説明

トンネル補強構造及びその施工方法、並びにこれに用いられる支保工

【課題】簡易な構成で、簡便かつ安全に施工できるとともに、トンネル壁面と支保工とを吹き付けコンクリートで確実に一体化させることが可能なトンネル補強構造及びその施工方法、並びにこれに用いられる支保工を提供する。
【解決手段】本発明のトンネル補強構造1は、掘削されたトンネルの内周壁20の底部を拡幅して拡幅空間22を形成し、拡幅空間22が形成されたトンネルの内周壁20に、トンネルの内周壁20を支持する支保工本体12と、両端が支保工本体12の脚部に固定され、支保工本体12から地山側に張り出すように設けられた鉄筋14とを備える支保工10を、鉄筋14が拡幅空間22に収納されるように建て込み、拡幅空間22収納された鉄筋14及び支保工本体12と一体になるようにトンネルの内周壁20にコンクリート24を吹き付けてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルの補強構造に係り、特に、簡易な構成で、簡便かつ安全に施工できるとともに、トンネル内周面と支保工とを吹き付けコンクリートで確実に一体化させることが可能な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
山岳トンネルの施工にあたり、ダイナマイトや掘削機械等によって地盤を掘削し、掘削したトンネルの内周壁を素早く吹き付けコンクリートで固め、岩盤とコンクリートとを固定するロックボルトを岩盤奥深く打ち込むことにより、トンネル周辺の地山自体のアーチアクションを期待してトンネル構造を安定させるNATM(New Austrian Tunnelling Method)が広く実施されている。
【0003】
この工法では、地盤掘削時に低強度地山に遭遇した場合に、コンクリートの吹き付け前にトンネルの内周壁に鋼製支保工を建て込んでトンネル内周壁を補強することがあり、一般な鋼製支保工では、トンネル内周壁を支持する鋼製支保工の下端が、掘削された地山底面により支持されている。このため、地山の耐力が小さいときは、鋼製支保工に掛かる荷重で鋼製支保工の脚部が地山に沈下することがある。
【0004】
これに対し、従来より鋼製支保工の脚部の沈下を抑制するための技術が提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、鋼製支保工の下端に外方に突出する底板を取り付けて支持面積を大きくすることにより、鋼製支保工から地山に伝達する単位面積当たりの荷重を軽減して、鋼製支保工の脚部の沈下を抑制する補助支持具(以下、ウィングリブという)が開示されている。
【特許文献1】特開平9−195696号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載される支保工のウイングリブは、底板とともに、鋼製支保工の外周側に底板を支持するための支持材が取り付けられており、かかる支持材として、鋼製支保工に作用する荷重を底板に充分に伝達させるために、所定の剛性を有する部材が使用される(例えば、H型鋼)。このようなウイングリブを取り付けられた支保工は、普通型の支保工と比べて重量が重くなり、また重量バランスも悪くなるので、トンネル内周壁での建て込み作業性が低下する。また、このような重量物をトンネル内に搬入したり設置したりするのに、専用機が必要となる場合もある。
【0007】
また、このようにウイングリブは、構成部材が比較的大掛かりなものであるため、一般に、工場で製作及び組み立てがなされ、その後現場に搬入する。そのため、トンネル施工中に地山が急に悪くなった場合等の緊急時に対する早急な対応ができないことがある。
【0008】
また、特許文献1に記載の鋼製支保工の建て込みでは、鋼製支保工の建て込み前に、ウイングリブを設置するための領域を確保すべく、ウイングリブの形状に対応させた、先端が鋭角形状の拡幅空間を、掘削面の前方に向かって両脚部の底部(トンネル内周壁の底部)に形成する必要がある。この拡幅空間を形成するための掘削を、根掘りと呼んでいる。
【0009】
