トンネル耐火内装構造およびその施工方法
【課題】例えば道路トンネルや鉄道トンネルその他各種トンネルの耐火内装工事を容易・安価に施工できるようにする。
【解決手段】本発明によるトンネル耐火内装構造は、トンネル供用空間T1の内面の下部を視線誘導領域R1、それよりも上方を上部領域R2とし、上記視線誘導領域と上部領域との間に仕切部材4をトンネル軸方向に連続的に設け、その仕切部材よりも上方の上部領域に現場施工の耐火材層3を形成すると共に、上記視線誘導領域に、表面に内装機能を有する耐火材からなる耐火内装板2を敷設したことを特徴とする。また本発明によるトンネル耐火内装構造の施工方法は、上記のようなトンネル耐火内装構造を施工するに当たり、前記仕切部材4を、少なくとも現場施工の耐火材層3を施工する前に設けることを特徴とする。
【解決手段】本発明によるトンネル耐火内装構造は、トンネル供用空間T1の内面の下部を視線誘導領域R1、それよりも上方を上部領域R2とし、上記視線誘導領域と上部領域との間に仕切部材4をトンネル軸方向に連続的に設け、その仕切部材よりも上方の上部領域に現場施工の耐火材層3を形成すると共に、上記視線誘導領域に、表面に内装機能を有する耐火材からなる耐火内装板2を敷設したことを特徴とする。また本発明によるトンネル耐火内装構造の施工方法は、上記のようなトンネル耐火内装構造を施工するに当たり、前記仕切部材4を、少なくとも現場施工の耐火材層3を施工する前に設けることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば道路トンネルや鉄道トンネルその他各種トンネルの耐火内装構造およびその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネル内面に敷設した覆工コンクリートやセグメント等のトンネル覆工内面に耐火材を設けてコンクリート躯体を万一の火災から防護する工法が種々提案されている。この種の工法において、覆工の変位・変状に対しても耐火材が破壊することなく確実に耐火性能を発現できる手法として、覆工に対して所定の間隔をあけて耐火材を浮かし張りする方法がある。
【0003】
ところで、例えば道路トンネルにおいては、トンネル内を常時明るく保ち、そのトンネルを通る車の運転者の視界を確保したり視線誘導する目的で、覆工内面における側壁部分に内装材を敷設するのが常である。このような内装材を前記のような耐火材の内面側に設ける手段として下記特許文献1のような手法が提案されている。
【0004】
例えば上記特許文献1の図5には、内装仕上げ材の裏面側に仕切板を介して耐火材層を一体的に形成し、その内装仕上げ材および耐火材層を挿通したボルトを覆工(構造材)に埋設したアンカーに螺合して締め付け固定する構成が開示されているが、覆工の不陸やカーブに対応させて取付けることが極めて難しく、しかも、覆工の変位に対して内装仕上げ材と耐火材層の一体形成品が追従せずに破損してしまうおそれがある。
【0005】
また上記特許文献1の図6には、内装仕上げ材と耐火材層を別体に形成し、それらをボルトとダブルナットとで所定の間隔をおいて取付ける構成が開示されているが、内装仕上げ材の表面(内面)側から挿通したボルトは覆工に埋設したアンカーに螺合され、上記内装仕上げ材および耐火材層は覆工に対して実質的に遊びがないために、上記図5の場合と同様に覆工の変位による破損が懸念される。しかも、ダブルナットで耐火材層および内装仕上げ材の位置決めを行うので、その調整作業は極めて煩雑かつ面倒である。
【0006】
また、覆工に対して耐火材層を浮かし、更に、その耐火材層に対して内装仕上げ材を浮かして設置するため、それらがトンネル内方に大きく張り出してトンネル内空断面が小さくなってしまう不具合がある。さらに、耐火材層と内装仕上げ材のそれぞれを浮かして取付けることによって、覆工にかかる荷重が大きくなり、アンカーのピッチを小さくして打設本数を増やしたり、太いボルトを用いなければならず、美観が損なわれたり、セグメントや覆工コンクリートに対する負担が大きくなる等の問題もある。
【0007】
一方、特許文献2は、内装板を覆工に対して所定の間隔をあけて浮かし張りしておき、その覆工表面と内装板との間の空間に注入用耐火被覆セメントモルタルをポンプで圧送注入する手法について提案されたものである。この種の耐火セメントモルタルは、通常、ポンプの目詰まり、材料分離を生じていたものを、特許文献2ではその配合を特定することによって、適正に内装板背面の覆工コンクリートを耐火被覆することを可能とした。
【0008】
しかし、この手法では、圧送注入に適した極めて特定の配合の耐火材しか用いることができず、また、同一箇所に対して内装板の設置作業と耐火材の注入作業を別工程で実施する必要があり、作業に要する工期が長くなる。また、内装板にモルタル供給口を貫通形成して、トンネル内壁との間の狭い施工対象空間にモルタルを加圧注入するため、目地(内装板と内装板の継目)や端部のシール箇所からモルタルが漏れることなく、且つ、施工対象空間に隙間なく充填されるように施工並びに注入管理するのは極めて困難である。
【0009】
さらに、内装板を施工対象空間の加圧注入に耐え得るように強固に覆工に固定しておかなければならず、アンカー強度にばらつきがあると、強度が弱い部分の内装板がトンネル内空に向けて押し出してきてしまう。また、耐火セメントモルタルの注入によって、内装板と耐火材と覆工コンクリートが一体となってしまうため、万が一地震や事故で内装板が部分的に壊れた場合に、その修復には内装板の取替え設置作業と耐火セメントモルタルの注入作業を広範囲にわたって施さなければならない。
【0010】
【特許文献1】特開平11−294098号公報
【特許文献2】特開2004−224622号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記の問題点に鑑みて提案されたもので、耐火工事と内装材設置工事を効率よく且つ容易・安価に施工することのできるトンネル耐火内装構造およびその施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために本発明によるトンネル耐火内装構造およびその施工方法は以下の構成としたものである。即ち、本発明によるトンネル耐火内装構造は、トンネル供用空間内面の下部を視線誘導領域、それよりも上方を上部領域とし、上記視線誘導領域と上部領域との間に仕切部材をトンネル軸方向に連続的に設け、その仕切部材よりも上方の上部領域に現場施工の耐火材層を形成すると共に、上記視線誘導領域に、表面に内装機能を有する耐火材からなる耐火内装板を敷設したことを特徴とする。
【0013】
また本発明によるトンネル耐火内装構造の施工方法は、トンネル供用空間内面の下部を視線誘導領域、それよりも上方を上部領域とし、上記視線誘導領域と上部領域との間に仕切部材をトンネル軸方向に連続的に設ける工程と、その仕切部材よりも上方の上部領域に現場施工の耐火材層を形成する工程と、上記視線誘導領域に、表面に内装機能を有する耐火材からなる耐火内装板を敷設する工程とを有し、上記仕切部材を設ける工程を、少なくとも上記現場施工の耐火材層を形成する工程よりも前に行うことによって上記現場施工の耐火材層を形成する際に上記仕切部材をガイドにしてそれよりも下方に耐火材が流下しないようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
一般に、工場生産された耐火板をトンネル覆工内面の全周に敷設する工法では、トンネルの起伏やカーブによって随時変化するトンネル断面形状に合わせて、耐火板の割付を行わなければならず、また通常は、トンネル覆工内面の左右両側下部からそれぞれ上方に向けて積み上げていく形で敷設し、天端部で調整用の耐火板を設置して、全周被覆を完了させる作業が必要となる。しかし、本発明によれば、耐火内装板の設置は視線誘導に必要なトンネルの下部に限定し、上部の耐火材層は現場施工なので、上記のような天端部における苦渋な調整作業が不要となる。
【0015】
また従来、現場施工の耐火材層を吹付け又は塗布等の手段でトンネル覆工内面全面に形成する工法では、耐火工事と別途に内装板の取付工事を行う必要があったが、本発明によれば耐火内装板を用いることで、従来の耐火板の設置と内装板の設置作業を1回の工事で効率的に行うことができる。即ち、従来トンネル覆工内面の全面を耐火被覆しようとしたときには、耐火板を敷設するか、耐火材層を現場施工するかのいずれかの工法の選択がなされ、それに対して内装板設置工事は別途行われていたが、本発明においては内装の必要な視線誘導領域では耐火内装板を敷設することで、耐火材の設置と内装板の設置作業に相当する作業を1回の敷設作業で行い、それ以外の上部領域では耐火材層を現場施工することで、能率的で実用的な耐火内装工事を容易・迅速に行うことができる。
