説明

トンネル合流構造、およびトンネル合流構造の構築方法

【課題】トンネルの合流部を構築する場合において、十分な強度を有し応力伝達をスムーズに行うことができ、経済的なトンネル合流構造およびトンネル合流構造の構築方法を提供する。
【解決手段】本線シールド1とランプシールド13との間に、上部梁51を屋根とする連結部63が設けられる。上部梁51の梁外周部曲率53は梁内周部曲率55よりも小さいアーチ形状である。接合部9は、鋼板3、セグメント7に間にコンクリート5aが打設され、端部にねじ鉄筋11が埋設され、上部梁51と接合される。本線シールド1とランプシールド13とは、引張部材43により接合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対のトンネル間を連結して構築される、トンネル合流構造、およびトンネル合流部の構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネルの合流部を構築するためには、合流部の上方より開削してトンネル合流部を構築する方法が行われている。しかし、この方法では、合流部の上部に道路や構造物等があると、施工が制限されるという問題がある。これに対し、本線トンネルとランプトンネルなどの複数のトンネルをトンネル内部より連通し、トンネル合流部を構築する方法がある。
【0003】
このようなトンネル合流部の構築方法としては、例えば、本線トンネルとランプ部トンネルとを環状にパイプルーフで連結し、パイプルーフで囲まれた部位を掘削し、パイプルーフの内側を覆工するトンネル合流部の構築方法がある(特許文献1)。また、一対のシールドトンネル間を掘削し、両トンネルを連通する連結部を設け、両トンネルおよび連結部の周囲にPC鋼線を配置するトンネルの合流、分岐構造がある(特許文献2)。
【特許文献1】特開2004−353264号公報
【特許文献2】特開2005−68861号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のトンネル合流部の構築方法では、パイプルーフ上面には大きな土圧がかかるが、パイプルーフに用いられるパイプ径が小さいと連結部の強度が確保できないという問題がある。また、大径のパイプを使用すると、セグメントの主桁間を貫通させることができないという問題がある。また、合流部全長にパイプルーフを設ける必要があり、工数を要するという問題がある。
【0005】
特許文献2のトンネルの合流、分岐構造では、連結部の上版に大きな土圧がかかるため、上版の厚みを確保する必要があるが、上版と接合されるセグメントの桁高さが上版に対して低すぎると、上版とセグメントの接合が困難であり、また接合部に大きな応力集中が生じるという問題がある。また、上版が大きすぎると、トンネル内からセグメントの主桁間を通過させることができないという問題がある。また、上版、底版との接合部には特殊なセグメントが必要となるという問題がある。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、トンネルの合流部を構築する場合において、十分な強度を有し応力伝達をスムーズに行うことができ、経済的なトンネル合流構造およびトンネル合流構造の構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、第1のトンネルと、前記第1のトンネルに併設される第2のトンネルと、前記第1のトンネルと前記第2のトンネルとの間の上部に設けられ、外周部の曲率が内周部の曲率よりも大きいアーチ状の梁と、を具備し、前記第1のトンネルと前記第2のトンネルとを前記アーチ状の梁を屋根とした連結部でつなぐことを特徴とするトンネル合流構造である。
【0008】
前記第1のトンネルと前記第2のトンネルとを接合する引張部材を更に具備してもよく、前記第1のトンネルおよび前記第2のトンネルと、前記アーチ状の梁との接続部には鋼板が設けられ、前記第1のトンネルおよび前記第2のトンネルと、前記鋼板との間には、コンクリートが打設されてもよい。
【0009】
第1の発明によれば、外周部の曲率が内周部の曲率よりも大きいアーチ状の梁を屋根とする連結部を有するため、高いアーチ効果により上部からの土圧に耐えることができ、また、梁とセグメントとの接合部の厚みをセグメントの桁高さに合わせることができるため、接続部における応力伝達がスムーズとなり、応力集中部位が生じず、更に、接合部をセグメントリングとは別に設けるため、特殊なセグメントを使用する必要がなく、セグメントリングに力が働く部位のみの厚みを厚くすることができるため、セグメント全体の桁高を上げる必要もないため経済的であり、また、引張部材を有するため、アーチ状の梁に上部より加わる力によりトンネル間を広げようとする力に対向しうるトンネル合流構造を提供することができる。