しかしながら、かかる根掘りは狭所の作業となるため、通常、人力によるものであるとともに、鋭角形状に掘削された地山は強度不足のため、地山自体が安定するアーチアクションを期待できるまで、表面崩壊(肌落)を生じやすい。
【0010】
また、根掘り後も、ウイングリブの底板を地山底面に密着支持させるために地山表面の整形及び均しを行う必要があり、作業が長引いてしまう。
【0011】
さらに、NATMでは、ウイングリブ付きの鋼製支保工の建て込み後にトンネル内周壁にコンクリートを鋼製支保工と一体となるように吹き付けるが、この時ウイングリブの支持材が障害となって、トンネル内周壁と鋼製支保工との間に充分にコンクリートを充填できず、吹き付けコンクリートと鋼製支保工とが充分に一体化できないおそれがある。
【0012】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で、簡便かつ安全に施工できるとともに、トンネル壁面と支保工とを吹き付けコンクリートで確実に一体化させることが可能なトンネル補強構造及びその施工方法、並びにこれに用いられる支保工を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するため、本発明は、掘削されたトンネルを、支保工と吹き付けコンクリートとにより補強するトンネル補強構造であって、
掘削されたトンネルの内周壁の底部を拡幅して拡幅空間を形成し、
前記拡幅空間が形成されたトンネルの内周壁に、前記トンネルの内周壁をその周方向に沿って支持する支保工本体と、両端が前記支保工本体の脚部に固定され、前記支保工本体から地山側へ張り出すように設けられた線材とを備える支保工を、前記線材が前記拡幅空間に収納されるように建て込み、
前記拡幅空間に収納された線材及び前記支保工本体と一体になるように、前記トンネルの内周壁にコンクリートを吹き付けてなることを特徴とする。
【0014】
本発明のトンネル補強構造によれば、トンネルの内周壁底部に形成された拡幅空間周辺で、支保工と、線材とが、吹き付けコンクリートとが一体化する剛体となる。すなわち、本発明のトンネル補強構造では、地山から作用された荷重を、通常の支保工と吹き付けコンクリートとからなるトンネル構造補強と比べて、地山との接触面積が大きい拡幅空間全体で支持することから、地山に伝達する単位面積当たりの荷重が軽減されるので、支保工の下端部の沈下を抑制することができる。
【0015】
また、特許文献1に記載の底板や支持材からなるウイングリブのような重量物と比べると、支保工には軽量な線材が設けられることから、支保工の重量が軽くなるうえ、支保工の重量バランスが普通型の支保工から大幅に変更されることないため、建て込み作業を安全に行うことができる。また、トンネル内への搬入や設置作業を、特に専用機を用いることなく従来と同様の要領で行うことができる。
【0016】
また、線材は、現場で簡単に成形して支保工本体に設置できるので、地山が急に悪くなった場合等の緊急時に、早急な対応をとることができる。
【0017】
また、本発明の支保工を設置する際には、特許文献1に記載のウイングリブのように、トンネル内周壁の底部を地山のアーチアクションが期待しにくい先端鋭角状に根掘りする必要がない。すなわち、地山のアーチアクションを生じやすい形状にして、支保工とトンネル内周壁との間に、線材が収納できるような領域を確保することができれば、どのような形状でトンネル内周壁底部を掘削してもよい。例えば、トンネル内周壁を、丸みを帯びた湾曲状の形状に掘削すれば、地山のアーチアクションを促して、地山の安定性を維持することができる。
【0018】
また、掘削した後も、ウイングリブの底板を地山底面に密着支持させるための地山表面の整形又は均し作業をする必要もない。
【0019】
また、支保工の下端部を吹き付けコンクリートと一体化させるための部材として線材を使用していることにより、支保工の建て込み後にトンネル内周壁にコンクリートを吹き付けるときに、特許文献1に記載のウイングリブと比べて、支保工とトンネル内周面との間に空隙が増加するので、コンクリートのトンネル内周壁への吹き付けが容易になるとともに、支保工とトンネル内周面との間に密実にコンクリートを充填できるため、コンクリートと壁面との密着性が向上するので、壁面の安定性が向上するとともに、支保工下端の沈下を抑制することができる。
