャップ調整の回数を最小限に止めることができる。
【0038】
また、従来のヘッドギャップ調整方法を用いて図7に示したような帳票に印字する場合、印字開始当初のヘッドギャップ調整にて狭まったヘッドギャップがエリア401で示した段差の高さよりも小さければ印字ヘッドが当該段差に衝突してしまう。このような場合にはジャムエラーが発生したり、帳票と印字ヘッドによる印字ラインとにずれが生じたりしかねない。これに対して本実施形態に開示したヘッドギャップ調整方法を採用すれば、印字開始位置までは印字ヘッド111をプラテン102方向に対するホームポジションにて待機させることができるので、前記ジャムエラーや帳票と印字ラインとのずれは生じない。
【0039】
また、本実施形態においては印字開始位置が印字データに基づいて自動的に演算される構成を採用した。したがって、ユーザが印字開始位置を計算して入力したり帳票の種類毎の印字開始位置をメモリに記憶したりする必要がなく、事務用コンピュータ1の使い勝手がより良いものとなる。
【0040】
[変形例]
なお、本発明は、前記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。具体的な変形例としては、例えば次のようなものがある。
(1)すなわち、前記実施形態では、本発明に係るデータ印字装置を帳票印字用の事務用コンピュータ1に適用した場合について説明した。しかしながら、本発明に係るデータ印字装置は、印字機構を備えた他種の装置を含むものである。したがって、複写機能を備えた画像形成装置や、PC(Personal computer)等の情報処理装置に外付けして使用されるプリンタなどに本発明を適用することもできる。さらに、ドットプリンタ以外のプリンタ、例えばサーマルプリンタ、レーザプリンタ、またはインクジェットプリンタに本発明を適用することもできる。
【0041】
(2)また、前記実施形態では、周辺部よりも厚くなっている部分に印字する場合を例に挙げて説明した。しかしながら、厚くなっている部分とその周辺部の双方に印字する場合や印字位置の厚さが多段階に変化している場合等、一連の印字動作において帳票の厚さが異なる部分に印字しなければならない状況を想定して、本発明を具体化することもできる。このような場合には従来の方法を取り入れて印字位置毎に帳票の厚さを検知し、帳票の厚さが変化した際にヘッドギャップ調整を行うようにすればよい。このようにした場合であっても、一枚の帳票への印字処理を開始した当初に固定のライン・カラム位置でヘッドギャップを調整しないならば無駄な処理が省かれることに変わりはなく、本発明の目的を達することができる。
【0042】
(3)また、前記実施形態では、キャリア110に設けられた紙厚検知部113が帳票に接触するまでにギャップ調整モータ202に供給された駆動パルスの数に基づいて帳票の厚さを演算するとした。しかしながら、帳票の厚さを検知する方法はこの方法に限定されない。例えば、ギャップ調整モータ202から支持部材100に動力を伝達する歯車の回転角度を検出するセンサを設け、このセンサにて検出した回転角度に基づいてキャリア110の移動距離を算出し、算出した移動距離に基づいて帳票の厚さを演算するようにしてもよい。
【0043】
(4)また、前記実施形態では、キャリア110をキャリアシャフト101ごとプラテン102と接離する方向に移動させ、ヘッドギャップを調整するとして説明した。しかしながら、ヘッドギャップを調整する方法は、この方法に限定されない。例えば、キャリアシャフト101は移動させずにキャリア110あるいは印字ヘッド111をプラテン102と接離する方向に移動させてヘッドギャップを調整してもよい。
【0044】
この他、前記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、前記実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1…事務用コンピュータ、2…本体、6…給紙ユニット、7…排紙ユニット、10…CPU、23…プリンタ、102…プラテン、110…キャリア、111…印字ヘッド、113…紙厚検知部、200…プリンタ制御部、201…キャリア駆動部、202…ギャップ調整モータ、203…紙送りモータ、204…エッジセンサ、205…バッファ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0046】
【特許文献1】特開平4−339682号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印字基準面との間に搬送される印字媒体に印字する印字ヘッドと、
前記印字媒体に対して前記印字ヘッドにより印字を開始する位置を特定する位置特定手段と、
前記位置特定手段により特定された印字開始位置における前記印字媒体の厚さを検知する媒体厚検知手段と、
前記媒体厚検知手段により検知された厚さに応じて前記印字ヘッドと前記印字基準面との間に形成されるヘッドギャップを調整するギャップ調整手段と、
を備えていることを特徴とするデータ印字装置。
【請求項2】
前記位置特定手段は、前記印字媒体に印字すべき印字データに基づいて前記印字開始位置を演算することを特徴とする請求項1に記載のデータ印字装置。
【請求項3】
前記ギャップ調整手段は、前記印字ヘッドを前記印字基準面に対して接離する方向に移動させて前記ヘッドギャップを調整することを特徴とする請求項1又は2に記載のデータ印字装置。
【請求項4】
前記印字ヘッドの前記印字基準面側の先端よりも前記印字基準面側に突出して前記印字ヘッドに固定された押当部材をさらに備え、
前記媒体厚検知手段は、前記押当部材が前記印字媒体の前記印字開始位置と当接するまで前記印字ヘッドを前記印字基準面方向に移動させ、前記押当部材が前記印字媒体の前記印字開始位置に当接するまでに前記印字ヘッドが移動した距離に基づいて前記印字媒体の厚さを検知することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1に記載のデータ印字処理装置。
【請求項5】
前記位置特定手段は、前記印字媒体の搬送方向に対するいずれかの端部から前記印字ヘッドが印字を開始するラインまでの距離を示す情報と、当該ラインと交わる前記印字媒体のいずれかの端部から前記印字ヘッドが印字を開始するカラムまでの距離を示す情報とを、前記印字を開始する位置として特定することを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか1に記載のデータ印字装置。
【請求項6】
印字基準面との対向位置に搬送される印字媒体に印字する印字ヘッドと前記印字基準面との間に形成されるヘッドギャップを調整する方法であって、
前記印字媒体に対して前記印字ヘッドにより印字を開始する位置を特定する位置特定ステップと、
前記位置特定ステップにて特定された印字開始位置における前記印字媒体の厚さを検知する媒体厚検知ステップと、
前記媒体厚検知ステップにて検知された厚さに応じて前記ヘッドギャップを調整するギャップ調整ステップと、
を備えていることを特徴とするヘッドギャップ調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−161644(P2011−161644A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−23323(P2010−23323)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】