【0010】
第2の発明は、第1のトンネルと、前記第1のトンネルに併設する第2のトンネルを構築する工程(a)と、前記第1のトンネル内部に第1の接合部を設ける工程(b)と、前記第2のトンネル内部に第2の接合部を設ける工程(c)と、前記第1の接合部と前記第2の接合部を連結する、外周部の曲率が内周部の曲率よりも大きいアーチ状の梁を設ける工程(d)と、前記第1のトンネルと前記第2のトンネルとを前記アーチ状の梁を屋根とした連結部でつなぐ工程(e)と、を具備することを特徴とするトンネル合流構造の構築方法である。
【0011】
前記第1の接合部を設ける工程(b)は、前記第1のトンネル内面に第1の鋼板を設ける工程(f)と、前記第1の鋼板と前記第1のトンネルとの間にコンクリートを打設する工程(g)と、を具備してもよく、また、前記第2の接合部を設ける工程(c)は、前記第2のトンネル内面に第2の鋼板を設ける工程(h)と、前記第2の鋼板と前記第2のトンネルとの間にコンクリートを打設する工程(i)と、を具備してもよい。
【0012】
前記工程(g)および/または前記工程(i)でコンクリートを打設する際に、コンクリートにねじ鉄筋等を埋め込んでもよい。また、前記工程(d)の後に、前記第1のトンネルと前記第2のトンネルとを接合する引張部材を設ける工程(j)を更に具備してもよい。また、前記アーチ状の梁を設ける工程(d)で、前記アーチ状の梁の下方の前記第1のトンネルおよび/または前記第2のトンネルの内面に板部材を貼り付けてもよい。
【0013】
第2の発明によれば、外周部の曲率が内周部の曲率よりも大きいアーチ状の梁を屋根とする連結部を有するため、コンパクトながら高いアーチ効果により上部からの土圧に耐えることができ、また、梁とセグメントとの接合部の厚みをセグメントの桁高さに合わせることができ、梁と接合部との接合が予め埋設されたねじ鉄筋等により行われるので、梁と接合部との接合が容易であり、接合部をセグメントリングとは別に設けるため、特殊なセグメントを使用する必要がなく、セグメントリングに力が働く部位の厚みを、鋼板によるサンドイッチ構造により厚くすることができるため、セグメント全体の桁高を上げる必要もなく経済的であり、また、梁の下方のトンネル内面に鉄板を貼り付けることで、トンネル外部よりトンネル内への土砂等の落下が防止できるため作業が容易であるトンネル合流構造の構築方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、トンネルの合流部を構築する場合において、十分な強度を有し応力伝達をスムーズに行うことができ、経済的なトンネル合流構造およびトンネル合流構造の構築方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1〜図10は、本実施の形態に係るトンネル合流構造の構築工程を示した図である。まず、図1に示すように、本線シールド1をシールド機で構築する。本線シールド1を構成するセグメント7には特殊なセグメント等の使用は不要であり、一般的な鋼製セグメントや合成セグメントが使用できる。
【0016】
本線シールド1の上方内面には、一方の端部をやや上方へ傾け、上方へ向けた端部が、本線シールド1の略頂部近傍に位置するように、鋼材又は鉄筋4が設けられ、鋼材又は鉄筋4の内面には鋼板3が設けられる。鋼材又は鉄筋4、及び鋼板3は、後述するランプシールドが設けられる側を上方へ向け、本線シールド1を構成するセグメント7へ直接溶接等により接合される。
【0017】
次に、図2(a)に示すように、鋼板3と本線シールド1との間にコンクリート5aを打設する。コンクリート5aの打設には、鋼板3が型枠として利用され、鋼板3が接合された範囲のセグメント7内にもコンクリート5aが打設される。従って、この範囲は、図示しないセグメント31の鋼製のスキンプレートと鋼板3により、コンクリート5aが挟まれた構造となる。
【0018】
図2(b)は、図2(a)のA部拡大図である。コンクリート5aの打設の際には、図2(b)に示すように、鋼材又は鉄筋4の上方に向けられた側の端部近傍に一対のねじ鉄筋11a、11bが埋設される。ねじ鉄筋11aは、鋼板3の上部のコンクリート5aに埋設される。ねじ鉄筋11bは鋼材又は鉄筋4の端部と接合され、コンクリート5aに埋設される。
【0019】