【0020】
また、線材は、両端が支保工に固定され、中央がトンネルの内周壁に建て込まれた支保工の下端部から、拡幅空間におけるトンネルの内周壁側に張り出す形状を有することにより、通常、金属部材をコンクリートに固定するのに用いられるスタッドジベルと比べて、コンクリートに作用するせん断力に抵抗する機能を有することはもとより、地山からの圧縮及び曲げに対する強度が向上する。
【0021】
また、本発明において、前記線材は、前記トンネルの内周壁の周方向に沿うような形状を有することとしてもよい。この構成によれば、コンクリートに作用するせん断力に対する抵抗力、並びに地山からの圧縮及び曲げに対する強度を、さらに効果的に向上させることができる。
【0022】
また、本発明において、前記線材は、鋼材からなることとしてもよい。
【0023】
また、本発明は、掘削されたトンネルを、支保工と吹き付けコンクリートとにより補強するトンネル補強構造の施工方法であって、掘削されたトンネルの内周壁の底部を拡幅して拡幅空間を形成する拡幅空間形成工程と、前記拡幅空間が形成されたトンネルの内周壁に、前記トンネルの内周壁をその周方向に沿って支持する支保工本体と、両端が前記支保工本体の脚部に固定され、前記支保工本体から地山側へ張り出すように設けられた線材とを備える支保工を、前記線材が前記拡幅空間に収納されるように建て込む支保工建て込み工程と、前記拡幅空間に収納された線材及び前記支保工本体と一体になるように、前記トンネルの内周壁にコンクリートを吹き付けるコンクリート吹き付け工程とを備えることを特徴とする。
【0024】
また、本発明は、トンネル施工の際に、掘削したトンネルの内周壁をその周方向に沿って支持するとともに、トンネルの内周壁に吹き付けられるコンクリートと一体となって設けられる支保工であって、前記トンネルの内周壁をその周方向に沿って支持する支保工本体と、両端が前記支保工本体の脚部に固定され、前記支保工本体から地山側へ張り出すように設けられた線材とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、簡易な構成で、簡便かつ安全に施工できるとともに、トンネル壁面と支保工とを吹き付けコンクリートで確実に一体化させることが可能なトンネル補強構造及びその施工方法、並びにこれに用いられる支保工を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の好ましい一実施形態について図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る支保工10の脚部を示す斜視図である。
【0027】
図1に示すように、本実施形態に係る支保工10は、例えば、山岳トンネルの施工時に、掘削されたトンネルの内周壁に建て込まれ、その後、内周壁に吹き付けられる吹き付けコンクリートとともに一体化させて用いるものであり、下端に底板13が設けられた支保工本体12と、支保工本体12の脚部外周に設けられた鉄筋14とを備える。
【0028】
支保工本体12は、例えば、H型鋼からなるアーチ型の鋼製支保工である。支保工本体12には、その脚部の外周側のフランジ122に、鉄筋14の両端を支保工本体12に固定するための鞘管16と貫通孔18とが設けられている。なお、鞘管16は、管内に挿入された鉄筋14の先端を係止する構造を有している。
【0029】
鉄筋14は、その一端を鞘管16に挿入し、その後貫通孔18に鉄筋14の他端を挿入することにより、両端を支保工本体12に固定される。なお、貫通孔18と鉄筋14の他端とは、例えば、ナット締めや溶接等により固定される。
【0030】
なお、鉄筋14の一端と支保工本体12との固定は、鞘管16によるものに限らず、鉄筋14の他端と支保工本体12との固定と同様に、鉄筋14の一端側のフランジ122に貫通孔18を形成し、ナット締めや溶接等により固定することとしてもよい。
