説明

トランスファー成形装置の清掃方法

【課題】トランスファー成形装置のプランジャー側面部に付着した樹脂を清掃除去できる清掃方法を提供することを目的とする。
【解決手段】清掃工程では、プランジャー(7)の先端をポット(6)からキャビティ(5)に突出させるとともに、型閉して前記キャビティ(5)が形成される直前の位置で、キャビティ(5)の少なくともポット(6)の配設位置を含む清掃対象エリアを密閉し、供給口(10)から流体を清掃対象エリアの内側に注入し、清掃対象エリアの流体を排出口(11)から外側に排出して清掃する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスファー成形金型を清掃する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トランスファー成形には、タブレット状熱硬化性樹脂材料と液状熱硬化性樹脂材料を対象としたものがあるが、ここでは液状熱硬化性樹脂材料のトランスファー成形プロセスの工程を図10に示す。
【0003】
トランファー成形金型は、適正な温度に制御された固定側金型1と可動側金型2を有している。
図10(a)に示す樹脂供給工程では、可動側金型2が開かれた状態で、ディスペンサー31を用いて液状熱硬化性樹脂材料をプランジャー7が配置されたポット6に供給する。このときプランジャー7は後退した位置に配置されている。
【0004】
図10(b)に示す型閉工程では、樹脂材料供給完了後、ディスペンサー31を金型外に移動させ、可動側金型2を閉じ、可動側金型2に高圧をかける。
図10(c)に示す高圧型締め工程では、プランジャー7を固定側金型1に近付く方向に移動(以後、前進と云う)させる。
【0005】
図10(d)に示す樹脂硬化工程では、樹脂材料に一定圧力を加えた状態で保持する。
樹脂材料硬化が完了した後の型開工程では、 図10(e)に示すようにプランジャー7を後退させるとともに、可動側金型2を開く。
【0006】
図10(f)に示す成形物の取り出し工程では、成形品取り出し装置32を挿入して成形物を取り出す。
なお、タブレット状熱硬化性樹脂材料では、ポット6にタブレット状に固められた樹脂材料を投入する以外は、液状熱硬化性樹脂材料の場合と同様である。
【0007】
このトランスファー成形プロセスにおいて、プランジャー7をエアーシリンダ33によって前進させて樹脂材料に一定圧力を加える図10(c)に示す高圧型締め工程では、液状樹脂材料の硬化がまだ進行しておらず、低粘度の状態にある。
【0008】
図11は一般的な2液性シリコーン樹脂材料の温度に対する粘度曲線である。120℃で温調された金型に樹脂材料を供給した時点で、液状樹脂材料の粘度は2Pa・s以下で、水に近い粘度状態になっている。図12に示す硬化カーブのように、供給された液状樹脂材料はキャビティ5内で硬化反応を起こすが、プランジャー7を前進させて樹脂材料に一定圧を加えるタイミングでは、硬化反応がほとんど進行していない。
【0009】
プランジャー7はポット6内を摺動するためにポット内径に対して適正なクリアランスが設けられている。そのため、ポット内径とプランジャー7との隙間に幾らかの液状樹脂材料が周り込み、液状樹脂材料がプランジャー7の側面部で硬化する。
【0010】
プランジャー7の側面部にて硬化した樹脂材料は、その後のプランジャー7の前後進により、部分的にプランジャー7から剥離し、成形時に成形物に混入し、部分的な光透過率の減衰や、材料強度低下を起こす成形不良の要因となる。
【0011】
そのため特許文献1では、図13に示すように金型34,35を開き、成形品Pをプランジャー36で突き出した状態で、ブラシ37を有した取り出しハンド38を挿入し、成形品Pを吸着すると同時に金型パーティング面に付着した樹脂材料をブラシ37により擦り取っている。
【0012】
また、特許文献2では、図14(a)に示すように清掃用シート39を金型41,42に挟み込み、その状態で図14(b)(c)に示すようにプランジャー43により、キャビティ44内に洗浄樹脂材料45を供給し、成形圧にて清掃用シート39を金型キャビティ面40に張り付かせることにより、金型キャビティ面40に付着した樹脂材料を清掃用シート39に張り付かせて除去している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平9−19950号公報
