説明

トナーシール用軟質ポリウレタンフォーム及びそれを用いたトナーシール材

【課題】硬度及び通気性が低く、圧縮永久歪等が小さく、且つ優れた難燃性を有するトナーシール用軟質ポリウレタンフォーム及びそれを用いたトナーシール材を提供する。
【解決手段】メラミン及び縮合リン酸エステル系難燃剤を含有するフォーム原料を反応させてなり、エチレンオキサイド単位の含有量が30質量%以上であるポリオール(a)を含有し、ポリオールの全量とメラミンとの合計を100質量%とした場合に、メラミンの含有量は15〜35質量%であり、リンの含有量が0.5〜2.5質量%であって、通気量が5.0cm/cm/秒以下であるトナーシール用軟質ポリウレタンフォーム、並びにこのトナーシール用フォームを用いてなるトナーシール材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナーシール用軟質ポリウレタンフォーム及びそれを用いたトナーシール材に関する。更に詳しくは、本発明は、硬度が低く柔軟であり、通気性も低く、反発弾性及び圧縮永久歪が小さく、且つハロゲン系難燃剤を用いることなく、優れた難燃性を有するトナーシール用軟質ポリウレタンフォーム、及びこのトナーシール用軟質ポリウレタンフォームを用いてなり、優れたシール性を有し、且つ経時後も優れたシール性が維持されるトナーシール材に関する。
【背景技術】
【0002】
各種プリンタ等の画像形成装置では、一様に帯電させた像担持体に選択的な露光を施して潜像を形成し、この潜像をトナーで顕像化し、形成されたトナー像を記録媒体に転写することにより画像が記録される。このような装置では、適時、トナーを補給しなければならないが、このトナーの補給には、像担持体、帯電器、現像器、クリーニング器等が一体化されたトナーカートリッジが用いられており、使用者がカートリッジを装置本体に着脱することにより、トナーの補給、或いは寿命となった像担持体の交換等をすることができ、メンテナンスが容易である。このプロセスカートリッジ方式は、多くの画像形成装置において採用されているが、トナーが漏出すると画像不良を生じるため、カートリッジ本体の枠体間、現像器の現像スリーブと現像枠体との隙間等の樹脂成形品の当接面にはトナーシール材が介装されている。また、クリーニング器の像担持体の端部と廃トナー留めとの隙間には、廃トナーが漏出しないように、像担持体の端部側においてトナーシール材が介装されている。
【0003】
トナーシール材としては、ポリウレタンフォーム等の各種の樹脂フォーム、軟質ゴム、或いはエラストマー等の種々の弾性体からなるものが用いられている。また、樹脂フォームの場合、一般に、硬度が低く柔軟であり、且つセル数が多く(セル径が小さく)、通気性が低く、優れたシール性を有する製品が用いられており、よりシール性を高めるため、熱プレスされた樹脂フォームが用いられることも多い。更に、トナーシール材には、設計の自由度を高めるため、反発弾性が小さいこと、及び湿熱下等における圧縮永久歪が小さいこと等の特性も要求されている。また、画像形成装置では、家電向けの燃焼試験規格に合格する優れた難燃性が必要とされるが、このような高い難燃性を付与するためには、これまではハロゲン系難燃剤を用いざるを得ない状況であった。
【0004】
硬度が低く柔軟なトナーシール材としては、ポリイソシアネートと、特定のポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールとを含有するフォーム原料を反応させてなる軟質ポリウレタンフォームを用いたトナーシール材が知られている(例えば、特許文献1参照。)。また、ポリウレタン及びポリウレタンフォームに難燃性を付与するため、従来、前記のハロゲン系難燃剤の他、無機系難燃剤等が用いられているが、メラミンが分子中に組み込まれたメラミンポリオール、及びこの特定のポリオールと縮合リン酸エステルとの併用(例えば、特許文献2参照。)、並びにメラミンを均質に分散させたポリオール組成物(例えば、特許文献3、4参照。)も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−48944号公報
【特許文献2】特開平7−309923号公報
【特許文献3】特開平4−117416号公報
