説明

トレーの樹脂注入装置および樹脂注入方法

【課題】トレーに設けられるマットの表面のシャフトに対する直角度の精度を高め可能なトレーの樹脂注入装置および樹脂注入方法を提供する。
【解決手段】トレーの樹脂注入装置10は、基台20、当接ユニット30を有する。トレー12は、ケース121およびシャフト125を有する。基台20は、収容穴22および樹脂注入溝を有する。収容穴22には、シャフト125が挿入される。当接ユニット30は、上下に移動可能に基台20に装着され、収容穴22と同軸するガイド孔34を有する。当接ユニット30は、一側がY字型を呈し、孔123をカバーしないように形成される。ディスペンサでトレー12の孔123を通して樹脂注入溝の凹部243に樹脂を注入してマットを形成する。これにより、マットの表面のシャフト125に対する直角度の精度が高くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピンドルモーターに用いるトレーの樹脂注入装置および樹脂注入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スピンドルモーターの応用範囲は非常に広汎である。一般の光ディスクプレイヤーは、スピンドルモーターによって光ディスクを回転させる。スピンドルモーターは、固定子および回転子を備える。回転子は表面に樹脂マットを有し、樹脂マットは光ディスクに付着し、回転子および光ディスクの摩擦係数を増大させるため、回転子は光ディスクを確実に回転させることができる。
【0003】
回転子は、軸方向の端面に樹脂マットを貼り付けるようにしたトレーを有する。トレーは、ケースおよびシャフトを有する。シャフトは、ケースの軸孔に固定される。実際に製造する際、ケースの軸孔にシャフトを強制的に詰め込み、ケースの表面に樹脂マットを貼り付けるため、樹脂マットの表面とシャフトとの間の直角度の精度を把握することが難しく、スピンドルモーターの完成品の品質に影響を与える。
なお、トレーの樹脂注入装置および樹脂注入方法は例えば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−038594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、マットの表面とシャフトとの間の直角度の精度を高め、完成品の品質を改善可能なトレーの樹脂注入装置および樹脂注入方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、本発明によるトレーの樹脂注入装置は、ディスペンサと組み合わせて使用され、基台および当接ユニットを有する。トレーは、ケースおよびシャフトを有する。基台は、トレーのケースの装着に用いられ、収容穴および少なくとも一つの樹脂注入溝を有する。収容穴には、トレーのシャフトが挿入される。当接ユニットは、上下に移動できるように基台に装着され、ガイド孔を有する。ガイド孔および基台の収容穴は、同軸で延伸され、トレーのシャフトが挿入される。当接ユニットはトレーの孔をカバーしないように形成されるため、ディスペンサはトレーの孔に高分子材料(例えば樹脂)を注入することができる。
【0007】
本発明によるトレーの樹脂注入装置は、固定ピン、位置決め部材、およびスプリングを有する。固定ピンは、上下に移動できるように当接ユニットのガイド孔内に差し込まれ、当接ユニットの頂部に配置されるヘッド部と、当接ユニットのガイド孔内に差し込まれるネック部とを有する。位置決め部材は、トレーのシャフトに当接する。スプリングは、位置決め部材と収容穴の底部との間に当接する。基台は、複数の樹脂注入溝を有する。樹脂注入溝は、収容穴の径方向外側に配置され、装着ユニットを基台の通孔に挿入することによって形成される。装着ユニットは、頂面に形成された複数の凹部を有する。
【0008】
本発明によるトレーの樹脂注入方法は、次のステップを含む。
ステップa)、基台と当接ユニットとの間にトレーを挟む。基台は、収容穴および少なくとも一つの樹脂注入溝を有する。当接ユニットは、ガイド孔を有する。トレーは、ケース、シャフト、および少なくとも一つの孔を有する。孔の位置は樹脂注入溝に対応する。シャフトは、基台の収容穴および当接ユニットのガイド孔に差し込まれる。
ステップb)、ディスペンサを基台の頂部に移動させ、ディスペンサによってトレーの孔を通して基台の樹脂注入溝に高分子材料(例えば樹脂)を注入する。
ステップc)、基台および当接ユニットを除去する。
【0009】
