説明

トンネル分岐・合流部のセグメント撤去方法及びセグメント撤去装置

【課題】 地上を占有する立抗の構築を必要とせず、通常仕様のシールド機で分岐・合流部の構築を可能とするトンネル分岐・合流部のセグメント撤去方法及び撤去装置の提供。
【解決手段】 先行トンネル100の前記分岐・合流部分のセグメントを鋼材構造セグメント101で施工しておき、合流する地中トンネルのシールド機が貫通通過する前に、先行トンネルにコンクリート隔壁110を設け、円筒状のセグメント撤去装置10を配設し、鋼材構造セグメント内周とセグメント撤去装置外周を液密にシールした空間に地上部から電解質溶液24aを注入充填して加圧循環させながら、鋼材構造セグメント101を陽極とし、前記セグメント撤去装置10を陰極として直流電源17から電圧を印加して鋼材構造セグメント101をアノード溶解により電食撤去し、シールド機で掘削可能な充填材に置換することを特徴とするトンネル分岐・合流部のセグメント撤去方法とその装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
シールドトンネルの分岐・合流部の構築に係る工法であって、詳しくは、先行地中トンネルのトンネル分岐・合流部のセグメント撤去方法及び撤去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路などのトンネルの分岐部及び合流部の構築方法としては、地表面からの掘削によるオープンカット工法や、トンネル内から行うNATM(New Austraian Tonnels Method)による切り拡げ工法が用いられていた。
【0003】
従来のオープンカット工法では、施工に当たり地上部を占有して山留め壁構築や掘削作業を行うため用地確保の問題と共に振動・騒音などが発生する環境問題があった。また、NATM切り拡げ工法においては、超大断面を切拡げるための多くの工期を要し、工事費が増大する問題があった。
【0004】
これらの問題を解決するため、シールド機により直接分岐部、合流部を地中で経済的に構築する工法が提案されてきた。特許文献1は、地中合流線路の構造及びその形成方法に係る発明であり、大径シール機体と小径シールド機体とを一体に組み合わせたシールド掘削機を使用して、合流線路部を形成し、大径トンネル部の掘削と同時に小径シールド機体により掘削されるトンネル部内に分流線路を形成するものであるが、本線と側線の進入口側に発進立抗を、合流後の出口側に到着立抗を構築する必要があった。さらに、大径・小径シールドを合体させた特殊なシールド機体を用いなければならないため、設備費用が嵩む問題があった。
【0005】
特許文献2は、シールドトンネルに於ける分岐部及び合流部の施工方法に於いて、分岐・合流部区間に、予め幹線トンネルと、分岐・合流する枝線トンネルとがひとつの断面に入る大断面トンネルを形成し、その大断面トンネル内から大断面トンネルの側壁を突き抜けて側面に向け枝線トンネルを掘削する分岐線シールド機を発進させる工法である。この工法では、大断面トンネルのセグメントを前記分岐線シールド機により取り壊しやすいように、炭素繊維補強材を鉄筋代替材とした特殊セグメントで構築する。
【0006】
この工法では、通常幹線トンネルと合流部の大断面トンネル掘削のため、通常幹線トンネルと大断面トンネルの両端接続箇所に、大型シールド機を発進到着させる立抗を構築しなければならず、大型シールド機を設置する必要があるため、工費、工期がかかる問題があった。また高価な特殊セグメントを用いる問題があった。
【0007】
【特許文献1】特開平11−173067号公報(第2頁、第1図)
【特許文献2】特開2001−355385号公報(第2、3頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記問題に鑑み、地上を占有する立抗の構築を必要とせず、通常仕様のシールド機で分岐・合流部の構築を可能とするトンネル分岐・合流部のセグメント撤去方法及びその撤去装置を提供する。
【0009】
また、トンネル分岐・合流部の断面を必要最小限として掘削量を減らし、さらに、幹線トンネル或は支線トンネルのどちらからであっても先行施工が行える方法とし、工期短縮、経費削減を可能とさせることを課題とする。
【0010】
