説明

トレース機能を備える接続機器シミュレータ装置、方法、及びプログラム

【課題】プログラマブル表示器に接続され、プログラマブル表示器の接続機器を擬似的にシミュレータする技術に関し、プログラマブル表示器の模擬実行過程をトレース可能とする。
【解決手段】シミュレータ部21内の実行契機データ24は、実行契機を識別するためのメモリ情報と実行条件を規定し、必要な実行契機毎に複数エントリが保持される。シミュレータ部21内のトレース処理部23は、各実行契機データを順次読み込みながら各実行契機を判別し、各実行契機毎に、擬似メモリ22及びプログラマブル表示器11のメモリ状態を読み出して順次トレース結果として出力し、データ収集実行部25に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プログラマブル表示器に接続され、プログラマブル表示器の接続機器を擬似的にシミュレータする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のプログラマブル表示器は、プログラマブルコントローラやPLC温調器(温度調整器)である接続機器と通信ラインを介して接続することで、接続機器の状態の表示や制御をすることができる。
【0003】
ここで、プログラマブル表示器の実行状態を逐次トレース(ロギング)したい場合がある。例えば、接続機器としてPLC温調器が接続されており、その温度経過を知りたいような場合である。
【0004】
このようなトレースを実現したい場合には、従来は、プログラマブル表示器が有しているトレース機能を用いて、プログラマブル表示器用の画面データにおいてトレース機能の設定が行われていた。
【0005】
例えば、図10に示されるように、1.プログラマブル表示器29内において、特には図示しない接続機器を制御するための画面データ31を実行する本体プログラム30内に、トレース実行部33が設けられている。トレース実行部33は、画面データ31に対応して、トレースを行いたいメモリの指定、トレースを行う条件、時間の間隔、回数等を規定する実行契機データ32を読み込み、その実行契機データ32に基づいて、内部のメモリ内容をトレースする。トレース実行部33は、トレースした内部メモリの内容を、内部バッファ34に格納し、また、CF(コンパクトフラッシュ(登録商標))カードなどの外部接続用メディア35を介して外部に出力する。
【0006】
従来、プログラマブル表示器29上では実行契機データ32の設定を変更することはできないため、その変更を行う場合は、実行契機データ32を含む新たな画面データ31を外部のパーソナルコンピュータ等からプログラマブル表示器29に転送する必要があった。
【0007】
ここで、プログラマブル表示器に通信ラインを介してパーソナルコンピュータ等を接続することによって、プログラマブル表示器用作画ソフトウェアや接続機器シミュレータソフトウェアとの通信を行い、画面データの転送及び動作の模擬を行うことができる。このようなプログラマブル表示器用の接続機器シミュレータ装置(以下シミュレータ装置と表記する)は、プログラマブル表示器からのメモリの読込み/書込み要求に応じて、擬似的に構築されている接続機器メモリ(以下擬似メモリと表記する)に対して読出し/書換えを行うことで、接続機器をシミュレートしている。このとき、シミュレータ装置は、シミュレート中の擬似メモリ中のアドレス(又は変数)とその値を一覧で表示し、GUI(グラフィカル・ユーザ・インタフェース)にてユーザが任意に指定した擬似メモリのアドレスに対して読込み/書込みを行う機能を有する。更に、シミュレータ装置は、ユーザが任意に指定した擬似メモリの内容を、任意に指定した単位/範囲/時間でインクリメントする機能も有している。このようなシミュレータ機能を使うことによって、あたかも接続機器(プログラマブルコントローラ)を外部に接続したように模擬しながら、プログラマブル表示器を動作させることができる。
【0008】
このようなシミュレータ装置の動作過程においても、画面データをデバッグする等の目
的で、プログラマブル表示器の状態を示す内部メモリや接続機器の状態を示す擬似メモリの内容を逐次トレースしたい場合がある。
【0009】
従来のデバッグ作業等において、シミュレータ装置を使ってプログラマブル表示器を動作させながらシミュレート動作をトレースする場合、従来は、プログラマブル表示器に実装されたトレース機能を使ってシミュレート動作をトレース(ロギング)し、プログラマブル表示器の動作を解析していた。
【0010】
