説明

データ複製システム及びデータ複製システムのデータ複製方法

【課題】スナップショット対象ボリュームに対するライト命令の処理時間を短縮する。
【解決手段】ディスクアレイ・サブシステムは、第1のボリュームと、この複製ボリュームである第2のボリュームとを有する。ディスクアレイ・サブシステムのI/O制御部は、上位装置から受信したライトデータをデータ複製の単位の部分データに分割し、その部分データに対応するデータが第2のボリュームに複製されているか否かを判断し、複製されていないと判断した場合、部分データと対応するデータを第1のボリュームから読み出し、当該データが部分データと一致するか否かを判断する。I/O制御部は、データが一致しないと判断した場合、読み出したデータを第2のボリュームに複製する。また、I/O制御部は、部分データを第1のボリュームにライトする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スナップショット技術を利用したデータ複製システム及びデータ複製システムのデータ複製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
データバックアップ方法として、コピー・オン・ライト方式と称されるスナップショット方式のスナップショット技術が知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
また、当該スナップショット方式は、スナップショット作成時点におけるバックアップ対象ボリューム(スナップショット対象ボリューム)のデータの状態を保持するための技術である。
【0004】
この技術について図9を参照して説明する。例えば図9(a)に示されるように、データを記憶するスナップショット対象ボリュームのスナップショットを作成した場合、このスナップショット対象ボリュームと同じ記憶容量を有するスナップショット複製ボリュームがデータ複製システム内に定義される。
【0005】
そして、図9(b)に示されるように、スナップショット対象ボリュームのデータ“BB”の記憶領域にデータ“EE”の書き込みが発生した時点で、更新前のデータ“BB”がスナップショット複製ボリュームの対応するアドレスに格納される。この方法だと、スナップショット作成時にはスナップショット複製ボリュームを定義するだけで良いので、見かけ上スナップショット対象ボリュームを瞬時に複製することが出来る。
【0006】
スナップショット複製ボリュームのデータをリードする場合、データ“BB”のように、スナップショット複製ボリュームにデータが存在するアドレスはスナップショット複製ボリュームのデータ”BB“を参照する。一方、スナップショット複製ボリュームにデータが存在しないアドレスは、スナップショット対象ボリュームのデータを参照する。これにより、上位装置は、スナップショット作成時点でのスナップショット対象ボリュームのデータを取得することが可能となる。
【0007】
また、差分スナップショットを用いてストレージ装置の負荷を削減する技術も知られている。この技術では、サーバ装置からデータ操作コマンドを受信したストレージ装置は、このデータ操作コマンドで指定されているデータ領域を特定し、該データ領域のデータを第1のボリュームから読み込む。そして、ストレージ装置は、該データ操作コマンドにデータ退避の指示が含まれるか否かを判断する。データ操作コマンドにデータ退避の指示が含まれている場合、ストレージ装置は、該データ領域のデータが第2のボリュームに退避済みか否かを判断し、該データ領域のデータが第2のボリュームに退避済みでない場合、該データ領域のデータを第2のボリュームに退避し、該データ領域のデータをサーバ装置へ送信する(例えば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−192133号公報
【特許文献2】特開2005−208950号公報
【特許文献3】特開2007−310788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来のスナップショット方式のデータ複製方法では、ストレージ装置が上位装置からスナップショット対象ボリュームへのライトコマンドを受信すると、ストレージ装置は、ライト対象すべての範囲について、スナップショット対象ボリュームの更新前データをスナップショット複製ボリュームにコピーした後、スナップショット対象ボリュームを更新し、上位装置へレスポンスを返却していた。
【0010】
また、上記特許文献3の技術では、データ操作コマンドで指定されているデータ領域のデータを第2のボリュームへ退避する場合、当該データ領域のデータを全て第2のボリュームに退避していた。
【0011】
ここで、スナップショット対象ボリュームの更新例として、数メガバイトのファイルをスナップショット対象ボリュームからリードして、その一部分のみモディファイしてライトするケースを考える。