ねじ鉄筋11a、11b共に、端部はコンクリート5aから突出しており、それぞれ後述するアーチ部材との接合方向へ向けられる。セグメント7、鋼板3、鋼材又は鉄筋4、コンクリート5aおよびねじ鉄筋11a、11bにより構成される部分が、後述する上部梁との接合部9となる。接合部9は、セグメント7と鋼板3で挟まれたほぼ中央付近が最も厚い構造となる。
【0020】
次に、図3(a)に示すように、本線シールド1の側方にランプシールド13を併設する。ランプシールド13はシールド機により本線シールド1と同一の軸方向へ設けられる。なお、ランプシールド13を構成するセグメントも、本線シールド1と同様に、通常の鋼製セグメントや合成セグメントが使用できる。
【0021】
ランプシールド13の上方内面には、本線シールド1と同様に、鋼板15、鋼材又は鉄筋16が本線シールド1側をやや上方へ傾けて、上方へ向けた端部がランプシールド13の略頂点近傍に位置するように設けられる。鋼板15及び、鋼材又は鉄筋16はランプシールド13を構成するセグメントへ直接溶接等により接合される。鋼板15及び、鋼材又は鉄筋16とランプシールド13との間には、本線シールド1と同様に、鋼板15を型枠としてコンクリート5bが打設される。
【0022】
図3(b)は、図3(a)のB部拡大図である。図3(b)に示すように、本線シールド1と同様に、鋼材又は鉄筋16の本線シールド1側の端部には、一対のねじ鉄筋11c、11dが埋設される。本線シールド1と同様に鋼板15、鋼材又は鉄筋16、コンクリート5bおよびねじ鉄筋11c、11dにより構成される部分が、後述する上部梁との接合部17となる。接合部17は、セグメント7と鋼板15で挟まれたほぼ中央付近が最も厚い構造となる。なお、以後の説明において、本線シールド1と同様の構成、工程については、ランプシールド13側の詳細な説明は省略する。
【0023】
本線シールド1、ランプシールド13の周囲の地盤が透水層である場合には、予め本線シールド1、ランプシールド13内部より対象部位の地盤に止水薬注19を施す。図3は、例として本線シールド1、ランプシールド13の下部に図示しない不透水層へ到達するように止水薬注19a、19bを設け、本線シールド1、ランプシールド13の外側に止水薬注19c、19dを設けた状態を示し、本線シールド1、ランプシールド13の上方が透水層である場合には、更に上方の地盤にも止水薬注19eを設ける事ができる。なお、以後の図面において、止水薬注19a、19b、19c、19d、19eの図示は省略する。
【0024】
次に、図4に示すように、本線シールド1とランプシールド13の間の上方の地盤を、後述する上部梁51の形状に対応したアーチ形状に掘削する。掘削は、本線シールド1およびランプシールド13の掘削部に該当する部位のセグメント7の図示しないスキンプレートを撤去し、各シールド内部より行う。この際、鋼板3と隣接する部分の本線シールド1の内面には鉄板21が貼り付けられる。鉄板21により、掘削部から本線シールド1内への土砂等の落下を防ぐことができる。なお、ランプシールド13も同様に、鋼板15と隣接する部分の内面に鉄板22が貼り付けられる。
【0025】
本線シールド1内部には、仮壁25が設けられる。仮壁25は本線シールド1の工事作業場27とその他部位を仕切るためのものである。仮壁25および鉄板21により、本線シールド1内の工事作業場27以外のスペースは別途他の工事を進めることができ、また、既に舗装工事等が行われている場合には、車両の通行などを行いながらトンネル合流部の工事を進めることができる。なお、必要に応じて、ランプシールド13内にも仮壁25を設けても良い。
【0026】
本線シールド1とランプシールド13との間の掘削した空間の下部には、仮底版23が設けられる。仮底版23は、本線シールド1、ランプシールド13との間の上部梁設置工事を行う際の作業用の床として利用されると共に、本線シールド1とランプシールド13が、外方からの土圧により内方へ寄ってくるのを防ぐ機能も有する。
【0027】
次に図5(a)に示すように、上部アーチ部29を設ける。上部アーチ部29は、アーチ状の鉄板および鉄鋼等で構成されており、掘削した上面に沿って設けられる。上部アーチ部29の構築の際は必要に応じて支保工35が用いられ、図示しない作業足場が別途設けられる。
【0028】
図5(b)は、図5(a)のA部拡大図である。図5(b)に示すように、上部アーチ部29の端部にはねじ31が設けられており、ねじ31とねじ鉄筋711とが継手39により接合される。即ち、上部アーチ部29は本線シールド1と接合される。なお、前述した通り、ねじ鉄筋11aは上部アーチ部29との接合方向へ向けて、コンクリート5aへ予め埋設されている。