【特許文献4】特開平4−120119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、熱プレスしたフォームでは、シール材が硬すぎ、反発弾性が過度に大きくなり、カートリッジ本体の枠体等の樹脂成形品が変形したり、亀裂が生じたりすることがある。また、引用文献1に記載されたトナーシール材は、硬度が低く柔軟であるかもしれないが、難燃性については何ら配慮されていない。更に、引用文献2に記載されたポリウレタンフォームでは、耐フォギング性の向上が図られており、難燃性も付与されているが、車両用シートを主用途としているため、硬度、通気性等には何ら言及されていない。また、引用文献3、4に記載されたポリオール組成物では、メラミンが分散、含有されているため、フォームに難燃性を付与することはできるかもしれないが、トナーシール材については何ら開示がない。
【0007】
また、このような用途に、既存の止水用フォームを転用することが考えられるが、このフォームは一般に湿熱歪が大きいという問題がある。プロセスカートリッジ、或いはこれが組み込まれた製品は、船輸送されることも多いが、輸送時に高温多湿等の過酷な雰囲気に曝されることがある。その際にカートリッジ本体の枠体間等に圧縮された状態で介装されたトナーシール材は、長期間、圧縮に対する反発力が維持されなければならない。即ち、圧縮永久歪が小さくなければならない。
【0008】
本発明は、上記の従来の問題点を解決するものであり、硬度が低く柔軟であり、通気性も低く、反発弾性及び圧縮永久歪が小さく、且つハロゲン系難燃剤を用いることなく、優れた難燃性を有するトナーシール用軟質ポリウレタンフォーム(以下、「トナーシール用フォーム」と略記することもある。)、及びこのトナーシール用軟質ポリウレタンフォームを用いてなり、優れたシール性を有し、且つ経時後も優れたシール性が維持されるトナーシール材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
難燃剤として縮合リン酸エステル系難燃剤を使用し、トナーシール用フォームに難燃性を付与することができるメラミンを併用し、且つ多量のエチレンオキサイド単位を含有する特定のポリオールを用いることにより、硬度が低く柔軟であり、通気性が低く、且つハロゲン系難燃剤及び無機系難燃剤等を用いることなく、優れた難燃性を有するトナーシール用フォームとすることができる。また、このトナーシール用フォームを用いることにより、優れたシール性等を備えるトナーシール材とすることができる。
本発明は、このような知見に基づいてなされたものである。
【0010】
本発明は以下のとおりである。
1.ポリオール、ポリイソシアネート、メラミン及び縮合リン酸エステル系難燃剤を含有するフォーム原料を反応させてなるトナーシール用軟質ポリウレタンフォームであって、上記ポリオールは、アルキレンオキサイド単位の全量を100質量%とした場合に、エチレンオキサイド単位の含有量が30質量%以上であるポリオール(a)を含有し、上記ポリオールと上記メラミンとの合計を100質量%とした場合に、該メラミンの含有量は15〜35質量%であり、エネルギー分散型蛍光X線分析により定量したリンの含有量が0.5〜2.5質量%であり、JIS L 1096 8.27.1[A法(フラジール形法)]により測定した通気量が5.0cm/cm/秒以下であることを特徴とするトナーシール用軟質ポリウレタンフォーム。
2.上記ポリオール(a)のエチレンオキサイド単位の含有量が70質量%以上であり、上記ポリオールと上記メラミンとの合計を100質量%とした場合に、該ポリオール(a)の含有量が3〜25質量%である上記1.に記載のトナーシール用軟質ポリウレタンフォーム。
3.上記通気量が2.0cm/cm/秒以下である上記1.又は2.に記載のトナーシール用軟質ポリウレタンフォーム。
4.ASTM D 3574により測定した硬度が3.0〜7.0gf/cmである上記1.乃至3.のうちのいずれか1項に記載のトナーシール用軟質ポリウレタンフォーム。
5.上記縮合リン酸エステル系難燃剤を100質量%とした場合に、リンの含有量が10〜20質量%である上記1.乃至4.のうちのいずれか1項に記載のトナーシール用軟質ポリウレタンフォーム。
6.上記1.乃至5.のうちのいずれか1項に記載のトナーシール用軟質ポリウレタンフォームを用いてなることを特徴とするトナーシール材。
【発明の効果】
【0011】
本発明のトナーシール用フォームによれば、フォーム原料に多量のエチレンオキサイド単位が含有される特定のポリオールが用いられており、硬度が低く柔軟であり、且つセル数が多く、セルが微細であるため、通気性が低く、トナーの漏出が確実に防止される。また、反発弾性が小さいため、カートリッジ本体の枠体間等に介装させるときに過度な応力が加わらず、且つ過酷な雰囲気に曝しても、適度な硬度、及び優れた耐湿熱老化性が損なわれることがなく、圧縮永久歪が小さく、経時後も十分なトナーシール性が維持される。更に、縮合リン酸エステル系難燃剤の他、メラミンが含有されているため、家電向けの燃焼試験規格に合格する優れた難燃性を併せて有する。