【特許文献2】特開2004−230604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献1のようにブラシ37で清掃を行う場合、ブラシ37で金型表面やプランジャー表面をこすることにより、それらの磨耗が進行し、金型表面やプランジャー表面に離型性を向上させるためにコーティングを施している場合は、そのコーティングがはがれるといった課題がある。
【0015】
また特許文献2のように洗浄樹脂材料45や清掃用シート39を用いる方法では、洗浄樹脂材料45が高価であり、また洗浄工程に費やす時間のロスが大きいといった問題がある。
【0016】
本発明は前記欠点や課題を解消するもので、プランジャーや金型表面に磨耗による傷等を発生させずに短時間でプランジャー表面に付着硬化した樹脂材料を除去し、集塵することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明のトランスファー成形装置の清掃方法は、第1金型と第2金型で構成したキャビティで前記第2金型に形成されているポットに液状熱硬化性樹脂を配置し、前記第2金型のプランジャーを駆動して前記ポット内の液状熱硬化性樹脂を前記キャビティに押し出し加圧して成形するトランスファー成形サイクルを繰り返して成形するに際し、前記ポットに液状熱硬化性樹脂を供給しない清掃工程では、前記プランジャーの先端を前記ポットから前記キャビティに突出させるとともに、型閉して前記キャビティが形成される直前の位置で、前記キャビティの少なくとも前記ポットの配設位置を含む清掃対象エリアを密閉し、供給口から流体を前記清掃対象エリアの内側に注入し、前記清掃対象エリアの流体を排出口から外側に排出して清掃することを特徴とする。
【0018】
また、本発明のトランスファー成形装置は、第1金型と第2金型で構成したキャビティで前記第2金型に形成されているポットに液状熱硬化性樹脂を配置し、前記第2金型のプランジャーを駆動して前記ポット内の液状熱硬化性樹脂を前記キャビティに押し出し加圧して成形するトランスファー成形装置であって、第1金型と第2金型の内の一方の金型の型閉時の他方の金型との当接面に、型閉して前記キャビティが形成される直前の位置で、前記キャビティの少なくとも前記ポットの配設位置を含む清掃対象エリアを取り囲む外周リングを設け、外周リングには、流体を前記清掃対象エリアの内側に注入する供給口と、流体を前記清掃対象エリアの外側に排出する排出口を設け、前記ポットに液状熱硬化性樹脂を供給しない清掃工程では、前記プランジャーの先端を前記ポットから前記キャビティに突出させるとともに、型閉して前記キャビティが形成される直前の状態で前記外周リングによって密閉された清掃対象エリアに前記供給口から流体を注入し、前記排出口から外側に排出する制御装置を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、清掃工程では、キャビティには狭い空間が形成され、高速なエアー流速を確保されることにより、金型表面およびプランジャー先端部に付着した液状熱硬化性樹脂材料が剥離し易くなり、プランジャーを前後進させることにより、プランジャーの側面に付着した液状熱硬化性樹脂材料が削り取られ、プランジャー側面部の液状熱硬化性樹脂材料の除去が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態1の(a)型開状態の断面図と(b)可動側金型の上面の平面図
【図2】図1(a)の要部の(a)型閉直前の拡大断面図と(b)型閉状態の拡大断面図
【図3】同実施の形態の成形中の型閉状態の断面図
【図4】同実施の形態の清掃工程開始時の断面図と清掃工程中の断面図
【図5】同実施の形態の樹脂カス除去の原理図
【図6】同実施の形態のタイミングチャート図
【図7】同実施の形態のキャビティ面でのエアーの流れの説明図
【図8】本発明の実施の形態2のタイミングチャート図
【図9】本発明の実施の形態6の(a)型開中の断面図と(b)清掃中の断面図および(c)成形中の断面図
【図10】液状熱硬化性樹脂材料のトランスファー成形工程図
【図11】2液性シリコーン樹脂材料の各温度における粘度データ
【図12】2液性シリコーン樹脂材料の硬化データ
【図13】従来例の構成図
【図14】別の従来例の構成図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を各実施の形態に基づいて説明する。
