説明

データ構造及び記憶媒体

【課題】ダウンミックス処理における動作状況を簡易に把握させ得るテストデータのデータ構造及びテストデータが読み取り可能に記憶された記憶媒体を提案する。
【解決手段】テストデータを、複数のチャンネルそれぞれに対応するテスト波形を含み、これらテスト波形の時間幅が、時間軸上で重複しないように選定された構造を有し、ダウンミックス処理を経た後の2つのチャンネルにおける各テスト波形の出現有無により動作状況の良否が判定されるものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ構造及び記憶媒体に関し、ダウンミックス処理における動作状況を検証する場合に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、DVD(Digital Versatile Disk)や車載用機器等における音声信号処理部には、マルチチャンネルの音声信号を、左右チャンネルの音声信号に変換する、いわゆるダウンミックス処理が組み込まれていることがある(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特表2005−523672公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、このダウンミックス処理における動作状況を検証する場合、一般には、各チャンネルに対応して互いに周波数の異なるテスト信号を音声信号処理部に送出し、該音声信号処理部でのダウンミックス処理結果として得られる信号に対して行われる。
【0004】
この信号は、左右チャンネルに対応するテスト信号に、ダウンミックス処理において加算されたチャンネルのテスト信号が重畳されたものとなるため、当該重畳されたチャンネルのテスト信号がどのチャンネルに対応するものかを認識するには熟練を要する。
【0005】
そこで、一般には、該信号をFFT(Fast Fourier Transform)を用いて周波数成分を分離させる処理を経た後に、ダウンミックス処理における動作状況の検証が行われる。
【0006】
しかしながら、周波数成分を分離するには、FFTを実行可能なパーソナルコンピュータを用意するとともに、そのパーソナルコンピュータにダウンミックス処理結果の信号を取り込むことを要するので、煩雑であるという問題があった。
【0007】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、ダウンミックス処理における動作状況を簡易に把握させ得るテストデータのデータ構造及びテストデータが読み取り可能に記憶された記憶媒体を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するため本発明は、複数チャンネルの音声信号のうち、基準となる2つのチャンネルの音声信号の一方又は双方にその他のチャンネルの音声信号の全部又は一部を加算する処理における動作状況を調べるために用いられるテストデータのデータ構造であって、当該テストデータは、複数のチャンネルそれぞれに対応するテスト波形を含み、これらテスト波形の時間幅が、時間軸上で重複しないように選定された構造を有し、処理を経た後の2つのチャンネルにおける各テスト波形の出現有無により動作状況の良否が判定されるものとした。
【0009】
また本発明は、複数チャンネルの音声信号のうち、基準となる2つのチャンネルの音声信号の一方又は双方にその他のチャンネルの音声信号の全部又は一部を加算する処理における動作状況を調べるために用いられるテストデータが読み取り可能に記憶された記憶媒体であって、当該テストデータは、複数のチャンネルそれぞれに対応するテスト波形を含み、これらテスト波形の時間幅が、時間軸上で重複しないように選定された構造を有し、処理を経た後の2つのチャンネルにおける各テスト波形の出現有無により動作状況の良否が判定されるものとした。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、テストデータにおけるチャンネルごとのテスト波形を、当該テスト波形の時間幅が、時間軸上で重複しない構造としたことにより、ダウンミックス処理において、基準チャンネルとなる左右チャンネルのテスト波形に、その他のチャンネルのテスト波形が重畳されることを回避することができ、かくしてダウンミックス処理における動作状況を簡易に把握させ得るテストデータのデータ構造及びテストデータが読み取り可能に記憶された記憶媒体を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0012】
(1)本実施の形態による波形観測システムの構成
図1において、ダウンミックス処理における動作状況を検証させるための波形観測システム1を示す。この波形観測システム1は、再生ユニット2と、該再生ユニット2における音声出力端に接続されたオシロスコープ3とによって構成される。
【0013】
この再生ユニット2は、フロントエンド部11、バックエンド部12及びDAC13を有している。フロントエンド部11は、DVD(Digital Versatile Disc)、CD(Compact Disc)又はBD(Blue-ray Disc)等の光ディスクRDから光学系を介して得られる光ビームに基づいて、トラッキングエラー信号、フォーカスエラー信号及びRF信号を生成する。
