説明

トラスパネル桁およびプレキャストトラスパネル

【課題】橋梁やスラブ等の桁部材において、必要な強度を確保した上で桁部材の薄肉化と軽量化を図ることができ、しかも施工性が大幅に向上し、工期の短縮およびコストの低減を図ることができるトラスパネル桁・プレキャストトラスパネルを提供する。
【解決手段】箱桁橋等のウェブ1を構成するパネルに、例えば150 N/mm2 クラスの超高強度コンクリートAにより製作したフレーム11と斜材12とからなるトラス形状のプレキャストトラスパネル10を用い、必要に応じて、引張力が作用するトラス部材にはPC鋼材13を用いプレテンション方式等によりプレストレスを与えて補強する。このパネル10を機械式せん断キー14等により接合し、橋軸方向にポストテンション方式でプレストレスを導入して一体化したトラスパネルウェブ1を形成し、上床版2を場所打ちで施工し、主桁を構築する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁やスラブ等のコンクリート構造物の桁部材に用いられるトラスパネル桁およびこのトラスパネル桁に用いられるプレキャストトラスパネルに関するものであり、特に道路橋や鉄道橋等のプレストレストコンクリート(PC)橋に有効に適用される。
【背景技術】
【0002】
従来のコンクリート橋の場合、次のような課題がある。即ち、(a) コンクリート桁は自重が大きく、長大支間への適用が難しくなる。また、下部構造や基礎に与える負担が大きい。(b) 場所打ち施工法(鉄筋組立→型枠組立→コンクリート打設)は施工が煩雑であり工期を要する。また、建設副産物等の環境問題がある。そこで、従来においては、次に示すような改善・解決手段が採用されている。
【0003】
(1) 桁のプレキャストブロック化
工場や製作ヤードで製作したプレキャストブロックを架設現場に搬入し、接着およびプレストレスを与えて一体化し、桁を構築する。施工の省力化(機械化)、工期短縮が図れる。コンクリート製ブロックは重量が大きいため、運搬および架設に相応の設備が必要になるなどの課題がある。
【0004】
(2) 鋼部材との複合構造化
桁のウェブ部材を波形鋼板や鋼管トラスに置き換え、軽量化と施工の省力化を図る。また、先行技術として、ウェブ鋼板の形状を工夫した提案がある(特許文献1)。鋼部材の加工製作コスト、現場溶接を必要とする施工性の悪さ、塗装等の防錆対策が必要となるなどの課題がある。
【0005】
(3) 高強度コンクリートの使用
桁のウェブ部材を高強度コンクリート製(28日圧縮強度 100〜180 N/mm2 ) のプレキャストパネルとし、軽量化と施工の省力化を図る(特許文献2)。
【特許文献1】特開2002−220812号公報
【特許文献2】特開2004−68341号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した従来の改善・解決手段でも、以下に示すような課題がある。
【0007】
(1) 部材の軽量化
上床版は活荷重が直接載荷する部材であり、疲労や載荷荷重の不確定性に対する健全性・安全性を保つことが重要であるため、部材厚を削減することは難しい。ウェブを鋼部材とすれば、軽量化には大きく寄与するが、耐久性の問題があり、防錆対策のコストが課題となる。また、特許文献2では、ウェブ部材をプレテンション構造のプレキャストパネルとし、高強度コンクリートを用いることで厚さを薄くして軽量化を図っているが、コンクリートウェブは以下の理由によりある程度の厚さが必要であり、薄肉化による重量減には限界がある。(a) 圧縮破壊に対する安全性の確保、(b) 横方向の曲げに対する安全性の確保、(c) 適切なスターラップ量を配置するための必要厚の確保。
【0008】
(2) トラス構造
トラス構造は、桁としては力学的に合理的であり、軽量化を図れるが、構成部材が多く複雑であるため、床版接合部等に局部的な補強を要すること、施工性が悪いこと、高コストとなること、等の問題がある。
【0009】
(3) プレキャスト部材の接合
プレキャストセグメント構造では、桁としての曲げ・せん断に対する性能を確保するために、セグメント継目部が肝要となる。通常、マッチキャストによりセグメントブロックを製作するが、そのための設備および管理の省力化・簡素化が望まれる。
【0010】
(4) プレキャスト部材の製作コスト
