説明

ドアミラー

【課題】本発明は、ドアパネルに当たる光を容易に低減させることができるようにしたドアミラーを提供する。
【解決手段】ドアミラー1においては、レンズ20の裏面に形成されたフレネルレンズ部22の表面にシボが設けられている。このシボは、車両Mの前後方向に延在する境界Lより外側に位置する第1の領域Sに形成された第1のシボAと、境界Lよりドアパネル30,31側に位置する第2の領域Pに形成された第2のシボBとを有し、第1のシボAの窪み深さに対して、第2のシボBの窪み深さは深くなっている。従って、浅いシボ側の第1の領域Sから足元に向けて出射される光の照度に対して、深いシボ側の第2の領域Pからドアパネル30,31の表面に向けて出射される光の照度を低下させることができる。レンズ20の採用により、境界Lの位置と、フレネルレンズ部22の表面のシボの窪み深さとを変更するだけで、様々な車種への適用が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドアパネルの外側の足元を照らすためのフットライトを備えたドアミラーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、特開2008−94314号公報がある。この公報に記載されたドアミラーには、車両のドアパネルの外側における足元を照らすためのランプが設けられている。このランプは、ランプソケットに装着され、このランプソケットは、ドアミラーのランプハウジングに着脱自在に取り付けられている。このランプハウジング内には、反射板が固定され、反射板で反射したランプからの光は、ランプ窓(レンズ)を通して、ドアパネルの外側を照らすことができる。フットランプが設けられたドアミラーでは、夜間の停車時において、ドアパネルの外側の足元を照らして乗員の乗り降りをサポートすることができる。
【0003】
【特許文献1】特開2008−94314号公報
【特許文献2】特開2008−132875号公報
【特許文献3】実用新案登録第3080619号公報
【特許文献4】特開2006−7883号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、乗車のために乗員が車両に近づく際、ドアパネルの表面がドアミラーのランプによって強く光っていると、ドアパネル側の光が強調されてしまって、利用者がドアパネルの外側における足元の光を明るく感じ難くなるが、従来のドアミラーにあっては、このことについての対策が何ら施されていなかった。また、従来のドアミラーにあって、ドアパネルに映る光を弱くするためには、反射板の向きや仕様を変更したり、ランプの光軸を変更する等、車種毎に、様々な構造変更が必要になり、大幅な設計変更を余儀なくされる。
【0005】
本発明は、ドアパネルに当たる光を容易に低減させることができるようにしたドアミラーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ドアミラーボディ内に配置されて、車両のドアパネルの外側の足元を照らすためのランプと、ドアミラーボディに装着されると共に、ランプの光を拡散させるレンズとを備えたドアミラーにおいて、
レンズは、平行な複数のステップ部がレンズの裏面側に形成されたフレネルレンズ部と、フレネルレンズ部の表面上で車両の略前後方向に延在する境界と、を有し、
フレネルレンズ部の表面において、境界より外側に位置する第1の領域には第1のシボが形成され、境界よりドアパネル側に位置する第2の領域には第2のシボが形成され、第1のシボの窪み深さに対して、第2のシボの窪み深さを深くしたことを特徴とする。
【0007】
このドアミラーにおいては、レンズの裏面に形成されたフレネルレンズ部の表面にシボが設けられている。このシボは、車両の前後方向に延在する境界より外側に位置する第1の領域に形成された第1のシボと、境界よりドアパネル側に位置する第2の領域に形成された第2のシボとを有し、第1のシボの窪み深さに対して、第2のシボの窪み深さは深くなっている。従って、車両の前後方向に延在する境界を境にして、レンズから出射されるドアパネル側の光と足元側の光とに分けられ、浅いシボ側の第1の領域から足元に向けて出射される足元側の光の照度に対して、深いシボ側の第2の領域からドアパネルの表面に向けて出射されるドアパネル側の光の照度を低下させることができる。このような構成のレンズを採用することにより、境界の位置と、フレネルレンズ部の表面のシボの窪み深さとを変更するだけで、様々な車種への適用が可能になる。このように、レンズの容易な設計変更により、ドアパネルに映る光を弱くすることができ、足元側の光がより強調され、利用者に、足元が明るいと感じさせることができる。さらに、フレネルレンズ部の表面にシボがあることで、ランプが外から見え難くなり、ランプが外から丸見えになることなく、ドアミラーの見映えが向上する。
【0008】