また、ポリオール(a)のエチレンオキサイド単位の含有量が70質量%以上であり、ポリオールとメラミンとの合計を100質量%とした場合に、ポリオール(a)の含有量が3〜25質量%である場合は、より確実に、硬度が低く柔軟であり、且つ通気性が低いトナーシール用フォームとすることができる。
更に、通気量が2.0cm/cm/秒以下である場合は、トナーの漏洩をより十分に防止することができる。
また、ASTM D 3574により測定した硬度が3.0〜7.0gf/cmである場合は、十分に柔軟であり、カートリッジ本体の枠体間等に介装させるときの応力を低下させることができ、シール性をより向上させることができる。
更に、縮合リン酸エステル系難燃剤を100質量%とした場合に、リンの含有量が10〜20質量%である場合は、フォーム原料に所要量の難燃剤を配合することにより、容易に所定量のリンを含有するトナーシール用フォームとすることができる。
本発明のトナーシール材は、本発明のトナーシール用フォームを用いてなるため、カートリッジ本体の枠体間等に介装させるときに過度な応力が加わらず、且つ過酷な雰囲気に曝しても、適度な硬度と優れた耐湿熱老化性が損なわれることがなく、圧縮永久歪が小さく、経時後も十分なトナーシール性が維持される。また、家電向けの燃焼試験規格に合格する優れた難燃性を併せて有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】画像形成装置の1種であるプリンタにおいて、トナーカートリッジが配設される位置を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳しく説明する。
[1]トナーシール用軟質ポリウレタンフォーム
本発明のトナーシール用軟質ポリウレタンフォームは、ポリオール、ポリイソシアネート、メラミン及び縮合リン酸エステル系難燃剤を含有するフォーム原料を反応させてなり、ポリオールは、アルキレンオキサイド単位の全量を100質量%とした場合に、エチレンオキサイド単位の含有量が30質量%以上であるポリオール(a)を含有し、ポリオールとメラミンとの合計を100質量%とした場合に、メラミンの含有量は15〜35質量%であり、エネルギー分散型蛍光X線分析により定量したリンの含有量が0.5〜2.5質量%であり、JIS L 1096 8.27.1[A法(フラジール形法)]により測定した通気量が5.0cm/cm/秒以下である。
【0014】
上記「ポリオール」としては、アルキレンオキサイド単位の全量を100質量%とした場合に、エチレンオキサイド単位の含有量が30質量%以上であるポリオール(a)と、他の少なくとも1種のポリオールとが併用される。
上記「ポリオール(a)」は、アルキレンオキサイド単位の全量を100質量%とした場合に、エチレンオキサイド単位(以下、「EO単位」と略記する。)の含有量が30質量%以上(100質量%であってもよい。)であることを除いて特に限定されない。このポリオール(a)の含有量は、硬度が低く柔軟であり、且つ通気性が低いトナーシール用フォームとすることができればよく、ポリオールとメラミンとの合計を100質量%とした場合に、3〜25質量%、特に5〜20質量%とすることができる。
【0015】
ポリオール(a)の含有量は、EO単位の含有量によって調整することが好ましい。このポリオール(a)の含有量は、EO単位の含有量が30〜50質量%であるときは、6〜50質量%、特に10〜40質量%とすることができ、EO単位の含有量が50〜70質量%であるときは、5〜38質量%、特に8〜30質量%とすることができる。また、EO単位の含有量が70質量%以上、例えば、80質量%であるときは、3〜25質量%、特に5〜20質量%であることが好ましい。
【0016】
ポリオール(a)の官能基数は特に限定されず、2又は3、特に3であることが好ましい。ポリオール(a)の官能基数が3であれば、難燃性に優れ、圧縮永久歪が小さいトナーシール用フォームとすることができる。更に、ポリオール(a)のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した数平均分子量も特に限定されず、2000〜5000、特に3000〜4000であることが好ましい。ポリオール(a)の数平均分子量が上記の範囲、特に3000〜4000であれば、難燃性に優れ、圧縮永久歪が小さいトナーシール用フォームとすることができる。