【0012】
この場合、スナップショット対象ボリュームが更新された領域は一部の領域であるにも関わらず、ライトされた数メガバイト全ての領域についてスナップショット複製ボリュームへのデータの複製を行った後、スナップショット対象ボリュームへのライト処理が行われる。このため、上述のスナップショット方式を採用したデータ複製システムにおいては、スナップショット対象ボリュームへのライト処理が遅延するという問題があった。
【0013】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、コピー・オン・ライト方式のスナップショットによりデータ複製を行う場合に、スナップショット対象ボリュームに対するライト命令の処理時間を短縮することができるデータ複製システム及びデータ複製システムのデータ複製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、データを記憶する第1のボリュームと、前記第1のボリュームの所定の時点のデータの状態を保持するために前記第1のボリュームに記憶されたデータを複製する第2のボリュームと、を有するデータ複製システムであって、上位装置から前記第1のボリュームへのライトコマンドを受信すると、前記ライトコマンドに基づくライトデータをデータ複製の単位の部分データに分割する分割手段と、前記部分データに対応するデータが前記第1のボリュームから前記第2のボリュームに複製されているか否かを判断する判断手段と、前記判断手段で前記対応するデータが複製されていないと判断したことを条件に、前記部分データと対応するデータを前記第1のボリュームから読み出し、当該読み出したデータと前記部分データとが一致するか否かを比較する比較手段と、前記読み出したデータと前記部分データとが一致しない場合、前記読み出したデータを前記第2のボリュームに複製する複製手段と、前記部分データを前記第1のボリュームに書き込む書込み手段と、を備えるデータ複製システムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、コピー・オン・ライト方式のスナップショットによりデータ複製を行う場合に、スナップショット対象ボリュームに対するライト命令の処理時間を短縮することができるデータ複製システム及びデータ複製システムのデータ複製方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るストレージシステムの構成を示す図である。
【図2】同実施の形態に係るボリューム対応テーブルの一例を示す図である。
【図3】同実施の形態に係る差分管理テーブルの一例を示す図である。
【図4】同実施の形態に係る処理の一例を示すフローチャートである。
【図5】従来例における追い出しコピー処理を説明するための図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態における追い出しコピー処理を説明するための図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係るストレージシステムの構成を示す図である。
【図8】同実施の形態に係る処理の一例を示すフローチャートである。
【図9】従来例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の各実施の形態について図面を参照して説明する。
【0018】
(第1の実施の形態)
(ストレージシステムの構成)
図1は、データ複製システムであるストレージシステム100の構成を示す図である。図1に示すように、ストレージシステム100は、ディスクアレイ・サブシステム1とホスト2とが接続されて構成されている。なお、ストレージシステム100は、バックアップ・サーバ等を含むように構成しても良い。
【0019】
ディスクアレイ・サブシステム1は、ワークキャッシュページ11と、論理キャッシュページ12と、ボリューム対応テーブル13と、差分管理テーブル14と、I/O処理部15と、第1のボリュームであるマスタボリューム16と、第2のボリュームであるスナップショットボリューム17とを備えている。
【0020】
ワークキャッシュページ11は、ホスト2から受信したライト命令が、スナップショットボリュームを有するマスタボリューム16への命令だった場合に、ライトデータを一時的に保存するメモリである。
【0021】
論理キャッシュページ12は、マスタボリューム16から読み出したデータを保存するメモリである。
【0022】
ボリューム対応テーブル13は、マスタボリューム16とスナップショットボリューム17との対応関係を管理するテーブルである。ボリューム対応テーブル13の詳細は、図2を参照して後述する。
【0023】
