説明

トナー組成物及びプロセス

【課題】非接触定着により紙に定着される、高い印刷光沢を有し滞留時間が短いトナーを提供する。
【解決手段】少なくとも1つの非晶質樹脂と、少なくとも1つの赤外線吸収体と、少なくとも1つの結晶性樹脂と、随意の着色剤と、随意のワックスとを含み、少なくとも1つの赤外線吸収体は、約850nmから約1100nmまでの波長において最大吸光度を有する、トナー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般にトナープロセスに向けられ、より具体的には、乳化凝集及び融合プロセス、並びにかかるプロセスにより形成されるトナー組成物及びかかるトナーを使用した現像プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの電子写真エンジン及びプロセスにおいて、トナー画像を基材に付けることができる。次にトナーは、接触定着器又は非接触定着器でトナーを加熱することにより基材に定着させることができその際伝達された熱がトナー混合物を基材上で融解させる。現行のトナーを用いた電子写真デジタル印刷においては、ロール又はベルト式定着サブシステム等の接触定着器を用いて定着させる場合、様々な印刷光沢を生成することができる。望ましい光沢度は、特定の顧客用途による。
【0003】
今日まで、フラッシュ定着、放射定着又は蒸気定着サブシステム等の非接触定着サブシステムを用いて定着されるトナーは、無光沢のプリント或いは非常に長い(2秒)滞留時間を必要とするプリントを生成する。さらに、非接触定着システムは、時として、高速連続給紙システムを用いることがある。高印刷速度では、カラー・トナー(シアン(C)、マゼンタ(M)、及びイエロー(Y))は、ブラック・トナー(カーボンブラックはエネルギーを吸収する)よりも光吸収容量が小さく、従って、エネルギーを熱に変換するのに十分な光を吸収できず、結果として定着ステップにおける溶融又は定着が不十分になる。また、異なる顔料の光吸収容量の相違により、カラー・トナーとブラック・トナーとの間の光沢の相違が生じる可能性がある。
【0004】
光定着器の発光強度を単に増加すると、ブラック・トナーが過剰な量の光を吸収する結果、過剰な熱を発生し、白抜け又は画像上のトナー破裂と呼ばれる印刷不良が引き起こされる。定着ステップ中の発光強度を、ブラック・トナーによる白抜けの形成を避ける程度まで引き下げると、カラー・トナー、特にマゼンタ及びイエロー・トナーの溶融又は樹脂の流れが不十分になることが観察される。これは、マゼンタ及びイエロー・トナーが、ブラック又はシアン・トナーよりも可視光吸収容量が低く、溶融する或いは樹脂の流れを生じるのに十分な光を吸収できないためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5、290、654号
【特許文献2】米国特許第5、302、486号
【特許文献3】米国特許第4,295,990号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非接触定着により紙に定着される、高い印刷光沢を有し滞留時間が短いトナーが依然として望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、トナー、トナーを製造するプロセス、及びかかるトナーを活用する装置を提供する。実施形態において、本開示のトナーは、少なくとも一つの非晶質樹脂、少なくとも一つの赤外線吸収体、少なくとも一つの結晶性樹脂、随意の着色剤、及び随意のワックスを含むことができ、ここで少なくとも一つの赤外線吸収体は、約850nmから約1100nmまでの波長において最大吸光度を有する。
【0008】
本開示の装置は、実施形態においては印刷装置であり、少なくとも一つの加熱装置、トナー供給源、随意の接触定着器、約750nmから約2500nmまでの波長で動作する赤外光源を含む非接触定着器、基材予熱器、画像支持部材予熱器、及び注入器を含むことができ、ここでトナーは、少なくとも一つの非晶質樹脂、少なくとも一つの赤外線吸収体、少なくとも一つの結晶性樹脂、随意の着色剤、及び随意のワックスを含むことができ、ここで少なくとも一つの赤外線吸収体は、約850nmから約1100nmまでの波長において最大吸光度を有し、約400nmから約750nmまでの波長の光は吸収しない。
【0009】
本開示のプロセスは、実施形態において、少なくとも一つの非晶質樹脂を含むエマルジョンを赤外線吸収体、随意の結晶性樹脂、随意の着色剤、及び随意のワックスに接触させ、粒子を凝集させて凝集粒子を形成し、凝集粒子を、随意的に赤外線吸収体と組み合わせた少なくとも一つの非晶質樹脂と接触させて凝集粒子を覆うシェルを形成し、凝集粒子を融合させてトナー粒子を形成し、そしてトナー粒子を回収するステップを含み、ここで少なくとも一つの赤外線吸収体は、約850nmから約1100nmまでの波長において、最大吸光度を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】非晶質樹脂及び結晶性樹脂を含み、顔料又は赤外線(IR)吸収体を含まない、対照樹脂のUV−vis−NIRスペクトルのグラフである。
【図2】非晶質樹脂、結晶性樹脂、及び赤外線(IR)吸収体を含む、本開示の樹脂のUV−vis−NIRスペクトルのグラフである。
【図3】本開示のトナーを定着するために使用されたIR発光ランプの発光スペクトルを表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示は、短い滞留時間で高い印刷光沢を生成する非接触定着のためのトナー設計を提供する。今日まで、フラッシュ/放射定着のような非接触定着サブシステムで定着されるトナーは、無光沢のプリント又は非常に長い(2秒)滞留時間を必要とするプリントを生成する。本開示によると、エネルギー吸収材料を従来のカラー・トナーに含めて、非接触定着要件を満たすことができる。実施形態において、カラー・トナーとブラック・トナーとの間の光沢及びしわの差異を防止するために、赤外線(IR)吸収体がカラー・トナーに加えられる。