【0016】
しかも、本発明では、現場施工の耐火材層を形成する前に、視線誘導領域と上部領域との境目に仕切部材を設けることによって、吹付け或いは塗布などの現場施工の耐火材層を形成する際に耐火材が視線誘導領域にだれ落ちて耐火内装板を保持する保持金具等の取付けの障害となることがなく、また耐火内装板を先に敷設した場合には、それらの耐火内装板に現場施工の耐火材が付着して内装板表面を汚す等のおそれがなく、上記いずれの場合においても、効率的な作業が可能となる。また本発明では、耐火内装板の設置に際し、トンネル断面の左側側壁と右側側壁のそれぞれにおいて、作業を同時進行させることができ、短期間の工程で上記の作業を行うことができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を図に示す実施形態に基づいて具体的に説明する。図1は本発明による耐火内装構造の一実施形態を示すトンネルの横断面図、図2(a)はその一部の拡大図、同図(b)はその内面図、同図(c)は(b)におけるc−c断面図、図3(a)および(b)は図2(a)および(b)の一部の拡大図、図4(a)および(b)は図3(a)および(b)の更に一部の拡大図、図4(c)は(b)の横断平面図である。
【0018】
本実施形態はトンネル覆工としてコンクリート製のセグメント(RCセグメント)1を用いたシールドトンネルTに適用したものである。上記セグメント1は、図1および図2に示すように円弧状に形成され、掘削したトンネル内面の周方向に順次連続的に配置すると共に、トンネル軸線方向に順次継ぎ足しながらトンネル内面全面に配設され、その隣り合うセグメント1・1は図に省略した連結ボルト等で連結固定されている。
【0019】
上記のようなセグメント1を敷設したトンネルT内の底部には、通常図1に示すようなインバートコンクリート(床版)1aが打設され、それよりも上方のトンネル空間内をトンネル供用空間T1として使用する。そして、そのトンネル供用空間T1の内面の下部に位置する上記インバートコンクリート1aの上面から所定高さ範囲、通常は約2500〜3500mm程度の範囲内を視線誘導領域R1として、その視線誘導領域R1と、それよりも上方の上部領域R2との間に仕切部材4をトンネル軸方向に連続的に設け、その仕切部材4よりも上方の上部領域R2に現場施工の耐火材層3を形成すると共に、上記視線誘導領域R1に、表面に内装機能を有する耐火材からなる耐火内装板2を敷設したものである。
【0020】
その現場施工の耐火材層3の材質や施工方法等は適宜であるが、本実施形態においてはスラリー状の耐火性材料に急結材等を適宜添加してなる流動性を有する耐火材を、トンネル供用空間T1の内面であるセグメント1の内面に、約30〜40mm程度の厚さに吹き付け若しくは塗布する等の手段で形成して固化させたものである。なお、上記耐火材層3の厚さは適宜であり、また上記耐火材層3を形成する際にセグメント1の内面に予め金網等の補強用心材(不図示))を敷設してから上記の吹付け作業を行うと、内部に補強用心材が埋設された強度の高い耐火材層が得られると共に、その耐火材層の剥落等を防止することができる。
【0021】
また上記のように上部領域R2に現場施工の耐火材層3を施工する際には、上記仕切部材4をガイドにして施工すればよく、それによって、耐火材が視線誘導領域R1側に流下したり、その視線誘導領域R1内に耐火内装板2を先に敷設した場合には、その耐火内装板2を汚損もしくは損傷するのを防ぐことができる。その仕切部材4の構成は適宜であるが、本実施形態の仕切部材4は、前記図1(a)の一部を拡大した図5に示すように、耐火材からなる裏打ち材40と、これをセグメント1等の構造体に埋設したインサートナット1nやアンカーにボルト41・ナット42等で止め付ける受けプレート43と、耐火内装板2の最上端を支持する見切りプレート44およびその固定用ナット45等よりなる。
【0022】
上記視線誘導領域R1に敷設される耐火内装板2は、表面に内装機能を有する耐火材であれば、材質や形成方法等は適宜であるが、本実施形態においては図6に示すように珪酸カルシウムやセラミック等の板状の耐火材20の表面に、アルミメッキほうろう鋼板よりなる装飾層21を接着材等で一体的に貼着したものである。特に図の場合は上記装飾層21として、鉄またはステンレス等の鋼板21aと、アルミニウムめっき層21bと、ほうろう層21cとの3層構成のものが用いられている。
【0023】
上記耐火内装板2の大きさ形状等も適宜であるが、本実施形態においては、図2、図3に示すように横長の長方形状に形成され、そのトンネル軸方向(図2(c)において左右方向)の長さはセグメント1の幅方向長さと略同等で、トンネル周方向の長さは上記セグメント1に予め埋設したインサートナット1nの周方向の配列ピッチ(間隔)と略同等に形成されている。
【0024】
さらに耐火内装板2は、本実施形態においては図4に示すようにセグメント1の内面に、間隔保持金具5を介して所定の間隔をおいて浮かし張り施工するようにしたもので、その間隔保持金具5の基部5aには、上記セグメント1に対する取付孔50が設けられている。その取付孔50は、本実施形態においては図6に示すように上下方向に長い長孔状に形成され、その取付孔50にボルト6を挿通し、そのボルト6を図4に示すように前記セグメント1に埋設したインサートナット1nにねじ込むことによって上記間隔保持金具5をセグメント1の内面に取付ける構成である。
【0025】
また上記間隔保持金具5は、図6に示すように上記取付孔50を有する基部5aと、その基板5aの上下両側縁にそれと一体に且つ直角方向に屈曲させて設けた対向片5b・5cとで断面略コ字形に形成すると共に、その両対向片5b・5cの基部5aと反対側の端部に、それぞれ上方に突出する差込片5dと、下方に突出する差込片5eとを設けた構成である。その上側の差込片5dは、本実施形態においては、上側の対向片5bの長手方向全長にわたって設けられている。また上記下側の差込片5eは、下側の対向片5cの長手方向両側に所定の間隔をおいて設けられ、その両差込片5e・5e間に押え片5fが、それらの厚さ方向に互いにずらして設けられている。
【0026】
一方、前記耐火内装板2の背面側(セグメント側)の上下両辺部には、上記差込片5d・5eをそれぞれ係合させる係止金具7が設けられ、その係止金具7は、本実施形態においては前記セグメント1に埋設したインサートナット1nに対応して各耐火内装板3の背面側の上下両辺部にそれぞれ3つずつ設けられている。その各係止金具7は、本実施形態においては、図6に示すように長手方向両端部が厚さ方向に段差状に屈曲した全体略帯板状に形成され、その両端部に設けた取付孔(不図示)に図4に示すように固定用ボルト8を挿通し、そのボルト8を耐火内装板2内に予め埋設したインサートナット2nにねじ込むことによって耐火内装板2の背面に取付けた構成である。
【0027】
上記各係止金具7の長手方向中間部と耐火内装板2との間には、図6に示すようにスリット状の隙間Sが形成され、その隙間S内に前記間隔保持金具5の差込片5d・5eを差し込むことによって図4のように間隔保持金具5に係止金具7を係合保持させる構成である。また下側の差込片5e・5eは、その間に設けた前記押え片5fとで係止金具7を、その厚さ方向両側から挟むように構成されている。
【0028】
さらに前記の間隔保持金具5は、図4(a)に示すように、その取付基部5aと対向片5b・5cとで形成される断面略コ字形の凹部51が、上下方向(トンネル周方向)に隣接する耐火内装板2の継ぎ目位置(継手位置もしくは突き合わせ位置)に配置されるように構成すると共に、上記凹部51内に帯状の火炎巻込防止材9を設けることによって上記耐火内装板2・2間の隙間を塞ぐようにしたものである。
【0029】
