説明

トラクタ搭載型粉粒状物散布装置

【課題】トラクタの移動速度が変化しても、農薬や肥料を農地に均一な密度で散布することができる散布装置を提供する。
【解決手段】このトラクタ搭載型粉粒状物散布装置は、農薬や肥料を散布する散布機構と、散布機構を間欠的に作動させるための散布動作制御装置2とを備える。散布動作制御装置2は、トラクタに固定される基礎部材10と、基礎部材10に対して先端を上下に変位可能に支持されたアーム11と、アーム11の先端に回動可能に支持された車輪20と、車輪20に取り付けられ、散布機構1の作動の契機となる作動契機部としての磁性体と、アーム11に固定された近接スイッチと、近接スイッチが磁性体を検出したときに散布機構を作動させる制御部とを備える。近接スイッチと磁性体との間の距離は、車輪20の回動に伴って周期的に変化し、近接スイッチは、磁性体が接近したときに同磁性体を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用などのトラクタに搭載され、前記トラクタを使って行われる作業と並行して農薬や肥料などの粉粒状物を散布するトラクタ搭載型粉粒状物散布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
農業用などのトラクタ(以下、単にトラクタと称す)は、自走できない荷車や農業機械を牽引し、時には農業機械に動力を提供しながら牽引する自走可能な移動機械である。
トラクタに牽引される農業機械としては、播種機が挙げられる。播種機は、トラクタに装着され、トラクタ(またはトラクタに装着された耕耘機械)によって耕された農地に対して播種を行う機械である。
【0003】
近年、上記のような播種機を使って播種を行いながら、それと並行して農薬や肥料などの粉粒状物を散布する試みがなされている。トラクタで農地を耕しながら、播種と同時に農薬や肥料の散布を行うことにより、広い農地であっても効率よく作業を進めることができる。同様の試みは、田植機を使って田植えを行う場合にもなされている(下記の特許文献1)。
【特許文献1】特開平11−308959号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように農地の耕耘および播種作業と農薬(または肥料)の散布作業とを並行して行う場合に問題となるのが、双方の作業をいかに同調させるかという点である。トラクタによる農地の耕耘および播種作業は、トラクタの移動速度が速いと早いテンポで進行し、トラクタの移動速度が遅いとゆっくりとしたテンポで進行する。このような耕耘および播種作業のテンポの変化に、農薬(または肥料)の散布作業のテンポを同調させないと、トラクタで耕した農地のうち、早いテンポで耕耘および播種作業が進行した領域の農地では、農薬(または肥料)が疎に散布され、ゆっくりとしたテンポで耕耘および播種作業が進行した領域の農地では、農薬(または肥料)が密に散布される。つまり、農薬(または肥料)の散布密度の分布が不均一になってしまう。
【0005】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、トラクタの移動速度が変化しても、農薬や肥料を農地に均一な密度で散布することができるトラクタ搭載型粉粒状物散布装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するための手段として、次のような構成のトラクタ搭載型粉粒状物散布装置を採用する。
すなわち本発明のトラクタ搭載型粉粒状物散布装置は、トラクタに搭載され、前記トラクタを使って行われる作業と並行して農薬や肥料などの粉粒状物を散布するトラクタ搭載型粉粒状物散布装置であって、前記粉粒状物を散布する散布機構と、前記散布機構を間欠的に作動させる散布動作制御装置とを備える。
前記散布動作制御装置は、前記トラクタに固定される基礎部材と、前記基礎部材に対して先端を上下に変位させることができるように支持されたアームと、前記アームの先端に回動可能に支持された車輪と、前記車輪に取り付けられ、前記散布機構の作動の契機となる作動契機部と、前記アームに固定された近接スイッチと、前記近接スイッチが前記作動契機部を検出したときに前記散布機構を作動させる制御部とを備える。