また、第2のシボが形成された第2の領域内にカメラの撮像窓が設けられていると好適である。
カメラの撮像窓の周囲の照度が高いと、カメラの画像が白っぽくなってしまう事態も起こり得るので、本発明では、カメラの撮像窓を第2の領域内に配置することで、このような事態を起こり難くしている。さらに、撮像窓がドアパネル側に配置されているので、車両の側方を確実に撮像することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ドアパネルに当たる光を容易に低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ本発明に係るドアミラーの好適な実施形態について詳細に説明する。なお、同一又は同等な構成部分については、同一符号を付し、その説明は省略する。
【0011】
図1及び図2に示すように、ドアミラー1は、アーム部6を介して前側のドアパネル30(図5参照)に固定される椀形状をした樹脂製のドアミラーボディ2を備え、このドアミラーボディ2は、車両Mの後部側に向けて開放された開口部を有するケーシング3と、ケーシング3の開口部に嵌め込むようにしてケーシング3に固定されたカップ状の仕切板4とからなる。
【0012】
ドアミラー1には、仕切板4に設けられた凹部4aを塞ぐように反射ミラー5が配置され、この反射ミラー5は、ミラー板5aと、このミラー板5aを保持する樹脂製のミラーホルダ5bとからなり、ミラーホルダ5bには、図示しない四本の爪片が設けられている。さらに、反射ミラー5は、ピボットプレート7に対して着脱自在に装着されている。
【0013】
このピボットプレート7は、反射ミラー5のミラーホルダ5bの裏面が当接する円板部7aと、この円板部7aの外周部分で等間隔に配置された四個の掛け止め部(図示せず)とを有する。各掛け止め部には、反射ミラー5の裏面に設けられた樹脂製の四個の爪片が引っ掛けられる。従って、反射ミラー5はピボットプレート7に対して着脱自在であり、反射ミラー5を手前に強く引くことによって、反射ミラー5をピボットプレート7から容易に取り外すことができる。
【0014】
さらに、ピボットプレート7の裏面側には2カ所に球状の凹部(図示せず)が形成され、それぞれの凹部には、アジャスターナット(図示せず)の頭部に設けられたボール部(図示せず)が、ボールジョイント構造によって連結されている。各アジャスターナットは、カップ状のホルダ10に立設された2本のアジャスターボルト(図示せず)にそれぞれ螺合すると共に、モータとギアとが組合わされたアクチュエータ(図示せず)によって自転しながらそれぞれ独立して軸方向に可動する。そして、アジャスターナットのそれぞれ独立した移動量の変化によって、ピボットプレート7の傾き角度を変化させることができ、それに伴って、反射ミラー5は所定の鏡面角度に変化する。
【0015】
アクチュエータ及びホルダ10は、ケーシング3に取り付けられた内装フレーム13に固定されている。この内装フレーム13の下部には、ランプ17を収容するためのランプハウジング15が固定されている。このランプハウジング15には、ランプ17の挿入を可能にした差込み口15aが形成されている。
【0016】
この差込み口15aの周囲には筒状部15bが形成され、ランプ17の後部にはランプソケット19が装着されている。そして、ランプソケット19は、筒状部15bに対して着脱自在であるため、フィラメント切れが起きた場合でも、ランプソケット19を引き抜くだけでランプ17を新しいランプに交換することができる。
【0017】
さらに、ドアミラーボディ2の下部にはランプ窓18が設けられ、このランプ窓18には、樹脂製のレンズ20が嵌め込まれている。このレンズ20によって、ランプ17からの光を拡散させることができ、地面を広範囲に照らすことができる。
【0018】
図3及び図4に示すように、ドアミラーボディ2の下部で略水平状態で取付けられるレンズ20は、略水平面上で板状に延在するレンズ本体部21と、レンズ本体部21の周囲で立設する包囲壁23と、包囲壁23から側方に突出する舌片24とからなる。レンズ本体部21の表面側は、滑らかな面として形成され、レンズ本体部21の裏面側には、鋸歯状のフレネルレンズ部22が形成されている。
【0019】
このフレネルレンズ部22は、レンズカット部とも呼ばれ、光を屈折させて広範囲を照らす機能を有している。フレネルレンズ部22には、互いに平行に延在して等間隔に配列された略同等な山形状をなすステップ22aが形成されている。各ステップ22aの表面には、シボ加工が施されているので、点灯時にステップ22aの形状に起因した細長い平行なラインが地面に映るのを防止し、ランプ窓18からランプ17が丸見えになるのを防止している。また、フレネルレンズ部22にシボ加工を施すことは、フレネルレンズ部22の外観の濃淡ムラの防止にも寄与している。
【0020】
