説明

トレイ強制排出機構

【課題】 トレイ強制排出機構を作動させる治具の差し込み量に応じて、効率よくトレイを強制排出することが可能なトレイ強制排出機構を提供すること。
【解決手段】 光ディスクが載置されるトレイ12を強制的に排出させるトレイ強制排出機構であって、光ディスク装置10は、光ディスク装置10のカバーケースに設けられた治具差込穴Hと、治具差込穴Hに差し込んだ治具Jの先端部が当接し、治具Jの差込方向と直交する方向に当接部52が回動するように設けられた回動部材50と、回動部材50が回動することにより、回動部材50の当接部52によって押圧され、治具Jの差込方向と直交する方向に移動してトレイ12を排出方向に移動させる作動ピン34とを有し、作動ピン34と当接する当接部52は、回動部材50の回動角度に応じて複数箇所で作動ピン34と当接可能に形成されていることを特徴とするトレイ強制排出機構である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光ディスク装置のトレイ強制排出機構に関し、より詳細には、トレイ強制排出機構を作動させる治具の差し込み量に応じて、効率よくトレイを強制排出することが可能なトレイ強制排出機構に関する。
【背景技術】
【0002】
図3は一般的な光ディスク装置において、カバーケースを取り外した状態における下方からの斜視図である。図4は、図3のメインシャーシを省略した図である。
光ディスク装置10は、図示しないカバーケースの前面側から出し入れ可能に配設されたトレイ12と、光ディスクを回転駆動するスピンドルモータ(共に図示せず)と、一端縁側がメインシャーシ15に、他端縁側がサブシャーシ16に取り付けられたメカシャーシ20と、メカシャーシ20において光ディスクの径方向に移動自在に設けられた光ピックアップ(図示せず)と、カバーケースの内部空間に位置決めされて収容されるメインシャーシ15と、メインシャーシ15の両側壁面の内側に軸支されて取り付けられたサブシャーシ16を有している。メカシャーシ20は、光ディスク装置10の奥側(図3において上側)の一端縁20Aがメインシャーシ15にネジ止めなどにより固定され、光ディスク装置10の手前側の一端縁20Bがネジ止めなどによりサブシャーシ16に固定されている。
【0003】
図4に示すように、サブシャーシ16はほぼコの字形に形成されている。サブシャーシ16の両端部分には、メインシャーシ15に軸支させるための取付ピン16Aが設けられている。また、サブシャーシ16の前面には、前面側に突出するスライドピン16Bが形成されている。サブシャーシ16の取付ピン16Aは、メインシャーシ15に設けられた取付穴(図示せず)に配設されている。サブシャーシ16は、取付ピン16Aを回転軸としてメインシャーシ15に回動可能に取り付けられている。すなわち、サブシャーシ16は、トレイ12と接離動する方向に回動するのである。なお、サブシャーシ16は、メインシャーシ15に対して左右方向の動きは拘束されている。
メインシャーシ15には、サブシャーシ16に設けられたスライドピン16Bが誘導される長孔32が形成されたスライド板30がスライド可能に配設されている。
【0004】
トレイ12の底面にはガイド溝40が設けられている(図3)。ガイド溝40はトレイ12の下面(図3においては上側)において、トレイ12の下方(図3においては上方)に配設されたスライド板30から上側(図3においては下側)に向けて突出しているガイドピン(図示せず)を収納することができる幅寸法に形成されている。ガイド溝40は、トレイ12の突出入方向に沿って延びる縦部42と、横方向に延びる横部44と、横部44と縦部42とを連結している斜め部46とにより構成されている。
【0005】
図5および図6は、スライド板付近における拡大正面図である。なお、図5、図6の天地方向は、実際と逆の位置関係になっている。
ガイドピンはトレイ12の突出入に合わせて、ガイド溝40の形状に沿って縦部42、斜め部46、横部44のそれぞれにわたって摺動する。先述のとおり、ガイドピンはスライド板30に一体に形成されているので、トレイ12の突出入の動作に併せてスライド板30が左右方向にスライド移動することになる。
また、スライド板30は、サブシャーシ16の前端部から前方に向けて突出するスライドピン16Bを収納する長孔32が形成されている。かかる長孔32は、左右方向に延びる上部32Aおよび下部32Bと、上部32Aおよび下部32Bとの間を連結する傾斜部32Cとにより構成されている。
【0006】