【0031】
鉄筋14としては、特に限定されるものではないが、例えば、断面径がD16、D19又はD22の寸法のものを用いることができる。また、鞘管16や貫通孔18の管径や孔径は、鉄筋14の寸法に応じて設定される。
【0032】
また、鉄筋14は、その両端が支保工本体12に固定されたときに、その中央が支保工本体12の外周側のフランジ122から支保工本体12の背面方向に張り出す形状を有している。例えば、鉄筋14は、図1に示すようにトンネル周方向に上部から下部にかけて徐々にはらんでいくような湾曲形状を有する。
【0033】
このように、支保工10は簡易な構成であることから、トンネル施工現場で簡単に製作及び組み立てすることができる。
【0034】
次に、かかる支保工10を用いてトンネル補強構造を構築する施工手順について説明する。
図2は、本実施形態に係るトンネル補強構造1を構築する施工手順を示す工程図である。
【0035】
図2に示すように、本実施形態に係るトンネル補強構造1は、内周壁底部拡幅工程S10と、支保工建て込み工程S20と、コンクリート吹き付け工程S30とのサイクルを掘進方向に繰り返して行うことにより構築される。
【0036】
内周壁底部拡幅工程S10では、掘削されたトンネルの内周壁20の底部を、さらに掘削して拡幅し、拡幅空間22を形成する。
ここで、拡幅空間22の大きさとして、先に説明した支保工10がトンネルの内周壁20に建て込まれるときに、支保工10に設けられた鉄筋14を、支保工10の支保工本体12とトンネル内周壁20との間に収納できる程度の領域を確保する。
【0037】
また、拡幅空間22の形成する際に、拡幅空間22のトンネル内周壁20の壁面が、例えば、丸みを帯びた湾曲状の形状になるように掘削することが好ましい。これにより、地山のアーチアクションを促して、地山の安定性を維持することができる。
【0038】
支保工建て込み工程S20では、拡幅空間22が形成されたトンネルの内周壁20に、支保工10を、鉄筋14が拡幅空間22に収納されるように建て込む。
ここで支保工10は、通常の鋼製支保工である支保工本体12に比べて鉄筋14の分だけしか重量が増加しないので、通常と同じような要領(鋼製支保工を建て込むための専用機械を用いたり、又は人力により)でトンネルの内周壁面に建て込むことができる。
【0039】
コンクリート吹き付け工程S30では、拡幅空間22に収納された鉄筋14及び支保工10の支保工本体12と、一体になるようにトンネルの内周壁20にコンクリート24を吹き付ける。
ここで、使用するコンクリート24には、NATM等で通常用いられる早期に硬化する吹き付けコンクリートを使用する。
また、吹き付けの際には、コンクリート24が、拡幅空間22における支保工10の支保工本体12と内周壁20との間に密実に充填されるように留意する。
そして、吹き付けられたコンクリート24は充分に養生して硬化させる。
【0040】
このように工程S10〜S30を、掘進方向に繰り返して行うことにより、本実施形態のトンネル補強構造1が構築される。
【0041】
以上説明した本実施形態に係るトンネル補強構造1によれば、掘削されたトンネルの内周壁20の底部を拡幅して拡幅空間22を形成し、拡幅空間22が形成されたトンネルの内周壁20に、トンネルの内周壁20をその周方向に沿って支持する支保工本体12と、両端が支保工本体12の脚部に固定され、支保工本体12から地山側へ張り出すように設けられた鉄筋14とを備える支保工10を、拡幅空間22が形成されたトンネルの内周壁20に、鉄筋14が拡幅空間22に収納されるように建て込み、拡幅空間22に収納された鉄筋14及び支保工本体12と一体になるようにトンネルの内周壁20にコンクリート24を吹き付けてなることにより、拡幅空間22において、支保工本体12と、鉄筋14と、吹き付けコンクリート24とが一体化した剛体となる。
【0042】
すなわち、本実施形態のトンネル補強構造1では、地山から作用された荷重を、通常の支保工10と吹き付けコンクリート24とからなるトンネル補強構造と比べて、地山との接触面積が大きい拡幅空間22全体で支持することから、地山に伝達する単位面積当たりの荷重が軽減されるので、支保工10の下端部の沈下を抑制することができる。