差分管理テーブル14は、スナップショットボリューム17にマスタボリューム16に記憶しているデータと対応するデータが存在するか否かを管理するテーブルである。差分管理テーブル14は、当該対応するデータが存在するか否かを、データの複製処理を行う単位であるスナップショットI/O処理単位(以下、ページ単位と称する。)毎にフラグで管理する。例えば、フラグが「1」のときは既述の対応するデータが存在することを示し、フラグが「0」のときは既述の対応するデータが存在しないことを示す。差分管理テーブル14の詳細は、図3を参照して後述する。
【0024】
I/O処理部15は、ホスト2からのライト命令を受信し、ライト処理が完了するとホスト2へレスポンスを返却する。また、I/O処理部15は、分割手段であるI/O分割手段151と、判断手段である追い出し要否判断手段152と、比較手段であるデータコンペア手段153と、複製手段である追い出しコピー手段154と、書込み手段であるデータ書き込み手段155とを備えている。
【0025】
I/O分割手段151は、ホスト2からのライト命令を受信すると、ボリューム対応テーブル13を参照し、ライト対象のボリュームがスナップショットボリューム17を有するマスタボリューム16へのライト命令かどうかを判断する。また、I/O分割手段151は、スナップショットボリューム17を有するマスタボリューム16への命令であった場合、ライトデータをワークキャッシュページ11にコピーし、更に、ライトデータをデータ複製の単位であるページ単位の部分データに分割する。
【0026】
追い出し要否判断手段152と、データコンペア手段153と、追い出しコピー手段154と、データ書き込み手段155とは、I/O分割手段151によって分割されたデータ毎に処理を行う。
【0027】
追い出し要否判断手段152は、分割されたライトデータ(部分データ)がスナップショットボリューム17に記憶されているか否かを判断する。より詳細には、追い出し要否判断手段152は、差分管理テーブル14を参照して、複製対象であるスナップショットボリューム17の該当ページに、マスタボリューム16の該当ページに記憶しているデータと対応するデータが存在するか否かを判断する。これにより、後述するデータ比較の要否が判断される。
【0028】
データコンペア手段153は、追い出し要否判断手段152が追い出しコピー必要(データ比較必要)と判断したことを条件に、マスタボリューム16の該当ページのデータを論理キャッシュページ12に読み出し、この読み出したデータとワークキャッシュページ11に保存してある該当ページのライトデータとを比較する。データコンペア手段153は、該当ページの読み出したデータと該当ページのライトデータとが一致した場合、追い出しコピーが不要と判断する。また、データコンペア手段153は、該当ページの読み出したデータと該当ページのライトデータとが一致しない場合、追い出しコピーが必要と判断する。
【0029】
追い出しコピー手段154は、既述の読み出したデータとワークキャッシュページ11に保存してある該当ページのライトデータとが一致しない場合に、当該読み出したデータをスナップショットボリューム17に複製する。言い換えれば、データコンペア手段153が追い出し必要と判断した場合に、論理キャッシュページ12に読み出したマスタボリューム16の該当ページのデータをスナップショットボリューム17に複製する(以下、追い出しコピーと称する。)。
【0030】
データ書き込み手段155は、ワークキャッシュページ11に保存している分割されたライトデータをマスタボリューム16の該当ページに書き込む。
【0031】
マスタボリューム16は、データを記憶するボリュームである。また、マスタボリューム16は、ホスト2からアクセスされるディスクから構成される。このマスタボリューム16は、例えば、物理ディスクを複数組み合わせて冗長化をもたせている。
【0032】
スナップショットボリューム17は、マスタボリューム16の所定の時点(スナップショット作成時)のデータの状態を保持するためにマスタボリューム16に記憶するデータを複製するボリュームである。スナップショットボリューム17は、データの複製開始以降のマスタボリューム16の更新前データを保持する。
【0033】
図2は、ボリューム対応テーブル13の一例を示す図である。ボリューム対応テーブル13は、マスタボリューム16のボリューム番号を格納するフィールド131と、スナップショットボリューム17のボリューム番号を格納するフィールド132とが対応付けられている。
【0034】
より詳細には、図2に示すように、例えば、マスタボリューム16のボリューム番号「LV0」とスナップショットボリューム17のボリューム番号「LV3」とが対応付けられている。これは、ボリューム番号「LV0」がマスタボリュームであり、このマスタボリュームのスナップショットボリュームが「LV3」であることを示している。