(実施の形態1)
本発明の実施例の構成図を図1(a)(b)〜図7(a)〜(c)に示す。
【0022】
トランスファー成形装置30は、第1,第2金型としての固定側金型1と可動側金型2で構成されている。固定側金型1は、型開閉装置の固定側プレート3に取り付けられている。可動側金型2は前記型開閉装置の可動側プレート4に取り付けられている。固定側金型1と可動側金型2との間に成形物を形成するためのキャビティ5が形成されている。可動側金型2の中央部には供給された樹脂材料を貯めるためのポット6が形成され、ポット6内には樹脂材料をキャビティ5に注入するための可動可能なプランジャー7が内接されている。
【0023】
ここではキャビティ5の平面形状は図1(b)に示すように四角形である。キャビティ5の外周には外周リング8が設けられている。この外周リング8は型開き状態では図1(a)と図2(a)(b)に示すスプリング9によって、キャビティ5のパーティング面Aよりも上方(固定側金型1の側)に突出するように付勢されている。
【0024】
型閉じ状態に移行するために可動側金型2を固定側金型1に近づけて行くと、外周リング8が固定側金型1に当接して、スプリング9の付勢に抗して可動側金型2の内側に押し込まれて、型閉じ状態ではキャビティ5の開口と面一の位置にまで外周リング8が後退する。図3は型閉じ動作を完了し、プランジャー7を駆動して、樹脂材料をキャビティ5に注入した直後の位置関係を示す。
【0025】
外周リング8には、清掃工程で使用するエアー供給口10とエアー排出口11が設けられている。具体的には、外周リング8の対向する辺の一方の辺には、キャビティ5に向かって先端が開口したエアー供給口10が設けられている。外周リング8の対向する辺の他方の辺には、キャビティ5に向かって先端が開口したエアー排出口11が設けられている。エアー供給口10は圧縮エアー源12に接続されている。エアー排出口11は集塵装置13を介して吸引装置14に接続されており、清掃工程においてエアー供給口10から吹き出されたエアーは、プランジャー7に向かって流れて、エアー排出口11から吸引される。
【0026】
図2(a)は図1におけるB部分の型開状態の断面図、図2(b)はその型閉状態の拡大断面を示す。これを比較して分かるように、型閉じ状態では、外周リング8がスプリング9の付勢に抗してパーティング面Aと同じ高さになるまで移動する。これによって型開状態においてエアー排出口11とキャビティ5の側とを接続していた隙間gが、閉塞されている。エアー供給口10とキャビティ5の側とを接続していた隙間gも、同時に閉塞される。
【0027】
型閉じ状態にした後、ポット6内に供給された液状熱硬化性樹脂材料は、プランジャー7を前進させてキャビティ5内に供給して成形を行うが、キャビティ5に液状熱硬化性樹脂材料が供給されるタイミングには、外周リング8によって隙間gが閉塞されているため、成形樹脂がエアー供給口10とエアー排出口11に流入しない。
【0028】
キャビティ5から成形品を排出した後の適当なタイミングに、キャビティ5やプランジャー7の先端部に付着した液状熱硬化性樹脂材料を除去する清掃工程が実行される。
図4(a)(b)と図5(a)〜(f)は、この清掃工程を示す。
【0029】
図1に示した各構成要素の運転は制御装置15によってコントロールされている。成形工程の繰り返し回数が規定回数に達したことを検出した制御装置15は、可動側金型2が固定側金型1に向かって型閉じ動作を行い、図4(a)に示すように外周リング8が固定側金型1に接触した位置で型閉じ動作を終了する。この清掃工程では、ポット6に液状熱硬化性樹脂材料を供給しない。
【0030】
キャビティ5が型閉する直前の図2(a)に示す位置では、外周リング8がスプリング9の付勢力によって固定側金型1に押し付けられて、清掃対象エリアであるキャビティ5を密閉するとともに、外周リング8がパーティング面Aより上方に突出してエアー供給口10及びエアー排出口11が開かれてキャビティ5に連通した状態になっている。この状態で、エアー供給口10から圧縮エアー16a,16b,16cをキャビティ5に吹き込み、エアー排出口11からキャビティ5の圧縮エアーを吸い出す。この期間中に図5(b)に示すようにプランジャー7の先端をキャビティ5の中に少なくとも一回は突出するように制御装置15が駆動する。