【0014】
またフロントエンド部11は、トラッキングエラー信号に基づいて光ピックアップを光ディスクRDの径方向に適宜移動することによって、該光ディスクRDにおける目標トラックに光ビームの焦点を追尾させる。
【0015】
一方、フロントエンド部11は、フォーカスエラー信号に基づいて光ピックアップを光ディスクRDに対して遠ざかる方向又は近づく方向に適宜移動することによって、該光ディスクRDの記録面に追従させる。
【0016】
他方、フロントエンド部11は、RF信号に基づいて圧縮音声データを生成し、これをバックエンド部12に送出する。
【0017】
バックエンド部12は、圧縮音声データに対して、当該圧縮方式に応じた伸長処理を施し、マルチチャンネルの音声データを生成する。またバックエンド部12は、ダウンミックスを行うべき指示があった場合、マルチチャンネルの音声データのチャンネル数を擬似的に減らす。
【0018】
例えば、5.1チャンネルの音声データであった場合、バックエンド部12は、図2に示すように、左チャンネル及び右チャンネルの音声データに対して、センターチャンネルの音声データを、その音圧レベルを所定レベル(この図では3[dB])だけ引き下げた後に加算する。
【0019】
また、バックエンド部12は、左サラウンドチャンネル及び右サラウンドチャンネルの音声データの加算結果として得られる音声データを、その音圧レベルを所定レベル(この図では3[dB])だけ引き下げた後に、左チャンネル及び右チャンネルの音声データに対して加算する。
【0020】
このようにバックエンド部12は、基準チャンネルとなる左右チャンネルの音声データに対して、加算対象外となる低周波チャンネルの音声データを除く、その他のチャンネルの音声データを加算し、当該加算結果としてられる左右チャンネルの音声データをDAC(Digital Analog Converter)13に送出する。
【0021】
DAC13は、左右チャンネルの音声データに対して、D/A (Digital/Analog)変換処理を施し、該処理結果として得られる音声信号を、当該左右チャンネルに対応する出力端に送出する。
【0022】
オシロスコープ3は、この左右チャンネルの出力端から供給される音声信号のうち、トリガとして設定された信号の検出時点から所定の時間幅の波形を、2次元のグラフとして表示部4aに表示するようになされている。
【0023】
(2)テストデータのデータ構造
この実施の形態における光ディスクRDには、ダウンミックス処理における動作状況を検証させるために用いられるテストデータが記憶される。このテストデータのデータ構造について説明する。
【0024】
このテストデータは、音声出力フォーマットの規格に定められるチャンネルの種に対応するテスト波形を含んでいる。チャンネルの種には、基準チャンネルとなる右チャンネル及び左チャンネルと、拡張チャンネルとなるセンターチャンネル、右サラウンドチャンネル及び左サラウンドチャンネル(若しくはサラウンドチャンネル)、センターサラウンドチャンネル及び低周波チャンネルがある。
【0025】
これらチャンネルの種に対応する各テスト波形の波形パターンは、例えば図3に示すように、周波数が100[Hz]、振幅が0.8[Vrms]の正弦波でなり、100[msec]の時間幅に選定される。ただし、サラウンドチャンネル(図3における「S」チャンネル)のテスト波形については、左サラウンドチャンネル及び右サラウンドチャンネルを一のチャンネルとしたものであることから、これら左サラウンドチャンネル及び右サラウンドチャンネルの各テスト波形を組み合わせたものとなる。
【0026】
またこれらテスト波形は、当該テスト波形の時間幅が、時間軸上で重複しないようになっている。具体的には、基準に対して、チャンネルの種類に応じて固有に固有の空き期間が割り当てられている。この基準には、この実施の形態の場合、右チャンネル及び左チャンネルの同期をとるための識別波形とされる。
【0027】
この識別波形の波形パターンは、例えば、周波数が100[Hz]、振幅が1[Vrms]の正弦波でなり、50[msec]の時間幅に選定される(図3)。識別波形の振幅がテスト波形と相違するのは、オシロスコープ3に対して、該テスト波形を識別波形として認識させないためである。
【0028】
かかる識別波形に対する空き期間としては、例えば、右チャンネルのテスト波形には0[msec]、左チャンネルのテスト波形には100[msec]、センターチャンネルのテスト波形には200[msec]、右サラウンドチャンネルのテスト波形には300[msec]、左サラウンドチャンネルのテスト波形には400[msec]、センターサラウンドチャンネルのテスト波形には500[msec]、低周波チャンネルのテスト波形には600[msec]がそれぞれ割り当てられている(図3)。
【0029】
このようなテスト波形と、識別波形とを含む信号がテストデータとして、音声出力フォーマットの規格ごとに、光ディスクRDに記憶される。
【0030】