さらに、炭素繊維補強材などの特殊素材によるセグメントを用いることなく、鋼材構造セグメントで、シールド機で掘削可能な先行トンネルを構築可能とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明のトンネル分岐・合流部のセグメント撤去方法は、トンネル分岐・合流部の構築に際し予め先行して構築される先行トンネルの分岐・合流部分のセグメントを鋼材構造セグメントで構築しておき、
合流する地中トンネルのシールド機が到着または貫通通過する前に、先行トンネルの分岐・合流部分の開始地点にコンクリート隔壁を設け、該コンクリート隔壁に先端が接し外周が鋼材構造セグメントに対向する円筒状のセグメント撤去装置を配設し、
前記鋼材構造セグメント内周と前記セグメント撤去装置の電極筒体の外周を液密にシールした空間に地上部から電解質溶液を注入充填して加圧循環させながら、鋼材構造セグメントを陽極とし、セグメント撤去装置の電極筒体を陰極として電圧を印加して電極筒体と対向する鋼材構造セグメントを電食(アノード溶解)し、前記鋼材構造セグメントが撤去された前記分岐・合流部分の先行トンネル内をシールド機で掘削可能な充填材に置換することを特徴とする。
【0012】
本発明のセグメント撤去装置は、請求項1記載のトンネル分岐・合流部のセグメント撤去方法に用いるセグメント撤去装置であって、
トンネル内を前後に移動可能な台車を備えトンネル径より小径に形成された円筒状の撤去装置筐体と、
撤去装置筐体に支持された油圧ジャッキに連結され、該装置筐体内外に摺動可能に設けられた金属製の電極筒体と、
前記撤去装置筐体の前後両端の外周に設けられトンネル内壁に接して撤去装置筐体をトンネル内中央に保持する筐体保持用ゴムバックと、
撤去装置筐体の内周に設けられ、電極筒体外周との間隙を液密にシールするシール部材と、
前記電極筒体に設けられた、側壁の上部に開口する電解質溶液送液管と、その下部に開口する電解質溶液回収管と、側壁及び前壁に開口する充填材注入管と、電圧を印加する電源端子と、
トンネル内を移動可能な台車に積載された前記電解質溶液回収管に接続された排液ポンプと、地上の高圧受電設備に接続された直流電源装置とから構成されていることを特徴とする。
【0013】
また、前記セグメント撤去装置は、トンネル立抗の地上に設けた電解質溶液槽及び回収溶液槽と、電解質溶液槽の溶液を送出する送液ポンプに接続された前記電解質溶液送液管、電解質溶液回収管、充填材注入管及び電源ケーブルをトンネル内に敷設して、
撤去装置筐体に支持された油圧ジャッキにより摺動可能に設けられた前記電極筒体を撤去装置筐体外に伸長して、電極筒体の先端を先行トンネル分岐・合流部分の開始地点に設けられたコンクリート隔壁に当接させ、外周を前記鋼材構造セグメントに対向するように配設し、
撤去装置筐体の前記筐体保持用ゴムバックを加圧膨張させて、前記鋼材構造セグメントと撤去装置筐体外周を液密にシールし、前記電極筒体と鋼材構造セグメントの間隙空間に電解質溶液送液管と電解質溶液回収管を介して電解質溶液を充填し加圧循環させながら、前記鋼材構造セグメントを陽極とし前記セグメント撤去装置を陰極として前記直流電源装置から電圧を所定時間印加し、前記鋼材構造セグメントが電食(アノード溶解)された後、
前記充填材注入管を介して電極筒体側壁開口から電極筒体とトンネル外壁の間隙空間に充填材を注入し、次に、油圧ジャッキにより電極筒体を撤去装置筐体内に収納しながらトンネル内に充填材注入管を介して電極筒体後壁開口から充填材を注入して充填し、
分岐・合流部が続く場合は、電極筒体の先端を充填固化した充填材に当接させておき、次に、撤去装置筐体の筐体保持用ゴムバックを収縮させ撤去装置筐体をトンネル内を前進可能な状態として、前記油圧ジャッキにより撤去装置筐体を前進させながら電極筒体を撤去装置筐体外に伸長して、続く分岐・合流部の鋼材構造セグメントと電極筒体が対向するように配設し、前記電食破壊及び充填材の注入を繰返し、
分岐・合流部のすべての先行トンネル内をシールド機で掘削可能な充填材に置換することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のトンネル分岐・合流部のセグメント撤去方法によれば、地上を占有する立抗の構築を必要とせず、大型シールド機或は特殊組合せシールド機のような設備を用いることなく通常仕様のシールド機で分岐・合流部の構築が可能となる。このため、工期の短縮と工事費用の削減を図ることができる。
