説明

トルクレンチを校正するための操作装置

【課題】データ記憶装置14を備えたトルクレンチ12を検査する操作装置において、トルクレンチの検査を迅速かつ効率的に実施できるようにする。
【解決手段】検査すべきトルクレンチ12を固定するために支持体18が用いられる。支持体18には測定値センサ22が配置されており、この測定値センサ22は検査すべきトルクレンチ12のヘッドピース36と結合される。支持体18に配置されたグリップホルダ30により、検査すべきトルクレンチ12のグリップが固定される。変位機構53により、検査すべきトルクレンチ12のヘッドピース36にトルクが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、a)検査すべきトルクレンチを固定するための支持体と、b)該支持体に配置され検査すべきトルクレンチのヘッドピースと結合される測定値センサと、c)前記支持体に配置され検査すべきトルクレンチのグリップを固定するためのグリップホルダと、d)検査すべきトルクレンチのヘッドピースにトルクを加える変位機構が設けられている、データ記憶装置を備えたトルクレンチを検査する操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トルクレンチはねじ結合を行う工具であって、その際、規定された力でねじにプレロードないしは予負荷が加えられる。この場合、ねじ結合部には大きいプレロードが加えられる可能性もあるし、小さいプレロードが加えられる可能性もある。マグネシウム、アルミニウム、プラスチックといった新しい構造材料がいっそう多く利用されるようになると、損傷を受けやすい敏感なねじ結合部の個数が増加し続けることになる。
【0003】
トルクレンチはグリップとレンチヘッドを備えたレンチレバーから成り、その際、レンチヘッドは四角形ピンとして形成されていることが多く、他の工具を受け入れるための連結部として用いられる。つまり四角形ピンに対し、雄ねじまたは雌ねじを回転させるための様々な差込工具を差し込むことができる。ねじ締結にあたり、ユーザによりレンチレバーに力が加えられ、そのようにしてこの力はレンチヘッドに伝達され、それによって雄ねじまたは雌ねじにトルクが発生する。トルクレンチは、加えられたトルクを測定するための測定装置を有している。さらに別の装置によって、測定されたトルクを継続的に表示したり、あるいは設定されたトルクに到達したことを通報したりすることができる。
【0004】
トルクレンチは機械的または電子的な種々の形態で存在する。機械的なトルクレンチのグループには、たとえばいわゆる屈曲式レンチというものがあり、これは所望のトルクに達したときに曲がるかまたは折れるようになり、このようにすることでさらにトルクが加わるのが回避される。電子トルクレンチつまりディジタル表示型トルクレンチの場合には、たとえば撓みバーまたはトーションバーに設けられた歪みゲージによって測定が行われる。歪みゲージは、変形がわずかであってもその電気抵抗に変化を生じさせる。歪みゲージは特別な接着剤によって、たとえば撓みバーまたはトーションバーのような鋼部材に貼り付けられる。トーションバーの一例として、両端部で固定的に張設されており中央部にばねを備えたバーを挙げておく。これによりトーションバーの回転軸を中心にした回転運動が可能となり、歪みゲージによってこの回転運動を測定することができる。このようにして得られた測定信号がディスプレイに表示される。ねじを締め付けていく間、発生したトルクをLEDまたはディスプレイを利用して持続的にチェックすることができる。このような形式のトルクレンチの場合、行われたすべての測定もしくはリリースを内部の測定値記憶装置にパラレルに格納することができる。このような測定値記憶装置はインタフェースを介していつでも再び読み出し可能であり、あるいは接続されたプリンタからダイレクトに印刷することができる。
【0005】
トルクレンチの測定装置は、通常の摩耗現象および疲労現象の影響を受ける。測定装置により測定されたトルクが加えられたトルクと一致しているか否かをコントロールするために、トルクレンチを操作装置によって時折校正する必要があり、場合によっては調節する必要がある。この目的で操作装置には、測定値センサとグリップホルダを備えた支持体が設けられている。その際、トルクレンチのヘッドピースが、たとえば四角形ピンによって測定値センサと固定的に連結される。トルクレンチのグリップはグリップホルダにより固定される。ついで変位機構によって、トルクレンチのヘッドピースにトルクが加えられる。このトルクは測定値センサにより測定され、操作装置においてたとえば測定値センサのところに設けられたディスプレイによって表示される。このようにすることで、リリースに関してトルクレンチにより指示されるトルクまたはトルクレンチに対し設定されているトルクを、ディスプレイに表示されたトルクとの比較によって検査することができる。
【0006】
