説明

ドアマウント式のエアバッグ装置

【課題】簡単な構成で膨張展開するエアバッグのガイド手段となることができ、しかも、膨張展開したエアバッグに乗員が接触しても、エアバッグが窓の外側に対して所定量以上突出させない反力をエアバッグに与えることができるドアマウント式のエアバッグ装置を提供する。
【解決手段】ドア部5内にエアバッグ装置を収納し、エアバッグ2の膨張展開時にティアライン14において開裂して本体部4aと分離した扉部4bを車両外側方向に回動させる。扉部4bの回動角は、扉部4bとインナーパネル7との間に介装したシリンダ20がインナーパネル7に当接することで、扉部4bの回動角が規制される。エアバッグ2の膨張展開する方向に沿った立設状態になった扉部4bで、エアバッグの展開方向をガイドすると共に、膨張展開したエアバッグ2に乗員が当接したときのエアバッグ2の反力を受ける受け面として機能する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車側方のドア内にエアバッグを収納したドアマウント式のエアバッグ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年においては、自動車の座席の側方においてエアバッグを膨張展開させ、側面衝突時に乗員を保護するエアバッグ装置が数多く使用されている。このようなエアバッグ装置の一つとして、車室側方に配したドア部内にエアバッグを折り畳んで収納したドアマウント式のエアバッグ装置が用いられている。
【0003】
ドアマウント式のエアバッグ装置では、膨張展開するエアバッグをドア部から上方に向かって膨張展開を行わせて、乗員の頭部などを保護する構成となっている。そして、ドアマウント式のエアバッグ装置としては、横方向衝撃のガスバッグ保護装置(特許文献1参照)や側面用エアバッグ装置(特許文献2参照)などが提案されている。
【0004】
特許文献1に記載されたガスバッグ保護装置を本願発明の従来例1として、図6を用いて説明する。図6には、エアバッグが膨張展開した状態を示している。エアバッグ40が膨張展開するとエアバッグ40をカバーしていた図示せぬリッドが、所定位置から破断されて乗員側へと押し開かれる。そして、リッドが乗員側へと押し開かれることによって生じた開口から、エアバッグ40がドアの窓ガラス41に沿って膨張展開する。そして、膨張展開したエアバッグ40に乗員が当接したときには、ドアの窓ガラス41によってエアバッグ40が支持される構成になっている。
【0005】
特許文献2に記載された側面用エアバッグ装置を本願発明の従来例2として、図7を用いて説明する。図7には、エアバッグ54が膨張展開した状態を断面図で示している。サイドドア50には側面用エアバッグ装置51が取付けられており、膨張ガスによってエアバッグ54を膨張展開させることができる。ドアトリム53の上部の裏面には、車両前後方向に沿って薄肉部が形成されており、エアバッグ54の膨張によって薄肉部は破断するように構成されている。
【0006】
エアバッグ54の内部には、バックアッププレート55が設けられている。バックアッププレート55は、上端部がエアバッグ54に取り付けられ、下端部が自由端として構成されている。そして、エアバッグ54が膨張展開したときには、バックアッププレート55の下端部55aがドアインナパネル52の上端部52aと干渉可能な位置に配置されることになる。
【0007】
エアバッグ54が膨張展開した後に乗員頭部がエアバッグ54に当接して、エアバッグ54を車外方向に押し出す力がエアバッグ54に加えられた場合には、バックアッププレート55の下端部55aとドアインナパネル52との当接により、エアバッグ54の車外側への移動を制限する構成になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平09−164900号公報
【特許文献2】特開平09−104304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
カーテンエアバッグ装置としては、車両に対する追突事故やロールオーバ等の事故が発生したときに、車両内に乗車していた乗員が車両の窓から放り出されないように保護する機能も要求されている。そのため、窓枠の内側においてカーテンエアバッグが安定的に展開することが求められている。しかも、カーテンエアバッグが膨張展開したときには、乗員の頭部をキャッチングしている位置が、窓の外側に対して所定量以上突出しないことが必要になっている。