【0012】
実施形態において、本開示は、結果として得られるトナー組成物が不飽和ポリエステル樹脂、IR吸収体、随意的にワックス、及び随意的に着色剤を含む、乳化凝集等の化学プロセスにより製造されるものを含む硬化性トナー組成物に向けられる。
【0013】
本開示のプロセスは、凝集剤の存在下において、ポリエステルのような不飽和結晶性又は非晶質ポリマー樹脂のような不飽和樹脂、IR吸収体、随意的にワックス、及び随意的に着色剤を含有する粒子のような粒子を凝集させるステップを含むことができる。
【0014】
本明細書に説明されるプロセスによって得られるトナー及びトナー組成物には多くの利点がある。本プロセスは、直径2.5ミクロンから9ミクロンまで、実施形態においては、直径約3ミクロンから約6ミクロンまでの大きさで、約1.2から約1.30までのような狭い粒径分布の粒子を、分級器を使用せずに調製することを可能にする。さらに、本トナー組成物内に結晶性樹脂を使用することにより、低温溶融又は超低温溶融定着温度を得ることができる。前述の低温定着温度は非接触定着を可能にする。本トナー組成物は、約85℃に至るような高温文書オフセット特性、並びにメチルエチルケトン(MEK)等の有機性溶剤に対する抵抗性のような他の利点をもたらす。
実施形態において、本開示に従って調製されるトナーは、不飽和樹脂、IR吸収体、及びシェルを含む、低温溶融EAトナーとすることができる。
【0015】
本開示のトナーは、トナーを形成する用途に適した任意の樹脂を含むことができる。次に、かかる樹脂は任意の適切なモノマーから製造することができる。
【0016】
実施形態において、樹脂を形成するのに使用するポリマーは、ポリエステル樹脂とすることができる。好適なポリエステル樹脂には、例えば、スルホン化物、非スルホン化物、結晶、非晶質、及びそれらの組み合わせ等が含まれる。
【0017】
実施形態において、樹脂は、ジオールを二価酸又はジエステルと、随意的触媒の存在下で反応させることにより形成されるポリエステル樹脂とすることができる。
【0018】
実施形態において、本開示のトナーに使用される好適な非晶質樹脂は、約10,000から約100,000まで、実施形態においては約15,000から約30,000までの重量平均分子量を有することができる。
【0019】
実施形態において、好適な結晶性樹脂は、エチレングリコールと、以下の式を有するドデカン二酸及びフマル酸コモノマーの混合物から構成することができる。
【化1】

(II)
ここで、bは、約5から約2000まで、dは約5から約2000までである。
【0020】
実施形態において、本開示のトナーに使用される好適な結晶性樹脂は、約10,000から約100,000まで、実施形態においては約15,000から約30,000までの重量平均分子量を有することができる。
【0021】
一つ、二つ、又はそれ以上の樹脂を、トナーの形成に使用することができる。2つ又はそれ以上の樹脂を使用する実施形態においては、樹脂は、例えば、約1%(第1の樹脂)/99%(第2の樹脂)から約99%(第1の樹脂)/1%(第2の樹脂)まで、実施形態においては約10%(第1の樹脂)/90%(第2の樹脂)から約90%(第1の樹脂)/10%(第2の樹脂)までのような、任意の好適な比(例えば、重量比)にすることができる。
【0022】
実施形態において、本開示の好適なトナーは、2つの非晶質ポリエステル樹脂及び1つの結晶性ポリエステル樹脂を含むことができる。3つの樹脂の重量比は、およそ第1の非晶質樹脂29%/第2の非晶質樹脂69%/結晶性樹脂2%から、およそ第1の非晶質樹脂60%/第2の非晶質樹脂20%/結晶性樹脂20%まで、実施形態においては、およそ第1の非晶質樹脂45%/第2の非晶質樹脂45%/結晶性樹脂10%から、およそ第1の非晶質樹脂40%/第2の非晶質樹脂40%/結晶性樹脂20%までとすることができる。
上述の通り、実施形態において、樹脂は乳化凝集法により形成することができる。かかる方法を用いると、樹脂は樹脂エマルジョン中に存在することができ、これを次に他の成分及び添加剤と組み合せて本開示のトナーを形成することができる。
【0023】
ポリマー樹脂は、固形分ベースでトナー粒子(つまり、外部添加剤を除いたトナー粒子)の、約65重量%から約95重量%まで、又は好ましくは約75重量%から約85重量%までの量で存在することができる。結晶性樹脂の非晶質樹脂に対する比率は、約1:99から約30:70までの範囲、例えば約5:95から約25:75までとすることができる。
【0024】
低い酸価のポリマーは、照射下において、より良好な架橋結果を与えることもまた分かっている。例えば、ポリマーの酸価は、約0mgKOH/グラムから約40mgKOH/グラムまで、実施形態においては約1mgKOH/グラムから約30mgKOH/グラムまで、実施形態においては約5mgKOH/グラムから約25mgKOH/グラムまで、別の実施形態においては約9mgKOH/グラムから約13mgKOH/グラムまでとすることができる。
【0025】
本開示によると、少なくとも1つの赤外線(IR)吸収体が、非接触定着用のトナーに添加される。各カラー・トナー内の赤外線吸収体の配合を変えることにより、異なるカラー・トナー間で粒子をより均一に加熱することが可能になるはずであり、また透明な粒子をより効率的に加熱することもできる。
【0026】
本開示のトナー中に使用する赤外線吸収体は、約850nmから約1100nmまで、実施形態においては約1000nmから約1075nmまでの波長で最大吸光度を有し、かつ、約400nmから約750nmの波長の可視光領域には、ほとんど或いは全く吸収がないものとすることができる。
【0027】