ガイド溝32を摺動するガイドピンによりスライド板30が左右にスライドすることによって、図5、図6に示すように、スライド板30の長孔32によりスライドピン16Bの上下方向における位置が変化する。すなわち、スライドピン16Bはスライド板30における長孔32により上下方向に誘導され、サブシャーシ16およびメカシャーシ20の前面側がトレイ12に対して接離動する方向に移動するのである。このようにしてメカシャーシ20とターンテーブル(図示せず)により光ディスクのクランプ状態が解除され、トレイ12に載置された光ディスクが排出可能になる。
以上が、通常のトレイ排出機構によるトレイ12の突出入動作である。
【0007】
次に、光ディスク装置の強制排出機構について説明する。
光ディスク装置10のカバーケースの前面には治具差込穴が配設されている(共に図示せず)。治具差込穴の先には、差し込んだ治具Jが当接して回動する回動部材50と、回動部材50の回動動作により左右方向にスライドする作動ピン34が設けられている。作動ピン34はスライド板30と一体に設けられている。
回動部材50は、メインシャーシ15に回動軸51を介して回動自在に取り付けられている。回動部材50はほぼ扇状に形成されている。回動部材50の一端縁52Aには治具Jが当接し、他端縁52Bには作動ピン34が当接する。一端縁52Aには、治具Jと当接する部分に凹穴54が設けられている(図5)。
【0008】
ユーザーが治具Jを用いて、回動部材50の一端縁52Aを押圧し、回動部材50を回動させて作動ピン34を強制的にスライドさせることによっても、サブシャーシ16のスライドピン16Bを長孔32に沿って上下方向に動かすことができる。このようにして、ユーザーが強制的に作動ピン34を動かすことによりスライド板30をスライドさせ、長孔32によりスライドピン16Bを上下方向に誘導し、サブシャーシ16と共にメカシャーシ20をチルトさせて、光ディスクのクランプ状態を解除してトレイ12を排出することができる。
【0009】
従来のトレイ排出機構における回動部材50と作動ピン34の関係について説明する。図7は、回動部材50と作動ピン34の初期状態を示す説明図である。図8は、回動部材50が回動した状態における作動ピンとの位置関係を示す説明図である。図7から明らかなように、回動部材50が作動ピン34に当接した直後においては、回動部材50の回転方向(矢印A)に作用する力Fが作動ピン34をスライドさせる方向(矢印B)に一致している。このため、回動部材50の回転方向の力Fがそのまま作動ピン34をスライドさせる力Fとなるので作動ピン34を容易に矢印方向にスライドさせることができる。
【0010】
しかしながら、図8に示すように、作動ピン34のスライドがある程度進んだ状態(回動部材50がある程度回動した状態)においては、回動部材50から作動ピン34に作用する力Fの方向と、作動ピン34がスライドする方向(矢印B)が一致しなくなってしまう。すなわち、作動ピン34を矢印B方向にスライドさせるための力F´は、回動部材50の回転力Fの分力になってしまう。したがって、当初状態と同じように作動ピン34をスライドさせるためには、回動部材50に作用させるべき力を大きくしなければならないといった課題がある。
【0011】
このような課題に対し、光ディスク装置のトレイを容易に手動で排出させることを可能にした光ディスク装置として、たとえば特許文献1に記載されている発明が提案されている。特許文献1においては、トレイの強制排出機構に、強制排出用の治具により作動させる突起(作動ピン)により回転する歯車を光ディスク装置の内部に配設することにより、手動であっても容易にトレイを排出させることができるとしている。
【特許文献1】特開平11−203757号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、近年においてはパソコン本体が省スペースに形成されているため、パソコンに内蔵されることが多い光ディスク装置においても省スペース化が強く望まれている。つまり、トレイの強制排出機構は非常に限られた設計空間に配設されなければならず、特許文献1のように大型の部品を採用することができないという課題がある。
【0013】
本発明は、光ディスク装置10のトレイ強制排出機構を構成する回動部材50と作動ピン34の形状に関するものであり、具体的には、回動部材50の回動角度の状態に関わらず、回動部材50が作動ピン34をスライドさせる力の方向を一致させた状態を維持させることが可能な形状に形成され、常に一定割合の力で治具Jを差し込めば、トレイ12を強制排出させることが省スペースで実現可能なトレイ強制排出機構の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、光ディスク装置において光ディスクが載置されるトレイを強制的に排出させるトレイ強制排出機構であって、前記光ディスク装置は、前記光ディスク装置のカバーケースに設けられた治具差込穴と、前記治具差込穴に差し込んだ治具の先端部が当接し、該治具の差込方向と直交する方向に当接部が回動するように設けられた回動部材と、前記回動部材が回動することにより、回動部材の当接部によって押圧され、前記治具の差込方向と直交する方向に移動して前記トレイを排出方向に移動させる作動ピンとを有し、前記作動ピンと当接する当接部は、回動部材の回動角度に応じて複数箇所で前記作動ピンと当接可能に形成されていることを特徴とするトレイ強制排出機構である。
【0015】
また、前記回動ピンは、前記回動部材と当接する当接部が階段状に形成されていることを特徴とする。
これにより、回動部材50から作動ピンに作用する力が回動部材50の回転角度によらず常にほぼ一定の力を作動ピン34に作用させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本願発明により、回動部材の回動状態に関わらず、回動部材に作用させた力を、効率的に作動レバーをスライドさせる方向の力として利用することができる。すなわち、トレイ強制排出機構を作動させるための回動部材に与える力を軽減させることができる。したがって、わずかな差し込み力であっても、作動ピンを効率的に作動させることができるため、女性や子供であっても簡単にトレイを強制排出させることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明にかかるトレイ強制排出機構を具備する光ディスク装置の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1は、本実施の形態における回動部材と作動ピンの初期状態を示した底面図である。図2は、回動部材を回転させた状態における底面図である。本実施の形態において用いられる図は、光ディスク装置を通常の状態に設置した状態に対応した図面名称となっている。
【0018】
図1に示されている回動部材50について説明する。回動部材50は、光ディスク装置10のカバーケースKの内部であって、カバーケースKの表面に形成された治具差込穴Hの延長上の位置に配設されている。回動部材50は、メインシャーシ15に取り付けられた回転軸51を中心として治具Jの差込方向と直交する方向に回転自在に配設されている。回動部材50は、初期当接部52B1を有する扇形状に形成されている。従来技術における回動部材50との相違は、作動ピン34と当接する当接部が単数箇所ではなく、複数箇所(52B1、52B2)に形成されている点にある。
【0019】
作動ピン34について説明する。作動ピン34は、回動部材50が回転することにより回動部材50の当接部52B1によって押圧され、治具Jの差込方向と直交する方向に移動可能に設けられている。先述のとおり、作動ピン34は、スライド板30に一体に設けられているので、作動ピン34が左右方向に移動することによりスライド板30自身も作動ピン34と同じ方向にスライドする。スライド板30のスライドによるスライドピン16Bの動きは、先述のとおり、図5、図6に示すような動きとなる。
作動ピン34は、図1に示すように、作動ピン34が回動部材50に当接する当接部34A1、34A2(本実施の形態においては2ヶ所)が回動部材50の当接部52の数(本実施形態においては52B1、52B2の2ヶ所)と等しい数となるように形成されている。
【0020】
図1、図2に基づいて本実施の形態における回動部材50と作動ピン34の動作について説明する。
まず、ユーザーにより、治具差込穴Hから光ディスク装置10の内部に治具Jが差し込まれる。差し込まれた治具Jは、回動部材50の凹穴54に当接する。ユーザーにより治具Jが差し込まれると、回動部材50に作用させた押圧力Fが初期当接部52B1を介して作動ピン34の第1の当接部34A1に作用し、作動ピン34は図中の右方向(治具Jの差込方向と直交する方向)にスライドする。なお、作動ピン34の第1の当接部34A1に作用する力は、回動部材50の回転力であるFに等しい大きさになる。
【0021】
回動部材50の回転が進むと、回動部材50と作動ピン34は図2に示すような位置関係になる。すなわち、回動部材50が所定角度回転すると、回動部材50の第2の当接部52B2が作動ピン34の第2の当接部34A2に当接する。回動部材50の第2の当接部52B2と、作動ピン34の第2の当接部34A2が当接した状態においても、回動部材50から作動ピン34に作用する力Fの作用方向は、作動ピン34(スライド板30)を移動させる方向に一致させることができる。
このように、回動部材50を回転させる方向に作用させた力を、作動ピン34(スライド板30)を移動させるための力に利用することができるため、治具差込穴Hから差し込んだ治具Jの差し込み量に応じて、トレイ強制排出機構を効率的に作動させることができる。
【0022】
以上に本願発明について、実施の形態に基づいて詳細に説明してきたが、本願発明は、以上の実施の形態に限定されるものではない。例えば、本実施の形態においては、回動部材50と作動ピン34の当接部の数はそれぞれ2箇所に形成されているが第1の当接部52B1、34A1と第2の当接部52B2、34A2の切り替わり位置は、第1の当接部52B1、34A1どうしの当接状態が解除されると同時に第2の当接部52B2、34A2どうしが当接を開始するように形成されていることはいうまでもない。
【0023】
また、回動部材50と作動ピン34の当接部52Bn、34Anの数は2ヶ所に限定されるものではない。当接部の数が2箇所のみであると、回動部材50と作動ピン34が各々第1の当接部52B1,34A1で当接した状態から、第2の当接部52B2、34A2に当接するまでの間においては、極僅かではあるが、図8に示したような状態になってしまうことが考えられる。したがって、回動部材50と作動ピン34の当接部52Bn、34Anの数は多ければ多いほど、回動部材50の回転方向の力は作動ピン34をスライドさせる方向の力に直接用いられやすくなる。しかしながら、回動部材50および作動ピン34の当接部52Bn、34Anの数を増加させると、回動部材50および作動ピン34の製造コストが高騰してしまうため、回動部材50と作動ピン34の当接部の配設数は、製造コストとのバランスを考慮して適宜設定されるのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】一般的な光ディスク装置において、カバーケースを取り外した状態における下方からの斜視図である。
【図2】図1のメインシャーシを省略した図である。
【図3】光ディスク装置のカバーケースを取り外した状態における概略斜視図である。
【図4】図1のメインシャーシを取り外した状態を示す斜視図である。
【図5】スライド板付近における拡大図である。
【図6】スライド板付近における拡大図である。
【図7】従来技術における回動部材と作動ピンの初期状態を示す平面図である。
【図8】従来技術における回動部材と作動ピンの回動状態における平面図である。
【符号の説明】
【0025】
10 光ディスク装置
12 トレイ
15 メインシャーシ
16 サブシャーシ
16A 取付ピン
16B スライドピン
20 メカシャーシ
30 スライド板
32 長孔
34 作動ピン
40 ガイド溝
50 回動部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスク装置において光ディスクが載置されるトレイを強制的に排出させるトレイ強制排出機構であって、
前記光ディスク装置は、
前記光ディスク装置のカバーケースに設けられた治具差込穴と、
前記治具差込穴に差し込んだ治具の先端部が当接し、該治具の差込方向と直交する方向に当接部が回動するように設けられた回動部材と、
前記回動部材が回動することにより、回動部材の当接部によって押圧され、前記治具の差込方向と直交する方向に移動して前記トレイを排出方向に移動させる作動ピンとを有し、
前記作動ピンと当接する当接部は、回動部材の回動角度に応じて複数箇所で前記作動ピンと当接可能に形成されていることを特徴とするトレイ強制排出機構。
【請求項2】
前記作動ピンは、前記回動部材と当接する当接部が階段状に形成されていることを特徴とする請求項1記載のトレイ強制排出機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−277782(P2006−277782A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−90613(P2005−90613)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000106944)シナノケンシ株式会社 (316)
【Fターム(参考)】