しかしながら、このトレース機能を実行するためには各種設定作業が必要であり、この設定作業は、プログラマブル表示器をプログラミングするためのパーソナルコンピュータ等で実行される作画支援ソフトウェアを使って設定データを編集し、この設定データを所定の画面データに付随させてプログラマブル表示器本体にいちいちダウンロードする必要があった。従って、このように、少量の修正や変更でも編集してダウンロードしなければならないという設定作業は非常に煩雑であり、ダウンロードに要する時間も多大なものであった。更に、従来のデバッグ作業は、現場や客先などに出向いて実施されていたので、デバッグ設備を整える作業に手間がかかり、場合によってはシステムを停止させてデバッグする必要があった。
【0011】
また、従来の作画支援装置には、プログラマブル表示器の動きを模擬実行するエミュレータ機能を備えているものがあるがある。この場合、シミュレータ装置と作画支援装置のエミュレータ機能を連携させることにより、プログラマブル表示器の実機を用意することなく、プログラマブル表示器の動作をシミュレートすることが可能であった。しかし、このような従来のエミュレータ機能は、トレース機能は備えていなかった。従って、シミュレータ装置と作画支援装置のエミュレータ機能を連携させる場合のデバッグ作業は、技術者の勘に頼る部分が大きかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述したように、従来のシミュレータ装置は、擬似メモリの状態のトレース機能を有していなかった。このため、任意のメモリ内容をトレースしたい場合、プログラマブル表示器のトレース機能に頼らざるを得なかった。しかしこの場合、トレースするメモリ内容の変更をしたいときには、画面データのトレース機能の設定変更が必要となるため、シミュレータ装置からプログラマブル表示器への画面データの都度の転送作業が発生し、多大な作業工数が発生してしまうという問題点を有していた。
【0013】
そこで、本発明の課題は、プログラマブル表示器の模擬実行過程をトレース可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
態様の一例では、プログラマブル表示器又はプログラマブル表示器のエミュレータ装置がそれに接続される接続機器に対して実行する制御を、その制御時に指定されるデバイスメモリを擬似する擬似メモリを介して模擬するシミュレータ装置として実現され、以下の構成を有する。
【0015】
実行契機データ保持部は、実行契機を識別するためのメモリ情報と実行条件を規定する実行契機データを、必要な実行契機毎に保持する。
トレース処理部は、各実行契機データを順次読み込みながら各実行契機を判別し、各実行契機毎に、擬似メモリ及びプログラマブル表示器のメモリ状態を読み出して順次トレース結果として出力する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、シミュレータ装置に擬似メモリ等のトレース機能を具備することで、任意のメモリのトレースが画面データの変更をせずに簡単にできるため、デバッグ工数を削減することが可能となる。
【0017】
また、本発明によれば、トレース結果を、外部接続用のメディアを介さずに、データ収集を行うソフトウェアに送信することができるため、トレース結果の集計・確認作業の工数を削減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態の全体構成図である。
【図2】プログラマブル表示器のハードウェア構成例を示す図である。
【図3】本実施形態の機能ブロック図である。
【図4】画面データの説明図である。
【図5】プログラマブル表示器内のメモリ構成図である。
【図6】内部メモリ領域と外部メモリ領域の通信動作の説明図である。
【図7】トレース処理部の動作を示す動作フローチャートである。
【図8】実行契機データのデータ構成例を示す図である。
【図9】トレース結果の例を示す図である。
【図10】従来技術の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態の全体構成図である。
図1に示されるように、プログラマブル表示器1は、プログラマブル・ロジック・コントローラ(以下PLCと表記)や温調器である接続機器3や、シミュレータ装置である作画支援部4と、それぞれに対応した通信ライン2を介して接続される。作画支援部4は、パーソナルコンピュータ(以下、「PC」という)5等によって実現される。
【0020】
PLCや温調器といった接続機器3は、汎用的なワーク領域や各制御情報等を、デバイス名とアドレス等とで指定するメモリと、それらを制御する機能によって実現されるのが一般的である。プログラマブル表示器1は、通信ライン2を介して接続機器3に、固有のプロトコルに即した命令を、上述のデバイス名とアドレス等を指定して発行することにより、接続機器3を制御し、また接続機器3の状態を表示することができる。