【0017】
ポリオールとしては、ポリオール(a)を除く少なくとも1種の他のポリオールが併用される。この他のポリオールは1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよいが、特に2種以上を併用する必要はなく、1種のみで十分である。他のポリオールは特に限定されず、軟質ポリウレタンフォームの製造に用いられるポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオール等の一般的なポリオールを使用することができる。また、他のポリオールとしては、アルキレンオキサイドの全量を100質量%とした場合に、EO単位の含有量が30質量%未満、特に15質量%以下、更に10質量%以下(EO単位が含有されていなくてもよい。)のポリオールが用いられる。
【0018】
他のポリオールの官能基数も特に限定されず、2又は3、特に3であることが好ましい。他のポリオールの官能基数が3であれば、難燃性に優れ、圧縮永久歪が小さいトナーシール用フォームとすることができる。更に、他のポリオールのGPCにより測定した数平均分子量も特に限定されず、2000〜5000、特に2000〜4000であることが好ましい。他のポリオールの数平均分子量が上記の範囲、特に2000〜4000であれば、難燃性に優れ、圧縮永久歪が小さいトナーシール用フォームとすることができる。また、他のポリオールは、ポリオールとメラミンとの合計を100質量%とした場合に、この合計から、ポリオール(a)とメラミンの合計を差し引いた含有量になる。
【0019】
他のポリオールとしては、上記の他のポリオールの他に、官能基数が3であり、GPCにより測定した数平均分子量が250〜1400であるポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオール(以下、「低分子量トリオール」という。)の少なくとも一方を併用することもできる。この低分子量トリオールの併用により、硬度を低下させることができ、適度な反発弾性を有するトナーシール用フォームとすることができる。併用する他のポリオールの官能基数が3でない場合は、圧縮永久歪が大きくなる傾向がある。また、数平均分子量が250未満であると、トナーシール用フォームの硬度を十分に低下させることができないことがある。一方、1400を越えると、圧縮永久歪が大きくなる傾向がある。
【0020】
低分子量トリオールの数平均分子量は、250〜1000、特に250〜700であることが好ましい。このような低分子量のトリオールを併用することにより、より圧縮永久歪の小さいトナーシール用フォームとすることができる。更に、この低分子量トリオールとしては、ポリエーテルポリオールが特に好ましく、ポリエーテルポリオールであれば、硬度が十分に低く、且つ圧縮永久歪が小さいトナーシール用フォームとすることができる。
【0021】
低分子量トリオールの含有量は特に限定されないが、ポリオールの合計を100質量部とした場合に、10〜60質量部とすることができ、20〜40質量部であることが好ましい。低分子量トリオールの含有量が10質量部未満であると、フォームの硬度を十分に低下させることができないことがある。一方、60質量部を越えると、圧縮永久歪が大きくなる傾向がある。
【0022】
他のポリオールとしては、トナーシール用フォームの低い硬度及び通気性、並びに優れた反発弾性及び圧縮永久歪等が損なわれない範囲で、上記の特定のポリオールの他に、ポリカーボネート系ポリオール、ポリジエン系ポリオール等が含有されていてもよい。これらの特殊な他のポリオールは、1種のみであってもよく、2種以上が含有されていてもよい。
【0023】
上記「ポリイソシアネート」は特に限定されず、軟質ポリウレタンフォームの製造に一般に使用されるポリイソシアネートを用いることができる。このポリイソシアネートとしては、トルエンジイソシアネート(TDI)、粗TDI、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、粗MDIの他、1,5−ナフタレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネートを用いることができる。更に、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添MDI、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネートを用いることもできる。これらの他、プレポリマー型のポリイソシアネートを用いることもできる。