トルクレンチを検査するための公知の操作装置の場合、トルクを発生させるために様々な変位機構が利用される。トルクレンチのヘッドピースにトルクを発生させるために、基本的に2つの形態が可能である。つまりこの場合、測定値センサが支持体に旋回可能に取り付けられグリップホルダが支持体と固定的に接続されているか、あるいはこれとは逆に測定値センサが支持体と固定的に接続されグリップホルダが支持体に可動に取り付けられている。
【0007】
校正の工程はまえもって決められており、たとえばDINなど特定の規格に沿って行われる。トルクレンチを検査するため、測定開始にあたりトルクレンチの定格トルクの100%のところで5回予負荷が加えられる。その後、定格トルクの20%、60%さらには100%のところで5回負荷が加えられる。従来公知の操作装置の場合には、検査トルクをトルクレンチにおいて個別に生じさせなければならない。たとえば伝動装置として構成することもできる変位機構を介して、電動モータからトルクレンチヘッドに力が伝達される。検査すべきトルクレンチのトルクは測定値センサにより捕捉される。したがって検査員は、必要とされる検査トルクを入力しなければならないし、測定値センサによって求められた値を読み取らなければならない。つまりこのことは、要求されている規格に従ってトルクレンチの校正を実施するために多大な時間がかかることを意味する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって本発明の課題は、従来技術の欠点を回避し、トルクレンチの検査を迅速かつ効率的に実施できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によればこの課題は、d)通信ユニットが設けられており、該通信ユニットはデータ交換のため、前記トルクレンチのデータ記憶装置と接続されていることにより解決される。
【0010】
本発明は、通信ユニットとトルクレンチとの間でデータ交換を行うという原理に基づくものである。従来技術の操作装置の場合、校正のコントロールは検査員により手動で行われていた。テストすべきトルクレンチの定格トルクおよびそれによって得られる検査トルクは、これまで検査員自体が計算し、ついで手動でそれを入力して動かしていた。本発明による通信ユニットによれば、トルクレンチの校正の自動化が実現される。基本的に本発明による操作装置を、ここで説明するトルクレンチとは別のトルク工具にも適用することができ、たとえばトルクを捕捉するためにトルクねじドライバ等にも利用できる。本発明による通信ユニットにより得られる格別な利点とは、検査員の入力エラーを回避することができる点、検査プロセスを加速させることができる点にある。
【0011】
本発明の1つの有利な実施形態によれば、トルクレンチのデータ記憶装置が電子的に構成されている。これにより、通信ユニットとトルクレンチとのダイレクトなデータ交換が可能になる、という利点が得られる。このために有利であるのは、通信ユニットがメモリを備えたディジタルプロセッサを有することである。電子的なデータ交換により、検査すべきトルクレンチの定格トルクを通信ユニットにダイレクトに読み込ませることができる。これによって迅速かつ精確な検査を実行することができる。
【0012】
本発明の別の有利な実施形態によれば、通信ユニットとトルクレンチとの接続はケーブル接続、無線接続または赤外線接続として形成されている。このインタフェースにより、通信ユニットとトルクレンチとの間における高速データ交換が可能となる。しかも、殊に無線接続または赤外線接続によって、操作装置と通信ユニットとの空間的な分離が可能となる。検査員は場合によっては、1つの通信ユニットを用いて複数の操作装置を扱うことができる。さらに別の実施形態によれば、複数の操作装置を集中的に1つの通信ユニットを介して管理することができる。このやり方はきわめて経済的であり、複数のトルクレンチの校正に必要とされるスペースが僅かになる。
【0013】
本発明の1つの有利な実施形態によれば、トルクレンチは調整されたトルクに対しリリースされるように構成されており、この場合、そのつど検査を行おうとするリリースすべきトルクが、通信ユニットによってトルクレンチの電子データ記憶装置内で調整される。このようにすることで、検査員が個々の検査トルクを計算し手動で入力する必要がもはやなくなる、という格別な利点が得られる。通信ユニットにより、トルクレンチの規格化ないしは標準化のためにそれ相応の検査トルクがダイレクトに定められ、それがトルクレンチの電子データ記憶装置に転送される。このようにすれば、検査員は個々の検査トルクをもはや手動で入力しなくてもよいので、トルクレンチの測定をきわめて迅速かつ精確に行うことができる。
【0014】
さらに別の有利な実施形態によれば、トルクレンチのデータ記憶装置は光学的なコードとして構成されている。この場合、測定に係わるデータはトルクレンチの光学コードに格納される。通信ユニットへそれらが入力された後、対応する検査トルクが求められ、測定に用いられる。本発明のこのような措置によって、電子的ではないトルクレンチも操作装置によって校正することができる。検査員は光学コードを利用してトルクレンチの検査トルクを通信ユニットへ伝達するので、個々の検査トルクをもはや手動で入力する必要がなくなる。