【0015】
また、トンネル分岐・合流部の断面を必要最小限として掘削量を減らし、さらに、幹線トンネル或は支線トンネルのどちらからであっても先行施工が行える。さらに、炭素繊維補強材などの特殊素材によるセグメントを用いることなく、鋼材構造セグメントで先行トンネルを構築しておくことができる。
【0016】
また、本発明のセグメント撤去装置によれば、トンネル断面の鋼材構造セグメントを電極筒体の長さ単位で一括して電食(アノード溶解)して撤去することができるため、短時間で分岐・合流部の先行トンネルをシールド機が掘削可能なものとすることができる。
【0017】
さらに、セグメント撤去装置が、撤去装置筐体と、撤去装置筐体に支持された油圧ジャッキにより摺動可能に設けられた前記電極筒体から構成されており、先行トンネルの分岐・合流部の全長を移動させながら連続的に電食撤去することができる。このため、並行する部分が多い場合、或は複数箇所の分岐合流部がある場合であっても、短期間でトンネル分岐・合流部のセグメント撤去を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、先行トンネル内に配設された本発明のセグメント撤去装置を示す断面図である。
【0019】
先行トンネル100は、トンネル分岐・合流部に鋼材構造セグメント101で構築しておき、トンネル内の分岐・合流部の開始地点に発泡モルタルで支圧とセグメント撤去装置10の電極筒体12の保持を兼ねたコンクリート隔壁110を設ける。
【0020】
なお、この鋼材構造セグメント101は、外周に肌落ち防止のためのコンクリート部103を配した鋼製セグメント部102からなる構造である。(図3参照)
【0021】
セグメント撤去装置10は、トンネル内を前後に移動可能な台車11bを備えトンネル径より小径に形成された円筒状の撤去装置筐体11と、
撤去装置筐体11の前壁11aに支持された油圧ジャッキ13に連結され、該撤去装置筐体11内外に摺動可能に設けられた金属製の電極筒体12とから構成されている。図1では、油圧ジャッキ13が伸長されて撤去装置筐体11が前方に移動し、電極筒体12が撤去装置筐体11から出て、先行トンネル100の鋼材構造セグメント101の内周と対向した状態を示す。
【0022】
筐体保持用ゴムバック14は、前記撤去装置筐体11の前後両端の外周に設けられており、気体或は液体を充填して膨張させてトンネル内壁に接して撤去装置筐体11をトンネル内中央に保持する。また、撤去装置筐体11を前方へ移動させる際は、気体或は液体を抜いて収縮させる。
【0023】
シール部材15は、撤去装置筐体11の後端部内周に設けられ、電極筒体12外周との間隙を液密にシールするものである。これは、鋼材構造セグメント101の内周と電極筒体12との間に電解質溶液20aを充填可能とするものである。
【0024】
前記電極筒体12には、その側壁の下部に開口する電解質溶液送液管19と、その上部に開口する電解質溶液回収管20と、側壁及び後壁12bに開口する充填材注入管18と、前壁12aに電圧を印加する電源端子17cを備える。
【0025】
また、撤去装置筐体11の前方移動に従ってトンネル内を移動可能な台車16aに積載された前記電解質溶液回収管20に接続された排液ポンプ16と、台車17aに積載され地上の高圧受電設備25(図2参照)に接続した直流電源装置17とを配設する。
【0026】
次に、図2に示す、本発明のセグメント撤去装置の地上設備の構成を説明する。先行トンネル100の既設の立抗30の地上には、電解質溶液槽22、回収溶液槽23、充填材注入設備24及び高圧受電設備25を設ける。
【0027】
電解質溶液槽22からは送液ポンプ21により電解質溶液送液管19を介してセグメント撤去装置10へ電解質溶液20aを供給する。電解質溶液送液管19には流量計21aを設け電解質溶液20aの送出量を計測する。一方、回収溶液槽23には、トンネル内の排液ポンプ16により電解質溶液回収管20を介して鋼材構造セグメント101が溶解した電解質溶液20aを回収する。
【0028】
充填材注入設備24は、発泡モルタルなどの充填材を混練して供給するものであり、充填材注入管18を介してセグメント撤去装置10に充填材24aを送出する。
【0029】
高圧受電設備25は、高圧電流を変電してトンネル内の直流電源装置17へ、AC440ボルトの低圧電流を供給するものである。いずれも、先行トンネル100内を延長する配管と電線で接続されるものであり、先行トンネルの掘削のために構築された立抗に配設すればよい。このために、分岐・合流地点近傍に新たな立坑を構築する必要は無い。
【0030】
図3は、本発明の先行トンネルの分岐・合流部に使用するセグメントを示し、(a)は正面図、(b)は側面図、(C)は内側から見た平面図である。
【0031】
図3(a)に示すように、鋼材構造セグメント101は、鋼製セグメント部102の外側に肌落ち防止用のコンクリート部103を配した構造である。無筋コンクリートに近い構造で、付着用の短い鉄筋103aのみでコンクリートを保持させたものである。補強リブ102aで構造材を構成している鋼製セグメント部102が電食により溶解撤去された場合は、シールド機で掘削可能なコンクリート部103のみが残る構造である。
【0032】
図4は、先行トンネルの鋼材構造セグメント101と配設された電極筒体12の断面図である。先行トンネル100の外周は鋼材構造セグメント101で構築されている。鋼材構造セグメント101の鋼製セグメント部102の内側に電極筒体12が一定の間隙を保って貫入されて、その間隙に電解質溶液20aが充填されている。電解質溶液20aとしては濃度3%の食塩水を用いることができる。
【0033】
この電解質溶液20aは前記送液ポンプ21と流量計21a、排液ポンプ16と圧力計(図示せず)に接続されたポンプ制御盤(図示せず)により所定の圧力に保たれ、電食により鋼材構造セグメント101が撤去されても、地山の圧力(切羽圧)を支えるようになされる。
【0034】
すなわち、電食(アノード溶解)によるセグメントの撤去に当たっては、電食時間、電食電流、電解電圧、電解質溶液の温度、電解質溶液の導電率(比抵抗、食塩濃度)、電解質溶液圧力については、それぞれセンサーを設けて測定し、その値をコンピュータに取り込み、開始から終了までのデータを解析・制御して撤去工程を進行させる。
【0035】
図5は、本発明のトンネル分岐・合流部のセグメント撤去方法の工程を示し、(a)は電食中の配置、(b)は電極筒体周囲の充填材置換、(c)は電極筒体撤収・充填材置換、(d)は電極筒体撤収完了、(e)は撤去装置筐体前方移動、(f)は次の区間の電食開始の配置を示す断面図である。
【0036】
図5、図6を参照して、本発明のトンネル分岐・合流部のセグメント撤去方法の手順を説明する。
【0037】
(1)図5(a)に示すように、先ず先行トンネル100内の分岐・合流部の開始地点に発泡モルタルで支圧とセグメント撤去装置10の電極筒体12の保持を兼ねたコンクリート隔壁110を設け、トンネル内を前後に移動可能な台車11bを備えたセグメント撤去装置10を設置する。電極筒体12の後端12bをコンクリート隔壁110に保持させた状態で油圧ジャッキ13を駆動して撤去装置筐体11を前進させる。電極筒体12が撤去装置筐体11外に出されて鋼材構造セグメント101と対向した状態で、筐体保持用ゴムバック14を膨張させて電極筒体12と鋼材構造セグメント101との間隙を液密とし、地上の電解質溶液槽22の電解質溶液22aを送液ポンプにより注入する。
この状態で、電極筒体12の電源端子17cに陰極を、鋼材構造セグメント101に電圧を印加する電極端子17bに陽極を接続して直流電源装置17を稼動させて、電圧を印加し、鋼材構造セグメント101を電食(アノード溶解)させて撤去する。
【0038】
このとき、電食管理用コンピュータ(図示せず)により、電解質溶液の圧力、電解電流、電解電圧、電気溶液濃度をセンサーにより計測したデータを取り込み、電食の進行を監視すると共に、電源装置及びポンプを制御して電食を行う。
【0039】
電食中は、送液ポンプ21と排液ポンプ16を稼働して電解質溶液20aを循環させて、鋼材構造セグメント101が溶解した水酸化物を地上の回収溶液槽23に回収すると共に、新たな電解質溶液20aを送液ポンプ21で送り込み電食を促進する。
【0040】
電食管理用コンピュータにより、鋼材構造セグメント101がすべて溶解したことを電気伝導率の変化から確認して、電食を完了する。
【0041】