【0029】
また、上部アーチ部29は本線シールド1との接合方法と同様に、ランプシールド13とも接合される。従って、上部アーチ部29は、両端を本線シールド1およびランプシールド13と接合され、アーチ状に設けられる。上部アーチ部29の背面(地盤との隙間)には、充填材37が充填される。充填材37は、例えばモルタルやコンクリートが使用できる。
【0030】
次に、図6に示すように下部アーチ部45および引張部材43が設けられる。下部アーチ部45も上部アーチ部29と同様に、アーチ状の鉄板および鉄鋼等で構成されているが、上部アーチ部29よりもやや大きな曲率を有する。下部アーチ部45は、上部アーチ部29の下部(内面方向)に、上部アーチ部29と間隔をおいて設けられ、上部アーチ部29と鉄筋49により接合される。この際、支保工35の一部は、上部アーチ部29と下部アーチ部45を接続する鉄筋49としても利用することができる。なお、上部アーチ部29と下部アーチ部45の曲率については、後述する。
【0031】
図6(b)は、図6(a)のA部拡大図である。図6(b)に示すように下部アーチ部45の端部には、ねじ47が設けられており、ねじ47とねじ鉄筋11bとが継手39により接合される。即ち、下部アーチ部45は本線シールド1と接合される。なお、前述した通り、ねじ鉄筋11bは下部アーチ部45との接合方向へ向けて、コンクリート5aへ予め埋設されている。
【0032】
また、下部アーチ部45は本線シールド1との接合方法と同様に、ランプシールド13とも接合される。従って、下部アーチ部45は、両端を本線シールド1およびランプシールド13と接合され、アーチ状に設けられる。
【0033】
引張部材43は、本線シールド1およびランプシールド13を接合する。図6(b)に示すように、引張部材43の端部には、ジョイント41が設けられる。ジョイント41は、一方の端部が引張部材43と接合され、他方が本線シールド1を構成するセグメント7に接合される。引張部材43の他方の端部は、本線シールド1との接合方法と同様にランプシールド13と接合される。引張部材43によれば、後述するアーチ状の上部梁51への上部からの土圧により、本線シールド1およびランプシールド13が外方へ押出される力を拘束することができる。引張部材43の材質は特定しないが例えば鉄骨、鉄筋、PC鋼線等が使用できる。
【0034】
次に、図7(a)に示すように、上部アーチ部29と下部アーチ部45との間にコンクリート5cを打設する。コンクリート5cの打設の際は、上部アーチ部29、下部アーチ部45は、型枠としての機能を有する。以後、上部アーチ部29と下部アーチ部45との間にコンクリート5cを打設して構築した構造体を、上部梁51と呼ぶ。
【0035】
図7(b)は、図7(a)のC部拡大図である。図7(b)に示すように、上部梁51の外周部および内周部の曲率である、梁外周部曲率53、梁内周部曲率55は、それぞれ、上部アーチ部29、下部アーチ部45の曲率となる。ここで、上部梁51の梁外周部曲率53は、梁内周部曲率55よりも小さい。従って、上部梁51は、上部梁51の中央付近の厚みが厚く、端部に行くにつれて薄くなる形状となる。
【0036】
上部梁51を前述したような形状とした理由は、以下の通りである。アーチ形状の上部梁51は、アーチ高さを高くすることにより、より高いアーチ形状による効果を得ることができ、上部からの土圧に対して、高い強度を得ることができる。また、上部からの土圧を受けて最も大きな曲げモーメントを受ける部位である、上部梁51の略中央部分の厚さを厚くすることで、より高い強度を得ることができる。
【0037】
しかし、上部梁51全体を厚くし、アーチ高さを高くすると、上部梁51が大型化し、施工が困難となり、コスト的にも不利である。また、上部梁51と接合される、例えば本線シールド1の接合部9の厚さは、本線シールド1を構成するセグメント7の厚さにより決定される。しかし、上部梁51の厚さとセグメント7の厚さ(本線シールド1の接合部9の厚さ)とが大きく異なると、上部梁51が受けた力が、本線シールド1へスムーズに伝達されず、接合部9近傍で応力集中が生じる恐れがある。従って、上部梁51の厚さとセグメント7の厚さはできるだけ等しいことが望ましい。しかし、必要以上に厚さのあるセグメント7の使用や、厚さの異なる特殊なセグメントの使用は、経済上の問題がある。
【0038】
そこで、上部梁51の梁外周部曲率53を梁内周部曲率55よりも小さくすることで、最も力を受ける上部梁51の中央付近の厚さを確保すると共に、上部梁51の厚さ方向の中立線で決定されるアーチ高さを確保することができ、また、上部梁51の端部がセグメント7と略同一厚さとすることができるため、接続部9における応力集中を抑制し、特殊なセグメントや必要以上に厚さのあるセグメントを使用することなく、強度を確保することが可能となる。