【0031】
図5(a)に示すように、プランジャー7の側面、具体的にはプランジャー7の溝部17に、成形工程で使用された樹脂材料Pが圧縮された状態で付着硬化している。清掃工程で図5(b)に示すように、溝部17がキャビティ5に突出するまでプランジャー7を前進させると、溝部17、およびプランジャー7の上部に付着硬化した樹脂材料Pが膨張する。
【0032】
次に、プランジャー7が図5(c)に示すように後退することにより、付着硬化した樹脂材料Pは、溝部17の開始位置にて切断され、ポット6の上面に引っかかり、キャビティ5に残る。キャビティ5に残った樹脂材料Pは図5(d)に示すように、キャビティ5を流れる圧縮エアー16a,16b,16cにより、隙間gとエアー排出口11を介して集塵装置13に運ばれて除去される。
【0033】
なお、プランジャー7に形成された溝部17よりも下側のプランジャー7の外周には、溝18が形成されている。具体的には、溝18は、プランジャー7の軸心を中心に延長された螺旋形状であって、溝18の頂点の径は、溝部17が形成されているプランジャー7の先端部の外周と同径またはほぼ同径である。溝18の頂点と底部との間の深さは、溝部17から離れてエアーシリンダ(図示せず、図1のエアーシリンダ33を参照)に近づくに伴って徐々に浅くなっている。
【0034】
ポット6の内周面に付着して残されていた樹脂材料Pは、図5(d)から図5(e)に示すようにプランジャー7が次に前進した際に、プランジャー7の前進後退によって図5(e)に示すように掻き上げられて、プランジャー7にぶつかる圧縮エアー16a,16b,16cにより剥離され、図5(f)に示されるように同様に隙間gとエアー排出口11を介して集塵装置13に運ばれる。
【0035】
このように、プランジャー7の側面、ポット6の上面、及びキャビティ面3に付着硬化した樹脂材料を圧縮エアー16a,16b,16cにより剥離し、除去できる。
図6に、清掃工程における金型開閉動作、プランジャー7の前後進動作、エアー供給口10から供給する圧縮エアー用バルブのON/OFF、吸引装置14(樹脂カス吸引)用のバルブON/OFFなどのタイミングチャートを示す。TC2:型開き待機時間,TC3:エジェクト時間,TC4:エジェクト待機時間,TC1:金型ブロー時間である。
【0036】
具体的には、圧縮エアー源12および吸引装置14のバルブをオンし、プランジャー7を少なくとも1回以上前後進させる。その後、圧縮エアー源12のバルブをオフし、一定時間経過後に吸引装置14のバルブをオフし、型開きを行う。
【0037】
図7(a)は型開き待機時間:TC2中の圧縮エアーの流れ方向を示し、エアー供給口10から供給された圧縮エアー16a,16b,16cが、キャビティ5を通り、エアー排出口11に向かって流れている。本実施例ではエアー供給口10及びエアー排出口11がそれぞれ3個設けられ、エアー供給口10の1箇所はプランジャー7の中心方向に向き、他の2箇所はプランジャー7から等距離の対称な位置を流れるように向いている。
【0038】
図7(b)に示すように、プランジャー7の中央に向かってキャビティ面を流れて来た圧縮エアー16aは、プランジャー7にぶつかった後に外側に広がって行く。また図7(c)に示すように、プランジャー7の外側を流れて来た圧縮エアー16b,16cは、プランジャー7の下流側が負圧になることにより、プランジャー7の下流側で内側方向に流れを変え、対称な位置を流れてきた圧縮エアー16とぶつかり合う。プランジャー7の中心方向に向かうエアー16aとプランジャー7の側面を流れる圧縮エアー16b,16cを同時に流すと、両者が干渉しあい不均一なエアーの流れが生じる。
【0039】
清掃工程が完了したことを検出した制御装置15は、プランジャー7を図3(a)の位置に復帰させるとともに、次回の成形工程ではポット6に液状熱硬化性樹脂材料を供給し、型閉するとともに、ポット6の液状熱硬化性樹脂材料をプランジャー7で圧縮してキャビティ5に送り込んで成形する。
【0040】
また、エアー排出口11と吸引装置14の間に集塵装置13を設けたので、除去された液状熱硬化性樹脂材料によって吸引装置14の吸引力が低下しない。