近接スイッチと前記作動契機部との間の距離は、前記車輪の回動に伴って周期的に変化し、前記近接スイッチは、前記作動契機部が前記近接スイッチに接近したときに前記作動契機部を検出する。
【0007】
本発明のトラクタ搭載型粉粒状物散布装置において、トラクタが農地を走行するのに伴って散布動作制御装置が散布機構を間欠的に作動させ、散布機構が農地に向けて農薬や肥料などの粉粒状物を散布する。
散布動作制御装置は、アームの先端に支持された車輪を農地に接地させており、車輪は、トラクタが農地を走行するのに伴って回転する。車輪が回転すると、車輪に取り付けられた作動契機部も回転する。
アームに取り付けられた近接スイッチと作動契機部との間の距離は、車輪の回転に伴って周期的に変化し、近接スイッチは、自らに対する作動契機部が最も接近したときに作動契機部を検出する。制御部は、近接スイッチが作動契機部を検出したときに散布機構を作動させる。
【0008】
車輪は、トラクタの移動速度に同調して回転速度を変化させる。つまり、トラクタの移動速度が速いと、車輪の回転速度も速くなるので、散布機構による粉粒状物の散布も、それに同調して早いテンポで実施される。反対に、トラクタの移動速度が遅いと、車輪の回転速度も遅くなるので、散布機構による粉粒状物の散布も、それに同調してゆっくりとしたテンポで実施される。したがって、本発明のトラクタ搭載型粉粒状物散布装置によれば、トラクタが早いテンポで耕耘および播種作業を行った領域であっても、反対にゆっくりとしたテンポで耕耘および播種作業を実施した領域であっても、農薬(または肥料)を常に均一な密度で散布することができる。
【0009】
本発明のトラクタ搭載型粉粒状物散布装置において、前記アームは、先端を上下に揺動させることができるように、前記基礎部材に軸支されていてもよい。
本発明のトラクタ搭載型粉粒状物散布装置によれば、アームが、その先端を上下に揺動させることができるように支持されるので、車輪が農地の起伏の変化に容易に追従する。
【0010】
本発明のトラクタ搭載型粉粒状物散布装置において、前記散布動作制御装置は、前記アームの先端を下方に変位させる方向に付勢する付勢部材を備えていてもよい。
本発明のトラクタ搭載型粉粒状物散布装置によれば、付勢部材が、アームの先端を下方に変位させ、車輪を農地に強制的に接地させるので、車輪が農地の起伏の変化に容易に追従し、車輪の空転やスリップが抑制される。トラクタの移動速度に対する車輪の回転速度の同調性が高まる。
【0011】
本発明のトラクタ搭載型粉粒状物散布装置において、前記散布動作制御装置は、前記車輪の空転を抑制する空転抑制部材を備えていてもよい。前記空転抑制部材は、前記車輪に押し付けられた状態で前記アームに固定されていてもよい。
本発明のトラクタ搭載型粉粒状物散布装置によれば、空転抑制部材によって車輪の空転が抑制されるので、車輪が惰性で回転することがない。その結果、トラクタの移動速度に対する車輪の回転速度の同調性が高まる。
【0012】
本発明のトラクタ搭載型粉粒状物散布装置において、前記アームは、長さの調節が可能であってもよい。アームに支持された車輪の農地に対する追従性を向上させるには、農地に対するアームの角度を浅く(角度を小さく)することが好ましい。農地に対するアームの角度が深いと(90度に近いと)、車輪を上方に押し上げるために要する力が強くなければならず、結果的に車輪の農地に対する追従性を落としめる可能性がある。そこで、本発明のトラクタ搭載型粉粒状物散布装置によれば、アームの長さを調節し、農地に対するアームの角度を浅くすることにより、農地の起伏に対する車輪の追従性が良好に保たれる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のトラクタ搭載型粉粒状物散布装置によれば、トラクタの移動速度が変化しても、農薬や肥料を農地に均一な密度で散布することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のトラクタ搭載型粉粒状物散布装置の実施形態を図1から図4に示して説明する。