【0039】
次に、図8に示すように、仮底版23、支保工35を撤去し、本線シールド1とランプシールド13の間の下方の地盤を、後述する下部梁59の形状に対応した形状に掘削する。掘削は、本線シールド1およびランプシールド13の掘削部に該当する部位のセグメント7の図示しないスキンプレートを撤去し、各シールド内部より行う。
【0040】
次に、図9に示すように、掘削した本線シールド1とランプシールド13の間の下方に、下部梁59を設ける。下部梁59は、鉄筋57を設けた後にコンクリート5dを打設して構築される。なお、下部梁59は通常の鉄筋コンクリートにより構成されるが、上部梁51と同様の構成としても良い。この場合は、上部梁51を構成する上部アーチ部29、下部アーチ部45等の上下関係を逆転させればよい。下部梁59が構築された後、本線シールド1、ランプシールド13の外部掘削した範囲(図中D部)に該当するセグメントを撤去する。
【0041】
図10は、前述した図9におけるD部のセグメントおよび、仮壁25を撤去し、必要に応じて舗装61が施工された状態を示す図である。本線シールド1とランプシールド13は、上部梁51を屋根とする連結部63で連通され、トンネルの合流構造が構築される。
【0042】
以上説明したように、本実施の形態に係るトンネル合流構造の構築方法によれば、トンネル合流部である連結部63の屋根はアーチ状の上部梁51であるため、上方からの大きな土圧に対しても対向することができ、強度的に安定したトンネル合流構造を容易に構築することができる。
【0043】
また、上部梁51の梁外周部曲率53は梁内周部曲率55よりも小さいため、最も力を受ける上部梁51の中央付近の厚さを確保することができる。このため、上部梁51は大きな強度を確保することができる。また、上部梁51のアーチ高さは、上部梁51の厚さ方向の中立線で決定されるため、梁外周部曲率53を小さくすることで、一定厚みの梁形状よりも実質的に高いアーチ高さを確保することができ、より大きなアーチ形状による強度向上の効果を得ることができる。
【0044】
また、上部梁51の端部がセグメント7と略同一厚さとすることができるため、接続部9における応力集中を抑制し、特殊なセグメントや必要以上に厚さのあるセグメントを使用することなく、強度を確保することができる。また、上部梁51と接続される接続部9、17は、セグメント7と鋼板3、15とでコンクリート5a、5bを挟み込んだ構造であるため、大きな強度を確保することができる。更に、接続部9、17は、上部梁51からの力により最も大きなモーメントを受ける、接続部9、17の中央部付近の厚さが厚いため、セグメントの厚さを変更することなく、十分な強度を得ることができる。
【0045】
また、引張部材43により、上部梁51が上方より受ける土圧によって本線シールド1、ランプシールド13が外方へ押出される力に対向し、トンネルを拘束することができる。
【0046】
また、接合部9、17は、上部梁51との接合のためにねじ鉄筋11等が埋設され、継手39によって接合されるため、接合が簡便であり、また、高い位置精度などが要求されず、効率よく施工することができる。
【0047】
また、上部梁51下方のシールド内面に鉄板21、22を貼り付けるため、シールド外部の掘削作業等による土砂が、シールド内へ落下することが防止できる。上部梁51に使用される、上部アーチ部29および下部アーチ部45や、接続部9、17に使用される鋼板3、15は、強度部材としての機能を有すると共に、コンクリート5a、5bを打設する際の型枠としても使用されるため、高い施工効率を得ることができる。
【0048】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0049】
例えば、本実施の形態では、上方から下方に向かってトンネル合流構造の構築を行っているが、地盤によっては、下方から上方に向けて、本実施の形態とは逆の手順で施工を行っても良い。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本線シールド1に鋼板3、鋼材又は鉄筋4を設けた状態を示す図。
【図2】本線シールド1と鋼板3との間にコンクリート5aを打設した状態を示す図で、(a)は全体図、(b)はA部拡大図。
【図3】本線シールド1にランプシールド13を併設した状態を示す図で、(a)は全体図、(b)はB部拡大図。
