説明

トリプタン化合物イオントフォレシス用のポリアミン強化製剤

トリプタン化合物のイオントフォレシス用のパッチと組成物を記載した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも部分的に、トリプタン化合物またはその塩を送達するための集積イオントフォレシス経皮パッチに関する。
【背景技術】
【0002】
関係出願
本出願は米国特許出願第12/214,555号(2008年6月19日出願)の優先権を主張し、前記出願の全内容は本明細書に参照により組み入れられる。
【0003】
背景
イオントフォレシスのプロセスは1908年LeDucにより記載され、それ以後、ピロカルピン、リドカインおよびデキサメタゾンなどのイオンとして荷電した治療薬分子の送達に商業的利用が見出されている。この送達方法では、正電荷を帯びたイオンは電解系アノードの部位で皮膚を横切って駆動される一方、負電荷を帯びたイオンは電解系カソードの部位で皮膚を横切って駆動される。
【0004】
初期およびいくつかの現在のイオントフォレシスデバイスは、典型的には接着物質で患者に接着した2つの電極から構成され、それぞれの電極は遠隔の電源(一般にマイクロプロセッサ制御式電気計器)と導線により接続されている。
【0005】
最近の文献はスマトリプタンがイオントフォレシスを利用して効果的に経皮輸送できることを示している(Femenia-font et al, J. Pharm Sci 94, 2183-2186, 2005)。この研究では、スマトリプタンのイオントフォレシス輸送が受動輸送より385倍高い速度であることが見出された。
【0006】
他の最近の研究はイオントフォレシスが抗片頭痛化合物の送達に有用でありうると結論している。この研究では、ゾルミトリプタンを送達するために、導線で経皮パッチに接続された電子制御装置を含む2コンパートメントのシステムが使用された。この研究結果を発表している会社は、このイオントフォレシスユニットはプログラムが可能であり、即効作用のための迅速な初期送達が可能である一方、低レベル維持用量を持続して頭痛再発を予防するのに利用できると結論している。この装置の主な制限は2コンパートメント構造の送達システムにあり、装着者にとって制御装置とパッチ間の導線接続が煩わしい。さらに、プログラム可能な制御装置は使い切りベースで使用するには価格が高く、また再利用可能ベースで使用するには紛失、汚染、破損などの問題がありうる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、少なくとも部分的に、ポリアミンをイオントフォレシス用製剤に用いると、被験体に実質的な皮膚刺激を誘発することなく、高い電気量を用いてはるかに高い用量の治療薬投与が可能になるという驚くべき発見に基づく。例えば、本発明のポリアミン製剤は、パッチを用いて被験体に有意な紅斑を誘発することなく、4mAまでの電流の使用が可能になる。
【0008】
一実施形態において、本発明は、少なくとも部分的に、トリプタン化合物またはその塩を送達するためのイオントフォレシス経皮パッチに関する。前記パッチはアノードリザーバー、カソードリザーバーおよび適当な電気回路から構成される。さらに前記リザーバーの少なくとも1つは、限定されるものでないが、ポリアミンヒドロゲル、水、トリプタン化合物またはその塩、および任意に1種以上の添加物を含む混合物を含むものである。
【0009】
さらなる実施形態において、本発明はまた、イオントフォレシスパッチに関するものであって、ここで前記アノードリザーバーは、およそ3.0%〜約5.0%スマトリプタンコハク酸塩;およそ84%〜約88%水;およそ4.0%〜約7.0%アルキルメタクリレートコポリマー;およそ1.0%〜約6.0%脂肪酸(例えば、約1.0%〜約5.0%ラウリン酸および約0.05%〜約0.75%アジピン酸);およびおよそ0.05%〜約0.75%パラ-ヒドロキシ安息香酸メチルを含むものである。
【0010】
他のさらなる実施形態において、本発明はまた、イオントフォレシス経皮パッチが特徴であって、ここで前記カソードリザーバーは、およそ95%〜約98%水;およそ1.0%〜約3.0%ヒドロキシプロピルセルロース;およそ0.5%〜約1.5%塩;およびおよそ0.05%〜約0.75%パラ-ヒドロキシ安息香酸メチルを含むものである。
【0011】
本発明はまた、少なくとも部分的に、被験体(トリプタン化合物に関わる状態、例えば片頭痛)を治療する方法であって、被験体に本明細書に記載したイオントフォレシス経皮パッチを用いて有効量のトリプタン化合物またはその塩を投与する前記方法である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1. 本発明のイオントフォレシスパッチ
本発明は、少なくとも部分的に、トリプタン化合物またはその塩を送達するための集積イオントフォレシス経皮パッチに関する。
【0013】
用語「イオントフォレシス経皮パッチ」は、電流を用いることによってパッチから被験体の皮膚を通しての薬物吸収を促進することによりトリプタン化合物の投与を可能にする集積デバイスを含む。一実施形態において、パッチは電気構成要素、トリプタン化合物、および接着裏当て層を含むものである。
【0014】
一実施形態において、本発明は、少なくとも部分的に、トリプタン化合物またはその塩を送達するためのイオントフォレシス経皮パッチに関する。パッチはアノードリザーバー、カソードリザーバーおよび適当な電気回路を含むものである。さらに、少なくとも1つのリザーバーはポリアミンならびに、限定されるものでないが、水、トリプタン化合物またはその塩、および任意に1種以上の添加物、例えば、限定されるものでないが、溶解促進剤、浸透促進剤、保存剤および/または抗菌剤を含む混合物を含むものである。
【0015】
用語「ポリアミン」は、特に、少なくとも2つの正電荷を帯びた基、好ましくは、限定されるものでないが、一級アミノ基、二級アミノ基および/または三級アミノ基を含むアミノ基を有するカチオン有機化合物を含むものである。本発明はまた、例えばピロリジノ、ピペリジノまたはモルホリノ基を含むポリアミンを含むものである。一般に、本発明によって使用するポリアミンは、好ましくは、水もしくは水性溶媒に溶解すると2以上の正電荷を有するポリマーまたは高分子であるポリ電解質を含む。