その火炎巻込防止材9としては、耐火性のよいものであれば材質等は適宜であるが、例えばロックウールやセラミックブランケットあるいは両者を積層したもの等を用いることができる。また火炎巻込防止材9の耐火内装板2または間隔保持金具5もしくは両者に対する固定方法としては接着その他適宜であるが、弾力性のあるものを用いれば、上記凹部51内にやや圧縮状態で挿入するだけで、耐火内装板2に密着固定させることもできる。なお、図示例においては、トンネル軸線方向に隣り合う耐火内装板2・2の継手位置におけるそれらの耐火内装板2・2とセグメント1との間にも上記と同様の火炎巻込防止材9が設けられている。
【0030】
上記のように構成された耐火内装構造を施工するに当たっては、予め工場等でインサートナット1nを埋設したセグメント1をトンネルTの内面に順次敷設してトンネル覆工を施した後、前記のインバートコンクリート1aを打設する。そして、そのインバートコンクリート1aよりも上方のトンネル供用空間T1の内面に、本発明による耐火内装構造を施工するもので、その工程としては、上記視線誘導領域R1と上部領域R2との間に仕切部材4を設ける工程と、上記上部領域R2に現場施工の耐火材層3を形成する工程と、上記視線誘導領域R1に耐火内装板2を敷設する工程とよりなる。
【0031】
この場合、上記仕切部材4を設ける工程は少なくとも現場施工の耐火材層3を形成する工程よりも前に行うのがよい。具体的には、例えば上記視線誘導領域R1と上部領域R2との境目に仕切部材4を設けてから上部領域R2に現場施工の耐火材層3を形成した後、前記視線誘導領域R1に耐火内装板を敷設する。或いは、前記視線誘導領域R1に耐火内装板を敷設する前または後に仕切部材4を設け、最後に上部領域R2に現場施工の耐火材層3を形成すればよい。
【0032】
図7および図8はそれぞれ施工手順の一例を示すもので、図7は先ず同図(a)のように視線誘導領域R1と上部領域R2との境目に仕切部材4を施工してから同図(b)のように上部領域R2に現場施工の耐火材層3を形成した後、最後に同図(c)のように視線誘導領域R1に耐火内装板2を敷設するようにした例、図8は同図(a)のように視線誘導領域R1に耐火内装板2を敷設した後に、その上部に同図(b)のように仕切部材4を施工し、最後に同図(c)のように上部領域R2に現場施工の耐火材層3を形成するようにした例である。
【0033】
上記のような現場施工の耐火材層3は、通常前述のように流動性を有する耐火材をトンネル覆工内面に所定の厚さに吹き付け若しくは塗布する等の手段で形成し、それらを固化させて耐火材層3を形成するもので、その際、上記の耐火材層3を形成する前に仕切部材4を設けておくと、上記のような流動性を有する耐火材が視線誘導領域R1に流下して耐火内装板2を保持する間隔保持金具5等の取付けの障害となったり、上記視線誘導領域R1に既に耐火内装板2が敷設されている場合には、それらの耐火内装板2が汚損したり損傷するのを未然に防止することができる。
【0034】
また上記仕切部材4の構成は適宜であるが、例えば前記実施形態のように裏打ち材40と、これをボルト41・ナット42により構造体のインサート又はアンカーに止め付ける受けプレート43と、耐火内装板2の最上端を支持する見切りプレート44およびその固定用ナット45等よりなるものにあっては、上記図7のように耐火内装板2を敷設する前に仕切部材4を施工する場合には、予め上記裏打ち材40をボルト41・ナット42および受けプレート43とで固定し、現場施工の耐火材層3および耐火内装板2を施工してから上記見切りプレート44をその固定用ナット45でボルト41に固定すればよい。その場合、現場施工の耐火材層3と耐火内装板2は各々別々に施工するか、或いは同時に施工することもできる。
【0035】
さらに上記図8のように耐火内装板2と仕切部材4を施工してから現場施工の耐火材層3を設ける場合には、例えば上記耐火内装板2の上端部に裏打ち材40をボルト41・ナット42および受けプレート43とで固定すると共に、見切りプレート44を固定用ナット45で上記ボルト41に固定した状態で、上記裏打ち材40および受けプレート43の上方に現場施工の耐火材層3を形成すればよい。
【0036】
また上記耐火内装板2の施工手順は適宜であるが、例えば耐火内装板2の背面側の上下両辺部に予め係止金具7を取付けておき、インバートコンクリート1aよりも上側のセグメント内面側に、間隔保持金具5および耐火内装板2を下から上に向かって順に取付けて行けばよい。その際、上記各耐火内装板2は下側の係止金具7を下側の間隔保持金具5を介してセグメント1に固定してから上側の係止金具7を上側の間隔保持金具5を介してセグメント1に固定して行くとよく、又その際、間隔保持金具5は予めセグメント1に組み付けてからその間隔保持金具5の差込片5d・5eに係止金具7を係合させるか、或いは間隔保持金具5の差込片5d・5eを係止金具7に係合させてから該間隔保持金具5をセグメント1に固定するようにしてもよい。
【0037】
図9はその一例を示すもので、先ず同図(a)に示すように耐火内装板2の図に省略した下側の係止金具を下側の間隔保持金具5に係合保持させた状態で、上側の係止金具7に上側の間隔保持金具5の下向きの差込片5eを図中矢印のように係合させ、その間隔保持金具5を同図(b)のようにセグメント1に埋設したインサートナット1nにボルト6等で取付ける。次いで、上記間隔保持金具5の凹部51内に火炎巻込防止材9を組み付けた後、上記間隔保持金具5の上向きの差込片5dに上側の耐火内装板2の下辺側に設けた係止金具7を係合させる。このようにして下から順に耐火内装板2を取付けて行けばよい。
【0038】
なお上記の火炎巻込防止材9として柔軟な材質のものを用いる場合には、1つの間隔保持金具5に対して上下いずれか一方の耐火内装板2が取付けられていない状態であれば、先に取付けた耐火内装板2が図9(c)のように前記凹部51のセグメント1と反対側の開口部の一部を塞ぐように凹部内に突出した状態においても容易に装着することができる。また図のように凹部51内にボルト6等があっても柔軟な火炎巻込防止材にあっては圧縮状態で装着すれば何ら支障はない。
【0039】
一方、火炎巻込防止材9として硬質のものを用いる場合であって間隔保持金具5にいずれか一方の耐火内装板2を取付けた後には装着できない場合には、その耐火内装板2を取付ける前に火炎巻込防止材9を装着すればよく、また火炎巻込防止材9を装着する際にボルト6等と干渉したり、ボルト6のねじ込むことができなくなるおそれがあるときは、火炎巻込防止材9の一部を切除したり、分離して装着すればよい。なお、トンネル軸方向に隣り合う耐火内装板2・2間にも、図2〜図4に示すように火炎巻込防止材9を設けるとよく、その火炎巻込防止材9の固定手段等は適宜であるが、例えばセグメント1の内面または耐火材の外面もしくはそれら両面に接着材等で固定すればよい。
【0040】
上記のようにしてトンネル供用空間T1の下部両側の視線誘導領域R1と、それよりも上方の上部領域との間に仕切部材4をトンネル軸線方向に設け、その仕切部材4よりも上方の上部領域R2に現場施工の耐火材層3を形成すると共に、上記視線誘導領域R1に耐火内装板2を敷設することで、図10に示すようなトンネル供用空間T1の内面に耐火内装構造を備えたシールドトンネルTが得られるものである。
【0041】
なお、上記実施形態はトンネル覆工としてコンクリート製のセグメント1を用いたが、スチールセグメントを用いたシールドトンネル等にも適用できる。図11はその一例を示すもので、前記実施形態と同様にインバートコンクリート1aよりも上方のトンネル供用空間T1の内面下部の所定高さ範囲を視線誘導領域R1、それよりも上方を上部領域R2とし、その視線誘導領域R1と上部領域R2との間に仕切部材4をトンネル軸方向に連続的に設け、その仕切部材4よりも上方の上部領域R2に現場施工の耐火材層3を形成すると共に、上記視線誘導領域R1に、表面に内装機能を有する耐火材からなる耐火内装板2を敷設したものである。
【0042】
上記トンネル供用空間T1の内面のトンネル覆工を構成する上記スチールセグメント10は、図12に示すようにトンネル周方向に延びる桁材11と、周方向に隣接するセグメント同士の接続面となる継手板12と、シールド機が推進反力をとるためにトンネル軸方向の押圧力が発生したときにそれに抗するための補強リブ13と、その補強リブ13の外側に放射方向に設けた支持板14等よりなる。
【0043】
上記補強リブ13は、図の場合は短冊状の板材をトンネル軸線方向、つまり横方向に配置した構成であり、トンネル周方向に所定の間隔をおいて多数設けられている。そのためトンネル周方向に隣り合う補強リブ13・13間には隙間があり、上記の現場施工の耐火材層3を形成する際に耐火材がセグメント10内に流入するおそれがあるが、セグメント10の内面にセメント板等を設置してセグメント10内への耐火材の流入を防止するか、場合によってはセグメント10内に耐火材を流入させて充填するようにしてもよい。