【0035】
図3は、差分管理テーブル14の一例を示す図である。差分管理テーブル14は、ページ番号を格納するフィールド141と、ボリューム番号1420,・・・,142nが対応付けられている。
【0036】
より詳細には、図3に示すように、例えば、LV3のページ1はフラグが「1」となっている。これは、スナップショットボリュームLV3のページ番号「1」にはデータが存在することを示している。言い換えれば、スナップショットボリュームLV3のページ番号「1」には、追い出しコピーがされていることを示している。
【0037】
(ストレージシステムの動作)
次に、ストレージシステム100の動作の一例について、図4を参照して説明する。
【0038】
ディスクアレイ・サブシステム1のI/O処理部15はホスト2からライト命令を受信する(S101)。
【0039】
このようにI/O処理部15がライト命令を受信すると、I/O分割手段151は、ライト対象のボリュームがスナップショットボリュームを有しているか否かを判断する(S102)。より詳細には、I/O処理部15は、ライト対象のボリュームがスナップショットボリューム17を有しているか否かをボリューム対応テーブル13に基づいて判断する。
【0040】
スナップショットボリューム17を有していないマスタボリューム16へのライト命令の場合は(S102:NO)、I/O処理部15は、マスタボリューム16へライトデータの書き込みを行う(S105)。
【0041】
ライトデータの書き込みを行った後、I/O処理部15は、ホスト2へレスポンスを返却する(S106)。
【0042】
一方、スナップショットボリューム17を有している場合は(S102:YES)、I/O分割手段151は、ライトデータをワークキャッシュページ11にコピーし(S103)、ライトデータをページ単位に分割する(S104)。
【0043】
ステップS107の処理では、I/O処理部15は、ページを順次選択する処理を行う。
【0044】
以下のステップS108乃至S113の処理は、ステップS107の処理で選択されたページ毎に行われる処理である。
【0045】
追い出し要否判断手段152は、追い出し要否の判断を行う(S108)。より詳細には、追い出し要否判断手段152は、差分管理テーブル14を参照し、分割されたデータが書き込まれるマスタボリューム16のページと対応するスナップショットボリューム17のページにデータが存在するか否かをチェックする。追い出し要否判断手段152は、スナップショットボリューム17の該当ページに既述の対応するデータが存在する場合(本実施の形態では、フラグ「1」の場合)、データ比較不要と判断し、既述の対応するデータが存在しない場合(本実施の形態では、フラグ「0」の場合)、データ比較必要と判断する。
【0046】
追い出し要否判断手段152がデータ比較必要と判断した場合(S108:データ比較必要)、データコンペア手段153は、マスタボリューム16の該当ページに記憶されている更新前データを論理キャッシュページ12に読み出す(S109)。
【0047】
そして、データコンペア手段153は、データコンペアによる追い出し要否の判断を行う(S110)。より詳細には、データコンペア手段153は、論理キャッシュページ12に読み出した更新前データと、ワークキャッシュページ11に保存してあるライトデータとの比較を行う。データコンペア手段153は、マスタボリューム16の更新前データとライトデータが一致する場合、追い出しコピー不要と判断し、更新前データとライトデータとが一致しない場合、追い出しコピー必要と判断する。
【0048】
データコンペア手段153が追い出しコピー必要と判断した場合(S110:追い出しあり)、追い出しコピー手段154は、論理キャッシュページ12に読み出した更新前データをスナップショットボリューム17に追い出しコピーする(S111)。
【0049】
そして、データ書き込み手段155は、追い出しコピーが完了した場合、ワークキャッシュページ11のライトデータをマスタボリューム16の該当ページに書き込む(S112)。
【0050】
なお、追い出し要否判断手段152がデータ比較不要と判断した場合(S108:データ比較不要)、又はデータコンペア手段153が追い出しコピー不要と判断した場合(S1010:追い出しなし)、データ書き込み手段155は、ワークキャッシュページ11に保存している分割されたデータをマスタボリューム16の該当ページに書き込む(S112)。
【0051】
既述のステップS108からS112の処理が終了すると、I/O処理部15は、ワークキャッシュページ11に保存している分割されたライトデータの書き込みが全て完了したか否かを判断する(S113)。分割されたライトデータの書き込みが全て完了していなければ(S113:NO)、I/O処理部15は、ステップS107の処理へ進み、次に選択される分割データについて既述のステップS108乃至S113の処理を行う。
【0052】
一方、分割されたライトデータの書き込みが全て完了した場合(S113:YES)、I/O処理部15は、書き込み完了を示すレスポンスをホスト2へ返却する(S106)。
【0053】
(効果の説明)
ディスクアレイ・サブシステム1によると、スナップショットボリューム17を有するマスタボリューム16に対するライト命令の処理時間を短縮することができる。特に、大きいサイズのファイルをリードして一部のみをモディファイライトする更新方法の場合に有効である。以下では、従来例を示す図5と本実施の形態を示す図6とを比較しながらディスクアレイ・サブシステム1の効果を説明する。
【0054】
図5(a)及び(b)に示すように、従来のデータ複製システムは、ライト範囲の全ての領域について、マスタボリューム16からデータをリードし(図5(1))、そのリードデータの一部をモディファイし、マスタボリューム16へライトし(図5(2))、そのライト範囲全てのデータをスナップショットボリューム17へライトする(図5(3))動作となっていた。すなわち、全てのライト範囲の領域についてスナップショットボリューム17への追い出しコピー処理を行っていた。このため、スナップショットボリューム17を有するマスタボリューム16へのライト処理が遅延していた。
【0055】
一方、図6(a)及び(b)に示すように、本実施の形態のディスクアレイ・サブシステム1は、マスタボリューム16からデータをリードし(図6(1))、そのリードデータの一部をモディファイし、マスタボリューム16へライトし(図6(2))、そのモディファイされた一部のデータについてスナップショットボリューム17へ複製する(図6(3))動作となっている。すなわち、ディスクアレイ・サブシステム1は、変更された一部のデータのみ追い出しコピー処理を行っている。したがって、ディスクアレイ・サブシステム1は、従来のデータ複製システムと比較してマスタボリューム16に対するライト処理の処理時間を短縮することができる。このため、ディスクアレイ・サブシステム1は、スナップショットボリューム17を有するマスタボリューム16へのライト処理を行うときの処理速度を上げることができ、高い処理性能を発揮することが可能となる。
【0056】
また、図5に示すように、従来のデータ複製システムでは、マスタボリューム16のライト範囲の全ての領域のデータをスナップショットボリューム17に複製する必要がある。
【0057】
一方、図6に示すように、本実施の形態のディスクアレイ・サブシステム1は、変更された一部のデータのみをページ単位でスナップショットボリューム17に複製する。したがって、ディスクアレイ・サブシステム1は、従来のデータ複製システムと比較して、スナップショットボリューム17の使用容量を小さくすることができる。
【0058】
さらに、スナップショットボリューム17が仮想化されている場合には、ディスクアレイ・サブシステム1は、スナップショットボリュームの使用容量の効率をさらに向上させることができる。
【0059】
さらに、ディスクアレイ・サブシステム1は、スナップショットボリューム17にバックアップしたデータをマスタボリューム16に書き戻す処理(リストア処理)を行う場合、書き戻すデータの量を小さくできる。このため、ディスクアレイ・サブシステム1は、リストア時間を短縮することができる。
【0060】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について図7及び図8を参照して説明する。
【0061】
本第2の実施の形態が上述の第1の実施の形態と異なるのは、ディスクアレイ・サブシステム1のI/O処理部15に、コンペアモード決定手段156を設けている点である。他の構成については、上述の実施の形態と同様であるため、同一の構成には同一の符号を付すこととし、上述の実施の形態と異なる点について詳細に説明する。
【0062】
なお、キャッシュメモリである論理キャッシュページ12は、ホスト2からのリードコマンドに基づいて読み出されリードデータを保存するように構成されている。より詳細には、ホスト2からのリードコマンドに基づいて読み出されたリードデータを論理キャッシュページ12に保存する。
【0063】
先ず、上述の第1の実施の形態と異なる構成について説明する。図7に示すように、コンペアモード決定手段156が設けられている。
【0064】
コンペアモード決定手段156は、既述のデータコンペア手段153による更新前データとライトデータのデータコンペアによる追い出し要否判断を実施するか否かを決定する。
【0065】
データコンペア手段153は、マスタボリューム16から読み出したデータの比較対象となるデータが論理キャッシュページ12に保存されていることを条件に、読み出したデータと分割されたデータとの比較を行う点が上述の実施の形態と異なっている。
【0066】
次に、図8を参照して第2の実施の形態の処理について説明する。ステップS201乃至S209及びS211乃至S214の処理は、既述のステップS101乃至S113と同じであり、ステップS210の処理が設けられている点が第1の実施の形態と異なっている。以下、異なる部分を中心に説明する。
【0067】
追い出し要否判断手段152が追い出し必要と判断した場合(S208:YES)、マスタボリューム16の更新前データを論理キャッシュページ12に読み出す(S209)。この時、ライト命令の前にマスタボリューム16の同じライト範囲の領域に対してリード命令が発行されていた場合、読み出した更新前データの比較対象となるデータが論理キャッシュページ12に存在する(以下、キャッシュヒットと称する。)。この場合、今回のライト命令は、モディファイライトである可能性が高い。
【0068】
したがって、コンペアモード決定手段156は、キャッシュヒットした場合、データコンペア手段153のデータコンペアによる追い出し要否判断を実施し、キャッシュヒットしない場合データコンペア手段153のデータコンペアによる追い出し要否判断を実施しないと決定する(S210)。このように決定した後、追い出しコピー手段154は、追い出しコピーを実施する。
【0069】
言い換えれば、コンペアモード決定手段156がデータコンペアによる追い出し要否判断を実施すると判断した場合(つまり、キャシュヒットした場合)にのみ、データコンペア手段153は、追い出し要否判断手段152が読み出した更新前データとライトデータとのコンペアに基づく追い出しコピーの有無を判断する(S211)。
【0070】
この第2の実施の形態のディスクアレイ・サブシステム1によると、キャッシュヒットしなかった場合、データコンペア手段153のデータコンペアによる追い出し要否判断を実施しない。このため、モディファイライトの可能性が高い場合に、追い出しコピー要否を判断できる。
【0071】
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、その実施に際して様々な変形が可能である。
【0072】
上記実施の形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0073】
(付記1)
データを記憶する第1のボリュームと、前記第1のボリュームの所定の時点のデータの状態を保持するために前記第1のボリュームに記憶されたデータを複製する第2のボリュームと、を有するデータ複製システムであって、
上位装置から前記第1のボリュームへのライトコマンドを受信すると、前記ライトコマンドに基づくライトデータをデータ複製の単位の部分データに分割する分割手段と、
前記部分データに対応するデータが前記第1のボリュームから前記第2のボリュームに複製されているか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段で前記対応するデータが複製されていないと判断したことを条件に、前記部分データと対応するデータを前記第1のボリュームから読み出し、当該読み出したデータと前記部分データとが一致するか否かを比較する比較手段と、
前記読み出したデータと前記部分データとが一致しない場合、前記読み出したデータを前記第2のボリュームに複製する複製手段と、
前記部分データを前記第1のボリュームに書き込む書込み手段と、を備えるデータ複製システム。
【0074】
(付記2)
前記上位装置からのリードコマンドに基づいて読み出されたリードデータを保存するキャッシュメモリを備え、
前記比較手段は、前記読み出したデータと対応するデータが前記キャシュメモリに保存されていることを条件に、前記読み出したデータと前記部分データとの比較を行う、付記1記載のデータ複製システム。
【0075】
(付記3)
データを記憶する第1のボリュームと、前記第1のボリュームの所定の時点のデータの状態を保持するために当該第1のボリュームに記憶されたデータを複製する第2のボリュームと、を有するデータ複製システムのデータ複製方法であって、
上位装置から前記第1のボリュームへのライトコマンドを受信すると、前記ライトコマンドに基づくライトデータをデータ複製の単位の部分データに分割する分割ステップと、
前記部分データに対応するデータが前記第1のボリュームから前記第2のボリュームに複製されているか否かを判断する判断ステップと、
前記判断ステップで前記対応するデータが複製されていないと判断したことを条件に、前記部分データと対応するデータを前記第1のボリュームから読み出し、当該読み出したデータと前記部分データとが一致するか否かを比較する比較ステップと、
前記比較ステップで前記読み出したデータと前記部分データとが一致しない場合、前記読み出したデータを前記第2のボリュームに複製する複製ステップと、
前記部分データを前記第1のボリュームに書き込む書込みステップと、を有する、データ複製システムのデータ複製方法。
【0076】
(付記4)
前記データ複製システムは、
前記上位装置からのリードコマンドに基づいて読み出されリードデータを保存するキャッシュメモリを備え、
前記比較ステップは、前記読み出したデータと対応するデータが前記キャシュメモリに保存されていることを条件に、前記読み出したデータと前記部分データとの比較を行う、付記3記載のデータ複製システムのデータ複製方法。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、ストレージ装置におけるボリュームのバックアップ等の用途に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0078】
1・・・ディスクアレイ・サブシステム
2・・・ホスト
11・・・ワークキャッシュページ
12・・・論理キャッシュページ
13・・・ボリューム対応テーブル
14・・・差分管理テーブル
15・・・I/O処理部
16・・・マスタボリューム
17・・・スナップショットボリューム
100・・・ストレージシステム
151・・・I/O分割手段
152・・・追い出し要否判断手段
153・・・データコンペア手段
154・・・追い出しコピー手段
155・・・データ書き込み手段
156・・・コンペアモード決定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データを記憶する第1のボリュームと、前記第1のボリュームの所定の時点のデータの状態を保持するために前記第1のボリュームに記憶されたデータを複製する第2のボリュームと、を有するデータ複製システムであって、
上位装置から前記第1のボリュームへのライトコマンドを受信すると、前記ライトコマンドに基づくライトデータをデータ複製の単位の部分データに分割する分割手段と、
前記部分データに対応するデータが前記第1のボリュームから前記第2のボリュームに複製されているか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段で前記対応するデータが複製されていないと判断したことを条件に、前記部分データと対応するデータを前記第1のボリュームから読み出し、当該読み出したデータと前記部分データとが一致するか否かを比較する比較手段と、
前記読み出したデータと前記部分データとが一致しない場合、前記読み出したデータを前記第2のボリュームに複製する複製手段と、
前記部分データを前記第1のボリュームに書き込む書込み手段と、を備えるデータ複製システム。
【請求項2】
前記上位装置からのリードコマンドに基づいて読み出されたリードデータを保存するキャッシュメモリを備え、
前記比較手段は、前記読み出したデータと対応するデータが前記キャシュメモリに保存されていることを条件に、前記読み出したデータと前記部分データとの比較を行う、請求項1記載のデータ複製システム。
【請求項3】
データを記憶する第1のボリュームと、前記第1のボリュームの所定の時点のデータの状態を保持するために当該第1のボリュームに記憶されたデータを複製する第2のボリュームと、を有するデータ複製システムのデータ複製方法であって、
上位装置から前記第1のボリュームへのライトコマンドを受信すると、前記ライトコマンドに基づくライトデータをデータ複製の単位の部分データに分割する分割ステップと、
前記部分データに対応するデータが前記第1のボリュームから前記第2のボリュームに複製されているか否かを判断する判断ステップと、
前記判断ステップで前記対応するデータが複製されていないと判断したことを条件に、前記部分データと対応するデータを前記第1のボリュームから読み出し、当該読み出したデータと前記部分データとが一致するか否かを比較する比較ステップと、
前記比較ステップで前記読み出したデータと前記部分データとが一致しない場合、前記読み出したデータを前記第2のボリュームに複製する複製ステップと、
前記部分データを前記第1のボリュームに書き込む書込みステップと、を有する、データ複製システムのデータ複製方法。
【請求項4】
前記データ複製システムは、
前記上位装置からのリードコマンドに基づいて読み出されリードデータを保存するキャッシュメモリを備え、
前記比較ステップは、前記読み出したデータと対応するデータが前記キャシュメモリに保存されていることを条件に、前記読み出したデータと前記部分データとの比較を行う、請求項3記載のデータ複製システムのデータ複製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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