【0010】
乗員の頭部がカーテンエアバッグに当接したときに、窓枠の内側で膨張展開したカーテンエアバッグ自体も一緒になって窓の外側にはみ出てしまうと、乗員の頭部をキャッチングしている位置は、窓の外側に対して所定量以上よりも更に突出した位置になってしまう。
【0011】
特許文献1に記載されたガスバッグ保護装置では、窓ガラス41が開いていた場合には、エアバッグ40が膨張展開するときに展開する方向をガイドするガイド手段がなくなってしまう。また、衝突時の衝撃によって窓ガラス41が割れた場合には、窓ガラス41がエアバッグ40を支持する反力面としての機能を奏することができなくなってしまう。そして、乗員の頭部をキャッチングしている位置を、窓の外側に対して所定量以上突出しないように維持しておくことが難しくなる。
【0012】
特許文献2に記載された側面用エアバッグ装置では、バックアッププレート55をエアバッグ54内に配設しておく構成であるため、構造が複雑になる。また、エアバッグ54の膨張展開持に、バックアッププレート55の下端部55aがドアインナパネル52の上端部52aと干渉可能な位置に配置されるように構成するには、各部材の寸法設定が難しい構造になってしまう。そして、結果として、側面用エアバッグ装置の製造コストが上昇してしまうことになる。
【0013】
また、バックアッププレート55が、鉄、アルミニューム等の金属や、硬質エラストマー等の樹脂材で構成され、略矩形形状の板状を呈している。そのため、バックアッププレート55を製作したときに生じるバリや角部等の影響によって、エアバッグ54に損傷を与えないように構成しておくことが必要になり、例えば、バックアッププレート55の周囲に補強布を配設するなどの工夫が必要となる。
【0014】
本願発明は、上述した従来例における問題点を解決することができ、簡単な構成で膨張展開するエアバッグのガイド手段となることができ、しかも、膨張展開したエアバッグに乗員が接触しても、エアバッグが窓の外側に対して所定量以上突出させない反力をエアバッグに与えることができるドアマウント式のエアバッグ装置の提供を課題にしている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願発明の課題は、請求項に記載された各発明により達成することができる。
即ち、本願発明に係わるドアマウント式のエアバッグ装置では、車室側部のドア部内に配設された収納ケースと、前記収納ケース内に折畳まれて収納され、インフレータからの膨張ガスによって前記ドア部から上方に向かって膨張展開可能なエアバッグと、前記収納ケースを覆うカバー体と、を備え、
前記カバー体は、前記ドア部に取り付けられる本体部と、前記エアバッグの上部領域を覆い、乗員から離れる車両外側の方向に回動可能な扉部と、を有し、前記扉部は、前記扉部の一端側を回動中心として前記ドア部に支承され、前記エアバッグの膨張展開時に、前記扉部を前記エアバッグの膨張展開する方向に沿った立設状態に維持する保持手段を備えてなることを最も主要な特徴としている。
【0016】
また、本願発明では、前記扉部の裏面側にティアラインを設けたことを主要な特徴とし
ている。
更に、本願発明では、前記保持手段は、前記扉部の一端側に配され、前記ドア部と前記扉部とを伸縮自在に連結するシリンダ及び前記シリンダ内を摺動する伸長ロッドを備え、前記シリンダの基端部は、前記ドア部又は前記扉部に回動自在に支承され、前記伸長ロッドの先端部は、前記扉部又は前記ドア部に回動自在に支承されてなり、前記エアバッグの膨張展開時に前記扉部が前記立設状態となる位置で、前記扉部の回動に伴って同じ方向に前記ドア部に対して回動する前記シリンダ又は前記伸長ロッドの回動角が規制されてなることを主要な特徴としている。
【0017】