このように、プランジャー側面に流れ込み硬化した樹脂材料や、キャビティ面に付着した樹脂材料を除去することが可能であり、例えばエジェクトピンやスライドコアのような摺動を持ち、その部分に樹脂材料の付着や、バリカス等が残るような金型の場合には、エジェクトピンやスライドコアのような摺動を含むエリアを、外周リング8を使用して密閉して清掃対象エリアとすることによって、清掃することができ、長期間にわたって良好な成形品を製造できる。
【0041】
(実施の形態2)
実施の形態1では、エアー供給口10からプランジャー7に向かって吹き出す圧縮エアー16b,16cと、エアー供給口10からプランジャー7の外側に向かって吹き出す圧縮エアー16aを同時に流したが、図8のタイミングチャートに示すように、プランジャー7の中心方向に向かうエアーとプランジャー7の側面部を流れるエアーを交互に流しても良い。図8では、エアー供給口10からプランジャー7に向かって吹き出す圧縮エアーが内側エアーブロー、エアー供給口10からプランジャー7の外側に向かって吹き出す圧縮エアーが外側エアーブローとして示されている。
【0042】
これにより、プランジャー7の上流側とプランジャー7の下流側に位置に付着した液状熱硬化性樹脂材料が剥離し易くなる。
(実施の形態3)
上記の各実施の形態において、プランジャー7の側面に付着していた樹脂材料Pはプランジャー7の前後進による擦れにより、プラス側に電荷した静電気を帯びており、エアー流速がダウンした領域で流路側面に張り付いてしまう可能性がある。
【0043】
このような場合には、イオナイザー装置を介してマイナスイオン化させた圧縮エアーをエアー供給口10に供給することにより再付着を防止できる。
(実施の形態4)
上記の各実施の形態において、エアー供給口10、及びエアー排出口11をスリット状の形状にし、それぞれの口の隙間を最小にすることにより、複数のエアー供給口10、及びエアー排出口11の場合では、各エアー供給口10、及びエアー排出口11の間にエアーの淀みができて付着樹脂の滓が滞留するのを防止できるという効果がある。
【0044】
(実施の形態5)
上記の各実施の形態では外周リング8を可動側金型2に設けたが、固定側金型1に外周リング8を設けて構成することもできる。
【0045】
また、上記の各実施の形態において、外周リング8を可動側金型2に設け、清掃工程では外周リング8が清掃エリアとして全てのキャビティ5の外側を取り囲むように構成したが、固定側金型1に外周リング8を設けて構成することもできる。この場合には、外周リング8を可動側金型2に押し当てて、キャビティ5の一部でポット6を含む一部だけを密閉するように構成して、ポット6とその周辺だけを清掃エリアとすることもできる。
【0046】
(実施の形態6)
上記の各実施の形態では、可動側金型2または固定側金型1に外周リング8をスライド自在に設けたが、可動側金型2または固定側金型1に固定して外周リング8を設けて構成することもできる。図9(a)〜図9(c)は外周リング8を可動側金型2に固定して設けた具体例を示している。
【0047】
この場合、固定側金型1の可動側金型2との当接面には、外周リング8の先端を収容できる凹部19と、型閉直前状態から型閉状態にわたって外周リング8の内周に挿入される環状の突部20が設けられている。清掃工程では、図9(a)に示す型開状態から可動側金型2を固定側金型1に近づけて行き、図9(b)の型閉直前状態において、突部20が外周リング8の内周に嵌り込むことによって清掃エリアが密閉される。この状態では、図9(b)において隙間gがエアー排出口11とキャビティ5との連通口である。エアー供給口10とキャビティ5との連通口も同様に形成されている。さらに、プランジャー7をキャビティ5に突出させるとともに、上記の各実施の形態の場合と同様に、エアー供給口10からキャビティ5に圧縮エアーを吹き出し、キャビティ5の圧縮エアーをエアー排出口11から吸引することによって清掃する。
【0048】
成形工程において図9(c)に示すように型閉させた場合には、可動側金型2が突部20に当接し、突部20の外周面で隙間gが閉じられるように構成されているため、キャビティ5の成形樹脂がエアー供給口10ならびにエアー排出口11に流れ込まない。また、外周リング8の先端は凹部19に収容されるため、型閉を妨げない。
【0049】