プレキャストセグメント工法は、セグメントの製作と架設作業を併行して行えるので、短期施工が可能であるが、通常の場所打ち施工と比較して、セグメント製作費や運搬・架設設備費などが割高となるため、工事費削減としては、ある程度の工事規模(橋長) が必要である。
【0011】
本発明は、上記のような課題を解消すべくなされたものであり、橋梁やスラブ等の桁部材において、必要な強度を確保した上で桁部材の薄肉化と軽量化を図ることができ、しかも施工性が大幅に向上し、工期の短縮およびコストの低減を図ることができるトラスパネル桁およびプレキャストトラスパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の請求項1の発明は、コンクリート構造の桁部材に用いられるトラスパネル桁であり、外周枠(フレーム)と、この外周枠内に配置される斜材とから構成され、これら外周枠と斜材とがコンクリートで形成されているプレキャストトラスパネルを複数個接合して構成されていることを特徴とするトラスパネル桁である。
【0013】
本発明は、橋梁、桟橋、歩道橋、スラブ、デッキ構造などのコンクリート構造に適用されるものである。橋桁等のウェブやスラブ等の梁に用いられるプレキャストパネルを従来のような一面の版ではなく、トラス状のパネルとし、さらに正方形や長方形のフレームと斜材とからなる、大きな開口を有するパネルとし、軽量化を図ったものである。橋桁のウェブの場合、橋軸方向に平行に立てたプレキャストトラスパネルを複数個橋軸方向に連続させて直線状のトラスパネル桁(ウェブ)とする。スラブ等の梁の場合、プレキャストトラスパネルを平面上で縦横に立てて配列して平面視で格子状のトラスパネル桁(梁)とする。
【0014】
本発明の請求項2の発明は、請求項1に記載のトラスパネル桁において、コンクリートに高強度コンクリートが用いられていることを特徴とするトラスパネル桁である。
【0015】
本発明の請求項3の発明は、請求項1または2に記載のトラスパネル桁において、引張りを受ける部分にプレストレスが導入されていることを特徴とするトラスパネル桁である。
【0016】
コンクリートは普通強度のコンクリートでもよいが、用途に応じて、例えば28日圧縮強度 100〜180 N/mm2 の超高強度コンクリートを用い、パネルの薄肉化を図るのが好ましい。箱桁橋のウェブの場合、150 N/mm2 クラスの超高強度コンクリートを用いるのがよい。トラスパネル桁のトラス形式は、例えば、ハウトラス、プラットトラス、ワーレントラスを用いることができ、引張りを受けるトラス部材にPC鋼材によりプレストレスを導入して補強し、超高強度コンクリートの使用と相まってパネルのさらなる薄肉化を図る。超高強度コンクリートは普通強度のコンクリートに比較して付着性能にも優れているため、プレテンション方式でプレストレスを導入し、効率の良いプレストレス導入が行えるようにするのが好ましい。なお、これに限らず、ポストテンション方式でもよい。この場合、パネル製作時にシース孔を設けておけばよい。
【0017】
本発明の請求項4の発明は、請求項1から3までのいずれか一つに記載のトラスパネル桁において、プレキャストトラスパネル外周枠の縦材(鉛直材)同士がせん断キー手段により接合されていることを特徴とするトラスパネル桁である。
【0018】
パネル同士の接合部は、プレキャストセグメント箱桁橋に比較して精度管理が容易であるため、マッチキャスト方式の製作を必要としない。さらに、接合方法に、機械式せん断キーを用いることで、パネル製作時の省力化を図ることが可能となる。なお、これに限らず、コンクリートせん断キーを用いることもできる。
【0019】
本発明の請求項5の発明は、請求項1から4までのいずれか一つに記載のトラスパネル桁において、プレキャストトラスパネル外周枠の上弦材が場所打ち床版により一体化されていることを特徴とするトラスパネル桁である。
【0020】
床版には、プレキャストコンクリート版を用いることもできるが、トラスパネル桁の上弦材の上部を場所打ち床版に埋め込ませ、トラスパネル桁の一体化を図るのが好ましい。なお、箱桁橋の場合、下床版を同様に設けるが、下床版を設けない構造も可能である。
【0021】
本発明の請求項6の発明は、請求項1から5までのいずれか一つに記載のトラスパネル桁において、ケーブル(PC鋼材)により桁長手方向のプレストレスが導入されていることを特徴とするトラスパネル桁である。
