説明

ドアトリム

【課題】ユーザにとって邪魔とならず、ユーザの需要に応じて収容機能等の機能を利用することができるアームレストを備えたドアトリムを提供する。
【解決手段】ドアトリム2は、ドアトリム本体部12と、ドアトリム本体部12に取り付けられ、軸状を成すと共に、機能部4aが設けられたアームレスト本体部4と、アームレスト本体部4の機能部4aの周りにアームレスト本体部4を回転軸として回転可能に取り付けられたカバー部材16とを備えている。カバー部材16は、開口16d1を有し、カバー部材16の回転に伴って、開口16d1から機能部4aを露出させて機能部4aを露出させる機能部露出状態と、機能部4aを遮蔽する機能部遮蔽状態との間で切り替え自在に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体を構成するドアのドアトリムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車体を構成するドアのドアトリムとして、収容機能を有するアームレストが取り付けられたドアトリムが知られている。このようなドアトリムでは、アームレストに、開口を有する収容空間が設けられ、この開口から収容空間内に収容物を収容可能となっている。しかしながら、収容空間の開口が常に開放された状態であるため、収容空間内にゴミ等が溜まりすく、また、ゴミ等が溜まった場合に収容空間内を掃除することが難しい。
【0003】
非特許文献1に、収容機能を有するアームレストが取り付けられたドアトリムが開示されている。このドアトリムでは、アームレストに、開口を有する収容空間と、この収容空間の開口を遮蔽可能な蓋体とが設けられている。このドアトリムでは、収容空間に収容物を収容しない場合、蓋体を動かして収容空間の開口を遮蔽することにより、収容空間内にゴミ等が溜まることを防ぐことができる。また、蓋体を動かして収容空間の開口を遮蔽することにより、蓋体をアームレストとして利用することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】実開平5−13849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非特許文献1のドアトリムでは、蓋体自体の厚みが大きいため、収容空間の開口を露出させている際に、ユーザにとって蓋体が邪魔になってしまうことがある。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みて創作されたものである。本発明は、ユーザにとって邪魔とならず、ユーザの需要に応じて収容機能等の機能を利用することができるアームレストを備えたドアトリムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で開示される技術は、車体を構成するドアの車室内内側に取り付けられるドアトリムであって、ドアトリム本体部と、該ドアトリム本体部に取り付けられ、軸状を成すと共に、機能部が設けられたアームレスト本体部と、該アームレスト本体部の前記機能部の周りに該アームレスト本体部を回転軸として回転可能に取り付けられたカバー部材と、を備え、該カバー部材は、少なくとも1つの開口を有し、当該カバー部材の回転に伴って、該開口から前記機能部を露出させる機能部露出状態と、前記機能部を遮蔽する機能部遮蔽状態と、の間で切り替え自在に構成されているドアトリムに関する。
【0008】
上記のドアトリムによると、カバー部材を回転させて機能部露出状態とすることにより、機能部における機能を利用することができ、機能部における機能を利用しない場合には、カバー部材を回転させて機能部遮蔽状態とすることができる。このため、ユーザにとってカバー部材が邪魔になることがなく、収容機能等の機能をユーザの需要に応じて利用することができる。
【0009】
前記機能部の上部には、第1機能部が設けられ、前記カバー部材を回転させることにより、前記開口から前記第1機能部を露出させる第1機能部露出状態と、前記第1機能部を前記カバー部材にて遮蔽してアームレスト使用状態とする第1機能部遮蔽状態と、の間で切り替え自在に構成されていてもよい。
【0010】
この構成によると、アームレストを使用する場合には、カバー部材を回転させて第1機能部遮蔽状態として、カバー部材をアームレストとして利用することができ、アームレストを使用しない場合には、カバー部材を回転させて第1機能部露出状態とすることができる。このため、ユーザにとってカバー部材が邪魔になることがなく、ユーザの需要に応じてアームレスト機能と収容機能等の他の機能とをそれぞれ利用することができる。
【0011】