【0015】
光学コードの設けられたトルクレンチに関する本発明のさらに別の実施形態によれば、通信ユニットは光学コードを読み取るためのスキャナを有している。これにより、光学コードを手動で入力したときに生じるおそれのある検査員のエラーを回避できる、という利点が得られる。その際、スキャナは通信ユニットとダイレクトに接続されており、これによってトルクレンチのデータ入力が格段に短縮され最適化される。この場合、光学コードをたとえばバーコードとして構成することができる。
【0016】
本発明のさらに別の有利な実施形態によれば測定値センサには、それに対応して少なくとも1つの測定値をディジタル記憶するためのディジタルデータメモリが設けられている。これによれば、測定されたトルク値の記憶によりユーザが検査工程を記録でき検査工程を保管できるようになる、という利点が得られる。ディジタルメモリを設けることでさらに得られる利点とは、様々な検査工程相互間の比較ひいては検査工程の再現性が保証されることである。
【0017】
トルクレンチの伝達データおよび/または測定値センサの少なくとも1つの測定値を処理および/または記憶するために、評価ユニットが設けられていると有利である。このようにすることで、作成された測定記録を以前の記録とまたは以降の記録とも比較することができる。さらにこのような評価ユニットを設けることで、様々なトルクレンチをそれらの測定特性について互いに比較できる、という利点が得られる。これによってトルクレンチの種々異なる製品を、それらの摩耗現象に基づき比較し判定することができる。
【0018】
有利な実施形態によれば、データ記憶装置を備えたトルクレンチを校正する操作装置は、検査すべきトルクに関して変位機構を制御する制御装置を有している。このようにすることで、変位機構によって検査トルクをトルクレンチのヘッドに精確に伝達できる、という利点が得られる。制御装置がたとえば通信ユニットと適切なやり方で通信すれば、トルクレンチの校正を自動的に実行することができる。
【0019】
さらに別の有利な実施形態によれば、データ記憶装置を備えたトルクレンチを検査する操作装置に、変位機構を操作する調整モータが設けられている。この構成により、変位レバーの均等な変位ないしは旋回が保証される。このことで検査員は通常のようにクランクないしはハンドルを用いて変位レバーを動かす必要がなくなり、したがってそのつど異なる締め付け速度により生じる測定誤差が回避される。この場合、モータの適切な駆動制御により測定プロセスが簡単に自動化される。
【0020】
本発明の別の有利な実施形態によれば、データ記憶装置を備えたトルクレンチを検査する操作装置に、トルクレンチから通信ユニットへ伝達されるデータに従い変位機構を制御する手段が設けられている。この手段をたとえば、駆動部により駆動されるスピンドルまたはベルトドライブとすることができる。この場合、たとえば電動モータなどによるダイレクトな駆動も考えられる。
【0021】
さらに本発明の有利な実施形態によれば、データ記憶装置を備えたトルクレンチを検査する操作装置に、トルクレンチを調節する手段が設けられている。トルクレンチ測定後、これを場合によっては調節する必要もある。この調節を工具により手動で行うこともできるし、あるいは相応の装置により機械的に行うこともできる。調節を行った後ではじめて、トルクレンチを再び作業に使用することができる。
【0022】
本発明の1つの有利な実施形態によれば、トルクレンチを測定するためのデータを有するデータベースが格納されているデータ記憶装置が設けられている。これによって通信ユニットは、たとえばトルクレンチの記憶装置容量を超えてしまうようなデータ量にアクセスすることができる。この場合、測定すべきトルクレンチのシリアル番号を把握しているだけで十分である。通信ユニットは、測定プログラムのための対応するデータを上述のデータベースから取り出す。
【0023】
従属請求項、図面ならびにそれらの図面に付随する説明には、さらに別の実施形態および利点が示されている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による通信ユニットを備えた操作装置の基本構成を示す平面図
【図2】操作装置の基本構成を上方から3次元で示した図
【図3】操作装置の基本構成を下方から3次元で示した図
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1には、データ記憶装置14および操作パネル16を備えたトルクレンチを検査するための操作装置10が示されている。操作装置10は、2つのスタンド脚部20を備えた支持体18から成り、これら2つのスタンド脚部20を場合によっては台架とねじ留めすることができ、これによっていっそう安全なスタンドを実現することができる。支持体18には測定値センサ22が取り付けられており、これには揮発性データメモリ24が設けられている。揮発性データメモリ24は接続ライン26を介して通信ユニット28と結線されており、この通信ユニット28をたとえばプロセッサ制御型ボードとして構成することができる。さらに支持体18にはグリップホルダ30が設けられており、これには第1および第2のピン32,33が設けられている。トルクレンチ12のグリップ34は、グリップホルダ30においてピン32とピン33との間に配置されている。トルクレンチ12のヘッド36は、収容部38によって測定値センサ22と固定的に結合される。
【0026】
操作装置10はサーボモータ40を装備しており、サーボモータ40はモータ制御装置42によりケーブル44を介して駆動制御される。サーボモータ40はベルトドライブ49の小さいディスク46を駆動する。変速のため、ベルト48は大きいディスク50に伝達され、これはスピンドル52と接続されている。スピンドル52は変位機構53内に設けられている。このため変位機構53は、操作装置10において支持体18の下側に設けられている。
【0027】
通信ユニット28は、トルクレンチ12のデータ記憶装置12および測定値センサ22のデータメモリ24とライン54,56を介して接続されている。さらに通信ユニット28は、モータ制御装置42を経由してサーボモータ40と接続ライン58,59を介してつながった状態にある。この場合、通信ユニット28はデータバス60を有しており、このデータバス60には周辺機器たとえば記憶装置ドライブ62や処理ユニットとしてのデータ処理装置64などと接続されている。通信ユニット28のデータバス60により、適切なプリンタインタフェース66を介してプリンタ68をダイレクトに駆動制御することができ、プリンタ68によってたとえば校正者証や他の測定記録を印刷することができる。通信ユニット28はディスプレイ70を有しており、これは操作パネル72を利用して操作される。
【0028】
さらにスキャナ74を通信ユニット28に接続することができる。トルクレンチ12が適切なディジタルデータ記憶装置14を利用できないのであれば、トルクレンチ12に関する情報を別にバーコードとして格納しておき、トルクレンチに貼り付けることもできる。この場合、このバーコードをスキャナ74によって読み出して、通信ユニット28に伝達することができる。電圧供給部76により操作装置10が電気的に給電される。
【0029】
図2には、通信ユニット28を備えた操作装置10が示されている。通信ユニット28には、操作パネル72を備えたディスプレイ70が示されている。通信ユニット28は、取り付け手段78によってグリップホルダ30と接続されている。グリップホルダ30のブリッジ80にはピン32,33が配置されている。第1のピン32はスリーブ82を有しており、このスリーブ82は下端部で載置面84におかれている。スリーブ82はピン32においていくらか変位可能であり、クランプねじ86によってそこに固定することができる。第1のピン32においてスリーブ82が変位可能なことで、測定プロセス中に垂直方向の摩擦力が生じるのを十分に避けることができる。これによってトルクレンチ12に対し均等にトルクを伝達できるようになる。
【0030】
グリップホルダ30は、クランプレバー88によって操作装置10のレール90にロックされる。クランプレバー88を緩めることにより、グリップホルダ30全体を支持体18のレール90上でスライドさせることができる。このようにして操作装置10を、校正すべきトルクレンチ12の様々なサイズに整合させることができる。トルクレンチ12のヘッド36は、収容部38によって測定値センサ22と固定的に結合されている。操作装置10の側方にはベルトドライブ49の大きいディスク50が示されている。
【0031】
図3には、操作装置10を下方から見た様子が示されている。この図には変位機構53が明確に示されている。変位レバー92は、その端部でスピンドルキャリッジ94と枢着結合されている。スピンドルキャリッジ94はねじ山付き孔95を有している。ねじ山付き孔95とスピンドル52との共働により、スピンドルキャリッジ94はスピンドル52の回転によりスピンドル軸に沿って回転方向に応じて一方の方向または他方の方向に駆動される。スピンドルキャリッジ94が安定して案内されるようにする目的で、スピンドル52に対し平行にガイドレール98が付加的に設けられている。
【0032】
ボルト96により変位レバー92がスピンドルキャリッジ94のところで枢着式に保持されており、他方、測定時には変位レバー92がスピンドルキャリッジ94によりスピンドル軸に沿って旋回される。変位レバー92の他方の端部には回転ピン100が設けられており、これは支持体18の切り欠きを通して案内され、測定値センサ22ともトルクレンチ12のヘッド36とも結合されている。回転ピン100は軸受け102によって支持体18に旋回可能に保持される。モータ制御装置42により制御されるサーボモータ40はスピンドル52の後方に取り付けられており、ベルトドライブ49の小さいディスク46を駆動する。操作装置10の側方には給電端子76が示されている。種々のインタフェース106を介して、操作装置10を他の機器と接続することができる。