【0043】
またトンネル補強構造1は、特許文献1に記載の底板や支持材からなるウイングリブのような重量物と比べると、支保工本体12には軽量な鉄筋14が設けられることから、支保工10の重量が軽くなるうえ、支保工10の重量バランスが普通型の支保工から大幅に変更されることないため、建て込み作業を安全に行うことができる。また、トンネル内への搬入や設置作業を、特に専用機を用いることなく従来と同様の要領で行うことができる。
【0044】
また、鉄筋14は、現場で簡単に成形して支保工本体12に設置できるので、地山が急に悪くなった場合等の緊急時に、早急な対応をとることができる。
【0045】
また、本実施形態の支保工10を設置する際には、特許文献1に記載のウイングリブのように、トンネル内周壁20の底部を先端鋭角状に根掘りする必要がない。すなわち、支保工10とトンネル内周壁20との間に、線材が収納できるような領域を確保することができれば、どのような形状でトンネル内周壁20の底部を掘削してもよい。例えば、トンネルの内周壁20を、丸みを帯びた湾曲状の形状に掘削すれば、地山のアーチアクションを促して、地山の安定性を維持することができる。
【0046】
また、掘削した後も、ウイングリブの底板を地山底面に密着支持させるための地山表面の整形又は均し作業をする必要もない。
【0047】
また、支保工10の脚部に、吹き付けコンクリート24と一体化させるための部材として鉄筋14を設けていることにより、支保工10の建て込み後にトンネル内周壁20にコンクリート24を吹き付けるときに、特許文献1に記載のウイングリブと比べて、支保工10とトンネル内周面との間に空隙が増加するので、コンクリート24のトンネル内周壁20への吹き付けが容易になるとともに、支保工10とトンネル内周面との間に密実にコンクリート24を充填できるため、コンクリート24と壁面との密着性が向上する。これにより、壁面の安定性が向上するとともに、支保工10の下端の沈下を抑制することができる。
【0048】
また、鉄筋14は、両端が支保工10に固定され、中央がトンネルの内周壁20に建て込まれた支保工10の脚部から、拡幅空間22におけるトンネルの内周壁20の側に張り出す形状を有することにより、通常、金属部材とコンクリートとを固定するのに用いられるスタッドジベル等と比べて、コンクリート24に作用するせん断力に抵抗する機能を有することはもとより、地山からの圧縮及び曲げに対する強度が向上する。
【0049】
なお、本実施形態では、支保工本体12の脚部外周に鉄筋14を設けたが、これに限らず、コンクリート24との付着性が良好で、コンクリート24に作用するせん断力、曲げ荷重、及び圧縮荷重に抵抗する所定の強度を有する線材であれば、どのようなものを用いてもよい。このような線材としては、例えば、炭素繊維や強化プラスチック等からなるものを用いることができる。
【0050】
また、本実施形態の鉄筋14は、支保工10に設置したときに、トンネルの周方向に沿って、上部から下部にかけて徐々にはらんでいくような湾曲する形状を有するとしたが、これに限らず、鉄筋の中央が支保工10の脚部から、拡幅空間22におけるトンネルの内周壁20の側に張り出す形状を有していれば、どのような形状であってもよい。
【0051】
図3は、三角形状の鉄筋140を備える支保工10の脚部の側面図である。
図3に示すように、例えば、中央が折れ曲がった三角形状を有する鉄筋140を支保工10に設けてもよい。
【0052】
また、本実施形態に係るトンネル補強構造1では、支保工10のみにトンネル周方向に延伸する鉄筋14を設けているが、支保工10の設置後に、隣接する支保工10間をトンネル軸方向に延長する鉄筋を、支保工10の背面側に設けてもよい。これにより、トンネル軸方向をせん断する方向に作用する土圧等の荷重に対するトンネル補強構造1の耐力が向上する。
【0053】