前記カバー部材は、その外周面が複数面で構成され、該複数面の少なくとも1つの面には前記開口が形成されており、前記機能部の車室内側側部と下部のうち少なくとも一方には、第2機能部が設けられ、前記カバー部材を回転させることにより、前記第1機能部を前記カバー部材の一面にて遮蔽して前記アームレスト使用状態とする第1機能部遮蔽状態である場合に、前記カバー部材の他の面に形成された前記開口から前記第2機能部を露出させることが可能となる位置関係にて、前記カバー部材の複数面の少なくとも1つの面に前記開口が形成されていてもよい。
【0012】
この構成によると、カバー部材を回転させることにより、アームレスト機能を利用している場合に、第2機能部を露出させて第2機能部における機能を利用することができる。このため、ユーザにとってカバー部材が邪魔になることがなく、アームレスト機能と同時に第2機能部における機能を利用することができる。
【0013】
前記第2機能部は、前記機能部の車室内側側部に設けられ、前記機能部の下部には、第3機能部がさらに設けられ、前記カバー部材を回転させることにより、前記第1機能部を前記カバー部材の一面にて遮蔽して前記アームレスト使用状態とする第1機能部遮蔽状態である場合に、前記カバー部材の他の面に形成された前記開口から前記第2機能部と前記第3機能部の少なくとも一方を露出させることが可能となる位置関係にて、前記カバー部材の複数面の少なくとも1つの面に前記開口が形成されていてもよい。
【0014】
この構成によると、カバー部材を回転させることにより、アームレスト機能を利用している場合に、第2機能部及び/又は第3機能部を露出させて第2機能部及び/又は第3機能部における機能を利用することができる。このため、ユーザにとってカバー部材が邪魔になることがなく、アームレスト機能と同時に第2機能部及び/又は第3機能部における機能を利用することができる。
【0015】
前記カバー部材は、その外周面が4つの面で構成され、前記アームレスト本体部の前記機能部の周りを90°毎に回転可能となっており、前記4つの面の少なくとも2つの面には前記開口が形成されており、前記第1機能部は、前記機能部の上部に形成された凹部を有し、前記第2機能部は、前記機能部の車室内側側部に開口する収容空間を有し、前記第3機能部は、前記機能部の下部から板状に延びると共に、その板面に貫通孔が形成された取付部を有し、前記カバー部材を回転させることにより、前記カバー部材に形成された前記開口から前記第1機能部と前記第2機能部と前記第3機能部の少なくとも2つを同時に露出させることが可能となっていてもよい。
【0016】
この構成によると、カバー部材を回転させることにより、ユーザにとってカバー部材が邪魔になることがなく、第1機能部において凹部に収容物を収容する収容機能と、第2機能部において収容空間に収容物を収容する収容機能と、第3機能部において取付部に部材を取り付ける取付機能、の少なくとも2つの機能を同時に利用することができる。
【0017】
前記ドアトリム本体部は、車室外側方向に埋没する埋没部を有し、該埋没部に前記カバー部材の一部が収容されてもよい。
【0018】
この構成によると、カバー部材をドアトリム本体部に当接させることなく円滑に回転させることができる。また、ドアトリム本体部が埋没部を有しない場合に比してカバー部材をより車室外側方向に配することができ、カバー部材をユーザにとって一層邪魔にならないものとすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本明細書で開示される技術によると、ユーザにとって邪魔とならず、ユーザの需要に応じて収容機能等の機能を利用することができるアームレストを備えたドアトリムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態に係る車両用ドア10の一部を車室内側方向から視た斜視図を示す。
【図2】図1におけるA−A断面の断面図を示す。
【図3】カバー部材16を90°回転させたときの図1に対応する斜視図を示す。
【図4】図3におけるB−B断面の断面図を示す。
【図5】カバー部材16を180°回転させたときの図1に対応する斜視図を示す。
【図6】図5におけるD−D断面の断面図を示す。
【図7】図6における収容空間22にロール状収容物30を収容させた状態の断面図を示す。
【図8】カバー部材16を270°回転させたときの図1に対応する斜視図を示す。
【図9】図8におけるF−F断面の断面図を示す。
【図10】図9における断面構成を車室内側斜め方向から視た斜視図を示す。
【図11】取付部26に取り付け可能なトレイ50の斜視図を示す。
【図12】図6におけるE−E断面の断面図を示す。
【図13】図5におけるC−C断面の断面図を示す。
【図14】アームレスト本体部4をドアトリム本体部12に取り付ける前のアームレスト本体部4近傍の断面図を示す。
【図15】アームレスト本体部4をドアトリム本体部12に取り付けた後のアームレスト本体部4近傍の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図面を参照して実施形態を説明する。図1は、実施形態に係る車両用ドア10の一部を車室内側方向から視た斜視図を示している。図2は、図1におけるA−A断面の断面構成を示している。なお、図1の斜視図において、図の左側方向を前方とし、図の右側方向を後方とする。また、図2の断面図において、図の左側方向は車室外側方向に相当し、図の右側方向は車室内側方向に相当する。