ポリイソシアネートは1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよいが、1種のみ用いられることが多い。
また、ポリオールとポリイソシアネートとは、イソシアネートインデックスが95〜120、特に100〜110となる質量割合で使用することができる。
【0024】
上記「メラミン」は、構造の中心にトリアジン環があり、その周辺に3個のアミノ基が配された有機窒素化合物であり、融点が高いため、通常、粉末として含有される。このメラミンは、縮合リン酸エステル系難燃剤とともに、トナーシール用フォームに難燃性を付与する作用を有し、家電向けの燃焼試験規格に合格する優れた難燃性を有するトナーシール用フォームとすることができる。メラミンは、フォーム原料に含有されておればよく、ポリオールに配合してもよく、ポリイソシアネート等の他の成分に配合してもよいが、ポリオールに配合することが好ましい。また、ポリオールに配合する場合、ポリオール(a)に配合してもよく、他のポリオールに配合してもよいが、メラミンはポリオール等に均一に分散させ、含有させることが必ずしも容易ではないため、より多量に用いられるポリオールに配合することが特に好ましい。更に、併用される2種以上のポリオールの混合物に配合してもよい。
【0025】
メラミンの含有量は、ポリオールの全量とメラミンとの合計を100質量%とした場合に、15〜35質量%であり、20〜30質量%であることが好ましい。メラミンの含有量が15〜35質量%、特に20〜30質量%であれば、家電向けの燃焼試験規格に合格する優れた難燃性を有し、且つ圧縮永久歪が十分に小さいトナーシール用フォームとすることができる。特に、メラミンは前記のように粉末として含有されているため、メラミンが過剰であると、従来の粉末状の難燃剤の場合と同様に圧縮永久歪が大きくなるため、所定量以下とする必要がある。
【0026】
上記「縮合リン酸エステル系難燃剤」としては、レゾルシノールビス−ジフェニルホスフェート、レゾルシノールビス−ジキシレニルホスフェート及びビスフェノールAビス−ジフェニルホスフェート等が挙げられ、これらは1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。縮合リン酸エステル系難燃剤は、モノマー型の難燃剤と比べて高分子量であるため揮発し難く、可塑化作用もあるため、フォーム原料の粘度を低下させることもできる。また、トナーシール用フォームの機械的強度等を低下させることもない。
【0027】
フォーム原料に縮合リン酸エステル系難燃剤を含有させることにより、生成するトナーシール用フォームにリン(リン元素)が含有されることになる。このリンの含有量は、エネルギー分散型蛍光X線分析により定量した場合に、0.5〜2.5質量%(トナーシール用フォームを100質量%とする。)であり、1.0〜2.5質量%であることが好ましい。リンの含有量が0.5〜2.5質量%、特に1.0〜2.5質量%であれば、家電向けの燃焼試験規格に合格する優れた難燃性を有し、且つ圧縮永久歪が十分に小さいトナーシール用フォームとすることができる。
【0028】
縮合リン酸エステル系難燃剤におけるリン(リン元素)の含有量は特に限定されないが、縮合リン酸エステル系難燃剤を100質量%とした場合に、リンは10〜20質量%、特に12〜18質量%含有されていることが好ましい。縮合リン酸エステル系難燃剤におけるリンの含有量が10〜20質量%であれば、フォーム原料に所定量の縮合リン酸エステル系難燃剤を含有させることにより、前記のように、リンの含有量が0.5〜2.5質量%であるトナーシール用フォームとすることができる。
尚、縮合リン酸エステル系難燃剤におけるリンの含有量は、エネルギー分散型蛍光X線分析により定量することができる。
【0029】
フォーム原料には、ポリオール、ポリイソシアネート、メラミン及び縮合リン酸エステル系難燃剤の他、発泡剤、触媒、整泡剤等が含有される。また、必要に応じてその他の助剤等を含有させることもできる。
発泡剤としては、通常、水を用いる。この水は特に限定されず、例えば、イオン交換水、水道水、蒸留水等の各種の水を用いることができる。トナーシール用フォーム製造時の水の使用量は、ポリオールを100質量部とした場合に、1〜4質量部とすることができ、1.5〜2.5質量部であることが好ましい。水が1〜4質量部であれば、所定の密度、硬度及び圧縮永久歪等を有するトナーシール用フォームとすることができる。