使用するIR吸収体の量は、吸収体を添加するトナーに応じて決めることができる。実施形態において、IR吸収体は、トナーの約0.01重量%から約5重量%まで、実施形態においてはトナーの約0.10重量%から約1重量%まで、実施形態においてはトナーの約0.2%重量%から約0.3重量%までの量で存在するように添加することができる。異なるカラーは、異なるレベルのIR吸収体を有することができる。従って、シアン・トナーは、トナーの約0.01重量%から約5重量%まで、実施形態においてはトナーの約0.10重量%から約2重量%まで、実施形態においてはトナーの約0.2%重量%から約0.5重量%までの量のIR吸収体を有することができ、マゼンタ・トナーは、トナーの約0.01重量%から約2重量%まで、実施形態においてはトナーの約0.10重量%から約1重量%まで、実施形態においてはトナーの約0.2%重量%から約0.5重量%までの量のIR吸収体を有することができ、イエロー・トナーは、トナーの約0.01重量%から約2重量%まで、実施形態においてはトナーの約0.10重量%から約1重量%まで、実施形態においてはトナーの約0.2%重量%から約0.5重量%までの量のIR吸収体を有することができる。
【0028】
上述の樹脂エマルジョンの樹脂は、実施形態においてはポリエステル樹脂であり、トナー組成物を形成するために使用することができる。かかるトナー組成物は、随意の着色剤、ワックス及び他の添加剤を含むことができる。トナーは、乳化凝集法を含むがこれに限定されない、当業者の認識範囲内の任意の方法を用いて形成することができる。
【0029】
実施形態において、トナー組成物を形成するために使用される着色剤、ワックス及び他の添加剤は、界面活性剤を含む分散液にすることができる。さらに、トナー粒子は、乳化凝集法によって形成することができ、その場合、樹脂と、少なくとも1つのIR吸収体を含む他のトナー成分とを1つ又はそれ以上の界面活性剤中に配置し、エマルジョンを形成し、トナー粒子を凝集させ、融合させ、随意的に洗浄及び乾燥し、そして回収する。
【0030】
一つ、二つ、又はそれ以上の界面活性剤を使用することができる。実施形態において、界面活性剤は、トナー組成物の約0.01重量%から約5重量%までの量、例えば、トナー組成物の約0.75重量%から約4重量%まで、実施形態においてはトナー組成の約1重量%から約3重量%までの量が存在するように使用することができる。
【0031】
添加する着色剤については、染料、顔料、染料の混合物、顔料の混合物、染料と顔料の混合物等のような種々の既知の好適な着色剤をトナーに含めることができる。着色剤は、例えば、トナーの約0.1重量%から約35重量%まで、又はトナーの約1重量%から約15重量%まで、又はトナーの約3重量%から約10重量%までの量を、トナーに含めることができる。
【0032】
ポリマー結合剤樹脂及びIR吸収体に加えて、本開示のトナーはまた、単一種のワックス又は2つ若しくはそれ以上の異なるワックスの混合物とすることができるワックスを随意的に含有することができる。単一のワックスをトナー配合物に添加して、例えば、トナー粒子形状、トナー粒子表面上におけるワックスの存在及び量、帯電及び/又は定着特性、光沢、剥離性、オフセット特性等のような、特定のトナー特性を改善することができる。代替的に、ワックスの組み合わせを添加して、トナー組成物に複数の特性を与えることができる。
【0033】
随意的に、ワックスはまた、トナー粒子形成において、樹脂及びIR吸収体と組み合わせることができる。ワックスが含まれる場合、ワックスは、例えば、トナー粒子の約1重量%から約25重量%まで、実施形態においてはトナー粒子の約5重量%から約20重量%までの量で存在することができる。
【0034】
選択することができるワックスは、例えば、約500から約20,000まで、実施形態においては約1,000から約10,000までの重量平均分子量を有するワックスを含む。
【0035】
トナー粒子は、当業者の認識範囲内の任意の方法で調製することができる。トナー粒子生成に関する実施形態は、以下では乳化凝集プロセスに関して説明するが、特許文献1及び特許文献2に開示される懸濁及びカプセル化プロセス等の化学的プロセスを含む、任意の好適なトナー粒子調製法を使用することができる。実施形態において、トナー組成物及びトナー粒子は、凝集及び融合プロセスによって調製することができ、その場合、小さいサイズの樹脂粒子を凝集させて適当なトナー粒径にし、次いで融合させて最終的トナー粒子形状及び形態を得る。
【0036】
実施形態において、トナー組成物は、随意のワックス及び任意の他の所望の或いは必要な添加剤、並びに、上記の樹脂及びIR吸収体を含むエマルジョンの混合物を、随意的に上述のように界面活性剤中で凝集させ、次いで凝集混合物を融合させるステップを含むプロセスのような、乳化凝集プロセスによって調製することができる。混合物は、同じく随意的に界面活性剤を含む分散液にすることができる随意のワックス又は他の材料を、樹脂及びIR吸収体を含有する2つ又はそれ以上のエマルジョンの混合物とすることができるエマルジョンに添加することにより調製することができる。結果として得られる混合物のpHは、例えば、酢酸、硝酸等のような酸により調整することができる。実施形態において、混合物のpHは、約2から約4.5までに調整することができる。さらに、実施形態において、混合物を均質化することができる。混合物を均質化する場合、均質化は、毎分約600回転から約4,000回転で混合することにより達成することができる。
【0037】
上述の混合物を調製したのち、混合物に凝集剤を添加することができる。任意の好適な凝集剤を使用してトナーを形成することができる。好適な凝集剤には、例えば、二価カチオン又は多価カチオン物質の水溶液が含まれる。
【0038】