【0022】
車両用ドア10は、車体を構成するサイドドアとして使用されるものであり、図1に示すように、ウインドウガラス8と、ドアトリム2とを備えている。ドアトリム2は、ウインドウガラス8の下方において車両用ドア10の車室内側に取り付けられており、合成樹脂材料、あるいは、合成樹脂材料に天然繊維(ケナフなど)を混合した材料等によって形成されている。ドアトリム2は、ドアトリム本体部12と、インサイドハンドル部6と、アームレスト本体部4と、アームレスト端部14と、カバー部材16とを備え、これら各部材における車室内側面の一部又は全部に表皮材が被覆されている。
【0023】
ドアトリム本体部12は、ドアトリム2の大部分を構成しており、ボード状の部材から構成されている。インサイドハンドル部6は、サイドウインドウ8の下方近傍において、ドアトリム本体部12の車室内側に設けられている。
【0024】
アームレスト本体部4は、前後方向に延びる軸状を成し、インサイドハンドル部6の下方においてドアトリム本体部12の車室内側に取り付けられており、車両用ドア10のアームレストとして機能する。また、アームレスト本体部4の後方側には後述する機能部4a(図2参照)が設けられている。
【0025】
アームレスト端部14は、板状を成し、その板面がアームレスト本体部4の後方端面と当接した状態で、アームレスト本体部4に取り付けられている。これにより、アームレスト端部14は、アームレスト本体部4に固定されている。
【0026】
カバー部材16は、前後方向に延びると共に、内部が空洞となっている角筒状を成し、その筒内をアームレスト本体部4が前後方向に貫通するようにアームレスト本体部4の機能部4aの周りに取り付けられている。また、カバー部材16は、その後方端面がアームレスト端部14と当接した状態で、アームレスト本体部4の機能部4aの周りにアームレスト本体部12を回転軸として、時計回り(図1の矢印S方向)に90°毎に回転可能に取り付けられている。従って、アームレスト本体部4は、カバー部材16が取り付けられている機能部4aより前方側においてドアトリム本体部12に取り付けられている。なお、図1の状態では、アームレスト本体部4の機能部4aは、その上部及び車室内側側部がカバー部材16によって遮蔽されているため、図1には表れていない。
【0027】
ドアトリム本体部12には、図1及び図2に示すように、カバー部材16と対向する位置に、車室外側方向に埋没する埋没部12aが設けられている。そして、カバー部材16の車室内側の一部が埋没部12aに収容されている。このため、カバー部材16の回転時にカバー部材16の外周面がドアトリム本体部12と当接することがなく、カバー部材16が円滑に回転可能となっている。
【0028】
カバー部材16について詳しく説明する。カバー部材16は、図2に示すように、アームレスト本体部4を囲む外周面が4つの面で構成され、断面視略四角形状を成している。以下では、図2の状態のカバー部材16において、上部に位置する面を第1面16aと称し、車室内側側部に位置する面を第2面16bと称し、下部に位置する面を第3面16cと称し、車室外側側部に位置する面を第4面16dと称することとする。これら4つの面のうち、隣接する第3面16cと第4面16dには、前後方向を長辺とする長方形状の開口16c1、16d1がそれぞれ形成されており(図3等参照)、開口形成面16c、16dとなっている。一方、隣接する第1面16aと第2面16bには、開口が形成されておらず、開口非形成面16a、16bとなっている。
【0029】
カバー部材16の第3面16cには、開口16c1の開口縁部から折れ曲がってカバー部材16の内側(機能部4a側)に向かって浅く延びている延設部16c2が設けられている。
【0030】
また、カバー部材16の第4面16dの開口16d1には、その開口縁部の内側に一対のカバー側シール16s,16tが設けられている。一対のカバー側シール16s,16tは、それぞれ第4面16dの開口16d1の開口縁部からカバー部材16の内側に向かって延びている。両カバー側シール16s,16tは、ゴム等の可撓性を有する材料で形成されており、その先端が機能部4aの外周面に弾性的に当接している。
【0031】
続いてアームレスト本体部4の機能部4aについて説明する。アームレスト本体部4の機能部4aには、図2に示すように、凹部20と、収容空間22と、取付部26が設けられている。
【0032】
凹部20は、機能部4aの上部に設けられ、機能部4aの内側に浅く凹んでなる凹状に形成されている。そして、凹部20内に収容物を載置することが可能となっている。
【0033】
