説明

トリアシルグリセロール分子中の脂肪酸分布が改変されたヒマワリの油、種子及び植物

本発明は、(i)全脂肪酸含有量に対して少なくとも12%のステアリン酸を含有するヒマワリ種子から直接的に入手可能なヒマワリ油であって、sn−1位とsn−3位との間の飽和脂肪酸の分布係数αが少なくとも0.38であることを特徴とする該ヒマワリ油、及び(ii)全脂肪酸含有量に対して少なくとも12%のステアリン酸を含有するヒマワリ種子から直接的に入手されるヒマワリ油であって、該油中のオレイン酸の含有量がリノール酸の含有量よりも高いときに、sn−1位とsn−3位との間の飽和脂肪酸の分布係数αが少なくとも0.28であることを特徴とする該ヒマワリ油に関する。本発明は、該油を生産するヒマワリの植物と種子及び該油の用途にも関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全脂肪酸含有量に対して少なくとも12%のステアリン酸を有すると共に、野生型のヒマワリの種子から得られる油の場合に比べて、トリアシルグリセロール(TAG)分子のsn−1位とsn−3位との間に改変された脂肪酸分布を有するヒマワリの種子から直接的に得られるヒマワリ油に関する。本発明は、以下に説明する特性を有する内因性油を含有するヒマワリの植物と種子にも関する。さらにまた、本発明は、このようなヒマワリ植物の生育方法とヒマワリ油の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
油脂類は主としてトリグリセリド、即ち、グリセロール主鎖及びグリセロールの3個のヒドロキシル基がエステル化された3種の脂肪酸から構成された分子から成る(ガンストーンら、1994年)。油脂類の化学物理的特性及び栄養学的特性は、油脂類の脂肪酸組成及び異なるトリグリセリド種におけるこれらの脂肪酸の分布によって決定される。脂肪酸の3つの立体化学的位置はsn−1,sn−2及びsn−3と呼ばれている。油脂類が特定の温度条件下で固体状であるということ、又は良好な安定性を示すということは、脂肪酸中の低濃度の二重結合に関連している。脂肪種子中に存在する主要な脂肪酸は、18個の炭素原子と2個の二重結合を有するリノール酸(18:2)及び18個の炭素原子と1個の二重結合を有するオレイン酸(18:1)であり、これらの脂肪酸は油脂類を室温下では液状にする。大豆やカノラ(canola)等から得られる油は、18個の炭素原子と3個の二重結合を有するリノレン酸(18:3)も含有する。この種の脂肪酸は、1個若しくは複数の二重結合を有する不飽和脂肪酸である。植物油は少量の二重結合を含まない飽和脂肪酸、例えば、16個の炭素原子を有するパルミチン酸(16:0)、18個の炭素原子を有するステアリン酸(18:0)、20個の炭素原子を有するアラキン酸(20:0)及び22個の炭素原子を有するベヘン酸(22:0)等も含有する。
【0003】
脂肪酸の種類及びトリグリセリド分子中での位置に応じて、不飽和脂肪酸は健康に対して有益であり、飽和脂肪酸は健康に対して無益若しくは有害である。これに対して、一部の熱帯性植物油及び動物油は短鎖若しくは中鎖を有する脂肪酸、例えば、炭素原子数が12のラウリン酸(12:0)及び炭素原子数が14のミリスチン酸(14:0)を含有しており、ミリスチン酸は健康に対して最も有害である。パルミチン酸やステアリン酸は温帯性植物油中に含まれる一般的な飽和脂肪酸である(下記の表1参照)。健康に対して、パルミチン酸は僅かに有害であると考えられており、ステアリン酸は無益であると考えられている。
【0004】
しかしながら、トリグリセリド分子中の脂肪酸の位置に依存する第二の特性を考慮することが非常に重要である。飽和長鎖脂肪酸は、グリセロール分子の中央の位置(sn−2)に結合している場合には、あまり有害ではない。脂肪の消化中、膵臓リパーゼはグリセロール分子のsn−1位とsn−3位に存在する脂肪酸を加水分解する。中央の位置に存在する脂肪酸はグリセロール分子に結合した状態を維持してモノグリセリドを形成し、該モノグリセリドは洗浄特性を有し、完全に同化される。一方、sn−1位とsn−3位から遊離した脂肪酸はカルシウム若しくはマグネシウムと結合して不溶性の金属塩を形成するので、これらの金属塩の腸内吸収は非常に困難となる。この結果、これらの塩類は排出される。下記の表1に示すように、パーム油を除く植物油中の全ての飽和脂肪酸はsn−2位には存在しない。このため、この種の脂肪酸は、ココア脂等の場合のようにパルミチン酸を高濃度で含有するか、又はオリーブ油等の場合のようにパルミチン酸を中濃度で含有するが、コレステロールの濃度に対して悪影響は及ぼさない。
【0005】
【表1】

【0006】
食品工業においては、多数の食料調製品のために良好な安定性を有する可塑性若しくは固体状の脂肪(例えば、動物脂肪)が必要とされている。ベーカリー、ペーストリー、マーガリン及びスプレッドに対しては固体状脂肪が必要である。一方、油をたっぷり使用する揚げ物食品工業においては、熱酸化に対して耐性がある液状油が要求される。80年代には、栄養学の専門家の推薦と消費者の要求に応じて、食品工業において使用される油脂は、動物脂肪から植物油に変換された。このような植物油は、食料調製品に使用するために適した特性を有していない。このような油は、部分的な水素化及び/又はエステル交換によって化学的に変性されなければならない。水素と重金属触媒を使用する水素化反応によって不飽和脂肪酸の二重結合の濃度を低減させることができる。この反応中においては、飽和脂肪酸が増加するが、同時に、人工的な脂肪酸のシス異性体とトランス異性体が増量する。トランス異性体は、不飽和脂肪酸ではあるが、飽和脂肪酸に類似する物理的特性を有する。これらのトランス脂肪酸の主要な問題点は、コレステロールの濃度の点で動物由来の飽和脂肪酸よりも有害であるだけでなく、一部の必須脂肪酸の欠乏又はある種の癌(例えば、女性の乳癌)をもたらすことである。
【0007】
化学的なエステル交換反応によって、トリグリセリド分子内での全脂肪酸の再分布がもたらされる。その後の精留によって、飽和トリグリセリドに富む留分を得ることができる。この処理によって、健康に有益な植物油は、多数の飽和脂肪酸がsn−2位に存在する健康に有害な脂肪(例えば、ラード)へ変換される。この油は低密度の悪性コレステロールを増加させる。結局、植物油を化学的に変性させるために使用されるこれらの処理方法は、植物油の特性を健康に対して有害なものへ変換させる点で、健康に対して特に有益性をもたらす手段ではない。
【0008】
以上の科学技術的データと栄養学的データを考慮するならば、最良油は、飽和脂肪酸としてステアリン酸(好ましくは、sn−1位とsn−3位を介してグリセロール主鎖に結合したステアリン酸)を高濃度で含有すると共に、不飽和脂肪酸として、3つのsn位置に結合したオレイン酸若しくはリノール酸を含有する天然の植物油である。
【0009】
脂肪酸を生産するいくつかのヒマワリ突然変異体系統が選択され、突然変異誘発プログラム後に固定されている(オソリオら、1995年)。これらの突然変異体の一部のものは、種子油中に高濃度の飽和脂肪酸を含有する。即ち、CAS−3はステアリン酸を少なくとも26%含有し、CAS−4及びCAS−8はステアリン酸を少なくとも中程度の濃度(12〜16%)で含有する。該突然変異体及び生化学的研究と組換え技術によって選択された別の突然変異体(例えば、CAS−29〜CAS−31)は広範囲の胚形質蓄積(germplasm collection)をもたらす(以下の表2参照)。
【0010】
【表2】