(2)電食完了後、充填材注入設備24を稼動して、鋼材構造セグメント101が溶解撤去された先行トンネルと電極筒体12との間隙の電解質溶液20aと充填材24aを置換する。すなわち電解質溶液20aを排液ポンプ16で排出しながら、充填材24aを注入して置換する。図5(b)に電極筒体周囲の充填材置換状態を示す。
【0042】
(3)次に、油圧ジャッキ13を駆動して、電極筒体12を撤去装置筐体11内部に収納しながら、電極筒体12の後壁12bを後退させ、トンネル内の空洞に充填材24aを注入充填する。(2)の作業では充填材注入管18のバルブ18aを開けて行ったが、(3)ではバルブ18bをあけて後壁12bの開口からトンネル内の空洞に充填材24aを充填する。図5(c)はこの電極筒体撤収・充填材置換中を示す。
【0043】
(4)図6(a)は、前記(3)の作業を終えた状態を示す。この状態は、鋼材構造セグメント101が撤去されたトンネル部分が、発泡コンクリートなどの充填材24aで充填され、シールド機で掘削可能な部分が完成した所である。ここで、前方のトンネル分岐・合流部のセグメント撤去のために、筐体保持用ゴムバック14を収縮させ、撤去装置筐体11を移動可能としておく。
【0044】
(5)次に、図6(b)に示すように、電極筒体12の後壁12bを充填材24aに保持させた状態で油圧ジャッキ13を伸長駆動して撤去装置筐体11を前進させる。
【0045】
(6)図6(c)は、電極筒体12が撤去装置筐体11外に出されて鋼材構造セグメント101と対向した状態で、筐体保持用ゴムバック14を膨張させて電極筒体12と鋼材構造セグメント101との間隙を液密とし、地上の電解質溶液槽22の電解質溶液22aを送液ポンプ21を稼働して注入する。
この状態で、電極筒体12の電源端子17cに陰極を、鋼材構造セグメント101の電極端子17bに陽極を接続して直流電源装置17を稼動させて、電圧を印加し、次の区間の電食(アノード溶解)を開始する。
(2)から(6)を繰り返し、トンネル分岐・合流部の長さの鋼材構造セグメントをすべて電食撤去して充填材24aを充填して作業を終了する。
【0046】
図7は、本発明を用いたランプ合流部の施工方法を説明する模式図である。
【0047】
予め、ランプ支線となる先行トンネル100に、本線トンネル200a、200bと合流する部分のセグメントを鋼材構造セグメント101構築しておく。次に本線となる本線トンネル200a、200bのシールド機が到着して貫通する前に、本発明のセグメント撤去方法により鋼材構造セグメント101を電食撤去して充填剤に置換しておき、本線掘削シールド機により先行トンネル100と合流させるものである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】先行トンネル内に配設された本発明のセグメント撤去装置を示す断面図である。
【図2】本発明のセグメント撤去装置の地上設備の構成を説明する模式図である。
【図3】本発明の先行トンネルの分岐・合流部に使用するセグメントを示し、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は内側から見た平面図である。
【図4】先行トンネルの鋼材構造セグメントと配設された電極筒体の断面図である。
【図5】本発明のトンネル分岐・合流部のセグメント撤去方法の工程を示し、(a)は電食中の配置、(b)は電極筒体周囲の充填材置換、(c)は電極筒体撤収・充填材置換を示す断面図である。
【図6】本発明のトンネル分岐・合流部のセグメント撤去方法の図5に続く工程を示し、(a)は電極筒体撤収完了、(b)は撤去装置筐体前方移動、(c)は次の区間の電食開始の配置を示す断面図である。
【図7】本発明を用いたランプ合流部の施工方法を説明する模式図である。
【符号の説明】
【0049】
10 セグメント撤去装置
11 撤去装置筐体
11a 前壁
11b 台車
12 電極筒体
12a 前壁
12b 後壁
13 油圧ジャッキ
14 筐体保持用ゴムバック
15 シール部材
16 排液ポンプ
16a 台車
17 直流電源装置
17a 台車
17b 電源端子
17c 電源端子
18 充填材注入管
19 電解質溶液送液管
20 電解質溶液回収管
20a 電解質溶液
21 送液ポンプ
21a 流量計
22 電解質溶液槽
23 回収溶液槽
24 充填材注入設備
24a 充填材
25 高圧受電設備
30 立抗
100 先行トンネル