【0044】
また上記スチールセグメント10には、前記のコンクリート製のセグメントのようにインサートナット等を埋設できないため、前記実施形態における仕切部材4をセグメントに取付けるためのボルト41、および前記間隔保持金具5を、本実施形態においてはアジャスト金具60を介して上記補強リブ13に取付けるようにしたもので、図13は仕切部材4の取付部の拡大図、図14は間隔保持金具5の取付部の拡大図である。
【0045】
上記アジャスト金具2は、本実施形態においては図15に示すように、板材を曲げ加工して形成した断面略C字形の金具(以下、C字形金具という)61と、断面略L字形の金具(以下、L字形金具という)62とよりなり、上記C字形金具21の下部には、図15に示すように幅方向(図15で前後方向)の中央部と両端部とで折り返し位置の異なる折り返し片61a、61bが設けられ、その両折り返し片61a・61b間に補強リブ13の一方の縁部を係合して保持させる構成である。
【0046】
また上記C字形金具61の上部には、前記L字形金具62をボルト63・ナット64で取付け、そのL字形金具62の縦片62aと、C字形金具61の上部折り返し片61cとの間に補強リブ13の他方の縁部を係合して保持させる構成である。上記ナット64は予めC字形金具22の内面に溶接等で固着しておくと、取付け作業が容易となると共に、ナットの紛失を防止することができる。また上記ナット64の代わりにC字形金具62にボルト63をねじ込むための雌ねじ孔を形成してもよい。
【0047】
上記のようにして補強リブ13に取付けたアジャスト金具2に、前記図13の間隔保持金具5にあっては前記取付孔50およびアジャスト金具2に形成したボルト挿通孔(不図示)にボルト65を挿通してナット66で取付け、前記図14の支持金具4にあっては前記のボルト41をアジャスト金具2に形成したボルト挿通孔(不図示)に挿通してナット66で取付けるもので、上記のナット66も前記ナット62と同様に予めC字形金具22の内面に溶接等で固着する、あるいは上記ナット66の代わりにC字形金具22に上記のボルト65または41をねじ込むための雌ねじ孔を形成してもよい。
【0048】
他の構成は前記図1〜図10の実施形態と同様であり、同様の作用効果が得られる。特に現場施工の耐火材層3を形成する前に仕切部材4を設けておくと、流動性を有する耐火材が視線誘導領域R1に流下したり、その視線誘導領域R1に既に耐火内装板2が敷設されている場合には、それらの耐火内装板2が汚損したり損傷するのを未然に防止することができる。また仕切部材4を先に設ければ、現場施工の耐火材層3と耐火内装板2を同時に施工することもできる。
【0049】
さらに本発明は図16に示すような鋼殻沈埋トンネルT等にも適用できる。図17は上記沈埋トンネルTのトンネル供用空間T1内に前記図1〜図10の実施形態とほぼ同様の要領で現場施工の耐火材層3と耐火内装板2および仕切部材4とを設けたもので、前記実施形態と同様の作用効果が得られる。特に上記のような鋼殻沈埋トンネルTに耐火板を設置する場合には、トンネル供用空間T1内における天井と側壁とが交わる上部角部での耐火板の位置合わせや取付けが難しいが、本発明では耐火内装板の取付けをトンネル供用空間T1の下部内面に位置する視線誘導領域R1のみに限定して、それより上側の上部領域R2は現場施工の耐火材層を形成するようにしたので、容易・迅速に施工できる等の利点がある。
【0050】
以上のように本発明においては、トンネル供用空間T1の内面下部の視線誘導領域R1と、それよりも上方の上部領域R2との間に仕切部材4を設け、その仕切部材4の上方の上部領域R2に現場施工の耐火材層3を形成すると共に、上記視線誘導領域R1に耐火内装板2を敷設するようにしたから、視線誘導領域R1の耐火内装板2と、上部領域R2の現場施工耐火材層3とを、上記仕切部材4で確実に仕切った状態で、それぞれ別々に良好に区分して設けることができる。
【0051】
また視線誘導領域R1に耐火内装板2を用いることで、前記従来のように耐火材と内装板とを各々別々に施工することなく、1回の施工作業で内装機能を有する耐火材を簡単・確実に設けることができる。また現場施工の耐火材層3を形成する前に仕切部材4を設けることで、上記耐火材層3を形成する際に耐火材が視線誘導領域R1に流下したり、その視線誘導領域R1に既に耐火内装板2が敷設されている場合に、それらの耐火内装板2が汚損したり損傷するのを未然に防止することができる。
【0052】
さらに上記視線誘導領域R1と上部領域R2との間に仕切部材4を設けることで、視線誘導領域R1への耐火内装板2の敷設作業と、上部領域R2への耐火材層3の現場施工作業とを、それぞれ独立して実施することが可能となり、場合によっては上記の作業を同時に行うこともできるものである。
【産業上の利用可能性】
【0053】
上記のように構成された本発明によるトンネル耐火内装構造およびその施工方法によれば、前記のようなRCセグメントやスチールセグメントを用いたシールドトンネルに限らず、鋳鉄とコンクリートの複合体であるダクタイルセグメントを用いたシールドトンネルにも適用可能であり、また前記の鋼殻沈埋トンネルを含めてプレキャスト製のトンネルに限らず、掘削したトンネル内に覆工コンクリートを直接現場施工で打設したトンネルにも適用可能であり、それらのトンネルにおいても前記と同様の作用効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明によるトンネル耐火内装構造の一実施形態を示すトンネルの横断面図。
【図2】(a)は図1の一部の拡大図、(b)はその内面図、同図(c)は(b)におけるc−c断面図。
【図3】(a)および(b)は図2(a)および(b)の一部の拡大図。
【図4】(a)および(b)は図3(a)および(b)の更に一部の拡大図、(c)は(b)の横断平面図。
【図5】図1における仕切部材取付部の拡大図。
【図6】耐火内装板の取付構造を示す分解斜視図。
【図7】(a)〜(c)は上記耐火内装構造の施工プロセスの一例を示す説明図。
【図8】(a)〜(c)は上記耐火内装構造の施工プロセスの他の例を示す説明図。
【図9】耐火内装板の取付手順の一例を示す説明図。
【図10】本発明によるトンネル耐火内装構造を施工したトンネルの斜視図。
【図11】スチールセグメントを用いたトンネルに本発明を適用した例の横断面図。
【図12】スチールセグメントの斜視図。
【図13】図11における仕切部材取付部の拡大図。
【図14】図11における耐火内装板取付部の拡大図。
【図15】(a)は耐火内装板取付部の分解斜視図、(b)はアジャスト金具の組付け状態を示す斜視図。
【図16】鋼殻沈埋トンネルの一例を示す横断面図。
【図17】上記鋼殻沈埋トンネルに本発明を適用した例の一部の拡大横断面図。
【符号の説明】
【0055】
1 セグメント
1a インバートコンクリート
2 耐火内装板
1n、2n インサートナット
3 耐火材層
4 仕切部材
5 間隔保持金具
5a 取付基部
5b、5c 対向片
5d、5e 差込片
5f 押え片
6 取付ボルト
7 係止金具
8 固定用ボルト
9 火炎巻込防止材
T トンネル
S 隙間
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば道路トンネルや鉄道トンネルその他各種トンネルの耐火内装構造およびその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネル内面に敷設した覆工コンクリートやセグメント等のトンネル覆工内面に耐火材を設けてコンクリート躯体を万一の火災から防護する工法が種々提案されている。この種の工法において、覆工の変位・変状に対しても耐火材が破壊することなく確実に耐火性能を発現できる手法として、覆工に対して所定の間隔をあけて耐火材を浮かし張りする方法がある。
【0003】
ところで、例えば道路トンネルにおいては、トンネル内を常時明るく保ち、そのトンネルを通る車の運転者の視界を確保したり視線誘導する目的で、覆工内面における側壁部分に内装材を敷設するのが常である。このような内装材を前記のような耐火材の内面側に設ける手段として下記特許文献1のような手法が提案されている。