トナーを形成するのに使用する混合物に対して、凝集剤を、例えば、混合物中の樹脂の約0.1重量%から約8重量%まで、実施形態においては約0.2重量%から約5重量%まで、他の実施形態においては約0.5重量%から約5重量%までの量で添加することができるが、この量は、これらの範囲外であってもよい。これにより凝集に対して十分な量の凝集剤が与えられる。
【0039】
トナーの光沢は、粒子中に保持される金属イオン、例えばAl3+の量により影響され得る。保持される金属イオンの量は、EDTAを添加することにより、さらに調整することができる。実施形態においては、本開示のトナー粒子中に保持される架橋剤、例えばAl3+の量は、約0.1pphから約1pphまで、実施形態においては約0.25pphから約0.8pphまで、実施形態においては約0.5pphとすることができる。
【0040】
粒子の凝集及び融合を制御するため、実施形態において、凝集剤を、時間をかけて、計量しながら混合物に添加することができる。
【0041】
粒子は、所定の所望の粒径が得られるまで凝集させることができる。所定の所望の粒径は、形成前に決定された得られるべき所望の粒径を指し、かかる粒径に達するまで、成長プロセス中、粒経が監視される。成長プロセス中にサンプルを採取して、例えば、コールター・カウンター(Coulter Counter)によって、平均粒径について分析することができる。このように、凝集は、高温を維持することにより、或いは、例えば約40℃から約100℃まで、ゆっくりと温度を上昇させ、混合物をこの温度に約0.5時間から約6時間まで、実施形態においては、約1時間から約5時間まで、撹拌し続けながら維持することにより、進行させて、凝集粒子をもたらすことができる。ひとたび所定の所望の粒径に達したら、成長プロセスを停止させる。実施形態において、所定の所望の粒径は上述のトナー粒径の範囲内とすることができる。
【0042】
凝集剤の添加後の粒子の成長及び成形は、任意の好適な条件のもとで実行することができる。別々の凝集及び融合段階に対しては、凝集プロセスは、例えば、上述の樹脂のガラス転移温度より低くし得る、約40℃から約90℃まで、実施形態においては約45℃から約80℃までの高温における剪断条件下で実施することができる。
【0043】
実施形態においては、随意のシェルを、形成された凝集トナー粒子に塗布することができる。コア樹脂として好適な上述のいずれかの樹脂を、シェル樹脂として使用することができる。シェル樹脂は、当業者の認識範囲内の任意の方法によって凝集粒子に塗布することができる。実施形態において、シェル樹脂は、上述のいずれかの界面活性剤を含むエマルジョンにすることができる。上述の凝集粒子をこのエマルジョンと組み合せて、その樹脂が、形成された凝集粒子を覆うシェルを形成するようにすることができる。実施形態においては、非晶質ポリエステルを使用して凝集粒子上にシェルを形成し、コア−シェル構造を有するトナー粒子を形成することができる。
【0044】
上述の樹脂及び随意の添加剤を含む本開示のエマルジョンは、約100nmから約260nmまで、実施形態においては約105nmから約155nmまで、いくつかの実施形態においては約110nmの粒径を有する粒子を含むことができる。
【0045】
これらの樹脂を含むエマルジョンは、約10固形分重量%から約20固形分重量%まで、実施形態においては約12固形分重量%から約17固形分重量%まで、実施形態においては約13固形分重量%の固形分配合量を有することができる。
【0046】
ひとたびトナー粒子の所望の最終粒径に達したら、混合物のpHを塩基により約6から約10まで、実施形態においては約6.2から約7までの値に調整することができる。pHの調整を利用して、トナー成長を凍結する、つまり停止することができる。
【0047】
所望の粒径までの凝集及び上述の随意のシェルの形成に続いて、粒子を融合させて所望の最終形状にすることができるが、この融合は、例えば、可塑化を防止するために結晶性樹脂の融点より低くすることができる、約55℃から約100℃まで、実施形態においては約65℃から約75℃まで、実施形態においては約70℃の温度に、混合物を加熱することにより達成される。温度が結合剤に使用される樹脂の関数であることを理解して、より高い温度又は低い温度を使用できる。
【0048】
融合は、約0.1時間から約9時間まで、実施形態においては約0.5時間から約4時間までの時間にわたって進行し達成され得るが、これらの範囲外の時間を使用してもよい。
【0049】
融合後、混合物を、室温、例えば約20℃から約25℃まで冷却することができる。冷却は、必要に応じて、急速であってもゆっくりであってもよい。好適な冷却法には、反応器のまわりのジャケットに冷水を導入することが含まれる。冷却後、トナー粒子は、随意的に水で洗浄し、次に乾燥させることができる。乾燥は、例えば凍結乾燥を含む任意の好適な乾燥法により実行することができる。
【0050】
実施形態において、トナー粒子には、所望の或いは必要な他の随意の添加剤を含めることができる。例えば、トナーは、正又は負電荷制御剤を、例えばトナーの約0.1重量%から約10重量%まで、実施形態においてはトナーの約1重量%から約3重量%までの量で含むことがでる。
【0051】
トナー粒子にはまた、トナー粒子の表面上に存在することができる流れ促進添加剤を含む外部添加剤粒子を混合することもできる。繰り返すが、これらの添加剤は、上述のシェル樹脂と同時に若しくはシェル樹脂の塗布後に、加えることができる。
【0052】
トナー粒子の特性は、任意の好適な技術及び装置により決定することができる。
【0053】
本開示の方法を使用して、所望の光沢度を得ることができる。従って、例えば、本開示のトナーの光沢度は、ガードナー光沢単位(ggu)で計測したとき、約20gguから約100gguまで、実施形態においては約50gguから約95gguまで、実施形態においては約60gguから約90gguまでの光沢を有することができる。
【0054】
