説明

トランスミッションのシフトフォークの操作のためのアセンブリ

【課題】シフトレール(8)に取り付けられたシフトフォーク(1)を少なくとも軸方向に向けられたシフト運動の遂行のために操作する少なくとも1個の操作ユニット(3)を有し、シフトフォーク(1)の双方向又は単方向運動に対してばねが介在するばねマウント構造が設けられている、車両のトランスミッションの少なくとも1個のシフトフォーク(1)の操作のためのアセンブリにおいて、シフトフォーク(1)に対するばねの作用はかわらず、しかも、ごく僅かな軸方向取付けスペースしか必要としないアセンブリを提案する。
【解決手段】ばねマウント構造のばねとして、少なくとも1個の撓みばね(12)を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は請求項1の上位概念(「おいて」書き)で詳しく定義された種類の、車両のトランスミッションの少なくとも1個のシフトフォークの操作のためのアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
トランスミッションで種々の速度レンジを切換えるためのばね付きシフトフォークアセンブリを備えたシフトシステムが、例えば、刊行物米国特許公報US6619153B2により公知である。そのためにシフトレールに軸方向移動可能に取り付けられたシフトフォークが操作ユニットによって操作される。トランスミッションで所望の速度レンジをセットするためにシフトフォークと連動するスリーブが、シフトフォークの軸方向移動によって移動させられる。シフトフォークは圧縮ばねとして形成されたコイルばねを介してシフトレールに取り付けられる。こうしてシフトフォークのシフト運動の双方向に対してばねの介在が実現される。
【0003】
また車両のドライブトレインのためのシフトフォークを操作する同様のアセンブリが、刊行物、米国特許公報US4529080により公知である。このアセンブリでもシフトフォークは圧縮ばねを介してシフトレールに取り付けられている。こうして同じくシフトフォークのシフト運動の双方向に対してばねの介在が実現される。
【0004】
2つの公知のアセンブリの根底には、圧縮ばねとりわけコイルスプリングを使用しているため、双方向についてばねの介在のあるばねマウント(取付)構造を実現するために大きな軸方向取付けスペースが必要であるという欠点がある。このため、不利なことに、アセンブリが取り付けられるトランスミッションの取付けスペースも増加してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許公報US6619153B2
【特許文献2】米国特許公報US4529080
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明の根底にあるのは、車両トランスミッションの少なくとも1個のシフトフォークの操作のための冒頭に述べた類別のアセンブリにおいて、シフトフォークに対するばねの作用はかわらず、しかも、ごく僅かな軸方向取付けスペースしか必要としないアセンブリを提案するという課題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は本発明に基づき請求項1の特徴によって解決される。その他の有利な実施態様が従属請求項及び図面で明かである。
【0008】
そこで、少なくとも軸方向に向けられたシフト運動の遂行のために、シフトレールに取り付けられたシフトフォークを操作する少なくとも1個の操作ユニットを有し、シフトフォークの双方向又は単方向の運動に対してばねが介在するばねマウント(取付)構造(spring mounting)が設けられた、車両のトランスミッションの少なくとも1個のシフトフォークの操作のためのアセンブリが提案される。本発明によれば、少なくとも1個の撓みばね(flexible spring)を用いたシフトフォークの双方向又は単方向運動のためのばねマウント構造が設けられる。ここでいう「撓みばね」は、典型的には、実質的に曲げ応力のみを受け、実質的に捻り応力を受けないようなものである。
【0009】
使用される撓みばねは、例えば、レッグスプリング(leg spring、脚付きばね)、ばねクランプ(spring clamp)等として形成することができ、先行技術で使用される圧縮ばねとりわけコイルスプリングに比して、シフト運動を操作ユニットからシフトフォークへ弾力的に伝達するために、シフトフォークに余計な軸方向取付けスペースが必要でないという大きな利点を有する。この軸方向取付けスペースの利点を実現する他のばね部材等を使用することもできる。