【0011】
これらの突然変異体の遺伝学的特性決定によれば、次のことが示されている。即ち、改変された脂肪酸濃度の遺伝は配偶体遺伝であって、該遺伝は減数遺伝子座における対立遺伝子によって制御され、これによって、少数の戻し交配サイクルにおいて標的となる同系交配系統への適当な転移がもたらされる。又、これらの突然変異体の特性の一時的な空間的発現(spatial expression)の研究によれば次のことが示されている。即ち、突然変異体の特性は、種子の形成中においてのみ発現され、生育温度によってはほとんど影響されず、又、植物組織中においては発現されない。これらのヒマワリの突然変異体系統は、アラビドプシスやカノラの高ステアリン酸突然変異体において見られるような付随的な負の効果はもたらさない。
【0012】
植物トリグリセリドはグリセロール−3−P経路(ケネディー経路)によって生産される。最初は、アシル−CoAエステルによるsn−1位とsn−2位におけるグリセロール3−ホスフェートの2つのアシル化がおこなわれ、それぞれグリセロール3−ホスフェートアシルトランスフェラーゼ(GPAT)酵素及びリソホスファチデートアシルトランスフェラーゼ(LPAAT)酵素によってホスファチデートが生産される(図1参照)。次いで、ホスファチデートはホスファチデートホスフォヒドロラーゼによる加水分解によってジグリセリドに変化し、該ジグリセリドはアシル−CoAによってさらにアシル化されてトリグリセリドに変化する[ジグリセリドアシルトランスフェラーゼ(DAGAT)によって触媒される反応]。最後の酵素はトリグリセリドの生合成のみに関与する。アシルトランスフェラーゼ類は脂肪酸の立体化学的分布を調整する。
【0013】
ヒマワリの突然変異体におけるトリグリセリド組成の研究過程においては、38種の異なる分子種が見出されている(フェルナンデス−モヤら、2000年)。しかしながら、予想外なことには、高ステアリン酸系統によって合成されたトリグリセリドは、一般的には全ての油に対して適用されると考えられていたウァンダー・ウァル理論(1960年)から予測されるようなsn−1位とsn−3位におけるランダム分布を示さなかった。この例外的な分布の原因となる酵素は、アシル−CoAプール(pool)とグリセロール−3−Pからトリグリセリドを合成したアシルトランスフェラーゼである。植物系におけるトリグリセリド合成においては、飽和脂肪酸はグリセロール分子のsn−2位には結合しないということを考慮するならば(アルバレス−オルテガら、1997年)、このような効果をもたらす特殊な酵素はグリセロール−3Pアシルトランスフェラーゼ及び/又はジギリセリドアシルトランスフェラーゼでなければならない。
【0014】
本発明をもたらした研究においては、TAGのsn−1位とsn−3位における飽和脂肪酸の相対的分布を計算する数学的係数アルファS(αS)が開発された。αSの値は0〜0.5の範囲にあり、「0」は、これらの位置の一方には飽和脂肪酸が存在しないことを意味し、「0.5」は、両方の位置における飽和脂肪酸含量が等しいことを意味する。トリグリセリド分布がウァンダー・ウァルの理論に従うならば、αの値は0.5であり、異なる脂肪酸がトリグリセリド分子中に均一に分布する。このことは、sn−1位とsn−3位との間の飽和脂肪酸分布の場合には非常に重要である。何故ならば、これらの位置の一方により多くの飽和脂肪酸が存在するならば、αは0.5よりも小さな値になり、ジ飽和(disaturated)トリグリセリドの量は、理論的に予測される量よりも少なくなる。このことが、本発明者がヒマワリ油(主として、ステアリン酸の含有量が12%よりも高いヒマワリ油)において見出した知見である。スプレッド、マーガリン、ショートニング、ベーカリー及びペーストリー等のための可塑性脂肪を調製するのに有利なジ飽和トリグリセリドの最大量は、α=0.5のときに得られる。トリグリセリド分子中のsn−1位とsn−3位における飽和脂肪酸分布においてαがこの値よりも小さくなるほど、該油はこれらの特別な食品用原料としては一層不適当となる。従って、特定の用途に対しては、TAGのsn−1位とsn−3位における飽和脂肪酸の有利な相対的分布を示すヒマワリの突然変異体は、α値の計算に基づいて選択することができる。
【0015】
この係数は、トリグリセリドの全飽和脂肪酸組成(S)及びsn−2位における飽和脂肪酸組成(S)[これらの2つのファクターはアルバレス−オルテガらによる方法(1997年)によって計算することができる]並びにトリグリセリド分子種の組成[このファクターはフェルナンデス−モヤらによる方法(2000年)によって計算することができる]を知ることによって計算された。
【0016】
TAGの各々の位置(S,S及びS)における飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の百分率(SとSの関数)を以下の表3に示す。
【表3】

【0017】
TAGの異なるサブクラス、即ち、トリ飽和サブクラス(SSS)、ジ飽和サブクラス(SUS)、モノ飽和サブクラス(SUS)及びトリ不飽和サブクラス(UUU)の百分率は、通常は下記の式(i)〜(iv)用いて計算される:
【0018】
【数1】

【0019】
表3に記載のS、S、S、U、U及びUの値を用いることにより、分布係数αは下記の推論によって計算することができる。
【0020】
a)トリ飽和TAG種(SSS)に関する式(i)中のS、S及びSに表3に記載の対応する値を代入することによって次式(v)を得る:
【数2】

【0021】
式(i)を書き換えた式S−10000SSS(%)=0に式(v)のS値を代入すると次式が得られる:
【数3】

この式におけるαの値はax+bx+c=0の形式の二次方程式(a=−bであるために、この方程式は簡単化される)の解として、次式から求めることができる:
【数4】

【0022】
上記の二次方程式において、a=−9S+6SS−Sであり、b=9S−6SS+Sであり、c=10000SSS(%)であり、又、SSS(%)は種子/油中のトリ飽和TAGの全量を示す。
【0023】
b)ジ飽和TAG種(SUS)に関する式(ii)中のS、S、S、U、U及びUに表3に記載の対応する値を代入することによって次式(vi)〜(viii)を得る:
【数5】

【0024】
式(ii)を書き換えた式(U+S+S)−10000SUS(%)=0に式(vi)、(vii)及び(viii)における対応する値をそれぞれ代入すると、αに関する二次方程式が得られる:
【数6】

この式におけるαの値はax+bx+c=0の形式の二次方程式(a=−bであるために、この方程式は簡単化される)の解として、次式から求めることができる:
【数7】

【0025】
上記の二次方程式において、a=600SS−18SS+27S−900S−100S+3Sであり、c=300SS−100S−10000SUS(%)であり、又、SUS(%)は種子/油中のジ飽和TAGの全量を示す。
【0026】
c)モノ不飽和TAG種(SUU)に関する式(iii)中のS、S、S、U、U及びUに表3に記載の対応する値を代入することによって次式(ix)〜(xi)を得る:
【数8】

【0027】
式(iii)を書き換えた式(S+U+U)−10000SUU(%)=0に式(ix)、(x)及び(xi)における対応する値をそれぞれ代入すると、αに関する二次方程式が得られる:
【数9】