【0030】
触媒としては、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N−メチルモルホリンジメチルアミノメチルフェノール、イミダゾール、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン等の3級アミン化合物などのアミン系触媒を用いることができる。また、スタナスオクトエート等の有機錫化合物、ニッケルアセチルアセトネート等の有機ニッケル化合物などの金属系触媒を用いることもできる。この触媒としてはアミン系触媒、特にトリエチレンジアミンが好ましい。触媒は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。触媒の使用量は、ポリオールを100質量部とした場合に、0.5〜1.5質量部とすることができる。
【0031】
整泡剤としては、ジメチルポリシロキサンとポリエーテルとのブロック共重合体を用いることができる。更に、ポリシロキサンに有機官能基を付加した特殊な整泡剤を用いることもできる。このように、整泡剤としてはシリコーン系整泡剤が用いられることが多い。整泡剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。整泡剤の使用量は、ポリオールを100質量部とした場合に、0.5〜2.0質量部とすることができる。
【0032】
また、必要に応じて用いられる助剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、及びフォーム原料の粘度を低下させ、攪拌、混合を容易にするための各種の希釈剤などが挙げられる。これらはトナーシール用フォームの硬度、圧縮永久歪等が損なわれない範囲で適量を含有させることができる。
尚、発泡剤、触媒、整泡剤等は、通常、ポリオールに配合され、反応時にポリイソシアネートと混合される。
【0033】
本発明のトナーシール用フォームの製造方法は特に限定されず、軟質ポリウレタンフォームの製造における一般的な方法をそのまま採用することができる。また、このトナーシール用フォームは、カートリッジ本体の枠体等の樹脂製の部材を化学的に侵す(所謂、ケミカルアタック)ことがなく、過酷な雰囲気に曝されても、適度な硬度、及び優れた耐湿熱老化性等がほとんど低下せず、優れたシール性が長期に渡って維持され、トナーの漏洩が十分に防止される。
【0034】
[2]トナーシール材
本発明のトナーシール材は、上記のトナーシール用フォームを用いてなることを特徴とする。
このようなトナーシール用フォームからなるトナーシール材であれば、反発弾性が小さく、枠体等を変形させることがなく、且つ過酷な雰囲気に曝されても長期に渡って、適度な硬度、及び優れた耐湿熱老化性等が維持され、圧縮永久歪が小さく、トナーの漏出が十分に防止される。また、硬度が低く柔軟であってもシール性が良好であり、カートリッジ本体の枠体等の当接面に介装させ、適度に圧縮するのみでトナーの漏出を十分に防止することができる。そのため、トナーカートリッジ本体の枠体等の部材の構造を簡易なものとすることができ、所要樹脂量を低減させることもできる。従って、コストを抑えるという観点でも有利である。
【0035】
このトナーシール材となるトナーシール用フォームは、セル数が40〜70個/インチ、特に55〜65個/インチであり、且つASTM D 3574により測定した硬度が3.0〜7.0gf/cm、特に4.0〜6.0gf/cm、JIS L 1096 8.27.1[A法(フラジール形法)]により測定した通気量が5.0cm/cm/秒以下、特に3.0cm/cm/秒以下(通常、0.01cm/cm/秒以上)、JIS K 6400により測定した反発弾性が20〜40%、特に25〜35%、及びJIS K 6400−4 4.5.2 A法により測定した圧縮永久歪が4.0〜13.0%、特に4.0〜10.0%であることが好ましい。このようなトナーシール用フォームであれば、優れたシール性を有し、且つ経時後も優れたシール性が維持されるトナーシール材とすることができる。また、このトナーシール材は、UL−94 HF−1により測定した燃焼試験に合格する必要がある。
【0036】