【0004】
例えば上記特許文献1の図5には、内装仕上げ材の裏面側に仕切板を介して耐火材層を一体的に形成し、その内装仕上げ材および耐火材層を挿通したボルトを覆工(構造材)に埋設したアンカーに螺合して締め付け固定する構成が開示されているが、覆工の不陸やカーブに対応させて取付けることが極めて難しく、しかも、覆工の変位に対して内装仕上げ材と耐火材層の一体形成品が追従せずに破損してしまうおそれがある。
【0005】
また上記特許文献1の図6には、内装仕上げ材と耐火材層を別体に形成し、それらをボルトとダブルナットとで所定の間隔をおいて取付ける構成が開示されているが、内装仕上げ材の表面(内面)側から挿通したボルトは覆工に埋設したアンカーに螺合され、上記内装仕上げ材および耐火材層は覆工に対して実質的に遊びがないために、上記図5の場合と同様に覆工の変位による破損が懸念される。しかも、ダブルナットで耐火材層および内装仕上げ材の位置決めを行うので、その調整作業は極めて煩雑かつ面倒である。
【0006】
また、覆工に対して耐火材層を浮かし、更に、その耐火材層に対して内装仕上げ材を浮かして設置するため、それらがトンネル内方に大きく張り出してトンネル内空断面が小さくなってしまう不具合がある。さらに、耐火材層と内装仕上げ材のそれぞれを浮かして取付けることによって、覆工にかかる荷重が大きくなり、アンカーのピッチを小さくして打設本数を増やしたり、太いボルトを用いなければならず、美観が損なわれたり、セグメントや覆工コンクリートに対する負担が大きくなる等の問題もある。
【0007】
一方、特許文献2は、内装板を覆工に対して所定の間隔をあけて浮かし張りしておき、その覆工表面と内装板との間の空間に注入用耐火被覆セメントモルタルをポンプで圧送注入する手法について提案されたものである。この種の耐火セメントモルタルは、通常、ポンプの目詰まり、材料分離を生じていたものを、特許文献2ではその配合を特定することによって、適正に内装板背面の覆工コンクリートを耐火被覆することを可能とした。
【0008】
しかし、この手法では、圧送注入に適した極めて特定の配合の耐火材しか用いることができず、また、同一箇所に対して内装板の設置作業と耐火材の注入作業を別工程で実施する必要があり、作業に要する工期が長くなる。また、内装板にモルタル供給口を貫通形成して、トンネル内壁との間の狭い施工対象空間にモルタルを加圧注入するため、目地(内装板と内装板の継目)や端部のシール箇所からモルタルが漏れることなく、且つ、施工対象空間に隙間なく充填されるように施工並びに注入管理するのは極めて困難である。
【0009】
さらに、内装板を施工対象空間の加圧注入に耐え得るように強固に覆工に固定しておかなければならず、アンカー強度にばらつきがあると、強度が弱い部分の内装板がトンネル内空に向けて押し出してきてしまう。また、耐火セメントモルタルの注入によって、内装板と耐火材と覆工コンクリートが一体となってしまうため、万が一地震や事故で内装板が部分的に壊れた場合に、その修復には内装板の取替え設置作業と耐火セメントモルタルの注入作業を広範囲にわたって施さなければならない。
【0010】
【特許文献1】特開平11−294098号公報
【特許文献2】特開2004−224622号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記の問題点に鑑みて提案されたもので、耐火工事と内装材設置工事を効率よく且つ容易・安価に施工することのできるトンネル耐火内装構造およびその施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために本発明によるトンネル耐火内装構造およびその施工方法は以下の構成としたものである。即ち、本発明によるトンネル耐火内装構造は、トンネル供用空間内面の下部を視線誘導領域、それよりも上方を上部領域とし、上記視線誘導領域と上部領域との間に仕切部材をトンネル軸方向に連続的に設け、その仕切部材よりも上方の上部領域に現場施工の耐火材層を形成すると共に、上記視線誘導領域に、表面に内装機能を有する耐火材からなる耐火内装板を敷設したことを特徴とする。
【0013】
また本発明によるトンネル耐火内装構造の施工方法は、トンネル供用空間内面の下部を視線誘導領域、それよりも上方を上部領域とし、上記視線誘導領域と上部領域との間に仕切部材をトンネル軸方向に連続的に設ける工程と、その仕切部材よりも上方の上部領域に現場施工の耐火材層を形成する工程と、上記視線誘導領域に、表面に内装機能を有する耐火材からなる耐火内装板を敷設する工程とを有し、上記仕切部材を設ける工程を、少なくとも上記現場施工の耐火材層を形成する工程よりも前に行うことによって上記現場施工の耐火材層を形成する際に上記仕切部材をガイドにしてそれよりも下方に耐火材が流下しないようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
一般に、工場生産された耐火板をトンネル覆工内面の全周に敷設する工法では、トンネルの起伏やカーブによって随時変化するトンネル断面形状に合わせて、耐火板の割付を行わなければならず、また通常は、トンネル覆工内面の左右両側下部からそれぞれ上方に向けて積み上げていく形で敷設し、天端部で調整用の耐火板を設置して、全周被覆を完了させる作業が必要となる。しかし、本発明によれば、耐火内装板の設置は視線誘導に必要なトンネルの下部に限定し、上部の耐火材層は現場施工なので、上記のような天端部における苦渋な調整作業が不要となる。
【0015】
また従来、現場施工の耐火材層を吹付け又は塗布等の手段でトンネル覆工内面全面に形成する工法では、耐火工事と別途に内装板の取付工事を行う必要があったが、本発明によれば耐火内装板を用いることで、従来の耐火板の設置と内装板の設置作業を1回の工事で効率的に行うことができる。即ち、従来トンネル覆工内面の全面を耐火被覆しようとしたときには、耐火板を敷設するか、耐火材層を現場施工するかのいずれかの工法の選択がなされ、それに対して内装板設置工事は別途行われていたが、本発明においては内装の必要な視線誘導領域では耐火内装板を敷設することで、耐火材の設置と内装板の設置作業に相当する作業を1回の敷設作業で行い、それ以外の上部領域では耐火材層を現場施工することで、能率的で実用的な耐火内装工事を容易・迅速に行うことができる。
【0016】
しかも、本発明では、現場施工の耐火材層を形成する前に、視線誘導領域と上部領域との境目に仕切部材を設けることによって、吹付け或いは塗布などの現場施工の耐火材層を形成する際に耐火材が視線誘導領域にだれ落ちて耐火内装板を保持する保持金具等の取付けの障害となることがなく、また耐火内装板を先に敷設した場合には、それらの耐火内装板に現場施工の耐火材が付着して内装板表面を汚す等のおそれがなく、上記いずれの場合においても、効率的な作業が可能となる。また本発明では、耐火内装板の設置に際し、トンネル断面の左側側壁と右側側壁のそれぞれにおいて、作業を同時進行させることができ、短期間の工程で上記の作業を行うことができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を図に示す実施形態に基づいて具体的に説明する。図1は本発明による耐火内装構造の一実施形態を示すトンネルの横断面図、図2(a)はその一部の拡大図、同図(b)はその内面図、同図(c)は(b)におけるc−c断面図、図3(a)および(b)は図2(a)および(b)の一部の拡大図、図4(a)および(b)は図3(a)および(b)の更に一部の拡大図、図4(c)は(b)の横断平面図である。
【0018】
本実施形態はトンネル覆工としてコンクリート製のセグメント(RCセグメント)1を用いたシールドトンネルTに適用したものである。上記セグメント1は、図1および図2に示すように円弧状に形成され、掘削したトンネル内面の周方向に順次連続的に配置すると共に、トンネル軸線方向に順次継ぎ足しながらトンネル内面全面に配設され、その隣り合うセグメント1・1は図に省略した連結ボルト等で連結固定されている。
【0019】
上記のようなセグメント1を敷設したトンネルT内の底部には、通常図1に示すようなインバートコンクリート(床版)1aが打設され、それよりも上方のトンネル空間内をトンネル供用空間T1として使用する。そして、そのトンネル供用空間T1の内面の下部に位置する上記インバートコンクリート1aの上面から所定高さ範囲、通常は約2500〜3500mm程度の範囲内を視線誘導領域R1として、その視線誘導領域R1と、それよりも上方の上部領域R2との間に仕切部材4をトンネル軸方向に連続的に設け、その仕切部材4よりも上方の上部領域R2に現場施工の耐火材層3を形成すると共に、上記視線誘導領域R1に、表面に内装機能を有する耐火材からなる耐火内装板2を敷設したものである。