この式におけるαの値はax+bx+c=0の形式の二次方程式(a=−bであるために、この方程式は簡単化される)の解として、次式から求めることができる:
【数10】

【0028】
上記の二次方程式において、a=−1200SS+18SS−27S+1800S+200S−3Sであり、c=−600SS+200S+30000S−10000SUU(%)であり、又、SUU(%)は種子/油中のモノ飽和TAGの全量を示す。
【0029】
d)トリ不飽和TAG種(UUU)に関する式(iv)中のU、U及びUに表3に記載の対応する値を代入することによって次式(xii)を得る:
【数11】

【0030】
式(iv)を書き換えた式U−10000UUU(%)=0に式(xii)におけるUの値を代入すると、αに関する二次方程式が得られる:
【数12】

この式におけるαの値はax+bx+c=0の形式の二次方程式(a=−bであるために、この方程式は簡単化される)の解として、次式から求めることができる:
【数13】

【0031】
上記の二次方程式において、a=600SS−6SS+9S−900S−100S+Sであり、c=300SS−100S−3000S+1000000−10000UUU(%)であり、又、UUU(%)は種子/油中のトリ不飽和TAGの全量を示す。
【0032】
TAG種のGLCによる測定における実験誤差による偏差を避けるために、SSSから計算されるα値(αSSS)、SUSから計算されるα値(αSUS)、SUUから計算されるα値(αSUU)及びUUUから計算されるα値(αUUU)の加重平均値「αS」を次式によって定義した:
【数14】

【0033】
トリグリセリド分子のsn−1位とsn−3位との間の飽和脂肪酸のランダム分布においては、各々の飽和脂肪酸の50%は各々の位置に存在すべきであり、この条件は、最大量のSUSトリグリセリド分子(この場合、Sは飽和脂肪酸を示し、Uは不飽和脂肪酸を示す)を得るためには最適である。図2は、ヒマワリ油中の種々のTAG種の割合を示すもので、sn−1位とsn−3位との間にランダム分布が発生すると、飽和脂肪酸が増加することが理解される。図2に示す曲線は、αの値を0.5とし、sn−2位のヒマワリ飽和脂肪酸の含有量としてはアルバレス−オルテガらによる文献(1997年)に記載の値を用いると共に、前記の式(i)、(ii)、(iii)及び(iv)における全飽和脂肪酸量の値を増加させることによって描いた曲線である。
【0034】
油のα係数はTAG分子の3つのsn位における脂肪酸組成を化学的に分析することによっても計算することができる。この分析は、ラークソとクリスティによって提案された方法(1990年)又はタカギとアンドウによって提案された方法(1991年)に従っておこなうことも可能である。又、これらの方法によれば、当該分子の3つの位置における脂肪酸の含有量を知ることはできるが、このためには多量の試料を必要とし、本発明に係る方法の場合のように、雑種種子のような少量の試料には適用できない。このような場合、当該式は次のように表される:
【数15】

【0035】
本発明者は、実存するヒマワリ油に含まれるTAGのこのような分布について検討した。予想されたように、得られたデータによれば次のことが判明した。即ち、飽和脂肪酸(S)は主として通常のヒマワリ油及び高飽和ヒマワリ油中のグリセロール分子のsn−1位とsn−3位に位置し、sn−2位には非常に少量の飽和脂肪酸が位置する。この位置おける主要な脂肪酸はオレイン酸とリノール酸であり、このことは予想された通りであり、又、アルバレス−オルテガらによるデータ(1997年)とも一致する。しかしながら、アシル基は、1,3−ランダム、2−ランダム理論(ウァンダー・ウァル、1960年)に従って分布しなかった。飽和脂肪酸(パルミチン酸、ステアリン酸)は均一には分布しなかった。これらの結果は従来のデータ(レスケら、1997年)、即ち、主としてステアリン酸の含有量が、市販のヒマワリの場合に比べて(4.8%)増加するときには(11%)、飽和脂肪酸の位置はsn−1位よりもsn−3位のほうが優位になるということを示すデータと一致する。
【0036】
ステアリン酸の含有量とオレイン酸/リノール酸比が異なるヒマワリ油における高オレイン酸から高リノール酸までのTAG分布を図3に示す。次のことが判明した。即ち、1,3−ランダム、2−ランダム理論を適用することによってsn−2位の組成と全脂肪酸含有量の測定値に基づいて異なる飽和脂肪酸含有量に対して予測されたヒマワリのTAG種群(SSS,SUS,SUU及びUUU)の理論値は、分析された種子において測定されたTAG組成とは異なる。TAG組成はGLCによって決定し、これらのTAG種のデータは不飽和度によって分類した(フェルナンデス−モヤら、2000年)。
【0037】
図3から明らかなように、ヒマワリの飽和脂肪酸はTAGに関しては非対称分布を示し、SUUに対して得られる値は予測値よりも常に高く、又、SUSとUUUに対して得られる値は、sn−1位とsn−3位における非特異的分布によって予測される値よりも低くなる。
【0038】
これらの結果は、ステアリン酸の含有量が高いヒマワリの突然変異体のTAG種[該種はリノール酸と1種の飽和脂肪酸を、1,3−ランダム、2−ランダム理論(フェルナンデス−モヤら、2000年)による予測値よりも多く含有する]に関する従来の結果とも一致する。TAG種のSUUの増加とUUUの減少は、油中のステアリン酸の全量と直接的な相関性があった。
【0039】
対照及び高ステアリン酸突然変異体系統におけるsn−1位とsn−3位との間の分布係数(α)の計算値を以下の表4に示す。表4から明らかなように、分布係数αは、リノール酸の含有量がオレイン酸の含有量よりも高い場合には常に0.19〜0.37の範囲にあり、一方、オレイン酸の含有量がリノール酸の含有量よりも高い場合には0.15〜0.27の範囲にある。従って、0.38よりも高い分布係数を示すヒマワリ油が要請されている。
【0040】
【表4】

【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0041】
本発明は、全脂肪酸含有量に対してステアリン酸を少なくとも12%(好ましくは、少なくとも20%)のステアリン酸を含有するユマワリ種子から直接的に得られるヒマワリ油であって、TAG分子のsn−1位とsn−3位との間の飽和脂肪酸の分布係数αとして少なくとも0.38(好ましくは、少なくとも0.42,最も好ましくは、少なくとも0.46)の値を示すヒマワリ油を提供するためになされたものである。
【0042】
ハワワリ油中のオレイン酸の含有量がリノール酸の含有量よりも高くなると共に、全脂肪酸含有量に対するステアリン酸の含有量が少なくとも12%(好ましくは少なくとも20%)になると、TAG分子のsn−1位とsn−3位との間の飽和脂肪酸の分布係数αは少なくとも0.28(好ましくは、少なくとも0.32,最も好ましくは少なくとも0.36)となる。
【0043】
本発明は、上記の特性を有するヒマワリ種子から入手可能な内因性油を含有する種子を実らせるヒマワリ植物、及び該ヒマワリ植物によって生産されるヒマワリ種子を提供する。
【0044】
本発明の別の目的は、全脂肪酸含有量に対して少なくとも12%のステアリン酸を含有すると共に、TAG分子のsn−1位とsn−3位との間の飽和脂肪酸の分布係数αとして、オレイン酸の含有量がリノール酸の含有量よりも高いときに少なくとも0.38又は0.28の値を示す内因性油を含有する種子を実らせる植物の生育方法を提供することである。
【0045】
本発明のさらに別の目的は、sn−1位とsn−3位との間の飽和脂肪酸の上記分布係数を示すと共に、その他の望ましい特性を有する雑種植物とその子孫を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0046】
本発明は、全脂肪酸含有量に対して少なくとも12%のステアリン酸を含有するヒマワリ種子から直接的に入手可能なヒマワリ油であって、sn−1位とsn−3位との間の飽和脂肪酸の分布係数αが少なくとも0.38であること、及び該種子が下記の工程 a)〜 j)を含む方法によって得られることを特徴とする該ヒマワリ油に関する:
a)油中の全脂肪酸含有量に対して少なくとも12%のステアリン酸を含有する油を含む種子を供給し、
b)0.38よりも大きな分布係数αを示す油を含む種子を供給し、
c)上記の工程 a)及び b)で供給された種子から植物を生育させた後、該植物を交配させ、
d)F1子孫種子を収穫し、
e)F1子孫種子を蒔いて植物を生育させ、
f)生育した植物を自家受粉させてF2種子を実らせ、
g)得られるF2種子を、ステアリン酸の含有量が少なくとも12%であると共に、分布係数αが少なくとも0.38であるという条件を満たすかどうかを調べる試験に付し、
h)ステアリン酸の含有量及び分布係数αが所望のレベルにある種子を蒔いて植物を生育させ、
i)生育した植物を自家受粉させてF3種子を実らせ、
j)随意に、ステアリン酸の含有量及び分布係数αが所望のレベルに固定されるまで上記の工程 g)、h)及び i)を繰り返す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
sn−1位とsn−3位との間の飽和脂肪酸の分布係数αは好ましくは少なくとも0.42,より好ましくは少なくとも0.46である。
【0048】
さらに本発明は、全脂肪酸含有量に対して少なくとも12%のステアリン酸を含有するヒマワリ種子から直接的に入手されるヒマワリ油であって、該油中のオレイン酸の含有量がリノール酸の含有量よりも高いときに、sn−1位とsn−3位との間の飽和脂肪酸の分布係数αが少なくとも0.28であること、及び該種子が下記の工程 a)〜 j)を含む方法によって得られることを特徴とする該ヒマワリ油に関する:
a)油中の全脂肪酸含有量に対して少なくとも12%のステアリン酸を含有すると共にリノール酸よりもオレイン酸を多く含有する油を含む種子を供給し、
b)0.38よりも大きな分布係数αを示す油を含む種子を供給し、
c)上記の工程 a)及び b)で供給された種子から植物を生育させた後、該植物を交配させ、
d)F1子孫種子を収穫し、
e)F1子孫種子を蒔いて植物を生育させ、
f)生育した植物を自家受粉させてF2種子を実らせ、
g)得られるF2種子を、ステアリン酸の含有量が少なくとも12%であると共にオレイン酸の含有量がリノール酸の含有量よりも高く、分布係数αが少なくとも0.28であるという条件を満たすかどうかを調べる試験に付し、
h)ステアリン酸、オレイン酸及びリノール酸の含有量並びに分布係数αが所望のレベルにある種子を蒔いて植物を生育させ、
i)生育した植物を自家受粉させてF3種子を実らせ、
j)随意に、ステアリン酸、オレイン酸及びリノール酸の含有量並びに分布係数αが所望のレベルに固定されるまで上記の工程 g)、h)及び i)を繰り返す。
【0049】
好ましくは、sn−1位とsn−3位との間の分布係数αは少なくとも0.32、より好ましくは少なくとも0.36である。
【0050】
本発明は、前記の内因性油を含有する種子から生育されるヒマワリ植物及び該植物によって生産される種子にも関する。
【0051】
さらにまた、本発明は、全脂肪酸含有量に対して少なくとも12%のステアリン酸を含有すると共に、sn−1位とsn−3位との間の飽和脂肪酸の分布係数αとして少なくとも0.38を示す内因性油を含む種子を実らせる植物の生育方法であって、下記の工程 a)〜j)を含む該生育方法にも関する:
a)油中の全脂肪酸含有量に対して少なくとも12%のステアリン酸を含有する油を含む種子を供給し、
b)0.38よりも大きな分布係数αを示す油を含む種子を供給し、
c)上記の工程 a)及び b)で供給された種子から植物を生育させた後、該植物を交配させ、
d)F1子孫種子を収穫し、
e)F1子孫種子を蒔いて植物を生育させ、
f)生育した植物を自家受粉させてF2種子を実らせ、
g)得られるF2種子を、ステアリン酸の含有量が少なくとも12%であると共に、分布係数αが少なくとも0.38であるという条件を満たすかどうかを調べる試験に付し、
h)ステアリン酸の含有量及び分布係数αが所望のレベルにある種子を蒔いて植物を生育させ、
i)生育した植物を自家受粉させてF3種子を実らせ、
j)随意に、ステアリン酸の含有量及び分布係数αが所望のレベルに固定されるまで上記の工程 g)、h)及び i)を繰り返す。
【0052】
ステアリン酸を少なくとも12%含有する油を含む種子は、下記の工程 a)〜 d)を含む方法によって生産される:
a)ステアリン酸の含有量が12%未満であるヒマワリの種子を突然変異誘発剤(特に、アジ化ナトリウム)又はアルキル化剤(特に、エチルメタンスルホネート)で処理し、
b)処理した種子から植物を生育させた後、受粉をおこなって種子を生産させ、
c)得られる種子が所望のステアリン酸含有量を示すかどうかを試験し、
d)随意に、上記の工程 b)及び c)を繰り返す。
【0053】
sn−1位とsn−3位との間の飽和脂肪酸の分布係数αとして少なくとも0.38を示す油を含有する種子は、下記の工程 a)〜 d)を含む方法によって生産される:
a)0.38よりも小さな分布係数αを示すヒマワリ種子を突然変異誘発剤(特に、アジ化ナトリウム)又はアルキル化剤(特に、エチルメタンスルホネート)で処理し、
b)処理した種子から植物を生育させた後、該植物の受粉をおこなって種子を生産させ、
c)得られる種子が所望の分布係数α値を示すかどうかを試験し、
d)随意に、上記の工程 b)及び c)を繰り返す。
【0054】
本発明の別の実施態様においては、本発明は、全脂肪酸含有量に対してステアリン酸を少なくとも12%含有すると共に、リノール酸よりもオレイン酸を多く含有し、さらに、sn−1位とsn−3位との間の分布係数αとして少なくとも0.28を示す内因性油を含む種子を実らせる植物の生育方法であって、下記の工程 a)〜 j)を含む該生育方法に関する:
a)油中の全脂肪酸含有量に対して少なくとも12%のステアリン酸を含有すると共に、リノール酸よりもオレイン酸を多く含有する油を含む種子を供給し、
b)0.28よりも大きな分布係数αを示す油を含む種子を供給し、
c)上記の工程 a)及び b)で供給された種子から生育させた植物を交配させ、
d)F1子孫種子を収穫し、
e)F1子孫種子を蒔いて植物を生育させ、
f)生育した植物を自家受粉させてF2種子を実らせ、
g)得られるF2種子を、ステアリン酸の含有量が少なくとも12%であると共にオレイン酸の含有量がリノール酸の含有量よりも高く、さらに分布係数αが少なくとも0.28であるという条件を満たすかどうかを調べる試験に付し、
h)ステアリン酸、オレイン酸及びリノール酸の含有量並びに分布係数αが所望のレベルにある種子を蒔いて植物を生育させ、
i)生育した植物を自家受粉させてF3種子を実らせ、
j)随意に、ステアリン酸、オレイン酸及びリノール酸の含有量並びに分布係数αが所望のレベルに固定されるまで上記の工程 g)、h)及び i)を繰り返す。
【0055】
ステアリン酸を少なくとも12%含有する油を含む種子は、下記の工程 a)〜 j)を含む方法によって得ることができる:
a)少なくとも12%のステアリン酸を含有するヒマワリの種子を突然変異誘発剤(特に、アジ化ナトリウム)又はアルキル化剤(特に、エチルメタンスルホネート)で処理し、
b)処理した種子から植物を生育させた後、該植物の受粉によって種子を実らせ、
c)得られる種子を、所望のステアリン酸含有量を有するかどうかを調べる試験に付し、
d)リノール酸よりもオレイン酸を多く含有する油を含む種子を供給し、
e)工程 c)の試験に合格した種子から生育させた植物及び工程 d)で供給された種子から生育させた植物を交配させ、
f)F1子孫種子を収穫し、
g)得られた種子から植物を生育させた後、該植物の自家受粉によってF2種子を実らせ、
h)得られた種子を、ステアリン酸の含有量が少なくとも12%であると共にオレイン酸の含有量がリノール酸の含有量よりも高いという条件を満たすかどうかを調べる試験に付し、
i)ステアリン酸、オレイン酸及びリノール酸の含有量が所望のレベルにある種子を蒔いて植物を生育させ、
j)生育した植物を自家受粉させてF3種子を実らせ、
k)随意に、ステアリン酸、オレイン酸及びリノール酸の含有量が所望のレベルに固定されるまで上記の工程 h)、i)及び j)を繰り返す。
【0056】
sn−1位とsn−3位との間の飽和脂肪酸の分布係数αとして少なくとも0.38を示す油を含有する種子は、下記の工程 a)〜 d)を含む方法によって得られる:
a)0.38よりも小さな分布係数α値を示すヒマワリの種子を突然変異誘発剤(特に、アジ化ナトリウム)又はアルキル化剤(特に、エチルメタンスルホネート)で処理し、
b)処理した種子から植物を生育させた後、該植物の受粉をおこなって種子を実らせ、
c)得られる種子を、所望の分布係数α値を示すかどうかを調べる試験に付し、
d)随意に、上記の工程 b)及び c)を繰り返す。
【0057】
本発明は、上記の方法によってもたらされる第一の親植物及び所望の特性を有する第二の親植物を交配させることによって得られる雑種植物、並びに該雑種植物の子孫にも関する。第二の親植物は、上記の方法によって得られる植物であってもよい。
【0058】
本発明は、食料品の製造における上記油の使用及び該油を用いて調製される食料品若しくは該油を含有する食料品にも関する。
【0059】
さらにまた、本発明は、従来のヒマワリ系統の場合よりも優れたα分布を示す新規なタイプのヒマワリの突然変異体にも関する。従って、該突然変異体は、現在入手し得る系統と比較した場合、マーガリンやスプレッド等の製造において、より優れた特性を発揮する油をもたらす(図3参照)。マーガリンを製造するための最良のトリグリセリドは飽和−不飽和−飽和型(SUS)のもの、特に飽和−オレイン酸不飽和−飽和型(SOS)のトリグリセリドである。
【0060】
上記の技術的方法によって得られる新規な突然変異体系統(CAS−36と命名された)はATCCに寄託されており、その登録番号はPTA−5041である。この突然変異体は、ランダム理論による最良のTAG分布を示す。一部のCAS−36植物の種子から得られた油に関するデータを以下の表5に示す。
【0061】
【表5】

【0062】
米国特許第6475548号明細書には、国際公報WO95/20313号に記載された未処理油から調製した対照となるスプレッド製品及び国際公報WO95/20313号に開示された油のステアリン留分から調製したマーガリンを比較したデータが記載されている。ステアリン留分から調製したスプレッドは、冷蔵庫の温度に近い温度における良好な塗布性、口腔内での適度な融解性及び安定性を示した。この種の脂肪ブレンドが、水素化脂肪のような非天然成分を含有しない既知の高品質脂肪配合物の性能と類似の性能を示すことは明らかである。
【0063】
スプレッドの調製時の問題点を解決するために、ステアリン留分をスプレッドの脂肪相中へ添加できることは明らかである。例えば、米国特許第4438149号明細書には、バター脂肪を70%未満含有する脂肪相を用いてスプレッドを調製することが記載されている。この製品は過度に柔らかいコンシステンシーを示す。しかしながら、脂肪のステアリン留分を使用すると、低コストで、塗布性のより高い製品が得られた。米国特許第6475548号明細書には、液状植物油又はスプレッドを製造するのに適したトリグリセリド脂肪の調製法が教示されている。トリグリセリド脂肪のこの調製法においては、少なくとも12重量%のステアリン酸残基と少なくとも40重量%のオレイン酸残基を含む高ステアリン高オレインヒマワリ油(HSHOSF)を湿式精留若しくは乾式精留に付した後、ステアリン留分を捕集して得られたものが使用されている。さらに、上記の特許明細書には、脂肪ブレンドのステアリン留分が、出発原料であるHSHOSFを精留の標準的条件下での湿式精留若しくは乾式精留に付すことによって得られることが教示されている。30重量%よりも多くのSUSトリグリセリドと40重量%よりも少ないSUUトリグリセリドを含有する留分を捕集すべきであり、又、固体状脂肪の最初の25重量%が結晶化したときに精留を停止すべきである。
【0064】
本発明は、HSHOSFを湿式精留若しくは乾式精留に付した後にステアリン留分を捕集することによるトリグリセリド脂肪の製造方法においても適用することができる。特に、全脂肪酸含有量に対して少なくとも12%のステアリン酸を含有するHSHOSFを用いるトリグリセリド脂肪の製造法の特徴は、sn−1位とsn−3位との間の脂肪酸の分布係数αが少なくとも0.28である該ヒマワリ油を湿式精留若しくは乾式精留に付してステアリン留分を捕集する点にある。
【0065】
図1は、トリグリセリドの生合成経路を模式的に示す。
図2は、α値が0.5のときに飽和脂肪酸含有量を増加させた場合のヒマワリTAG種の理論的分布を示すグラフである。各TAG種に対する凡例は図中に示す。
図3は、オレイン酸とステアリン酸の含有量が高い形質を分離する種子中のトリグリセリド(TAG)の分布と飽和脂肪酸の含有量との関係を示すグラフである。理論的分布(対照)は曲線で示し、種々の油試料の分布は符号で示す。この場合の各TAG種に対する凡例は図中に示す。
【実施例】
【0066】
本発明を以下の実施例によってさらに説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0067】
前置き
本発明は、異なるトリグリセリド分子種における飽和脂肪酸の分布が野生型の種子の場合に比べて改良されたヒマワリ種子の生産方法に関する。この方法には、トリグリセリドの生合成に含まれる遺伝子形質中に1又は複数の突然変異体を誘発するのに十分な時間にわたって十分な濃度の突然変異誘発剤を用いて親種子を処理する工程が含まれる。この方法によって、SUS型のトリグリセリド種の生産が増大すると共に、SUU型のものが低減する。この種の突然変異誘発剤としては、アジ化ナトリウム及びアルキル化剤(例えば、エチルメタンスルホネート等)が例示されるが、これらの誘発剤と同様又は類似の効果をもたらすその他の突然変異誘発剤を使用してもよい。
【0068】
これらの突然変異させた種子を発芽させた後、子孫を発生させる。系統(line)中の形質を増加させるために、子孫を交配又は自己増殖させる。子孫の種子を集めて分析する。無秩序若しくはほとんど無秩序なトリグリセリド形質を有する種子を交配によって他の系統へ変換させ、形質を転移させる。所望により、系統中の形質の同型接合性を固定させるために、発芽、栽培及び自己増殖をおこなう付加的なサイクルを実施し、交配をおこなって種子を集める。
【0069】
実施例1においては、突然変異誘発剤としてエチルメタンスルホネートを使用した。0.4よりも高いα値を示すヒマワリ系統が得られた。突然変異させた元のヒマワリの親系統はCAS−10である。この系統は、サンフラワー・コレクション・オブ・インスチツト・デラグラサ、CSIC(セルビヤ、スペイン)から入手したものである。この系統の油のα値は0.38よりも小さい。ここで使用した高オレイン酸物質は、ロシアの研究者によって研究開発されたオレイン酸系統(α値:0.15〜0.27)から誘導した(シャルダトフ、1976年)。
【0070】
ここで使用したオレイン酸とステアリン酸の含有量の高い物質は、高オレイン酸系統と突然変異体CAS−3(ATCCに登録番号775968で寄託されている突然変異体)との交配物から、次の特許文献に記載の方法に従って選択することによって誘導した:WO−0074470(発明の名称:オレイン酸とステアリン酸の含有量の高い植物、種子及び油)。以下の実施例においては、オレイン酸よりもリノール酸の含有量が高いか、又はリノール酸よりもオレイン酸の量が高い油であって、α値の高い油をもたらす植物の生育方法を記載した。
【0071】
実施例1
種子を、エチルメタンスルホネート(EMS)の70mM水溶液を用いる突然変異処理に付した。この処理は、室温で振盪させながら2時間おこなった(60rpm)。この突然変異処理の終了後、EMS溶液を廃棄し、次いで処理した種子を水道水のもとで16時間洗浄した。
【0072】
処理した種子を畑で発芽させ、生育した植物を自家受粉させた。収穫した植物から集めた種子を使用して、トリグリセリド分布の点で改良された新規なヒマワリ系統を選択した。R.ガルセス及びM.マンチャによる方法(1993年)を利用する種子の脂肪酸組成並びにフェルナンデス−モヤらによる方法(2000年)を利用するトリグリセリド組成は、気液クロマトグラフィーによって決定した。
【0073】
0.42のα値を示す第1植物を選択した。子孫を5世代にわたって栽培したところ、α値は増加し、新規な遺伝子形質は種子の遺伝子物質中において安定に固定された。この系統はCAS−36と命名され、そのリノール酸の含有量はオレイン酸の含有量よりも高い。α値の最小値及び最大値はそれぞれ0.38及び0.5である。
【0074】
以下の表6には、数種類のCAS−36植物から得られた種子の分析データの一部及び提案されている式に従ってα値を計算するために必要なデータを示す。
【0075】
【表6】