【0022】
ポストテンション方式のPC鋼材により桁長手方向のプレストレスを導入し、複数個のプレキャストトラスパネルからなるトラスパネル桁を一体的に架設する。橋桁の場合には、床版内の内ケーブルや床版に沿って配設した外ケーブルを使用する。
【0023】
本発明の請求項7の発明は、コンクリート構造の桁部材に用いられるプレキャストパネルであり、外周枠(正方形や長方形のフレーム)と、この外周枠内に配置される斜材とから構成され、これら外周枠と斜材とがコンクリートで形成されていることをプレキャストトラスパネルである。
【0024】
本発明の請求項8の発明は、コンクリート構造の桁部材に用いられるプレキャストパネルであり、外周枠(正方形や長方形のフレーム)と、この外周枠内に配置される斜材とから構成され、これら外周枠と斜材とが高強度コンクリート(例えば28日圧縮強度 100〜180 N/mm2 の超高強度コンクリート)で形成され、前記斜材または外周枠には緊張鋼材(PC鋼材)によりプレストレスが導入されていることをプレキャストトラスパネルである。
【0025】
上記のプレキャストパネルは、寸法等の諸元を数種類に規格化・製品化し、適用支間長に合わせて適宜組み合わせて使用できるようにするのが好ましい。
【0026】
以上のような構成において、高強度コンクリート等のフレームと斜材からなるプレキャストトラスパネルを工場や現場製作ヤードで製作し、必要に応じてトラス部材にプレテンション方式等でプレストレスを導入して補強し、これを架設場所に搬入し、箱桁のウェブや梁の位置に設置する。(1) パネル同士は機械式せん断キー等で接合し、(2) 連続したトラスパネル桁の上に場所打ち等の床版を設け、(3) 必要に応じてポストテンション方式で桁長手方向のプレストレスを導入することにより、橋桁やスラブ等が構築される。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、以上のような構成からなるので、次のような効果が得られる。
【0028】
(1) 橋梁等の桁部材を構成するプレキャストトラスパネルをフレームと斜材とからなるトラス形状とすることにより、必要な強度を確保した上で桁部材の軽量化を図ることができ、さらにトラス部材に超高強度コンクリートを使用しプレストレスを導入することにより、高いせん断抵抗性が確保できるため、桁部材の薄肉化を図ることができる。これにより、桁部材の重量の大幅な軽減が図られ、建設コストの大幅な低減が期待できる。
【0029】
(2) コンクリート製のトラスパネルを用いることで、ウェブが鋼部材の複合構造と比較して、コストのかかる鋼部材の製作加工が不要となり、防錆対策やその維持管理コストが省けると共に、現場溶接等の煩雑さも無くなり、施工性の向上・工期の短縮、コストの低減を図ることができる。
【0030】
(3) フレームと斜材からなるプレキャストトラスパネルを用いることで、ウェブが鋼管トラスの複合構造と比較して、トラスを構成する部材の数を大幅に低減することができ、床版接合部等の補強も不要となり、施工性の向上・工期の短縮、コストの低減を図ることができる。
【0031】
(4) フレームと斜材からなるプレキャストトラスパネルを接合してトラスパネル桁を形成することにより、連続一体化したフレームで床版と連続的に接合することができ、床版に生じる局部的な応力を軽減し、接合部構造を簡便なものとすることができる。
【0032】
(5) プレキャストトラスパネル同士の接合に機械式せん断キーを採用すれば、パネル製作および架設の合理化・簡素化を図ることができる。
【0033】
(6) トラス部材をプレキャスト化することで、ウェブの高品質化が図られると共に、現場におけるウェブ施工のための型枠作業・コンクリート打設作業などが省略され、施工の省力化・工期の短縮、コストの低減を図ることができる。
【0034】