【0020】
その現場施工の耐火材層3の材質や施工方法等は適宜であるが、本実施形態においてはスラリー状の耐火性材料に急結材等を適宜添加してなる流動性を有する耐火材を、トンネル供用空間T1の内面であるセグメント1の内面に、約30〜40mm程度の厚さに吹き付け若しくは塗布する等の手段で形成して固化させたものである。なお、上記耐火材層3の厚さは適宜であり、また上記耐火材層3を形成する際にセグメント1の内面に予め金網等の補強用心材(不図示))を敷設してから上記の吹付け作業を行うと、内部に補強用心材が埋設された強度の高い耐火材層が得られると共に、その耐火材層の剥落等を防止することができる。
【0021】
また上記のように上部領域R2に現場施工の耐火材層3を施工する際には、上記仕切部材4をガイドにして施工すればよく、それによって、耐火材が視線誘導領域R1側に流下したり、その視線誘導領域R1内に耐火内装板2を先に敷設した場合には、その耐火内装板2を汚損もしくは損傷するのを防ぐことができる。その仕切部材4の構成は適宜であるが、本実施形態の仕切部材4は、前記図1(a)の一部を拡大した図5に示すように、耐火材からなる裏打ち材40と、これをセグメント1等の構造体に埋設したインサートナット1nやアンカーにボルト41・ナット42等で止め付ける受けプレート43と、耐火内装板2の最上端を支持する見切りプレート44およびその固定用ナット45等よりなる。
【0022】
上記視線誘導領域R1に敷設される耐火内装板2は、表面に内装機能を有する耐火材であれば、材質や形成方法等は適宜であるが、本実施形態においては図6に示すように珪酸カルシウムやセラミック等の板状の耐火材20の表面に、アルミメッキほうろう鋼板よりなる装飾層21を接着材等で一体的に貼着したものである。特に図の場合は上記装飾層21として、鉄またはステンレス等の鋼板21aと、アルミニウムめっき層21bと、ほうろう層21cとの3層構成のものが用いられている。
【0023】
上記耐火内装板2の大きさ形状等も適宜であるが、本実施形態においては、図2、図3に示すように横長の長方形状に形成され、そのトンネル軸方向(図2(c)において左右方向)の長さはセグメント1の幅方向長さと略同等で、トンネル周方向の長さは上記セグメント1に予め埋設したインサートナット1nの周方向の配列ピッチ(間隔)と略同等に形成されている。
【0024】
さらに耐火内装板2は、本実施形態においては図4に示すようにセグメント1の内面に、間隔保持金具5を介して所定の間隔をおいて浮かし張り施工するようにしたもので、その間隔保持金具5の基部5aには、上記セグメント1に対する取付孔50が設けられている。その取付孔50は、本実施形態においては図6に示すように上下方向に長い長孔状に形成され、その取付孔50にボルト6を挿通し、そのボルト6を図4に示すように前記セグメント1に埋設したインサートナット1nにねじ込むことによって上記間隔保持金具5をセグメント1の内面に取付ける構成である。
【0025】
また上記間隔保持金具5は、図6に示すように上記取付孔50を有する基部5aと、その基板5aの上下両側縁にそれと一体に且つ直角方向に屈曲させて設けた対向片5b・5cとで断面略コ字形に形成すると共に、その両対向片5b・5cの基部5aと反対側の端部に、それぞれ上方に突出する差込片5dと、下方に突出する差込片5eとを設けた構成である。その上側の差込片5dは、本実施形態においては、上側の対向片5bの長手方向全長にわたって設けられている。また上記下側の差込片5eは、下側の対向片5cの長手方向両側に所定の間隔をおいて設けられ、その両差込片5e・5e間に押え片5fが、それらの厚さ方向に互いにずらして設けられている。
【0026】
一方、前記耐火内装板2の背面側(セグメント側)の上下両辺部には、上記差込片5d・5eをそれぞれ係合させる係止金具7が設けられ、その係止金具7は、本実施形態においては前記セグメント1に埋設したインサートナット1nに対応して各耐火内装板3の背面側の上下両辺部にそれぞれ3つずつ設けられている。その各係止金具7は、本実施形態においては、図6に示すように長手方向両端部が厚さ方向に段差状に屈曲した全体略帯板状に形成され、その両端部に設けた取付孔(不図示)に図4に示すように固定用ボルト8を挿通し、そのボルト8を耐火内装板2内に予め埋設したインサートナット2nにねじ込むことによって耐火内装板2の背面に取付けた構成である。
【0027】
上記各係止金具7の長手方向中間部と耐火内装板2との間には、図6に示すようにスリット状の隙間Sが形成され、その隙間S内に前記間隔保持金具5の差込片5d・5eを差し込むことによって図4のように間隔保持金具5に係止金具7を係合保持させる構成である。また下側の差込片5e・5eは、その間に設けた前記押え片5fとで係止金具7を、その厚さ方向両側から挟むように構成されている。
【0028】
さらに前記の間隔保持金具5は、図4(a)に示すように、その取付基部5aと対向片5b・5cとで形成される断面略コ字形の凹部51が、上下方向(トンネル周方向)に隣接する耐火内装板2の継ぎ目位置(継手位置もしくは突き合わせ位置)に配置されるように構成すると共に、上記凹部51内に帯状の火炎巻込防止材9を設けることによって上記耐火内装板2・2間の隙間を塞ぐようにしたものである。
【0029】
その火炎巻込防止材9としては、耐火性のよいものであれば材質等は適宜であるが、例えばロックウールやセラミックブランケットあるいは両者を積層したもの等を用いることができる。また火炎巻込防止材9の耐火内装板2または間隔保持金具5もしくは両者に対する固定方法としては接着その他適宜であるが、弾力性のあるものを用いれば、上記凹部51内にやや圧縮状態で挿入するだけで、耐火内装板2に密着固定させることもできる。なお、図示例においては、トンネル軸線方向に隣り合う耐火内装板2・2の継手位置におけるそれらの耐火内装板2・2とセグメント1との間にも上記と同様の火炎巻込防止材9が設けられている。
【0030】
上記のように構成された耐火内装構造を施工するに当たっては、予め工場等でインサートナット1nを埋設したセグメント1をトンネルTの内面に順次敷設してトンネル覆工を施した後、前記のインバートコンクリート1aを打設する。そして、そのインバートコンクリート1aよりも上方のトンネル供用空間T1の内面に、本発明による耐火内装構造を施工するもので、その工程としては、上記視線誘導領域R1と上部領域R2との間に仕切部材4を設ける工程と、上記上部領域R2に現場施工の耐火材層3を形成する工程と、上記視線誘導領域R1に耐火内装板2を敷設する工程とよりなる。
【0031】
この場合、上記仕切部材4を設ける工程は少なくとも現場施工の耐火材層3を形成する工程よりも前に行うのがよい。具体的には、例えば上記視線誘導領域R1と上部領域R2との境目に仕切部材4を設けてから上部領域R2に現場施工の耐火材層3を形成した後、前記視線誘導領域R1に耐火内装板を敷設する。或いは、前記視線誘導領域R1に耐火内装板を敷設する前または後に仕切部材4を設け、最後に上部領域R2に現場施工の耐火材層3を形成すればよい。
【0032】
図7および図8はそれぞれ施工手順の一例を示すもので、図7は先ず同図(a)のように視線誘導領域R1と上部領域R2との境目に仕切部材4を施工してから同図(b)のように上部領域R2に現場施工の耐火材層3を形成した後、最後に同図(c)のように視線誘導領域R1に耐火内装板2を敷設するようにした例、図8は同図(a)のように視線誘導領域R1に耐火内装板2を敷設した後に、その上部に同図(b)のように仕切部材4を施工し、最後に同図(c)のように上部領域R2に現場施工の耐火材層3を形成するようにした例である。
【0033】
上記のような現場施工の耐火材層3は、通常前述のように流動性を有する耐火材をトンネル覆工内面に所定の厚さに吹き付け若しくは塗布する等の手段で形成し、それらを固化させて耐火材層3を形成するもので、その際、上記の耐火材層3を形成する前に仕切部材4を設けておくと、上記のような流動性を有する耐火材が視線誘導領域R1に流下して耐火内装板2を保持する間隔保持金具5等の取付けの障害となったり、上記視線誘導領域R1に既に耐火内装板2が敷設されている場合には、それらの耐火内装板2が汚損したり損傷するのを未然に防止することができる。