【0076】
実施例2
表2に示したものに類似するオレイン酸とステアリン酸の含有量の高い系統のヒマワリ種子からヒマワリ植物を生育させた。ヒマワリ種子「CAS−36」からもヒマワリ植物を生育させた。これらの系統を交配させた。十分な量の種子を収穫するために、これらの植物の受粉は、人工受粉によって促進させた。オレイン酸とステアリン酸の含有量が高い系統(又は、これと逆の系統)からF1種子を生産させ、該種子を収穫した。α値が0.28よりも高く、ステアリン酸の量が高くて、オレイン酸の量がリノール酸よりも高いF2種子を選択した。これによって本発明による油を得ることはできるが、その生産量は制限される。従って、これらのα値を示す種子を確実にもたらす固定した同系交配系統が望ましい。
【0077】
オレイン酸とステアリン酸の含有量が高いこの種の同型の固定同系交配系統を交配させることによって、雑種種子(hybrid seed)を生産させることができ、該雑種種子は、本発明による所望の油の形質を確実にもたらすF2種子を生産する。このためには、F1種子を蒔いて植物を生育させた後、隔離した条件下で自家受粉させることによってF2種子を生産させる。F2種子は、α値に関する試験に供した。上記形質を確実に示すこの種の種子の残余のサンプルを用いて植物を生育させることによってF3種子を実らせた。自家受粉過程、スクリーニング過程及び選択過程を繰り返すことによって、全ての系統が0.28よりも高いα値であって、0.5若しくはほぼ0.5に近いα値を示す固定された同型系統がもたらされる。
【0078】
形質が固定されるならば、類似の高オレイン酸系統を交配させることによって、以下の表7に示すような形質を有する雑種種子を生産させることができる。本発明によれば、上記の油を抽出することができるヒマワリの植物と種子は生物工学的方法を用いることによって得られた。上記のα値は遺伝される形質であって、生育条件によって左右されない。
【0079】
【表7】

【0080】
実施例3
表2に示したようなリノール酸とステアリン酸の含有量の高い系統、例えばCAS−3、CAS−30又はその他のリノール酸とステアリン酸の含有量の高い系統のヒマワリ種子からヒマワリ植物を生育させた。ヒマワリ種子「CAS−36」からもヒマワリ植物を生育させた。これらの系統を交配させた。十分な量の種子を収穫するために、これらの植物の受粉は、人工受粉によって促進させた。リノール酸とステアリン酸の含有量が高い系統(又は、これと逆の系統)からF1種子を生産させ、該種子を収穫した。α値が0.38よりも高く、ステアリン酸の量が高くて、リノール酸の量がオレイン酸よりも高いF2種子を選択した。
【0081】
これによって本発明による油を得ることはできるが、その生産量は制限される。従って、これらのα値を示す種子を確実にもたらす固定した同系交配系統が望ましい。オレイン酸とステアリン酸の含有量が高いこの種の同型の固定同系交配系統を交配させることによって雑種種子を生産させることができ、該雑種種子は、本発明による所望の油の形質を確実にもたらすF2種子を生産する。このためには、F1種子を蒔いて植物を生育させた後、隔離した条件下で自家受粉させることによってF2種子を生産させる。F2種子は、α値に関する試験に供した。
【0082】
上記形質を確実に示すこの種の種子の残余のサンプルを用いて植物を生育させることによってF3種子を実らせた。自家受粉過程、スクリーニング過程及び選択過程を繰り返すことによって、全ての系統が0.38よりも高いα値であって、0.5若しくはほぼ0.5に近いα値を示す固定された同型系統がもたらされる。
【0083】
形質が固定されるならば、リノール酸とステアリン酸の含有量の高い類似系統を交配させることによって、以下の表8に示すような形質を有する雑種種子を生産させることができる。本発明によれば、上記の油を抽出することができるヒマワリの植物と種子は生物工学的方法を用いることによって得られた。上記のα値は遺伝される形質であって、生育条件によって左右されない。
【0084】
【表8】