実施形態において、本開示のトナーは、超低温融解(ULM)トナーとして使用することができる。実施形態において、乾燥トナー粒子は、外部表面添加剤を除いて、以下の特性を有することができる。
(1)体積平均直径(「体積平均粒径」とも呼ばれる)は、約2.5ミクロンから約20ミクロンまで、実施形態においては約2.75ミクロンから約10ミクロンまで、他の実施形態においては約3ミクロンから約9ミクロンまでである。
(2)数平均幾何標準偏差(GSDn)及び/又は体積平均幾何標準偏差(GSDv)は、約1.05から約1.55まで、実施形態においては約1.1から約1.4までである。
(3)真円度は、(例えばSysmex FPIA2100分析器で計測)約0.9から約1まで、実施形態においては約0.93から約0.99まで、他の実施形態においては約0.95から約0.98までである。
(4)ガラス転移温度は、約45℃から約60℃までである。
(5)トナー粒子の表面積は、既知のBET法により計測したとき、約1.3m2/gから約6.5m2/gまでである。例えば、シアン、イエロー、及びブラック・トナー粒子に対しては、BET表面積は2m2/g未満、例えば約1.4m2/gから約1.8m2/gまでとし、マゼンタ・トナーに対しては、約1.4m2/gから約6.3m2/gまでとすることができる。
【0055】
実施形態においては、トナー粒子は、DSCにより計測したとき、別々の結晶性ポリエステル及びワックスの融点、及び非晶質ポリエステルのガラス転移温度を有すること、及びこれら溶融温度及びガラス転移温度は、非晶質又は結晶性ポリエステルの可塑化により、又はIR吸収体若しくはいかなる随意のワックスによっても実質的に低下しないことが望ましい。非可塑化を達成するため、乳化凝集は、結晶性成分及びワックス成分の融点より低い融合温度で実施することが望ましい。
【0056】
このようにして形成されたトナー粒子を、現像剤組成物に配合することができる。トナー粒子をキャリア粒子と混合して、2成分現像剤組成物を得ることができる。現像剤中のトナー濃度は、現像剤の全重量の約1重量%から約25重量%まで、実施形態においては現像剤の全重量の約2重量%から約15重量%までとすることができる。
【0057】
選択されたキャリア粒子は、コーティングを有するか又は有しない状態で使用することができる。実施形態において、キャリア粒子は、帯電列内でそれにあまり接近しないポリマーの混合物から形成することができるコーティングを上に有するコアを含むことができる。
【0058】
実施形態において、結果として得られるコポリマーが好適な粒経を保持する限り、PMMAを任意の所望のコモノマーと随意に共重合することができる。好適なコモノマーとしては、モノアルキル又はジアルキルアミン、例えば、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジイソプロピルアミノエチル、又はメタクリル酸t−ブチルアミノエチル等を挙げることができる。キャリア粒子は、キャリアコアと、コーティングされたキャリア粒子の重量に基づいて、約0.05重量%から約10重量%まで、実施形態においては約0.01重量%から約3重量%までの量のポリマーとを、機械的固着及び/又は静電引力によりポリマーがキャリアコアに付着するまで、混合することにより調製することができる。
【0059】
キャリア粒子は、種々の好適な組み合わせでトナー粒子と混合することができる。濃度は、トナー組成物の約1重量%から約20重量%までとすることができる。しかし、異なるトナー及びキャリアの割合を用いて、所望の特性を有する現像剤組成物を得ることもできる。
【0060】
本トナーは、特許文献3に開示されたものを含む電子写真プロセスに使用することができる。
【0061】
画像形成プロセスは、例えば、帯電要素、画像形成要素、光伝導要素、現像要素、転写要素、及び定着要素を含む電子写真装置を用いて画像を調製するステップを含む。実施形態においては、現像要素は、キャリアを本明細書で説明したトナー組成物と混合することにより調製される現像剤を含むことができる。電子写真装置は、高速プリンター、白黒高速プリンター、カラープリンター等を含むことができる。
【0062】
ひとたび、画像が、前述の方法のいずれか一つのような好適な画像現像法により、トナー/現像剤を用いて形成されると、次いで画像は、紙等の受像媒体に転写される。実施形態において、トナーは、定着ロール部材を使用する現像装置内で、画像を現像するのに使用することができる。定着ロール部材は、当業者の認識範囲内の接触定着装置であり、ロールからの熱及び圧力を使用して、トナーを受像媒体に定着させることができる。
【0063】
実施形態において、トナー画像の定着は、加熱圧力ローラの使用によるような、熱と圧力を組み合わせた定着等の任意の従来の手段によって実行することができる。いくつかの実施形態においては、例えば従来の定着が行われるのと同じ定着ハウジング及び/又はステップで照射を使用することができ、又は照射を別個の照射定着機構及び/又はステップで実行することができる。いくつかの実施形態において、この照射ステップは、トナーの非接触定着をもたらすことができるため、従来の圧力定着は不要となり得る。
【0064】
他の実施形態において、照射は、従来の定着ハウジング及び/又はステップとは別個の定着ハウジング及び/又はステップにおいて実行することができる。例えば、照射定着は、加熱圧力ロール定着等の従来とは別個のハウジングにおいて実行することができる。つまり、従来定着画像は、別の現像装置又は同じ現像装置内の別の要素に移されて照射定着が実行される。この様式では、照射定着は、例えば、改善された高温文書オフセット特性を必要とする画像を照射硬化する随意のステップとして実行することができるが、そのような改善された高温文書オフセット特性を必要としない画像を照射硬化するためには実行する必要はない。従って、従来の定着ステップは、ほとんどの用途に対して受容可能な定着画像特性を与えるが、一方、随意の照射硬化は、より過酷な又は高温環境に曝される場合がある画像に対して実行することができる。