【0034】
また上記仕切部材4の構成は適宜であるが、例えば前記実施形態のように裏打ち材40と、これをボルト41・ナット42により構造体のインサート又はアンカーに止め付ける受けプレート43と、耐火内装板2の最上端を支持する見切りプレート44およびその固定用ナット45等よりなるものにあっては、上記図7のように耐火内装板2を敷設する前に仕切部材4を施工する場合には、予め上記裏打ち材40をボルト41・ナット42および受けプレート43とで固定し、現場施工の耐火材層3および耐火内装板2を施工してから上記見切りプレート44をその固定用ナット45でボルト41に固定すればよい。その場合、現場施工の耐火材層3と耐火内装板2は各々別々に施工するか、或いは同時に施工することもできる。
【0035】
さらに上記図8のように耐火内装板2と仕切部材4を施工してから現場施工の耐火材層3を設ける場合には、例えば上記耐火内装板2の上端部に裏打ち材40をボルト41・ナット42および受けプレート43とで固定すると共に、見切りプレート44を固定用ナット45で上記ボルト41に固定した状態で、上記裏打ち材40および受けプレート43の上方に現場施工の耐火材層3を形成すればよい。
【0036】
また上記耐火内装板2の施工手順は適宜であるが、例えば耐火内装板2の背面側の上下両辺部に予め係止金具7を取付けておき、インバートコンクリート1aよりも上側のセグメント内面側に、間隔保持金具5および耐火内装板2を下から上に向かって順に取付けて行けばよい。その際、上記各耐火内装板2は下側の係止金具7を下側の間隔保持金具5を介してセグメント1に固定してから上側の係止金具7を上側の間隔保持金具5を介してセグメント1に固定して行くとよく、又その際、間隔保持金具5は予めセグメント1に組み付けてからその間隔保持金具5の差込片5d・5eに係止金具7を係合させるか、或いは間隔保持金具5の差込片5d・5eを係止金具7に係合させてから該間隔保持金具5をセグメント1に固定するようにしてもよい。
【0037】
図9はその一例を示すもので、先ず同図(a)に示すように耐火内装板2の図に省略した下側の係止金具を下側の間隔保持金具5に係合保持させた状態で、上側の係止金具7に上側の間隔保持金具5の下向きの差込片5eを図中矢印のように係合させ、その間隔保持金具5を同図(b)のようにセグメント1に埋設したインサートナット1nにボルト6等で取付ける。次いで、上記間隔保持金具5の凹部51内に火炎巻込防止材9を組み付けた後、上記間隔保持金具5の上向きの差込片5dに上側の耐火内装板2の下辺側に設けた係止金具7を係合させる。このようにして下から順に耐火内装板2を取付けて行けばよい。
【0038】
なお上記の火炎巻込防止材9として柔軟な材質のものを用いる場合には、1つの間隔保持金具5に対して上下いずれか一方の耐火内装板2が取付けられていない状態であれば、先に取付けた耐火内装板2が図9(c)のように前記凹部51のセグメント1と反対側の開口部の一部を塞ぐように凹部内に突出した状態においても容易に装着することができる。また図のように凹部51内にボルト6等があっても柔軟な火炎巻込防止材にあっては圧縮状態で装着すれば何ら支障はない。
【0039】
一方、火炎巻込防止材9として硬質のものを用いる場合であって間隔保持金具5にいずれか一方の耐火内装板2を取付けた後には装着できない場合には、その耐火内装板2を取付ける前に火炎巻込防止材9を装着すればよく、また火炎巻込防止材9を装着する際にボルト6等と干渉したり、ボルト6のねじ込むことができなくなるおそれがあるときは、火炎巻込防止材9の一部を切除したり、分離して装着すればよい。なお、トンネル軸方向に隣り合う耐火内装板2・2間にも、図2〜図4に示すように火炎巻込防止材9を設けるとよく、その火炎巻込防止材9の固定手段等は適宜であるが、例えばセグメント1の内面または耐火材の外面もしくはそれら両面に接着材等で固定すればよい。
【0040】
上記のようにしてトンネル供用空間T1の下部両側の視線誘導領域R1と、それよりも上方の上部領域との間に仕切部材4をトンネル軸線方向に設け、その仕切部材4よりも上方の上部領域R2に現場施工の耐火材層3を形成すると共に、上記視線誘導領域R1に耐火内装板2を敷設することで、図10に示すようなトンネル供用空間T1の内面に耐火内装構造を備えたシールドトンネルTが得られるものである。
【0041】
なお、上記実施形態はトンネル覆工としてコンクリート製のセグメント1を用いたが、スチールセグメントを用いたシールドトンネル等にも適用できる。図11はその一例を示すもので、前記実施形態と同様にインバートコンクリート1aよりも上方のトンネル供用空間T1の内面下部の所定高さ範囲を視線誘導領域R1、それよりも上方を上部領域R2とし、その視線誘導領域R1と上部領域R2との間に仕切部材4をトンネル軸方向に連続的に設け、その仕切部材4よりも上方の上部領域R2に現場施工の耐火材層3を形成すると共に、上記視線誘導領域R1に、表面に内装機能を有する耐火材からなる耐火内装板2を敷設したものである。
【0042】
上記トンネル供用空間T1の内面のトンネル覆工を構成する上記スチールセグメント10は、図12に示すようにトンネル周方向に延びる桁材11と、周方向に隣接するセグメント同士の接続面となる継手板12と、シールド機が推進反力をとるためにトンネル軸方向の押圧力が発生したときにそれに抗するための補強リブ13と、その補強リブ13の外側に放射方向に設けた支持板14等よりなる。
【0043】
上記補強リブ13は、図の場合は短冊状の板材をトンネル軸線方向、つまり横方向に配置した構成であり、トンネル周方向に所定の間隔をおいて多数設けられている。そのためトンネル周方向に隣り合う補強リブ13・13間には隙間があり、上記の現場施工の耐火材層3を形成する際に耐火材がセグメント10内に流入するおそれがあるが、セグメント10の内面にセメント板等を設置してセグメント10内への耐火材の流入を防止するか、場合によってはセグメント10内に耐火材を流入させて充填するようにしてもよい。
【0044】
また上記スチールセグメント10には、前記のコンクリート製のセグメントのようにインサートナット等を埋設できないため、前記実施形態における仕切部材4をセグメントに取付けるためのボルト41、および前記間隔保持金具5を、本実施形態においてはアジャスト金具60を介して上記補強リブ13に取付けるようにしたもので、図13は仕切部材4の取付部の拡大図、図14は間隔保持金具5の取付部の拡大図である。
【0045】
上記アジャスト金具2は、本実施形態においては図15に示すように、板材を曲げ加工して形成した断面略C字形の金具(以下、C字形金具という)61と、断面略L字形の金具(以下、L字形金具という)62とよりなり、上記C字形金具21の下部には、図15に示すように幅方向(図15で前後方向)の中央部と両端部とで折り返し位置の異なる折り返し片61a、61bが設けられ、その両折り返し片61a・61b間に補強リブ13の一方の縁部を係合して保持させる構成である。
【0046】
また上記C字形金具61の上部には、前記L字形金具62をボルト63・ナット64で取付け、そのL字形金具62の縦片62aと、C字形金具61の上部折り返し片61cとの間に補強リブ13の他方の縁部を係合して保持させる構成である。上記ナット64は予めC字形金具22の内面に溶接等で固着しておくと、取付け作業が容易となると共に、ナットの紛失を防止することができる。また上記ナット64の代わりにC字形金具62にボルト63をねじ込むための雌ねじ孔を形成してもよい。
【0047】
上記のようにして補強リブ13に取付けたアジャスト金具2に、前記図13の間隔保持金具5にあっては前記取付孔50およびアジャスト金具2に形成したボルト挿通孔(不図示)にボルト65を挿通してナット66で取付け、前記図14の支持金具4にあっては前記のボルト41をアジャスト金具2に形成したボルト挿通孔(不図示)に挿通してナット66で取付けるもので、上記のナット66も前記ナット62と同様に予めC字形金具22の内面に溶接等で固着する、あるいは上記ナット66の代わりにC字形金具22に上記のボルト65または41をねじ込むための雌ねじ孔を形成してもよい。
【0048】