【0016】
さらなる実施形態においては、用語「ポリアミン」には2以上の一級アミノ基を有する有機化合物が含まれる。例としては、プトレシン、カダベリン、スペルミジンおよびスペルミンが挙げられる。他のポリアミンには、シクレンおよび他の環状ポリアミンが含まれる。ポリマーポリアミンの例には、ポリエチレンアミンなどのアジリジンモノマーに基づくものが含まれる。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、ポリアミンには、アクリレートコポリマー、メタクリレートコポリマー、アルキルアクリレートコポリマーおよび/またはアルキルメタクリレートコポリマーが含まれる。これらのコポリマーは2以上の先に定義したアミノ基を含有する。
【0018】
アルキル基はC1〜C12アルキル基(直鎖または分枝鎖)、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、またはブチルなどから選択することができる。アルキルコポリマーはまた、ヒドロキシル化アルキル基、好ましくはC1〜C12ヒドロキシルアルキル基、例えば、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチルまたはヒドロキシプロピルなどを含んでもよい。ポリアミンに関して、アミノ基の一例は、有機化合物内、場合によっては、ポリマー有機化合物内に存在する「ジアミノエチル」部分である。
【0019】
本発明のポリアミンの他の例は、限定されるものでないが、メタクリレートコポリマー、例えば、ブチルおよび/またはメチルメタクリレートとジメチルアミノエチルメタクリレートのコポリマーを含む。コポリマーの他の例には、欧州薬局方(Ph.Eur.)に記載の「塩基性ブチルメタクリレートコポリマー」、USP/NFに記載の「アミノメタクリレートコポリマー」、および「日本医薬品賦形剤」に記載の「アミノアルキルメタクリレートコポリマーE」が含まれる。かかるコポリマーは、登録商標Eudragit(登録商標)(Evonik Industries(旧Degussa))、例えば、Eudragit(登録商標)RL 100、Eudragit(登録商標)RL PQ、Eudragit(登録商標)RS 100、Eudragit(登録商標)RS PQ、およびEudragit(登録商標)E 100の名称で市販されている。
【0020】
EUDRAGIT(登録商標)E100はジメチルアミノエチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、およびメチルメタクリレート系のカチオンコポリマーである。このポリマーの平均分子量はおよそ150,000である。
【0021】
一般に、先に定義した少なくとも2個のアミノ基を含有するポリアミンは、毒性学的に安全かつ医薬品での使用に好適であることを条件として、本発明の組成物に用いることができる。本発明の組成物を生産するために有用なポリアミンはさらに、例えば、環状および大環状ポリアミン、例えばシクレン;アジリジンモノマーに基づくポリアミン、例えばポリエチレンイミン、ならびにポリエチレンアミン、プトレシン、カダベリン、スペルミジン、スペルミン、ならびにポリプロピレンイミン、ポリビニルアミン、ポリビニルイミン、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルピリジン、およびポリグアニジンから選択することができる。一実施形態において、本発明のポリアミン化合物は1500以上の分子量を有する。
【0022】
さらなる実施形態において、本発明の組成物は先に定義したポリアミン化合物から選択される少なくとも2種の異なるポリアミン化合物の組合わせを含むものである。
【0023】
本発明の組成物によって使用されるポリアミン化合物はポリアミン塩、特に水溶性ポリアミン塩の形態で存在する。好適な塩は上述のポリアミンを好適な酸、好ましくは有機酸と標準の手順により反応させることにより得ることができる。
【0024】
一実施形態において、前記ポリアミンまたはポリアミン塩の比率は、組成物の全重量に対して、約1%〜約25%(重量基準)、約5%〜約20%(重量基準)または約10%〜約18%(重量基準)の範囲にある。
【0025】
さらなる実施形態において、アノードリザーバーは約3.0〜約10.0%、約4.0〜約9.0%、約5.0〜約8.0%、約5.0〜約6.0%、または約5.86%のアルキルメタクリレートコポリマー、例えば、ブチルメタクリレートコポリマー、例えば、Eudragit ElOOを含んでもよい。
【0026】
本発明のさらなる実施形態において、組成物はさらに、脂肪酸およびジカルボン酸から選択される少なくとも1種の酸を含むものである。しかし、他の型の有機酸、例えば、ヒドロキシアルカン酸および/またはトリカルボン酸から選択される酸も使用することができる。
【0027】
以上考察したポリアミン、例えば、アミノ基を含有するポリアクリレートコポリマーを、脂肪酸およびジカルボン酸から選択される1種以上の酸と組合わせることにより、対応するポリアミン塩が得られる。これらのポリアミン塩は一般に水溶性であり、水に溶解するとポリマー電解質を形成する。さらに、前記ポリアミン塩を含む本発明の組成物は、イオントフォレシスデバイスにおけるイオン性の、解離した活性薬に対する担体またはリザーバーとして特に好適であることを見出した。
【0028】
さらに、ポリアミンを水の存在のもとで前記酸の1種以上と組合わせることにより、イオントフォレシス系のリザーバー組成物として特に有用なヒドロゲルを得ることができるのを見出した。
【0029】
用語「脂肪酸」は、30個以下の炭素原子を含む脂肪族尾部を有する脂肪族モノカルボン酸であって、直鎖または分枝鎖、飽和または不飽和であってもよい前記酸を含む。好ましくは、C6〜C14飽和脂肪酸を用いる。本発明で使用できる脂肪酸には、例えば、ヘキサン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、カプリル酸およびステアリン酸が含まれる。