フレネルレンズ部22の表面上には、車両Mの前後方向に延在する車両中心線に対して略平行に境界Lが延在し、この境界Lより外側に位置する第1の領域Sには、第1のシボAが形成され、境界Lよりドアパネル30側に位置する第2の領域Pには、第2のシボBが形成されている。
【0021】
そして、第1のシボAの窪み深さに対して、第2のシボBの窪み深さは深くなっている。例えば、本実施形態にあっては、第1のシボAの窪み深さを20μmにした場合、第2のシボBの窪み深さは40μmになっている。このようなシボA,Bは、金型に形成されており、レンズ20の射出成形時に一緒に成形される。
【0022】
なお、この境界Lの位置は、車種に応じて適宜変更される。また、図4のシボは模式的に示されている。
【0023】
このような構成のレンズ20を採用したドアミラー1について実験した結果を以下に説明する。なお、仕様12V−5Wのランプ17を利用している。
【0024】
図5は、レンズ20の中心より鉛直に垂下して地面に達した点を原点(0)として、車両Mの前後方向に延在する中心線に対して平行に延在するX軸と、これに直交するY軸とで現される照度分布が示されている。
【0025】
図5から分かるように、レンズ20の中心の真下から内側に約100mmの位置に、前側のドアパネル30及び後側のドアパネル31がある車種において、前側のドアパネル30の略中央を通るラインR1上と、後側のドアパネル31の前側を通るラインR2上と、後側のドアパネル31の後側を通るラインR3上とで照度を観測した。
【0026】
この照度分布では、各ドアパネル30,31の表面上の点(A),(B),(C)と、地面上で原点(0)を通るX軸から345mm離れた点(D),(E),(F)を観測した。また、原点(0)を通るY軸から、(A),(D)は、約300mm、(B),(E)は、約1060mm、(C),(F)は、約1850mm離れている。
【0027】
そして、(A)の照度は8.2ルクス、(B)の照度は3.0ルクス、(C)の照度は1.1ルクス、(D)の照度は8.2ルクス、(E)の照度は3.8ルクス、(F)の照度は1.7ルクスであった。
【0028】
これに対して、境界を設けることなく、フレネルレンズ部22の全面に窪み深さ20μmのシボを均一に形成した比較例としてのレンズを製作して、点(A),(B),(C),(D),(E),(F)で照度を観測した。
【0029】
その結果、(A)の照度は8.6ルクス、(B)の照度は3.6ルクス、(C)の照度は1.5ルクス、(D)の照度は8.2ルクス、(E)の照度は3.8ルクス、(F)の照度は1.7ルクスであった。
【0030】
以上の結果により、本発明に係るレンズ20の場合、(A)では、照度が0.4ルクス低減され、(B)では、照度が0.6ルクス低減され、(C)では、照度が0.4ルクス低減され、(D),(E),(F)では、照度の低下が見られなかった。
【0031】
このように、レンズ20を利用した本発明のドアミラー1では、地面上における乗員の足元の照度を落とすことなく、ドアパネル30,31側の照度のみが落ちていることが分かる。また、(A),(B),(C)では、僅かな照度の低下であり、ドアパネル30,31の表面の照度を僅かに低下させただけでも、利用者は、ドアパネル30,31の外側における足元の光を明るく感じることができ、さらには、ドアパネル30,31に映った光を利用者に柔らかな光として感じさせることができる。また、ドアパネル30,31に映った光は演出効果としても期待できる。
【0032】
このドアミラー1においては、レンズ20の裏面に形成されたフレネルレンズ部22の表面にシボが設けられている。このシボは、車両Mの前後方向に延在する境界Lより外側に位置する第1の領域Sに形成された第1のシボAと、境界Lよりドアパネル30,31側に位置する第2の領域Pに形成された第2のシボBとを有し、第1のシボAの窪み深さに対して、第2のシボBの窪み深さは深くなっている。従って、車両Mの前後方向に延在する境界Lを境にして、レンズ20から出射されるドアパネル30,31側の光と足元側の光とに分けられ、浅いシボ側の第1の領域Sから足元に向けて出射される足元側の光の照度に対して、深いシボ側の第2の領域Pからドアパネル30,31の表面に向けて出射されるドアパネル30,31側の光の照度を低下させることができる。
【0033】
このような構成のレンズ20を採用することにより、境界Lの位置と、フレネルレンズ部22の表面のシボの窪み深さとを変更するだけで、様々な車種への適用が可能になる。このように、レンズ20の容易な設計変更により、ドアパネル30,31に映る光を弱くすることができ、足元側の光がより強調され、利用者に、足元が明るいと感じさせることができる。さらに、フレネルレンズ部22の表面にシボがあることで、ランプ17が外から見え難くなり、ランプ17が外から丸見えになることなく、ドアミラー1の見映えが向上する。
【0034】
本発明は、前述した実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【0035】