【0085】
引用文献のリスト
1.R.アルベレス−オルテガ、S.カルチサン、E.マルチネス−フォルセ及びR.ガルセス、(1997年)、「高飽和脂肪酸ヒマワリ突然変異体からの極性又は非極性種子脂質群の特性決定」、リピド、第32巻、第833頁〜第837頁
2.C.K.チョウ(1992年)、「食品中の脂肪酸とその健康への影響」、マーセル・デッカー、ニューヨーク
3.V.フェルナンデス−モヤ、E.マルチネス−フォルセ、及びR.ガルセス(2000年)、「高飽和ヒマワリ(ヘリアンサス・アンヌウス)突然変異体からのトリアシルグリセロール種の同定」、Agric. Food Chem.、第48巻、第764頁〜第769頁
4.R.ガルセス及びM.マンチャ(1993年)、「新鮮な植物組織からの脂質の1段階抽出及び脂肪酸メチルエステルの調製」、Anal. Biochem.、第211巻、第139頁〜第143頁
5.F.D.ガンストーン、J.L.ハワード及びF.B.パドレイ(1994年)、ザ・リピド・ハンドブック、チャップマン&ホール(ロンドン)
6.P.ラークソ及びW.W.クリストル(1990年)、「キラルジアシルグリセロール誘導体のクロマトグラフィー解析:トリアシル−sn−グリセロールの立体特異的解析における可能性」、リピド、第25巻、第349頁〜第353頁
7.J.オソリオ、J.フェルナンデス−マルチネス、M.マンカ及びR.ガルセス(1995年)、「油中に飽和脂肪酸を高濃度で含有する突然変異体ヒマワリ」、Crop Sci.、第35巻、第739頁〜第742頁
8.J.レスケ、J.ジーブレヒト及びJ.ハゼブレッド(1997年)、「遺伝的に変性されたヒマワリ油と大豆油におけるトリアシルグリセロールの組成と構造」、J. Am. Oil Chem. Soc.、第74巻、第989頁〜第998頁
9.T.タカギ及びY.アンドウ(1991年)、「キラルHPLCによるトリアシル−sん−グリセロールの立体特異的分析」、リピド、第26巻、第542頁〜第547頁
10.R.J.ファンデアワール(1960年)、「膵臓リパーゼ加水分解ノ「データに基づく脂肪中の飽和及び不飽和アシル基の分布の計算」、J. Am. Oil Chem. Soc.、第37巻、第18頁〜第20頁
11.K.T.ソルダトフ(1976年)、「ヒマワリの品種改良における化学的突然変異誘発性」、第352頁〜第357頁、In: Proc.、第7版、国際ヒマワリ協会、フラールディンゲン(オランダ)
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】トリグリセリドの生合成経路を示す模式図である。
【図2】ヒマワリ油中の飽和脂肪酸の量とTAG種の量との関係を示す理論的なグラフである。
【図3】ステアリン酸の含有量とオレイン酸/リノール酸比が異なるヒマワリ油における高オレイン酸から高リノール酸までのTAG分布を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全脂肪酸含有量に対して少なくとも12%のステアリン酸を含有するヒマワリ種子から直接的に入手可能なヒマワリ油であって、sn−1位とsn−3位との間の飽和脂肪酸の分布係数αが少なくとも0.38であること、及び該種子が下記の工程 a)〜j)を含む方法によって得られることを特徴とする該ヒマワリ油:
a)油中の全脂肪酸含有量に対して少なくとも12%のステアリン酸を含有する油を含む種子を供給し、
b)0.38よりも大きな分布係数αを示す油を含む種子を供給し、
c)上記の工程 a)及び b)で供給される種子から植物を生育させた後、該植物を交配させ、
d)F1子孫種子を収穫し、
e)F1子孫種子を蒔いて植物を生育させ、
f)生育した植物を自家受粉させてF2種子を実らせ、
g)得られるF2種子を、ステアリン酸の含有量が少なくとも12%であると共に、分布係数αが少なくとも0.38であるという条件を満たすかどうかを調べる試験に付し、
h)ステアリン酸の含有量及び分布係数αが所望のレベルにある種子を蒔いて植物を生育させ、
i)生育した植物を自家受粉させてF3種子を実らせ、
j)随意に、ステアリン酸の含有量及び分布係数αが所望のレベルに固定されるまで上記の工程 g)、h)及び i)を繰り返す。
【請求項2】
sn−1位とsn−3位との間の飽和脂肪酸の分布係数αが少なくとも0.42である
請求項1記載のヒマワリ油。
【請求項3】
sn−1位とsn−3位との間の飽和脂肪酸の分布係数αが少なくとも0.46である
請求項1記載のヒマワリ油。
【請求項4】
全脂肪酸含有量に対するステアリン酸の含有量が少なくとも20%である請求項1から3いずれかに記載のヒマワリ油。
【請求項5】
全脂肪酸含有量に対して少なくとも12%のステアリン酸を含有すると共にオレイン酸の含有量がリノール酸の含有量よりも高いヒマワリ種子から直接的に入手されるヒマワリ油であって、sn−1位とsn−3位との間の飽和脂肪酸の分布係数αが少なくとも0.28であること、及び該種子が下記の工程 a)〜 j)を含む方法によって得られることを特徴とする該ヒマワリ油:
a)油中の全脂肪酸含有量に対して少なくとも12%のステアリン酸を含有すると共にリノール酸よりもオレイン酸を多く含有する油を含む種子を供給し、
b)0.38よりも大きな分布係数αを示す油を含む種子を供給し、
c)上記の工程 a)及び b)で供給される種子から植物を生育させた後、該植物を交配させ、
d)F1子孫種子を収穫し、
e)F1子孫種子を蒔いて植物を生育させ、
f)生育した植物を自家受粉させてF2種子を実らせ、
g)得られるF2種子を、ステアリン酸の含有量が少なくとも12%であると共にオレイン酸の含有量がリノール酸の含有量よりも高く、分布係数αが少なくとも0.28であるという条件を満たすかどうかを調べる試験に付し、
h)ステアリン酸、オレイン酸及びリノール酸の含有量並びに分布係数αが所望のレベルにある種子を蒔いて植物を生育させ、
i)生育した植物を自家受粉させてF3種子を実らせ、
j)随意に、ステアリン酸、オレイン酸及びリノール酸の含有量並びに分布係数αが所望のレベルに固定されるまで上記の工程 g)、h)及び i)を繰り返す。
【請求項6】
sn−1位とsn−3位との間の飽和脂肪酸の分布係数αが少なくとも0.32である
請求項5記載のヒマワリ油。
【請求項7】
sn−1位とsn−3位との間の飽和脂肪酸の分布係数αが少なくとも0.36である
請求項5記載のヒマワリ油。
【請求項8】
全脂肪酸含有量に対するステアリン酸の含有量が少なくとも20%である請求項5から7いずれかに記載のヒマワリ油。
【請求項9】
請求項1から4いずれかに記載の内因性のヒマワリ油を含有する種子を実らせるヒマワリ植物。
【請求項10】
請求項9記載のヒマワリ植物が実らせるヒマワリ種子。
【請求項11】
請求項9記載のヒマワリ植物が実らせるヒマワリ種子から得られるヒマワリ油。
【請求項12】
請求項5から8いずれかに記載の内因性油を含有する種子を実らせるヒマワリ植物。
【請求項13】
請求項12記載のヒマワリ植物が実らせるヒマワリ種子。
【請求項14】
請求項12記載のヒマワリ植物が実らせるヒマワリ種子から得られるヒマワリ油。
【請求項15】
全脂肪酸含有量に対して少なくとも12%のステアリン酸を含有すると共に、sn−1位とsn−3位との間の飽和脂肪酸の分布係数αとして少なくとも0.38を示す内因性油を含む種子を実らせる植物の生育方法であって、下記の工程 a)〜 j)を含む該生育方法:
a)油中の全脂肪酸含有量に対して少なくとも12%のステアリン酸を含有する油を含む種子を供給し、
b)0.38よりも大きな分布係数αを示す油を含む種子を供給し、
c)上記の工程 a)及び b)で供給される種子から植物を生育させた後、該植物を交配させ、
d)F1子孫種子を収穫し、
e)F1子孫種子を蒔いて植物を生育させ、
f)生育した植物を自家受粉させてF2種子を実らせ、
g)得られるF2種子を、ステアリン酸の含有量が少なくとも12%であると共に、分布係数αが少なくとも0.38であるという条件を満たすかどうかを調べる試験に付し、
h)ステアリン酸の含有量及び分布係数αが所望のレベルにある種子を蒔いて植物を生育させ、
i)生育した植物を自家受粉させてF3種子を実らせ、
j)随意に、ステアリン酸の含有量及び分布係数αが所望のレベルに固定されるまで上記の工程 g)、h)及び i)を繰り返す。
【請求項16】
ステアリン酸を少なくとも12%含有する油を含む種子を、下記の工程 a)〜 d)を含む方法によって供給する請求項15記載の生育方法:
a)ステアリン酸の含有量が12%未満であるヒマワリの種子を突然変異誘発剤(特に、アジ化ナトリウム)又はアルキル化剤(特に、エチルメタンスルホネート)で処理し、
b)処理した種子から植物を生育させた後、該植物の受粉をおこなって種子を実らせ、
c)得られる種子が所望のステアリン酸含有量を示すかどうかを試験し、
d)随意に、上記の工程 b)及び c)を繰り返す。
【請求項17】
sn−1位とsn−3位との間の飽和脂肪酸の分布係数αが少なくとも0.38である油を含有する種子を、下記の工程 a)〜 d)を含む方法によって供給する請求項15記載の生育方法:
a)0.38よりも小さな分布係数を示すヒマワリの種子を突然変異誘発剤(特に、アジ化ナトリウム)又はアルキル化剤(特に、エチルメタンスルホネート)で処理し、
b)処理した種子から植物を生育させた後、該植物の受粉をおこなって種子を実らせ、
c)得られる種子が所望の分布係数α値を示すかどうかを試験し、
d)随意に、上記の工程 b)及び c)を繰り返す。
【請求項18】
全脂肪酸含有量に対してステアリン酸を少なくとも12%含有すると共に、リノール酸よりもオレイン酸を多く含有し、さらに、sn−1位とsn−3位との間の分布係数αとして少なくとも0.28を示す内因性油を含む種子を実らせる植物の生育方法であって、下記の工程 a)〜 j)を含む該生育方法:
a)油中の全脂肪酸含有量に対して少なくとも12%のステアリン酸を含有すると共に、リノール酸よりもオレイン酸を多く含有する油を含む種子を供給し、
b)0.28よりも大きな分布係数αを示す油を含む種子を供給し、
c)上記の工程 a)及び b)で供給された種子から生育させた植物を交配させ、
d)F1子孫種子を収穫し、
e)F1子孫種子を蒔いて植物を生育させ、
f)生育した植物を自家受粉させてF2種子を実らせ、
g)得られるF2種子を、ステアリン酸の含有量が少なくとも12%であると共にオレイン酸の含有量がリノール酸の含有量よりも高く、さらに分布係数αが少なくとも0.28であるという条件を満たすかどうかを調べる試験に付し、
h)ステアリン酸、オレイン酸及びリノール酸の含有量並びに分布係数αが所望のレベルにある種子を蒔いて植物を生育させ、
i)生育した植物を自家受粉させてF3種子を実らせ、
j)随意に、ステアリン酸、オレイン酸及びリノール酸の含有量並びに分布係数αが所望のレベルに固定されるまで上記の工程 g)、h)及び i)を繰り返す。
【請求項19】
ステアリン酸を少なくとも12%含有する油を含む種子を、下記の工程 a)〜 j)を含む方法によって供給する請求項18記載の植物の生育方法:
a)少なくとも12%のステアリン酸を含有するヒマワリの種子を突然変異誘発剤(特に、アジ化ナトリウム)又はアルキル化剤(特に、エチルメタンスルホネート)で処理し、
b)処理した種子から植物を生育させた後、受粉によって種子を実らせ、
c)得られた種子を、所望のステアリン酸含有量を有するかどうかを調べる試験に付し、
d)リノール酸よりもオレイン酸を多く含有する油を含む種子を供給し、
e)工程 c)の試験に付した種子から生育させた植物及び工程 d)で供給された種子から生育させた植物を交配させ、
f)F1子孫種子を収穫し、
g)得られる種子から植物を生育させた後、該植物の自家受粉によってF2種子を実らせ、
h)得られる種子を、ステアリン酸の含有量が少なくとも12%であると共にオレイン酸の含有量がリノール酸の含有量よりも高いという条件を満たすかどうかを調べる試験に付し、
i)ステアリン酸、オレイン酸及びリノール酸の含有量が所望のレベルにある種子をまいて植物を生育させ、
j)生育した植物を自家受粉させてF3種子を実らせ、
k)随意に、ステアリン酸、オレイン酸及びリノール酸の含有量が所望のレベルに固定されるまで上記の工程 h)、i)及び j)を繰り返す。
【請求項20】
sn−1位とsn−3位との間の飽和脂肪酸の分布係数αが少なくとも0.38である油を含有する種子を、下記の工程 a)〜 d)を含む方法によって供給する請求項18記載の生産方法:
a)0.38よりも小さな分布係数α値を示すヒマワリ種子を突然変異誘発剤(特に、アジ化ナトリウム)又はアルキル化剤(特に、エチルメタンスルホネート)で処理し、
b)処理した種子から植物を生育させた後、受粉をおこなって種子を実らせ、
c)得られた種子を、所望の分布係数α値を示すかどうかを調べる試験に付し、
d)随意に、上記の工程 b)及び c)を繰り返す。
【請求項21】
請求項15から17いずれかに記載の方法によって得られた第一親植物を、所望の特性を有する第二親植物と交配させることによって得られる雑種植物。
【請求項22】
第一親植物が請求項9記載の植物である請求項21記載の雑種植物。
【請求項23】
請求項9記載の植物である第一親植物を、別の所望の特性を有する請求項9記載の植物である第二親植物と交配させることによって得られる雑種植物。
【請求項24】
雑種植物が、別の所望の特性を有する請求項9記載の植物である請求項23記載の雑種植物。
【請求項25】
請求項18から20いずれかに記載の方法によって得られた第一親植物を、所望の特性を有する第二親植物と交配させることによって得られる雑種植物。
【請求項26】
第一親植物が請求項12記載の植物である請求項25記載の雑種植物。
【請求項27】
請求項12記載の植物である第一親植物を、別の所望の特性を有する請求項12記載の植物である第二親植物と交配させることによって得られる雑種植物。
【請求項28】
雑種植物が、別の所望の特性を有する請求項12記載の植物である請求項27記載の雑種植物。
【請求項29】
請求項21から28いずれかに記載の雑種植物の子孫。
【請求項30】
請求項1から8及び請求項11から14いずれかに記載の油であって、食料品を製造するための該油。
【請求項31】
請求項1から8及び請求項11から14いずれかに記載の油を含有する食料品。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−523596(P2007−523596A)
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−510544(P2005−510544)
【出願日】平成15年12月8日(2003.12.8)
【国際出願番号】PCT/EP2003/014026
【国際公開番号】WO2005/046315
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(593005895)コンセホ・スペリオール・デ・インベスティガシオネス・シエンティフィカス (67)
【氏名又は名称原語表記】CONSEJO SUPERIOR DE INVESTIGACIONES CIENTIFICAS
【Fターム(参考)】