説明

ドアクローザ

【課題】作動油による流動音の発生が少ないドアクローザを提供する。
【解決手段】ドアクローザ本体1のシリンダ2内にピストン8が内装され、ピストン8のピストンヘッド9の前後方向両側には、調整流路19を介して連通する前方油室14とピストン内部空間11とが形成され、調整流路19には、調整流路19内を流れる作動油の流量を調整することによりピストン8の移動速度を調整する速度調整弁21が設けられるドアクローザにおいて、速度調整弁21の弁体22の先端を多角錘又は裁頭多角錘に形成したことを特徴とするドアクローザ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドア等の閉扉を緩やかに行わせるドアクローザに関し、さらに詳しくは作動油による流動音について対策を施したドアクローザに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にドアクローザにおいては、復帰用スプリングの蓄勢復帰力によりピストンを復動し、この時、ピストン前室の作動油をピストン後室へ導く油路(調整流路)に設けられた速度調整弁の調整により、ピストンの復動速度を所要速度に制御しうるよう構成されている。
【0003】
特許文献1に開示の従来のドアクローザでは、速度調整弁の先端にはV溝が形成されており、ドライバー等により速度調整弁を調整流路内で移動させることで弁体が移動し、これに伴ってV溝と調整流路内周面との間の空間の断面積が大小変化し、これによって流量を調整し、ドア等の閉扉速度を所要速度に制御できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3349675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この種のドアクローザでは、ドア等の閉扉時に前記V溝を通過する作動油による流動音の発生が大きいという問題があった。
【0006】
本発明は、上述した課題に鑑みて成されたものであって、その目的は作動油による流動音の発生が少ないドアクローザを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ドアクローザ本体のシリンダ内にピストンが内装され、該ピストンのピストンヘッドの前後方向両側には、調整流路を介して連通する前方油室とピストン内部空間とが形成され、該調整流路には、該調整流路内を流れる作動油の流量を調整することにより該ピストンの移動速度を調整する速度調整弁が設けられるドアクローザにおいて、該速度調整弁の弁体の先端を多角錘又は裁頭多角錘に形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、速度調整弁の弁体の先端を多角錘又は裁頭多角錘に形成したので、作動油による流動音の発生が少ないドアクローザを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係るドアクローザの要部を示す断面正面図である。
【図2】本発明に係るドアクローザの要部を示す部分断面平面図である。
【図3】本発明に係るドアクローザの速度調整弁の動作説明図である。
【図4】流動音の周波数特性図である。
【図5】流動音の音量測定図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。説明の都合上、図1の左側をドアクローザ本体1の前方、右側を後方という。
【0011】
図1は、本発明に係るドアクローザの速度調整弁21を有したドアクローザ本体1の断面を示しているものであり、ドアクローザ本体1が不図示の扉に略水平に取り付けられた状態を示している。ドアクローザ本体1には、その長手方向に沿って、内部に作動油が充填されたシリンダ2を備え、シリンダ2は、取り付け状態において略水平状態となり、また、軸方向の前後両端が各々エンドプラグ3,4で封止されて、密閉状態となっている。尚、シリンダ2内には、作動油と共に所定量の空気5が混入されている。これは、温度上昇等に伴うシリンダ2内の圧力上昇を、この空気5の圧縮によって吸収させてシリンダ2等の破損を未然に防止するためである。
【0012】
また、ドアクローザ本体1には、シリンダ2と直交するようにピニオン軸6が設けられ、ピニオン軸6の端部7がドアクローザ本体1から突出している。この突出した端部7には不図示のアームが取り付けられ、該アームの先端に不図示のブラケットが取り付けられ、該ブラケットが扉の取付枠に取り付けられる。その一方、ドアクローザ本体1は扉に取り付けられ、これにより扉の開閉動作に応じて、ピニオン軸6が回動するよう構成されている。
【0013】
そして、シリンダ2内には、ピニオン軸6の回動によってシリンダ2の軸方向に沿って移動可能なピストン8が内装されている。ピストン8は、前端側にピストンヘッド9が、後端側に円盤状のバネ押さえ壁10が形成され、ピストンヘッド9とバネ押さえ壁10との間にはピストン内部空間11が形成されている。また、連結部12によってピストンヘッド9とバネ押さえ壁10とが連結されており、ピストンヘッド9、バネ押さえ壁10及び連結部12とが一体的に形成されてピストン8を構成している。また、連結部12には、図2のように前記ピニオン軸6のピニオンギヤ6aと噛合するラック13が形成されている。
【0014】
このように、ピストン8がシリンダ2に内装されることによって、シリンダ2は、全体として二つの油室に区画されている。即ち、ピストンヘッド9の前方側の前方油室14(ピストンヘッド9と前方のエンドプラグ3との間の空間)と後方側の後方油室15(ピストンヘッド9と後方のエンドプラグ4との間の空間)とに区画され、後方油室15は、バネ押さえ壁10と後方のエンドプラグ4との間のバネ収容空間16と、前記ピストン内部空間11とから構成されている。尚、バネ収容空間16にはピストン8を前方油室14側に付勢するスプリング17が設けられている。
【0015】