例えば、「Dolby Digital 3.2.1」規格に定められる5.1チャンネルに対応するテストデータの場合、図4に示すように、右チャンネルのテスト波形、左チャンネルのテスト波形、センターチャンネルのテスト波形、右サラウンドチャンネルのテスト波形、左サラウンドチャンネルのテスト波形及び低周波チャンネルのテスト波形と、識別波形とを含む信号が、該規格に対応する圧縮形式により圧縮する等して所定のデータ形式に変換された後に記憶される。
【0031】
このテストデータが再生ユニット2におけるフロントエンド11を順次介してバックエンド部12に入力され、該バックエンド部12において正常にダウンミックスが行われた場合、そのバックエンド部12でのダウンミックス処理結果としてオシロスコープ3の表示部3aに表示されるテスト波形は、図5に示すようになる。
【0032】
すなわち、右チャンネルでは、該チャンネルに対応する識別波形に続き、各チャンネルの種に割り当てられた空き期間経過時点に、右チャンネルのテスト波形、ダウンミックス処理で加算されたセンターチャンネルのテスト波形、右サラウンドチャンネルのテスト波形及び左サラウンドチャンネルのテスト波形が順次表示される。ちなみに、ダウンミックス処理では低周波チャンネルのテスト波形は加算されないため(図2)、非表示となる。
【0033】
一方、左チャンネルでは、該チャンネルに対応する識別波形に続き、各チャンネルの種に割り当てられた空き期間経過時点に、左チャンネルのテスト波形、ダウンミックス処理で加算されたセンターチャンネルのテスト波形、右サラウンドチャンネルのテスト波形及び左サラウンドチャンネルのテスト波形が順次表示される。ちなみに、ダウンミックス処理では低周波チャンネルのテスト波形は加算されないため(図2)、非表示となる。
【0034】
仮に、ダウンミックス処理における動作が正常に行われていない場合、例えば、右チャンネルに左サラウンドチャンネルのテスト波形のみが非表示であれば、ダウンミックス処理のうち、左サラウンドチャンネル及び右サラウンドチャンネルの音声データを加算する過程(図3において「(1)」の部分)で不具合が生じていることが分かる。また例えば、右チャンネルにセンターチャンネルのテスト波形のみが非表示であれば、ダウンミックス処理のうち、センターチャンネルの音声データを分離してから加算するまでの過程(図3において「(2)」の部分)で不具合が生じていることが分かる。また例えば、低周波チャンネルのテスト波形が表示されている場合、低周波チャンネルの音声データに対する取り扱いに不具合が生じていることが分かる。
【0035】
このように、この波形観測システム1では、ダウンミックス処理における動作が正常に行われたか、また正常に行われていない場合には、当該ダウンミックス処理におけるどの動作過程で不具合が生じているのかが、識別波形に対する、各空き期間経過時点での対応するテスト波形の出現有無により、検証者が直感的に判定することができることとなる。
【0036】
なお、「Dolby Digital 2.2.1」規格に定められる4.1チャンネルに対応するテストデータを図6に示し、このテストデータがバックエンド部12において正常にダウンミックスが行われた場合にオシロスコープ3の表示部3aに表示されるテスト波形を図7に示す。
【0037】
ちなみに、図3〜図7では、各チャンネルに対応する波形パターンに対して、便宜上、網掛けを付した。
【0038】
(3)波形観測処理手順
次に、図8に示すフローチャートを用いて、この波形観測システムにおける波形観測処理手順RT1を説明する。すなわち、この波形観測システム1では、ステップSP1として、再生ユニット2の制御部が、該制御部に接続されたフロントエンド部11を介して、光ディスクRDに記憶された複数のテストデータに対応する音声出力フォーマットに関する規格名を認識する。
【0039】
そして再生ユニット2の制御部は、例えば図9に示すように、これら規格名を項目とするメニュー画面を、該制御部に接続された表示部を介してGUI(Graphic User Interface)表示する。
【0040】
次いでこの波形観測システム1では、ステップSP2として、再生ユニット2の制御部が、メニュー画面に設けられた各項目のいずれかの選択を待ち受ける。ここで、再生ユニット2の制御部が、例えば、「Dolby Digital 3.2.1」の項目に対する選択を受けたことを認識した場合、ステップSP3として、フロントエンド部11を介して「Dolby Digital 3.2.1」の項目に対応するテストデータを再生する。
【0041】
そしてこの波形観測システム1では、ステップSP4として、バックエンド部12が、再生ユニット2の制御部の制御のもとに、圧縮テストデータを復調した後にダウンミックスする。
【0042】
次いでこの波形観測システム1では、ステップSP5として、オシロスコープ3が、ダウンミックス後にDAC13を介して出力されるテスト信号の波形を表示部3aに表示するようになされている。この表示部3aに表示される識別波形に対する、各空き期間経過時点での対応するテスト波形の出現有無により、検証者は、ダウンミックス処理における動作状況の良否を判定することとなる。
【0043】
(4)動作及び効果
以上の構成において、この波形観測システム1における光ディスクRDに記憶されるテストデータは、複数チャンネルの音声信号のうち、基準チャンネルとなる左右チャンネルの音声データに対して、加算対象外となる低周波チャンネルの音声データを除く、その他のチャンネルの音声データを加算する処理における動作状況を調べるために用いられる。