本実施形態のトラクタ搭載型粉粒状物散布装置(以下は散布装置と呼ぶ)は、図1に示すように、農薬(または肥料)を散布する散布機構1と、トラクタの耕耘作業と同調して散布機構1に農薬散布を行わせる散布動作制御装置2とを備えている。散布機構1には、図2に示すように、散布機構1の各駆動部に電力を供給するバッテリパック3と、バッテリパック3から散布機構1への電力供給を断続する主スイッチ4aを備えるスイッチボックス4とが接続されている。散布機構1、バッテリパック3およびスイッチボックス4は、トラクタの後部に搭載される播種機のコンテナの後方に、ステーSなどを介して固定されている。バッテリパック3は、商用電源を使って繰り返し充電可能である。
【0015】
散布動作制御装置2は、図2および図3に示すように、トラクタに固定される基礎部材10と、基礎部材10に対して先端を上下に変位させることができるように支持されたアーム11と、アーム11の先端に回動可能に支持された車輪20と、散布機構1の作動の契機となる磁性体(作動契機部)21と、磁性体21の接近を検出する近接スイッチ22と、近接スイッチ22による磁性体21の検出を契機として散布機構1を作動させる制御部23とを備えている。磁性体21は、車輪20のスポークの部分に取り付けられている。近接スイッチ22は、アーム11に、検出面を車輪20のスポークの部分に向けて取り付けられている。制御部23は、スイッチボックス4に内蔵されており、信号ケーブル24を介して近接スイッチ22に接続されている。
【0016】
近接スイッチ22と磁性体21との間の距離は、車輪20の回動に伴って周期的に変化し、近接スイッチ22は、近接スイッチ22に対する磁性体21の接近を検出する度に制御部23に対して信号を発信する。制御部23は、近接スイッチ22から磁性体21の検出信号を受信すると散布機構1を作動させる。散布機構1は、近接スイッチ22が磁性体21の接近を検出すると、その都度、ソレノイドに接続された遮蔽弁(図示略)を開き、トラクタの後方に向けて農薬(または肥料)を散布する。なお、ソレノイドや遮蔽弁を含む散布機構1の構造については、上記特許文献1(特開平11−308959号公報)に詳細に説明されているので、ここでは省略する。
【0017】
図3に示すように、基礎部材10は、トラクタに装着された播種機の横フレームFの一端に、サポート部材5を介して取り付けられている。サポート部材5は、2つのアングル材5A,5Bからなり、これらはボルトとナットとを組み合わせた締結部材6を使って連結される。アングル材5A,5Bは、一方を横フレームFの前方を向く面に沿わせ、他方を横フレームFの後方を向く面に沿わせて、双方立てた状態で配置される。そして、アングル材5Aと同5Bとを締結部材6を使って連結し、且つボルトをナットに強く締め込むことにより、アングル材5A,5Bを立てた状態で横フレームFに取り付けられる。
【0018】
基礎部材10は、長尺の管状鋼材であり、その断面は矩形である。基礎部材10の基端には、サポート部材5にネジ止めされるブラケット10Aが、溶接などの手法により固定されている。ブラケット10Aは、ボルトとナットとを組み合わせた締結部材7を使ってサポート部材5に固定される。
【0019】
基礎部材10の先端には、同形状の四角形の板部材10Bが2枚、溶接などの手法により、鉛直面にほぼ平行に且つ2枚が互いに平行に固定されている。2枚の板部材10Bは、4つの角の角度がすべて異なる異形をなしており、両者の間隔は基礎部材10の太さにほぼ等しい。
板部材10Bとは別に、基礎部材10の先端には、後述する引張コイルバネ17を固定される副部材10Cが、溶接などの手法により、基礎部材10から斜め下方に突き出すように固定されている。
【0020】
アーム11は、その基端を基礎部材10の2枚の板部材10B間に支持されている。2枚の板部材10Bには、水平方向に貫通する貫通孔がそれぞれ形成されている。一方、アーム11の基端には、同様に水平方向に貫通する貫通孔が形成されている。2枚の板部材10Bにそれぞれ形成された2つの貫通孔、およびアーム11の基端の貫通孔には、アーム11の基端を2枚の板部材10B間に配置したうえで、ボルトとナットとを組み合わせた軸部材12Aが挿通されている。軸部材12Aは、3つの貫通孔にボルトを挿通したうえで、同ボルトの先端にナットを螺着することにより、アーム11の基端を、基礎部材10の2枚の板部材10B間に支持している。これにより、アーム11は、基礎部材10に対して揺動可能に、すなわち、アーム11の先端を上下に変位させることができるように支持されている。
【0021】