更に、前方油室14と後方油室15とは、ピストンヘッド9の略中央(シリンダ2の中心軸上)に形成された連通孔18と、ドアクローザ本体1にシリンダ2と略平行に形成された調整流路19とを介して連通されている。また、前記連通孔18には、ピストン8が前方油室14側に移動する際、即ち閉扉時に閉状態となる逆止弁20が設けられ、また、調整流路19には、調整流路19内を流れる作動油の流量を調整する速度調整弁21が設けられている。19bは調整流路19のピストン内部空間11側の開口であり、19cは同じく前方油室14側の開口である。
【0016】
図3でよく理解できるように、速度調整弁21は、調整流路19内を移動可能な弁体22を備え、弁体22の先端は四角錘の先端を裁断した裁頭四角錘に形成されており、ドライバー等により速度調整弁21を調整流路19内で移動させることで弁体22が図3の(A)、(B)、(C)の如く移動し、これに伴って弁体22の先端と調整流路内周面19aとの間の空間の断面積Sが大小変化し、これによって流量を調整できるようになっている。図3の(a)、(b)、(c)はそれぞれ図3の(A)、(B)、(C)のP−P断面図である。即ち、図3の(B)の状態では断面積Sが小さいので、通過する作動油の流量は少なく、ピストン8の移動速度は遅く扉の閉扉速度は遅い。また、図3の(C)の状態では断面積Sが大きいので、通過する作動油の流量は多く、ピストン8の移動速度は速く扉の閉扉速度は速い。
【0017】
一方、ピストン内部空間11とバネ収容空間16とは、円盤状のバネ押さえ壁10の略中央(シリンダ2の中心軸上)の貫通孔24によって連通している。貫通孔24は、ピストン8が移動しても作動油が自由に流動できるよう大径になっている。即ち、貫通孔24を大型にすることで、ピストン内部空間11とバネ収容空間16とを一体化して一つの後方油室15として形成している。
【0018】
上記のように構成された速度調整弁21を有するドアクローザの動作について説明する。まず、扉の全閉状態においては、ピストン8は、前方油室14側に位置している。この状態から扉を開き始めると、開扉動作に応じてピニオン軸6が回動し、ピストン8がスプリング17側に移動する。ピストン8がスプリング17の付勢力に抗してバネ収容空間16側に移動する開扉時には、連通孔18内と調整流路19内とを介して、後方油室15側の作動油が前方油室14側に流出する。
【0019】
一方、閉扉時には、スプリング17の弾性復元力によってピストン8は逆に前方油室14側に移動するが、逆止弁20が閉状態となるため、作動油は調整流路19のみを介してピストン内部空間11(後方油室15側)に流入する。ここで、調整流路19内を流れる作動油の流量が速度調整弁21の移動量によって調整される結果、ピストン8の移動速度が調整され、閉扉速度が調整制御される。
【0020】
従来の速度調整弁の形状(V溝)では作動油が断面積Sを通過する際の流動音の発生が大きいという問題があったが、本発明に係る速度調整弁21の弁体22の先端形状は裁頭四角錘に形成されているので、作動油の流れが弁体22の周りで不均一になることがなく、流動音の発生は非常に小さく、ドアクローザの使用者に不快感を与えることがない。図4の(イ)はV溝による流動音の周波数特性を測定したグラフであり、図4の(ロ)は本発明に係る弁体22による流動音の周波数特性を測定したグラフである。このグラフにおいて横軸は周波数を、縦軸は音量を示す。また、図5の(イ)はV溝による流動音の音量を測定したグラフであり、図5の(ロ)は本発明に係る弁体22による流動音の音量を測定したグラフである。このグラフにおいて横軸は時間を、縦軸は音量を示す。これらの測定結果から本発明に係る弁体22による流動音は従来のものに比べ音量は少なく、著しい効果があることが確認できる。
【0021】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明のドアクローザは上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で多様な変更又は改良を加えることが可能である。例えば、上記実施形態では弁体22の先端は四角錘の先端を裁断した裁頭四角錘とされていたが、弁体22の先端を四角錘としてもよい。又、上記実施形態では、弁体22の先端の形状を裁頭四角錘としたが、裁頭多角錘又は多角錘としてもよい。
【符号の説明】
【0022】
1 ドアクローザ本体
2 シリンダ
3 エンドプラグ
4 エンドプラグ
5 空気
6 ピニオン軸
7 端部
8 ピストン
9 ピストンヘッド
10 バネ押さえ壁
11 ピストン内部空間
12 連結部
14 前方油室
15 後方油室
16 バネ収容空間
17 スプリング
18 連通孔
19 調整流路
19a 調整流路内周面
19b 開口
19c 開口
20 逆止弁
21 速度調整弁
22 弁体
24 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアクローザ本体のシリンダ内にピストンが内装され、該ピストンのピストンヘッドの前後方向両側には、調整流路を介して連通する前方油室とピストン内部空間とが形成され、該調整流路には、該調整流路内を流れる作動油の流量を調整することにより該ピストンの移動速度を調整する速度調整弁が設けられるドアクローザにおいて、該速度調整弁の弁体の先端を多角錘又は裁頭多角錘に形成したことを特徴とするドアクローザ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−132275(P2012−132275A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287162(P2010−287162)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000006943)リョービ株式会社 (471)
【Fターム(参考)】