本発明は、ランプハウジング15内にリフレクタが設けられたドアミラーでも適用できることは言うまでもない。第2のシボBの窪み深さについては、車種や車両Mの色に応じて適宜変更され、ドアパネル30,31上の照度を落とす際には、第2のシボBの窪み深さを深くするような設計変更を考慮すればよい。また、レンズ20の中心とドアパネル30,31との距離を考慮して、境界Lの位置が適宜に設計変更される。また、境界Lは、直線に限らず、波形状、鋸歯形状、ドアパネル30の表面に略沿った曲線形状であってもよい。また、境界Lは、車両Mの前後方向に延在する車両中心線に対して斜めになるように設けられてもよい。
【0036】
本発明に関して、境界Lは、車両Mの略前後方向に延在するが、車両中心線に対して、0度から約45度未満の範囲内で斜めに延在する場合が該当する。また、ドアパネル30に当たる光を低減させるように決定される境界Lは、車両Mの略幅方向に延在してもよいが、車両中心線に対して、45度から約90度未満の範囲内で斜めに延在する場合が該当する。
【0037】
また、図6に示すように、他のドアミラー40におけるレンズ42では、第2のシボBが形成された第2の領域P内にカメラの撮像窓41が設けられていても良い。カメラの撮像窓41の周囲の照度が高いと、カメラの画像が白っぽくなってしまう事態も起こり得るので、本発明では、カメラの撮像窓41を第2の領域P内に配置することで、このような事態を起こり難くしている。さらに、撮像窓41がドアパネル30側に配置されているので、車両Mの側方を確実に撮像することができる。
【0038】
また、境界Lは、複数本であっても、本発明の所期の目的を達成することができ、境界Lを細かく分けると、照度を段階的に設定することができる。例えば、図7に示すように、他のレンズ50において、境界L1,L2を並設させてもよい。この場合、境界L1において、外側には浅いシボの領域G1が設けられて、ドアパネル30側には、領域G1より深いシボの領域G2が設けられ、更に、境界L2において、ドアパネル30側には、領域G2より深いシボの領域G3が設けられ、外側にはG3より浅いシボの領域G2が設けられている。すなわち、このようなレンズ50にあっては、領域G1,G2,G3の順番でシボが深くなっている。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係るドアミラーの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1のII−II線に沿う部分断面図である。
【図3】レンズを示す斜視図である。
【図4】図3のIV−IV線に沿う部分拡大断面図である。
【図5】本発明に係るドアミラーの照度分布を示す図である。
【図6】本発明に係るドアミラーの他の実施形態を示す斜視図である。
【図7】本発明に係るドアミラーに適用されるレンズの変形例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0040】
1,40…ドアミラー、2…ドアミラーボディ、17…ランプ、20,42,50…レンズ、22…フレネルレンズ部、22a…ステップ部、30,31…ドアパネル、41…撮像窓、M…車両、L,L1,L2…境界、S…第1の領域、A…第1のシボ部、P…第2の領域、B…第2のシボ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアミラーボディ内に配置されて、車両のドアパネルの外側の足元を照らすためのランプと、前記ドアミラーボディに装着されると共に、前記ランプの光を拡散させるレンズとを備えたドアミラーにおいて、
前記レンズは、
平行な複数のステップ部が前記レンズの裏面側に形成されたフレネルレンズ部と、
前記フレネルレンズ部の表面上で前記車両の略前後方向に延在する境界と、を有し、
前記フレネルレンズ部の前記表面において、前記境界より外側に位置する第1の領域には第1のシボが形成され、前記境界より前記ドアパネル側に位置する第2の領域には第2のシボが形成され、
前記第1のシボの窪み深さに対して、前記第2のシボの窪み深さを深くしたことを特徴とするドアミラー。
【請求項2】
前記第2のシボが形成された前記第2の領域内にカメラの撮像窓が設けられていることを特徴とする請求項1記載のドアミラー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−149702(P2010−149702A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−330099(P2008−330099)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000148689)株式会社村上開明堂 (185)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】