【0044】
このテストデータは、例えば「Dolby Digital 3.2.1」規格に定められる5つのチャンネルそれぞれに対応するテスト波形を含み、これらテスト波形の時間幅が、時間軸上で重複しないように選定された構造を有しており(図4)、処理を経た後の左右チャンネルにおける各テスト波形の出現有無により動作状況の良否が判定される(図5)。
【0045】
このテストデータは、チャンネルごとのテスト波形を、当該テスト波形の時間幅が、時間軸上で重複しない構造であるため、ダウンミックス処理において、基準チャンネルとなる左右チャンネルのテスト波形に、その他のチャンネルのテスト波形が重畳されることを回避することができる。
【0046】
この結果、この波形観測システム1では、検証者は、ダウンミックス処理の出力結果をパーソナルコンピュータに取り込んで信号周波数成分を分離させる過程を経ることなく、ダウンミックス処理における動作状況の良否を、左右チャンネルにおける各テスト波形の出現有無により判定することができる。
【0047】
近年、小型化の要請等の観点から、フロントエンド部11とバックエンド部12とのLSIが1チップ化される場合があり、この場合には、該バックエンド部12に対してテスト信号を直接的に外部から与えることができない。
【0048】
この波形観測システム1では、かかるテストデータを光ディスクRDに記憶し、該光ディスクRDに対して、フロントエンド部11での再生過程、バックエンド部12での圧縮及びダウンミックス過程を経るようにしている。したがって、フロントエンド部11とバックエンド部12との集積手法にかかわらず、ダウンミックス処理における動作状況の良否を判定できる点で有用となる。
【0049】
また、この波形観測システム1では、複数のチャンネルそれぞれに対応するテスト波形の波形パターンを同一とし、これらテスト波形に対して、左右チャンネルにおける同期をとるための識別波形に対する空き期間を固有に割り当てている。そして、ダウンミックス処理における動作状況の良否の判定は、該ダウンミックス処理を経た後の左右チャンネルに出現する識別波形に対する、各空き期間経過時点での対応するテスト波形の出現有無により行われる。
【0050】
したがって、この波形観測システム1では、テスト波形の形状によらずに、識別波形に対する、各空き期間経過時点での対応するテスト波形の出現有無だけで、検証者は、ダウンミックス処理における動作が正常に行われたか否かに加えて、正常に行われていない場合には、どの動作過程で不具合が生じているのかをも、直感的に判定させることができる。
【0051】
以上の構成によれば、チャンネルごとのテスト波形を、当該テスト波形の時間幅が、時間軸上で重複しない構造を有するテストデータを採用するようにしたことにより、ダウンミックス処理の出力結果をパーソナルコンピュータに取り込んで信号周波数成分を分離させる過程を経ることなく、ダウンミックス処理における動作状況の良否を、左右チャンネルにおける各テスト波形の出現有無により判定することができ、かくして、ダウンミックス処理における動作状況を簡易に把握させ得る波形観測システム1を実現できる。
【0052】
(5)他の実施の形態
上述の実施の形態においては、ダウンミックス処理として、基準チャンネルとなる左右チャンネルの音声データに対して、加算対象外となる低周波チャンネルの音声データを除く、その他のチャンネルの音声データを加算する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、複数チャンネルの音声信号のうち、基準となる2つのチャンネルの音声信号の一方又は双方にその他のチャンネルの音声信号の全部又は一部を加算するものであってもよい。
【0053】
また上述の実施の形態においては、左右チャンネルに対応するテスト波形と、識別波形とを分けるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、該左右チャンネルに対応するテスト波形を省略し、該識別波形とした波形を、左右チャンネルに対応するテスト波形としてもよい。このようにしても上述の実施の形態の場合と同様の効果を得ることができる。ちなみにこのようにした場合、空き期間の割り当て基準は例えば右チャンネルに対応するテスト波形とされる。
【0054】
さらに上述の実施の形態においては、バックエンド部12でのダウンミックス処理結果としてオシロスコープ3の表示部3aに表示される出力信号のテスト波形の出現態様(出現時期及び出現有無)に基づいて、ダウンミックス処理における動作状況の良否を検証者が判定するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、判定装置が判定するようにしてもよい。
【0055】
例えば、5.1チャンネル用のテストデータを判定する場合、オシロスコープ3に代えて、該5.1チャンネルの種類にそれぞれ割り当てられている各空き期間がデータとして格納された判定装置を、再生ユニット2における音声出力端に接続する。
【0056】