他の構成は前記図1〜図10の実施形態と同様であり、同様の作用効果が得られる。特に現場施工の耐火材層3を形成する前に仕切部材4を設けておくと、流動性を有する耐火材が視線誘導領域R1に流下したり、その視線誘導領域R1に既に耐火内装板2が敷設されている場合には、それらの耐火内装板2が汚損したり損傷するのを未然に防止することができる。また仕切部材4を先に設ければ、現場施工の耐火材層3と耐火内装板2を同時に施工することもできる。
【0049】
さらに本発明は図16に示すような鋼殻沈埋トンネルT等にも適用できる。図17は上記沈埋トンネルTのトンネル供用空間T1内に前記図1〜図10の実施形態とほぼ同様の要領で現場施工の耐火材層3と耐火内装板2および仕切部材4とを設けたもので、前記実施形態と同様の作用効果が得られる。特に上記のような鋼殻沈埋トンネルTに耐火板を設置する場合には、トンネル供用空間T1内における天井と側壁とが交わる上部角部での耐火板の位置合わせや取付けが難しいが、本発明では耐火内装板の取付けをトンネル供用空間T1の下部内面に位置する視線誘導領域R1のみに限定して、それより上側の上部領域R2は現場施工の耐火材層を形成するようにしたので、容易・迅速に施工できる等の利点がある。
【0050】
以上のように本発明においては、トンネル供用空間T1の内面下部の視線誘導領域R1と、それよりも上方の上部領域R2との間に仕切部材4を設け、その仕切部材4の上方の上部領域R2に現場施工の耐火材層3を形成すると共に、上記視線誘導領域R1に耐火内装板2を敷設するようにしたから、視線誘導領域R1の耐火内装板2と、上部領域R2の現場施工耐火材層3とを、上記仕切部材4で確実に仕切った状態で、それぞれ別々に良好に区分して設けることができる。
【0051】
また視線誘導領域R1に耐火内装板2を用いることで、前記従来のように耐火材と内装板とを各々別々に施工することなく、1回の施工作業で内装機能を有する耐火材を簡単・確実に設けることができる。また現場施工の耐火材層3を形成する前に仕切部材4を設けることで、上記耐火材層3を形成する際に耐火材が視線誘導領域R1に流下したり、その視線誘導領域R1に既に耐火内装板2が敷設されている場合に、それらの耐火内装板2が汚損したり損傷するのを未然に防止することができる。
【0052】
さらに上記視線誘導領域R1と上部領域R2との間に仕切部材4を設けることで、視線誘導領域R1への耐火内装板2の敷設作業と、上部領域R2への耐火材層3の現場施工作業とを、それぞれ独立して実施することが可能となり、場合によっては上記の作業を同時に行うこともできるものである。
【産業上の利用可能性】
【0053】
上記のように構成された本発明によるトンネル耐火内装構造およびその施工方法によれば、前記のようなRCセグメントやスチールセグメントを用いたシールドトンネルに限らず、鋳鉄とコンクリートの複合体であるダクタイルセグメントを用いたシールドトンネルにも適用可能であり、また前記の鋼殻沈埋トンネルを含めてプレキャスト製のトンネルに限らず、掘削したトンネル内に覆工コンクリートを直接現場施工で打設したトンネルにも適用可能であり、それらのトンネルにおいても前記と同様の作用効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明によるトンネル耐火内装構造の一実施形態を示すトンネルの横断面図。
【図2】(a)は図1の一部の拡大図、(b)はその内面図、同図(c)は(b)におけるc−c断面図。
【図3】(a)および(b)は図2(a)および(b)の一部の拡大図。
【図4】(a)および(b)は図3(a)および(b)の更に一部の拡大図、(c)は(b)の横断平面図。
【図5】図1における仕切部材取付部の拡大図。
【図6】耐火内装板の取付構造を示す分解斜視図。
【図7】(a)〜(c)は上記耐火内装構造の施工プロセスの一例を示す説明図。
【図8】(a)〜(c)は上記耐火内装構造の施工プロセスの他の例を示す説明図。
【図9】耐火内装板の取付手順の一例を示す説明図。
【図10】本発明によるトンネル耐火内装構造を施工したトンネルの斜視図。
【図11】スチールセグメントを用いたトンネルに本発明を適用した例の横断面図。
【図12】スチールセグメントの斜視図。
【図13】図11における仕切部材取付部の拡大図。
【図14】図11における耐火内装板取付部の拡大図。
【図15】(a)は耐火内装板取付部の分解斜視図、(b)はアジャスト金具の組付け状態を示す斜視図。
【図16】鋼殻沈埋トンネルの一例を示す横断面図。
【図17】上記鋼殻沈埋トンネルに本発明を適用した例の一部の拡大横断面図。
【符号の説明】
【0055】
1 セグメント
1a インバートコンクリート
2 耐火内装板
1n、2n インサートナット
3 耐火材層
4 仕切部材
5 間隔保持金具
5a 取付基部
5b、5c 対向片
5d、5e 差込片
5f 押え片
6 取付ボルト
7 係止金具
8 固定用ボルト
9 火炎巻込防止材
T トンネル
S 隙間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル供用空間内面の下部を視線誘導領域、それよりも上方を上部領域とし、上記視線誘導領域と上部領域との間に仕切部材をトンネル軸方向に連続的に設け、その仕切部材よりも上方の上部領域に現場施工の耐火材層を形成すると共に、上記視線誘導領域に、表面に内装機能を有する耐火材からなる耐火内装板を敷設したことを特徴とするトンネル耐火内装構造。
【請求項2】
上記耐火内装板をトンネル供用空間内面に間隔保持金具を介して所定の間隔をおいて浮かし張りするようにした請求項1に記載のトンネル耐火内装構造。
【請求項3】
トンネル供用空間内面の下部を視線誘導領域、それよりも上方を上部領域とし、上記視線誘導領域と上部領域との間に仕切部材をトンネル軸方向に連続的に設ける工程と、その仕切部材よりも上方の上部領域に現場施工の耐火材層を形成する工程と、上記視線誘導領域に、表面に内装機能を有する耐火材からなる耐火内装板を敷設する工程とを有し、上記仕切部材を設ける工程を、少なくとも上記現場施工の耐火材層を形成する工程よりも前に行うことによって上記現場施工の耐火材層を形成する際に上記仕切部材をガイドにしてそれよりも下方に耐火材が流下しないようにしたことを特徴とするトンネル耐火内装構造の施工方法。
【請求項1】
トンネル供用空間内面の下部を視線誘導領域、それよりも上方を上部領域とし、上記視線誘導領域と上部領域との間に仕切部材をトンネル軸方向に連続的に設け、その仕切部材よりも上方の上部領域に現場施工の耐火材層を形成すると共に、上記視線誘導領域に、表面に内装機能を有する耐火材からなる耐火内装板を敷設したことを特徴とするトンネル耐火内装構造。
【請求項2】
上記耐火内装板をトンネル供用空間内面に間隔保持金具を介して所定の間隔をおいて浮かし張りするようにした請求項1に記載のトンネル耐火内装構造。
【請求項3】
トンネル供用空間内面の下部を視線誘導領域、それよりも上方を上部領域とし、上記視線誘導領域と上部領域との間に仕切部材をトンネル軸方向に連続的に設ける工程と、その仕切部材よりも上方の上部領域に現場施工の耐火材層を形成する工程と、上記視線誘導領域に、表面に内装機能を有する耐火材からなる耐火内装板を敷設する工程とを有し、上記仕切部材を設ける工程を、少なくとも上記現場施工の耐火材層を形成する工程よりも前に行うことによって上記現場施工の耐火材層を形成する際に上記仕切部材をガイドにしてそれよりも下方に耐火材が流下しないようにしたことを特徴とするトンネル耐火内装構造の施工方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2007−92291(P2007−92291A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−279175(P2005−279175)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(000129758)株式会社ケー・エフ・シー (120)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(000129758)株式会社ケー・エフ・シー (120)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】
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