収容空間22は、凹部20の下方において機能部4aの内部に設けられ、車室内側方向に開口する開口22aを有している。そして、この開口22aから収容空間22内に収容物を収容することが可能となっている。
【0034】
収容空間22内には、その奥側にガイド28が設けられている。ガイド28は、断面視したときに車室外側方向に弧状に湾曲する形状を成している。そして、ガイド28の上側端部に設けられ、収容空間22の奥側上面に取り付けられたガイド軸28aを回転軸として、ガイド28を図2の矢印T方向に動かすことが可能となっている。なお、ガイド軸28の下端部は、ガイド軸28aを回転軸として、収容空間22の手前側(開口22a側)に付勢されている。
【0035】
また、収容空間22の開口22aには、開口縁部の一辺に機能部4aの外側(カバー部材16側)に向かって延びる機能部側シール24が設けられている。機能部側シール24は、ゴム等の可撓性を有する材料で形成されており、その先端がカバー部材16の内側に弾性的に当接している。
【0036】
取付部26は、機能部4aの下部に設けられ、その両板面が車室内側方向及び車室外側方向を向くように機能部4aの下部から板状に延びている。取付部26には、その板面を貫通する複数の貫通孔26aが形成されている。複数の貫通孔26aは、前後方向に沿って取付部26に直線状に形成されている。なお、上記のカバー側シール16s,16t、凹部20、収容空間22、ガイド28、機能部側シール24、及び取付部26の各機能については、後で詳しく説明する。
【0037】
図1及び図2の状態では、カバー部材16の第1面16aがカバー部材16の上面となっている。この状態では、機能部4aの上方がカバー部材16の第1面(開口非形成面)16aによって遮蔽される。このため、カバー部材16の第1面16aをアームレストとして利用することができる。
【0038】
以下、カバー部材16を時計回りに90°毎に回転させていったときのカバー部材16及び機能部4aの構成及び機能について説明する。図3は、カバー部材16を図1及び図2の状態から時計回りに90°回転させたときの、図1に対応する斜視図を示している。また、図4は、図2におけるB−B断面の断面構成を示している。
【0039】
カバー部材16を図1及び図2の状態から時計回り(図1の矢印S方向)に90°回転させると、図3及び図4に示すように、カバー部材16の第4面16dがカバー部材16の上面となる。この状態では、第4面16dの開口16d1から凹部20が露出する。このため、凹部20の上方から凹部20内に収容物を載置することができる。なお、この状態では、凹部20と第4面16dの開口16d1との間がカバー側シール16s、16tを介して連続する。このため、凹部20と第4面16dの開口16d1との間に収容物が入り込んでしまうことを抑制することができる。
【0040】
図5は、カバー部材を図1及び図2の状態から時計回りに180°回転させたときの、図1に対応する斜視図を示している。また、図6は、図5におけるD−D断面の断面構成を示している。なお、図6では、機能部4aに設けられたガイド28を、ガイド軸28aを回転軸として収容空間22の手前側(開口22a側)へ動かしたときの断面構成を示している。
【0041】
カバー部材16を図3及び図4の状態から時計回り(図3の矢印S方向)にさらに90°回転させると、図5及び図6に示すように、カバー部材16の第3面16cがカバー部材16の上面となり、かつ、カバー部材16の第4面16dがカバー部材16の車室内側側面となる。この状態では、第3面16cの開口16c1から凹部20が露出する。このため、凹部20の上方から凹部20内に収容物を載置することができる。なお、この状態では、凹部20の側面20aの上側端部と開口16c1の延設部16c2の先端部分とが近接する。このため、凹部20と第3面16cの開口16c1との間に収容物が入り込んでしまうことを抑制することができる。
【0042】
また、この状態では、第4面16dの開口16d1から収容空間22が露出する。このため、収容空間22の開口22aから収容空間22内に収容物を収容することができる。ここで、図7に、図6における収容空間22内にロール状のロール状収容物30を収容させた状態の断面図を示す。ロール状収容物30の一例として、ロール状に巻回可能なマットやペーパー等を挙げることができる。収容空間22内にロール状収容物30を収容させた状態では、収容空間22の開口22aから車室内へロール状収容物30の一部又は全部を引き出すことができる。
【0043】
収容空間22内にロール状収容物30を収容させた状態では、収容空間22内に設けられたガイド28は、ロール状収容物30より車室外側(収容空間22の奥側)に位置することとなる。この状態では、ガイド28が収容空間22の開口22a側に付勢されていることにより、ロール状収容物30が収容空間22内の開口22a側に押された状態となっている。このため、収容空間22内に収容されたロール状収容物30を収容空間22内から容易に取り出すことができる。