【0030】
用語「ジカルボン酸」は、2つのカルボン酸官能基で置換された有機化合物であって、直鎖または分枝鎖および環状化合物を含み、飽和または不飽和であってもよい前記化合物を含む。例えば、ジカルボン酸はジカルボン酸の脂肪酸から、特にC4〜C1Oジカルボン酸から選択することができる。脂肪族ジカルボン酸の例には、グルタル酸、アジピン酸およびピメリン酸が含まれる。
【0031】
さらなる実施形態において、組成物は少なくとも2種の脂肪酸を含む組合わせ、または少なくとも2種のジカルボン酸を含む組合わせ、または少なくとも1種の脂肪酸と少なくとも1種のジカルボン酸を含む組合わせを含有することができる。
【0032】
一般に、脂肪酸および/またはジカルボン酸の量は、組成物中に存在するポリアミン、および/または他の成分を少なくとも可溶化するのに十分であるように調節される。かかる溶解性は例えば、半固体または固体の粘稠性ならびに皮膚接着特性などの1以上の特性を有するヒドロゲル組成物を得るために重要でありうる。
【0033】
好ましくは、組成物中の脂肪酸および/またはジカルボン酸の総量は0.1%〜15%(重量基準)、特に0.5%〜10%(重量基準)である。さらなる実施形態によれば、脂肪酸の濃度は約0.1%〜10%(重量基準)、好ましくは0.5%〜7.0%(重量基準)であってもよい。他のさらなる実施形態によれば、ジカルボン酸の濃度は約0.05%〜5%(重量基準)、または約0.1%〜2.0%(重量基準)であってもよい。
【0034】
本発明の組成物は、少なくとも1種のゲル形成ポリマー(例えば、ポリアミンもしくは先に記載したその塩、および/または医薬調製物の分野で公知の他のゲル形成ポリマー)をゲル形成量の水または水溶媒混合物と一緒に含むヒドロゲルとして、製剤化することができる。
【0035】
水とゲル形成成分の相対量は、固体または半固体粘稠性を有するヒドロゲルを得るように調節することができる。しかし本発明の製剤はまた、液体として製剤化してもよい。
【0036】
さらなる実施形態において、ヒドロゲル組成物は、ポリアクリレートまたはセルロース誘導体、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシエチルセルロースからなる群より選択することができるさらなるゲル形成ポリマーを含んでもよい。
【0037】
イオン強度はヒドロゲル内の水の比率を変えることにより調節することができる。従って、イオン強度はそれぞれの特別な事例におけるイオントフォレシスプロセスの効力を最適化するように調節することができる。
【0038】
用語「トリプタン化合物」はトリプタン化合物、その誘導体および塩を含む。この用語はまた、2-(lH-インドール-3-イル)-N,N-ジメチルエタンアミン部分を含有する化合物も含む。トリプタン化合物の例には、限定されるものでないが、アルモトリプタン、フロバトリプタン、エレトリプタン、ゾルミトリプタン、リザトリプタン、スマトリプタン、ナラトリプタン、およびそれらの製薬上許容される塩が含まれる。
【0039】
本発明の方法に使用できるトリプタン化合物の例には、表1に掲げた化合物が含まれる。有効量を維持するための血漿中のトリプタン化合物濃度は使用する化合物によって変わりうる。スマトリプタンの事例では、15〜20ng/mLの初期血漿濃度が一般に有効でありうる。しかし、20〜25、あるいは22.5ng/mLの初期濃度が所望さる場合もある。
【0040】
表Iはさらなるトリプタン薬物動態を示し、ここでCmaxは患者血漿中の予想最高濃度であり、AUCは合計血漿濃度である。
【表1】

【0041】
本発明の方法およびパッチで用いることができるトリプタン化合物の製薬上許容される塩の例には、限定されるものでないが、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硫酸塩、リン酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、グルコン酸塩、メシレート、ラウリン酸、ドデシル酸塩、ミリスチン酸塩、パルミチン酸、ステアリン酸塩、ココノエート(coconoate)、ベヒネート(behinate)、オレイン酸塩、リノール酸塩、リノレン酸塩、エイコサペンタエン酸塩、エイコサヘキサエン酸塩、ドコサペンタエン酸塩、ドコサヘキサエン酸塩、エイコサノイドなどが含まれる。さらなる実施形態において、トリプタン化合物はスマトリプタンコハク酸塩である。ある特定の実施形態において、トリプタン化合物の塩はパッチの他の成分、例えば金属電極と反応しないように選択することができる。ある特定の実施形態において、塩は本発明のパッチの金属成分と接触すると有意な量の不要残渣を形成しないように選択することができる。
【0042】
一実施形態において、リザーバーは約0.1%〜約20%、約0.2%〜約10%、約2%〜約10%、約3%〜約5%トリプタン、または約0.1%〜約0.5%のトリプタン、例えば、スマトリプタンを含む混合物を含むものである。
【0043】
リザーバーはスマトリプタン溶液を吸収させたヒドロゲルから成ってもよい。ヒドロゲルは実質的に架橋されていてもいなくてもよい。ヒドロゲルは1種以上のポリマーから成ってもよい。ヒドロゲルの基材になるポリマーの例には、ポリアクリレート、ポリイソブチレン、セルロース誘導体、ポリイソプレン、スチレン-ポリブチレン-スチレンブロックコポリマー、ポリシロキサン、ポリウレタン、およびそれらの組合わせが含まれる。
【0044】
さらなる実施形態においては、例えば、失われる親水性イオンを補償することによりヒドロゲルの溶解度を高めるイオン補償物質を製剤に加える。
【0045】
一実施形態において、イオン補償物質はアジピン酸である。一実施形態において、製剤は、パッチがその意図する機能を達成するために、脂肪酸の有効量、例えばヒドロゲルまたはポリアミンを可溶化するのに十分な量を含むものである。脂肪酸はジカルボン酸の脂肪酸、例えば、C4〜C1Oジカルボン酸であってもよい。脂肪族ジカルボン酸の例には、グルタル酸、アジピン酸およびピメリン酸が含まれる。他の実施形態において、パッチは約0.1%〜約1.0%、約0.15%〜約0.5%または約0.20%〜約0.40%アジピン酸を含む。
【0046】
さらなる実施形態において、リザーバーはヒドロゲルまたは液状の水性組成物であり、その組成物はアルキルメタクリレートポリアミンコポリマー、約0.5%〜約10%(重量基準)の少なくとも1種のトリプタンまたはその塩、約0.02%〜約0.5%(重量基準)のパラ-ヒドロキシ安息香酸メチル、約1.0%〜約5.0%(重量基準)のラウリン酸、および約0.05%〜約0.75%(重量基準)のアジピン酸を含み、前記ヒドロゲル組成物は少なくとも約80%(重量基準)の水含量を有する。
【0047】
さらなる実施形態において、リザーバーは、約4%〜約7%(重量基準)のアルキルメタクリレートポリアミンコポリマー、約3%〜約5%(重量基準)の少なくとも1種のトリプタンまたはその塩、約1%〜約5%(重量基準)のラウリン酸、約0.05%〜約0.75%(重量基準)のアジピン酸、約0.05%〜約0.75%(重量基準)のパラ-ヒドロキシ安息香酸メチル、および約84%〜約88%(重量基準)の水を含むヒドロゲルまたは液体水性組成物を含んでもよい。
【0048】
さらなる実施形態において、リザーバーは約4.00%(重量基準)のトリプタン化合物、約86.37%(重量基準)の水、約5.86%(重量基準)のアルキルメタクリレートコポリマー、すなわち、ポリアミン)、約3.40%(重量基準)のラウリン酸、約0.27%(重量基準)のアジピン酸、および約0.10%(重量基準)のパラ-ヒドロキシ安息香酸メチルを含んでもよく、ここでそれぞれの記載値は示した平均値に対して±10%の範囲で変化しうる。
【0049】
一実施形態において、リザーバーはそれぞれ約1cm2、約2cm2、約3cm2、約4cm2、約5cm2、約6cm2、約7cm2、約8cm2、約9cm2、約10cm2、約11cm2、約12cm2、約13cm2、約14cm2、約15cm2、約16cm2、約17cm2、約18cm2、約19cm2、約20cm2、約21cm2、約22cm2、約23cm2、約24cm2、約25cm2、約26cm2、約27cm2、約28cm2、約29cm2、約30cm2、約31cm2、約32cm2、約33cm2、約34cm2、約35cm2、約36cm2、約37cm2、約38cm2、約39cm2、約40cm2、約41cm2、約42cm2、約43cm2、約44cm2、約45cm2、約46cm2、約47cm2、約48cm2、約49cm2、または約50cm2以上の表面積を有する。
【0050】
さらなる実施形態において、リザーバーは自己接着性である。リザーバーはまた、さらなる粘着付与剤、例えば、限定されるものでないが、炭化水素樹脂、ロジン誘導体、グリコール(例えば、グリセロール、1,3ブタンジオール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、およびコハク酸を含有してもよい。
【0051】
用語「溶解促進剤」は、そのビヒクル中のトリプタン化合物の溶解度を増加する化合物を含む。これは、例えば、色々な賦形剤を導入することによりトリプタン化合物−ビヒクル相互作用を変えることを介して、またはトリプタン化合物の結晶性を変えることを介して達成することができる。溶解促進剤の例には、水性ジオール、例えばプロピレングリコールおよびグリセロール;モノ-アルコール、例えばエタノール、プロパノール、および高級アルコール;DMSO;ジメチルホルムアルデヒド;N,N-ジメチルアセトアミド;2-ピロリドン;N-(2-ヒドロキシエチル)ピロリドン;N-メチルピロリドン;l-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オンおよび他のn-置換-アルキル-アザシクロアルキル-2-オン類が含まれる。
【0052】
用語「浸透促進剤」は、トリプタン化合物に対する皮膚の浸透性を増加する、すなわち、トリプタン化合物が皮膚を通って浸透し血流に進入する速度を増加する化合物を含む。浸透促進効果(例えば、かかる促進剤の使用を介しての)は、例えば、拡散セル装置を用いて動物またはヒト皮膚を通過するトリプタン化合物の拡散速度を測定することにより観測することができる。
【0053】
浸透促進剤の例には、限定されるものでないが、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)、デシルメチルスルホキシド(C1OMSO)、ポリエチレングリコールモノラウレート(PEGML)、プロピレングリコール(PG)、PGML、グリセロールモノラウレート(GML)、レシチン、1-置換-アザシクロヘプタン-2-オン(例えば、1-n-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オン)、アルコールなどが含まれる。浸透促進剤はまた植物油、例えば、例えば、サフラワー油、綿実油およびコーンオイルなどであってもよい。
【0054】
さらに他の薬剤を用いてポリアミンの溶解度を高めてもよい。かかる可溶化剤の例には、限定されるものでないが、脂肪酸、例えばC6〜C14飽和脂肪酸が含まれる。飽和脂肪酸の例には、ヘキサン酸、デカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ラウリン酸およびカプリル酸が含まれる。さらなる実施形態において、脂肪酸はラウリン酸であり、約0.1%〜約10%、約0.2%〜約9.5%、約0.3%〜約9.0%、約0.4%〜約8.5%、約0.5%〜約8.0%、約1.0%〜約7.0%、約1.5%〜約6.0%、約2.0%〜約5.0%、約3.0%〜約4.0%、または約3.40%の量で存在する。
【0055】
用語「抗菌剤」はパッチ中の微生物の増殖を阻止する薬剤を含む。抗菌剤の例には、限定されるものでないが、クロルヘキシジンの塩が含まれ、例えば、ヨードプロピニルブチルカーバメート、ジアゾリジニル尿素、クロルヘキシジンジグルコネート、クロルヘキシジンアセテート、クロルヘキシジンイセチオネート、およびクロルヘキシジン塩酸塩が含まれる。他のカチオン抗菌剤、例えば、塩化ベンズアルコニウム、塩化ベンゼトニウム、トリクロカルバン、ポリヘキサメチレンビグアニド、塩化セチルピリジウム、塩化メチルベンゼトニウムなどを用いることもできる。