【0021】
図2は、図1に示されるプログラマブル表示器1のハードウェア構成例を示す図である。まず、プログラマブル表示器1は、表示器本体であるディスプレイ7と表示器本体上で各種操作を行うタッチパネル6を備える。また、プログラマブル表示器1は、バスを介して接続されるROM12に記憶された制御プログラムを、同じくバスを介して接続されるRAM13をワーク領域として使用しながら実行することにより、以下に説明する各種制御動作を実現するCPU8を備える。更に、このCPU8にバスを介して接続され、タッチパネル6を制御するタッチパネルコントローラ9、ディスプレイ7を制御するグラフィックコントローラ11、図1の通信ライン2に接続される通信インタフェース14を制御する通信コントローラ10を備える。
【0022】
図3は、本実施形態の機能ブロック図である。プログラマブル表示器1による表示機能及び接続機器3に対する制御機能は、表示制御などの基本的な機能に関するプログラムを実行する本体プログラム実行部15と、接続機器3のそれぞれ固有のプロトコルに対応した通信制御を実行する通信プログラム実行部16とで実現される。
【0023】
本体プログラム実行部15及び通信プログラム実行部16は、例えば図2において、CPU8がROM12に記憶された本体プログラム実行部15に対応する本体プログラムと通信プログラム実行部16に対応する通信プログラムを実行する機能として実現される。
【0024】
これらのプログラムは、PC5内の作画支援部4から、通信処理部20及び通信ライン2を介して、プログラマブル表示器1に転送され、例えば図2のROM12(不揮発性メモリ)へ登録される。特に、接続機器3毎に固有の通信プログラムは、PC5内の特には図示しないハードディスク記憶装置等に記憶された通信プログラムファイルから作画支援部4によって読み込まれ、通信処理部20から通信ライン2を介して、プログラマブル表示器1内のROM12等に記憶される。
【0025】
また、プログラマブル表示器1の本体プログラム実行部15が、どのような表示動作を実行するか、及び行うか、どのような制御を行うか、どのような接続機種かといったプログラマブル表示器1の動作を規定する画面データ17は、PC5上の作画支援部4を用いて作成され、プログラマブル表示器1へダウンロードされる。
【0026】
ここで例えば、PC5上の作画支援部4での画面データ17の作成においては、図4に示されるように、ユーザの操作を受け付けるスイッチ、データの表示を行う数値表示などの各部品のシンボル画を含む部品リストが、スクリーン単位で、PC5上の特には図示しないディスプレイに表示される。ユーザが、この部品リストとの中から所望の部品を選択して、作画支援部4がPC5上の特には図示しないディスプレイに表示するプログラマブル表示器1の画面の任意の位置に移動させ、その部品をプログラマブル表示器1に接続される接続機器3のデバイス名とアドレス等の制御対象メモリと対応付ける。これによって、作画支援部4は、上記部品に関する画面データ17を作成し、その画面データ17をPC5内の特には図示しないハードディスク装置等に保存すると共にプログラマブル表示器1に転送する。プログラマブル表示器1においては、本体プログラム実行部15が上記画面データ17を読み込むことにより、ユーザが選択した部品に対応する制御プログラムが選択、起動される。そして、その制御プログラムが、指定されたデバイス名のアドレスに対応する制御対象のメモリ情報を、自動的にディスプレイ7(図2)に表示するようになる。このようにして、制御対象として構成されるべき複数の部品を選択して作画支援部4が表示する画面上に配置することによって、接続機器3の情報を容易に制御/表示することができる。
【0027】
PC5内のシミュレータ部21は、画面データ17内に格納された各スクリーン毎のメモリの情報を元に、メモリ情報の表示、プログラマブル表示器1との通信を行う。
今、プログラマブル表示器1内のRAM13(図2)には、図5に示されるように、予め確保された内部メモリ領域28と、表示中の画面データ内の外部メモリの情報を元に動的に確保される外部メモリ領域27が確保される。そして、プログラマブル表示器1内の通信プログラム実行部16及びPC5内の通信処理部20を介して、プログラマブル表示器1内の本体プログラム実行部15とPC5内のシミュレータ部21とで、通信が実行される。
【0028】
図6は、プログラマブル表示器1とシミュレータ部21間の通信処理の概略図である。
内部メモリ領域28に関する通信が実行される場合、図6(a)に示されるように、プログラマブル表示器1側から内部メモリ領域28の読込/書込があるかの問い合わせコマンドが送信され、シミュレータ部21側は現在表示中のスクリーン内のメモリ情報により、「要求無し」、「書込要求」、「読込要求」の何れかの応答コマンドを送信する。ここで、「書込要求」とはシミュレータ部21上で任意のメモリの値が変更された場合に送信されるコマンドで、プログラマブル表示器1側に任意のメモリの値の変更を促し、「読込要求」とはシミュレータ部21上の現在表示中のスクリーン内の内部メモリ領域28の値
の表示の更新を行うためのコマンドで、プログラマブル表示器1側に現在表示中のスクリーン内の内部メモリ領域28の全ての値を要求する。プログラマブル表示器1側は、シミュレータ部21側からの要求応答に対する応答を返し、再度シミュレータ部21からの承認/非承認のレスポンスを受け取り、一連の通信を終了する。
【0029】
外部メモリ領域27に関する通信が実行される場合、図6(b)に示されるように、プログラマブル表示器1側から外部メモリ領域27の読込/書込コマンドが送信され、シミュレータ部21からの応答を受け取り一連の通信を終了する。シミュレータ部21を外部接続機器3と見なし、プログラマブル表示器1上でメモリの値を変更した際に書込コマンドが送信される。
【0030】
プログラマブル表示器1が実装する通信プログラム実行部16は、PC17上の作画支援部4で設定された接続機器3に応じてそれぞれ固有の通信プログラムに差し替えられて動作するような、汎用的な構成にしておくことが実用的である。この場合、本体プログラム実行部15と通信プログラム実行部16の間のインタフェースは、接続機器3固有の通信プロトコルに依存しない、汎用的な共通インタフェースにしておくことが理想的である。
【0031】
図1において、プログラマブル表示器1と接続機器3の連携動作は、通信ライン2を介してプログラマブル表示器1から接続機器3に対して指定されるコマンドによって構築される。そして、接続機器3の制御は、そのコマンドによるデバイスメモリに対する操作として実行される。このことは、通信ライン2を介して指定されるコマンドによってプログラマブル表示器1と接続機器3が連携できれば、接続機器3は実機である必要がないということを意味する。そこで、本実施形態において、シミュレータ装置として機能するPC5上のシミュレータ部21には、シミュレートされるデバイスメモリが図3に示される擬似メモリ22として用意される。より具体的には、擬似メモリ22は、PC5上の特には図示しないRAM(ランダム・アクセス・メモリ)上に確保される。
【0032】
そして、プログラマブル表示器1とPC5上のシミュレータ部21とが連携してシミュレート動作が実行される場合には、以下のような動作が実行される。
即ちまず、プログラマブル表示器1の本体プログラム実行部15が実行する通信選択部18が、PC5上のシミュレータ部21との通信用の通信プログラム実行部16を選択する。これにより、実際にプログラマブル表示器1と通信する接続機器3が、PC5上のシミュレータ部21に変更される。この結果、プログラマブル表示器1があたかも接続機器3の実機に接続しているような状態で、プログラマブル表示器1を動作させることが可能となる。
【0033】
このとき、プログラマブル表示器1は、画面データ17とは別に、プログラマブル表示器1上で編集可能なシミュレート設定データ19をROM12(図2)等の不揮発性メモリ上に持つ。そしてプログラマブル表示器1は、画面データ8より接続する接続機器3を判別し、そのうちシミュレータ部21を使用する接続機器3をシミュレート設定データ19により判別し、通信選択部18により接続機器3及びシミュレータ部21に対応する通信プログラム実行部16を選択して、それぞれと通信を実行する。
【0034】
シミュレータ部21は、擬似メモリ22の記憶内容を表示及び編集するGUI(グラフィカル・ユーザ・インタフェース)等の、擬似メモリ22の記憶内容を容易に表示・変更できる手段を提供する。プログラマブル表示器1が動作を開始すると、コマンドによるデバイスメモリのアドレス指定により、PC5上のシミュレータ部21が管理する擬似メモリ領域がアクセスされる。シミュレータ部21は、シミュレート対象の画面データファイル17と実際にプログラマブル表示器1が表示している画面とに基づいて、擬似メモリ2
2上のどの記憶内容がアクセスされているかを解析し、その画面で使用される擬似メモリ22の記憶内容をディスプレイ上に一覧表示する。
【0035】
このようにして、プログラマブル表示器1に接続機器3が擬似的に接続された状態にして、プログラマブル表示器1にダウンロードされた画面データ17の動作を、PC5上でシミュレートすることができる。
【0036】