【0044】
さらに、この状態では、一方のカバー側シール16tと機能部側シールとが当接し、収容空間22の開口22aと第4面16dの開口16d1との間がカバー側シール16s、16tと機能部側シール24を介して連続する。このため、収容空間22の開口22aと第4面16dの開口16d1との間に収容物が入り込んでしまうことを抑制することができる。
【0045】
図8は、カバー部材を図1及び図2の状態から時計回りに270°回転させたときの、図1に対応する斜視図を示している。また、図9は、図8におけるF−F断面の断面構成を示している。
【0046】
カバー部材16を図5及び図6の状態から時計回り(図5の矢印S方向)にさらに90°回転させると、図8及び図9に示すように、カバー部材16の第2面16bがカバー部材16の上面となり、カバー部材16の第3面16cがカバー部材16の車室内側側面となり、カバー部材16の第4面16dがカバー部材16の下面となる。この状態では、機能部4aの上方がカバー部材16の第2面(開口非形成面)16bによって遮蔽される。このため、カバー部材16の第2面16bをアームレストとして利用することができる。
【0047】
また、この状態では、第3面16cの開口16c1から収容空間22が露出する。このため、収容空間22の開口22aから収容空間22内に収容物を収容することができる。なお、この状態では、収容空間22の開口22aの開口縁部と開口16c1の延設部16c2の先端部分とが近接する。このため、収容空間22の開口22aと第3面16cの開口16c1との間に収容物が入り込んでしまうことを抑制することができる。
【0048】
さらに、この状態では、第4面16dの開口16d1から取付部26が露出する。このため、第4面16dの開口16d1から取付部26の貫通孔26aに部材を取り付けることができる。なお、この状態では、一方のカバー側シール16sと機能部側シール24とが当接し、機能部4aの下方部分と第4面16dの開口16d1との間がカバー側シール16s、16tと機能部側シール24を介して連続する。このため、機能部4aの下方部分と第4面16dの開口16d1との間に収容物が入り込んでしまうことを抑制することができる。
【0049】
続いて、取付部26の機能について説明する。図10は、図9における断面構成を車室内側斜め方向から視た斜視図を示している。また、図11は、機能部4aの取付部26に取り付け可能な取付部材の一例であるトレイ50の斜視図を示している。
【0050】
図10に示すように、機能部4aの下部がカバー部材16の開口から露出した状態では、取付部26の貫通孔26aにS字状のフック40を取り付けることができる。この状態では、取付部26に取り付けられたフック40に物を吊り下げることができる。
【0051】
図11に示すトレイ50は、長手状のトレイ板状部50cと、トレイの板状部50cの下側縁部から立ち上がって上方に開口するトレイ収容部50bと、トレイ板状部50から突出する複数のトレイ取付部50aとを有している。複数のトレイ取付部50aは、トレイ板状部50cの上側縁部近傍において長手方向に沿って直線状に設けられている。トレイ50では、トレイ板状部50cとトレイ収容部50bによって囲まれる範囲に収容物を収容可能なトレイ収容空間54が形成されている。
【0052】
トレイ50に設けられたトレイ取付部50aは、機能部4aの下部がカバー部材16の開口から露出した状態において、取付部26の貫通孔26aに挿通可能となっている。そして、トレイ取付部50aを貫通孔26aに挿通させた状態でトレイ取付部50aの先端に係止ボタン52を取り付けることにより、取付部26がトレイ50のトレイ板状部50cと係止ボタン52によって挟持され、トレイ50を取付部26に取り付けることが可能となっている。この状態では、取付部26に取り付けられたトレイ50のトレイ収容空間54に物を収容することができる。
【0053】
続いてアームレスト本体部4を90°毎に回転させるための構成について説明する。図12は、機能部4aの車幅方向の断面図であって、図6におけるE−E断面の断面構成を示している。
【0054】
図12に示すように、機能部4aの前方端部には、外側に突出する4つの凸部4a1が、機能部4aの外周面に沿って機能部4aの上部、両側部、下部にそれぞれ等間隔で設けられている。一方、カバー部材16の内側には、機能部4aの凸部4a1と対応する位置に、外側に凹んでなる嵌合凹部16zが、カバー部材16の内周面に沿ってカバー部材16の各面16a、16b、16c、16dにそれぞれ等間隔で設けられている。そして、機能部4aに設けられた凸部4a1は、カバー部材16に設けられた嵌合凹部16zと嵌合可能となっている。また、凸部4a1と嵌合凹部16zは、凸部4a1と嵌合凹部16zが嵌合された状態でカバー部材16を回転させることにより、容易に外れる構成となっている。
【0055】
上記のように4つの凸部4a1が、機能部4aの上部、両側部、下部にそれぞれ等間隔で設けられていることにより、カバー部材16を90°回転させる毎に凸部4a1と嵌合凹部16zとが嵌合してカバー部材16の回転が停止し、カバー部材16の位置が保持される。そして、カバー部材16の位置が保持された状態からカバー部材16に対してカバー部材16の回転方向に力を加えることにより、凸部4a1と嵌合凹部16zの嵌合が容易に外れ、カバー部材16を再び回転させることができる。
【0056】
続いてアームレスト本体部4をドアトリム本体部12に取り付ける方法について説明する。図13は、図5におけるC−C断面の断面図を示している。図14は、アームレスト本体部4をドアトリム本体部12に取り付ける前のアームレスト本体部4近傍の断面図を示している。図15は、アームレスト本体部4をドアトリム本体部12に取り付けた後のアームレスト本体部4近傍の断面図を示している。
【0057】
図13に示すように、アームレスト本体部4はその前方側において、アームレスト本体部4の車室外側の一部がドアトリム本体部12を貫通している。ドアトリム本体部12を貫通しているアームレスト本体部4の一部には、その先端にカシメ部4bが形成されている。
【0058】
アームレスト本体部4をドアトリム本体部12に取り付ける場合、図14に示すように、アームレスト本体部4の一部をドアトリム本体部12に形成された取付孔12bに挿通させる。次に、図15に示すように、取付孔12bに挿通させたアームレスト本体部4の一部の先端を熱カシメによって変形させる。これにより、カシメ部4bが形成され、アームレスト本体部4がドアトリム本体部12に取り付けられる。
【0059】
さて、ドアトリム2において、アームレスト機能を利用する場合には、カバー部材16を回転させてカバー部材16の第1面16a又は第2面16bをカバー部材16の上面とすることにより、機能部4aの上部を遮蔽させることができ、カバー部材16をアームレストとして利用することができる。また、収容機能を利用する場合には、カバー部材16を回転させてカバー部材16の第3面16c又は第4面16dをカバー部材16の上面又は車室内側側面とすることにより、機能部4aの上部又は車室内側側部を露出させることができ、機能部4aに設けられた凹部20又は収容空間22を利用することができる。さらに、取付機能を利用する場合には、カバー部材16を回転させてカバー部材16の第3面16c又は第4面16dをカバー部材16の下面とすることにより、機能部4aの下部を露出させることができ、機能部4aに設けられた取付部26を利用することができる。
【0060】
また、カバー部材16を回転させてカバー部材16の第3面16cをカバー部材16の上面とすることにより、機能部4aの上方及び車室内側側部の両者を露出させることができ、凹部20と収容空間22を同時に利用することができる。また、カバー部材16を回転させてカバー部材16の第2面16bをカバー部材16の上面とすることにより、機能部4aの上部を遮蔽させてアームレスト機能を利用することができ、かつ、機能部4aの車室内側部を露出させて収容空間22を利用することができ、さらに、機能部4aの取付部26を露出させて取付部26を利用することができる。
【0061】
以上のように実施形態に係るドアトリム2では、カバー部材16を回転させて機能部4aにおける各種機能を利用することができ、機能部4aにおける機能を利用しない場合には、カバー部材16を回転させて機能部4aを遮蔽することができる。このため、ユーザにとってカバー部材16が邪魔になることがなく、収容機能等の機能をユーザの需要に応じて利用することができる。
【0062】
また、実施形態に係るドアトリム2では、アームレストを使用する場合には、カバー部材16を回転させて機能部4aの上部を遮蔽して、カバー部材16をアームレストとして利用することができ、アームレストを使用しない場合には、カバー部材16を回転させて機能部4aの上部を露出した状態とすることができる。このため、ユーザにとってカバー部材16が邪魔になることがなく、ユーザの需要に応じてアームレスト機能と収容機能等の他の機能とをそれぞれ利用することができる。
【0063】
また、実施形態に係るドアトリム2では、カバー部材16を回転させることにより、アームレスト機能を利用している場合に、機能部4aの車室内側側部を露出させて収容機能を利用することができる。このため、ユーザにとってカバー部材16が邪魔になることがなく、アームレスト機能と同時に収容機能を利用することができる。
【0064】
また、実施形態に係るドアトリム2では、カバー部材16を回転させることにより、アームレスト機能を利用している場合に、機能部4aの車室内側側部及び/又は下部を露出させて機能部4aの車室内側側部及び/又は下部における収容機能及び/又は取付機能を利用することができる。このため、ユーザにとってカバー部材16が邪魔になることがなく、アームレスト機能と同時に収容機能及び/又は取付機能を利用することができる。
【0065】
また、実施形態に係るドアトリム2では、カバー部材16を回転させることにより、ユーザにとってカバー部材が邪魔になることがなく、凹部20に収容物を収容する収容機能と、収容空間22に収容物を収容する収容機能と、取付部26の貫通孔26aにフック40やトレイ50等を取り付ける取付機能、の少なくとも2つの機能を同時に利用することができる。
【0066】
また、実施形態に係るドアトリム2では、車両の助手席用サイドドアのドアトリム2に対して本実施形態の構成を採用し、例えば、機能部4aの収容空間22にロール状に巻回可能なペット用のマットを収容させることにより、収容空間22の開口から助手席までマットを引き出すことができる。これにより、ペットを車両の助手席に乗車させる際等に、ドアトリム2をマットの収容空間として好適に利用することができる。
【0067】
なお、アームレストに、開口を有する収容空間と、この収容空間の開口を遮蔽可能な蓋体とが設けられている従来のドアトリムでは、収容空間の開口を露出させている場合、蓋体が意味を成さず、ユーザにとって邪魔なものとなる。一方、実施形態に係るドアトリム2では、カバー部材16自体が蓋体としての機能を果たすため、収容空間22の開口を露出させている場合であっても、ユーザにとってカバー部材16が邪魔とならず、カバー部材16を好適に利用することができる。
【0068】
実施形態の構成と本発明の構成との対応関係を記載しておく。カバー部材16の開口16c1、16d1から凹部20又は収容空間22又は取付部26を露出させた状態が「機能部露出状態」の一例である。また、カバー部材16の開口非形成面16a、16bによって凹部20又は収容空間22又は取付部26を遮蔽した状態が「機能部遮蔽状態」の一例である。また、凹部20が「第1機能部」の一例である。また、カバー部材16の開口16c1、16d1から凹部20を露出させた状態が「第1機能部露出状態」の一例である。また、また、カバー部材16の開口非形成面16a、16bによって凹部20を遮蔽した状態が「アームレスト使用状態」、「第1機能部遮蔽状態」の一例である。また、収容空間22が「第2機能部」の一例である。また、取付部26が「第3機能部」の一例である。
【0069】
上記の実施形態の変形例を以下に列挙する。
(1)上記の実施形態ではカバー部材がアームレスト本体部に対して時計回りに回転可能な構成を採用したが、カバー部材の回転方向は限定されない。
【0070】
(2)上記の実施形態ではカバー部材の外周面に4つの面が設けられている構成を採用したが、カバー部材の外周面に設けられる面の数は限定されない。
【0071】
(3)上記の実施形態ではカバー部材を90°毎に回転させることができる構成を採用したが、カバー部材の回転角度は限定されない。例えば、カバー部材と機能部との間に適当な摩擦力を生じさせることにより、自由な回転角度でカバー部材を保持できる構成を採用してもよい。
【0072】
(4)上記の実施形態ではアームレスト本体部の前方側がドアトリム本体部に取り付けられている構成を採用したが、アームレスト本体部の前方側とカバー端部の両者がドアトリム本体部に取り付けられている構成を採用してもよい。または、アームレスト本体部の前方側に機能部が設けられており、アームレスト本体部の後方側がドアトリム本体部に取り付けられる構成を採用してもよい。または、アームレスト本体部の機能部が設けられていない部分の上面にプルハンドル用の開口を設けてもよい。または、アームレスト本体部の機能部が設けられていない部分において、アームレスト本体部とドアトリム本体部との間に間隙を形成してプルハンドル用の間隙としてもよい。
【0073】
(5)上記の実施形態ではドアトリム本体部にプルハンドルが設けられていない構成を採用したが、アームレスト本体部とは別にプルハンドルが設けられている構成を採用してもよい。
【0074】
(6)カバー端部を、アームレスト本体部の後方端部に対してユーザが自由に脱着可能な構成を採用してもよい。さらに、カバー端部がアームレスト本体部から外された状態で、様々な形態のカバー部材を、アームレスト本体部の機能部に対してユーザが自由に脱着可能な構成を採用してもよい。これにより、ユーザが自分の好みに応じて様々な形態のカバー部材を取り付けることが可能となる。
【0075】
(7)上記の実施形態ではトレイを取付部に取り付けつけるために、トレイ取付部を取付部の貫通孔に挿通させてトレイ取付部の先端に係止ボタンを取り付ける構成を採用したが、トレイのトレイ取付部の先端を下方に折れ曲がる形状にして、係止ボタンを不要とする構成を採用してもよい。
【0076】
(8)上記の実施形態ではアームレスト本体部がドアトリム本体部に取り付けられる構成を採用したが、アームレスト本体部の一部が車両用ドアにクリップやネジ留め等で取り付けられる構成を採用してもよい。
【0077】
(9)上記の実施形態ではアームレスト本体部の機能部が凹部、収容空間、取付部等の機能を有する構成を採用したが、アームレスト本体部の機能部はリモコン等の操作機能や照明機能を有する構成を採用してもよい。