本発明のトナーシール材は、例えば、画像形成装置の1種であるプリンタ1(図1参照)に組み込まれたトナーカートリッジ本体2の内部に充填されたトナー21が外部に漏出しないように、トナーカートリッジ本体2の枠体間等に介装されて用いられる。このプリンタ1による印刷は、トナー21を現像シリンダ3を経由して感光ドラム4に付着させ、感光ドラム4に付着したトナーを転写ローラ5により用紙に付着させることによってなされる。この場合、特に長期間用いることによりトナーカートリッジ本体2の枠体間等からトナーが漏出することがあるが、枠体間等に本発明のトナーシール材を介装させることにより、トナーの漏出が十分に防止される。
【実施例】
【0037】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
実施例1〜7及び比較例1〜6
[1]使用原料
(1)ポリオール
(A)ポリオール(a)を除く他のポリオール[表1、2ではポリオール(1)と表記する。]:ポリエーテルポリオール[三洋化成社製、商品名「GP−3050NS」(数平均分子量;3000、官能基数;3、EO単位含有量;8質量%)]
(B)ポリオール(a)[表1、2ではポリオール(2)と表記する。]:ポリエーテルポリオール[三洋化成社製、商品名「FA−103」(数平均分子量;3400、官能基数;3、EO単位含有量;80質量%)]
(2)メラミン(三井化学社製、商品名「メラミン」):摩砕機(特殊機化工業社製、商品名「マイコロイダー」)により粉砕し、微粒子化したメラミンを、上記の他のポリオール[表1、2ではポリオール(1)と表記する。]に、他のポリオール60質量部当たり、メラミンが40質量部となる比率で混合した。その後、このメラミン粉末を含有するポリオールを、メラミンが表1、2に記載の含有量となるように所定量配合し、更に比較例4、6を除き、他のポリオールを、この他のポリオールが表1、2に記載の含有量となるように所定量追加配合した。
尚、表1、2の実施例1〜7及び比較例1〜3、5におけるポリオール(1)の含有量は、メラミン粉末を含有するポリオール中のポリオール量と、追加配合したポリオール量との合算値である。
(3)発泡剤:水(イオン交換水)
(4)触媒:アミン系触媒(エアープロダクツジャパン社製、商品名「DABCO 33LSI」)
(5)整泡剤:シリコーン系整泡剤(東レダウコーニング社製、商品名「SZ−1919」)
(6)難燃剤:縮合リン酸エステル系難燃剤[大八化学社製、商品名「D−880」(リン含有量;15質量%)]
(7)ポリイソシアネート:TDI[住友バイエルウレタン社製、商品名「テスモジュール T−80」(2,4−異性体比;80%)]
【0038】
[2]トナーシール用フォームの製造
表1(実施例1〜7)及び表2(比較例1〜6)に記載の配合により、先ず、ポリイソシアネートを除くそれぞれの成分を所定の量比でハンドミキサーを用いて攪拌した。その後、所定のイソシアネート指数に従ってポリイソシアネートを配合し、この混合物を発泡箱に投入して発泡、硬化させ、トナーシール用フォームを製造した。
【0039】
[3]物性評価
上記[2]で製造したトナーシール用フォームのセル数、密度、硬度、通気量、反発弾性及び圧縮永久歪を下記の方法により測定した。また、難燃性を下記の方法により評価した。結果を表1、2に併記する。
【0040】
(a)セル数;マイクロスコープ(キーエンス社製、型式「VH−50」)により、長さ1インチ当たりのセル数(個/インチ)を測定した。数値が大きいほど、セル径が小さく、セルが微細であり、シール性が良好である。
(b)密度;JIS K 7222により測定した。
(c)硬度;ASTM D 3574により測定した。
(d)通気量;JIS L 1096 8.27.1[A法(フラジール形法)]により測定した。数値が小さいほど、通気性が低く、シール性が良好である。
(e)反発弾性;JIS K 6400により測定した。数値が小さいほど、トナーシール材をトナーカートリッジ本体の枠体間等に介装させるときに発生する応力が小さく、枠体等の変形などが防止される。
(f)圧縮永久歪;JIS K 6400−4 4.5.2 A法により測定した。数値が小さいほど、湿熱下等の環境で長期間用いたときのへたりが少なく、十分なシール性が維持される。
(g)難燃性;UL−94 HF−1の燃焼試験により測定し、評価した。
尚、表1、2における「4mm」は、厚さ2.0〜4.0mmの試験片を用いて測定したときに合格したという意味である。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