またステップa)が完了した後、当接ユニットのガイド孔に沿って固定ピンを下に移動させ、ケースの軸孔に沿ってトレーのシャフトを下に強制的に移動させ、そののちステップb)を進めることにしてもよい。またステップa)において、基台の収容穴の内部に位置決め部材およびスプリングを配置することにしてもよい。位置決め部材は、トレーのシャフトに当接する。スプリングは、位置決め部材と収容穴の底部との間に当接する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態によるトレーの樹脂注入装置を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態によるトレーの樹脂注入装置を示す分解斜視図である。
【図3】図1の3−3線に沿った断面図である。
【図4】本発明の一実施形態においてのトレーの樹脂注入過程を示す斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態においてのトレーの樹脂注入過程の一部分を示す拡大断面図である。
【図6】本発明の一実施形態によるトレーの樹脂注入装置を使用して完成したトレーの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明によるトレーの樹脂注入装置および樹脂注入方法を図面に基づいて説明する。
(一実施形態)
図1から図3に示すように、トレーの樹脂注入装置10は、基台20、当接ユニット30、固定ピン40、位置決め部材50、およびスプリング60を備える。
【0012】
基台20は、収容穴22および図5に示した三つの樹脂注入溝24を有する。樹脂注入溝24は、収容穴22の径方向外側に位置し、装着ユニット241を基台20の通孔245に挿入することによって形成される。通孔245は、頂部の開口辺縁が丸い角を呈する。装着ユニット241は、頂面に形成された複数の凹部243を有する。
【0013】
当接ユニット30は、二つのガイド柱32によって基台20に装着され、ガイド柱32に沿って上下に移動可能である。当接ユニット30は、ガイド孔34を有する。ガイド孔34は、基台20の収容穴22と同軸である。
【0014】
固定ピン40は、上下に移動可能に当接ユニット30のガイド孔34に差し込まれ、ヘッド部42およびネック部44を有する。ヘッド部42は、当接ユニット30の頂部に配置され、ネック部44は、当接ユニット30のガイド孔34に差し込まれる。
【0015】
位置決め部材50およびスプリング60は、基台20の収容穴22内に装着される。スプリング60は、位置決め部材50と収容穴22の底部と当接する。
上述した部品を加工するか平坦に研磨することが簡単であるため、寸法の精度を制御する際の利便性を有する。
【0016】
トレーの樹脂注入装置10は、図5に示すようにディスペンサ14と組み合わせて使用され、トレー12に複数のマット128を形成する(図6参照)。トレー12は、ケース121およびシャフト125を有する。ケース121は、円盤状を呈し、軸孔122および複数の孔123を有する。軸孔122の孔径がシャフト125の外径より小さいため、シャフト125は軸孔122を少々拡張し、軸孔122内に差し込まれ、固定されることができる。孔123は、軸孔122の径方向外側に位置する。
【0017】
当接ユニット30は、一側がY字型を呈し、トレー12の孔123をカバーしないように形成されている。これにより、ディスペンサ14は、孔123に樹脂を注入することができる。
【0018】
トレーの樹脂注入装置10を実際に使用する時、図4に示すように、トレー12は基台20の上方に配置される。ケース121は、基台20の頂面に付着する。孔123の位置は樹脂注入溝24に対応する。シャフト125は、基台20の収容穴22内に差し込まれ、位置決め部材50に当接する。続いて、図1および図3に示すように、当接ユニット30は、下に動き、ケース121を基台20と当接ユニット30との間に挟む。
【0019】
固定ピン40は、当接ユニット30のガイド孔34に沿って下に移動し、ケース121の軸孔122に沿ってトレー12のシャフト125を下に強制的に移動させることによってケース121とシャフト125の相対的な位置を調整する。図5に示すように、ディスペンサ14をトレー12の上方に移し、トレー12の孔123を通して基台20の樹脂注入溝24に樹脂141を注入する。そののち樹脂141は固化し、トレー12の表面にマット128を生成する。最後に基台20および当接ユニット30を除去すれば、トレー12の樹脂注入工程を完了させる。
【0020】
これにより、マット128の表面とシャフト125との直角度を容易に把握し、スピンドルモーターの良品の歩合を改善することができる。トレー12のケース121と基台20との間には隙間26を有するため、樹脂注入溝24の内部の空気を外部に排出し、樹脂注入溝24に樹脂141を充満させることができる。装着ユニット241の頂面の凹部243により、マット128にはざらざらした面が形成され、マット128と光ディスクとの摩擦係数が増大され、光ディスクを回転させる際の利便性を有する。