判定装置は、このデータとして格納される各空き期間に基づいて、バックエンド部12でのダウンミックス処理結果として得られる出力信号のテスト波形の出現態様(出現時期及び出現有無)により、ダウンミックス処理における動作状況を判定し、その判定結果として、ダウンミックス処理における動作が正常に行われたか否かに加えて、正常に行われていない場合には、どの動作過程で不具合が生じているのかを通知する。
【0057】
なお、この判定装置は、一の音声出力フォーマットの規格のテストデータが記憶される記憶媒体に関して自動判定するものであるが、複数の音声出力フォーマットの規格ごとにテストデータが記憶される記憶媒体に関して判定することも可能である。
【0058】
そのためには、複数の音声出力フォーマットの規格に定められる複数のチャンネルと、これらチャンネルの種類にそれぞれ割り当てられている各空き期間との対応付けを判定装置に格納し、当該判定装置が、その対応付けから、選択された規格に対応する各空き期間を認識する構成とすればよい。
【0059】
さらに上述の実施の形態においては、テストデータを記憶する記憶媒体として光ディスクRDを適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えばUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の半導体メモリや磁気ディスク等、この他種々の記憶媒体を適用することができる。
【0060】
さらに上述の実施の形態においては、テストデータを記憶媒体(光ディスクRD)から入力するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、ローカルエリアネットワーク、インターネット又はディジタル衛星放送等の通信媒体を介して入力するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、複数チャンネルの音声信号のうち、基準となる2つのチャンネルの音声信号の一方又は双方にその他のチャンネルの音声信号の全部又は一部を加算する処理における動作状況を調べる場合に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本実施の形態による波形観測システムの構成を示すブロック図である。
【図2】ダウンミックス処理の説明に供する略線図である。
【図3】各チャンネルに対応するテスト波形の波形パターンを示す略線図である。
【図4】5.1チャンネル用のテストデータを示す略線図である。
【図5】正常にダウンミックスが行われた場合のテスト波形(1)を示す略線図である。
【図6】4.1チャンネル用のテストデータを示す略線図である。
【図7】正常にダウンミックスが行われた場合のテスト波形(2)を示す略線図である。
【図8】波形観測処理手順を示すフローチャートである。
【図9】メニュー画面を示す略線図である。
【符号の説明】
【0063】
1……波形観測システム、2……再生ユニット、3……オシロスコープ、11……フロントエンド部、12……バックエンド部、13……DAC。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数チャンネルの音声信号のうち、基準となる2つのチャンネルの音声信号の一方又は双方にその他のチャンネルの音声信号の全部又は一部を加算する処理における動作状況を調べるために用いられるテストデータのデータ構造であって、
上記テストデータは、
上記複数のチャンネルそれぞれに対応するテスト波形を含み、これらテスト波形の時間幅が、時間軸上で重複しないように選定された構造を有し、
上記処理を経た後の上記2つのチャンネルにおける各上記テスト波形の出現有無により上記動作状況の良否が判定される
ことを特徴とするデータ構造。
【請求項2】
上記テストデータは、
上記複数のチャンネルそれぞれに対応する波形パターンのテスト波形と、
上記基準となる2つのチャンネルにおける同期をとるための識別波形とを含み、
各上記テスト波形の時間幅が時間軸上で重複しないように、上記識別波形に対する空き期間が各上記テスト波形に対して固有に割り当てられた構造を有し、
上記処理を経た後の上記2つのチャンネルに出現する上記識別波形に対する、各上記空き期間経過時点での上記テスト波形の出現有無により上記動作状況の良否が判定される
ことを特徴とする請求項1に記載のデータ構造。
【請求項3】
複数チャンネルの音声信号のうち、基準となる2つのチャンネルの音声信号の一方又は双方にその他のチャンネルの音声信号の全部又は一部を加算する処理における動作状況を調べるために用いられるテストデータが読み取り可能に記憶された記憶媒体であって、
上記テストデータは、
上記複数のチャンネルそれぞれに対応するテスト波形を含み、これらテスト波形の時間幅が、時間軸上で重複しないように選定された構造を有し、
上記処理を経た後の上記2つのチャンネルにおける各上記テスト波形の出現有無により上記動作状況の良否が判定される
ことを特徴とする記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−226315(P2008−226315A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−60924(P2007−60924)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】