【0065】
他の実施形態において、トナー画像は、従来の圧力定着を用いずに、照射及び随意の加熱によって定着することができる。これは、実施形態において、非接触定着と呼ぶことができる。照射定着は、任意の好適な照射装置により、かつ好適なパラメータの下で実行して、不飽和ポリマーに所望の程度の架橋を生じることができる。好適な非接触定着法は、当業者の認識範囲内にあり、実施形態においては、フラッシュ定着、放射定着、及び/又は蒸気定着を含む。
【0066】
実施形態において、非接触定着は、トナーを、約800nmから約1000nmまで、実施形態においては約800nmから約950nmまでの波長の赤外光に、約5ミリ秒から約2秒まで、実施形態においては約50ミリ秒から約1秒までの時間、露光することにより行われる。
【0067】
熱もまた加えられる場合、画像は、例えば約100℃から約250℃まで、例えば約125℃から約225℃まで、又は約150℃若しくは約160℃から約180℃若しくは約190℃までのような加熱環境において、赤外光などの照射により定着することができる。
【0068】
照射定着を、IR吸収体を含有するトナー組成物に適用すると、結果として得られる定着画像には、文書オフセット性状がもたらされない、つまり、約90℃までの温度、例えば約85℃まで又は約80℃までの温度では、画像は文書オフセットを呈さない。また、結果として得られる定着画像は、従来の定着トナー画像と比較すると、改善された耐摩耗性及び耐スクラッチ性を呈する。かかる改善された耐摩耗性及び耐スクラッチ性は、例えば、本の表紙、封筒、及びその他の摩耗及びスクラッチが品物の外観を損ねる用途における使用のために有益である。溶剤に対する耐性も改善され、これは封筒その他の用途に対して有益である。これらの特性は、例えば、典型的にはグローブボックス内で高温にさらされる自動車のマニュアル等の高温環境に耐えなければならない画像、或いは、熱密封処理に耐えなければならない印刷包装材料等の画像に対して特に有用である。
【0069】
本開示のトナーは、電子写真用途以外の用途を含む、トナーを用いて画像を形成するための任意の好適な工程に使用することができることが想定される。
【実施例】
【0070】
実施例1
ドデカン二酸、エチレングリコール、及びフマル酸から誘導される結晶性ポリエステル樹脂、コポリ(エチレン−ドデカノアート)−コポリ−(エチレン−フマレート)を含む結晶性樹脂エマルジョンの調製
加熱マントル、機械的撹拌器、底部排液弁、及び蒸留装置を装備した1リットルのパール反応器に、ドデカン二酸(約443.6グラム)、フマル酸(約18.6グラム)、ヒドロキノン(約0.2グラム)、n−ブチルスタンノン酸(FASCAT4100)触媒(約0.7グラム)、及びエチレングリコール(約248グラム)を入れた。この材料を二酸化炭素の流れの下で撹拌し、約1時間かけてゆっくりと約150℃まで加熱した。次に温度を約15℃、続いて30分毎に約10℃刻みで、約180℃まで上昇させた。この間、水を副生成物として蒸留して除去した。次に温度を、約1時間かけて約5℃刻みで約195℃まで上昇させた。次に圧力を、約2時間かけて約0.03mbarまで下げ、あらゆる過剰のグリコールを蒸留受け器に収集した。二酸化炭素の流れの下で、樹脂を大気圧に戻し、次いで、無水トリメリト酸(約12.3グラム)を添加した。圧力を、約10分かけてゆっくりと約0.03mbarまで下げ、そこでさらに40分間保持した。結晶性樹脂、コポリ(エチレン−ドデカノアート)−コポリ−(エチレン−フマレート)を大気圧に戻し、次いで、底部排液弁を通して排出し、約87Pa・s(約85℃で計測)の粘度、約69℃の溶融開始温度、約78℃の融点温度ピーク、及びデュポン社製示差走査熱量計により計測された約56℃の冷却時再結晶化ピークを有する樹脂が得られた。樹脂の酸価は約12meq/KOHであることが見出された。
【0071】
約816グラムの酢酸エチルを、約125グラムの上述の結晶性樹脂に添加した。樹脂は、ホットプレート上で、約200rpmで撹拌しながら約65℃に加熱することにより溶解させた。別の4リットルのガラス反応容器に、約4.3グラムのTAYCA POWER界面活性剤(日本国テイカ株式会社製、分岐ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)(約47%水溶液)、約2.2グラムの重炭酸ナトリウム(約12meq/KOHの酸価の)、及び約708.33グラムの脱イオン水を加えた。この水溶液を、ホットプレート上で約200rpmで撹拌しながら約65℃に加熱した。
【0072】
酢酸エチル混合物に溶解した樹脂を、水溶液が入った4リットルのガラス反応器に、約4,000rpmで均質化しながらゆっくりと注ぎ入れた。次に、ホモジナイザーの速度を10,000rpmに上げて、約30分間放置した。均質化した混合物を、加熱ジャケットを付けたパイレックス(登録商標)製蒸留装置内に、約200rpmで撹拌しながら入れた。温度を、約1℃/分で約80℃まで上昇させた。酢酸エチルを、約80℃で約120分間混合物から蒸留して除去した。混合物を、約40℃以下に冷却し、次いで、20ミクロンのふるいでふるいにかけた。混合物のpHを、約4%のNaOH水溶液を用いて約7に調整して遠心分離した。結果として得られた樹脂は、水中に約35.1重量%の固形分を含み、HONEYWELL社製MICROTRAC(登録商標)UPA150粒径分析器で計測した体積平均直径は、約108ナノメートルであった。
【0073】
比較実施例1