更にまた、本願発明では、前記保持手段は、前記扉部の一端側と前記ドア部とを連結する一対のリンク片を備え、前記一対のリンク片は、第1リンク片と第2リンク片とを有し、前記第1リンク片の一端側は前記ドア部に回動自在に支承され、他端部は前記第2リンク片の一端部と回動自在に支承され、前記第2リンク片の他端部は前記扉部に回動自在に支承されてなり、前記第1リンク片の他端側又は前記第2リンク片の一端部に、相手側のリンク片の側端面に当接して前記第1リンク片と前記第2リンク片との間での相対的な回動角を規制する規制片が設けられてなることを主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本願発明では、カバー体の扉部によって、膨張展開しているエアバッグの展開方向をガイドすることができる。しかも、扉部は、膨張展開したエアバッグに乗員が当接したときのエアバッグの反力を受ける受け面としての機能を奏することができるので、エアバッグの車外方向への移動を抑制することができる。
【0019】
即ち、エアバッグの膨張展開時には、扉部は乗員から離れる車両外側の方向に回動することができ、扉部は保持手段によって、エアバッグの膨張展開する方向に沿った立設状態に維持されることになる。このように扉部を構成することによって、エアバッグの展開方向へのガイドとしての機能と、膨張展開したエアバッグに乗員が当接したときのエアバッグの反力を受ける受け面としての機能とを備えさせることができる。
【0020】
扉部の裏面側にティアラインを設けておくことによって、エアバッグの膨張展開時に、車外側で立設した扉部の高さ寸法を、エアバッグの反力受け面として必要最小限の高さ寸法に構成することができる。しかも、扉部の高さ寸法を、エアバッグの反力受け面として必要最小限の高さ寸法に構成することによって、扉部が立設状態になるまでの回動を極めて短時間で行わせることができる。そして、エアバッグの所定位置への膨張展開を極めて短時間に完成させることができる。
【0021】
エアバッグの膨張展開時に、扉部を車外側で立設した状態に維持する保持手段の構成としては、シリンダ及びシリンダ内を摺動する伸長ロッドを用いた構成や、一対のリンク片を用いた構成にすることができる。
【0022】
保持手段の構成を、シリンダ及びシリンダ内を摺動する伸長ロッドを用いた構成とした場合には、回動したシリンダ又は前記伸長ロッドをドア部に当接させることで、シリンダ及び前記伸長ロッドの回動角を規制することができる。そして、シリンダ内を摺動した伸長ロッドの外周面とシリンダの内周面との接触によって、所定量伸びた伸長ロッドとシリンダとを恰も一本の棒状体として構成することができる。この一本の棒状体がドア部に当接することによって、扉部を車外側で立設した状態に維持することができる。
【0023】
保持手段の構成を、一対のリンク片を用いた構成とした場合には、扉部が車外側で立設した状態になったときに、第1リンク片の他端側又は第2リンク片の一端部に設けた規制片が、相手側のリンク片の側端面に当接することで、一対のリンク片がそれ以上の相対的
な回動を行うことを規制され、扉部を車外側で立設した状態に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】エアバッグ装置をドア部内に配設した状態を示す要部断面図である。(実施例)
【図2】エアバッグが膨張展開したときの要部断面図である。(実施例)
【図3】他の保持手段を用いて、扉部が拡開した状態を示す要部斜視図である。(実施例)
【図4】一対のリンク片が閉じた状態を示す説明図である。(実施例)
【図5】一対のリンク片の要部を示す斜視図である。(実施例)
【図6】エアバッグが膨張展開した状態を示す概略図である。(従来例1)
【図7】エアバッグが膨張展開した状態を断面図である。(従来例2)
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の好適な実施の形態について、添付図面に基づいて以下において具体的に説明する。本願発明に係わるドアマウント式のエアバッグ装置としては、以下において図1〜図5を用いて説明を行うが、本願発明に係わるドアマウント式のエアバッグ装置としては、図1〜図5に記載された実施例の構成に限定されるものではなく、本願発明としての効果を奏することができる構成であれば、多様な変更が可能である。
【実施例】
【0026】
図示せぬ車両内の車室に設けられた座席の側方には、車両の側面部を構成するドア部5が配設されている。なお、以下、車両が前進する直進方向を基準として、上方(図1に示す矢印U方向)、車室側の方向(図1に示す矢印C方向)を用いて説明する。車両としては、例えば、屋根部を開閉可能なコンバーチブル、カブリオレ、或いはスパイダーなどのいわゆるオープンカーを特に用いることができ、これらの車両の側面部を構成するドア部5に対して、本願発明を好適に適用することができる。
