説明

データ記録装置,データ記録装置の内部制御方法及びデータ記録システム

【課題】上位の制御装置からのコマンドに基づき、複数台のHDDに対して、AVデータの書き込み/読み出しと、それ以外のデータの書き込み/読み出しとを行うデータ記録装置において、AVデータ,それ以外のデータにそれぞれ応じたタイムアウト値を設定する。
【解決手段】上位の制御装置11−1から受信したコマンドによって要求されるセクタ数に応じた長さの制限時間を設定する処理と、設定した制限時間を指定して、制御装置11−1から受信したコマンドに対応したコマンドをHDDコントローラ14−1〜14−6に発行する処理と、HDD15−1〜15−6のうちこの制限時間内に書き込み/読み出しの処理を終えたHDDだけの書き込み/読み出しの結果に基づいて制御装置11−1に返答を行う処理とを行う制御部11−2を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上位の制御装置からのコマンドに基づき、複数台のハードディスクドライブに対して、AVデータ(ビデオデータ及びオーディオデータ)の書き込み/読み出しと、それ以外のデータの書き込み/読み出しとを行うデータ記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
RAID(Redundant Arrays of Inexpensive Disks)技術を用いて複数台のハードディスクドライブにAVデータを記録する装置(RAID装置)が、ビジネス用途やプロフェッショナル用途のデータ記録装置として普及している。こうしたRAID装置は、通常、上位の制御装置から送信されるコマンドに基づいてAVデータの書き込み/読み出しを行う。
【0003】
ハードディスクドライブは、ヘッドのシークや目的のセクタの回転待ちを行う関係でアクセス時間(データの書き込み/読み出しのコマンドを受けてから実際にデータの書き込み/読み出しが行われるまでの時間)に制約がある。そこで、ビデオデータを切れ目無く再生するシステムにおいては、RAID装置の書き込み/読み出し処理に時間的な制限を設ける必要がある。そのため、RAID装置には、従来からタイムアウト機能が備えられている。このタイムアウト機能を、図1及び図2を用いて説明する。
【0004】
図1には、RAID装置の読み出し処理のタイムアウト値(制限時間)の例を示している。図1(a)に示すように、一定の時間間隔Tp単位で一定のデータサイズずつのビデオデータD1,D2,…を切れ目無く再生する場合、ビデオデータD1の再生が終了するまでに次のビデオデータD2がRAID装置から上位の制御装置に転送されている必要がある。
【0005】
図1(b)は、上位の制御装置からRAID装置にビデオデータD2の転送要求(読み出しコマンド)が送信されたタイミングを示している。このタイミングから、ビデオデータD1の再生が終了するまでの時間はTwである。
【0006】
図1(c)に示すように、RAID装置から上位の制御装置にビデオデータD2を転送するのに要する最大の時間がTtであるとすると、時間Tw内にビデオデータD2を上位の制御装置に転送するためには、RAID装置は時間Ti=Tw−Tt内にビデオデータD2の読み出し処理を終えなければならない。そこで、この時間TiがRAID装置の読み出し処理のタイムアウト値とされる。
【0007】
図2には、タイムアウト機能によるRAID装置の内部制御の例を示している。RAID装置では、ビデオデータとビデオデータから生成したエラー訂正符号とが複数台のハードディスクドライブHDD1〜HDD6に分散して記録されているので、RAID装置内部では、上位の制御装置から受信した読み出しコマンドに対応して各HDD1〜HDD6に読み出しコマンドが発行される。
【0008】
そして、この読み出しコマンドを発行した後、タイムアウト値Ti(図1に示したTi)が経過したタイミングで、HDD1〜HDD6のうち読み出し処理を終えているHDD〜HDD4及びHDD6だけからのデータを用いて元のビデオデータを復元し、復元したビデオデータを上位の制御装置に転送する。
【0009】
従来のRAID装置では、このタイムアウト機能におけるタイムアウト値は、予め固定した値に設定されているか、または上位の制御装置の側で指定された値に設定されていた。
【0010】
また、AVデータを記録するRAID装置において、読み出し対象のデータのビットレートに応じてタイムアウト値を設定するようにした技術も従来から提案されていた(特許文献1)。
【0011】
【特許文献1】特開2007−199934号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、RAID装置を、AVデータの書き込み/読み出しを行うだけでなく、それ以外のデータ(例えば、RAID装置の動作のログ情報や、RAID装置に記録しているデータのファイルシステムによる管理情報など)の書き込み/読み出しを行うためにも利用しようとした場合、従来のRAID装置のタイムアウト機能では、次の(a)〜(c)のような問題が生じる。
【0013】
(a)AVデータとログ情報やファイル管理情報とではデータサイズが大きく異なるので、タイムアウト値を固定値に設定する場合、いずれか一方に合わせた値に設定すると、他方にとって適切な値にならない。(例えば、従来のようにAVデータに合わせた値に設定すると、ログ情報やファイル管理情報の書き込み/読み出しを行うためには不必要に長い値になってしまう。)
【0014】
(b)ログ情報やファイル管理情報はAVデータと違ってリアルタイム性を要求されない情報なので、これらの情報の書き込み/読み出しを行うアプリケーションソフトウェアには、タイムアウト値という概念が存在しない。上位の制御装置がそうしたアプリケーションソフトウェアによってログ情報やファイル管理情報の書き込み/読み出しを送信する場合、上位の制御装置の側でタイムアウト値を指定してもらうこともできない。
【0015】
(c)ログ情報やファイル管理情報にはビットレートという概念が存在しないので、上記特許文献1に記載のような技術を用いてもログ情報やファイル管理情報に合わせたタイムアウト値を設定することはできない。
【0016】
本発明は、上述の点に鑑み、上位の制御装置からのコマンドに基づき、複数台のハードディスクドライブに対して、AVデータの書き込み/読み出しと、それ以外のデータの書き込み/読み出しとを行うデータ記録装置において、AVデータ,それ以外のデータにそれぞれ応じたタイムアウト値を設定できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この課題を解決するため、本発明は、上位の制御装置から受信した書き込み/読み出しのコマンドに基づき、複数台のハードディスクドライブに対して、ビデオデータ及びオーディオデータの書き込み/読み出しと、それ以外のデータの書き込み/読み出しとを行うデータ記録装置において、
前記制御装置から受信したコマンドによって要求されるセクタ数を判断し、該セクタ数に応じた長さの制限時間を設定する制限時間設定処理と、
前記制限時間設定処理で設定した制限時間を指定して、前記制御装置から受信したコマンドに対応したコマンドを、前記複数台のハードディスクドライブを制御するハードディスクドライブコントローラに発行するコマンド発行処理と、
前記複数台のハードディスクドライブのうち、前記コマンド発行処理でコマンドを発行した後前記制限時間内に書き込み/読み出しの処理を終えたハードディスクドライブだけの書き込み/読み出しの結果に基づいて前記制御装置に返答を行う返答処理と
を行う制御部を備えたことを特徴とする。
【0018】
また本発明は、上位の制御装置から受信し書き込み/読み出しのコマンドに基づき、複数台のハードディスクドライブに対して、ビデオデータ及びオーディオデータの書き込み/読み出しと、それ以外のデータの書き込み/読み出しとを行うデータ記録装置の内部制御方法において、
前記制御装置から受信したコマンドによって要求されるセクタ数を判断し、該セクタ数に応じた長さの制限時間を設定する第1のステップと、
前記第1のステップで設定した制限時間を指定して、前記制御装置から受信したコマンドに対応したコマンドを、前記複数台のハードディスクドライブを制御するハードディスクドライブコントローラに発行するに発行する第2のステップと、
前記複数台のハードディスクドライブのうち、前記第2のステップでコマンドを発行した後前記制限時間内に書き込み/読み出しの処理を終えたハードディスクドライブだけの書き込み/読み出しの結果に基づいて前記制御装置に返答を行う第3のステップと
を有することを特徴とする。
【0019】
このデータ記録装置,データ記録装置の内部制御方法では、上位の制御装置から書き込み/読み出しのコマンドを受信すると、そのコマンドによって要求されるセクタ数が判断され、そのセクタ数に応じた長さの制限時間(タイムアウト値)が設定される。そして、この設定された制限時間を指定して、上位の制御装置から受信したコマンドに対応したコマンドがハードディスクドライブコントローラに発行され、その後、複数台のハードディスクドライブのうちこの制限時間内に書き込み/読み出しの処理を終えたハードディスクドライブだけの書き込み/読み出しの結果に基づいて制御装置に返答が行われる。
【0020】
このように、上位の制御装置から受信した書き込み/読み出しのコマンドの要求セクタ数に応じて、タイムアウト値が可変設定される。これにより、上位の制御装置の側で、AVデータの書き込み/読み出しコマンドの要求セクタ数とそれ以外のデータの書き込み/読み出しコマンドの要求セクタ数とを異ならせるだけで、データ記録装置の側で、AVデータ,それ以外のデータにそれぞれ応じたタイムアウト値を設定できるようになる。
【0021】
次に、本発明は、複数台のハードディスクドライブに対して、ビデオデータ及びオーディオデータの書き込み/読み出しと、それ以外のデータの書き込み/読み出しとを行うデータ記録装置と、
前記データ記録装置に、データの書き込み/読み出しのコマンドを送信する上位の制御装置と
を含むデータ記録システムにおいて、
前記データ記録装置は、
前記制御装置から受信したコマンドによって要求されるセクタ数を判断し、該セクタ数に応じた長さの制限時間を設定する制限時間設定処理と、
前記制限時間設定処理で設定した制限時間を指定して、前記コマンド受信処理で受信したコマンドに対応したコマンドを、前記複数台のハードディスクドライブを制御するハードディスクドライブコントローラに発行するコマンド発行処理と、
前記複数台のハードディスクドライブのうち、前記コマンド発行処理でコマンドを発行した後前記制限時間内に書き込み/読み出しの処理を終えたハードディスクドライブだけの書き込み/読み出しの結果に基づいて前記制御装置に返答を行う返答処理と
を行う制御部を備えた
ことを特徴とする。
【0022】
このデータ記録システムは、前述の本発明に係るデータ記録装置と上位の制御装置とを含んだものであり、上位の制御装置の側で、ビデオデータやオーディオデータの書き込み/読み出しコマンドの要求セクタ数とそれ以外のデータの書き込み/読み出しコマンドの要求セクタ数とを異ならせるだけで、データ記録装置の側で、AVデータ,それ以外のデータにそれぞれ応じたタイムアウト値を設定できるようになる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、上位の制御装置からのコマンドに基づき、複数台のハードディスクドライブに対して、AVデータの書き込み/読み出しと、それ以外のデータの書き込み/読み出しとを行うデータ記録装置において、AVデータ,それ以外のデータにそれぞれ応じたタイムアウト値を設定することができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を、図面を用いて具体的に説明する。なお、以下では デジタルシネマ上映システムに本発明を適用した例を説明するが、その前提として、まずデジタルシネマ上映システムの概要を説明する。
【0025】
図3は、本発明を適用したデジタルシネマ上映システムの全体構成図である。このデジタルシネマ上映システムは、RAID技術を用いたデータ記録装置1と、デジタルシネマサーバー2と、プロジェクター(投射型表示装置)3と、パーソナルコンピュータ4とで構成されている。
【0026】
データ記録装置1,デジタルシネマサーバー2及びプロジェクター3は、同一の筐体内に収納されている。デジタルシネマサーバー2とパーソナルコンピュータ4とは、1000BASE−Tのような高速ネットワーク5で接続されている。
【0027】
このデジタルシネマ上映システムは、上映する映画のAVデータ(ビデオデータは、JPEG2000のような画像圧縮方式で圧縮したデータ)を、パーソナルコンピュータ4からデジタルシネマサーバー2を介してデータ記録装置1に記録させておき、データ記録装置1から再生させたAVデータを、デジタルシネマサーバー2からプロジェクター3に送ってスクリーンに投影するものである。
【0028】
パーソナルコンピュータ4には、GUI画面上で、AVデータの記録や、映画の上映や、AVデータ以外のデータ(データ記録装置1の動作のログ情報や、データ記録装置1内のAVデータに関するファイルシステムの情報や、映画の字幕のデータ)の管理を行うためのプログラムが格納されている。パーソナルコンピュータ4からは、このGUI画面上での操作に基づき、AVデータの書き込み/読み出し要求や、ログ情報やファイルシステム情報や字幕データの書き込み/読み出し要求を高速ネットワーク5経由でデジタルシネマサーバー2に送信する。
【0029】
図4は、デジタルシネマサーバー2内に設けられている主要な回路を示す図である。デジタルシネマサーバー2内には、CPU11と、圧縮されたAVデータを伸長するデコーダ20とが設けられている。CPU11は、図3の高速ネットワーク5に接続されるとともに、PCI−X規格のバスによって図3のデータ記録装置1に接続されている。デコーダ20は、データ記録装置1に接続されるとともに、図3のプロジェクター3に接続されている。
【0030】
CPU11には、下記の(a)〜(c)の3つのプログラムが格納されている。
(a)データ記録装置1の内部制御を行うプログラムである「内部制御アプリケーション」
(b)パーソナルコンピュータ4からのAVデータの書き込み/読み出し要求に従い、AVデータの書き込み/読み出しコマンドを上記「内部制御アプリケーション」に送信するプログラムである「デジタルシネマ用アプリケーション」
(c)パーソナルコンピュータ4からのログ情報やファイルシステム情報や字幕データの書き込み/読み出し要求に従い、ログ情報やファイルシステム情報や字幕データの書き込み/読み出しコマンドを上記「内部制御アプリケーション」に送信するプログラムである「管理用アプリケーション」
【0031】
なお、上記「管理用アプリケーション」によって送信するコマンドによって要求されるハードディスクのセクタ数は、1コマンドあたり128セクタ未満になっている。
【0032】
これに対し、上記「デジタルシネマ用アプリケーション」によって送信するコマンドによって要求される1コマンドあたりのセクタ数は、AVデータがログ情報やファイルシステム情報や字幕データと比べてはるかにデータ量が多いことから、高いデータレートを保証するために、下記のように、「管理用アプリケーション」によりも多いセクタ数にされている。
・ビデオデータの読み出しコマンドの場合:24000セクタ
・ビデオデータの書き込みコマンドの場合:2048セクタ
・オーディオデータの書き込み/読み出しコマンドの場合:128セクタ以上2048セクタ未満
【0033】
このように「デジタルシネマ用アプリケーション」のコマンドの要求セクタ数を「管理用アプリケーション」のコマンドの要求セクタ数よりも多くする方法としては、下記のいずれかの方法を採用することができる。
・汎用OS上の汎用ファイルシステムによってデータ記録装置1内のデータ(AVデータと、AVデータ以外のデータ)を管理するが、汎用のファイルシステムはアプリケーションからの書き込み/読み出しコマンドを要求セクタ数の少ない多数のコマンドに分割するので、「デジタルシネマ用アプリケーション」からのコマンドについては汎用ファイルシステムによるコマンドの分割を迂回するようなデバイスドライバを用意する。
・汎用のファイルシステムではなく、AVデータについての高いデータレートを保証するようにハードディスク上のデータの配置を工夫した独自のファイルシステムを構築する。
【0034】
CPU11は、「デジタルシネマ用アプリケーション」や「管理用アプリケーション」を実行することによってデータ記録装置1の上位の制御装置(データ記録装置1にデータの書き込み/読み出しコマンドを送信する装置)として機能するとともに、「内部制御アプリケーション」を実行することによって記録装置1の内部制御を行う機能も併有している。
【0035】
以下では、説明を分かりやすくするために、CPU11のうち、上位の制御装置として機能する部分を上位制御部11−1とし、データ記録装置1の内部制御を行う機能の部分を内部制御部11−2とするというように、CPU11を機能によって2つの部分に分けて説明を行うことにする。
【0036】
図5は、データ記録装置1の構成を、この上位制御部11−1,内部制御部11−2及びデコーダ20とともに示す図である。なお、ここでは、内部制御部11−2は、その機能から、データ記録装置1の一部として示している。また、データ(AVデータと、ログ情報やファイルシステム情報や字幕データ)の流れを二重線の矢印で示し、上位制御部11−1や内部制御部11−2で授受されるコマンドや応答の流れを単線の矢印で示している。
【0037】
データ記録装置1には、FPGAから成るECC・DMA部12と、キャッシュメモリ13と、合計7台のHDDを制御するためのHDDコントローラ(例えばSASコントローラ)14(14−1〜14−7)とが設けられている。HDDコントローラ14に接続される合計7台のHDD15(15−1〜15−7)のうち、4台のHDD15−1〜15−4はデータ用、2台のHDD15−5〜15−6はエラー訂正用、残りの1台のHDD15−7はスペア用である。
【0038】
ECC・DMA部12は、記録時には、デジタルシネマサーバー2内の上位制御部11−1から送られたデータからエラー訂正符号を生成し、そのエラー訂正符号を付加したデータを、キャッシュメモリ13を用いてストライピングして、HDDコントローラ14−1〜14−6を介してHDD15−1〜15−6に供給する。
【0039】
ECC・DMA部12は、再生時には、HDD15−1〜15−6からHDDコントローラ14−1〜14−6を介して供給されたデータをキャッシュメモリ13を用いてデストライピングし、そのデストライピングしたデータをエラー訂正して、元のデータを復元する。
【0040】
ビデオデータの再生時には、ECC・DMA部12で復元されたビデオデータは、デコーダ20に送られる。そして、デコーダ20で伸長されたベースバンドのビデオデータが、図3のプロジェクター3に送られて、プロジェクター3からスクリーンに投影される。
【0041】
オーディオデータの再生時には、ECC・DMA部12で復元されたオーディオデータは、データ記録装置1,デジタルシネマサーバー2及びプロジェクター3を収納している筐体に設けられたオーディオ出力端子(図示略)から外部に出力される。
【0042】
ログ情報やファイルシステム情報の再生時には、ECC・DMA部12で復元されたログ情報やファイルシステム情報は、上位制御部11−1に送られ、上位制御部11−1から図3のパーソナルコンピュータ4に送られて、パーソナルコンピュータ4のディスプレイ上のGUI画面に表示される。
【0043】
字幕データの再生時には、ECC・DMA部12で復元された字幕データは、デジタルシネマサーバー2内に設けられているミキシング回路(図示略)に送られて、デコーダ20で伸長されたベースバンドのビデオデータと合成される。
【0044】
内部制御部11−2は、前述の「内部制御アプリケーション」を実行して、ECC・DMA部12及びHDDコントローラ14を制御する。図6は、「内部制御アプリケーション」による処理の一部であるタイムアウト値設定処理を示すフローチャートである。
【0045】
この処理は、上位制御部11−1から書き込み/読み出しのコマンドを受信するとスタートし、まず、そのコマンドによって要求されるセクタ数が、24000セクタ以上であるかを判断する(ステップS1)。
【0046】
イエスであれば、データ記録装置1の処理のタイムアウト値を、650msecに設定する(ステップS2)。そして、設定したタイムアウト値(ここでは650msec)を指定して、上位制御部11−1から受信したコマンドに対応したコマンドを、ECC・DMA部12及びHDDコントローラ14−1〜14−6に発行する(ステップS3)。そして、タイムアウト値設定処理を終了する。
【0047】
ステップS1でノーであった場合は、上位制御部11−1からのコマンドの要求セクタ数が、2048セクタ以上であるかを判断する(ステップS4)。
【0048】
イエスであれば、データ記録装置1の処理のタイムアウト値を、150msecに設定する(ステップS5)。そして、前述のステップS3に進むことにより、設定したタイムアウト値(ここでは150msec)を指定して、上位制御部11−1から受信したコマンドに対応したコマンドを、ECC・DMA部12及びHDDコントローラ14−1〜14−6に発行する。そして、タイムアウト値設定処理を終了する。
【0049】
ステップS4でノーであった場合は、上位制御部11−1からのコマンドの要求セクタ数が、128セクタ以上であるかを判断する(ステップS6)。
【0050】
イエスであれば、データ記録装置1の処理のタイムアウト値を、130msecに設定する(ステップS7)。そして、前述のステップS3に進むことにより、設定したタイムアウト値(ここでは130msec)を指定して、上位制御部11−1から受信したコマンドに対応したコマンドを、ECC・DMA部12及びHDDコントローラ14−1〜14−6に発行する。そして、タイムアウト値設定処理を終了する。
【0051】
ステップS6でノーであった場合は、データ記録装置1の処理のタイムアウト値を、80msecに設定する(ステップS8)。そして、前述のステップS3に進むことにより、設定したタイムアウト値(ここでは80msec)を指定して、上位制御部11−1から受信したコマンドに対応したコマンドを、ECC・DMA部12及びHDDコントローラ14−1〜14−6に発行する。そして、タイムアウト値設定処理を終了する。
【0052】
前述のように、上位制御部11−1から送信されるコマンドのうち、ビデオデータの読み出しコマンドの要求セクタ数は24000セクタであり、ビデオデータの書き込みコマンドの要求セクタ数は2048セクタであり、オーディオデータの書き込み/読み出しコマンドの要求セクタ数は128セクタ以上2048セクタ未満であり、それ以外のデータ(ログ情報やファイルシステム情報や字幕データ)の書き込み/読み出しコマンドの要求セクタ数は128セクタ未満である。
【0053】
したがって、上位制御部11−1からビデオデータの読み出しコマンドが送信された場合には、図6のタイムアウト値設定処理により、タイムアウト値が650msecに設定され(ステップS1〜S2)、このタイムアウト値650msecを指定して、ECC・DMA部12及びHDDコントローラ14−1〜14−6にビデオデータの読み出しコマンドが発行される(ステップS3)ことになる。
【0054】
この650msecという値は、図1を用いて説明したように、一定の時間間隔単位で一定のデータサイズ(ここでは24000セクタ分)ずつのビデオデータを切れ目無く再生して映画を上映するというリアルタイム性の見地から決定した値である。
【0055】
また、上位制御部11−1からビデオデータの書き込みコマンドが送信された場合には、図6のタイムアウト値設定処理により、タイムアウト値が150msecに設定され(ステップS4〜S5)、このタイムアウト値150msecを指定して、ECC・DMA部12及びHDDコントローラ14−1〜14−6にビデオデータの書き込みコマンドが発行される(ステップS3)ことになる。
【0056】
また、上位制御部11−1からオーディオデータの書き込み/読み出しコマンドが送信された場合には、図6のタイムアウト値設定処理により、タイムアウト値が130msecに設定され(ステップS6〜S7)、このタイムアウト値130msecを指定して、ECC・DMA部12及びHDDコントローラ14−1〜14−6にオーディオデータの書き込み/読み出しコマンドが発行される(ステップS3)ことになる。
【0057】
この150msecという値や130msecという値も、ビデオデータの記録やオーディオデータの記録/再生を切れ目無く行うというリアルタイム性の見地から決定した値である。
【0058】
また、上位制御部11−1からログ情報やファイルシステム情報や字幕データの書き込み/読み出しコマンドが送信された場合には、図6のタイムアウト値設定処理により、タイムアウト値が80msecに設定され(ステップS8)、このタイムアウト値80msecを指定して、ECC・DMA部12及びHDDコントローラ14−1〜14−6にログ情報やファイルシステム情報や字幕データの書き込み/読み出しコマンドが発行される(ステップS3)ことになる。
【0059】
ログ情報やファイルシステム情報は、それ自体は記録や再生にリアルタイム性が要求されない情報であり、これらの情報の書き込み/読み出しを行うアプリケーションソフトウェアにも、タイムアウト値という概念は存在しない。しかし、これらの情報をAVデータと同じHDD15−1〜15−6に記録するので、これらの情報の記録/再生を行っている間はAVデータの記録/再生を行うことができない。したがって、これらの情報の記録/再生に時間がかかると、ビデオデータやオーディオデータの切れ目無い記録/再生に支障が生じることがある。そこで、これらの情報についても80msecという値のタイムアウト値を設定することとした。
【0060】
内部制御部11−2は、図6のタイムアウト値設定処理を行った後、HDD15−1〜15−6のうちタイムアウト値設定処理によって指定したタイムアウト値内に書き込み/読み出しの処理を終えたHDDだけの書き込み/読み出しの結果に基づいて上位制御部11−1に返答を行う。
【0061】
具体的には、例えば、上位制御部11−1からビデオデータの読み出しコマンドが送信された場合であって、HDD15−1〜15−6のうちの一部のHDDが650msec内に読み出し処理を終えていない場合は、内部制御部11−2は、図2を用いて説明したように、ECC・DMA部12を制御して、650msec内に読み出し処理を終えたHDDだけからのデータを用いてビデオデータを復元させるとともに、その読み出し結果を上位制御部11−1に返答する。この場合、ECC・DMA部12は、650msec内に読み出し処理を終えたHDDだけからのデータを用いてデストライピング及びエラー訂正を行って元のビデオデータを復元するが、エラー訂正によっても復元できないフレーム区間が存在するときは、再生データの時間軸は乱さずに、復元されたフレームのビデオデータだけをデコーダ20に転送する。
【0062】
以上に説明したように、このデジタルシネマ上映システムでは、データ記録装置1(その内部制御を行う内部制御部11−2)が、デジタルシネマサーバー2(上位制御部11−1)から受信した書き込み/読み出しのコマンドの要求セクタ数に応じてタイムアウト値を可変設定することにより、AVデータ,それ以外のデータ(ログ情報やファイルシステム情報や字幕データ)にそれぞれ応じたタイムアウト値を設定できるようになっている。
【0063】
これにより、同じデータ記録装置1をAVデータの記録用とログ情報やファイルシステム情報等の記録用とに兼用しつつ、AVデータを切れ目無く再生して映画を上映することや、AVデータを切れ目無く記録することができるようになっている。
【0064】
なお、以上の実施の形態では、デジタルシネマサーバー2内の1つのCPU11が、データ記録装置1の上位の制御装置としての機能と、データ記録装置1の内部制御を行う機能とを併有している。しかし、別の例として、デジタルシネマサーバー2内のCPU11にはデータ記録装置1の上位の制御装置としての機能だけを持たせ(「デジタルシネマ用アプリケーション」及び「管理用アプリケーション」だけを実行させ)、データ記録装置1の内部に、データ記録装置1の内部制御を行う(「内部制御アプリケーション」を実行する)専用のCPUを設けるようにしてもよい。
【0065】
また、以上の実施の形態ではデジタルシネマ上映システムに本発明を適用している。しかし、本発明は、上位の制御装置からのコマンドに基づき、複数台のHDDに対して、AVデータの書き込み/読み出しと、それ以外のデータの書き込み/読み出しとを行うあらゆるデータ記録装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】RAID装置の読み出し処理のタイムアウト値を例示する図である。
【図2】タイムアウト機能によるRAID装置の内部制御を例示する図である。
【図3】本発明を適用したデジタルシネマ上映システムの全体構成図である。
【図4】図3のデジタルシネマサーバーに設けられている回路を示す図である。
【図5】図3のデータ記録装置の構成を示す図である。
【図6】図5の内部制御部が実行するタイムアウト値設定処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0067】
1 データ記録装置、 2 デジタルシネマサーバー、 3 プロジェクター、 4 パーソナルコンピュータ、 5 高速ネットワーク、 11 CPU、 11−1 上位制御部、 11−2 内部制御部、 12 ECC・DMA部、 13 キャッシュメモリ、 14−1〜14−7 HDDコントローラ、 15−1〜15−7 HDD、 20 デコーダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上位の制御装置から受信した書き込み/読み出しのコマンドに基づき、複数台のハードディスクドライブに対して、ビデオデータ及びオーディオデータの書き込み/読み出しと、それ以外のデータの書き込み/読み出しとを行うデータ記録装置において、
前記制御装置から受信したコマンドによって要求されるセクタ数を判断し、該セクタ数に応じた長さの制限時間を設定する制限時間設定処理と、
前記制限時間設定処理で設定した制限時間を指定して、前記制御装置から受信したコマンドに対応したコマンドを、前記複数台のハードディスクドライブを制御するハードディスクドライブコントローラに発行するコマンド発行処理と、
前記複数台のハードディスクドライブのうち、前記コマンド発行処理でコマンドを発行した後前記制限時間内に書き込み/読み出しの処理を終えたハードディスクドライブだけの書き込み/読み出しの結果に基づいて前記制御装置に返答を行う返答処理と
を行う制御部を備えたことを特徴とするデータ記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載のデータ記録装置において、
前記制御装置からは、ビデオデータの読み出しコマンドと、ビデオデータの書き込みコマンドと、オーディオデータの書き込み/読み出しコマンドと、それ以外のデータの書き込み/読み出しコマンドとが受信され、各々のコマンドの要求セクタ数は、ビデオデータの読み出しコマンド,ビデオデータの書き込みコマンド,オーディオデータの書き込み/読み出しコマンド,それ以外のデータの書き込み/読み出しコマンドの順に多くなっており、
前記制限時間設定処理では、要求セクタ数の多いコマンドほど長い制限時間を設定する
ことを特徴とするデータ記録装置。
【請求項3】
上位の制御装置から受信し書き込み/読み出しのコマンドに基づき、複数台のハードディスクドライブに対して、ビデオデータ及びオーディオデータの書き込み/読み出しと、それ以外のデータの書き込み/読み出しとを行うデータ記録装置の内部制御方法において、
前記制御装置から受信したコマンドによって要求されるセクタ数を判断し、該セクタ数に応じた長さの制限時間を設定する第1のステップと、
前記第1のステップで設定した制限時間を指定して、前記制御装置から受信したコマンドに対応したコマンドを、前記複数台のハードディスクドライブを制御するハードディスクドライブコントローラに発行する第2のステップと、
前記複数台のハードディスクドライブのうち、前記第2のステップでコマンドを発行した後前記制限時間内に書き込み/読み出しの処理を終えたハードディスクドライブだけの書き込み/読み出しの結果に基づいて前記制御装置に返答を行う第3のステップと
を有することを特徴とするデータ記録装置の内部制御方法。
【請求項4】
請求項3に記載のデータ記録装置の内部制御方法において、
前記制御装置からは、ビデオデータの読み出しコマンドと、ビデオデータの書き込みコマンドと、オーディオデータの書き込み/読み出しコマンドと、それ以外のデータの書き込み/読み出しコマンドとが受信され、各々のコマンドの要求セクタ数は、ビデオデータの読み出しコマンド,ビデオデータの書き込みコマンド,オーディオデータの書き込み/読み出しコマンド,それ以外のデータの書き込み/読み出しコマンドの順に多くなっており、
前記第1のステップでは、要求セクタ数の多いコマンドほど長い制限時間を設定する
ことを特徴とするデータ記録装置の内部制御方法。
【請求項5】
複数台のハードディスクドライブに対して、ビデオデータ及びオーディオデータの書き込み/読み出しと、それ以外のデータの書き込み/読み出しとを行うデータ記録装置と、
前記データ記録装置に、データの書き込み/読み出しのコマンドを送信する上位の制御装置と
を含むデータ記録システムにおいて、
前記データ記録装置は、
前記制御装置から受信したコマンドによって要求されるセクタ数を判断し、該セクタ数に応じた長さの制限時間を設定する制限時間設定処理と、
前記制限時間設定処理で設定した制限時間を指定して、前記コマンド受信処理で受信したコマンドに対応したコマンドを、前記複数台のハードディスクドライブを制御するハードディスクドライブコントローラに発行するコマンド発行処理と、
前記複数台のハードディスクドライブのうち、前記コマンド発行処理でコマンドを発行した後前記制限時間内に書き込み/読み出しの処理を終えたハードディスクドライブだけの書き込み/読み出しの結果に基づいて前記制御装置に返答を行う返答処理と
を行う制御部を備えた
ことを特徴とするデータ記録システム。
【請求項6】
請求項5に記載のデータ記録システムにおいて、
前記制御装置は、ビデオデータの読み出しコマンドと、ビデオデータの書き込みコマンドと、オーディオデータの書き込み/読み出しコマンドと、それ以外のデータの書き込み/読み出しコマンドとを送信し、各々のコマンドの要求セクタ数は、ビデオデータの読み出しコマンド,ビデオデータの書き込みコマンド,オーディオデータの書き込み/読み出しコマンド,それ以外のデータの書き込み/読み出しコマンドの順に多くなっており、
前記データ記録装置の前記制御部は、前記制限時間設定処理において、要求セクタ数の多いコマンドほど長い制限時間を設定する
ことを特徴とするデータ記録システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−104410(P2009−104410A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−275609(P2007−275609)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】