ここで、シミュレータ部21は、プログラマブル表示器1をPC5に接続しない状態でも、シミュレート動作を実行することができる。この場合には、PC5内のプログラマブル表示器エミュレータ部26が、プログラマブル表示器1の動作をエミュレートする。そして、シミュレータ部21は、通信処理部20を介して、プログラマブル表示器1とではなくプログラマブル表示器エミュレータ部26と通信を行うことにより、プログラマブル表示器エミュレータ部26に対するシミュレート動作を実行する。
【0037】
シミュレータ部21は、シミュレート対象の接続機器3のデバイスメモリをシミュレートする擬似メモリ22と、シミュレータ部21上でのトレース機能を実現するための実行契機データ24を保持する。シミュレータ部21は、プログラマブル表示器1やプログラマブル表示器エミュレータ部26からの読込み/書込み要求(図5、図6参照)に応じて、擬似メモリ22にアクセスする。これと共に、シミュレータ部21内のトレース処理部23は、実行契機データ24から判定される実行契機に従って、擬似メモリ22の内容をデータ収集実行部25に送信する。この送信処理は例えば、シミュレータ部21に対応する制御プログラムを実行するプロセスとデータ収集実行部25に対応する制御プログラムを実行するプロセスの間のプロセス間通信として実現される。または、トレース結果が、データ収集実行部25が管理可能なファイル形式(例えば表計算ファイル)で出力される構成が採用されてもよい。
【0038】
図7は、図3のトレース処理部23の機能を実現する制御動作を示す動作フローチャートである。この動作フローチャートは、PC5内の特には図示しないCPUが同じくPC5内の特には図示しないメモリに記憶された制御プログラムを実行する動作として実現される。
【0039】
図7において、まず、所定時間毎に発生するタイマ経過イベントである実行契機イベントが検知される(ステップS00)。これにより、トレース処理が開始される。
まず、実行契機データのデータ領域に実行契機データ24が存在するか否かが検索される(ステップS01)。
【0040】
次に、実行契機データ24が存在するか否かが判定される(ステップS02)。
実行契機データ24が存在せずステップS02の判定がNOならば、トレース処理を終了する。
【0041】
実行契機データ24が存在しステップS02の判定がYESならば、実行契機データ24に基づいて実行契機条件が判定されることにより(ステップS03)、トレースを実行してその結果データをデータ収集実行部25に送信すべきか否かが判定される(ステップS04)。
【0042】
現在がデータ送信すべきタイミングではなくステップS04の判定がNOならば、ステップS01に戻って、更に他の実行契機データ24が検索される。
現在がデータ送信すべきタイミングでありステップS04の判定がYESならば、実行契機データ24に基づいて、擬似メモリ22のデータ領域内でトレースを行うべきメモリ情報が逐次検索され、その結果検索された書くデータがデータ収集実行部25へ逐次送信
される(ステップS05)。データ送信の後、次の実行契機データ24が再度検索される(ステップS05→S01)。
【0043】
実行契機データ24は、例えば図8に示されるデータ構成を有する。図8に示されるように、実行契機データ24は例えば、実行契機を識別するためのメモリ情報と実行条件を複数エントリ設定可能なデータ構造を有する。各エントリにおいて、「先頭メモリ」フィールドに登録される値は、内部メモリ領域28又は外部メモリ領域27(図5参照)上でトレースされるメモリ領域の先頭アドレスを示している。例えば「PLC1:D00100」は、外部メモリ領域27の先頭アドレスを示しており、「PLC1」はシミュレート対象の接続機器3のデバイスメモリの識別情報、「D00100」はアドレス値である。また例えば、「$u00100」は、内部メモリ領域28のアドレス値を示している。「トリガメモリ」は、トリガとなるメモリアドレスを示している。「開始時刻」に登録される値はそのエントリのトレースが開始されるべき時刻を示している。「サイクル」に登録される値は、トレースが実行される期間の実行サイクル長(秒)を示している。「データ数」に登録される値は、トレースされるべきデータの数を示している。「データ形式」に登録される値は、16進型(HEX)、10進型(DEC)、文字列型(CHAR)等のデータフォーマットを示している。「データ長」に登録される値は、1つのデータのワード長を示している。「実行回数」に登録される値は、トレースが実行される総回数を示している。
【0044】
以上のデータ構成例を有する実行契機データ24に基づいて、トレースが実行され、その結果、実行契機データ24で規定されたメモリの種別毎及びアドレス順に、例えば図10に示されるような形式で、プログラマブル表示器1又はプログラマブル表示器エミュレータ部26からの書込み要求に応じたメモリの数値や、シミュレータ部21にて書き込まれたメモリの数値のトレース結果が出力される。
【0045】
以上説明したように、任意のシステムを構築する際に、従来であれば、開発者は、プログラマブル表示器用の画面データ17を作成してデバッグ作業を行う際に、任意のメモリのトレースを行うために、逐一画面データの変更を行わなければならず多大な工数がかかっていた。また、実際にプログラマブル表示器で表示しないメモリのトレースを行いたい場合でも、一時的に画面データの設定を変更する必要があり非常に手間がかかってしまっていた。これに対して、以上説明した実施形態では、シミュレータ部21に擬似メモリ22等のトレース機能を追加することで、任意のメモリのトレースが画面データの変更をせずに簡単にできるため、デバッグ工数を削減することが可能となる。
【0046】
また、任意のシステムを構築する際のデバッグ作業時に、従来は、プログラマブル表示器側でメモリのトレースを行った場合には、CFカードなどの外部接続用のメディア媒体を介してパソコンにデータを取り込む必要があった。これに対して、本実施形態では、シミュレータ部21にメモリのトレース機能を追加することで、同一パソコン(PC5)上のデータ収集実行部25のソフトウェアにてデータの集計ができるため、トレース結果の集計・確認作業の工数を削減することが可能となる。
【符号の説明】
【0047】
1、29 プログラマブル表示器1
2 通信ライン
3 接続機器3
4 作画支援部
5 PC
6 タッチパネル
7 ディスプレイ
8 CPU
9 タッチパネルコントローラ
10 通信コントローラ
11 グラフィックコントローラ
12 ROM
13 RAM
14 通信インタフェース
15 本体プログラム実行部
16 通信プログラム実行部
17、31 画面データ
18 通信選択部
19 シミュレート設定データ
20 通信処理部
21 シミュレータ部
22 擬似メモリ
23 トレース処理部
24、32 実行契機データ
25 データ収集実行部
26 プログラマブル表示器エミュレータ部
27 外部メモリ領域
28 内部メモリ領域
30 本体プログラム
33 トレース実行部
34 内部バッファ
35 外部接続用メディア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プログラマブル表示器又はプログラマブル表示器のエミュレータ装置がそれに接続される接続機器に対して実行する制御を、該制御時に指定されるデバイスメモリを擬似する擬似メモリを介して模擬するシミュレータ装置において、
実行契機を識別するためのメモリ情報と実行条件を規定する実行契機データを、必要な実行契機毎に保持する実行契機データ保持部と、
前記各実行契機データを順次読み込みながら前記各実行契機を判別し、該各実行契機毎に、前記擬似メモリ及び前記プログラマブル表示器のメモリ状態を読み出して順次トレース結果として出力するトレース処理部と、
を備えることを特徴とするトレース機能を備える接続機器シミュレータ装置。
【請求項2】
前記トレース処理部が出力するトレース結果を、データ収集を行うためのソフトウェアが処理可能な形式で送信するデータ送信部を更に備える、
ことを特徴とする請求項1に記載のトレース機能を備える接続機器シミュレータ装置。
【請求項3】
プログラマブル表示器又はプログラマブル表示器のエミュレータ装置がそれに接続される接続機器に対して実行する制御を、該制御時に指定されるデバイスメモリを擬似する擬似メモリを介して模擬するシミュレータ方法において、
実行契機を識別するためのメモリ情報と実行条件を規定する実行契機データを、必要な実行契機毎に保持し、
前記各実行契機データを順次読み込みながら前記各実行契機を判別し、該各実行契機毎に、前記擬似メモリ及び前記プログラマブル表示器のメモリ状態を読み出して順次トレース結果として出力する、
ことを特徴とする接続機器シミュレータのトレース制御方法。
【請求項4】
プログラマブル表示器又はプログラマブル表示器のエミュレータ装置がそれに接続される接続機器に対して実行する制御を、該制御時に指定されるデバイスメモリを擬似する擬似メモリを介して模擬するシミュレータ装置に、
実行契機を識別するためのメモリ情報と実行条件を規定する実行契機データを、必要な実行契機毎に保持し、
前記各実行契機データを順次読み込みながら前記各実行契機を判別し、該各実行契機毎に、前記擬似メモリ及び前記プログラマブル表示器のメモリ状態を読み出して順次トレース結果として出力する、
機能を実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図8】
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