【図4】本線シールド1とランプシールド13との間の上部を掘削した状態を示す図。
【図5】本線シールド1とランプシールド13との間の上部に上部アーチ部29を設けた状態を示す図で、(a)は全体図、(b)はA部拡大図。
【図6】上部アーチ部29の下部に下部アーチ部45を設けた状態を示す図で、(a)は全体図、(b)はA部拡大図。
【図7】上部アーチ部29と下部アーチ部45の間にコンクリート5cを打設して上部梁51を設けた状態を示す図で、(a)は全体図、(b)はC部拡大図。
【図8】本線シールド1とランプシールド13との間を掘削した状態を示す図。
【図9】本線シールド1とランプシールド13との間の下部に下部梁59を設けた状態を示す図。
【図10】本線シールド1とランプシールド13との間のセグメントを撤去し、連結部63によって、本線シールド1とランプシールド13とがつなげられた状態を示す図。
【符号の説明】
【0051】
1………本線シールド
3………鋼板
4………鋼材又は鉄筋
5………コンクリート
7………セグメント
9………接合部
11………ねじ鉄筋
13………ランプシールド
15………鋼板
16………鋼材又は鉄筋
17………接合部
19………止水薬注
21、22………鉄板
23………仮底版
25………仮壁
27………工事作業場
29………上部アーチ部
31………ねじ
35………支保工
37………充填材
39………継手
41………ジョイント
43………引張部材
45………下部アーチ部
47………ねじ
49………鉄筋
51………上部梁
53………梁外周部曲率
55………梁内周部曲率
57………鉄筋
59………下部梁
61………舗装
63………連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のトンネルと、
前記第1のトンネルに併設される第2のトンネルと、
前記第1のトンネルと前記第2のトンネルとの間の上部に設けられ、外周部の曲率が内周部の曲率よりも大きいアーチ状の梁と、
を具備し、
前記第1のトンネルと前記第2のトンネルとを前記アーチ状の梁を屋根とした連結部でつなぐことを特徴とするトンネル合流構造。
【請求項2】
前記第1のトンネルと前記第2のトンネルとを接合する引張部材を更に具備することを特徴とする請求項1記載のトンネル合流構造。
【請求項3】
前記第1のトンネルおよび前記第2のトンネルと、前記アーチ状の梁との接続部には鋼板が設けられ、前記第1のトンネルおよび前記第2のトンネルと、前記鋼板との間には、コンクリートが打設されることを特徴とする請求項1または請求項2記載のトンネル合流構造。
【請求項4】
第1のトンネルと、前記第1のトンネルに併設する第2のトンネルを構築する工程(a)と、
前記第1のトンネル内部に第1の接合部を設ける工程(b)と、
前記第2のトンネル内部に第2の接合部を設ける工程(c)と、
前記第1の接合部と前記第2の接合部を連結する、外周部の曲率が内周部の曲率よりも大きいアーチ状の梁を設ける工程(d)と、
前記第1のトンネルと前記第2のトンネルとを前記アーチ状の梁を屋根とした連結部でつなぐ工程(e)と、
を具備することを特徴とするトンネル合流構造の構築方法。
【請求項5】
前記第1の接合部を設ける工程(b)は、
前記第1のトンネル内面に第1の鋼板を設ける工程(f)と、
前記第1の鋼板と前記第1のトンネルとの間にコンクリートを打設する工程(g)と、
を具備することを特徴とする請求項4記載のトンネル合流構造の構築方法。
【請求項6】
前記第2の接合部を設ける工程(c)は、
前記第2のトンネル内面に第2の鋼板を設ける工程(h)と、
前記第2の鋼板と前記第2のトンネルとの間にコンクリートを打設する工程(i)と、
を具備することを特徴とする請求項4または請求項5記載のトンネル合流構造の構築方法。
【請求項7】
前記工程(g)および/または前記工程(i)でコンクリートを打設する際に、コンクリートにねじ鉄筋を埋め込むことを特徴とする請求項5または請求項6記載のトンネル合流構造の構築方法。
【請求項8】
前記工程(d)の後に、前記第1のトンネルと前記第2のトンネルとを接合する引張部材を設ける工程(j)を更に具備することを特徴とする請求項4から請求項7のいずれかに記載のトンネル合流構造の構築方法。
【請求項9】
前記アーチ状の梁を設ける工程(d)で、前記アーチ状の梁の下方の前記第1のトンネルおよび/または前記第2のトンネルの内面に板部材を貼り付けることを特徴とする請求項4から請求項8のいずれかに記載のトンネル合流構造の構築方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate