説明

トンネル漏水防止板

【課題】トンネル内への漏水の滴下や漏水の凍結が防止でき、断面寸法が小さく大型車両の通行時に接触し難く、接触した場合にも破断し剥落し難く、内空断面の小さなトンネルにも設置可能なトンネル漏水防止板を提供する。
【解決手段】間隔を持った複数の樹脂板14と、これに適宜角度で固定された複数の樹脂製の隔壁16を備え、端部をアクリル製等のテープによる密閉手段28により閉塞した複層構造の樹脂製パネル12を、車両進行方向に屈曲した形状を持つ固定金具18によりトンネル内壁30に固定したトンネル漏水防止板であり、断面内の空間により断熱効果を得ており断面寸法が小さいことから、大型車両の通行時に接触し難く、内空断面の小さなトンネルでも設置が可能になる。さらに、大型車両が接触した場合にも、固定金具の変形と樹脂製パネルの断面内の分割され密閉された空間が、接触による衝撃を緩和することから破断し剥落し難い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
既設トンネルの漏水対策工のうち面導水工法に適用されるトンネル漏水防止板に関する。より詳細には、大型車両の接触時に破断し剥落し難いトンネル漏水防水板に関する。
【背景技術】
【0002】
既設トンネルの漏水発生箇所では、トンネル内への漏水の滴下や漏水の凍結によるトンネル内の車両交通への障害を防止するため、トンネル内壁から浮き離れた状態の壁面を構成するトンネル用の漏水防止板を設置している。従来のトンネル漏水防止板は、特開平11−182196号公報および特公平4−60199号公報に公知である。特開平11−182196号公報に記載の漏水防止板は、トンネル内壁に防水シートを介して張設された発泡ポリエチレン等から成る断熱板と、断熱板との間に単層の断熱層を形成して張設された表層板を備えたものである。特公平4−60199号公報では、アルミ等の金属板に断熱材をはさむようにして形成されたパネルとしている。
【0003】
【特許文献1】 特開平11−182196号公報
【特許文献2】 特公平4−60199号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のトンネル漏水防止板は、発泡ポリエチレン等の断熱材および単層の空気層により断熱効果を確保し漏水の凍結を防止しているため、断面寸法が大きく設置後はトンネル内の車両通行可能な部分が小さくなり、大型車両が通行した時に接触し、破断し剥落しやすいという課題がある。また、トンネル内空断面の小さなトンネルの漏水発生箇所には設置できないという課題がある。
【0005】
したがって、本発明は、トンネル内への漏水の滴下や漏水の凍結が防止でき、断面寸法が小さく、大型車両の通行時に接触し難く、大型車両が通行時に接触した場合においても破断し剥落し難く、トンネル内空断面の小さなトンネルにも設置可能なトンネル漏水防止板を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本請求事項1に記載のトンネル漏水防止板は、トンネル内壁にアンカーボルト等の適宜固定手段により固定された固定金具に、複層構造をなした樹脂製パネルを固定し、トンネル内壁から浮き離れた状態の壁面を構成するトンネル用の漏水防止板であって、複層構造をなした樹脂製パネルは、間隔を持った複数の樹脂板と適宜角度で固定された複数の樹脂製の隔壁により、樹脂製パネルの断面が複数の空間に分割されており、樹脂製パネルの端部がアルミテープ等の適宜手段により閉塞され、樹脂製パネルの断面内の分割された空間が密閉されており、固定金具は、トンネル内壁固定部と樹脂製パネル固定部を、適宜角度で車両進行方向に屈曲した形状で連結した金具であることを特徴とするトンネル用の漏水防止板である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、樹脂製パネルの断面内の分割され密閉された複数の空間により断熱効果を得ているため断面寸法が小さいことから、大型車両の通行時に接触し難く、従来の漏水防止板が設置できなかったトンネル内空断面の小さなトンネルでも設置が可能になる。
【0008】