【0078】
(10)上記の実施形態以外にも、カバー部材の形状、カバー部材に形成された開口の数、アームレスト本体部における機能部の配置及び機能部の構成等は適宜に変更可能である。
【0079】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0080】
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0081】
2:ドアトリム、4:アームレスト本体部、6:インサイドハンドル部、8:サイドウインドウ、10:車両用ドア、12:ドアトリム本体部、12a:埋没部、14:カバー端部、16:カバー部材、16a:第1面、16b:第2面、16c:第3面、16c1:(第3面の)開口、16c2:延設部、16d:第4面、16d1:(第4面の)開口、16s、16t:カバー側シール、20:凹部、20a:(凹部の)側面、22:収容空間、22a:(収容空間の)開口、24:機能部側シール、26:取付部、28:ガイド、28a:ガイド軸、30:ロール状収容物、40:フック、50:トレイ、50a:トレイ取付部、50b:トレイ収容部、50c:トレイ板状部、52:係止ボタン、54:トレイ収容空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体を構成するドアの車室内内側に取り付けられるドアトリムであって、
ドアトリム本体部と、
該ドアトリム本体部に取り付けられ、軸状を成すと共に、機能部が設けられたアームレスト本体部と、
該アームレスト本体部の前記機能部の周りに該アームレスト本体部を回転軸として回転可能に取り付けられたカバー部材と、を備え、
該カバー部材は、少なくとも1つの開口を有し、当該カバー部材の回転に伴って、該開口から前記機能部を露出させる機能部露出状態と、前記機能部を遮蔽する機能部遮蔽状態と、の間で切り替え自在に構成されていることを特徴とするドアトリム。
【請求項2】
前記機能部の上部には、第1機能部が設けられ、
前記カバー部材を回転させることにより、前記開口から前記第1機能部を露出させる第1機能部露出状態と、前記第1機能部を前記カバー部材にて遮蔽してアームレスト使用状態とする第1機能部遮蔽状態と、の間で切り替え自在に構成されていることを特徴とする請求項1に記載のドアトリム。
【請求項3】
前記カバー部材は、その外周面が複数面で構成され、該複数面の少なくとも1つの面には前記開口が形成されており、
前記機能部の車室内側側部と下部のうち少なくとも一方には、第2機能部が設けられ、
前記カバー部材を回転させることにより、前記第1機能部を前記カバー部材の一面にて遮蔽して前記アームレスト使用状態とする第1機能部遮蔽状態である場合に、前記カバー部材の他の面に形成された前記開口から前記第2機能部を露出させることが可能となる位置関係にて、前記カバー部材の複数面の少なくとも1つの面に前記開口が形成されていることを特徴とする請求項2に記載のドアトリム。
【請求項4】
前記第2機能部は、前記機能部の車室内側側部に設けられ、
前記機能部の下部には、第3機能部がさらに設けられ、
前記カバー部材を回転させることにより、前記第1機能部を前記カバー部材の一面にて遮蔽して前記アームレスト使用状態とする第1機能部遮蔽状態である場合に、前記カバー部材の他の面に形成された前記開口から前記第2機能部と前記第3機能部の少なくとも一方を露出させることが可能となる位置関係にて、前記カバー部材の複数面の少なくとも1つの面に前記開口が形成されていることを特徴とする請求項3に記載のドアトリム。
【請求項5】
前記カバー部材は、その外周面が4つの面で構成され、前記アームレスト本体部の前記機能部の周りを90°毎に回転可能となっており、前記4つの面の少なくとも2つの面には前記開口が形成されており、
前記第1機能部は、前記機能部の上部に形成された凹部を有し、
前記第2機能部は、前記機能部の車室内側側部に開口する収容空間を有し、
前記第3機能部は、前記機能部の下部から板状に延びると共に、その板面に貫通孔が形成された取付部を有し、
前記カバー部材を回転させることにより、前記カバー部材に形成された前記開口から前記第1機能部と前記第2機能部と前記第3機能部の少なくとも2つを同時に露出させることが可能となっていることを特徴とする請求項4に記載のドアトリム。
【請求項6】
前記ドアトリム本体部は、車室外側方向に埋没する埋没部を有し、
該埋没部に前記カバー部材の一部が収容されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のドアトリム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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