【0010】
発明の有利な実施形態に関連して、シフトレールをほぼ横切って整列された(或いはシフトレール軸線方向に対してほぼ垂直方向に延びる)支持ピンの周りに回転しうるように、レバープレート等をシフトフォークに取り付け、その際レバープレートは撓みばねによってシフトフォークに予圧(プリロード)されており、操作ユニットからレバープレートに伝達されるシフト運動が撓みばねを介してシフトフォークに伝達されるようにすることができる。操作ユニットからシフトフォークへのシフト運動の同様な伝達を実現する別の構成も可能である。
【0011】
発明の実施態様によれば、撓みばね等によるレバープレートからシフトフォークへの力の伝達を実現するために、撓みばねの脚部がそれぞれレバープレートの駆動ピン等に接するようにすることができる。撓みばねとレバープレートの間の他の連動機構を使用することもできる。
【0012】
発明の好ましい改良によれば、操作ユニットがシフトシャフトに固定されたガイドプレート等を備え、ガイドプレートは少なくとも1個のスロットを介してレバープレートの少なくとも1個の操作ピンと連動する。この操作方式によって操作ユニットからシフトフォークへの力の伝達がなるべく取付けスペースをとらずに実現されるから、本発明に基づくアセンブリを設けることによって、トランスミッションを短くコンパクトに構成することもできる。
【0013】
例えば複数のスロットを設けることによって、操作ユニットのガイドプレートで複数のシフトフォークを操作することがとりわけ考えられる。各スロットは、ガイドプレートの回転運動からシフトフォークの軸方向運動が生じるように形成することができる。これは例えばスロットの折れ曲がった形によって可能になる。しかしスロットの別の形も考えられる。2個のシフトフォークが操作ユニットのガイドプレートにより操作される場合は、例えば2つのシフトフォークの一方を双方向又は単方向に有効な(ばねが関与する)ばねマウント構造を備えたシフトフォークとして、2つのシフトフォークの他方をばねマウント構造を有しないシフトフォークとして形成することが可能である。ばねマウント構造を備えたシフトフォークを用いることにより、とりわけシフトスリーブ又はかみ合いクラッチがシンクロナイザなしで操作され、一方で、ばねマウント構造を有しないシフトフォークによってとりわけシンクロナイザ及び/又はロック式シンクロナイザを有するシフトスリーブ又はかみ合いクラッチが操作されるようにすることができる。操作される2つのシフトフォークを双方向又は単方向に有効なばねマウント構造を備えたシフトフォークとして形成するか、もしくは、2つのシフトフォークの一方を双方向に有効なばねマウント構造を備えたシフトフォークとするとともに2つのシフトフォークの他方を単方向に有効なばねマウント構造を備えたシフトフォークとして形成することももちろん可能である。
【0014】
本発明に基づき提案されたアセンブリは任意のトランスミッションで使用することができる。例えばトランスファギヤで超低速ギヤの連結又は切断のために、シフトフォークを使用して当該のシフトスリーブ等を操作することができる。
【0015】
次に図面に基づき発明を詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】シフトフォークの操作のための本発明に基づくアセンブリの可能な実施形態の概略図である。
【図2】操作されるシフトフォークの詳細図である。
【図3】図2の詳細図である。
【図4】シフトフォークに回転可能に取り付けられた撓みばね付きレバープレートの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1にシフトフォーク1、2の操作のためのアセンブリの可能な実施形態が例示されている。その場合シフトフォークはシフトレール8に少なくとも軸方向に移動しうるように取り付けられている。1つのシフトフォークだけ又はその他のシフトフォークも操作することが可能である。
【0018】
本発明に基づくアセンブリは、シフトシャフト4に固定したガイドプレート5を有する操作ユニット3を備えている。図示の実施形態ではガイドプレート5は2つのスロット6、7備えており、これらのスロット6、7は操作されるシフトフォーク1、2にそれぞれ割り当てられている。各スロット6、7に当該のシフトフォーク1、2の操作ピン9、10が通されている。シフトフォーク1はこの場合、双方向の運動に関してばねが介在するようにマウントされたシフトフォークとして形成され、シフトフォーク2にはこの場合ばねの介在はない。ガイドプレート5の旋回運動はスロット7に通された操作ピン10を介してシフトフォーク2に伝達される。そのために操作ピン10をシフトフォーク2に直接固定することができる。図2ないし図4で明かなように、操作ピン9はシフトフォーク1に旋回可能又は回転可能に取り付けられたレバープレート11に固定されている。レバープレート11はシフトレール8をほぼ横切って整列された支持ピン15によりシフトフォーク1に取り付けられている。こうしてガイドプレート5の旋回運動がスロット6に通された操作ピン9によりレバープレート11に伝達される。
【0019】
撓みばね12はこの場合シフトフォーク1の双方向の運動に対して関与するように、或いはシフトフォークの双方向運動における動力伝達経路に介在するように設けられている。撓みばね12は、ばねクランプ、掛け金、レッグスプリング等の形態で形成することができる。撓みばね12の脚部はレバープレート11の、特に図4で明かな駆動ピン13、14に支えられる。こうしてレバープレート11の旋回運動は撓みばね12を介してシフトフォークに弾力的に伝達されるから、シフトフォーク1はシフトスリーブ等の操作のために軸方向に移動させられる。レバープレート11の旋回運動を図4に二重矢印で示唆した。
【0020】
本発明に基づき提案されるアセンブリでシフトフォーク1の軸方向運動を行うために撓みばね12及びこれと結合された伝動機構を使用することによって、最小の軸方向取付けスペースでシフトフォークの双方向の運動に対してばねの介在が実現される。
【符号の説明】
【0021】
1 シフトフォーク
2 シフトフォーク
3 操作ユニット
4 シフトシャフト
5 ガイドプレート
6 スロット
7 スロット
8 シフトレール
9 操作ピン
10 操作ピン
11 レバープレート
12 撓みばね
13 駆動ピン
14 駆動ピン
15 支持ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シフトレール(8)に取り付けられたシフトフォーク(1)を少なくとも軸方向に向けられたシフト運動の遂行のために操作する少なくとも1個の操作ユニット(3)を有し、シフトフォーク(1)の双方向又は単方向運動に対してばねが介在するばねマウント構造が設けられている、車両のトランスミッションの少なくとも1個のシフトフォーク(1)の操作のためのアセンブリにおいて、
少なくとも1個の撓みばね(12)を用いたばねマウント構造が設けられていることを特徴とするアセンブリ。
【請求項2】
レバープレート(11)がシフトレール(8)をほぼ横切って整列された支持ピン(15)の周りに回転しうるようにシフトフォーク(1)に取り付けられており、かつ、レバープレート(11)が撓みばね(12)によりシフトフォーク(1)に予圧されており、これによって、操作ユニット(3)からレバープレート(11)に伝達されるシフト運動が撓みばね(12)を介してシフトフォーク(1)に伝達されることを特徴とする、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項3】
撓みばね(12)の脚部がそれぞれレバープレート(11)の駆動ピン(13、14)に接することを特徴とする、請求項2に記載のアセンブリ。
【請求項4】
操作ユニット(3)がシフトシャフト(4)に固定されたガイドプレート(5)を備えており、ガイドプレート(5)が少なくとも1個のスロット(6)を介してレバープレート(11)の少なくとも1個の操作ピン(9)と連動することを特徴とする、請求項2またはは3に記載のアセンブリ。
【請求項5】
スロット(6)が、ガイドプレート(5)の回転運動からシフトフォーク(1)の弾力的な軸方向運動が生じるように形成されていることを特徴とする、請求項4に記載のアセンブリ。
【請求項6】
撓みばね(12)がレッグスプリングまたはばねクランプとして形成されていることを特徴とする、請求項1から5のうちのいずれか一項に記載のアセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−96352(P2010−96352A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−241288(P2009−241288)
【出願日】平成21年10月20日(2009.10.20)
【出願人】(592179300)ツェットエフ、フリードリッヒスハーフェン、アクチエンゲゼルシャフト (56)
【氏名又は名称原語表記】ZF FRIEDRICHSHAFEN AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】