さらに、大型車両が接触した場合にも、固定金具の車両進行方向に屈曲した形状の部材と樹脂製パネルの断面内の分割され密閉された空間が、衝撃を緩和することから破断し剥落し難いトンネル漏水防止板が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態に係るトンネル漏水防止板について詳細に説明する。図1は本発明の好ましい実施の形態に係るトンネル漏水防止板がトンネル内壁に取り付けられている状態を示した斜視図である。図2はトンネル漏水防止板がトンネル内壁に固定されている部分の断面図である。
【0010】
複層構造の樹脂製パネル12は、間隔を持った複数の樹脂板14と、これに適宜角度で固定された複数の樹脂製の隔壁16によって複数の空間に分割されている。
【0011】
複層構造の樹脂製パネル12の端部は、密閉手段28により閉塞されている。したがって、前記の樹脂製パネル12の断面の複数に分割された空間は密閉されるており、密閉された空間により断熱効果を得ていることから、従来のトンネル漏水防止板に使用されている断熱材または発泡ポリエチレンより小さい断面寸法で同等の断熱効果が得られる。
【0012】
密閉手段28は、アクリル製等のテープで複層構造の樹脂パネル12の端部をシールし閉塞し、漏水防止板の縁部では断面形状がコの字型の樹脂製の部材を、上下または左右の隣接した樹脂製パネル12の接続部では、断面形状がHの字型の樹脂製の接続材や充填材26を用いて保護し、テープの破損を防いでいる。
【0013】
複層構造の樹脂製パネル12は、トンネル内壁の形状に合わせて曲げられた固定板24にボルト22で固定される。さらに、トンネル内壁に固定手段20により固定された固定金具18と、前記の密閉された複層構造の樹脂製パネル12を固定した固定板24を、ボルト22で接続することにより、複層構造の樹脂製パネル12が、トンネル内壁の所定の位置にトンネル内壁から浮き離れた状態で固定される。
【0014】
固定金具18は、トンネル内壁固定部と樹脂製パネル固定部を、適宜角度で車両進行方向に屈曲した形状の部材で連結した金具であり、複層構造の樹脂製パネル12に、大型車両が通行時に接触した場合には、屈曲した形状の部材が変形する事により衝撃を緩和できるため剥落し難い。
【0015】
大型車両が通行時に接触した場合には、樹脂製パネル12の断面の複数に分割、密閉された空間により、衝撃を緩和できるため破断し剥落し難い。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】 本発明の好ましい実施の形態に係るトンネル漏水防止板がトンネル内に取り付けられている状態を示した斜視図である。
【図2】 トンネル漏水防止板固定部の断面図である。
【符号の説明】
【0017】
10 トンネル漏水防止板
12 樹脂製パネル
14 樹脂板
16 隔壁
18 固定金具
20 固定手段
22 ボルト
24 固定板
26 充填材
28 密閉手段
30 トンネル内壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル内壁にアンカーボルト等の適宜固定手段により固定された固定金具に、複層構造をなした樹脂製パネルを固定し、トンネル内壁から浮き離れた状態の壁面を構成するトンネル用の漏水防止板であって、
複層構造をなした樹脂製パネルは、間隔を持った複数の樹脂板と、これに適宜角度で固定された複数の樹脂製の隔壁により、樹脂製パネルの断面内が複数の空間に分割されており、
樹脂製パネルの端部がアクリル製等のテープにより閉塞され、樹脂製パネルの断面内の分割された空間が密閉されており、
該固定金具が、トンネル内壁固定部と樹脂製パネル固定部を適宜角度でトンネル内の車両進行方向に屈曲した形状の部材で連結された金具であることを特徴とするトンネル用の漏水防止板

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−132179(P2007−132179A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−355399(P2005−355399)
【出願日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(591055964)株式会社ケイジーエンジニアリング (2)
【Fターム(参考)】