【0021】
本実施形態において、当接ユニット30のガイド孔34は、円筒状を呈すが、本発明においては、ガイド孔34をV字型溝にしてもよい。固定ピン40のネック部44およびトレー12のシャフト125はV字型溝に当接し、それぞれの軸心を位置決める。三軸または同心多軸位置決めなどに類似した装置を適用することができる。
【0022】
以上、本発明は、上記実施形態になんら限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0023】
10 ・・・トレーの樹脂注入装置、
12 ・・・トレー、
121 ・・・ケース、
122 ・・・軸孔、
123 ・・・孔、
125 ・・・シャフト、
128 ・・・マット、
14 ・・・ディスペンサ、
141 ・・・樹脂、
20 ・・・基台、
22 ・・・収容穴、
24 ・・・樹脂注入溝、
241 ・・・装着ユニット、
243 ・・・凹部、
245 ・・・通孔、
26 ・・・隙間、
30 ・・・当接ユニット、
32 ・・・ガイド柱、
34 ・・・ガイド孔、
40 ・・・固定ピン、
42 ・・・ヘッド部、
44 ・・・ネック部、
50 ・・・位置決め部材、
60 ・・・スプリング。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース、孔、およびシャフトを有するトレーの前記孔に樹脂を注入するトレーの樹脂注入装置であって、
前記トレーの前記ケースの装着に用いられ、前記トレーの前記シャフトが挿入される収容穴および少なくとも一つの樹脂注入溝を有する基台と、
上下に移動可能に前記基台に設けられ、前記基台の前記収容穴と同軸であり前記トレーの前記シャフトが挿入されるガイド孔を有する当接ユニットと、
を備えることを特徴とするトレーの樹脂注入装置。
【請求項2】
前記基台は、前記収容穴の径方向外側に複数の樹脂注入溝を有することを特徴とする請求項1に記載のトレーの樹脂注入装置。
【請求項3】
前記当接ユニットの前記ガイド孔に差し込まれ、上下に移動可能な固定ピンを備えることを特徴とする請求項1に記載のトレーの樹脂注入装置。
【請求項4】
前記固定ピンは、前記当接ユニットの頂部に配置されるヘッド部と、前記当接ユニットの前記ガイド孔内に差し込まれるネック部とを有することを特徴とする請求項3に記載のトレーの樹脂注入装置。
【請求項5】
前記基台の前記樹脂注入溝は、装着ユニットを前記基台の通孔に挿入することによって形成されることを特徴とする請求項1に記載のトレーの樹脂注入装置。
【請求項6】
前記装着ユニットは、頂面に形成された複数の凹部を有することを特徴とする請求項5に記載のトレーの樹脂注入装置。
【請求項7】
前記トレーの前記シャフトに当接する位置決め部材、および前記収容穴の中に装着され、前記位置決め部材と前記収容穴の底部と当接するスプリングを備えることを特徴とする請求項1に記載のトレーの樹脂注入装置。
【請求項8】
少なくとも一つの樹脂注入溝を有する基台と当接ユニットとの間に、ケース、シャフト、および少なくとも一つの孔を有するトレーを挟むステップa)と、
ディスペンサを基台の頂部に移動させ、前記ディスペンサによって前記トレーの前記孔を通して前記基台の前記樹脂注入溝に樹脂を注入するステップb)と、
前記基台および前記当接ユニットを除去するステップc)と、
を含み、
前記トレーの前記孔の位置は前記基台の前記樹脂注入溝に対応することを特徴とするトレーの樹脂注入方法。
【請求項9】
前記ステップa)において、前記トレーの前記シャフトは、前記当接ユニットの前記ガイド孔の中に差し込まれ、
前記ステップa)が完了した後、前記当接ユニットの前記ガイド孔に沿って固定ピンを下に移動させ、前記ケースに対し前記トレーの前記シャフトを下に移動させ、そののち前記ステップb)を進めることを特徴とする請求項8に記載のトレーの樹脂注入方法。
【請求項10】
前記ステップa)において、前記基台は前記トレーの前記シャフトが挿入する収容穴を有し、
前記基台の前記収容穴は、内部に配置された前記トレーの前記シャフトに当接する位置決め部材、および前記位置決め部材と前記収容穴の底部との間に当接するスプリングを有することを特徴とする請求項8に記載のトレーの樹脂注入方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−174308(P2012−174308A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35565(P2011−35565)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(501013558)泓記精密股▲分▼有限公司 (10)
【Fターム(参考)】