表1によれば、EO単位の含有量が多いポリオールを使用し、且つメラミン及び縮合リン酸エステル系難燃剤を含有するフォーム原料を用いた実施例1〜7のトナーシール用フォームでは、硬度が低く、通気量も1.59cm/cm/秒以下であり、反発弾性及び圧縮永久歪がともに小さく、トナーカートリッジ本体の枠体間等に介装させたときに、変形等を生じることがなく、優れたシール性を有し、且つこの優れたシール性が経時後も維持されることが推察される。また、燃焼試験では全てが合格である。更に、EO単位の含有量が多いポリオールの配合量が少ない実施例4,及びメラミンの配合量が少ない実施例6では、より硬度が低く、且つより圧縮永久歪が小さいため、特に優れたシール性を有するトナーシール用フォームであると考えられる。
【0044】
一方、表2によれば、リンが含有されていない比較例1では、燃焼試験に不合格であり、リンが過多である比較例2では、燃焼試験には合格するものの、圧縮永久歪がかなり大きくなり問題である。また、EO単位の含有量が多いポリオールが含有されていない比較例3では、硬度が高くなるとともに、反発弾性も大きくなり、このポリオールの含有量が過多である比較例4では、通気量が相当に大きくなり、いずれもシール性の低下等が考えられる。更に、メラミンが過少である比較例5では、所定量のリンが含有されていても燃焼試験が不合格となり、メラミンが過多である比較例6では、燃焼試験には合格するものの、硬度及び圧縮永久歪がかなり大きくなり問題である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、電子写真画像形成装置、例えば、各種プリンタ、ファクシミリ、複写機等に装着されるプロセスカートリッジなどに用いられるトナーシール材の分野において有用である。
【符号の説明】
【0046】
1;プリンタ、2;トナーカートリッジ本体、21;トナー、3;現像シリンダ、4;感光ドラム、5;転写ローラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール、ポリイソシアネート、メラミン及び縮合リン酸エステル系難燃剤を含有するフォーム原料を反応させてなるトナーシール用軟質ポリウレタンフォームであって、
上記ポリオールは、アルキレンオキサイド単位の全量を100質量%とした場合に、エチレンオキサイド単位の含有量が30質量%以上であるポリオール(a)を含有し、
上記ポリオールと上記メラミンとの合計を100質量%とした場合に、該メラミンの含有量は15〜35質量%であり、
エネルギー分散型蛍光X線分析により定量したリンの含有量が0.5〜2.5質量%であり、
JIS L 1096 8.27.1[A法(フラジール形法)]により測定した通気量が5.0cm/cm/秒以下であることを特徴とするトナーシール用軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項2】
上記ポリオール(a)のエチレンオキサイド単位の含有量が70質量%以上であり、上記ポリオールと上記メラミンとの合計を100質量%とした場合に、該ポリオール(a)の含有量が3〜25質量%である請求項1に記載のトナーシール用軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項3】
上記通気量が2.0cm/cm/秒以下である請求項2に記載のトナーシール用軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項4】
ASTM D 3574により測定した硬度が3.0〜7.0gf/cmである請求項1乃至3のうちのいずれか1項に記載のトナーシール用軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項5】
上記縮合リン酸エステル系難燃剤を100質量%とした場合に、リンの含有量が10〜20質量%である請求項1乃至4のうちのいずれか1項に記載のトナーシール用軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちのいずれか1項に記載のトナーシール用軟質ポリウレタンフォームを用いてなることを特徴とするトナーシール材。

【図1】
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【公開番号】特開2011−184601(P2011−184601A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52347(P2010−52347)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】