IR吸収体を含まない、透明なトナーを以下のように調製した。2リットルのビーカ内で、約816グラムの酢酸エチルを、Reichold Chemicals社製のXP777樹脂として市販の非晶質ポリエステル樹脂約125グラムに添加した。樹脂は、ホットプレート上で約200rpmで撹拌しながら約65℃に加熱することにより溶解させた。別の4リットルのガラス反応容器内で、約3.05グラム(約17の酸価に対して)の重炭酸ナトリウムを、約708.33グラムの脱イオン水に加えた。この水溶液を、ホットプレート上で約200rpmで撹拌しながら約65℃に加熱した。この水溶液を含有する4リットルのガラス反応器に、溶解した非晶質樹脂と酢酸エチルの混合物を約4,000rpmで均質化しながらゆっくりと注ぎ入れた。次に、ホモジナイザーの速度を約10,000rpmに上げて、約30分間放置した。均質化した混合物を、加熱ジャケットを取り付けたパイレックス(登録商標)製蒸留装置に、約200rpmで撹拌しながら入れた。温度を、約1℃/分の速度で約80℃まで上昇させた。酢酸エチルを、約80℃で約120分間混合物から蒸留して除去した。混合物を、約40℃以下に冷却し、次いで、20ミクロンのふるいでふるいにかけた。混合物のpHを、約4%のNaOH水溶液を用いて約7に調整して遠心分離した。結果として得られた樹脂は、水中において約35.3重量%の固形分を含み、その粒子はHONEYWELL社製MICROTRAC(登録商標)UPA150粒径分析器で計測した体積平均直径約122ナノメートルを有していた。
【0074】
オーバーヘッド撹拌器及び加熱マントルを装備した2リットルのガラス反応器内で、約183.25グラムの上述の非晶質樹脂エマルジョンを、約104.03グラムの実施例1の不飽和結晶性ポリエステル樹脂エマルジョンに添加した(約16.15重量%の結晶性樹脂)。約41.82グラムのAl2(SO43溶液(1重量%)を均質化しながら凝集剤として添加した。続いて、この混合物を約300rpmで撹拌しながら約46.2℃に加熱して凝集させた。コア粒子の体積平均粒径が4.59μm、GSDが約1.25になるまで、コールター・カウンターで粒径を監視し、次いで約85.52グラムの上述の非晶質樹脂エマルジョンをシェルとして添加し、結果として平均粒径が約6.48ミクロン、GSDが約1.23のコア−シェル構造化粒子を得た。その後、反応スラリーのpHを、約1.615グラムのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)(約39重量%)及びNaOH(約4重量%)を用いて、約7.2に調製し、トナーの成長を凍結させた。
【0075】
凍結後、反応混合物を約69.9℃に加熱し、pHを約5.97まで下げて融合させた。融合後トナーを急冷し、約5.90ミクロンの最終粒径、約1.25のGSD、及び約0.960の真円度を有する粒子を得た。次いで、トナースラリーを室温まで冷却し、ふるい(25ミクロンのふるいを通して)にかけて分離し、ろ過し、洗浄し、凍結乾燥した。
【0076】
実施例2−7
トナーを、約0.2重量%のIR吸収体を用いて調製した。Reichold Chemicals社から入手可能な非晶質樹脂XP777を約99.8重量%及びIR吸収体を約0.2重量%含むエマルジョンを調製した。約125グラムの非晶質樹脂XP777を約0.24グラムのIR吸収体と組み合せて、約900グラムの酢酸エチルを入れた2リットルのビーカ内で溶解させた。混合物を室温において毎分約300回転で撹拌し、樹脂とIR吸収体を酢酸エチルに溶解させた。約2.56グラムの重炭酸ナトリウムを計量して、約700グラムの脱イオン水を入れた3リットルのパイレックス(登録商標)ガラス製フラスコ反応器に加えた。3リットルのガラスフラスコ反応器中の水溶液の均質化を、毎分約4,000回転で動作するIKA Ultra Turrax T50ホモジナイザーを用いて開始した。混合物を均質化し続けながら、樹脂溶液をゆっくりと水溶液中に注入し、ホモジナイザーの速度を、毎分約8,000回転に増加し、この条件で、均質化を30分間実行した。均質化が完了したら、ガラスフラスコ反応器及びその内容物を加熱マントル内に配置して、蒸留装置に接続した。混合物を毎分約275回転で撹拌し、混合物の温度を毎分約1℃の速度で約80℃まで上昇させ、混合物から酢酸エチルを蒸留して除去した。
【0077】
混合物の撹拌を約80℃で約180分間継続し、続いて、毎分約2℃で室温まで冷却した。生成物を25ミクロンのふるいでふるいにかけた。結果として得られた樹脂エマルジョンは、水中に、平均粒径が約135nmから200nmまでの固形分を約19.61重量%含んでいた。
【0078】
トナーを、上述のIR/非晶質樹脂エマルジョンを用いて以下のように調製した。非晶質樹脂及びIR吸収体を含有する上述のエマルジョン約367.16グラムを、オーバーヘッド撹拌器及び加熱マントルを装備した2リットルのガラス反応器に加えた。さらに、約48グラムの実施例1の不飽和結晶性ポリエステル樹脂を添加した。約35.84グラムのAl2(SO43溶液(約1重量%)を均質化しながら凝集剤として添加した。続いて、混合物を約40.8℃まで加熱し、約260rpmで撹拌しながら凝集させた。コア粒子の体積平均粒径が約4.54μm、GSDが約1.21になるまで、コールター・カウンターで粒径を監視した。
【0079】
次に、上述の非晶質樹脂及びIR吸収体エマルジョン約171.34グラムを添加してシェルを形成し、平均粒径が約5.77ミクロン、GSDが約1.22のコア−シェル構造化粒子を得た。その後、反応スラリーのpHを、約1.39グラムのEDTA(約39重量%)及びNaOH(約4重量%)を用いて、約7.25に調製してトナーの成長を凍結した。
【0080】
凍結後、反応混合物を約69℃に加熱し、pHを約5.9まで下げて融合させた。融合後トナーを急冷した。トナースラリーを次いで室温まで冷却し、ふるい(25ミクロンのふるいで)にかけて分離し、ろ過し、洗浄し、凍結乾燥した。
【0081】
以下の表1は、各実施例(2−7)に使用された種々のIR吸収体、並びにトナーの最終粒径及び真円度を明らかにする。

表1

非晶質樹脂、結晶性樹脂、及びIR吸収体を含むトナー

【0082】
上記の幾つかの成分及び組成物のUV・Vis・NIRスペクトルは、Varian Inc製Cary5000分光器を用いて測定した。図1は、比較実施例1のトナーのUV・Vis・NIRスペクトル、図2は、実施例3のUV・Vis・NIRスペクトルである。図2に見られるように、0.2%のIR吸収体を添加すると、近赤外(NIR)領域にIR吸収体の添加による約950nmから約1000nmに最大ピーク吸光度を有する明確な吸収がもたらされる。スペクトルに見られるように、IR吸収体の添加により、可視領域(400−700nm)にも吸収があり、これはトナーの淡緑色に対応する。
【0083】
定着結果
非定着トナー画像を、Xerox DC12プリンター(S/N=FU0−025042)を使用して作成し、120gsmDCEG(Digital Color Elite Gloss、P/N3R11450)コート紙上に画像形成した。公称値(0.48mg/cm2)よりやや高いトナーマス領域(TMA)を用いて、より均一な画像品質を得た。現像剤配合量は、トナーが35グラム、及びXerox DC−12キャリアが365グラムであった。このトナーを用いて良好な品質の画像が作成された。これらの試験に使用された目標画像は、ページ中央近くに配置されたベタ領域とした。
【0084】
トナーの定着は、非接触定着用のIR発光ランプを用いて実施した。この試験には、炭素又は短波長光源ランプの2種類のHeraerus社製IR発光ランプを使用した。両方のIR発光ランプの情報を以下の表2にまとめ、これらランプの発光スペクトルを図3に示す。両方の発光ランプは、非常に広いスペクトルを有したが、IR発光ランプをIR吸収体に正確に合わせることは重要ではなかった。
表2

【0085】
印刷サンプルを、表3に光沢度計測値と共に示す様々な搬送速度(mm/秒(mm/s))でIRランプの下を搬送した。テストランのカラー結果を表3にまとめる。

表3
様々な速度における平均印刷光沢度

【0086】
定着データは、IR吸収体を粒子に添加すると光沢度が高くなることを示した。非接触定着用途に対して、理想的なIR吸収体は、無色で、トナーのイエロー、マゼンタ、及びシアン色に影響しないものである。しかし、多くの理由により、これは実現しがたいが、色の僅かな変化は許容し得る。上記で説明した実験において、粒子に添加したIR吸収体の最大量は、0.2%であった。透明粒子に添加するIR吸収体がこれだけ少量でも、色の相違は目に明らかであった。以下の表4は、IR吸収体を含まないサンプルと比較した色の相違(ΔE2000)を示す。予想通り、IR吸収体の添加と共に色の相違が増加した(0から4.5まで)。

表4
カラー特性(デルタE2000)

【0087】
一般的目標は、透明粒子に対する色ずれを最小にし、顔料を粒子内に組み込んだときに色が変化しないようにすることとした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの非晶質樹脂と、
少なくとも1つの赤外線吸収体と、
少なくとも1つの結晶性樹脂と、
随意の着色剤と、
随意のワックスと、
を含み、
前記少なくとも1つの赤外線吸収体は、約850nmから約1100nmまでの波長において最大吸光度を有する、
ことを特徴とするトナー。
【請求項2】
前記トナーは、乳化凝集トナーを含み、
前記トナーを含む粒子は、随意的に前記少なくとも1つの赤外線吸収体と組み合わせた前記少なくとも1つの非晶質樹脂を含むシェルをさらに含み、
前記トナーを含む粒子は、直径が約3ミクロンから約9ミクロンまでであり、約0.93から約0.99までの真円度を有し、
前記トナーは、約20gguから約100gguまでの光沢度を有し、母体トナーの電荷対質量比は約−10μC/gから約−40μC/gまでであり、
前記少なくとも1つの赤外線吸収体は、約400nmから約750nmまでの波長では光は吸収しない、
ことを特徴とする請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
少なくとも1つの加熱装置と、
トナー供給源と、
随意の接触定着器と
約750nmから約2500nmまでの波長で動作する赤外光源を備えた非接触定着器と、
基材予熱器と、
画像支持部材予熱器と、
注入器と、
を備え、
前記トナーは、少なくとも1つの非晶質樹脂と、少なくとも1つの赤外線吸収体と、少なくとも1つの結晶性ポリエステル樹脂と、随意の着色剤と、随意のワックスとを含み、
前記少なくとも1つの赤外線吸収体は、約850nmから約1100nmまでの波長において最大吸光度を有し、かつ約400nmから約750nmまでの波長では光を吸収しない、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
少なくとも1つの非晶質樹脂を含むエマルジョンを、赤外線吸収体、随意の結晶性樹脂、随意の着直剤、及び随意のワックスと接触させ、
前記粒子を凝集させて凝集粒子を形成し、
前記凝集粒子を、随意的に赤外線吸収体と組み合わせた少なくとも1つの非晶質樹脂と接触させて前記凝集粒子上にシェルを形成し、
前記凝集粒子を融合させてトナー粒子を形成し、
前記トナー粒子を回収する、
ステップを含み、
前記少なくとも1つの赤外線吸収体は、約850nmから約1100nmまでの波長において最大吸光度を有する、
ことを特徴とするプロセス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−81374(P2011−81374A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223611(P2010−223611)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】