上記の各実施の形態では流体が圧縮エアーの場合を説明したが、使用する流体は気体と液体の別は問わない。具体的には、液体またはゾルの溶剤などを清掃対象エリアに供給して清掃することもできる。または液体またはゾルの溶剤の溶剤を清掃対象エリアに供給して清掃した後に、気体を清掃対象エリアに再度供給して繰り返し清掃するように制御装置15を構成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、トランスファー成形装置で製造される成形品の高品質化に寄与する。
【符号の説明】
【0051】
1 固定側金型(第1金型)
2 可動側金型(第2金型)
5 キャビティ
6 ポット
7 プランジャー
8 外周リング
9 スプリング
10 供給口
11 排出口
12 圧縮エアー源
13 集塵装置
14 吸引装置
15 制御装置
16a,16b,16c 圧縮エアー
A パーティング面
g 隙間
P 液状熱硬化性樹脂材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1金型と第2金型で構成したキャビティで前記第2金型に形成されているポットに液状熱硬化性樹脂を配置し、前記第2金型のプランジャーを駆動して前記ポット内の液状熱硬化性樹脂を前記キャビティに押し出し加圧して成形するトランスファー成形サイクルを繰り返して成形するに際し、
前記ポットに液状熱硬化性樹脂を供給しない清掃工程では、
前記プランジャーの先端を前記ポットから前記キャビティに突出させるとともに、型閉して前記キャビティが形成される直前の位置で、前記キャビティの少なくとも前記ポットの配設位置を含む清掃対象エリアを密閉し、
供給口から流体を前記清掃対象エリアの内側に注入し、前記清掃対象エリアの流体を排出口から外側に排出して清掃する
トランスファー成形装置の清掃方法。
【請求項2】
前記第1金型と前記第2金型の内の一方の金型の型閉時の他方の金型との当接面から突出して前記キャビティの外周を取り囲む外周リングの内周面で開口した前記供給口から流体を前記清掃対象エリアの内側に注入し、外周リングの内周面で開口した前記排出口から前記清掃対象エリアの流体を外側に排出して清掃する
請求項1記載のトランスファー成形装置の清掃方法。
【請求項3】
前記清掃工程では、前記プランジャーの複数回の出退を実施する
請求項1記載のトランスファー成形装置の清掃方法。
【請求項4】
前記供給口から前記プランジャーに向かう第1方向に流体を注入するとともに、前記第1方向の横を流れる第2方向にも流体を注入する
請求項1記載のトランスファー成形装置の清掃方法。
【請求項5】
前記供給口から前記第1方向と前記第2方向に、交互に流体を注入する
請求項1記載のトランスファー成形装置の清掃方法。
【請求項6】
第1金型と第2金型で構成したキャビティで前記第2金型に形成されているポットに液状熱硬化性樹脂を配置し、前記第2金型のプランジャーを駆動して前記ポット内の液状熱硬化性樹脂を前記キャビティに押し出し加圧して成形するトランスファー成形装置であって、
第1金型と第2金型の内の一方の金型の型閉時の他方の金型との当接面に、型閉して前記キャビティが形成される直前の位置で、前記キャビティの少なくとも前記ポットの配設位置を含む清掃対象エリアを取り囲む外周リングを設け、
外周リングには、流体を前記清掃対象エリアの内側に注入する供給口と、流体を前記清掃対象エリアの外側に排出する排出口を設け、
前記ポットに液状熱硬化性樹脂を供給しない清掃工程では、前記プランジャーの先端を前記ポットから前記キャビティに突出させるとともに、型閉して前記キャビティが形成される直前の状態で前記外周リングによって密閉された清掃対象エリアに前記供給口から流体を注入し、前記排出口から外側に排出する制御装置を設けた
トランスファー成形装置。
【請求項7】
外周リングを、前記一方の金型の他方の金型との当接面に、出退可能に設け、
前記他方の金型との当接面から外周リングが突出した状態で前記供給口,前記排出口が前記清掃対象エリアに連通し、外周リングが前記他方の金型との当接面からが後退した状態で前記供給口,前記排出口と前記清掃対象エリアとの連通が遮断される
請求項6記載のトランスファー成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−187832(P2012−187832A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53657(P2011−53657)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】