【0033】
次に、操作装置100の動作について説明する。
【0034】
測定時、トルクレンチ12のヘッド36が収容部38を介して測定値センサ22に装填される。トルクレンチ12のグリップ34はグリップホルダ30に位置しており、グリップホルダ30はグリップ34の長さに応じて支持体18のレール90上で可動に調節可能である。トルクレンチ12のデータ記憶装置14はライン54を介して通信ユニット28と接続されている。通信ユニット28はトルクレンチ12のデータ記憶装置14を読み出し、これによってそこに格納されているたとえば定格トルク、トルクレンチタイプ、シリアルナンバーおよび/または実施すべき測定のための検査プログラムを取得することができる。トルクレンチ12の定格トルクならびに目標値がディスプレイ70に表示される。ついで通信ユニット28または接続されている処理ユニットは、実行すべき検査トルクを内部で計算する。
【0035】
サーボモータ40の駆動部を制御するモータ制御装置42を介して、計算された検査トルクのうち1つの検査トルクの命令が通信ユニット28に与えられ、トルクレンチ12に作用が及ぼされる。このためベルトドライブ49の大きいディスクによってスピンドル52が操作される。スピンドル52により操作装置10の変位レバー92が旋回し、それによって検査トルクが変位レバー92により回転ピン100を介してトルクレンチ12のヘッドピース36に伝達される。
【0036】
次に、測定値センサ22は発生トルクを測定する。測定結果はバッファメモリとして設けられている揮発性メモリ24に格納され、通信ユニット28により読み出される。これに続いて実際値が、通信ユニット28においてダイレクトにまたは外部の処理ユニット64において目標値と比較される。測定終了後、データがプリンタ68に転送され、プリンタ68によってたとえば校正者証などを印刷することができる。これに対する代案として、またはこれと組み合わせて、データ処理装置64にデータを格納して保管することができる。
【0037】
トルクレンチ12の調節を、測定後に手動でまたは通信ユニット28によりダイレクトに行うことができる。この目的で、それ相応に校正に合わせて整合されたデータもしくはディジタル特性曲線をトルクレンチ12のデータ記憶装置14に書き戻すことができる。
【0038】
トルクレンチ12の検査は、一般にそれぞれ異なる検査トルクによって実行される。検査は定められた規格のもとで行われ、比較できるよう常に同じように実行されなければならない。検査ごとにたとえば5つのプレロードが、検査すべきトルクレンチ12における定格トルクの100%で実行される。その後、定格トルクの20%、50%さらには100%のところでそれぞれ5回の検査が行われる。
【0039】
その後、通信ユニット28は、検査に必要なすべての作業ステップを完全に自動的に制御することができる。それらの作業ステップとして挙げられるのは一方では、個々のトルクレンチ12の定格検査トルクを通信ユニット28によりトルクレンチ12のデータ記憶装置14から読み込むことである。他方、必要とされる検査トルクが通信ユニット28もしくは外部の処理装置64から自動的に計算され、トルクレンチ12の検査が導入される。その際、種々のタイプのトルクレンチ12のためのデータを、処理装置64のデータベースに格納しておくこともできる。たとえばトルクレンチタイプまたはシリアルナンバーをデータ記憶装置14から読み出した後、処理装置64のデータベースに対し相応の測定プログラムについて問い合わせることができる。この目的で通信ユニット28によりデータベースが読み出され、読み出されたデータに基づき検査が行われる。それにより得られたデータは、モータ制御装置42を介してサーボモータ40へ転送される。サーボモータ40により変位機構53が相応に駆動制御される。
【0040】
通信ユニット28は中央ステーションとして、トルクレンチ12を校正するシーケンス全体をコントロールする。測定時にどうしても発生する検査員の入力エラーは通信ユニット28により除外される。時間経過は格段に短縮され、トルクレンチ12の校正は経済的に最適なものとなる。さらにこれによって測定シーケンスを完全に自動的に記録することができる。この記録をディジタル形式で保管および/または印刷することができる。
【符号の説明】
【0041】
10 操作装置
12 トルクレンチ
14 データ記憶装置
16 操作パネル
18 支持体
20 スタンド脚部
22 測定値センサ
24 揮発性データメモリ
26 接続ライン
28 通信ユニット
34 グリップホルダ
32 第1のピン
33 第2のピン
34 トルクレンチグリップ