101 鋼材構造セグメント
102 鋼製セグメント部
102a 補強リブ
103 コンクリート部
103a 鉄筋
110 コンクリート隔壁
200a 本線トンネル
200b 本線トンネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル分岐・合流部の構築に際し予め先行して構築される先行トンネルの分岐・合流部分のセグメントを鋼材構造セグメントで構築しておき、
合流する地中トンネルのシールド機が到着または貫通通過する前に、先行トンネルの分岐・合流部分の開始地点にコンクリート隔壁を設け、該コンクリート隔壁に先端が接し外周が鋼材構造セグメントに対向する円筒状のセグメント撤去装置を配設し、
前記鋼材構造セグメント内周と前記セグメント撤去装置の電極筒体の外周を液密にシールした空間に地上部から電解質溶液を注入充填して加圧循環させながら、鋼材構造セグメントを陽極とし、セグメント撤去装置の電極筒体を陰極として電圧を印加して電極筒体と対向する鋼材構造セグメントを電食(アノード溶解)し、前記鋼材構造セグメントが撤去された前記分岐・合流部分の先行トンネル内をシールド機で掘削可能な充填材に置換することを特徴とするトンネル分岐・合流部のセグメント撤去方法。
【請求項2】
請求項1記載のトンネル分岐・合流部のセグメント撤去方法に用いるセグメント撤去装置であって、
トンネル内を前後に移動可能な台車を備えトンネル径より小径に形成された円筒状の撤去装置筐体と、
撤去装置筐体に支持された油圧ジャッキに連結され、該装置筐体内外に摺動可能に設けられた金属製の電極筒体と、
前記撤去装置筐体の前後両端の外周に設けられトンネル内壁に接して撤去装置筐体をトンネル内中央に保持する筐体保持用ゴムバックと、
撤去装置筐体の内周に設けられ、電極筒体外周との間隙を液密にシールするシール部材と、
前記電極筒体に設けられた、側壁の上部に開口する電解質溶液送液管と、その下部に開口する電解質溶液回収管と、側壁及び前壁に開口する充填材注入管と、電圧を印加する電源端子と、
トンネル内を移動可能な台車に積載された前記電解質溶液回収管に接続された排液ポンプと、地上の高圧受電設備に接続された直流電源装置とから構成されていることを特徴とするセグメント撤去装置。
【請求項3】
前記セグメント撤去装置は、トンネル立抗の地上に設けた電解質溶液槽及び回収溶液槽と、電解質溶液槽の溶液を送出する送液ポンプに接続された前記電解質溶液送液管、電解質溶液回収管、充填材注入管及び電源ケーブルをトンネル内に敷設して、
撤去装置筐体に支持された油圧ジャッキにより摺動可能に設けられた前記電極筒体を撤去装置筐体外に伸長して、電極筒体の先端を先行トンネル分岐・合流部分の開始地点に設けられたコンクリート隔壁に当接させ、外周を前記鋼材構造セグメントに対向するように配設し、
撤去装置筐体の前記筐体保持用ゴムバックを加圧膨張させて、前記鋼材構造セグメントと撤去装置筐体外周を液密にシールし、前記電極筒体と鋼材構造セグメントの間隙空間に電解質溶液送液管と電解質溶液回収管を介して電解質溶液を充填し加圧循環させながら、前記鋼材構造セグメントを陽極とし前記セグメント撤去装置を陰極として前記直流電源装置から電圧を所定時間印加し、前記鋼材構造セグメントが電食(アノード溶解)された後、
前記充填材注入管を介して電極筒体側壁開口から電極筒体とトンネル外壁の間隙空間に充填材を注入し、次に、油圧ジャッキにより電極筒体を撤去装置筐体内に収納しながらトンネル内に充填材注入管を介して電極筒体後壁開口から充填材を注入して充填し、
分岐・合流部が続く場合は、電極筒体の先端を充填固化した充填材に当接させておき、次に、撤去装置筐体の筐体保持用ゴムバックを収縮させ撤去装置筐体をトンネル内を前進可能な状態として、前記油圧ジャッキにより撤去装置筐体を前進させながら電極筒体を撤去装置筐体外に伸長して、続く分岐・合流部の鋼材構造セグメントと電極筒体が対向するように配設し、前記電食破壊及び充填材の注入を繰返し、
分岐・合流部のすべての先行トンネル内をシールド機で掘削可能な充填材に置換することを特徴とする請求項2記載のセグメント撤去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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