また、本実施形態に係るトンネル補強構造1では、支保工10の1つの脚部に対して2本の鉄筋14が設置されているが、その数は特に限定されるものではなく、必要に応じて増やしたり、また1本にしてもよい。鉄筋14の数を増やすほど、構築されるトンネル補強構造1の強度が向上する反面、トンネル内周壁20と支保工10の支保工本体12との間への吹き付けコンクリートの充填が困難になる。一方、鉄筋14の数を減らすほど、トンネル内周壁20と支保工10との間への吹き付けコンクリートの充填が容易になる反面、構築されるトンネル補強構造1の強度が低下する。
【0054】
また、本実施形態に係る支保工10の支保工本体12は、H型鋼等の部材やアーチ型等の形状に限定されるものではなく、施工するトンネルを支持するのに充分な強度を有する部材からなるとともに、トンネルの内周壁20に対応する形状を有する支保工であればよい。例えば、鋼管からなるものや、鳥居型の形状を有するものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本実施形態に係る支保工10の脚部を示す斜視図である。
【図2】本実施形態に係るトンネル補強構造1を構築する施工手順を示す工程図である。
【図3】三角形状の鉄筋140を備える支保工10の脚部の側面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 トンネル補強構造
10 支保工
12 支保工本体
13 底板
14,140 鉄筋
16 鞘管
18 貫通孔
20 内周壁
22 拡幅空間
24 コンクリート
122 フランジ
S10 内周壁底部拡幅工程
S20 支保工建て込み工程
S30 コンクリート吹き付け工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削されたトンネルを、支保工と吹き付けコンクリートとにより補強するトンネル補強構造であって、
掘削されたトンネルの内周壁の底部を拡幅して拡幅空間を形成し、
前記拡幅空間が形成されたトンネルの内周壁に、前記トンネルの内周壁をその周方向に沿って支持する支保工本体と、両端が前記支保工本体の脚部に固定され、前記支保工本体から地山側へ張り出すように設けられた線材とを備える支保工を、前記線材が前記拡幅空間に収納されるように建て込み、
前記拡幅空間に収納された線材及び前記支保工本体と一体になるように、前記トンネルの内周壁にコンクリートを吹き付けてなることを特徴とするトンネル補強構造。
【請求項2】
前記線材は、前記トンネルの内周壁の周方向に沿うような形状を有することを特徴とする請求項1に記載のトンネル補強構造。
【請求項3】
前記線材は、鋼材からなることを特徴とする請求項1又は2に記載のトンネル補強構造。
【請求項4】
掘削されたトンネルを、支保工と吹き付けコンクリートとにより補強するトンネル補強構造の施工方法であって、
掘削されたトンネルの内周壁の底部を拡幅して拡幅空間を形成する拡幅空間形成工程と、
前記拡幅空間が形成されたトンネルの内周壁に、前記トンネルの内周壁をその周方向に沿って支持する支保工本体と、両端が前記支保工本体の脚部に固定され、前記支保工本体から地山側へ張り出すように設けられた線材とを備える支保工を、前記線材が前記拡幅空間に収納されるように建て込む支保工建て込み工程と、
前記拡幅空間に収納された線材及び前記支保工本体と一体になるように、前記トンネルの内周壁にコンクリートを吹き付けるコンクリート吹き付け工程とを備えることを特徴とするトンネル補強構造の施工方法。
【請求項5】
トンネル施工の際に、掘削したトンネルの内周壁をその周方向に沿って支持するとともに、トンネルの内周壁に吹き付けられるコンクリートと一体となって設けられる支保工であって、
前記トンネルの内周壁をその周方向に沿って支持する支保工本体と、両端が前記支保工本体の脚部に固定され、前記支保工本体から地山側へ張り出すように設けられた線材とを備えることを特徴とするトンネル支保工。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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