(7) ウェブのせん断補強としてのトラス部材のPC鋼材をプレテンション方式とすれば、ポストテンション方式に対し、グラウト作業が不要となり、施工の省力化および耐久性の向上が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。この実施形態は、道路橋や鉄道橋等のプレストレストコンクリート(PC)橋に適用した場合である。図1は本発明のトラスパネル桁をウェブに用いた橋桁の基本構造を示す側面図である。図2は本発明のトラスパネル桁をウェブに用いたPC箱桁橋の一例を示す斜視図である。図3は本発明で用いるトラス形式の例を示す側面図である。図4、図5は、本発明で用いるパネルの接合キーの例を示したものである。図6は本発明のトラスパネル桁を橋の横桁に適用した例を示す正面図である。図7は下床版のない橋の例を示す正面図である。
【0036】
図1に示すように、橋梁上部構造のウェブ1に超高強度コンクリートAにより製作したトラス形状のプレキャストトラスパネル10を用いる。このパネル10は、外周枠としての四角形のフレーム11と、このフレーム11の対角線位置に一体的に配置される斜材12とから構成されている。フレーム11は、上下の二辺、左右の二辺がそれぞれトラスの上下弦材11a、鉛直材11bを構成する。フレーム11の形状は、一辺の長さが1〜3m程度の基本的に正方形であり、斜材12の角度は45度とするが、必要に応じて長方形とすることもある。
【0037】
超高強度コンクリートAは、例えば特許文献2に記載されている材料諸元および性能の超高強度コンクリート(28日圧縮強度 100〜180 N/mm2 )を用いることができる。また、150 N/mm2 クラスの超高強度コンクリートが好ましい。
【0038】
トラス構造とすることで、部材(フレーム11および斜材12)は軸力が支配的な部材となり、特に圧縮力が作用する部材については高い圧縮強度を有する超高強度コンクリートの性能を活かすことができる。さらに、必要に応じて、引張力が作用する部材にはPC鋼材13によりプレテンションを与えて補強する。引張材にプレテンションを導入する際には、PC鋼材とコンクリートの付着(PC鋼材の定着に必要な長さ)が課題となるが、超高強度コンクリートは普通強度のコンクリートに比較して付着性能にも優れており、特許文献2の超高強度コンクリートは自己収縮量が少ないため、効率の良いプレストレス導入が行える。なお、このようなプレテンション方式に限らず、パネル製作時にシース孔を設けておけば、ポストテンション方式とすることも可能である。
【0039】
このようなプレキャストトラスパネル10を面が橋軸方向に平行となるように立てて配置し、フレーム11の鉛直材11b同士を接合キー14により接合して橋軸方向に連続するトラスパネル桁すなわちトラスパネルウェブ1を形成する。トラスパネルウェブ1の上弦材11aの上には上床版2を場所打ちし、トラスパネルウェブ1を一体化し、ポストテンション方式のPC鋼材15を配置し、橋軸方向のプレストレスを導入する。
【0040】
トラスパネルウェブ1のトラス形式は、図3に例示するようなトラス形式を採用することができる。図3(a) は、ハウトラスであり、トラス桁に作用するせん断力に対して、斜材12には圧縮力が作用し、鉛直材11bには引張力が作用する。図3(b) は、プラットトラスであり、斜材12には引張力が作用し、鉛直材11bには圧縮力が作用する。図3(c) は、ワーレントラスであり、斜材12と鉛直材11bには、圧縮力と引張力が交互に作用する。なお、これに限らず、その他のトラス形式を採用することもできる。例えば、斜材12は軽量化の点では1本が好ましいが、2本配置したダブルワーレントラスでもよい。
【0041】
接合キー14には、例えば図4に示す機械式せん断キーを用い、パネル製作の省力化を図る。この機械式せん断キー14は、雄型キー14aと雌型キー14bをパネル製作時に予め埋設しておき、雄型キー14aの突出部を雌型キー14b 内に嵌め込むことで接合するものである。図示例に限らず、その他の機械式せん断キーでもよい。また、図1では、機械式せん断キー14をフレーム11の上下に配置しているが、これに限らず、その他の配置でもよい。また、図5に示すような、多段形や波形のコンクリートせん断キー20を用いてもよい。
【0042】
また、プレキャストトラスパネル10は、寸法等の諸元を数種類に規格化・製品化し、適用支間長に合わせて適宜組み合わせて使用できるようにする。
【0043】
以上のようなプレキャストトラスパネル10からなるトラスパネルウェブ1を図2に示す箱桁構造のプレストレストコンクリート橋に適用する場合、次のような手順で施工を行う。
【0044】