2枚の板部材10Bには、アーム11の基端を支持するための貫通孔とは別に、水平方向に貫通する貫通孔10Dが複数形成されている。これら複数の貫通孔10Dは、上記の貫通孔よりも下方にあって、アーム11の揺動する方向に配列されている。さらに、これら複数の貫通孔10Dは、2枚の板部材10Bに、それぞれ同じ配置になるように形成されている。そして、水平方向に隣り合う孔どうしを一組として複数の組が用意され、そのいずれかの組に、ボルトとナットとを組み合わせた軸部材12Bが挿通されている。軸部材12Bは、ある一組をなす2つの貫通孔10Dにボルトを挿通したうえで、同ボルトの先端にナットを螺着することにより、基礎部材10に支持されているアーム11が限界を超えて下方に変位しないように、アーム11の揺動範囲の下限を規制している。なお、軸部材12Bは、農地に対する基礎部材10の高さなどの条件に応じて、上記貫通孔10Dの複数の組の中から選択されたいずれかの組に挿通される。
【0022】
アーム11は、基礎部材10に支持されるコラム13と、車輪20を支持するフォーク14とを備えている。コラム13は、太さの異なる2本の管状部材13Aと、同13Bとからなる。2本の管状部材13A,13Bは、その断面がいずれも矩形であり、且つ細い方の管状部材13Bの外形は、太い方の管状部材13Aの内腔の形状にほぼ合致している。そして、管状部材13Bは、管状部材13Aの内側に摺動可能に挿入されている。
【0023】
管状部材13Aのある側面には、貫通孔が形成されており、この貫通孔と連通するように、ナット15Aが固定されている。そして、ナット15Aには、短いボルト15Bが螺入されている。ボルト15Bをナット15Aに挿入すると、その先端は、管状部材13Aの内腔に挿入された管状部材13Bのある側面に当接する。そこで、ボルト15Bをナット15Aに強く締め込むことにより、管状部材13Aに対して管状部材13Bを固定することができる。なお、コラム13の長さは、管状部材13Aに対する管状部材13Bの挿入量を変化させることにより、調節することが可能である。
【0024】
管状部材13Aの中程の位置には、ブラケット16が溶接などの手法により固定されている。ブラケット16には、引張コイルバネ(付勢部材)17の一端が連結されている。引張コイルバネ17の他端は、上述した副部材10Cに連結されている。引張コイルバネ17は、ブラケット16と副部材10Cとの間に、引っ張り方向に弾性力を導入された状態で連結されている。これにより、アーム11は、その先端を下方に変位する方向に付勢されている。
【0025】
フォーク14は、車輪20の車軸の長さよりも若干短い距離だけ離間して平行に配置された2本の棒状部材14Aと、2本の棒状部材14Aの基端を連結する連結部材14Bとからなる。2本の棒状部材14Aの先端には、車輪20の車軸を通す貫通孔がそれぞれ形成されている。連結部材14Bは、コラム13を構成する管状部材13Bの先端に、溶接などの手法により剛に連結されている。
【0026】
車輪20の車軸20Aの両端は、雄ネジ状に形成されている。そして、車軸の一端は、一方の棒状部材14Aの先端に形成された貫通孔に通されるとともに、その一端にナット18が螺着されている。同様に、車軸の他端は、他方の棒状部材14Aの先端に形成された貫通孔に通されるとともに、その他端にナット18が螺着されている。このように、車軸の両端が2本の棒状部材14Aの先端に取り付けられることにより、車輪20はアーム11の先端に回転可能に支持されている。
【0027】
図4に示すように、アーム11を構成するフォーク14には、車輪20の空転を抑制する空転抑制部材19が、ブラケット19Aを介してネジ止めされている。空転抑制部材19は、摩耗し難い硬質ゴムなどの弾性部材であり、車輪20に押し付けられた状態でフォーク14に固定されている。なお、空転抑制部材19は、上述のように車輪20に押し付けられるようにして取り付けられるものに限らない。例えば、車輪20の車軸に作用して回転を抑制し、結果的に車輪20の回転を抑制するものであってもよい。
【0028】
上記のように構成されたトラクタ搭載型の粉粒状物散布装置を使って、農地に播種しながら農薬を散布する作業について説明する。
まず、本実施形態の散布装置を、上記の要領に従ってトラクタに搭載する。トラクタには、事前に播種機をも搭載しておく。そして、実際の散布作業に入る前に、車輪20を地面に接地させ、アーム11の地面に対する角度を調節する。アーム11は引張コイルバネ17によって付勢されているので、地面に対するアーム11の角度が深いと(90度に近いと)、車輪20を上方に押し上げるために要する力が強くなければならず、結果的に車輪20の農地に対する追従性が低下する可能性がある。そこで、管状部材13Aに対する管状部材13Bの挿入量を変化させることによりコラム13の長さを調節して、アーム11の地面に対する角度を浅く(角度を小さく)しておく。これにより、農地の起伏に対する車輪20の良好な追従性が確保される。
【0029】
次に、トラクタを農地に乗り入れ、主スイッチ4aを接続する。主スイッチ4aを接続すると、散布機構1に内蔵されたモータ(図示略)にバッテリパック3から電力が供給され、モータが駆動してインペラ(図示略)が回転する。
【0030】
アーム11の先端に回転可能に支持された車輪20は、農地に接地しており、トラクタを操作して農地の耕耘および播種作業を開始すると、車輪20は、トラクタが農地を走行するのに伴って回転する。車輪20が回転すると、車輪20に取り付けられた磁性体21も回転する。
【0031】
アーム11に取り付けられた近接スイッチ22と磁性体21との間の距離は、車輪20の回転に伴って周期的に変化し、近接スイッチ22は、その検出面に磁性体21が接近するたびに、その接近によって生じる磁場の変化を検出し、信号を発信する。近接スイッチ22から発信された信号は、信号ケーブル24を介して制御部23に受信される。制御部23は、近接スイッチ22から信号を受信すると、ソレノイドを駆動して散布機構1の遮蔽弁を開く。遮蔽弁が開かれると、収容部からインペラに向けて微粒状の農薬が流下し、回転するインペラにはじかれる。インペラにはじかれた農薬は、トラクタの移動方向の後方に散布される。
【0032】
車輪20の回転速度は、トラクタの移動速度に同調して変化する。つまり、トラクタの移動速度が速いと、車輪20の回転速度も速くなるので、散布機構1による農薬の散布S作業も、それに同調して早いテンポで実施される(農薬散布の時間的な間隔が長くなる)。反対に、トラクタの移動速度が遅いと、車輪20の回転速度も遅くなるので、散布機構1による農薬の散布作業も、それに同調してゆっくりとしたテンポで実施される(農薬散布の時間的な間隔が短くなる)。したがって、本実施形態の散布装置によれば、トラクタが早いテンポで耕耘および播種作業を行った領域であっても、反対にゆっくりとしたテンポで耕耘および播種作業を実施した領域であっても、農薬を常に均一な密度で散布することができる。
【0033】
本実施形態の散布装置によれば、アーム11が、その先端を上下に揺動させることができるように支持されているので、車輪20が農地の起伏の変化に容易に追従する。また、引張コイルバネ17が、アーム11の先端を下方に変位させ、車輪20を農地に強制的に接地させるので、車輪20の空転やスリップが抑制される。さらに、アーム11に、車輪20の空転を抑制する空転抑制部材19が設けられているので、車輪20の空転が抑制され、車輪20が惰性で回転することがない。
その結果、トラクタの移動速度に対する車輪20の回転速度の同調性が高まる。
【0034】
ところで、本実施形態においては、作動契機部としての磁性体21を、車輪20にひとつ取り付けたが、磁性体21の数はひとつに限らない。磁性体21の数は、磁性体21を取り付ける位置や、散布機構1において既定の一回あたりの散布量、農薬自体の効能など、様々な要因から決定されるので、そのような要因を考慮して、磁性体21の数や取り付ける位置が決定される。それに関連して、もし車輪20の径が小さければ、車輪20に代えてより径の大きな車輪をフォーク14に取り付けてもよい。
【0035】
また、引張コイルバネ17の付勢力を調節する必要がある場合は、コイル自体を交換してもよいし、バネの数を増やしたり減らしたりしてもよい。
【0036】
サポート部材5を取り付けるべきトラクタ側の部材の形状は、トラクタの形式や大きさなどによって様々なので、サポート部材5については、そのような形状の違いに対応できるように、いくつかの形態を用意しておくことが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、トラクタに搭載され、前記トラクタを使って行われる作業と並行して農薬や肥料などの粉粒状物を散布する装置であって、前記粉粒状物を散布する散布機構と、前記散布機構を間欠的に作動させる散布動作制御装置とを備え、前記散布動作制御装置は、前記トラクタに固定される基礎部材と、前記基礎部材に対して先端を上下に変位させることができるように支持されたアームと、前記アームの先端に回動可能に支持された車輪と、前記車輪に取り付けられ、前記散布機構の作動の契機となる作動契機部と、前記アームに固定された近接スイッチと、前記近接スイッチが前記作動契機部を検出したときに前記散布機構を作動させる制御部とを備えるトラクタ搭載型粉粒状物散布装置に関する。前記近接スイッチと前記作動契機部との間の距離は、前記車輪の回動に伴って周期的に変化し、前記近接スイッチは、前記作動契機部が最も接近したときに前記作動契機部を検出する。
本発明のトラクタ搭載型粉粒状物散布装置によれば、トラクタの移動速度が変化しても、農薬や肥料を農地に均一な密度で散布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明のトラクタ搭載型粉粒状物散布装置の実施形態を示す斜視図である。
【図2】本実施形態のトラクタ搭載型粉粒状物散布装置の機能ブロック図である。
【図3】本実施形態のトラクタ搭載型粉粒状物散布装置を図1とは異なる方向から見た斜視図である。
【図4】本実施形態のトラクタ搭載型粉粒状物散布装置を構成する散布動作制御装置の車輪およびその周囲を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0039】
1…散布機構、2…散布動作制御装置、10…基礎部材、11…アーム、17…引張コイルバネ(付勢部材)、19…空転抑制部材、20…車輪、21…磁性体(作動契機部)、22…近接スイッチ、23…制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクタに搭載され、前記トラクタを使って行われる作業と並行して農薬や肥料などの粉粒状物を散布するトラクタ搭載型粉粒状物散布装置であって、
前記粉粒状物を散布する散布機構と、
前記散布機構を間欠的に作動させる散布動作制御装置とを備え、
前記散布動作制御装置は、
前記トラクタに固定される基礎部材と、
前記基礎部材に対して先端を上下に変位させることができるように支持されたアームと、
前記アームの先端に回動可能に支持された車輪と、
前記車輪に取り付けられ、前記散布機構の作動の契機となる作動契機部と、
前記アームに固定された近接スイッチと、
前記近接スイッチが前記作動契機部を検出したときに前記散布機構を作動させる制御部とを備え、
前記近接スイッチと前記作動契機部との間の距離は、前記車輪の回動に伴って周期的に変化し、
前記近接スイッチは、前記作動契機部が前記近接スイッチに接近したときに前記作動契機部を検出するトラクタ搭載型粉粒状物散布装置。
【請求項2】
前記アームは、先端を上下に揺動させることができるように、前記基礎部材に軸支されている請求項1に記載のトラクタ搭載型粉粒状物散布装置。
【請求項3】
前記散布動作制御装置は、前記アームの先端を下方に変位させる方向に付勢する付勢部材を備える請求項1または2に記載のトラクタ搭載型粉粒状物散布装置。
【請求項4】
前記散布動作制御装置は、前記車輪の空転を抑制する空転抑制部材を備える請求項1から3のいずれか一項に記載のトラクタ搭載型粉粒状物散布装置。
【請求項5】
前記空転抑制部材は、前記車輪に押し付けられた状態で前記アームに固定されている請求項4に記載のトラクタ搭載型粉粒状物散布装置。
【請求項6】
前記アームは、長さの調節が可能である請求項1から5のいずれか一項に記載のトラクタ搭載型粉粒状物散布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−306995(P2008−306995A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−158857(P2007−158857)
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【出願人】(000114938)ヤマト農磁株式会社 (12)
【Fターム(参考)】