36 トルクレンチヘッド
38 収容部
40 サーボモータ
42 エンジン制御装置
44 ケーブル
46 小さいディスク
48 ベルト
49 ベルトドライブ
50 大きいディスク
52 スピンドル
53 変位機構
54,56 ライン
58、59 接続ライン
60 データバス
62 記憶装置ドライブ
64 データ処理装置
66 プリンタケーブル
68 プリンタ
70 ディスプレイ
72 操作パネル
74 スキャナ
76 給電端子
78 取り付け手段
80 ブリッジ
82 スリーブ
84 プレート状載置面
86 クランプねじ
88 クランプレバー
90 レール
92 変位レバー
94 スピンドルキャリッジ
95 ねじ山付き孔
96 ボルト
98 ガイドレール
100 回転ピン
102 軸受け
104 ピン
106 種々のインタフェース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)検査すべきトルクレンチ(12)を固定するための支持体(18)と、
b)該支持体(18)に配置され検査すべきトルクレンチ(12)のヘッドピース(36)と結合される測定値センサ(22)と、
c)前記支持体(18)に配置され検査すべきトルクレンチ(12)のグリップ(34)を固定するためのグリップホルダ(30)と、
d)検査すべきトルクレンチ(12)のヘッドピース(36)にトルクを加える変位機構(53)が設けられている、
データ記憶装置(14)を備えたトルクレンチ(12)を検査する操作装置(10)において、
e)通信ユニット(28)が設けられており、該通信ユニット(28)はデータ交換のため、前記トルクレンチ(12)のデータ記憶装置(14)と接続されていることを特徴とする、
データ記憶装置(14)を備えたトルクレンチ(12)を検査する操作装置。
【請求項2】
前記データ記憶装置(14)は電子的に構成されている、請求項1記載の操作装置。
【請求項3】
前記通信ユニット(28)と前記トルクレンチ(12)との接続は、ケーブル接続、無線接続または赤外線接続として形成されている、請求項1または2記載の操作装置。
【請求項4】
前記トルクレンチ(12)は調整されたトルクに対しリリースされるように構成されており、それぞれ検査を行おうとするリリースすべきトルクは前記通信ユニット(28)により、前記トルクレンチ(12)の電子的なデータ記憶装置(14)において調整される、請求項2または3記載の操作装置。
【請求項5】
前記データ記憶装置(14)は光学的なコードとして構成されている、請求項1記載の操作装置。
【請求項6】
前記通信ユニット(28)は前記光学的コードを読み取るためのスキャナ(74)を有している、請求項1記載の操作装置。
【請求項7】
前記測定値センサ(22)に対応して少なくとも1つの測定値のディジタル記憶を行うディジタルデータメモリ(24)が設けられている、請求項1から6のいずれか1項記載の操作装置。
【請求項8】
前記トルクレンチ(12)の伝達されたデータおよび/または前記測定値センサ(22)の少なくとも1つの測定値を処理および/または記憶するための評価ユニッ(64)が設けられている、請求項1から7のいずれか1項記載の操作装置。
【請求項9】
検査すべきトルクに対し変位機構(92)を制御する制御装置(28)が設けられている、請求項1から8のいずれか1項記載の操作装置。
【請求項10】
前記変位機構(53)を操作する調整モータ(40)が設けられている、請求項1から9のいずれか1項記載の操作装置。
【請求項11】
前記トルクレンチ(12)から前記通信ユニット(28)へ伝達されるデータに従い変位機構を制御する手段が設けられている、請求項1から10のいずれか1項記載の操作装置。
【請求項12】
前記トルクレンチ(12)を調節する手段が設けられている、請求項1から10のいずれか1項記載の操作装置。
【請求項13】
前記トルクレンチ(12)の測定のためのデータを有するデータベースが格納されているデータ記憶装置が設けられている、請求項1から10のいずれか1項記載の操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−210578(P2009−210578A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−45211(P2009−45211)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(593087949)エドゥアルト ヴィレ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (8)
【氏名又は名称原語表記】Eduard Wille GmbH & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Lindenallee 27, D−42349 Wuppertal, Germany
【Fターム(参考)】