【0056】
他の抗菌剤には、限定されるものでないが、ハロゲン化フェノールの化合物、例えば、2,4,4'-トリクロロ-2-ヒドロキシジフェニルエーテル(トリクロサン);パラクロロメタキシレノール(PCMX);および短鎖アルコール、例えばエタノール、プロパノールなどが含まれる。他の抗菌剤の例には、パラ-ヒドロキシ安息香酸メチルまたは4-ヒドロキシ安息香酸メチルが含まれる。
【0057】
さらなる実施形態において、本発明の組成物は約0.01%〜約1.0%、約0.05%〜約0.5%、約0.07%〜約0.4%、約0.08%〜約0.3%、約0.09%〜約0.2%、または約0.10%のパラ-ヒドロキシ安息香酸メチルを含む。
【0058】
さらなる実施形態において、溶液は約3〜約8、約5.5〜約7、または約6のpHを有する。他のさらなる実施形態においては、溶液のpHをパッチの利用が実質的に皮膚のpHに影響を与えないように選択する。さらなる実施形態において、皮膚のpHの変化は約±4.0以下、約±3.5以下、約±3.0以下、約±2.5以下、約±2.0以下、約±1.5以下、約±1.0以下、または約±0.5以下である。
【0059】
裏当て層はかかる目的に好適である当技術分野で公知のいずれの材料であってもよい。裏当て層は好ましくは柔軟でかつ好適な材料であって、限定されるものでないが、セロファン、酢酸セルロース、エチルセルロース、可塑化酢酸ビニル-塩化ビニルコポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ポリビニリデン、コーティングした柔軟な繊維、例えば紙および布ならびにアルミニウム箔の裏当て材が含まれる。接着材料は、本発明のイオントフォレシスパッチでの使用に好適である当技術分野で公知のいずれの材料であってもよい。
【0060】
さらなる実施形態において、パッチは、トリプタン化合物または抗片頭痛化合物と有意に反応して不溶性塩を形成することのない電極を含む。さらなる実施形態において、電極は亜鉛と類似した反応性をもつ金属から成る。他のさらなる実施形態において、電極は銀、鉄、アルミニウム、スズ、銅、亜鉛、ニッケル、真鍮、金属合金、導電性ポリマー、またはそれらのコーティングもしくは混合物を含む。
【0061】
さらなる実施形態において、パッチの電気回路はパッチの使用期間中に作動するバッテリーを含む。さらなる実施形態において、バッテリーはパッチ中に集積され、パッチの、唯一でないにしても主電力源である。
【0062】
本発明はまた、前記組成物を吸着材中に浸漬または含浸する実施形態、ならびに本発明のデバイスがさらに前記組成物を浸漬または含浸した吸着材を含み、前記組成物は一般に液状水性組成物またはヒドロゲル組成物である実施形態を含む。
【0063】
水性またはヒドロゲル組成物を浸漬または含浸した吸着材は、前記組成物をその場所に保持しかつ、同時に、低粘度構造を維持する役割を果たす。好適な吸着材は、繊維パッド、繊維、スポンジ、ティッシュ、不織もしくは織物材料、フェルトまたはフェルト様材料などから選択することができる。
【0064】
さらなる実施形態によれば、本発明の組成物および/またはパッチは接着特性を有し、経皮薬物投与の全期間にわたって、組成物を施用部位の皮膚と直接および完全に接触するよう維持する。接着性は1種以上の接着性ポリマーを前記組成物中に組み込むことにより得ることができる。この目的に好適なポリマーは当業者に公知である。一実施形態においては、接着特性を有するポリアミンまたはポリアミン塩を前記接着性ポリマーとして使用する。
【0065】
さらなる実施形態において、本発明の組成物および/またはパッチは自己接着性がある。組成物および/またはパッチは自己接着性にするために、さらに粘着付与剤から選択される1種以上の添加物を含有してもよく、前記粘着付与剤には、限定されるものでないが、炭化水素樹脂、ロジン誘導体、グリコール(例えば、グリセロール、1,3-ブタンジオール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、およびコハク酸が含まれる。
【0066】
さらに他の実施形態において、本発明はスマトリプタンまたはその塩を送達するためのイオントフォレシス経皮パッチであって、アノードリザーバー、カソードリザーバー、適当な電気回路およびポリアミンを含むものである前記イオントフォレシス経皮パッチに関する。さらなる実施形態において、アノードリザーバーは、およそ3.0%〜約5.0%スマトリプタンコハク酸塩(有利なのは約4.00%±10%);およそ84%〜約88%水(有利なのは約86.37%±10%);およそ4.0%〜約7.0%アルキルメタクリレートコポリマー(有利なのは約5.86%±10%);およそ1.0%〜約5.0%ラウリン酸(有利なのは約3.40%±10%);およそ0.05%〜約0.75%アジピン酸(有利なのは約0.27%±10%);およびおよそ0.05%〜約0.75%メチルパラ-ヒドロキシ安息香酸塩(有利なのは約0.10%±10%)を含むものである。
【0067】
一般に、本発明の組成物は通常の方法により製造することができる。本発明の組成物は様々な成分(例えば、トリプタン化合物、ポリアミン、添加物)を水または水溶媒混合物に溶解または分散することにより得ることができる。得られる化合物を次いで平滑な表面上に延ばすかまたは金型中に注ぎ、次いで固化して所望の形状を有するヒドロゲル組成物を得ることができる。これらのプロセスのステップの間に、または固化後に、組成物を最終製品(一般に医薬投与剤形)を生産するために必要な添加成分と組合わせることができる。
【0068】
しかし、本発明の組成物を製造するために、当業者が容易に実現しうる様々な代わりの方法を用いることができる。
【0069】
本発明はさらに、上記組成物の、経皮パッチの集積構成要素としての使用を包含する。好ましくは、かかる組成物を前記パッチに製造時に組み込んで、パッチの活性物質リザーバーを形成する。さらに本発明は、上記組成物の、イオントフォレシスパッチの集積成分、例えば、パッチのアノードリザーバーとしての使用を包含する。かかる組成物をイオントフォレシスパッチに製造時に組み込んで、パッチのアノードリザーバーを形成してもよい。上記投与剤形は、当技術分野で公知の製造方法により得ることができる。
【0070】
2. 本発明のパッチを用いて被験体を治療する方法
いくつかの実施形態において、本発明は、少なくとも1時間、被験体にトリプタン化合物の安定状態濃度を与えることにより、被験体をトリプタン化合物が関わる状態について治療する方法であって、前記化合物を静脈内に投与するのではない前記治療方法に関する。さらなる実施形態においては、前記化合物をイオントフォレシスパッチ経由で投与する。
【0071】
一実施形態において、本発明のパッチはトリプタン化合物の有効量の被験体への約2時間未満、約90分間未満、約1時間未満、約45分間未満、約30分間未満、約20分間未満の送達を可能にする。
【0072】
用語「被験体(または被験者)」には、トリプタン化合物が関わる状態を有することができる生物(例えば、哺乳動物)が含まれる。被験体の例には、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヤギ、ラットおよびマウスが含まれる。一実施形態において、被験体はヒトである。さらなる実施形態において、この用語はトリプタン化合物が関わる状態を患う被験体を含む。
【0073】
用語「有効量」は特定のトリプタン化合物が関わる状態を治療するのに有効であるトリプタン化合物の量を含む。
【0074】
一実施形態において、前記特定のトリプタン化合物はスマトリプタンであり、有効量は片頭痛を治療するのに有効である。この事例において、スマトリプタンの有効量は前記被験体の血漿中の約10ng/mL以上、約11ng/mL以上、約12ng/mL以上、約13ng/mL以上、約14ng/mL以上、約15ng/mL以上、約16ng/mL以上、約17ng/mL以上、約18ng/mL以上、約19ng/mL以上、約20ng/mL以上、約21ng/mL以上、約22ng/mL以上、または約22.5ng/mL以上の濃度でありうる。他の実施形態において、全身に送達されるスマトリプタンの有効量は約5mgより多く、約10mgより多く、または約15mgより多い。
【0075】
用語「治療」はトリプタン化合物が関わる状態の1以上の症候群の軽減または改善を含む。それにはまた、トリプタン化合物が関わる状態の発症または再発症の予防を含む。
【0076】
用語「トリプタン化合物が関わる状態」には、アルモトリプタンが関わる状態、ゾルミトリプタンが関わる状態、リザトリプタンが関わる状態、スマトリプタンが関わる状態、およびナラトリプタンが関わる状態が含まれる。この用語はまた、片頭痛、通常の片麻痺性片頭痛(前兆を伴うおよび伴わない)、慢性発作性頭痛、群発性頭痛、片頭痛頭痛、脳底動脈片頭痛、および自律神経性の症候群に随伴する非定形性頭痛を含む。ある特定の実施形態において、トリプタン化合物が関わる状態は片頭痛である。
【0077】
用語「送達」は、トリプタン化合物のパッチから被験体血漿への輸送を含む。ある特定の実施形態においては、パッチ中のトリプタン化合物のおよそl%〜30%(またはそれ以上)が治療コース全体にわたって被験体血漿へ送達される。用語「全身送達」は非経口投与を介する被験体への送達を含む。好ましい全身投与方法は経皮投与を含む。
【0078】
一実施形態において、本発明はトリプタン化合物、例えば、スマトリプタンまたはその塩を送達するためのイオントフォレシス経皮パッチに関するものであり、ここで前記パッチはスマトリプタンまたはその塩の有効量の被験体への全身送達を可能にする。
【0079】
用語「送達時間」はパッチがトリプタン化合物を被験体にイオントフォレシスで能動送達することにより、機能している期間を含む。
【0080】
他の実施形態において、パッチは被験体の血漿中のトリプタン化合物の定常状態濃度を少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも3時間、少なくとも4時間、または少なくとも5時間またはそれ以上維持することができる。
【0081】
なおさらなる実施形態において、パッチはスマトリプタンの有効量の送達を約1時間未満だけ可能にする。他のさらなる実施形態において、パッチは定常状態濃度を少なくとも2時間維持する。
【0082】
表現「定常状態濃度を維持する」は、特定の時間長さの間、特定の濃度(例えば、所望の濃度、例えば、有効量)を維持することを意味する。一実施形態において、被験体の血漿中のトリプタン化合物の濃度は平均濃度から、約10ng/ml以下、約9ng/ml以下、約8ng/ml以下、約7ng/ml以下、約6ng/ml以下、約5ng/ml以下、約4ng./ml以下、約3ng/ml以下、約2ng/ml以下、約1ng/ml以下、または約0.5ng/ml以下だけ変動する。
【0083】
本発明はまた、被験体にトリプタン化合物の有効量を1時間未満、イオントフォレシスパッチを用いて経皮投与することにより被験体を治療する方法にも関する。この実施形態において、パッチは電流が被験体の皮膚を実質的に刺激しないように選択した電流密度を用いる。パッチはトリプタン化合物の送達時間の有意な部分の間、0.25mA/cm2以下の平均電流密度を用いることができる。
【0084】
パッチは、本発明のトリプタン化合物状態を治療するのに必要なトリプタン化合物の量を送達するために有効である電流を使用することができる。一実施形態において、パッチは被験体の皮膚を実質的に刺激することなく、約0.5mAを超える、約1mAを超える、約2mAを超える、約3mAを超える、約4mAを超える、または約5mAを超える電流を使用する。一実施形態においては、パッチは約4mAの電流を約1時間使用する。
【0085】
他の実施形態において、パッチは被験体の皮膚を実質的に刺激することなく、約100mA分以上、約200mA分以上、約300mA分以上、約400mA分以上、約500mA分以上、約600mA分以上または約700mA分以上の電流を送達する。
【0086】
用語「有意な部分」は送達時間の少なくとも約30%以上、送達時間の少なくとも約40%以上、送達時間の少なくとも約50%以上、送達時間の少なくとも約60%以上、送達時間の少なくとも約70%以上、送達時間の少なくとも約75%以上、送達時間の少なくとも約80%以上、送達時間の少なくとも約85%以上、送達時間の少なくとも約90%以上、または 送達時間の少なくとも約95%以上を含む。
【0087】
表現「実質的に被験体の皮膚を刺激しない」は、パッチ除去後約2時間、約24時間、約2日間、約3日間、約4日間または約1週間、約2.50以下、約2.00以下、または約1.00以下の皮膚紅斑スコアしかもたらさないパッチを含む。他のさらなる実施形態において、表現「実質的に被験体の皮膚を刺激しない」は、パッチ除去直後に、約2.50以下、約2.00以下、または約1.00以下の皮膚紅斑スコアしかもたらすパッチを含む。他のさらなる実施形態において、本発明のパッチは本発明の方法に従って用いた場合、皮膚を傷付けることはない。
【0088】
他のさらなる実施形態において、本発明は被験体におけるトリプタン化合物が関わる状態を治療する方法にも関する。その方法は、集積パッチを用いて、被験体にトリプタン化合物の有効な定常状態濃度を経皮投与するステップを含むものである。さらなる実施形態において、有効濃度は少なくとも約20ng/mLである。
【0089】
他の実施形態において、本発明はまた、少なくとも部分的に、スマトリプタンが関わる状態について被験体を治療する方法にも関する。その方法は、被験体にスマトリプタンまたはその塩の有効量(例えば、約5mg以上、または約10mg以上)を投与して、被験体を治療するステップを含む。経皮投与はイオントフォレシスパッチの使用を含んでもよい。
【0090】
用語「経皮」は被験体の皮膚を穿刺することなく被験体の皮膚を通って起こる送達方法を含む。
【0091】
本明細書で使用する用語「約」および「およそ」は互換的に使用される。
【0092】
(実施例)
【実施例1】
【0093】
スマトリプタンコハク酸塩を送達するためのイオントフォレシスパッチの使用
単一施設、オープン標識、単回投与、5期間試験を実施して、本発明のスマトリプタンイオントフォレシス経皮パッチの4種のプロトタイプの薬物動態を、100mg経口スマトリプタンコハク酸塩を用いて、健常なボランティアにおいて比較した。被験者は、少なくとも、治療Aおよび治療Bに参加した。
【0094】
使用したイオントフォレシスパッチは自己充足型で外部電源を備え、皮膚表面に適用して、投薬負荷を全身送達するように設計された。
【0095】
この実施例のために調製したパッチ治療とプロトタイプイオントフォレシスパッチを下表2に詳述する。
【表2】

【0096】
9名の被験者が治療B(100mgスマトリプタンコハク酸塩の経口錠)に参加した。この研究はスクリーニング訪問と次いで治療A、B、C、DおよびEから成る。それぞれの治療期間の間には2日間の洗浄期間を置いた。
【0097】
治療AとC用のパッチは、上腕部の清浄で乾いた、比較的無毛の領域に適用した。治療は交互の腕部に適用した。治療DおよびEのパッチは、上背部の清浄で、乾いた、比較的無毛の領域に適用した。治療は上背部の交互に右と左の位置に適用した。PK血液サンプルは5期間のそれぞれに対して被験者1名当たりの採集を予定した。
【0098】
皮膚上の接着および皮膚刺激ならびに接着残渣量を含むイオントフォレシス送達系評価を、治療A、C、DおよびEの間で実施した。
【0099】
被験者は健常な成人ボランティア(4名の男性と5名の女性)であり、自発的に5回の治療期間に診療所に来訪した。被験者は、指名医師の承認がない限り、研究実施前の2週間、他の医薬(処方薬または一般用医薬品)を使用しなかった。研究参加者は19〜50歳であった。平均年齢は28歳であった。
【0100】
表2に記載した5種の治療を5臨床期間に投与した。5種の投薬治療のうちの4種は本発明の製剤から成るパッチを用いるものであった。パッチは治療期間に応じて上腕部または上背部に適用した。
【0101】
治療Bにおいて、被験者はイミグランFTab経口錠(100mgスマトリプタンコハク酸塩)を240mLの水と共に、一晩絶食後に受けた。被験者は投薬後4時間絶食した。
【0102】
治療A、C、DおよびE用の薬物リザーバーパッド(アノード)製剤は次の通りであった:10%ポリアミン製剤+4%スマトリプタンコハク酸塩(120mgまでのスマトリプタンを負荷)。
【0103】
治療A、C、DおよびE用の塩リザーバーパッド(カソード)製剤は次の通りであった:2%ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)およびNaCl。
【0104】
研究期間中に重大な有害事象は報じられなかった。最も高頻度で報じられた有害事象は治療B(スマトリプタンコハク酸塩100mg経口錠)に関係する頭痛ならびにパッチ治療A、C、DおよびEに対する刺痛およびパッチ部位のかゆみであった。
【0105】
それぞれのパッチ治療に対する平均皮膚紅斑スコアも計算した。それぞれの4種のパッチ治療に対して、パッチ除去直後、平均スコアは1.40以下であった。72時間後、平均スコアはそれぞれ1.00より低かった。
【0106】
等価物
当業者は、通常の実験だけを用いて本明細書に記載した具体的な手順に対する多数の等価物を確認できることを理解するであろう。かかる等価物は本発明の範囲内にあると考えられ、次の請求項に包含される。本出願全体に引用した全ての参照、特許および特許出願の内容は本明細書に参照により組み入れられる。これらの特許、出願および他の文書の適当な成分、プロセス、および方法を本発明およびその実施形態に対して選択することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリプタン化合物またはその塩を送達するためのイオントフォレシス経皮パッチであって、前記パッチがアノードリザーバー、およびカソードリザーバーを含むものであり、前記リザーバーの少なくとも1つがポリアミン、水、トリプタン化合物またはその塩、および任意に1種以上の添加物を含む混合物を含むものである前記パッチ。
【請求項2】
前記混合物が少なくとも約80%水および約0.2%〜約10%トリプタン化合物を含む、請求項1に記載のイオントフォレシス経皮パッチ。
【請求項3】
前記溶液が約10%〜約18%ポリアミンを含むものである、請求項1または2に記載のイオントフォレシス経皮パッチ。
【請求項4】
前記ポリアミンがメタクリレートコポリマーである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のイオントフォレシス経皮パッチ。
【請求項5】
前記メタクリレートコポリマーがアルキルメタクリレートコポリマーである、請求項4に記載のイオントフォレシス経皮パッチ。
【請求項6】
前記溶液が約0.01%〜約1.0%抗菌剤を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のイオントフォレシスパッチ。
【請求項7】
前記溶液が約0.5%〜約7.0%ラウリン酸を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載のイオントフォレシスパッチ。
【請求項8】
前記溶液がさらに約0.1%〜約2.0%アジピン酸を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載のイオントフォレシスパッチ。
【請求項9】
前記トリプタン化合物がアルモトリプタン、フロバトリプタン、エレトリプタン、ゾルミトリプタン、リザトリプタン、スマトリプタン、ナラトリプタン、またはそれらの製薬上許容される塩である、請求項1〜8のいずれか1項に記載のイオントフォレシス経皮パッチ。
【請求項10】
前記トリプタン化合物がスマトリプタンまたはその塩である、請求項9に記載のイオントフォレシス経皮パッチ。
【請求項11】
前記トリプタン化合物がスマトリプタンコハク酸塩またはスマトリプタン塩酸塩である、請求項10に記載のイオントフォレシス経皮パッチ。
【請求項12】
前記パッチが前記トリプタン化合物またはその塩の有効量を、実質的に被験体の皮膚を刺激することなく投与できる、請求項1〜11のいずれか1項に記載のイオントフォレシス経皮パッチ。
【請求項13】
前記パッチが前記トリプタン化合物またはその塩の有効量を、実質的に皮膚pHに影響を与えることなく投与できる、請求項1〜12のいずれか1項に記載のイオントフォレシス経皮パッチ。
【請求項14】
前記パッチが前記トリプタン化合物またはその塩の有効量を、実質的に皮膚温度に影響を与えることなく投与できる、請求項1〜13のいずれか1項に記載のイオントフォレシス経皮パッチ。
【請求項15】
前記溶液が約3〜約8のpHを有する、請求項1〜14のいずれか1項に記載のイオントフォレシス経皮パッチ。
【請求項16】
前記溶液が約5.5〜約7のpHを有する、請求項15に記載のイオントフォレシス経皮パッチ。
【請求項17】
前記溶液が約6のpHを有する、請求項16に記載のイオントフォレシス経皮パッチ。
【請求項18】
前記リザーバーは溶解促進剤、浸透促進剤、および/または抗菌剤を含む、請求項1〜17のいずれか1項に記載のイオントフォレシス経皮パッチ。
【請求項19】
前記パッチはパッチの使用中に操作するバッテリーを含む、請求項1〜18のいずれか1項に記載のイオントフォレシス経皮パッチ。
【請求項20】
前記アノードリザーバーは前記溶液を含む、請求項1〜19のいずれか1項に記載のイオントフォレシス経皮パッチ。
【請求項21】
前記パッチは被験体の皮膚を実質的に刺激しない電流を送達する、請求項1〜20のいずれか1項に記載のイオントフォレシス経皮パッチ。
【請求項22】
前記パッチは所望の濃度の前記トリプタン化合物を1時間未満送達する、請求項1〜21のいずれか1項に記載のイオントフォレシス経皮パッチ。
【請求項23】
被験体を治療する方法であって、請求項1〜22のいずれか1項に記載のイオントフォレシス経皮パッチを用いて有効量のトリプタン化合物またはその塩を被験体に投与するステップを含むものである前記方法。
【請求項24】
前記有効量がトリプタン化合物が関わる状態を治療するために有効である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記トリプタン化合物が関わる状態が片頭痛である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
スマトリプタンまたはその塩を送達するためのイオントフォレシス経皮パッチであって、前記パッチはアノードリザーバーとカソードリザーバーを含み、前記アノードリザーバーはアルキルメタクリレートコポリマーポリアミンと溶液を含み、前記溶液は少なくとも約80%の水、約0.5%〜約10%のスマトリプタンまたはその塩、約0.02%〜約0.5%のパラ安息香酸メチル、約1.0%〜約5.0%のラウリン酸および約0.05%〜約0.75%のアジピン酸を含むものである、前記イオントフォレシス経皮パッチ。
【請求項27】
スマトリプタンまたはその塩はスマトリプタンコハク酸塩である、請求項26に記載のイオントフォレシス経皮パッチ。
【請求項28】
スマトリプタンまたはその塩を送達するためのイオントフォレシス経皮パッチであって、前記パッチはアノードリザーバーおよびカソードリザーバーを含み、前記アノードリザーバーは
およそ3.0%〜約5.0%スマトリプタンコハク酸塩;
およそ84%〜約88%水;
およそ4.0%〜約7.0%アルキルメタクリレートコポリマー;
およそ1.0%〜約5.0%ラウリン酸;
およそ0.05%〜約0.75%アジピン酸;および
およそ0.05%〜約0.75%パラ-ヒドロキシ安息香酸メチル
を含むものである前記イオントフォレシス経皮パッチ。

【公表番号】特表2011−524901(P2011−524901A)
【公表日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−514567(P2011−514567)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際出願番号】PCT/US2008/081837
【国際公開番号】WO2009/154648
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(510331652)ニューパス インコーポレーテッド (5)
【Fターム(参考)】