(1) プレキャストトラスパネル10を工場または現場製作ヤードにおいて製作し、これを架設場所に搬入し、主桁のウェブにあたる位置に設置し、トラスパネルウェブ1を形成する。パネル10を配置する向き(斜材12の向き) は設計に応じて任意に設定できる(図3参照) 。
【0045】
(2) 上床版2と下床版3を場所打ち施工で構築し、桁として一体化した後、橋軸方向にポストテンション方式でプレストレスを導入し、主桁を構築する。ポストテンション方式のPC鋼材には、床版に配置する内ケーブル4や外ケーブル5を用いることができる。トラスパネルウェブ1の橋軸方向に連続する上弦材部分が上床版2に埋設され、下弦材部分は内側に突出する厚肉部分とし、この部分を鉄筋等を介して下床版3に接合する。なお、橋梁架設工法は、張出し架設工法、押出し架設工法、一括架設工法などを用いることができる。
【0046】
図2はプレキャストトラスパネル10をウェブとして橋軸方向に用いる場合であるが、横桁部材として橋軸直角方向に使用することも可能である。図6はプレキャストトラスパネル10を横桁6に適用した例であり、二枚のパネル10を機械式せん断キー14で接合し、横桁用の短いトラスパネル桁1を形成している。斜材12の配置は正面視でハ字状としているが、これに限らず逆ハ字状等とする場合もある。なお、上下弦材11aはそれぞれ場所打ちの上床版2、下床版3に埋め込ませ、また左右の鉛直材11bは橋軸方向のプレキャストトラスパネル10の端面の接合キーまたは場所打ちコンクリートにより接合されている。
【0047】
また、図2は主桁を箱桁構造(1室箱桁に限らず、2室以上の箱桁も含む)とした例であるが、下床版を設けない構造も可能である。図7は複数の桁を有する合成桁橋の例であり、各桁にトラスパネル桁1を用いる。
【0048】
以上のような構成のトラスパネル桁1の場合、
(1) プレキャストトラスパネル10をフレーム11と斜材12とからなるトラス形状とすることにより、橋桁ウェブの軽量化を図ることができ、さらにこのトラス部材11、12に超高強度コンクリートを使用したプレテンション部材を用いることにより、高いせん断抵抗性が確保できるため、ウェブ厚を減じることが可能となる。これにより、橋梁上部工重量の大幅な軽減が図られ、さらに上部構造だけでなく下部構造の規模の縮小にもつながる。各種橋梁架設工法においては、次のような利点が生じ、橋梁建設工事全体のコストダウンが期待できる。
【0049】
・張出し架設工法:1ブロックの施工長を長くすることができ、張出し施工ブロック数を少なくできるため、工期短縮が可能となる。
・押出し架設工法:押出し装置を含む施工設備を小さくできる。
・一括架設工法:桁の架設機材などの施工設備を小さくできる。
【0050】
(2) コンクリート製のプレキャストトラスパネル10を用いることで、ウェブが波形鋼板等の鋼部材の複合構造と比較して、コストのかかる鋼部材の製作加工が不要となり、防錆対策やその維持管理コストが省けると共に、現場溶接等の煩雑さも無くなり、施工性の向上・工期の短縮、コストの低減を図ることができる。
【0051】
(3) フレーム11と斜材12からなるプレキャストトラスパネル10を用いることで、ウェブが鋼管トラスの複合構造と比較して、トラスを構成する部材の数を大幅に低減することができ、床版接合部等の補強も不要となり、施工性の向上・工期の短縮、コストの低減を図ることができる。
【0052】
(4) フレーム11と斜材12からなるプレキャストトラスパネル10を接合してトラスパネルウェブ1を形成することにより、橋軸方向に連続一体化したフレーム11で上床版2や下床版3と連続的に接合することができ、床版に生じる局部的な応力を軽減し、接合部構造を簡便なものとすることができる。
【0053】
(5) パネル10同士の接合に機械式せん断キー14を採用すれば、パネル製作および架設の合理化・簡素化を図ることができる。
【0054】
(6) トラスパネルウェブ1をプレキャスト化することで、ウェブの高品質化が図られると共に、現場におけるウェブ施工のための型枠作業・コンクリート打設作業などが省略され、施工の省力化・工期の短縮、コストの低減を図ることができる。
【0055】
(7) ウェブのせん断補強としてのPC鋼材13をプレテンション方式とすれば、ポストテンション方式に対し、グラウト作業が不要となり、施工の省力化および耐久性の向上が期待できる。
【0056】
なお、以上は橋梁の橋桁ウェブや横桁に本発明を適用した場合について説明したが、これに限らず、桟橋、歩道橋、スラブ、デッキ構造などにも適用することができる。スラブ等の場合は、プレキャストトラスパネルを平面上で縦横に配置して接合キーで接合し、その上に床版を設けることになる。また、橋桁ウェブ等の場合は超高強度コンクリートを用いる場合を示したが、用途によっては普通コンクリートを用いてもよいものである。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明のトラスパネル桁をウェブに用いた橋桁の基本構造を示す側面図である。
【図2】本発明のトラスパネル桁をウェブに用いたプレストレストコンクリート箱桁橋の一例を示す一部を断面にした斜視図である。
【図3】本発明で用いるトラス形式の例を示す側面図であり、(a) はハウトラス、(b) はプラットトラス、(c) はワーレントラスである。
【図4】本発明で用いるパネルの接合キーの機械式せん断キーの例を示す鉛直断面図である。
【図5】本発明で用いるパネルのコンクリートせん断キーの例を示す側面図・正面図であり、(a) は多段形、(b) は波形である。
【図6】本発明のトラスパネル桁を橋の横桁に適用した例を示す正面図である。
【図7】下床版のない橋の例を示す正面図である。
【符号の説明】
【0058】
1……トラスパネルウェブ
2……上床版
3……下床版
4……内ケーブル
5……外ケーブル
6……横桁
10……プレキャストトラスパネル
11……フレーム(外周枠)
11a…トラスの上下弦材
11b…トラスの鉛直材
12……斜材
13……トラス部材のPC鋼材
14……機械式せん断キー
15……橋軸方向のPC鋼材
20……コンクリートせん断キー
A……超高強度コンクリート


【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造の桁部材に用いられるトラスパネル桁であり、外周枠と、この外周枠内に配置される斜材とから構成され、これら外周枠と斜材とがコンクリートで形成されているプレキャストトラスパネルを複数個接合して構成されていることを特徴とするトラスパネル桁。
【請求項2】
請求項1に記載のトラスパネル桁において、コンクリートに高強度コンクリートが用いられていることを特徴とするトラスパネル桁。
【請求項3】
請求項1または2に記載のトラスパネル桁において、引張りを受ける部分にプレストレスが導入されていることを特徴とするトラスパネル桁。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一つに記載のトラスパネル桁において、プレキャストトラスパネル外周枠の縦材同士がせん断キー手段により接合されていることを特徴とするトラスパネル桁。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一つに記載のトラスパネル桁において、プレキャストトラスパネル外周枠の上弦材が場所打ち床版により一体化されていることを特徴とするトラスパネル桁。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか一つに記載のトラスパネル桁において、ケーブルにより桁長手方向のプレストレスが導入されていることを特徴とするトラスパネル桁。
【請求項7】
コンクリート構造の桁部材に用いられるプレキャストパネルであり、外周枠と、この外周枠内に配置される斜材とから構成され、これら外周枠と斜材とがコンクリートで形成されていることをプレキャストトラスパネル。
【請求項8】
コンクリート構造の桁部材に用いられるプレキャストパネルであり、外周枠と、この外周枠内に配置される斜材とから構成され、これら外周枠と斜材とが高強度コンクリートで形成され、前記斜材または外周枠には緊張鋼材によりプレストレスが導入されていることをプレキャストトラスパネル。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−9449(P2006−9449A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−189390(P2004−189390)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】