【0027】
ドア部5は、金属板などから形成された垂直状のインナーパネル7を備え、インナーパネル7の内側である矢印C方向には、内装ドアパネル6が取り付けられている。また、インナーパネル7の外側である矢印C方向とは反対の方向には、外装ドアパネル8が取り付けられている。そして、外装ドアパネル8とインナーパネル7との間には、サイドウィンドウ9が設けられている。
【0028】
サイドウィンドウ9は、上下方向に昇降動してドア部5の上側である開口部分を開閉可能に覆うことができる。サイドウィンドウ9が摺接することになる外装ドアパネル8の上端部とインナーパネル7の上端部には、シール18が設けられている。サイドウィンドウ9の摺動方向は、二点鎖線で示している。また、サイドウィンドウ9を昇降動させる駆動機構は、サイドウィンドウ9とインナーパネル7との間に配設しておくことができる。
【0029】
ドア部5内には、エアバッグ装置1が備えられており、エアバッグ装置1は、側面衝突時あるいは横転時などに乗員の頭部を保護するいわゆるドアマウント式のエアバッグ装置として構成されている。エアバッグ装置1は、収納ケース3内に収納されており、収納ケース3は、ネジ17を介してヒンジ板12に固定されている。ヒンジ板12は、図示せぬ固定手段でドア部5内の構成部材に取り付けられており、ヒンジ板12の一部には扉部4bが取り付けられている。エアバッグ装置1内のエアバッグ2(図2参照)が膨張展開したときには、扉部4bを取り付けたヒンジ板12の一部はヒンジ部12aを中心として、車両の外側である矢印C方向とは反対の方向に回動することができる。
【0030】
扉部4bは、本体部4aと共に収納ケース3を覆うカバー体4として構成されており、通常は
、ドア部5の上部をカバーしている。本体部4aと扉部4bとは、薄肉に形成されたティアライン14を介して一体的に構成されている。また、カバー体4は、内装パネル6の一部として構成されている。
【0031】
図2に示すように、エアバッグ装置1内に配されたエアバッグ2が膨張展開したときには、ティアライン14が開裂して扉部4bは、本体部4aから別れてヒンジ板12とともにヒンジ部12aを中心として、車両の外側に向かって回動する。
【0032】
尚、エアバッグ2を構成する基布パネルの表面にはゴムコーティング、シリコン系樹脂のコーティング等を施して、通気性を低下させ、あるいは不通気状態となるように構成しておくこともできる。また、基布パネルの構成材料としては、例えば、ナイロン66、ナイロン6、ポリエステル等の織布を利用することができる。
【0033】
図1に示すように、収納ケース3は、ヒンジ板12にネジ17を介して取り付けられた第2ケース3bと、第2ケース3bと共に本体部4aを係止部16で係止する第1ケース3aと、を備えた構成になっている。そして、第2ケース3bを第1ケース3aから離れる方向に回動させることによって生じる第2ケース3bの弾性変形に伴う把持力によって、第1ケース3aと第2ケース3bとの間にエアバッグ装置1を強固に保持しておくことができる。
【0034】
ヒンジ板12の強度を高めるため、ヒンジ板12の裏面側にはヒンジ補強部材13が設けられている。また、ヒンジ板12のヒンジ部12a側の部位とインナーパネル7との間には、シリンダ20及びシリンダ20内を摺動可能に設けられた伸長ロッド21が配設されている。シリンダ20の基端部は、回動支点20aを介してインナーパネル7に支承されており、伸長ロッド21の先端部は、回動支点21aを介してヒンジ板12のヒンジ部12a側の部位に支承されている。
【0035】
図2に示すように、収納ケース3内に保持されたエアバッグ装置1内のエアバッグ2は、ガス供給パイプ10を介して図示せぬインフレータに接続している。そして、車両に対する追突事故やロールオーバ等の事故が発生したとき、或いはこれらの発生が予期されたときには、インフレータから発生したガスによってエアバッグ2は膨張展開を行い、ヒンジ板12及び扉部4bを車外方向に回動させて、ヒンジ板12及び扉部4bが回動することによって生じた開口から、矢印U方向に膨張展開を行うことができる。
【0036】
このとき、扉部4bはエアバッグ2の展開方向に案内するガイドとして機能することができる。また、ヒンジ板12及び扉部4bの回動に伴って、縮小状態となっていた伸長ロッド21は、シリンダ20内を摺動して伸長していく。そして、回動支点20aを回動中心としたシリンダ20の回動が、シリンダ20とインナーパネル7との当接によって回動が規制されることになる。
【0037】
そして、シリンダ20内を摺動した伸長ロッド21の外周面とシリンダ20の内周面とが接触状態になっているので、所定量伸びた伸長ロッド21とシリンダ20とはあたかも一本の棒状体として構成されることになる。伸長ロッド21を一本の棒状体としたシリンダ20がドア部に当接することによって、扉部4bを車両外側で立設した状態に維持することができる。
【0038】
シリンダ20の回動が規制されることによって、ヒンジ板12及び扉部4bの回動が停止し、扉部4bはドア部5の上方に立設した状態に維持されることになる。即ち、扉部4bは、エアバッグ2の膨張展開する方向に沿った立設状態に維持されることになる。そして、ヒンジ板12で補強された扉部4bは、膨張展開したエアバッグ2に乗員が当接したときのエアバッグ2の反力を受ける受け面として準備されることになる。
【0039】
シリンダ20と伸長ロッド21とによって、扉部4bをエアバッグ2の膨張展開する方向に沿
った立設状態に維持する保持手段が構成されている。このように、扉部4b及び扉部4bを補強しているヒンジ板12が車両外側に立ち上がることにより、扉部4bはエアバッグ2が乗員を拘束する際の反力板として機能することができる。
【0040】
反力板として機能する扉部4bを備えたことにより、エアバッグ2としての乗員拘束能力は大幅に向上させることができる。また、ヒンジ板12の板厚を増減させることにより、あるいは、シリンダ20の回動を停止させるシリンダ20とインナーパネル7との当接位置を調整することによって、扉部4bの回動角度を調整することが可能となる。そして、扉部4bの回動角度を調整することによって、エアバッグ2の展開方向を調整することも可能となる。
【0041】
扉部4bがエアバッグ2の膨張展開する方向に沿った立設状態になったときの高さ寸法は、ティアライン14の形成位置によって調整することができる。そして、エアバッグ2の膨張展開時に、車外側で立設した扉部4bの高さ寸法を、エアバッグ2の反力受け面として必要最小限の高さ寸法に構成することができる。
【0042】
このように扉部4bの高さ寸法を、エアバッグ2の反力受け面として必要最小限の高さ寸法に構成することによって、扉部4bが立設状態になるまでの回動を極めて短時間で行わせることができる。そして、エアバッグ2の所定位置への膨張展開を極めて短時間に完成させることができる。
【0043】
また、保持手段を構成しているシリンダ20と伸長ロッド21の配置位置を上述して説明とは、逆の配置構成にしておくこともできる。即ち、シリンダ20の基端部を、回動支点21aを介してヒンジ板12のヒンジ部12a側の部位に支承し、伸長ロッド21の先端部を、回動支点20aを介してインナーパネル7に支承した構成にすることもできる。
【0044】
扉部4bをエアバッグ2の膨張展開する方向に沿った立設状態に維持する保持手段の構成としては、シリンダ20と伸長ロッド21とを用いた構成の代わりに、一対のリンク片を用いた構成にすることもできる。一対のリンク片の構成としては、図3〜図5に示すように第1リンク片23と第2リンク片24とを用いた構成にすることができる。
【0045】
図3〜図5に示すように、回動軸28を介して第1リンク片23の一端部23aをドア部5の構成部材側に軸支させ、また、回動軸29を介して第2リンク片24の他端部24bを、扉部4bを装着したヒンジ板12の裏面側に軸支させた構成にし、第1リンク片23の他端部23bと第2リンク片24の一端部24aとを、回動軸26で軸支させた構成にしておくことができる。
【0046】
図3では、第1リンク片23と第2リンク片24とを二点鎖線で示した状態が、扉部4bが閉じられている、エアバッグ2の膨張展開前の状態を示している。尚、この状態での扉部4bの図示は、図3では省略している。図4には、扉部4bが閉じられている状態を概略図として示している。エアバッグ2が膨張展開を行って、扉部4bがエアバッグ2の膨張展開する方向に沿った立設状態での第1リンク片23及び第2リンク片24の状態を実線で示している。
【0047】
回動軸26の構成としては、例えば、図5に示すように、一端側にフランジ状の頭部を有し、他端部にナット27と螺合するネジ部が形成され、中央部に円柱部を形成した構成にすることができる。そして、回動軸26の中央部に形成した円柱部で、第1リンク片23と第2リンク片24とを軸支することができる。
【0048】
また、第2リンク片24の一端部側には、第2リンク片24から横向きに突出した規制片25が設けられている。図3に示すように、扉部4bが車両の外側方向に回動したときに、規制片25が第1リンク片23の他端部23b側の側縁部に当接することで、扉部4bは、エアバッグ2
の膨張展開する方向に沿った立設状態に維持することができる。そして、ヒンジ板12で補強された扉部4bは、膨張展開したエアバッグ2に乗員が当接したときのエアバッグ2の反力を受ける受け面として準備されることになる。
尚、規制片25の配置構成としては、第2リンク片24に設ける代わりに第1リンク片23に設けた構成にすることもできる。
【0049】
上記説明では、オープンカータイプの車両のドア部にドアマウント式のエアバッグ装置を搭載した構成について説明を行ったが、本願発明に係わるエアバッグ装置を搭載することができるドア部を備えることができる車両であれば、本願発明を好適に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本願発明の技術思想を他のエアバッグの構成においても適用することもできる。
【符号の説明】
【0051】
1・・・エアバッグ装置、2・・・エアバッグ、3・・・収納ケース、4・・・カバー体、4a・・・本体部、4b・・・扉部、5・・・ドア部、6・・・内装ドアパネル、7・・・インナーパネル、8・・・外装ドアパネル、12・・・ヒンジ板、12a・・・ヒンジ部、14・・・ティアライン、20・・・シリンダ、21・・・伸長ロッド、23・・・第1リンク片、24・・・第2リンク片、25・・・規制片、40・・・エアバッグ、41・・・窓ガラス、50・・・サイドドア、52・・・ドアインナパネル、53・・・ドアトリム、54・・・エアバッグ、55・・・バックアッププレート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室側部のドア部内に配設された収納ケースと、前記収納ケース内に折畳まれて収納され、インフレータからの膨張ガスによって前記ドア部から上方に向かって膨張展開可能なエアバッグと、
前記収納ケースを覆うカバー体と、を備え、
前記カバー体は、前記ドア部に取り付けられる本体部と、前記エアバッグの上部領域を覆い、乗員から離れる車両外側の方向に回動可能な扉部と、を有し、
前記扉部は、前記扉部の一端側を回動中心として前記ドア部に支承され、
前記エアバッグの膨張展開時に、前記扉部を前記エアバッグの膨張展開する方向に沿った立設状態に維持する保持手段を備えてなることを特徴とするドアマウント式のエアバッグ装置。
【請求項2】
前記扉部の裏面側にティアラインを設けたことを特徴とする請求項1記載のドアマウント式のエアバッグ装置。
【請求項3】
前記保持手段は、前記扉部の一端側に配され、前記ドア部と前記扉部とを伸縮自在に連結するシリンダ及び前記シリンダ内を摺動する伸長ロッドを備え、
前記シリンダの基端部は、前記ドア部又は前記扉部に回動自在に支承され、前記伸長ロッドの先端部は、前記扉部又は前記ドア部に回動自在に支承されてなり、
前記エアバッグの膨張展開時に前記扉部が前記立設状態となる位置で、前記扉部の回動に伴って同じ方向に前記ドア部に対して回動する前記シリンダ及び前記伸長ロッドの回動角が規制されてなることを特徴とする請求項1または2に記載のドアマウント式のエアバッグ装置。
【請求項4】
前記保持手段は、前記扉部の一端側と前記ドア部とを連結する一対のリンク片を備え、
前記一対のリンク片は、第1リンク片と第2リンク片とを有し、前記第1リンク片の一端側は前記ドア部に回動自在に支承され、他端部は前記第2リンク片の一端部と回動自在に支承され、前記第2リンク片の他端部は前記扉部に回動自在に支承されてなり、
前記第1リンク片の他端側又は前記第2リンク片の一端部に、相手側のリンク片の側端面に当接して前記第1リンク片と前記第2リンク片との間での回動角を規制する規制片が設けられてなることを特徴とする請求項1または2に記載のドアマウント式のエアバッグ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate